(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102524
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】区画線認識装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240724BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20240724BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20240724BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240724BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240724BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W40/06
B60W30/12
G05D1/02 L
G01S17/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006464
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小西 俊介
(72)【発明者】
【氏名】奥津 良太
(72)【発明者】
【氏名】益岡 修平
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
5J084
【Fターム(参考)】
3D241BA12
3D241CE06
3D241DB02Z
3D241DB09Z
3D241DB12Z
3D241DC34Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H301AA03
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD07
5H301FF11
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301HH01
5H301QQ06
5J084AA15
5J084AB16
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA11
5J084BA48
5J084CA03
5J084CA14
5J084CA26
5J084CA31
5J084CA65
5J084CA68
5J084CA70
5J084EA01
(57)【要約】
【課題】路面の区画線を精度よく認識すること。
【解決手段】区画線認識装置50の車載検出器5は、走行する道路上の異なる位置からそれぞれ、1フレームの検出データとしてマトリクス状の複数の検出点毎の距離情報を含む3次元点群データを取得する。路面情報取得部11は、検出データに基づいて、フレーム毎の道路上の進行方向の区画線を路面情報として認識する認識部111と、道路上の同じ位置の区画線が連続する所定数のフレームで重複して認識されると、重複して認識された区画線を示すデータを有効と判定する判定部112と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲に電磁波を照射して周囲の外界状況を時系列に検出する車載検出器と、前記車載検出器による複数フレームの検出データに基づいて、前記自車両が走行する道路の路面情報を取得する路面情報取得部と、を備える区画線認識装置であって、
前記車載検出器は、走行する前記道路上の異なる位置からそれぞれ、1フレームの検出データとしてマトリクス状の複数の検出点毎の距離情報を含む3次元点群データを取得し、
前記路面情報取得部は、
前記検出データに基づいて、フレーム毎の前記道路上の進行方向の区画線を前記路面情報として認識する認識部と、
前記道路上の同じ位置の区画線が連続する所定数のフレームで重複して認識されると、前記重複して認識された区画線を示すデータを有効と判定する判定部と、
を含むことを特徴とする区画線認識装置。
【請求項2】
請求項1に記載の区画線認識装置において、
前記車載検出器は、連続する第1所定数のフレームにそれぞれ前記道路上の同じ位置を含むように前記外界状況を検出し、
前記判定部は、前記第1所定数のフレームのうちの前記第1所定数よりも小さい第2所定数以上のフレームで前記道路上の同じ位置の区画線が重複して認識された場合に、前記重複して認識された区画線を示すデータを有効と判定することを特徴とする区画線認識装置。
【請求項3】
請求項2に記載の区画線認識装置において、
前記認識部は、各フレームにおいて前記自車両から所定距離以上離れた前記道路上の進行方向の区画線を認識することを特徴とする区画線認識装置。
【請求項4】
請求項1に記載の区画線認識装置において、
前記路面情報取得部はさらに、
前記判定部で有効と判定された前記道路上の同じ位置の区画線を示すデータを区画線情報として記憶部に記録する記録部を含むことを特徴とする区画線認識装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の区画線認識装置において、
前記車載検出器は、ライダであることを特徴とする区画線認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行する道路の区画線を認識する区画線認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、ライダから出力されたスキャンデータのうち、通常の道路上と比較して反射率が高い白線上で得られた反射強度の高いデータを抽出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ライダから離れた遠方の路面では反射角度が浅くなるため、遠方の路面からのデータが得られにくくなる。また、白線部分の面積は小さいため、遠方の路面の白線のデータは1点または2点程度と少なく、ノイズとの識別が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である区画線認識装置は、自車両の周囲に電磁波を照射して周囲の外界状況を時系列に検出する車載検出器と、車載検出器による複数フレームの検出データに基づいて、自車両が走行する道路の路面情報を取得する路面情報取得部と、を備える。車載検出器は、走行する道路上の異なる位置からそれぞれ、1フレームの検出データとしてマトリクス状の複数の検出点毎の距離情報を含む3次元点群データを取得し、路面情報取得部は、検出データに基づいて、フレーム毎の道路上の進行方向の区画線を路面情報として認識する認識部と、道路上の同じ位置の区画線が連続する所定数のフレームで重複して認識されると、重複して認識された区画線を示すデータを有効と判定する判定部と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、路面の区画線を精度よく認識することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1B】ライダによる検出データの一例を示す模式図。
【
図2】車両制御装置の要部構成を概略的に示すブロック図。
【
図3A】3次元座標系を用いて3次元空間の点群データの位置を表す図。
【
図3B】3次元空間から2次元のX-Y空間への点群データの写像を説明する図。
【
図4B】立体物に対応するグリッドを除去した後のグリッドを示す模式図。
【
図5A】時系列に得られた
図4Bに対応するグリッドを示す模式図。
【
図5B】時系列に得られた
図4Bに対応するグリッドを示す模式図。
【
図5C】時系列に得られた
図4Bに対応するグリッドを示す模式図。
【
図5D】時系列に得られた
図4Bに対応するグリッドを示す模式図。
【
図5E】時系列に得られた
図4Bに対応するグリッドを示す模式図。
【
図6A】オフセット処理したグリッドを示す模式図。
【
図6B】オフセット処理したグリッドを示す模式図。
【
図6C】オフセット処理したグリッドを示す模式図。
【
図6D】オフセット処理したグリッドを示す模式図。
【
図6E】オフセット処理したグリッドを示す模式図。
【
図8】
図2のコントローラの演算部で実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して発明の実施の形態について説明する。
発明の実施の形態に係る区画線認識装置は、自動運転機能を有する車両、すなわち自動運転車両に適用することができる。なお、本実施の形態に係る区画線認識装置が適用される車両を、他車両と区別して自車両と呼ぶことがある。自車両は、内燃機関(エンジン)を走行駆動源として有するエンジン車両、走行モータを走行駆動源として有する電気自動車、エンジンと走行モータとを走行駆動源として有するハイブリッド車両のいずれであってもよい。自車両は、ドライバによる運転操作が不要な自動運転モードでの走行だけでなく、ドライバの運転操作による手動運転モードでの走行も可能である。
【0009】
自動運転車両は、自動運転モードでの走行(以下、自動走行または自律走行と呼ぶ)時に、ライダ(LiDAR:Light Detection and Ranging)やカメラ等の車載検出器の検出データに基づき自車両の周囲の外界状況を認識する。自動運転車両は、その認識結果に基づいて、現時点から所定時間より先の走行軌道(目標軌道)を生成し、目標軌道に沿って自車両が走行するように走行用アクチュエータを制御する。
【0010】
図1Aは、自動運転車両である自車両101が道路RDを走行する様子を示す図である。
図1Bは、自車両101に搭載され、自車両101の進行方向に向けられたライダにより得られた検出データの一例を示す模式図である。ライダによる計測点(検出点と呼んでもよい)は、照射したレーザが物体の表面のある1点で反射して戻ってくる点情報である。点情報は、レーザ源からその点までの距離と、反射して戻ってきたレーザの強度と、レーザ源とその点との相対速度とを含む。また、
図1Bに示すような複数の検出点で構成されるデータを、点群データと呼ぶ。
図1Bには、
図1Aの物体のうち、ライダの視野(Field of view;以下FOVと呼ぶ)に含まれる物体の表面の検出点に基づく点群データが示されている。FOVは、例えば、自車両101の水平方向(道路幅方向と呼んでもよい)に120 deg、鉛直方向(上下方向と呼んでもよい)に40 degとしてもよい。FOVの値は、自車両101の仕様に基づいて適宜変更して構わない。自車両101は、
図1Bに示すような点群データに基づいて車両周囲の外界状況、より具体的には車両周囲の道路構造および物体等を認識し、その認識結果に基づいて目標軌道を生成する。
【0011】
ところで、ライダによる点群データから道路の区画線としての白線を検知する場合、白線部分の反射強度が路面の反射強度よりも強い特性を利用して、所定の強度閾値に基づいて白線によるデータと路面によるデータとを分離する手法が一般的である。
この手法では、より遠方における白線を検出しようとすると、白線幅が10~15cm程度と細いためにライダで計測される点情報の数が減少してしまい、白線のデータとノイズデータとの分離が難しい。
そのため、上記の点を考慮して、実施の形態では以下のような区画線認識装置を構成する。
【0012】
<概要>
実施の形態に係る区画線認識装置は、道路RDを走行する自車両101のライダから自車両101の進行方向に電磁波の一例としての照射光を間欠的に照射し、道路RD上の異なる位置で離散的に点群データを取得する。ライダのFOVは、自車両101が高速道路を走行する場合にも、少なくとも連続する5フレームにおいて重複する路面のデータを含むように構成されている。つまり、走行する自車両101のライダが道路RD上の異なる位置でそれぞれ取得した5フレームの点群データには、道路RDの同じ区間の路面のデータが含まれる。
これにより、連続する5フレームの点群データのうち道路RD上の同じ位置として計測されたデータのみを累積することで、白線データとノイズデータとを適切に分離することを可能にする。なお、5フレームは一例であり、フレーム数は適宜変更して構わない。
このような区画線認識装置について、さらに詳細に説明する。
【0013】
<車両制御装置の構成>
図2は、区画線認識装置を含む車両制御装置100の要部構成を示すブロック図である。この車両制御装置100は、コントローラ10と、通信ユニット1と、測位ユニット2と、内部センサ群3と、カメラ4と、ライダ5と、走行用のアクチュエータACとを有する。また、車両制御装置100は、車両制御装置100の一部を構成する区画線認識装置としての外界認識装置50を有する。外界認識装置50は、カメラ4やライダ5等の車載検出器の検出データに基づいて、車両周囲の外界状況を認識する。
【0014】
通信ユニット1は、インターネット網や携帯電話網等に代表される無線通信網を含むネットワークを介して図示しない各種サーバと通信し、地図情報、走行履歴情報および交通情報等を定期的に、あるいは任意のタイミングでサーバから取得する。ネットワークには、公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域毎に設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。取得した地図情報は、記憶部12に出力され、地図情報が更新される。測位ユニット(GNSSユニット)2は、測位衛星から送信された測位用の信号を受信する測位センサを有する。測位衛星は、GPS衛星や準天頂衛星等の人工衛星である。測位ユニット2は、測位センサが受信した測位情報を利用して、自車両101の現在位置(緯度、経度、高度)を測定する。
【0015】
内部センサ群3は、自車両101の走行状態を検出する複数のセンサ(内部センサ)の総称である。例えば内部センサ群3には、自車両101の車速(走行速度)を検出する車速センサ、自車両101の前後方向の加速度および左右方向の加速度(横加速度)をそれぞれ検出する加速度センサ、走行駆動源の回転数を検出する回転数センサ、自車両101の重心の鉛直軸回りの回転角速度を検出するヨーレートセンサ等が含まれる。手動運転モードでのドライバの運転操作、例えばアクセルペダルの操作、ブレーキペダルの操作、ステアリングホイールの操作等を検出するセンサも内部センサ群3に含まれる。
【0016】
カメラ4は、CCDやCMOS等の撮像素子を有して自車両101の周辺(前方、後方および側方)を撮像する。ライダ5は、照射光に対する散乱光を受信して自車両101から周辺の物体までの距離、物体の位置、形状等を測定する。
【0017】
アクチュエータACは、自車両101の走行を制御するための走行用アクチュエータである。走行駆動源がエンジンである場合、アクチュエータACには、エンジンのスロットルバルブの開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータが含まれる。走行駆動源が走行モータである場合、走行モータがアクチュエータACに含まれる。自車両101の制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータと転舵装置を駆動する転舵用アクチュエータもアクチュエータACに含まれる。
【0018】
コントローラ10は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。より具体的には、コントローラ10は、CPU(マイクロプロセッサ)等の演算部11と、ROM、RAM等の記憶部12と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。なお、エンジン制御用ECU、走行モータ制御用ECU、制動装置用ECU等、機能の異なる複数のECUを別々に設けることができるが、
図2では、便宜上、これらECUの集合としてコントローラ10が示される。
【0019】
記憶部12は、高精度の詳細な地図情報(高精度地図情報と呼ぶ)を記憶することが可能である。高精度地図情報には、道路の位置情報、道路形状(曲率等)の情報、道路の勾配の情報、交差点や分岐点の位置情報、車線(走行レーン)数の情報、車線の幅員および車線毎の位置情報(車線の中央位置や車線位置の境界線の情報)、地図上の目印としてのランドマーク(信号機、標識、建物等)の位置情報、路面の凹凸等の路面プロファイルの情報が含まれる。また、記憶部12は、後述する2次元マップ情報の他、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報、ライダ5等の車載検出器に対する設定情報を記憶することも可能である。
【0020】
演算部11は、機能的構成として、認識部111と、判定部112と、記録部113と、走行制御部114とを有する。なお、
図2に示すように、認識部111、判定部112、および記録部113は、区画線認識装置としての外界認識装置50に含まれる。外界認識装置50は、上述したように、カメラ4やライダ5等の車載検出器の検出データに基づいて車両周囲の外界状況を認識する。外界認識装置50に含まれる認識部111、判定部112、および記録部113の詳細については後述する。
【0021】
走行制御部114は、自動運転モードにおいて、外界認識装置50で認識された車両周囲の外界状況に基づいて目標軌道を生成し、その目標軌道に沿って自車両101が走行するようにアクチュエータACを制御する。なお、手動運転モードでは、走行制御部114は、内部センサ群3により取得されたドライバからの走行指令(ステアリング操作等)に応じてアクチュエータACを制御する。
【0022】
ライダ5について、さらに説明する。
<検出領域>
ライダ5は、走行時に注視すべき領域をFOVに含むように、自車両101の前方に向けて取付けられている。ライダ5は、照射光を照射した立体物等で散乱された光を受信するので、ライダ5のFOVが照射光の照射範囲および検出領域に対応する。つまり、照射範囲内の照射点が検出領域内の検出点に対応する。
実施の形態では、路面の凹凸、段差、うねり等を含む路面形状と、道路RD上に存在する立体物(道路RDに関連する設備等(信号機、標識、溝、壁、柵、ガードレール等))と、道路RD上の物体(他車両および路面の障害物を含む)と、路面に設けられた区画線と、を含めて立体物等と呼ぶ。区画線は、白線(黄色等の色違いの線を含む)、縁石線、道路鋲等を含むものとし、レーンマーク(Lane mark)と呼んでもよい。また、立体物等のうちあらかじめ検出対象として設定されたものを検出対象と呼ぶ。
【0023】
<座標系の例示>
外界認識装置50が行う以下の処理は、主として演算部11が行う。
図3Aは、3次元座標系を用いて3次元空間の点群データの位置を表す図である。
図3Aにおいて、x軸プラス方向が自車両101の進行方向に、y軸プラス方向が自車両101の水平方向左方に、z軸プラス方向が鉛直方向上方に、それぞれ対応する。
また、データPの位置のx軸成分を奥行距離Xと呼び、データPの位置のy軸成分を水平距離Yと呼び、データPの位置のz軸成分を高さZと呼ぶ。
ライダ5で計測される距離、換言すると、ライダ5から検出対象としての物体上の点までの距離をDとすると、データPの位置を示す座標(X,Y,Z)は以下の式で算出される。
X=D×cosθ×cosφ (1)
Y=D×sinθ×cosφ (2)
Z=D×sinφ (3)
なお、角度θを水平投光角度と呼び、角度φを鉛直投光角度と呼ぶ。水平投光角度θおよび鉛直投光角度φは、演算部11によってライダ5に設定される。
ライダ5のFOVが水平方向に120 degの場合、水平投光角度θは0~120 degの範囲で、例えば0.05 deg間隔で設定される。また、ライダ5のFOVが鉛直方向に40 degの場合、鉛直投光角度φは0~40 degの範囲で、例えば0.05 deg間隔で設定される。このように、FOVに対しマトリクス状の複数の検出点が設定可能に構成されている。
【0024】
<2次元空間へ変換>
図3Bは、3次元空間から2次元のX-Y空間への点群データの写像を説明する図である。実施の形態では、道路RDの2次元マップを生成するため、点群データを構成するデータ毎に3次元空間のデータPからX-Y空間のデータP´へ写像する。この写像により、3次元の点群データがX-Y空間の2次元の点群データへ変換される。X-Y空間では高さZを示す情報が省かれ、奥行距離Xおよび水平距離Yの情報が残る。
【0025】
<立体物のデータを除去>
次に、X-Y空間を所定のサイズ(例えば50cm四方)のグリッドで区切り、各グリッドに含まれているデータP´の数をカウントする。
図4Aは、点群データを含むグリッドを示す模式図である。
図4Aにより、グリッド毎の位置データ(奥行距離X、水平距離Y)が示される。なお、実際のデータP´に基づくグリッド数は、図示した数よりもはるかに多い。
さらに、
図4Aに示すグリッドから立体物のデータP´を含むグリッドを分離、除外する。具体的には、一つのグリッドに含まれているデータP´のカウント数があらかじめ定めた所定値以上である場合は、そのグリッドを立体物のデータP´を含むグリッドとして除去する。例えば、自車両101に近い壁、柵、ガードレール等の静止物は同一のグリッドに含まれるデータP´の数が多いので除去される。また、移動する物体の中で4輪車等はデータP´の数が多いので除去される。これにより、主に路面のデータP´を含むXとYのグリッドデータが得られる(換言すると、除去されずに残る)。
図4Bは、立体物に対応するグリッドを分離、除外後のグリッドを示す模式図である。なお、立体物除去は上記方法に限ることなく、その他の立体物除去の手法を用いても良い。
【0026】
<時系列のデータを比較>
図5A~
図5Eは、時系列に得られた
図4Bに対応するグリッドを示す模式図である。換言すると、連続して得られた複数フレーム(例えば5フレーム)の3次元の点群データに基づいてそれぞれ得られる、路面のデータP´に対応するグリッドを示す模式図である。
図5Aが4フレーム前の点群データに基づいて得られるグリッドを示し、
図5Bが3フレーム前の点群データに基づいて得られるグリッドを示す。以下同様に、
図5Eが最新フレームの点群データに基づいて得られるグリッドを示す。
図5A~
図5Eにおけるグリッドの位置は、移動中の自車両101(ライダ5)から見た相対座標位置である。
【0027】
<オフセット処理>
図6A~
図6Eは、時系列に得られた
図5A~
図5Eのグリッドの位置を、自車両101の走行ベクトルに基づいてオフセット処理したグリッドを示す模式図である。換言すると、連続して得られた複数フレーム(例えば5フレーム)のそれぞれの路面のデータP´に対応するグリッドの位置を、最新フレームの相対座標位置を絶対座標としたときに、その他のフレームの相対座標位置を上記の絶対座標位置に変換した後のグリッドを示す模式図である。
図6Aが4フレーム前の点群データに基づいて得られるグリッドを示し、
図6Bが3フレーム前の点群データに基づいて得られるグリッドを示す。以下同様に、
図6Eが最新フレームの点群データに基づいて得られるグリッドを示す。
図6A~
図6Eにおけるグリッドの位置は、自車両101(ライダ5)の移動ベクトルを除外した、最新フレームの相対座標位置を絶対座標としたときの絶対座標位置である。オフセット処理後のデータをデータP´´とする。
【0028】
<ノイズカット処理>
実施の形態では、上述したように立体物のデータP´に対応するグリッドを除去したことにより、
図6A~
図6Eに含まれるデータP´´の数は、ライダ5で検出されたデータPの数よりも少ない。立体物を除去した後のデータが残っているため、主に路面データや白線データ、高さが微小な凹凸、などである。具体例として、白線幅を10cm、ライダ5の水平方向の角度分解能を0.05 degとする場合、自車両101から100m離れた白線(またはサイズが約10cmの静止物体)に対応するデータP´´の数は、1点または2点程度である。
演算部11は、グリッド内の1点または2点の白線に対するデータP´´と、ノイズとを分離するための判定処理をグリッド毎に行う。
実施の形態では、オフセット処理後の直近の5フレームのうちの少なくとも3フレームにおいてグリッドの絶対位置が重複する場合に、演算部11はそのグリッドが有効(換言すると、ノイズデータのグリッドでない)であると判定する。そして、演算部11はそのグリッドに含まれている、オフセット処理後のデータP´´を累積処理する。なお、グリッドの絶対位置が重複する3フレームは、直近の5フレームの中で必ずしも連続している必要はない。
一方、直近の5フレームにおいてグリッドの絶対位置が重複するフレームが2フレーム以下である場合に、演算部11はそのグリッドが無効(換言すると、ノイズデータのグリッドである)であると判定する。そして、演算部11はそのグリッドを除去する。例えば、移動する他車両の一部のデータが立体物として除去しきれていなかった場合、そのようなデータP´´を含むグリッドは、フレーム間で絶対位置が重複しないので除去される。
図7A~
図7Eは、ノイズカット処理を説明する模式図である。
図7A~
図7Eの例では、
図7Eにおいて破線で囲むグリッドの絶対位置は、
図7A~
図7Dにおいても同じであることから、複数フレームの間でグリッドの絶対位置が重複する。そのため、演算部11は破線内の4グリッド(フレームの間で絶対位置が重複しているグリッド)を有効として残し、他のグリッドは無効として除去する。
なお、上述したノイズカット処理では、白線幅(約10cm)と同等のサイズを有する静止物体に対するデータP´´を含むグリッドも有効と判定して残すことが可能である。 また、前述の5フレーム間の重複を判断基準とする方法以外にも下記のようなノイズ除去の方法でもよい。すなわち、5フレームのグリッドマトリクスデータに対しP´´カウント数をグリッド毎に累積総和をとり一つのグリッドマトリクスデータにまとめる。そのグリッドデータに対して、画像処理で一般的なガウシアンフィルタなどのノイズカットフィルタ処理を行う。その後にグリッド内のデータ点数で閾値以下をノイズとして除去する。
【0029】
<外界認識装置の構成>
外界認識装置50の詳細について説明する。
上述したように、外界認識装置50の演算部11は、認識部111、判定部112および記録部113と、ライダ5を含む。
<認識部>
認識部111は、ライダ5のFOVにおいて検出される時系列の検出データを用いて3次元の点群データを生成する。
また、認識部111は、ライダ5による検出データに基づいて道路RD上の進行方向の道路構造をフレーム毎の路面情報として認識する。
認識部111による道路構造の認識の一例について説明する。認識部111は、生成した点群データに含まれる、進行方向である前方の道路RDの縁石、壁、溝、ガードレールまたは区画線を道路RDの境界線RL、RB(
図1A)として認識し、境界線RL、RBで示される進行方向の道路構造を認識する。上述したように、区画線は白線(色違いの線を含む)、縁石線、道路鋲等を含み、これら区画線による標示によって道路RDの走行レーンが規定される。
【0030】
判定部112は、認識部111による区画線の認識が有効か否かを判定する。判定部112は、上述したように、道路RD上の同じ位置の区画線が連続する所定数のフレームで重複して認識されると、重複して認識された区画線を示すデータP´´を有効と判定する。判定部112で有効判定されたグリッド内のデータP´´は、演算部11によって累積処理される。
【0031】
<位置データの生成>
外界認識装置50は、ライダ5でリアルタイムに測定された時系列の点群データに基づいて検出した立体物等の位置を示すデータを、上記X-Yの2次元マップ上にマッピングして一続きとなる位置データを生成することができる。
演算部11は、記憶部12に記憶されている2次元マップ上の立体物等の位置情報を取得し、自車両101の移動速度と移動方向(例えば方位角)から上記立体物等の相対位置を自車両101の位置を中心に座標変換して算出する。演算部11は、測定により点群データがライダ5で取得される毎に、取得された点群データに基づく立体物等の相対位置を自車両101の位置を中心に座標変換して2次元マップ上に記録してもよい。
【0032】
<フローチャートの説明>
図8は、あらかじめ定められたプログラムに従い
図2のコントローラ10の演算部11が実行する区画線検出処理の一例を示すフローチャートである。
図8のフローチャートに示す処理は、例えば、自車両101が自動運転モードで走行中に所定周期毎に繰り返される。
【0033】
まず、ステップS10において、演算部11は、ライダ5によって検出された過去5フレームの点群データを取得(記憶部12内のRAMの作業領域に展開)してステップS20へ進む。
ステップS20において、演算部11は、過去5フレームの点群データのそれぞれから、奥行方向で近傍のデータを除去する。具体的には、過去5フレームの点群データのそれぞれにおいて、自車両101から所定距離(例えば50m)以内のデータを除去してステップS30へ進む。演算部11は、過去5フレームの点群データをそれぞれ上述したX-Y空間の2次元の点群データへ変換した上で、X-Y空間において自車両101から50m以内のデータを除去してもよい。
【0034】
ステップS20で自車両101から近傍のデータを除去する理由は以下の通りである。一般に、カメラ4は近距離においてライダ5よりも分解能の点において優れており、ライダ5はカメラ4に比べて距離計測精度、相対速度計測精度の点において優れている。そのため、自車両101から近距離の路面についてはカメラ4に路面状況の検出を担わせる。なお、近距離としての50mは一例であり、カメラ4の仕様等に基づいて適宜変更して構わない。
【0035】
ステップS30において、演算部11は、認識部111により、立体物のデータを除去させてステップS40へ進む。認識部111は、上述したようにX-Y空間におけるグリッドに含まれているデータP´のカウント数があらかじめ定めた所定値以上のグリッドを、立体物のデータP´を含むグリッドとして除去する。
ステップS30の処理は、立体物のデータP´を分離、除外することによって、主として路面のデータP´を残すために行うものである。データP´が立体物等に対応するか、主として路面に対応するかの判定手法は、他の手法を用いてもよい。
【0036】
ステップS40において、演算部11は、認識部111により、各フレームに対してオフセット処理を行ってステップS50へ進む。より具体的には、認識部111が、過去5フレームの点群データのそれぞれにおいて、路面のデータP´に対応するグリッドの位置を、絶対座標における位置のデータP´´に変換する。
【0037】
ステップS50において、演算部11は、判定部112により、過去5フレームの中で3フレーム以上、グリッドの位置が重複するか否かをグリッド毎に判定する。この判定は、オフセット処理後のグリッド内のデータP´´が、検出データとして有効(換言すると、ノイズデータでない)か否(換言すると、ノイズデータである)かを判定することと等価である。判定部112は、直近の5フレームのうちの少なくとも3フレームにおいてグリッドの絶対位置が重複する場合に、ステップS50を肯定判定してステップS60へ進む。判定部112は、直近の5フレームの中でグリッドの絶対位置が重複するフレームが2フレーム以下である場合に、ステップS50を否定判定してステップS70へ進む。また、ノイズ除去は、5フレームにおけるグリッド内のデータ点数の累積総和に対して、ガウシアンフィルタ処理などを用いたノイズ除去を用いても良い。
【0038】
ステップS60において、演算部11は、重複する位置のデータP´´を累積してステップS80へ進む。具体的には、絶対位置が重複するグリッドに含まれたデータP´´を累積する。累積したデータP´´の位置は、記録部113によって記憶部12に記録してもよい。
【0039】
ステップS70において、演算部11は、重複しない位置のデータP´´を除去してステップS80へ進む。具体的には、絶対位置が重複しないグリッドに含まれたデータP´´を除去してステップS80へ進む。
【0040】
ステップS80において、演算部11は、処理を終了するか否かを判定する。演算部11は、自車両101が自動運転モードでの走行を継続中の場合は、ステップS80を否定判定してステップS10へ戻り、上述した処理を繰り返す。ステップS10へ戻ることにより、自車両101の走行中に点群データに基づく立体物等の測定が周期的に繰り返し行われることとなる。一方、演算部11は、自車両101が自動運転モードでの走行を終了した場合は、ステップS80を肯定判定して
図8による処理を終了する。
【0041】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
(1)区画線認識装置としての外界認識装置50は、自車両101の周囲に電磁波としての照射光を照射して周囲の外界状況を時系列に検出する車載検出器としてのライダ5と、ライダ5による複数フレームの検出データに基づいて、自車両101が走行する道路RDの路面情報を取得する路面情報取得部としての演算部11と、を備える。
ライダ5は、走行する道路RD上の異なる位置からそれぞれ、1フレームの検出データとしてマトリクス状の複数の検出点毎の距離情報を含む3次元点群データを取得する。演算部11は、検出データに基づいて、フレーム毎の道路RD上の進行方向の区画線を路面情報として認識する認識部111と、道路RD上の同じ位置の区画線が連続する所定数(例えば5)のフレームで重複して認識されると、重複して認識された区画線を示すデータを有効と判定する判定部112と、を含む。
このように、フレーム間で位置の重複が見られたデータを有効とし、位置の重複が見られなかったデータを有効としない構成にしたことにより、区画線のように路面で静止している(換言すると、路面に固定されている)物体のデータは、フレーム間で道路RD上の位置が一致するため有効とされ、ノイズデータおよび移動する物体のデータは、フレーム間で道路RD上の位置が一致しないため、有効とされない。この結果、路面の区画線を精度よく認識することが可能になる。
演算部11はさらに、複数のフレームで有効と判定されたデータを累積してもよい。累積処理を行うことで、一つのフレームにおいては1点ないし2点のデータであっても、累積することによって区画線として認識しやすくなる。
【0042】
(2)上記(1)の外界認識装置50において、ライダ5は、連続する第1所定数としての5フレームにそれぞれ道路RD上の同じ位置を含むように外界状況を検出し、判定部112は、5フレームのうちの第1所定数よりも小さい第2所定数(例えば3)以上のフレームで道路RD上の同じ位置の区画線が重複して認識された場合に、重複して認識された区画線を示すデータを有効と判定する。
このように構成したので、例えば、自車両101の前方を走行する他車両により、5フレームのうちの1ないし2フレームにおいて検出対象としている区画線が遮蔽されてライダ5で検出されなかったとしても、区画線が遮蔽されずに検出されたフレーム間で重複が見られたデータを有効とする判定処理を適切に行うことが可能になる。この結果、路面の区画線を精度よく認識することが可能になる。
【0043】
(3)上記(2)の外界認識装置50において、認識部111は、各フレームにおいて自車両101から所定距離(例えば50m)以上離れた道路RD上の進行方向の区画線を認識する。
このように構成したので、白線部分の反射強度が路面の反射強度よりも強い特性を利用した、例えば所定の強度閾値に基づいて白線によるデータと路面によるデータとを分離する従来の手法が適さない、自車両101から離れた遠方の路面の区画線を精度よく認識することが可能になる。
【0044】
(4)上記(1)の外界認識装置50において、演算部11はさらに、判定部112で有効と判定された道路RD上の同じ位置の区画線を示すデータを区画線情報として記憶部12に記録する記録部113を含む。
このように構成したので、複数のフレームで有効と判定されたデータの累積処理を適切に行うことが可能になる。一つのフレームにおいては1点ないし2点のデータであっても、累積することによって区画線として認識しやすくなる。
【0045】
上記実施の形態は、種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。
(変形例1)
上述した実施の形態では、区画線認識装置としての外界認識装置50が立体物のデータを除外する場合において、3次元空間から2次元のX-Y空間へ変換した点群データを所定サイズのX-Yグリッドに区切り、グリッド内のデータP´の数があらかじめ定めた所定値以上では、そのグリッドを立体物のデータP´を含むグリッドとして除去した。
この代わりに、X-Yグリッドに区切ることなく、X-Y空間においてあらかじめ定めた所定距離内にあらかじめ定めた所定値以上の数のデータP´が存在する場合に、これらの複数のデータP´が立体物のデータであると判定し、立体物のデータであると判定した複数のデータP´を除去してもよい。
【0046】
(変形例2)
上述した実施の形態では、区画線認識装置としての外界認識装置50がノイズカット処理を行う場合において、3次元空間から2次元のX-Y空間へ変換した点群データを所定サイズのX-Yグリッドに区切り、グリッド内の1点または2点の白線(または静止物体)に対するオフセット処理後のデータP´´と、ノイズデータとを分離するための判定処理をグリッド毎に行った。
この代わりに、X-Yグリッドに区切ることなく、X-Y空間におけるデータP´´の位置をそのまま用いてフレーム間で位置座標を比較してもよい。その結果、あらかじめ定めた所定距離内にデータP´´が存在している場合にこれらの複数のデータP´´の位置が重複すると判断し、データP´´が有効(換言すると、ノイズデータでない)と判定する。反対に、あらかじめ定めた所定距離内にデータP´´が存在せず、複数のデータP´´の位置が重複するといえない場合は、データP´´が無効(換言すると、ノイズデータである)と判定する。
【0047】
(変形例3)
上述した実施の形態では、外界認識装置50が、例えば50mよりも遠方の路面状況をライダ5に検出させる例を説明した。この代わりに、カメラ4の有無またはカメラ4の性能にかかわらず、自車両101の近傍から遠方までの路面状況をライダ5に検出させる構成にしてもよい。
【0048】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施の形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施の形態と変形例の一つあるいは複数を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 通信ユニット、2 測位ユニット、3 内部センサ群、4 カメラ、5 ライダ、10 コントローラ、11 演算部、12 記憶部、50 外界認識装置、100 車両制御装置、101 自車両、111 認識部、112 判定部、113 記録部、114 走行制御部、AC アクチュエータ