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特開2024-102533マイクロ流路デバイスおよび観察領域へのナビゲートシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102533
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】マイクロ流路デバイスおよび観察領域へのナビゲートシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20240724BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G02B21/34
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006485
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠午
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 紘子
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕一郎
【テーマコード(参考)】
2H052
4B029
【Fターム(参考)】
2H052AD16
2H052AE05
2H052AE13
2H052AF14
2H052AF21
2H052AF25
4B029AA07
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】本発明は、観察者が観察を行う際に、観察位置に移動するための情報を容易に得ることができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のマイクロ流路デバイスの一つは、流路を観察可能なマイクロ流路デバイスであって、前記流路の観察領域に方向を示すパターンが配置されている、ことを特徴とする。前記パターンは、流路を構成する第1基板または第2基板のいずれか一方の面から前記流路の内部に向かって所定形状で突出した突起物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を観察可能なマイクロ流路デバイスであって、
前記流路の観察領域に方向を示すパターンが配置されている、
ことを特徴とするマイクロ流路デバイス。
【請求項2】
前記パターンは、
流路を構成する第1基板または第2基板のいずれか一方の面から前記流路の内部に向かって所定形状で突出した突起物である、
ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項3】
前記パターンは、配置される位置に基づいて前記パターンの水平方向における向きを変え配置される、ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項4】
前記パターンは、円弧形状とL字形状と三角形状のうちのいずれかの形状を有している、ことを特徴とする請求項3に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項5】
前記パターンが形成された領域であるパターン領域は、前記観察領域を除いた前記流路のうち50%以下の範囲に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項6】
前記パターンは、前記流路において見かけの接触角を変化させる、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項7】
前記流路のうち前記パターンが形成された領域における見かけの接触角は、85度以上である、ことを特徴とする請求項6に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項8】
前記マイクロ流路デバイスは、
前記流路に試料を導入するための導入口と、
前記流路から試料を排出するための排出口と、を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項9】
撮像装置、制御装置、表示装置からなり、観察領域を有するマイクロ流路デバイスの前記観察領域へのナビゲートシステムであって、少なくとも下記手段を備えるナビゲートシステム。
a.前記撮像装置によって前記マイクロ流路デバイスの画像を取得する手段
b.前記観察領域の方向を示すパターンを抽出する手段
c.前記パターンの回転角度を算出する手段
d.c.で求めた前記回転角度の平均値を求める手段
e.d.で求めた前記回転角度の平均値から前記表示装置に表示する角度画像を決定する手段
f.e.で決定した前記角度画像を前記表示装置に表示する手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流路デバイスおよび観察領域へのナビゲートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1μmから1mm程度の毛管寸法のマイクロ流路やマイクロウェルを含むマイクロ構造によって微小容量の流体を操作できる、Lab-on-a-Chipもしくは、マイクロTAS、マイクロ化学チップなどと呼ばれるマイクロ流路デバイスの開発が進んでいる。マイクロ流路デバイスの一形態として、凹溝からなる流路を形成し、この流路の一端に貫通孔からなる導入口を設けるとともに、流路の他端に貫通孔からなる排出口を設けた構造のマイクロ流路デバイスが提唱されている。
【0003】
このような構造を有するマイクロ流路デバイスにおいては、導入口を通じて、流路内に検出対象の検体を含む試験液が導入される。この検体分析で対象となる検体は、例えば動物の体液、例えば、血液や唾液、尿などが挙げられる。体液内にはタンパク質や細胞などの生物由来の物質が含まれており、マイクロ流路デバイス内にこれらの物質を導入し、温度や電場、磁場、光、音波、空圧、毛細管力などのエネルギーが加わることによって物質の分離、合成、形態変化などの各種反応が起こる現象を光学顕微鏡等で観察することで、検体の分析を行うことができる。
【0004】
マイクロ流路デバイスを光学顕微鏡等の拡大倍率で精緻に観察する場合、顕微鏡の視野と、マイクロ流路デバイスとのアライメントを取ることが重要である。特許文献1では、顕微鏡装置の結合光学系の視野に対する位置情報を求めるために位置情報の指標となる模様を付したプレパラートを用いる手法が開示されている。また、特許文献2では、顕微鏡を用いて被検査物を観察するための顕微鏡観察用容器に被検査物を支持する板状部を備え、この板状部に位置を識別するための目印を配置することで、観察中の位置を容易に特定するための手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-036969号公報
【特許文献2】特開2009-237277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先行技術文献による手法では、特許文献1における位置情報の指標となる模様または特許文献2における位置を識別するための目印に関する情報を事前に把握しておかなければならず、直感的な操作をすることが難しいという課題があった。
本発明は、これらの課題を鑑みて発明されたものであり、観察者が観察を行う際に、観察対象の位置に関する情報を容易に得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のマイクロ流路デバイスの一つは、流路の観察領域に方向を示すパターンが配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、観察者がマイクロ流路デバイス内を流動する検体の観察を行う際に、観察対象の位置に関する情報を容易に得ることができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るマイクロ流路デバイスを示す図である。
図2図2は、マイクロ流路デバイスの流路を拡大して示す図である。
図3図3は、方向を示すパターンの三面図を示す図である。
図4図4は、マイクロ流路デバイスの製造方法を示す図である。
図5図5は、マイクロ流路デバイスの製造方法を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係るナビゲートシステムの構成を示す図である。
図7図7は、記憶装置に記憶されるテンプレート画像情報を示す図である。
図8図8は、撮像装置によって取得された画像データを示す図である。
図9図9は、テンプレート画像との比較をするための画像を画像データから抽出する方法を示す図である。
図10図10は、マッチング係数の一例を示す図である。
図11図11は、表示装置に示される画像の一例を示す図である。
図12図12は、ナビゲートシステムの制御フローチャートを示す図である。
図13図13は、ナビゲートシステムの制御フローチャートを示す図である。
図14図14は、表示装置に示される画像の一例を示す図である。
図15図15は、第3実施形態に係るパターンマッチングを説明する図である。
図16図16は、回転角度を求めるその他の方法を示す図である。
図17図17は、ナビゲートシステムの制御フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
また、同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
[第1実施形態]
(マイクロ流路デバイスの構成)
図1を参照して、マイクロ流路デバイス1の構成を説明する。図1は、実施形態に係るマイクロ流路デバイス1を示す図である。図1(a)はマイクロ流路デバイス1の平面図である。また、図1(b)はマイクロ流路デバイス1のAA断面図であり、図1(c)はマイクロ流路デバイス1のBB断面図である。
【0012】
図1(a)は、マイクロ流路デバイス1を顕微鏡等の観察装置の試料台に載置した状態と同じ状態を示している。流路11の一方の端部には導入口10が設けられ、他方の端部には排出口12が設けられている。流路11において形成されているパターン14が形成された領域については後述する。
【0013】
マイクロ流路デバイス1は、流路を観察可能としている。図1(b)に示されるように、マイクロ流路デバイス1は、矩形の平面形状を有する第1基板20と、同じく矩形の平面形状を有する第2基板22とを、隔壁層21を介して貼り合わせて形成される。第1基板20と第2基板22の材料は、マイクロ流路デバイスの用途や製造方法により各種選択される。例えば、流路内で細胞・細菌培養を実施する際は、細胞・細菌の観察のための透明性や、培養に用いる培地に対する耐薬品性、細胞・細菌の生体適合性をもつポリジメチルシロキサン(以下、「PDMS」という)やポリプロピレン、ガラスなどが選択されるが、これに限定されない。
【0014】
なお、ここでは第1基板20は単一の基板であるように示されているが、構成はこれに限定されない。第1基板20は、マイクロ流路デバイス1の製造方法によって、例えば第1―1基板、第1―2基板のように、2以上の複数の基板を含む構成も採用し得る。第1―1基板と第1―2基板の材料は、第1基板同様にマイクロ流路デバイスの用途や製造方法により各種選択される。
【0015】
図1(c)に示されるように、流路11は、第1基板20と第2基板22との間に形成され、第1基板20の長辺方向(ここではX方向)に沿って延在する。また、流路11は、第1基板20上にブロック状に形成された複数のパターン14を有する。
【0016】
(パターン領域の構造および特性)
図2および図3を参照して、パターン領域の構造および特性を説明する。図2は、マイクロ流路デバイス1の流路11を拡大して示す図である。図2(a)は流路11の全体を拡大して示す図であり、また図2(b)は流路11のうち特に後述する観察領域15を拡大して示す図である。なお、破線および点線は、説明のために便宜的に付したものである。図3は、方向を示すパターンの三面図を示す図である。
【0017】
図2(a)に示されるように、マイクロ流路デバイス1の流路11には、試験液を貯留させる領域でありかつ撮像デバイスによって観察することが予定される領域である観察領域15が設定されている。また、マイクロ流路デバイス1の流路11において、観察領域15の方向を示すパターン14が配置されている。パターン14は、流路11を構成する第1基板20または第2基板22のいずれか一方の面から流路11の内部に向かって所定形状で突出した突起物である。別の言い方をすると、パターン14は、所定形状を持ち流路11の内部に向かって伸びる突起物である。パターン14は第1基板20上に形成され、Z軸方向における断面は矩形である。なお、以降の説明においては、パターン14が第1基板20に形成される例を示すが、これに限定されない。
【0018】
パターン14のZ軸方向における断面形状は、矩形に限定されず、円形や半円形等も採用し得る。流路の平面形状は、直線型、曲線型、などが挙げられるが、これらに限定されない。マイクロ流路デバイス内の流路は、マイクロ流路デバイスの用途によって複数設けられ得る。
【0019】
そして、パターンは、平面上に配置された角度を一意的に算出できることが望ましい。例えば、パターンの形状は回転対称数NのNが1であるパターン形状であるものが考えられる。ここでは、Z軸方向からみて、円弧形状を有している。その他にも、例えばL字形状や正三角形を除く三角形状などが選択されるが、これに限定されない。図3には、パターンの他の例も示される。第1実施形態におけるパターン14、L字形状のパターン141、三角形状のパターン142である。後述するパターンマッチングを行うことが可能であるように、パターンの形状は適宜選択しうる。
【0020】
また、流路11において、複数のパターン14が形成された領域であるパターン領域16aおよび16bが形成されている。パターン領域16aは観察領域15を囲むように形成されている。パターン領域16aに含まれるパターン14は、配置される位置に基づいてパターンの水平方向(XY平面と平行な方向)における向きを変えて配置されており、また、観察領域15に向けて、円弧形状のうちの特定部分を向けるように配置される。円弧形状のパターン14を中心角側の凹部面14aと円弧の外側の凸部面14bの部分に分ける場合、図2(b)に示されるように、パターン14は、パターン領域16aにおいて、凹部面14aを観察領域15の中心側に向けるように配置される。
【0021】
このように、同一の形状を有するパターンを規則的に配列させることによって、パターンの配列を見た場合に、観察領域15の方向を把握することが可能になる。なお、パターン14の向きはこれに限定されない。凸部面14bを観察領域15に向けるように配列することも可能である。観察領域15の方向を認識することが可能な配列であれば、パターンの形状および配列は他の態様も適用可能である。
【0022】
なお、パターン領域16bは、観察領域15から離れているため、パターン領域16aとは異なる規則性の配列をしている。パターン領域16bにおいては、パターン14は、マイナスX方向に凹部面14aが向くように配置される。
【0023】
パターン14の材質や形状は特に限定されないが、一般的に親水性の状態においては、タンパク質や細胞からなる検体がパターン構造体に付着し、流動を阻害する恐れがある。また、流路11の導入口10から導入された検体を含む試験液が、排出口12に到達したのち、流路11が親水性の特性を有する場合においては、毛細管現象および導入側および排出側の圧力差によって試験液の逆流が起こる恐れがある。これらの影響により、観察領域15を囲むパターン領域16aの部分は疎水性であることが望ましい。パターン14は流路11において見かけの接触角を変化させる機能があり、パターン14の大きさやパターン領域16aにおける密度を調整することによって、見かけの接触角を変化させることができる。このように接触角を変化させて、検体の付着および試験液の逆流を調査した。表1は、パターン領域16aの接触角と、パターン領域16aの検体の付着の有無、試験液の導入口10への逆流の発生の有無、の調査結果を示す。ここで、×が事象が発生したことを示し、〇は事象が発生しなかったことを示す。ここに示されるように、流路11のうちパターン領域16aの接触角が85度以上である場合に正常な流動を示すことが確認された。
【表1】
【0024】
なお、マイクロ流路デバイス1の流路11の幅に対してパターン14が大きすぎると検体の流動を阻害する要因となる。このため、図2(b)のライン幅Dl:スペース幅Dsが1:1で配列されている状態かつ、平面視において、流路11に対してパターン14が占める割合50%以下であること、が望ましい。言い換えると、パターン14が形成された領域であるパターン領域16aおよびパターン領域16bは、観察領域15を除いた流路11のうち50%以下の範囲に形成される。
【0025】
これによって、パターン領域16aにかこまれた観察領域15おいて試験液を貯留させて各種の反応を発生させることができる。また、パターン領域16bにおいて試験液の逆流を抑制することができる。なお、見かけの接触角について説明する。通常の接触角の測定は、平坦なサンプルを用いて行われるものであるが、パターンが形成されるなどして凹凸のあるサンプルでは凹凸形状による影響があって、同一の材質であっても凹凸の有無により測定値が異なるため、凹凸のあるサンプルを用いて測定した接触角は、見かけの接触角という。見かけの接触角は通例的に使用される接触角計を用いて測定することができる。また、接触角の測定方法としては、ヤングラプラス法、楕円法、幅高さ法など、適宜選択しうる。
【0026】
(マイクロ流路デバイスの製造方法)
図4および図5を参照して、マイクロ流路デバイス1の製造方法を説明する。図4および図5は、マイクロ流路デバイス1の製造方法を示す図である。図4および図5に示す工程において、図1における平面図と同じ方向からみた平面図と、図1におけるAA断面図と同じ方向から見た断面図であり、位置を変更したCC断面図を用いて説明する。
【0027】
図4の工程(1)に示されるように、第1基板20にレジスト40で層形成する。このレジストの種類としては、液状の感光性レジストを用いることができる。液状の感光性レジストで層形成する方法としては塗布方式があり、塗布する装置としてはカーテンコーター、スプレーコーターを適宜選択して用いることができる。
また、別のレジストの種類としては、感光性レジストからなるドライフィルムとしてもよく、ドライフィルムのレジスト40はラミネーターで第1基板20に熱圧着することで層形成できる。
【0028】
図4の工程(2)に示されるように、レジスト40からパターン14を形成する。具体的には、工程(1)で塗布したレジスト40から余分なレジストを除去する。レジスト40に感光性レジストを用いた場合、フォトマスクを介して光を照射し感光させ、現像液を用いて余分なレジストを除去する、いわゆるフォトリソグラフィー方式で形成される。
【0029】
なお、パターン14の形成方法としてはフォトリソグラフィー方式だけではなく、インクジェットプリンタを用いてパターン14を直接形成する方法を採用することも可能である。この場合には、感光性レジスト、熱硬化性レジストのいずれかを用いることができる。
【0030】
図4の工程(3)に示されるように、レジスト50を層形成する。レジスト50は工程(1)の場合と同じ、レジストの種類は適宜選択しうる。
【0031】
図5の工程(4)に示されるように、レジスト50のうち余分なレジストを除去する。その結果、レジスト50が除去された部分が流路11となり、レジスト50が残った部分が隔壁層21となる。
【0032】
図5の工程(5)に示されるように、導入口10および排出口12を予め形成した第2基板22を、隔壁層21との間に図示しない接着層を設けて、第1基板20に接着する。
【0033】
リソグラフィ工程を2回にすることで、パターン14と隔壁層21のレジストの種類を変えることができ、また、流路11の高さ(Z軸方向における長さ)とパターン14の高さを調整することができる。これによって、用いる試料等ごとに適した材料を用いることができ、また流路11における見かけの接触角を調整することが可能となる。なお、レジストの種類の変更を必要とせず、パターン14と隔壁層21の高さを共通とする場合は、工程(3)および(4)を1つの工程に集約することも可能である。
【0034】
(ナビゲートシステム)
図6は、第1実施形態に係るナビゲートシステム100の構成を示す図である。ナビゲートシステム100は、制御装置101と、撮像装置102と、表示装置103と、XYステージ104、ステージ移動用ハンドル105、記憶装置108を含む。撮像装置102は、例えば、対物レンズ106と撮像部107を有する光学顕微鏡である。
【0035】
試料が導入されたマイクロ流路デバイス1は、XYステージ104上に載置される。撮像装置102によって撮像されたマイクロ流路デバイス1の画像は、表示装置103に表示される。ユーザは、表示装置103に表示されたマイクロ流路デバイス1の画像を確認しながら、ステージ移動用ハンドル105を操作し、マイクロ流路デバイス1の観察領域15を撮像装置102の視野に納める。なお、ステージ移動用ハンドル105はユーザによる操作に限定されず、ステージ移動用ハンドル105にアクチュエータを内蔵しており制御装置101によって操作することも可能である。
【0036】
図7は、記憶装置108に記憶されるテンプレート画像情報200を示す図である。テンプレート画像情報200は、マイクロ流路デバイス1に形成されるパターン14の配向を変化させた場合の平面図を示すものであり、ここでは30度ずつ回転させて向きを変えた12枚のテンプレート画像200-1から200-12が示されている。たとえば、テンプレート画像200-1は、凹部面が向く方向を0度とし、角度情報を0度であるとする。また、角度情報は、テンプレート画像200-1を回転させた回転角度を示すものとする。時計回りに正方向とすると、テンプレート画像200-2は角度情報が30度であり、テンプレート画像200-3は角度情報が60度であり、テンプレート画像200-4は角度情報は90度であり、テンプレート画像200-5は角度情報が120度であり、テンプレート画像200-6は角度情報が150度であり、テンプレート画像200-7は角度情報が180度であり、テンプレート画像200-8は角度情報が210度であり、テンプレート画像200-9は角度情報が240度であり、テンプレート画像200-10-は角度情報が270度であり、テンプレート画像200-11は角度情報が300度であり、テンプレート画像200-12は角度情報が330度である。テンプレート画像情報200は、パターン14以外にも、例えば、パターン141および142についても作成可能である。また、向きの変更は30度ずつに限定されず、そのマッチングするために適宜設定しうる。
【0037】
図8を参照して、観察領域へのナビゲートの方法を説明する。図8は、撮像装置102によって取得された画像データ210を示す図である。画像の撮像前に、マイクロ流路デバイス1に観察対象となる検体を含む試験液を導入し、試験液を所定の観察領域15に到達させておく。マイクロ流路デバイス1をXYステージ104に載置し、対物レンズ106の焦点の調整を行った後、撮像装置102を用いた撮像を開始する。その際、撮像装置102の視野の位置と観察領域15の位置の間のずれを補正することが行われる。このような補正は、例えば制御装置101の入力デバイスである補正機能を実施するためのスイッチをユーザが選択する、あるいは、マイクロ流路デバイス1を載置してから一定時間ごとに行う、等の方法を採用し得る。
【0038】
(パターンマッチング)
まず、制御装置101は、テンプレート画像情報200を用いたパターンマッチングを行う。このパターンマッチングとは画像データ210のなかにパターン14と重なる度合いの大きさを集計して、その重なる度合いの大きさで、パターンが含まれているかどうかを判断するものである。
【0039】
ここで、図9および図10を参照して、パターンマッチングの一例を説明する。具体的には、テンプレート画像情報200のそれぞれのパターン200-1~200-12について画像データ210に配置可能な位置全てにおいて、パターンマッチングを行う。パターンマッチングからは、撮像データ中にあるパターンとテンプレート画像情報200の各データとの一致の度合いを示すマッチング係数を求め、このマッチング係数を、パターンマッチングを行った画像データ210上の座標位置と使用したテンプレート画像200-1~200-12に関する、テンプレート画像を生成した際の回転角度の情報と紐づけて記憶装置108に記録する。
そして、これらの情報を全て収集したのち、マッチング係数を用いて、テンプレート画像情報200におけるパターン14の存在位置、および回転角度の情報を得ることができる。
【0040】
図9は、テンプレート画像との比較をするための画像を画像データ210から抽出する方法を示す図である。図9(a)は、画像データ210の一部を示す図である。画像データ210には、パターン14が含まれている。ここで、画像データ210は、xy座標によって画像の部分が規定される。ここで、xy座標は、画像データ210を所定の大きさの格子状に分割して各座標を表している。
【0041】
続いて、画像データ210全体にわたって、検査領域220の大きさの単位の画像を保存する。言い換えると、画像データ210からテンプレート画像200-1~200-12と同じ大きさの小画像が抽出される。ここで、検査領域220は、テンプレート画像200-1~200-12と同じ大きさの範囲を示す。マイクロ流路デバイス1に設置されるパターン14の大きさと、テンプレート画像200-1~200-12の大きさは、観察前に設定されている。なお、検査領域220の左上端部の座標を検索基準座標ともいう。例えば、図9(a)において実線で示された検査領域220の検索基準座標は、検索基準座標は(1、1)である。
【0042】
図9(b)は、画像データ210から抽出された抽出画像の一例を示す図である。抽出画像220aは、検査領域220の端部の一つの座標が(xa1、ya1)にある場合に抽出された画像である。画像データ210全体にわたって、抽出画像220aに示すような画像が抽出される。抽出画像220aを、座標(xa1、ya1)を用いて特定する。
ここで、抽出画像220aにおいて、パターン全体は含まれておらず、パターン14の一部が含まれている。抽出画像220aに含まれるパターンと、テンプレート画像情報200-1~200-12との一致の度合いを示すマッチング係数が算出される。
【0043】
図10は、マッチング係数の一例を示す図である。項目「位置情報」は、画像データ210における座標ごとに検査領域220を用いて抽出された抽出画像の位置を示す。項目「角度情報」は、抽出画像に含まれるパターンの一致度の度合いを示すマッチング係数を算出した、テンプレート画像の種類を示す。ここで、テンプレート画像200-3、200-7、200-1が示されている。この理由は、マイクロ流路デバイス1内に含まれるパターンがテンプレート画像200-3、200-7、200-1に示されるパターンの3種類にあらかじめ特定されている場合を示している。事前にテンプレートの種類が特定されている場合には一致度の算出に用いるテンプレート画像を絞り込み演算の負荷を抑えることが可能であるが、このような方法に限定されない。テンプレート画像の種類すべてを用いて一致度の算出をすることも可能である。
【0044】
項目「マッチング係数」は、抽出画像とテンプレート画像各々の間において算出された一致度を示す。一致度は、抽出画像におけるパターンの認識とパターンの角度の判定に基づいて算出される。例えば、xy座標(2、1)において抽出された抽出画像に含まれるパターンについて、テンプレート画像200-3との間のマッチング係数が17%、テンプレート画像200-7との間のマッチング係数が22%、テンプレート画像200-1との間のマッチング係数が7%である。
【0045】
項目「パターン判定情報」は、マッチング係数が最も大きいものに「1」を付け、「1」以外には「-」が付けられている。なお、所定の閾値(例えば80%)を超えない場合にはマッチング係数が最も高い場合でも1を付けないこととし、パターンの認定に信頼度の高い情報を用いることとすることも可能である。座標(xi、yi)において抽出された抽出画像に含まれるパターンとテンプレート画像200-3のマッチング係数が95%であり、項目「パターン判定情報」に「1」が付されている。
【0046】
画像データ210におけるすべての抽出画像に関してマッチング係数を算出した後、制御装置101は、パターン判定情報が「1」であるデータのみを取り出す。
図10を用いてパターン判定情報について説明すると、画像データ210における座標(xa1、ya1)から座標(xa2、ya2)を検出基準位置として算出した複数のマッチング係数のうち、予め定めたマッチング係数95%以上に該当する場合、パターン判定情報を「1」としている。
次に取り出されたパターン判定情報が「1」であるデータから、検出基準位置の座標情報をとりだされる。図10の場合は、取り出される座標は座標(xi、yi)である。
予めテンプレート画像のデータの検出基準位置とパターンの重心位置の位置関係は求めておくことができるので、検出基準位置の座標(xi、yi)からパターン14の重心230として座標(xac、yac)情報を得ることができる。
また、図10のデータには、マッチング係数95%となったときに使用した画像200-3であることも格納されていることから、制御装置101にて、画像200-3に予め定義されていた回転角度情報45度が得られる。
上述のように予め定めておいたマッチング係数以上のデータを抽出し、それぞれのパターンの重心位置および回転角度情報が得られる。こうして、画像データ210に含まれるすべてのパターンの重心および角度情報を求めることができる。
【0047】
なお、画像データ210において得られた複数のマッチング係数より、予め定めたマッチング係数95%以上に該当するものが得られなかった場合は、マッチング係数の高い順に複数を選択し、マッチング係数とテンプレート画像に予め決められていた角度情報を用いて、加重平均などの適宜な算出ルールに基づき、該当するパターンの角度情報を決定してもよい。
なお、1つのパターンに対して異なるの複数のパターン画像を用いて同じ程度のマッチング係数が検出される多重検出が発生する場合が想定される。このようなときには、パターン画像の重心座標同士を比較する。このようにすることによって、多重検出か否かを判断することができる。
【0048】
(ナビゲートの例)
テンプレート画像情報200に基づいて算出される回転角度の平均値は、画像データ210において観察領域15の中心方向を示す。制御装置101は、回転角度の平均値を示す角度画像を生成し、画像データ210に中心方向を示す角度画像をインポーズする(重ねて表示する)。図11は、表示装置103に示される画像の一例を示す図である。ここでは、角度画像として矢印211がインポーズされている。矢印211は回転角度の平均値60を表したものである。なお、ここでは、テキスト情報212もインポーズされている。ここでは、「矢印方向に観察領域の中心があります」という文章が記載されており、これによって、操作者は、表示装置103を確認しながら、XYステージ104を操作すべき方向を把握することができる。
【0049】
このような表示を示すことによって、操作者は、マイクロ流路デバイス1が載置されたXYステージ104を移動させることができる。
【0050】
(ナビゲートシステムの制御フローチャート)
図12は、ナビゲートシステムの制御フローチャートを示す図である。ステップS1において、撮像装置102は、撮像装置102によってマイクロ流路デバイス1の画像を取得する。取得された画像の画像データ210は、表示装置103に表示される。
なお、マイクロ流路デバイス1には観察対象となる検体を含む試験液を導入し、試験液を所定の観察領域15に到達させてある。
【0051】
ステップS2において、制御装置101は、画像データ210から抽出画像を取得する。抽出画像は、画像データ210全体にわたって取得される。抽出画像の大きさは、テンプレート画像と同じ大きさである。言い換えると、画像データ210は、テンプレートデータと同じサイズの小画像によって全てを切り出される。
【0052】
ステップS3において、制御装置101は、抽出画像にテンプレート画像情報200を用いたパターンマッチングを行う。制御装置101は、各テンプレート画像と比較して、パターンマッチング計算し、マッチングの度合い(マッチング係数)を算出する。
【0053】
ステップS4において、制御装置101は、マッチング係数が閾値を超えているパターンがあるか判断する。マッチング係数が閾値(例えば95%)を超える場合(Yes)、閾値を超えたデータは抽出し、テータの検出基準位置からパターンの重心座標を求める(ステップS5)。マッチング係数が閾値を超えない場合(No)、マッチング係数の高い順に複数のデータを選択し、マッチング係数とテンプレート画像に予め決められていた角度情報を用いて、加重平均などの適宜な算出ルールに基づき、該当するパターンの角度情報および重心を決定する(ステップS6)。
なお、ステップS6は省略することも可能である。マッチング係数が閾値を超えない場合、例えばステップS2において鮮明な画像が抽出できない等の不具合が発生した場合も想定される。このため、マッチング係数が閾値を超えない場合には、ナビゲートシステムを再度実行することも可能である。また、エラー表示を出力することも可能である。
【0054】
ステップS7において、制御装置101は、パターンマッチングに合格したときのテンプレート画像の回転角度情報から回転角度の情報を抽出する。そして、抽出された回転角度の平均値を求める。
【0055】
ステップS8において、制御装置101は、回転角度の平均値から表示装置103に表示する角度画像を決定し、表示装置に表示する。角度画像は、第1実施形態においては矢印211という図形であったが、角度画像はこれに限定されない。観察領域15の中心方向を示す補助線のようなもの、動的なアニメーション画像を採用することも可能である。
【0056】
(作用・効果)
パターン領域16aおよび16bに含まれるパターン14は、観察領域15の中心方向に、パターン14の形状のうち特定部分を向けるように配置される。パターン14を確認することによって、観察者は、観察領域15の中心方向を直感的に把握することが可能となる。また、ナビゲートシステムにおいては、観察領域15の中心方向を示す角度画像が重ねて表示されるため、操作者は、表示装置103を確認しながら、XYステージ104を操作すべき方向を把握することができる。
【0057】
[第2実施形態]
第2実施形態は、制御装置101によってXYステージ104の操作が行われる点で、第1実施形態とは異なる。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一または同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。
【0058】
図13は、ナビゲートシステムの制御フローチャートを示す図である。ここで、ステップS11からステップS17は、第1実施形態の図11のステップS1からステップS7に対応する。
【0059】
ステップS18において、制御装置101は、XYステージ104を移動させる。制御装置101は、小画像の角度の平均値に基づいて、XYステージ104の移動量(X、Y)を数値演算を行い算出する。移動量(X、Y)が移動の限界値を超えていないことを確認してから、制御装置101は、アクチュエータに移動量のデータを送る。アクチュエータは、移動量のデータに基づいて、XYステージ104を移動させる。
【0060】
図14は、表示装置103に示される画像の一例を示す図である。図14(a)は移動量が算出された場合を示す。テキスト情報212には、観察領域15までの移動量が表示される。ここでは、X方向の移動量がー30、Y方向の移動量がー15であることが示されている。図14(b)は、移動が完了した場合の表示の一例を示す。テキスト情報212には、移動が完了したことが表示される。
【0061】
(作用・効果)
観察領域15までの移動量を表示しながらXYステージ104を駆動してマイクロ流路デバイス1の移動がおこなわれるため、観察者は、観察位置に移動するための情報を得ることができる。
【0062】
[第3実施形態]
第3実施形態は、テンプレート画像情報に角度情報が付加されていない点で、第1実施形態とは異なる。以下の説明において、上述の第1実施形態と同一または同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。
【0063】
(パターンマッチングおよびナビゲート方法)
図15および図16を参照して、パターンマッチングおよび観察領域へのナビゲートの方法を説明する。図15は、第3実施形態に係るパターンマッチングを説明する図である。図15(a)は第3実施形態におけるテンプレート画像情報200aを示す。図15(b)は、撮像装置102によって取得された画像データ210の一例を示す図である。
【0064】
まず、制御装置101は、テンプレート画像200aを用いたパターンマッチングを行い、画像データ210のなかにパターン14が含まれているかどうかを判断する。制御装置101は、パターンの一部ではなく、パターンの全部が含まれていることを条件にパターンの有無を判断する。制御装置101は、パターン14の重心位置の座標を算出し、重心位置を基準に小画像210aから210cを生成し、重心位置の座標データと小画像210aから210cを関連付けてパターンデータとして記憶装置108に記録する。パターンの有無の判断およびパターンデータの収集は、例えば、画像データ210に含まれるパターンすべてについてしたことを終了条件として行われる。言い換えると、パターンデータの収集は、記録した小画像210aから210cすべてのデータを収集したことを終了条件とする。
【0065】
次に、制御装置101は、得られた小画像210aから210eからパターン14の回転角度を計測し、回転角度の平均値を求める。例えば、小画像210cに含まれるパターン14は、凹部面14aからパターン14の円弧形状の中心に向かって伸ばした直線Slがy方向からθrだけ反時計回りに回転している。制御装置101は、θrを小画像210cの回転角度として抽出する。制御装置101は、小画像210aから201cのいずれも、回転角度がθrであると判断する。ここではθr=60度とし、回転角度の平均値は60度とする。なお、直線Slと比較して回転角度を求める例を示したが、テンプレート画像200-1~200-12のうちのいずれか1つと比較して回転角度を求めることも可能である。
【0066】
また、回転角度の計測には、他の方法を採用することも可能である。図16は、回転角度を求めるその他の方法を示す図である。
第1ステップとして、切り出した小画像210dから一定面積以上の円弧パターン(輪郭データ)Apを取り出す
第2ステップとして、円弧パターンApの外周の円弧座標データを取り出し仮想円Vcの情報(例えば、半径や中心)を求める。外周の代わりに、円弧パターンApの内周や内周と外周の間の位置であってもよい。ここでは、外周を用いる場合を説明する。
第3ステップとして、仮想円Vc上の座標について順番に輝度情報を追跡することによって円弧パターンApの端部を割り出し、2点(Ed1およびEd2)を抽出する
第4ステップとして、2点(Ed1およびEd2)を結ぶ直線の方向と垂直方向の間の角度を算出するとこによって、θrを算出する。
なお、第2ステップにおいて円弧座標データを用いる方法を示したが、θrを求める方法はこれに限定されない。例えば、画像データ210において、円弧パターンApと背景との区別を画像処理によって行い、2点(Ed1およびEd2)を抽出することも可能である。
【0067】
パターン14の回転角度は、画像データ210において観察領域15の中心方向を示す。制御装置101は、回転角度の平均値を示す角度画像を生成し、画像データ210に中心方向を示す角度画像を表示する。
【0068】
このような表示を示すことによって、操作者は、マイクロ流路デバイス1が載置されたXYステージ104を移動させることができる。あるいは、XYステージの移動量を算出し、制御装置101によってXYステージ104を移動させることができる。
【0069】
(ナビゲートシステムの制御フローチャート)
図17は、ナビゲートシステムの制御フローチャートを示す図である。ステップS21において、撮像装置102は、撮像装置102によってマイクロ流路デバイス1の画像を取得する。取得された画像の画像データ210は、表示装置103に表示される。
【0070】
ステップS22において、制御装置101は、テンプレート画像情報200を用いたパターンマッチングを行い、画像データ210のなかにパターン14の有無を判断する。制御装置101は、テンプレート画像情報200とのパターンマッチングを行う。パターン14は、観察領域15の方向を示すものであり、パターンマッチングによって抽出される。
【0071】
ステップS23において、制御装置101は、パターンマッチングに合格した図形のパターンデータを収集する。制御装置101は、パターン14の重心位置の座標を算出し、重心位置を基準に小画像を生成し、重心位置の座標データと小画像を記憶装置108に記録する。
【0072】
ステップS24において、画像データ210に含まれるパターンのすべてについてパターンの有無のパターンデータ収集の終了条件は、例えば、画像データ210に含まれるパターンすべてについて、パターンの有無およびパターンデータの収集をしたことを終了条件とする。
【0073】
ステップS25において、制御装置101は、小画像が規定個数以上あるかどうかを判断する。規定個数の小画像が取得できない場合、撮像装置102の視野が観察領域15にすでに設定されている場合、または撮像装置102の視野が観察領域15から全く外れている場合、が考えられる。前者の場合にはナビゲートは不要であるし、後者の場合にはナビゲート以前に手動での大まかな位置合わせが必要である。小画像が規定個数より少ない場合には、ナビゲートを終了する。
【0074】
ステップS26において、制御装置101は、得られた小画像からパターン14の回転角度を算出し、回転角度の平均値を求める。制御装置101は、テンプレート画像情報200に含まれる様々な角度で回転させたテンプレート画像と小画像の一致度を計算して、一番数値の高いテンプレート画像の回転角度を、小画像の回転角度とする。回転角度の平均値は、画像データ210において、観察領域15の中心方向を示す角度情報である。
【0075】
ステップS27において、制御装置101は、回転角度の平均値から表示装置103に表示する角度画像を決定し、表示装置に表示する。
【0076】
(作用・効果)
第3実施形態において、テンプレート画像情報200aに含まれるものはテンプレート画像が1つのみであり、角度情報は関連付けられていない。テンプレート画像を用いて抽出したパターンの回転角度は、別に算出される。テンプレート画像を用いたパターンマッチング処理は、第1実施形態と比較して第3実施形態では少なくすることができる。このように、第3実施形態においては、パターンマッチング処理の負荷を抑えることが可能となる。
【0077】
また、テンプレート画像が円弧形状の場合を示したが、マイクロ流路デバイスにテンプレートの相似形が用いられる場合にも、アフィン変換を用いることによって、パターンの抽出および回転角度の算出を行うことが可能である。また、記憶装置108に予めマイクロ流路の情報、例えば、観察領域大きさやパターン14の大きさなどを事前に記憶しておくことによって、回転角度に加えて、観察領域15の中心への移動量を算出することも可能である。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0079】
[その他の実施形態]
本開示は、次の態様も含む。
(態様1)
流路を観察可能なマイクロ流路デバイスであって、
前記流路の観察領域に方向を示すパターンが配置されている、
ことを特徴とするマイクロ流路デバイス。
(態様2)
前記パターンは、
流路を構成する第1基板または第2基板のいずれか一方の面から前記流路の内部に向かって所定形状で突出した突起物である、
ことを特徴とする態様1に記載のマイクロ流路デバイス。
(態様3)
前記パターンは、配置される位置に基づいて前記パターンの水平方向における向きを変え配置される、ことを特徴とする態様1または2に記載のマイクロ流路デバイス。
(態様4)
前記パターンは、円弧形状とL字形状と三角形状のうちのいずれかの形状を有している、ことを特徴とする態様1から3のいずれか1つに記載のマイクロ流路デバイス。
(態様5)
前記パターンが形成された領域であるパターン領域は、前記観察領域を除いた前記流路のうち50%以下の範囲に形成される、ことを特徴とする態様1から4のいずれか1つに記載のマイクロ流路デバイス。
(態様6)
前記パターンは、前記流路において見かけの接触角を変化させる、ことを特徴とする態様1から5のいずれか1つに記載のマイクロ流路デバイス。
(態様7)
前記流路のうち前記パターンが形成された領域における見かけの接触角は、85度以上である、ことを特徴とする態様1から6のいずれか1つに記載のマイクロ流路デバイス。
(態様8)
前記マイクロ流路デバイスは、
前記流路に試料を導入するための導入口と、
前記流路から試料を排出するための排出口と、を備える、ことを特徴とする態様1から7のいずれか1つに記載のマイクロ流路デバイス。
(態様9)
撮像装置、制御装置、表示装置からなり、観察領域を有するマイクロ流路デバイスの前記観察領域へのナビゲートシステムであって、少なくとも下記手段を備えるナビゲートシステム。
a.前記撮像装置によって前記マイクロ流路デバイスの画像を取得する手段
b.前記観察領域の方向を示すパターンを抽出する手段
c.前記パターンの回転角度を算出する手段
d.c.で求めた前記回転角度の平均値を求める手段
e.d.で求めた前記回転角度の平均値から前記表示装置に表示する角度画像を決定する手段
f.e.で決定した前記角度画像を前記表示装置に表示する手段。
【符号の説明】
【0080】
1…マイクロ流路デバイス、10…導入口、11…流路、12…排出口
14、141、142…パターン、14a…凹部面、14b…凸部面
15…観察領域、16a…パターン領域、16b…パターン領域
20…第1基板、21…隔壁層、22…第2基板、40、50…レジスト
100…ナビゲートシステム、101…制御装置、102…撮像装置
103…表示装置、104…XYステージ、105…ステージ移動用ハンドル
106…対物レンズ、107…撮像部、108…記憶装置
200…テンプレート画像情報、200-1~200-12…テンプレート画像、
210…画像データ、210a~210d…小画像、211…矢印
212…テキスト情報、220…検査領域、220a…抽出画像
230…重心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17