(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102536
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】建物、構造物のタイル落下防止工法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
E04F13/08 101V
E04F13/08 102F
E04F13/08 102L
E04F13/08 102N
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006489
(22)【出願日】2023-01-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】509270904
【氏名又は名称】冨田 穣
(72)【発明者】
【氏名】冨田 盟子
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA27
2E110AA50
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA13
2E110BB07
2E110BC02
2E110BC09
2E110BC12
2E110CA03
2E110CC06
2E110DB34
2E110DC24
2E110DC36
2E110DD12
2E110EA02
2E110GA34W
2E110GA44Z
2E110GB02Z
2E110GB03Z
2E110GB05Z
2E110GB42Z
(57)【要約】
【課題】
建物、構造物の外壁タイルの落下は重大な結果を伴う可能性がある。10年ごとの点検も法定義務となった。とはいえタイルの枚数は天文学的に多い、既設の建物、構造物を含むと無数である。これらを落下しないよう対策するのは至難の業である。しかし社会的責任は重い。
【解決手段】
タイルの裏面には、モルタルとの付着効果を上げるための溝、裏足がある。この溝間を利用して、嵌合する交点部材を固定中心として線材でタイル間を結ぶネットを構成することで、面的ネットワーク連結が可能である。たとえ一部タイルが剥離しても命綱で結ばれていることで助かるフェールセーフの考え方を取り入れた工法である。経年の既設建物のタイルには目地材を除去し、目地間に新たに線材を敷設し落下防止とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物、構造物の柱、壁コンクリートの表面1にモルタル2、接着剤でタイル3を貼るタイル工事において、複数枚のタイルを面的なブロック単位、
図2参照、として落下防止を図るとしたもので、タイル裏面の溝部5に嵌合または接着して固定する交点部材7と、前記交点部材から隣接タイルまで、または一つ飛びのタイルまでに伸びる水平方向、鉛直方向または斜め方向の線材8とで、方形またはひし形、3角形を基調とする網目を形成するタイル裏面のタイル落下防止ネット9であって、前記タイル落下防止ネットは強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金網などで成る交点部材と線材の構成で、前記ブロック単位の複数枚の前記隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面の溝部に前記交点部材を嵌合または接着して装着することで複枚数分の固定点とし、複数枚の前記隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面間を前記線材とで網目状のネットワークに連結するとしたことを特徴とする建物、構造物のタイルの落下防止工法。
【請求項2】
請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに裏面側で連結する工法であって、
図7Aに示す水平方向または
図7Bに示す垂直方向の長さを延長したタイル落下防止ネット、
図7Cに示す面的に拡大したタイル落下防止ネット、あるいは
図8に示す隣接する前記ブロック単位間の切れ目部12に装着する連結用の継手部部分ネット11、または
図9に示す1網目分を張り出した拡張ネット13によるタイル落下防止ネットで、タイル裏面側から面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする請求項1に記載の建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項3】
請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに表面側で連結する工法であって、隣接ブロック単位ごとに裏面側の連結が途切れる切れ目部に対して表面側から連続性を延伸する工法で、前記ブロック単位のタイル貼り付け後の目地材充填前の工程で、前記ブロック単位の中央部付近のタイルの目地部および前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を横切る線材14または縦断する線材15を、隣接ブロック単位のタイルを周回するように配置、あるいは前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を挟む両側タイルの外側目地部において、前記切れ目部を挟んで周回する線材16を敷設し、いずれもその後に目地材を充填することで、途切れる隣接ブロック単位の切れ目部の連結を補完するとした、タイル表面側からの面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする請求項1に記載の建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項4】
既設の建物、構造物の柱、壁コンクリートのタイルが経年劣化またはタイルの落下防止対策が図られてない場合のタイル落下防止工法であって、タイル目地間の目地材を除去し、露出した溝にタイルを囲む周回状に線材を敷設することとし、目地幅間のタイル側面壁に接触し摩擦抵抗となる小突起物を、1枚のタイルの長辺方向に少なくとも1か所に加えた線材とし、前記小突起物は、線材自体の随所に設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方向にスライドできる穴あきの数珠状に設けた線材19、または目地間の線材敷設後に、表面側から別個の小突起物20を線材周りに挿入、装着するとし、前記線材、前記小突起物は樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施したものとし、線材敷設後に新たなタイル目地充填材27を充填することを特徴とする既設の建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項5】
前記ブロック単位の裏面側の前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線材を樹脂被覆または塗装、メッキを施した金属製とし、あるいは樹脂製の金属製でないものにおいては前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線材の少なくとも1ケ所に防錆処理をした金属片、金属輪21を装着し、いずれもこのことで非破壊検査に資するとしたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項6】
複数枚のタイルを裏面側で連結する交点部材および線材で構成する網目状のタイル落下防止ネット9または前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落下防止ネット、および隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネット11または1網目分を張り出した拡張ネット13あるいは垂直側に1網目分を張り出した前記拡張ネットを長尺としロール状に巻いた拡張ネットは、強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金網などから成り、タイル裏面の溝に嵌合または接着して固定する交点部材と、2方向に伸長する線材の構成で成る方形またはひし形、3角形を基調とした網目状のネットで、前記交点部材は、タイル裏面の溝に嵌合または接着することで固定点となり、前記線材はタイル裏面の溝方向、あるいは溝と直角方向または斜め方向の裏面を這うことで方形またはひし形、3角形の網目を形成し、タイルの落下時に掛かる引張強度を有するとし、腐食の恐れがある材料については、樹脂被覆、あるいは塗装、メッキの腐食防止処理したタイル落下防止ネットまたは前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落下防止ネット、および隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネットまたは1網目分を張り出した拡張ネットあるいは垂直側に1網目分を張り出した前記拡張ネットを長尺としロール状に巻いた拡張ネット。
【請求項7】
既設の建物、構造物のタイル落下防止の補修工事に用いる線材、小突起物で、タイル目地間の目地材撤去後の目地間に設置するもので、タイル目地間のタイル側面壁に接触するとし、線材自体の随所に小突起物を設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方向にスライドできる穴あきの数珠状の小突起物を有する線材19、または目地間の線材敷設後に、表面側から別個に挿入、装着するとした線材に付加する小突起物20で、いずれも樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施すとした小突起を有する線材。
【請求項8】
タイル裏面のネットを装着したブロック単位を連結するときに負担となる重量を支え、かつタイル裏面側の連結の施工性を補助するための
図18に示すようなタイル貼り付け支持型枠または作業補助型枠であって、前記型枠は、鋼板、またはプラスチック板、木材板で構成し、外周に設けた大枠と、各タイル目地間に設けた網目状小枠から成るタイル落下防止施工用の型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等外壁タイルの落下防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の外壁タイルの落下、それに伴う事故が多数報告されている。児童の頭に落下すれば大変である。特に、道路歩道沿いのビル、公共建築では落下は許されない。特許情報プラットホームで検索したところ「タイル 落下防止」で、55件あり該当するのは6件であった。特許文献1は、タイルの表面側に粘着テープで貼り、ユニットとするものであり、裏面側で線材を接着しコンクリート面にアンカーで定着し、その後モルタル貼りするので、コンクリートにアンカーした線材が邪魔となり施工が困難、またはコンクリート打設前の鉄筋に固定するものだが、本願はアンカーを取らず、コンクリートはすでに打設済みの固い壁面なので異なる。特許文献2は、タイルの裏足に横断する新たな溝を掘って線材を配するものだが、本願は、裏足に新たな溝を設けない。線材は裏足を跨ぎモルタルとの付着を活かすので異なる。特許文献3はトンネルのタイルパネルで、タイル裏面の表面に帯状の連結材を貼着しているが、本願は、窪みのある溝や裏足間への嵌合を利用しているので付着の経年劣化もなく物理的に脱落しないので異なる。特許文献4もトンネル用で大規模で、壁に穴を明けタッピングネジやアンカーボルトを随所に用いているが、本願は壁に穴を明けてタイルを止めることを基本としてないので異なる。特許文献5は裏足に穴をあけ鉄筋に固縛するもので、そのあとにコンクリートを打設するものだが、本願は、穴をあけず、鉄筋に固縛せず、すでにコンクリートは打たれている時点の壁表面でのモルタルを介した落下防止なので異なる。特許文献6は、厚みのあるタイルパネルに貫通穴を設けるもので、大規模の落下防止となるもので、本願はタイルに穴を明けないので異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-36856
【特許文献2】実登3206490号
【特許文献3】特許第5892529号
【特許文献4】特許第5835763号
【特許文献5】特開2003-74148
【特許文献6】実登第3004150号
【0004】
【非特許文献1】平成20国土交通省告示第282号「タイルの10年に1度の全面的打診の義務化」の通達
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物、構造物のタイル落下は大事故を起こす。特に、小学生の頭に当たれば大きなニュースとなる。設計者か、施工業者の施工不良か、はたまた経年劣化によるものか、建物管理者か。責任者を判別しがたいでは済まされない。落下の確率が小さい、品質管理の許容値範囲内である、瑕疵期間を過ぎている、といっても言い逃れは許されない、結果責任である。いずれにしてもタイル建物、構造物の設置数は数えきれないほどであり管理しきれないといっていいほどであるがその事故は重大であるため、建物には10年ごとの法定点検が課せられたが、施工不良、目に見えないところの内部の欠陥の発見、原因特定、将来落下しそうな部位の発見は容易でない。特に、高所となると足場接近によるたたき点検となるが10年ごとの足場設置、経費負担はあまりにも重い。運よく浮き箇所が発見でき、補修できればいいがいつまた劣化しないとも限らない。不安だらけである。基本的には、コンクリートを打設した後の柱や壁の表面と、モルタルや接着剤を介したタイル裏面との付着を期待するものだが、地震による付着の剥がれ、接着力の経年劣化は解決できない。効果的対策が必要だ。そこで、複数枚のタイルをまとめて型枠としてコンクリートを打設する方法、いわゆる先付け工法が考えられているが、タイルを先に板状に組まなくてはいけないので重く、段取りが大変だ。高層ビル建築や大規模工事には採用されているものの一般向きでない。一般には、
図1に示す断面図の、柱や壁のコンクリートを打設した後からその固化、乾燥したコンクリート表面1にモルタル2、接着剤を施し、タイルの裏面との付着力を利用しタイルを貼り付ける後付け工法となる。そのために、タイル3の裏面に裏足4といわれる突起と裏足間の溝5を設けより付着力を高めている。先付け工法では、タイルが大型で、型枠としての機能を持つためしっかりとタイル間を固定している。あるいはコンクリート打設前の鉄筋と結んでいる。後付け工法では絶対的対策がないため施工不良とならないよう管理している。高い建物や、公共建物など影響の大きい建物では後付け工法を避けている。後付け工法の多くは低い箇所の施工になる。しかしそれでも限界がある。接着剤で接着しても10年後、20年後の経年劣化で付着が急激に低下し、あっけなく剥離、剥落する。落下に対して、2重の安全を講じる必要があるといえる。そこで、フェールセーフの考え方で、一枚一枚の個別でタイルの剥がれはあるとしても、それにはタイムラグがあり、残りの全体として落下しなければよいのである。すなわち、複数枚のタイル間をロープ、線材、そのネットで連結することで部分的な施工不良、予期し難い欠陥、タイムラグによる落下を全体として面的にカバーする。一枚であっても落下しないよう相互の連帯で踏みとどまるとする命綱を設ける。幸いにして、タイルの裏面には、モルタルとの付着のために裏足という凸凹がある。その窪みの凹部を固定の基地として、具体的には網目状の
図2,3,4に示すように落下防止ネット9をタイルに張り巡らせネットワークを構築する。ネットの中心は網目の交点となる交点部材7であり、タイルごとに設け裏足間の溝に嵌合、接着して固定点とする。ネットの線材8は、基地の固定点を中心として、タイルを上下方向、左右方向に連結する。タイル1枚の付着がはがれたとしても上下、左右の全体付着、連結により線材でタイル間が網状に連結している状況、ネットワークを作り出すことで、個々のタイル落下を防ぐ課題を解決できる。タイル施工の貼り付け模様、形状は種々あるが、代表として
図2の通し目地貼りでは、目地は水平方向と、垂直方向の直線2方向で、裏面のネットの網目も2方向に沿い水平方向が優先、
図5、
図6の芋目地貼りでは、目地が交互にクロスするので、裏面の網目は主として斜め方向となるが一つ飛ばしの方形もやむを得ない。貼り方向で、タイルの縦貼りの場合は、縦方向が優先となる。
外壁タイルは裏足有タイルが多い。落下原因には、モルタルの付着が弱い場合の、施工不良、経年劣化が考えられる。前提として、これら欠陥は生じ得るものとして、一部付着が外れても命綱の連携作用、チームワークで落下を食い止める。基本として裏足の溝を利用した嵌合効果、あるいは接着による固定点と、そこから交差する線材による2方向の確実な綱の複数枚、広範囲の連結、落下防止ネットによる連結である。1方向は、溝沿いとすれば付着の問題はない。その直角方向、斜め方向では裏足の突起部を跨ぐことになるが、モルタル内に入るので細い線材の連結であればタイル裏面とモルタルとの間の付着面積を減らすことはない。むしろ線材とモルタルの絡み効果が大きい。施工が容易であることも条件だ。さらには、竣工時と、10年後の点検、検査でネット、線材が内在していることの確認が容易であること、特に高所、公共建物では検査記録が残ることが求められる。非破壊検査では、
図16に示す裏面に配置する金属探査が有効である。金属反応のない腐食しない材料選択にも金属片をつけるなど配慮が必要である。穴あけなどの工程が加わるのも好ましくない。粘着テープではその幅で、タイル裏面とモルタル、接着剤との付着面積が減り、将来的にもモルタルとの付着力が落ち剥離する恐れがある。経年劣化で平面的な接着力が失われることを承知していなければならない。
これらを総合的に考慮して、落下防止の方法として、ここでは、タイルは水平方向に長いとし、タイル裏足も水平方向として記す。貼り付け方法は、主に通し目地貼りで説明するが、芋目地貼りなど他はそれを活かした個別の応用で解決できる。
タイル裏面の落下防止ネットは、複数枚のタイルを面的、ネットワークにまとめた
図2に示すブロック単位(タイル3*6=18枚)を基本とする。しかし、そのブロック単位の隣接ブロック間ごとに落下防止ネットの切れ目が生じるので連結が途絶えることが次なる課題である。これには、1つ目の方法は、裏面側の連結施工として、ブロック単位のネットを裏面側(
図7,8,9)で継ぎ足して連結することでネットの連続性を拡大する方法である。水平方向の拡張はタイル枚数が増え重くなり、垂直方向の延伸は、下地のモルタルに負荷がかかり重みで垂れる恐れがある。落下方向は、重力方向なので、一蓮托生となる垂直方向より水平方向への連結を優先する。場合によっては芋目地貼りでは、タイルの目地線が一直線でなく交互となっているので落下しづらいこと、交差する目地線が煩雑なことから、垂直方向の連結を省略してもよいといえる。面的拡大は重くなり取り扱いが難しく作業員の人数増を伴うなどの課題がある。裏面をネットでさらに連結して垂直の壁面まで持ち上げて施工するのは大変である。重みを支える型枠、作業員の補助、訓練などの工夫が必要である。立ち居のまま隣接ブロック間を連結するのも、下地のモルタルがタイル裏面の連結ネット作業時に付着したり、モルタルの固化までの時間の余裕がないので焦った作業となる可能性があり施工不良の原因となる。ブロック単位の連結を延長、拡大するにあたっては、施工性を保つ工夫が必要である。
図18の支持型枠とか、作業員の増、技術習得が必要である。落下防止ネットは、水平方向に延長すれば長尺となり、長尺を生産してロール状に巻くと都度必要長に応じて切断して重宝できる。
2つ目の方法は、表面側からの連結施工として、
図10に示す裏面の落下防止ネットが見えるブロック単位の中央部付近の目地部の上、表面側から線材で押さえる方法、または
図11に示す隣接ブロック単位の落下防止ネットが途切れる目地部を跨いで隣接ブロック単位を連結する方法がある。言い換えれば、ブロック単位の壁への貼り付け作業がコンクリート壁全面、全体的に終わった第一段階工程での、最終の目地材充填施工前に、中央部付近の目地部を線材で囲む方法、またはブロック単位を跨ぐ目地の両サイドのタイル外周の目地間に線材を周回するように敷設し、そのあと最終段階の目地材を目地に充填することで、ブロック単位の連結が得られ連続性の途切れをなくすという課題を解決できる。この方法では、壁にはブロック単位ですでに貼り付けているので、重いとか、作業員の補助の問題が解決される。施工もタイル裏面側と関係なく表面側からなので簡単明瞭である。
また、経年の既設の建物、構造物のタイル落下防止対策も喫緊の課題である。
図12に示すように、まず既設の目地材を除去し、次に目地間にタイル側面に接触し、摩擦抵抗で落下抵抗があるとする小突起を有する線材18、19、20などを敷設し、新しい目地材27を充填することで解決できる。
以上、良質なタイルの落下防止施工ができたとしても、タイル裏面側は隠れて見えないため、実際に落下事故が生じると原因究明、責任者特定とかの課題が残る。落下防止ネットが施工されていることの証明が工事検査時、10年後の点検時に、落下事故時の説明で手抜き工事でない証しのためにも非破壊検査ができることが有効な手段となりうる。
図16に示すように交点部材、線材に金属輪、金属片21絡ませておくと、非破壊検査に役立つ。後悔しなくて済む。全体として、落下防止ネット、その交点部材、線材は材料に応じて防錆に配慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の建物、構造物のタイルの落下防止工法は、建物、構造物の柱、壁コンクリートの表面1にモルタル2、接着剤でタイル3を貼るタイル工事において、複数枚のタイルを面的なブロック単位、
図2参照、として落下防止を図るとしたもので、タイル裏面の溝部5に嵌合または接着して固定する交点部材7と、前記交点部材から隣接タイルまで、または一つ飛びのタイルまでに伸びる水平方向、鉛直方向または斜め方向の線材8とで、方形またはひし形、3角形を基調とする網目を形成するタイル裏面のタイル落下防止ネット9であって、前記タイル落下防止ネットは強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金網などで成る交点部材と線材の構成で、前記ブロック単位の複数枚の前記隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面の溝部に前記交点部材を嵌合または接着して装着することで複枚数分の固定点とし、複数枚の前記隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面間を前記線材とで網目状のネットワークに連結するとしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに裏面側で連結する工法であって、
図7Aに示す水平方向または
図7Bに示す垂直方向の長さを延長したタイル落下防止ネット、
図7Cに示す面的に拡大したタイル落下防止ネット、あるいは
図8に示す隣接する前記ブロック単位間の切れ目部12に装着する連結用の継手部部分ネット11、または
図9に示す1網目分を張り出した拡張ネット13によるタイル落下防止ネットで、タイル裏面側から面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに表面側で連結する工法であって、隣接ブロック単位ごとに裏面側の連結が途切れる切れ目部に対して表面側から連続性を延伸する工法で、前記ブロック単位のタイル貼り付け後の目地材充填前の工程で、前記ブロック単位の中央部付近のタイルの目地部および前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を横切る線材14または縦断する線材15を、隣接ブロック単位のタイルを周回するように配置、あるいは前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を挟む両側タイルの外側目地部において、前記切れ目部を挟んで周回する線材16を敷設し、いずれもその後に目地材を充填することで、途切れる隣接ブロック単位の切れ目部の連結を補完するとした、タイル表面側からの面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする。
【0009】
また、既設の建物、構造物の柱、壁コンクリートのタイルが経年劣化またはタイルの落下防止対策が図られてない場合のタイル落下防止工法であって、タイル目地間の目地材を除去し、露出した溝にタイルを囲む周回状に線材を敷設することとし、目地幅間のタイル側面壁に接触し摩擦抵抗となる小突起物を、1枚のタイルの長辺方向に少なくとも1か所に加えた線材とし、前記小突起物は、線材自体の随所に設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方向にスライドできる穴あきの数珠状に設けた線材19、または目地間の線材敷設後に、表面側から別個の小突起物20を線材周りに挿入、装着するとし、前記線材、前記小突起物は樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施したものとし、線材敷設後に新たなタイル目地充填材27を充填することを特徴とする。
【0010】
また、前記ブロック単位の裏面側の前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線材を樹脂被覆または塗装、メッキを施した金属製とし、あるいは樹脂製の金属製でないものにおいては前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線材の少なくとも1ケ所に防錆処理をした金属輪、金属片21を装着し、いずれもこのことで非破壊検査に資するとしたことを特徴とする。
【0011】
また、複数枚のタイルを裏面側で連結する交点部材および線材で構成する網目状のタイル落下防止ネット9または前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落下防止ネット、および隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネット11または1網目分を張り出した拡張ネット13あるいは垂直側に1網目分を張り出した前記拡張ネットを長尺としロール状に巻いた拡張ネットは、強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金網などから成り、タイル裏面の溝に嵌合または接着して固定する交点部材と、2方向に伸長する線材の構成で成る方形またはひし形、3角形を基調とした網目状のネットで、前記交点部材は、タイル裏面の溝に嵌合または接着することで固定点となり、前記線材はタイル裏面の溝方向、あるいは溝と直角方向または斜め方向の裏面を這うことで方形またはひし形、3角形の網目を形成し、タイルの落下時に掛かる引張強度を有するとし、腐食の恐れがある材料については、樹脂被覆、あるいは塗装、メッキの腐食防止処理したタイル落下防止ネットまたは前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落下防止ネット、および隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネットまたは1網目分を張り出した拡張ネットあるいは垂直側に1網目分を張り出した前記拡張ネットを長尺としロール状に巻いた拡張ネットを使用することを特徴とする。
【0012】
また、既設の建物、構造物のタイル落下防止の補修工事に用いる線材、小突起物で、タイル目地間の目地材撤去後の目地間に設置するもので、タイル目地間のタイル側面壁に接触するとし、線材自体の随所に小突起物を設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方向にスライドできる穴あきの数珠状の小突起物を有する線材19、または目地間の線材敷設後に、表面側から別個に挿入、装着するとした線材に付加する小突起物20で、いずれも樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施すとした小突起を有する線材を使用することを特徴とする。
【0013】
また、タイル裏面のネットを装着したブロック単位を連結するときに負担となる重量を支え、かつタイル裏面側の連結の施工性を補助するための
図18に示すようなタイル貼り付け支持型枠または作業補助型枠であって、前記型枠は、鋼板、またはプラスチック板、木材板で構成し、外周に設けた大枠と、各タイル目地間に設けた網目状小枠から成るタイル落下防止施工用の型枠を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上から物体、タイルが落下するという事故に遭遇すれば、突然で予期せぬことであり防ぎようもない。不運では片づけられない。被害者は通行人だが誰になるか想像もできない。しかし、施工者、管理者は特定できる。タイルの施工不良は、数パーセントといわれ、その程度は許容されているとの言い訳があるが、落下すること、危害に対しては100パーセント結果責任だ。瑕疵期間が過ぎているとしても許されるものでない。彼らも事故が起きないことを祈るばかり。これではいつか大きな社会問題になりかねない、事前に課題が判明しているのに課題が解決できてない。本発明により上から落下する危険性がなくなれば平穏に街を歩ける。10年ごとの費用負担の大きい点検を必要としない。施工者、管理者も枕を高くして眠れる。点検でタイルの浮きが発見されると、落下の予兆である。本工法で連結すれば、タイル1枚の浮き兆候から落下までのタイムラグ、さらにタイルブロック全体の抵抗で予防できる。新築工事、補修箇所は完璧となる。いずれそのうちに本工法による新築が増えると落下問題は徐々に解消されていく。ところが、落下対策、連結対策しているものの、内部が見えなければ、落下対策の施工をしたかどうかは確認できず疑われる。施工したことの証しとして、金属探査機で見えない内部の連結が可視化できることが大事である。安心につながる。さらには、施工が古い建物、建造物のタイル壁は経年劣化していると考えられ、既設のタイル貼りの目地間のモルタル、樹脂を表面から除去し、線材を幾何学的に張り巡らし、新たに目地充填することで落下防止を図る事ができる。これで施工者も建物保有者、管理者も責任のなすりあいをすることなく枕を高くして眠れる。まさしく予防保全の目的とするところである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】通し目地貼りの、タイル裏面の方形の落下防止ネット平面図、
【
図3】タイル裏足の溝に嵌合した交点部材と線材の斜視図
【
図5】芋目地貼りの、ひし形、3角形のネット平面図
【
図7】ネット拡張連結の水平A、垂直B、拡大C方向の説明図
【
図8】隣接のブロック単位間を連結する継手部部分ネット平面図
【
図10】表面側から連結する、ブロック単位の中央付近の線材配置平面図
【
図11】表面側から連結する、ブロック単位の切れ目部を挟む線材配置平面 図
【
図12】既設建物のタイル目地部の線材敷設による補修説明図
【
図13】既設建物の目地溝に敷設する小突起物を有する線材
【
図14】スライドできる数珠状の小突起物を有する線材
【
図15】タイルの溝の敷設線材周囲に挿入、装着する小突起物の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面及び詳細な説明の全体を通じて同じ要素を示すために共通の参照符号が用いられる。
【0017】
隣接する複数枚のタイルを貼り付けのブロック単位とし、複数枚のタイル間
を、複数枚相当分の固定点を中心とした網目状のネットを張り巡らせたタイル
落下防止ネットで連結することで、全体としてタイルの剥落による落下防止と
する。タイル裏面の溝または裏足間に嵌合または接着する交点部材と、そこで
交差する2方向の線材で成る方形、またはひし形、3角形を基調とした網目状
の落下防止ネットであって、タイル裏面の溝に交点部材を嵌合することにより
固定点となり、2方向に伸びる線材とで隣接のタイル裏面間の連結となり面的
に落下防止ネットワークを形成する。交点部材、線材ともに、裏面側のモルタ
ルに埋もれるので固着力、周辺付着力が働き、さらなる落下抵抗を増し、落下
防止の効果を発揮する。1枚のタイルの短辺4.5cm、長辺9.5cm、目
地間隔3~4mmとして、通し目地貼りを基本として記す。芋目地貼りでは長
辺14.5cmのタイルでそれ以外のタイル、貼り付け方法となっても応用で
きる。
タイル落下防止ネットの交点部材および線材は、強化プラスチック、プラスチ
ック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金
網などで成り、強化プラスチック、プラスチック、ステンレス以外は、腐食防
止のために、樹脂被覆、塗装、メッキなどを施すものとする。タイルはコンク
リートが固化した柱、壁面にモルタル、接着剤で下地処理した上から貼り付け
る後付け工程とする。平面的な溶接金網では裏足間の固定点として嵌合、接着
するために固形の突起を付加し交点部材とする。
ここでは、(実施例1)で複数枚の前記タイルをブロック単位とし、タイル裏
面側のタイル落下防止ネットにより連結する基本のブロック単位について掲げ
る。ブロック単位は、タイルの大きさ、重さ、施工性、貼り付け模様さらに、
建物の重要度、落下影響度によって異なる。
次に注意しなければならないのは、複数枚のタイルのブロック単位では基本的
には面的に連結施工できているとしても、壁の面積はまだまだ広く、ブロック
単位ごとに連結の切れ目が生じるので、さらなる落下防止を図る。連結の範囲
を拡大する方法として、タイル裏面側のネットを拡張してネットで裏面側を直
接連結する方法(実施例2~5)と、タイル表面側からの方法として、裏面側
をネット連結したブロック単位を線材で上から間接的に2次元、3次元に押さ
えることで連結する方法(実施例6)がある。
また、経年の既設の建物、構造物の落下対策(実施例7)も重要である。
これらは、事故が起きた時の検証として、正しく施工されているかが後に立証されることとして非破壊検査対応(実施例8)も大切である。
全体として、落下防止ネットおよび後に敷設する線材には、防錆性能が求められるのは当然のことである。
【実施例0018】
図2に示すタイルの通し目地貼りでは、水平に3枚、垂直に6枚配置すると18枚、目地幅を入れて30cm*30cmが単位広さ、ブロック単位とする。タイル1枚1枚に裏面の裏足の溝に嵌合する固定点を形成し、タイル枚数と、網目の交差する固定点の交点部材数が一致する。これがタイル裏面におけるタイル落下防止ネットによる連結となる基本の1ブロック単位である。これにより18枚の複数枚相当のタイルがネットで連結されるので、最小限の基本となるタイル落下対策はできたと評価できる。ここでは、18枚の場合の30cm*30cmを基準とする1ブロック単位を面的標準ブロックとする。