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特開2024-102537送風装置、送風システム、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102537
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】送風装置、送風システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20240724BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F04D27/00 101Y
F04D27/00 101M
F04D25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006491
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 京佑
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】村上 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】菊池 雄行
【テーマコード(参考)】
3H021
3H130
【Fターム(参考)】
3H021AA06
3H021AA08
3H021BA06
3H021DA03
3H021DA21
3H021EA03
3H021EA11
3H021EA12
3H130AA13
3H130AB05
3H130AB26
3H130AB52
3H130AB66
3H130AB70
3H130AC11
3H130BA72C
3H130BA76C
3H130CA06
3H130DD01Z
3H130DF01X
3H130DF03X
3H130DG03X
3H130EB05Z
3H130ED05C
(57)【要約】
【課題】通信エラーが発生した場合の送風装置の異常動作を抑制する。
【解決手段】遠隔地の風を対象空間(S)に再現する送風装置(10)であって、送信部(52)から送信された遠隔地の風に関する風データを、通信回線(45)を介して受信する受信部(17)と、対象空間(S)に空気を吹き出すファン(30)と、受信部(17)で受信した風データに基づいてファン(30)を制御する制御部(40)とを備える。制御部(40)は、送信部(52)と受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに、送信部(52)から受信部(17)に送信される風データ以外の風データである代替データに基づいて、ファン(30)を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔地の風を対象空間(S)に再現する送風装置であって、
送信部(52)から送信された前記遠隔地の風に関する風データを、通信回線(45)を介して受信する受信部(17)と、
前記対象空間(S)に空気を吹き出すファン(30)と、
前記受信部(17)で受信した前記風データに基づいて前記ファン(30)を制御する制御部(40)とを備え、
前記制御部(40)は、前記送信部(52)と前記受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに、前記送信部(52)から前記受信部(17)に送信される前記風データ以外の前記風データである代替データに基づいて、前記ファン(30)を制御する
送風装置。
【請求項2】
前記代替データを記憶する記憶部(18)を更に備え、
前記制御部(40)は、前記通信エラーが発生したときに、前記記憶部(18)に記憶された前記代替データに基づいて前記ファン(30)を制御する
請求項1に記載の送風装置。
【請求項3】
前記代替データは、予め設定された前記風データである
請求項2に記載の送風装置。
【請求項4】
前記代替データは、過去にセンサ(51)で検出された前記風データである
請求項2に記載の送風装置。
【請求項5】
過去にセンサ(51)で検出された前記風データを記憶する記憶部(18)を更に備え、
前記制御部(40)は、前記通信エラーが発生したときに、前記記憶部(18)に記憶された前記風データに基づいて前記代替データとしての現在の前記風データを推定し、推定した現在の前記風データに基づいて前記ファン(30)を制御する
請求項1に記載の送風装置。
【請求項6】
前記制御部(40)は、ARモデル、MAモデル、又はARIMAモデルを用いて、現在の前記風データを推定する
請求項5に記載の送風装置。
【請求項7】
前記受信部(17)は、補助送信部(52b)から送信された前記風データを、前記通信回線(45)を介して受信し、
前記代替データは、前記補助送信部(52b)から前記受信部(17)に送信された前記風データである
請求項1に記載の送風装置。
【請求項8】
前記補助送信部(52b)は、前記送信部(52)と異なる他の遠隔地に設置される
請求項7に記載の送風装置。
【請求項9】
前記補助送信部(52b)は、複数の前記他の遠隔地に設置される
請求項8に記載の送風装置。
【請求項10】
複数の前記他の遠隔地と、該他の遠隔地に対応する前記風データとを記憶する記憶部(18)を更に備え、
前記制御部(40)は、前記通信エラーが発生したときに、前記記憶部(18)に記憶された複数の前記他の遠隔地の中から前記送信部(52)から送信された前記風データの特徴に最も近い特徴を有する前記他の遠隔地を選択し、選択された前記他の遠隔地の前記補助送信部(52b)から送信される前記風データを前記代替データとして決定する
請求項9に記載の送風装置。
【請求項11】
前記制御部(40)は、前記受信部(17)が受信した前記風データが予め設定した定義に合致するか否かを判定し、前記風データが前記定義に合致していなかった場合に前記通信エラーが発生したと判断する
請求項1に記載の送風装置。
【請求項12】
前記通信エラーが発生したときに、該通信エラーが発生したことを報知する報知部(19)を更に備える
請求項1に記載の送風装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1つに記載の送風装置(10)と、
前記遠隔地に設置されるセンサユニット(50)とを備え、
前記センサユニット(50)は、前記送信部(52)と、該送信部(52)から送信する前記風データを検出するセンサ(51)とを有する
送風システム。
【請求項14】
遠隔地の風に関する風データを送信する送信部(52)と該送信部(52)から前記風データを受信する受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに、前記送信部(52)から前記受信部(17)に送信される前記風データ以外の前記風データである代替データに基づいて、送風装置(10)のファン(30)を制御する処理をコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風装置、送風システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のプロペラファンを備えた送風装置が開示されている。この送風装置は、遠隔地の屋外に設置されたセンサユニットから通信回線を介して送信された風速データをリアルタイムに受信し、受信した風速データに基づいて複数のプロペラファンを制御している。これにより、送風装置から吹き出される風によって遠隔地の自然風が再現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-143631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の送風装置では、センサユニットと送風装置との間でデータの通信を行うため、通信障害等の何らかの原因でデータの送受信が正常に行われない通信エラーが発生した場合、送風装置が不安定な動作をしたり、急に停止したりする可能性がある。このような不安定な動作がされると、送風装置の風を受けた人が不快に感じる可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、通信エラーが発生した場合の送風装置の異常動作を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、遠隔地の風を対象空間(S)に再現する送風装置を対象とする。送風装置(10)は、送信部(52)から送信された前記遠隔地の風に関する風データを、通信回線(45)を介して受信する受信部(17)と、前記対象空間(S)に空気を吹き出すファン(30)と、前記受信部(17)で受信した前記風データに基づいて前記ファン(30)を制御する制御部(40)とを備える。前記制御部(40)は、前記送信部(52)と前記受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに、前記送信部(52)から前記受信部(17)に送信される前記風データ以外の前記風データである代替データに基づいて、前記ファン(30)を制御する。
【0007】
第1の態様では、通信エラーが発生したときに、送信部(52)から受信部(17)に送信される風データ以外の風データである代替データに基づいてファン(30)が制御されるので、ファン(30)が不安定な動作をしにくくなる。これにより、送風装置(10)の異常動作を抑制できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記代替データを記憶する記憶部(18)を更に備え、前記制御部(40)は、前記通信エラーが発生したときに、前記記憶部(18)に記憶された前記代替データに基づいて前記ファン(30)を制御する。
【0009】
第2の態様では、通信エラーが発生したときに、記憶部(18)に記憶された代替データの風が対象空間(S)に再現される。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記代替データは、予め設定された前記風データである。
【0011】
第3の態様では、通信エラーが発生したときに、代替データとして予め設定された風データの風が対象空間(S)に再現される。
【0012】
第4の態様は、第2の態様において、前記代替データは、過去にセンサ(51)で検出された前記風データである。
【0013】
第4の態様では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生前に再現していた風データと同じ場所の過去の風データに基づいてファン(30)が制御される。これにより、通信エラーが発生しても、対象空間(S)に居る人が違和感や不快感を感じにくくできる。
【0014】
第5の態様は、第1の態様において、過去にセンサ(51)で検出された前記風データを記憶する記憶部(18)を更に備え、前記制御部(40)は、前記通信エラーが発生したときに、前記記憶部(18)に記憶された前記風データに基づいて前記代替データとしての現在の前記風データを推定し、推定した現在の前記風データに基づいて前記ファン(30)を制御する。
【0015】
第5の態様では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生前に再現していた遠隔地の風データから現在の風データを推定するので、揺らぎのある自然な風を再現できる。
【0016】
第6の態様は、第5の態様において、前記制御部(40)は、ARモデル、MAモデル、又はARIMAモデルを用いて、現在の前記風データを推定する。
【0017】
第6の態様では、ARモデル、MAモデル、又はARIMAモデルを用いるので、現在の風データを精度よく推定できる。
【0018】
第7の態様は、第1の態様において、前記受信部(17)は、補助送信部(52b)から送信された前記風データを、前記通信回線(45)を介して受信し、前記代替データは、前記補助送信部(52b)から前記受信部(17)に送信された前記風データである。
【0019】
第7の態様では、通信エラーが発生したときに、受信部(17)で受信する風データの送信元を送信部(52)から補助送信部(52b)に切り替えるので、送風装置(10)の異常動作を抑制できる。
【0020】
第8の態様は、第7の態様において、前記補助送信部(52b)は、前記送信部(52)と異なる他の遠隔地に設置される。
【0021】
第8の態様では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生直前に再現していた遠隔地と異なる他の遠隔地の風が対象空間(S)に再現される。
【0022】
第9の態様は、第8の態様において、前記補助送信部(52b)は、複数の前記他の遠隔地に設置される。
【0023】
第9の態様では、通信エラーが発生したときに、複数の他の遠隔地のうち、いずれかの他の遠隔地の風が対象空間(S)に再現される。
【0024】
第10の態様は、第9の態様において、複数の前記他の遠隔地と、該他の遠隔地に対応する前記風データとを記憶する記憶部(18)を更に備える。前記制御部(40)は、前記通信エラーが発生したときに、前記記憶部(18)に記憶された複数の前記他の遠隔地の中から前記送信部(52)から送信された前記風データの特徴に最も近い特徴を有する前記他の遠隔地を選択し、選択された前記他の遠隔地の前記補助送信部(52b)から送信される前記風データを前記代替データとして決定する。
【0025】
第10の態様では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生直前に再現していた風データの特徴に最も近い特徴を有する他の遠隔地の風データを代替データとして決定するので、通信エラー発生直前に再現していた風に類似する風が再現される。これにより、対象空間(S)に居る人が違和感や不快感を感じにくくできる。
【0026】
第11の態様は、第1~第10のいずれか1つの態様において、前記制御部(40)は、前記受信部(17)が受信した前記風データが予め設定した定義に合致するか否かを判定し、前記風データが前記定義に合致していなかった場合に前記通信エラーが発生したと判断する。
【0027】
送信された風データがデータの定義に合致していないときに予期せぬファン(30)の異常動作が生じる可能性が高い。第11の態様では、風データが予め設定したデータの定義に合致するか否かを判定することにより、送風装置(10)の異常動作を抑制できる。
【0028】
第12の態様は、第1~第11のいずれか1つの態様において、前記通信エラーが発生したときに、該通信エラーが発生したことを報知する報知部(19)を更に備える。
【0029】
第12の態様では、通信エラーが発生したことを、例えば、送風装置(10)の管理者等に知らせることができる。
【0030】
第13の態様は、第1~第12のいずれか1つの態様の送風装置(10)と、前記遠隔地に設置されるセンサユニット(50)とを備え、前記センサユニット(50)は、前記送信部(52)と、該送信部(52)から送信する前記風データを検出するセンサ(51)とを有する送風システムである。
【0031】
第13の態様では、送風装置(10)に加えてセンサユニット(50)を備える送風システム(1)を提供できる。これにより、送風装置(10)の異常動作が抑制された送風システム(1)を提供できる。
【0032】
第14の態様は、遠隔地の風に関する風データを送信する送信部(52)と該送信部(52)から前記風データを受信する受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに、前記送信部(52)から前記受信部(17)に送信される前記風データ以外の前記風データである代替データに基づいて、送風装置(10)のファン(30)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0033】
第14の態様では、送風装置(10)の異常動作を抑制できるプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、実施形態1の送風システムの概略の構成図である。
図2図2は、実施形態1の送風装置のブロック図である。
図3図3は、実施形態1の送風装置の本体部と仮想面とを示す概略の斜視図である。
図4図4は、実施形態1の送風装置の制御部の基本動作を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態1の通信エラーの判定処理を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態2の送風装置のブロック図である。
図7図7は、実施形態3の送風システムの概略の構成図である。
図8図8は、実施形態3の送風装置のブロック図である。
図9図9は、実施形態3の記憶部に記憶された風データを示す概念図である。
図10図10は、実施形態4の送風装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0036】
《実施形態1》
実施形態1の送風システム(1)について、図1図5を参照しながら説明する。
【0037】
(1)送風システム
送風システム(1)は、遠隔地の自然風を対象空間(S)に再現するシステムである。図1に示すように、送風システム(1)は、一つの送風装置(10)と、一つのセンサユニット(50)を備える。送風装置(10)とセンサユニット(50)とは、互いに遠く離れた場所に設置される。
【0038】
送風装置(10)は、例えば、建物内のオフィスやイベントスペース等の室内空間(対象空間(S))に設置される。送風装置(10)は、対象空間(S)に遠隔地の自然風を模した風を吹き出す。送風装置(10)の詳細については、後述する。
【0039】
センサユニット(50)は、遠隔地の屋外に設置される。センサユニット(50)は、センサ(51)と送信部(52)を有する。
【0040】
センサユニット(50)は、センサ(51)として、風速センサを一つ備える。この風速センサは、センサユニット(50)が設置された屋外の自然環境において吹いている風(自然風)の速度を計測する。センサユニット(50)は、センサ(51)として、風速センサに加えて他のセンサを備えてもよい。例えば、センサ(51)は、センサユニット(50)が設置された屋外の温度を計測する温度センサを含んでもよい。
【0041】
送信部(52)は、インターネット等の通信回線(45)を介して、送風装置(10)と通信可能に接続される。送信部(52)は、センサ(51)の検出値を含む遠隔地の風に関するデータ(以下、風データという)を、通信回線(45)を介してリアルタイムに送風装置(10)に送信する。風データには、風速の時系列データ、所定期間における平均風速、所定期間における風速の変動パターン、所定期間における平均温度などのデータが含まれる。
【0042】
本実施形態のセンサユニット(50)では、5秒毎に風速センサで風速を計測し、六つの風速値を取得する。そして、取得した六つの風速値(30秒間分の風速の時系列データ)を1セットの時系列データとして送信部(52)から送風装置(10)に送信する。
【0043】
(2)送風装置
送風装置(10)は、センサユニット(50)が設置された遠隔地の風を対象空間(S)に再現する装置である。図2に示すように、送風装置(10)は、送風ファン(30)を含む本体部(15)と、受信部(17)と、記憶部(18)と、制御部(40)とを有する。
【0044】
(2-1)本体部
図3に示すように、本体部(15)は、前後方向の奥行き比較的短い直方体状に形成される。本体部(15)は、左右方向の幅と上下方向の高さのそれぞれが、概ね1.6m程度である。なお、本体部(15)についての説明で用いる「上」「下」「左」「右」「前」「後」は、図3に示す方向(本体部(15)を正面から見たときの方向)を意味する。
【0045】
本体部(15)には、送風ファン(30)が16個設けられる。各送風ファン(30)は、対象空間(S)に空気を吹き出す。送風ファン(30)は、本開示のファン(30)に対応する。本体部(15)において、16個の送風ファン(30)は、左右方向と上下方向のそれぞれに4個ずつマトリックス状に配置される。
【0046】
各送風ファン(30)は、羽根車(31)とシュラウド(32)とを備えた軸流送風機である。羽根車(31)は、いわゆるプロペラファンである。各送風ファン(30)において、シュラウド(32)は、羽根車(31)の周囲を囲むように配置される。各送風ファン(30)には、羽根車(31)を駆動するファンモータ(図示省略)が設けられる。羽根車(31)は、ファンモータの出力軸に取り付けられる。
【0047】
本体部(15)において、16個の送風ファン(30)は、本体部(15)の前面に面している。本体部(15)の前面は、各送風ファン(30)から吹き出された空気が吹き出される吹出領域(16)を構成する。本実施形態の送風装置(10)において、吹出領域(16)は、左右方向の幅が1.6mで、上下方向の高さが1.6mの正方形状の平面である。
【0048】
(2-2)受信部
受信部(17)は、通信回線(45)を介して、センサユニット(50)の送信部(52)と通信可能に接続される。受信部(17)は、送信部(52)から送信された風データをリアルタイムに受信する。
【0049】
(2-3)記憶部
記憶部(18)は、受信部(17)で受信した風データを記憶する。記憶部(18)は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)の少なくとも1つを含む。
【0050】
また、記憶部(18)は、送信部(52)と受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに送風ファン(30)の制御に用いる代替データを記憶する。代替データは、送信部(52)から受信部(17)にリアルタイムに送信される風データ以外の風データである。本実施形態では、代替データとして、予め設定された風データが記憶部(18)に記憶されている。
【0051】
具体的には、本実施形態の代替データは、送風装置(10)の製造時に予め設定されて記憶部(18)に記憶された風速の時系列データ(以下、風速データという)である。この代替データは、所定の地点(例えば、日本の軽井沢や沖縄など)において過去に実際に計測された風速データである。記憶部(18)には、代替データとして所定期間(例えば10分間)の風速データが記憶されている。
【0052】
(2-4)制御部
制御部(40)は、マイクロコンピュータ及びメモリディバイスを含む。メモリディバイスは、マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納する。
【0053】
制御部(40)は、機能的な要素として、エラー判定部(41)とファン制御部(42)を有する。言い換えると、制御部(40)は、メモリディバイスに記憶されたプログラムを実行することで、エラー判定部(41)及びファン制御部(42)として機能する。
【0054】
制御部(40)に記憶されたプログラムは、第1処理、第2処理、及び第3処理をコンピュータとしての制御部(40)に実行させる。第1処理では、送信部(52)と受信部(17)との間で通信エラーが発生しているか否かを判定する。第2処理では、通信エラーが発生していないときに、受信部(17)でリアルタイムに受信した風データに基づいて送風ファン(30)を制御する。第3処理では、通信エラーが発生しているときに、記憶部(18)に記憶された代替データに基づいて送風ファン(30)を制御する。
【0055】
(2-4-1)エラー判定部
エラー判定部(41)は、送信部(52)と受信部(17)との間で通信エラーが発生しているか否かを判定する。ここで、通信エラーは、通信回線(45)の障害等による通信不能、送受信データの欠損、送受信データの文字化けを含む。
【0056】
(2-4-2)ファン制御部
ファン制御部(42)は、風データ(本実施形態では、風速データ)に基づいて、本体部(15)に設けられた各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御するように構成される。ファン制御部(42)は、通信エラーの発生の有無に応じて、送風ファン(30)の制御を変更する。
【0057】
具体的には、通信エラーが発生していないときには、ファン制御部(42)は、受信部(17)でリアルタイムに受信した風データに基づいて、各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する。一方、通信エラーが発生しているときには、ファン制御部(42)は、記憶部(18)に記憶された風データである代替データに基づいて、各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する。
【0058】
本実施形態では、ファン制御部(42)は、吹出領域(16)から吹き出される空気の流速が、風データに含まれる風速データの風速値と同じになるように送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する。その際、制御部(40)は、全ての送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を同じ値に設定する。
【0059】
ファン制御部(42)は、吹出領域(16)から吹き出される空気の流速の変動パターンが、風データに含まれる風速の変動パターンとなるように、各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を調節してもよい。この場合、ファン制御部(42)は、風データの風速値が上昇すると各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を増加させ、風データの風速値が低下すると各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を減少させる。
【0060】
(3)送風装置の動作
本実施形態の送風装置(10)の本体部(15)において、各送風ファン(30)の羽根車(31)は、互いに同じ回転速度で回転する。したがって、本体部(15)にマトリックス状に配置された16個の送風ファン(30)は、それぞれの吹出し風速が互いに概ね一致する。本体部(15)の前面である吹出領域(16)からは、16個の送風ファン(30)が吹き出した空気が、前方へ向かって吹き出される。
【0061】
各送風ファン(30)から吹き出される吹出領域(16)を通過した空気は、互いに拡散し、それぞれの風速が平均化される。その結果、図3に示す仮想面(V)の全体において、風速が概ね均一化される。ここで、仮想面(V)は、図3に長方形A,B,C,Dで示される仮想の平面である。この仮想面(V)は、吹出領域(16)と向かい合う長方形の仮想面である。仮想面(V)は、吹出領域(16)と平行な鉛直面である。仮想面(V)の長辺は、上下方向に沿っている。仮想面(V)の短辺は、左右方向に沿っている。
【0062】
(4)制御部の動作
(4-1)制御部の基本動作
図4に示すように、送風装置(10)の受信部(17)は、センサユニット(50)の送信部(52)から送信された風データを受信する(ステップST11)。次いで、送風装置(10)の制御部(40)は、受信した風データを記憶部(18)に記憶する(ステップST12)。
【0063】
次いで、エラー判定部(41)は、後述する通信エラーの判定処理を行う(ステップST13)。通信エラーの判定処理では、センサユニット(50)の送信部(52)と送風装置(10)の受信部(17)との間で通信エラーが発生しているか否かを判定する。
【0064】
通信エラーが発生していないと判定された場合(ステップST14のNO)、ファン制御部(42)は、センサユニット(50)からリアルタイムに受信し記憶部(18)に記憶された風データに基づいて、送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する(ステップST15)。これにより、吹出領域(16)と向かい合う仮想面(V)において、センサユニット(50)の設置場所における自然風が再現される。
【0065】
通信エラーが発生したと判定された場合(ステップST14のYES)、ファン制御部(42)は、記憶部(18)に記憶された代替データ(風データ)に基づいて、送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する(ステップST16)。これにより、通信エラーが発生した場合においても、送風ファン(30)の制御に代替データが用いられるので、送風ファン(30)の異常動作を抑制できる。加えて、本実施形態の代替データは、所定の地点において過去に実際に計測された風データであるため、代替データに基づいて送風ファン(30)が制御されても、対象空間(S)において送風装置(10)から吹き出された風を受けた人の快適性を維持できる。
【0066】
(4-2)通信エラーの判定処理
図4のステップST13の通信エラーの判定処理について、図5を参照しながら説明する。
【0067】
図5に示すように、通信エラーの判定処理では、まず、エラー判定部(41)が、受信部(17)が風データを受信できたか否かを判定する(ステップST21)。風データを受信できなかった場合(ステップST21のNO)には、エラー判定部(41)は、通信エラーが発生したと判定する(ステップST22)。
【0068】
風データを受信できた場合(ステップST21のYES)には、エラー判定部(41)は、受信した風データが予め設定したデータの定義に合致するか否かを判定する(ステップST23)。本実施形態では、データの定義は、風データに風速の時系列データとして六つの風速値(数値)を含んでいることである。
【0069】
データの定義に合致していた場合(ステップST23のYES)には、エラー判定部(41)は、通信エラーが発生していないと判定する(ステップST24)。一方、データの定義に合致していない場合(ステップST23のNO)には、エラー判定部(41)は、通信エラーが発生したと判定する(ステップST22)。データの定義に合致していない場合とは、例えば、受信した風速の時系列データに五つの風速値しか含まれていない場合や、受信した風速の時系列データの中に文字化けした値が混入している場合等である。
【0070】
(5)特徴
(5-1)
本実施形態の送風装置(10)は、送信部(52)から送信された遠隔地の風に関する風データを、通信回線(45)を介して受信する受信部(17)と、対象空間(S)に空気を吹き出す送風ファン(30)と、受信部(17)で受信した風データに基づいて送風ファン(30)を制御する制御部(40)とを備える。制御部(40)は、送信部(52)と受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに、送信部(52)から受信部(17)に送信される風データ以外の風データである代替データに基づいて、送風ファン(30)を制御する。
【0071】
本実施形態では、通信エラーが発生したときに、送信部(52)から受信部(17)にリアルタイムに送信される風データ以外の風データである代替データに基づいてファン(30)が制御される。そのため、送風ファン(30)の回転速度が短時間で急激に変化するような予期せぬ不安定な動作が生じにくくなる。これにより、送風装置(10)の異常動作を抑制できる。その結果、送風装置(10)から吹き出す風を受ける人の不快感を抑制できる。
【0072】
(5-2)
本実施形態の送風装置(10)は、代替データを記憶する記憶部(18)を備える。制御部(40)は、通信エラーが発生したときに、記憶部(18)に記憶された代替データに基づいて送風ファン(30)を制御する。
【0073】
本実施形態では、通信エラーが発生したときに、記憶部(18)に記憶された代替データに基づいて送風ファン(30)が制御されるので、代替データの風が対象空間(S)に再現される。
【0074】
(5-3)
本実施形態の送風装置(10)の代替データは、予め設定された風データである。本実施形態では、通信エラーが発生したときに、代替データとして予め設定された風データに基づいて送風ファン(30)が制御されるので、予め設定された風データの風が対象空間(S)に再現される。
【0075】
本実施形態の代替データは、送風装置(10)の製造時に予め設定され、記憶部(18)に記憶された風データである。本実施形態では、通信エラーが発生したときに、製造時に予め設定された風データに基づいて送風ファン(30)が制御されるので、通信エラー発生時において、安定した風を対象空間(S)に提供できる。
【0076】
本実施形態の代替データは、所定の地点において過去に実際に計測された風データである。そのため、代替データに基づいて送風ファン(30)が制御されても、対象空間(S)において送風装置(10)から吹き出された風を受けた人の快適性を維持できる。
【0077】
(5-4)
本実施形態の送風装置(10)の制御部(40)は、受信部(17)が受信した風データが予め設定した定義に合致するか否かを判定し、風データが定義に合致していなかった場合に通信エラーが発生したと判断する。
【0078】
送信された風データがデータの定義に合致していないときに予期せぬ送風ファン(30)の異常動作が生じる可能性が高い。本実施形態では、風データが予め設定したデータの定義に合致するか否かを判定することにより、通信回線の障害に起因する通信エラーだけでなく、送信時および受信時に生じるデータの不具合に起因する送風装置(10)の異常動作も抑制できる。
【0079】
(5-5)
本実施形態の送風システム(1)は、送風装置(10)と、遠隔地に設置されるセンサユニット(50)とを備える。そして、センサユニット(50)は、送信部(52)と、該送信部(52)から送信する風データを検出するセンサ(51)とを有する。
【0080】
本実施形態では、送風装置(10)に加えて、センサユニット(50)を備える送風システム(1)が提供できる。これにより、送風装置(10)の異常動作が抑制された送風システム(1)を提供できる。
【0081】
(5-6)
本実施形態のプログラムは、遠隔地の風に関する風データを送信する送信部(52)と該送信部(52)から風データを受信する受信部(17)との間で通信エラーが発生したときに、送信部(52)から受信部(17)にリアルタイムに送信される風データ以外の前記風データである代替データに基づいて、送風装置(10)の送風ファン(30)を制御する処理をコンピュータに実行させる。本実施形態では、送風装置(10)の異常動作を抑制できるプログラムを提供できる。
【0082】
(6)変形例
(6-1)変形例1
上記実施形態の代替データは、過去にセンサユニット(50)のセンサ(51)で検出され、送信部(52)から受信部(17)に送信された風データであってもよい。この場合、記憶部(18)は、受信部(17)でリアルタイムに風データを受信した時点よりも過去の所定期間において受信部(17)で受信された風データを、代替データとして記憶する。
【0083】
詳細には、例えば、記憶部(18)は、受信部(17)でリアルタイムに風データを受信した第1時点から、該第1時点から所定期間α(例えば、10分間)分だけ過去にさかのぼった第2時点(第1時点-α)までの間に受信部(17)で受信された風データを、代替データとして記憶する。そして、第1時点よりも後である第3時点において通信エラーが発生した場合に、制御部(40)は、第1時点から第2時点の間に受信部(17)において受信し且つ記憶部(18)に記憶された風データを代替データとして用いて、送風ファン(30)を制御する。
【0084】
このように、本変形例の送風装置(10)の代替データは、過去にセンサ(51)で検出された風データである。そのため、本変形例では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生前に再現していた風データと同じ場所の過去の風データに基づいてファン(30)が制御される。これにより、通信エラーが発生しても、対象空間(S)に居る人が違和感や不快感を感じにくくできる。
【0085】
また、例えば、第1時点の直後である第4時点において通信エラーが発生した場合に、制御部(40)は、第1時点から第2時点の間に受信部(17)において受信し且つ記憶部(18)に記憶された風データを代替データとして用いて、送風ファン(30)を制御してもよい。
【0086】
この場合、通信エラーが発生した第4時点の直前である第1時点を含む所定期間αにおいて受信部(17)で受信された風データが代替データとして送風ファン(30)の制御に用いられる。言い換えると、代替データは、通信エラーの発生直前に再現していた風データと同じ場所の風データであり、且つ通信エラーの発生直前に受信していた風データである。このため、通信エラーが発生しても、対象空間(S)に居る人が違和感や不快感をより感じにくくできる。
【0087】
(6-2)変形例2
センサユニット(50)には、センサ(51)として複数の風速センサが設けられてもよい。例えば、センサユニット(50)に4個の風速センサを設ける場合は、左右方向と上下方向に2個ずつの風速センサをマトリクス状に配置するのが望ましい。
【0088】
また、例えば、センサユニット(50)に16個の風速センサを設ける場合には、本体部(15)に設けられた16個の送風ファン(30)のそれぞれが別々の風速センサに対応づけられる。この場合、制御部(40)は、各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を、その送風ファン(30)に対応する風速センサの計測値に応じて個別に調整する。
【0089】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態の送風装置(10)では、通信エラーが発生したときに、制御部(40)は、過去の風データに基づいて代替データとしての現在の風データを推定し、推定した現在の風データに基づいて送風ファン(30)を制御する。本実施形態の送風装置(10)は、実施形態1の送風装置(10)において、記憶部(18)及び制御部(40)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の記憶部(18)及び制御部(40)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0090】
(1)記憶部
本実施形態の記憶部(18)は、実施形態1の記憶部(18)と異なり、代替データを記憶していない。記憶部(18)は、受信部(17)でリアルタイムに風データを受信した時点よりも過去の所定期間において受信部(17)で受信された風データを記憶する。詳細には、記憶部(18)は、受信部(17)でリアルタイムに風データを受信した第1時点から、該第1時点から所定期間β分だけ過去にさかのぼった第2時点(第1時点-β)までの間に受信部(17)で受信された風データを記憶する。
【0091】
(2)制御部
図6に示すように、本実施形態の制御部(40)は、機能的な要素として、エラー判定部(41)及びファン制御部(42)に加えて、推定部(43)を有する。言い換えると、制御部(40)は、メモリディバイスに記憶されたプログラムを実行することで、エラー判定部(41)、ファン制御部(42)、及び推定部(43)として機能する。
【0092】
制御部(40)に記憶されたプログラムは、第1処理、第2処理、第4処理、及び第5処理をコンピュータとしての制御部(40)に実行させる。第1処理及び第2処理は、実施形態1と同様である。第4処理では、通信エラーが発生しているときに、記憶部(18)に記憶された過去の風データに基づいて、現在の風データを推定する。第5処理では、推定された現在の風データに基づいて、送風ファン(30)を制御する。
【0093】
推定部(43)では、記憶部(18)に記憶された過去の風データに基づいて、現在の風データを推定する。推定部(43)において推定された現在の風データは、代替データとして送風ファン(30)の制御に用いられる。推定部(43)において推定に用いられる過去の風データは、第1時点から第2時点までの間(所定期間β)に受信部(17)で受信された風データ(本実施形態では、風速データ)である。
【0094】
推定部(43)は、時系列分析により過去の風データから現在の風データを推定するように生成された推定モデルを含む。推定部(43)は、推定モデルを用いて現在の風データを推定する。推定モデルとしては、ARモデル(自己回帰モデル)、MAモデル(移動平均モデル)、又はARIMAモデル(自己回帰移動平均モデル)が用いられる。
【0095】
(3)ファン制御部
本実施形態のファン制御部(42)は、通信エラーが発生していないときには、実施形態1と同様に、受信部(17)でリアルタイムに受信した風データに基づいて、各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する。一方、通信エラーが発生しているときには、ファン制御部(42)は、推定部(43)で推定された現在の風データを代替データとして、該代替データに基づいて各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する。
【0096】
(4)特徴
本実施形態の送風装置(10)は、過去にセンサ(51)で検出され、受信部(17)に送信された風データを記憶する記憶部(18)を更に備える。制御部(40)は、通信エラーが発生したときに、記憶部(18)に記憶された過去の風データに基づいて、代替データとしての現在の風データを推定し、推定した現在の風データに基づいて前記ファン(30)を制御する。本実施形態では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生前に再現していた遠隔地の風データから現在の風データを推定するので、揺らぎのある自然な風を再現できる。
【0097】
本実施形態の送風装置(10)の制御部(40)は、ARモデル、MAモデル、又はARIMAモデルを用いて、現在の前記風データを推定する。本実施形態では、ARモデル、MAモデル、又はARIMAモデルを用いるので、現在の風データを精度よく推定できる。
【0098】
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形態の送風システム(1)は、実施形態1の送風システム(1)において、補助センサユニットを追加し、制御部(40)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の送風システム(1)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0099】
(1)送風システム
図7に示すように、本実施形態の送風システム(1)は、一つの送風装置(10)と、三つのセンサユニット(50)を備える。なお、ここで示すセンサユニット(50)の数は単なる一例である。センサユニット(50)の数は、二つでもよく、四つ以上でもよい。
【0100】
三つのセンサユニット(50)は、一つの主センサユニット(50a)と、二つの補助センサユニット(50b)で構成される。主センサユニット(50a)は、本開示のセンサユニットに対応する。補助センサユニット(50b)は、主センサユニット(50a)を補助するためのセンサユニットである。主センサユニット(50a)及び補助センサユニット(50b)の構成及び機能は、実施形態1のセンサユニットと同じである。
【0101】
二つの補助センサユニット(50b)は、主センサユニット(50a)とは異なる他の遠隔地に設置される。各補助センサユニット(50b)は、複数の他の遠隔地に設置される。すなわち、各センサユニット(50a,50b,50b)は、送風装置(10)から遠く離れた場所であり、且つ互いに遠く離れた場所に設置される。
【0102】
以下の説明では、主センサユニット(50a)はA地点に、第1補助センサユニット(50b)はB地点に、第2補助センサユニット(50b)はC地点に設置されているものする。なお、本実施形態では、A地点にあるセンサユニットを主センサユニット(50a)としたが、B地点又はC地点にあるセンサユニットを主センサユニット(50a)としてもよい。例えば、B地点のセンサユニットを主センサユニット(50a)とした場合には、A地点及びC地点に設置されたセンサユニットが補助センサユニット(50b)となる。
【0103】
主センサユニット(50a)は、主センサ(51a)及び主送信部(52a)を有する。主センサ(51a)は本開示のセンサ(51)に対応し、主送信部(52a)は本開示の送信部(52)に対応する。補助センサユニット(50b)は、補助センサ(51b)及び補助送信部(52b)を有する。
【0104】
(2)送風装置
図8に示すように、本実施形態の送風装置(10)は、送風装置(10)は、送風ファン(30)を含む本体部(15)と、受信部(17)と、記憶部(18)と、制御部(40)とを有する。本体部(15)は、実施形態1と同様の構成である。
【0105】
(2-1)受信部
受信部(17)は、通信回線(45)を介して、主センサユニット(50a)の主送信部(52a)及び各補助センサユニット(50b)の補助送信部(52b)と通信可能に接続される。受信部(17)は、主送信部(52a)から送信された風データと、各補助送信部(52b)から送信された風データをリアルタイムに受信する。受信部(17)は、複数の送信部(52a,52b,52b)から送信された複数の風データを同時に継続して受信している。本実施形態では、各送信部(52a,52b,52b)から送信される風データには、風速データ、所定期間の平均風速、所定期間の平均温度、及び風速の変動パターンが含まれる。
【0106】
(2-2)記憶部
記憶部(18)は、各送信部(52a,52b,52b)から送信され受信部(17)で受信した風データを記憶する。図9に示すように、記憶部(18)には、センサユニット(50)が設置された複数の地点と、各地点に対応する風データが記憶される。なお、図9は、記憶部(18)が記憶する風データの概念図であるため、具体的な数値は示していない。
【0107】
(2-3)制御部
制御部(40)は、機能的な要素として、エラー判定部(41)及びファン制御部(42)に加えて、決定部(44)を有する。言い換えると、制御部(40)は、メモリディバイスに記憶されたプログラムを実行することで、エラー判定部(41)、ファン制御部(42)、及び決定部(44)として機能する。なお、エラー判定部(41)は、実施形態1と同様の機能を有する。
【0108】
制御部(40)に記憶されたプログラムは、第6処理、第7処理、第8処理、及び第9処理をコンピュータとしての制御部(40)に実行させる。第6処理では、主送信部(52a)と受信部(17)との間で通信エラーが発生しているか否かを判定する。第7処理では、通信エラーが発生していないときに、主送信部(52a)から送信されて受信部(17)でリアルタイムに受信した風データに基づいて送風ファン(30)を制御する。
【0109】
第8処理では、通信エラーが発生したときに、記憶部(18)に記憶されたA地点以外の地点(B地点及びC地点)の中から、主送信部(52a)から送信された風データの特徴に最も近い特徴を有する地点を選択し、選択された地点の補助送信部(52b)から送信される風データを代替データとして決定する。第9処理では、第8処理で決定された代替データに基づいて送風ファン(30)を制御する。
【0110】
(2-3-1)決定部
決定部(44)は、通信エラーが発生したときに、送風ファン(30)を制御するのに用いる代替データを決定する。具体的には、決定部(44)は、通信エラーが発生したときに、記憶部(18)に記憶された複数の地点の中から、主送信部(52a)から送信された風データの特徴に最も近い特徴を有する地点を選択する。
【0111】
ここで、風データの特徴が近いか否かは、風データに含まれる所定期間の平均風速、所定期間の平均温度、及び風速の変動パターンを総合的に考慮して判断される。具体的には、例えば、平均風速及び平均温度に予め閾値を設定し、各地点の平均風速及び平均温度がこの閾値を超えるか否かで分類することにより、特徴の近さを判断する。風速の変動パターンでは、例えば、波形パターンの類似度合いにより、特徴の近さを判断する。
【0112】
すなわち、決定部(44)は、主送信部(52a)から送信された風データの平均風速、平均温度、風速の変動パターンが類似する風データを送信している補助送信部(52b)が設置された地点を選択する。そして、決定部(44)は、選択した地点の補助送信部(52b)から送信される風データを代替データとして決定する。
【0113】
例えば、A地点の主送信部(52a)から送信された風データの特徴に最も近い特徴の風データを送信している補助送信部がC地点の第2補助送信部(52b)であった場合には、決定部(44)はC地点を選択し、C地点の第2補助送信部(52b)から送信される風データを代替データとして決定する。
【0114】
(2-3-2)ファン制御部
本実施形態のファン制御部(42)は、通信エラーが発生していないときには、主送信部(52a)から送信されて受信部(17)でリアルタイムに受信した風データに基づいて、各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する。一方、通信エラーが発生しているときには、ファン制御部(42)は、決定部(44)で決定された風データを代替データとして、該代替データに基づいて各送風ファン(30)の羽根車(31)の回転速度を制御する。
【0115】
(3)特徴
(3-1)
本実施形態の送風装置(10)の受信部(17)は、補助送信部(52b)から送信された風データを、前記通信回線(45)を介して受信する。また、本実施形態の代替データは、補助送信部(52b)から受信部(17)に送信された前記風データである。
【0116】
本実施形態では、通信エラーが発生したときに、受信部(17)で受信する風データの送信元を主送信部(52a)から補助送信部(52b)に切り替えるので、送風装置(10)の異常動作を抑制できる。
【0117】
(3-2)
本実施形態の送風装置(10)の補助送信部(52b)は、主送信部(52a)と異なる他の遠隔地に設置される。本実施形態では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生前に再現していた遠隔地と異なる他の遠隔地の風が対象空間(S)に再現される。
【0118】
(3-3)
本実施形態の送風装置(10)の補助送信部(52b)は、複数の他の遠隔地に設置される。本実施形態では、通信エラーが発生したときに、複数の他の遠隔地のうち、いずれかの他の遠隔地の風が対象空間(S)に再現される。
【0119】
(3-4)
本実施形態の送風装置(10)は、複数の他の遠隔地と、該他の遠隔地に対応する風データとを記憶する記憶部(18)を更に備える。制御部(40)は、通信エラーが発生したときに、記憶部(18)に記憶された複数の他の遠隔地の中から送信部(52)から送信された風データの特徴に最も近い特徴を有する他の遠隔地を選択し、選択された他の遠隔地の補助送信部(52b)から送信される風データを代替データとして決定する。
【0120】
本実施形態では、通信エラーが発生したときに、通信エラーの発生前に再現していた風データの特徴に最も近い特徴を有する他の遠隔地の風データを代替データとして決定するので、通信エラー発生前に再現していた風に類似する風が再現される。これにより、対象空間(S)に居る人が違和感や不快感を感じにくくできる。
【0121】
(4)変形例
(4-1)変形例1
上記実施形態の補助センサユニット(50b)は、主センサユニット(50a)と同じ場所又は近い場所に設置されてもよい。
【0122】
(4-2)変形例2
上記実施形態の送風システム(1)は、複数の送風装置(10)を備えてもよい。この場合には、複数の送風装置(10)のうちいずれかの送風装置(10)で通信エラーが生じた場合には、制御部(40)の決定部(44)によって代替データが決定される。そのため、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
《実施形態4》
実施形態4について説明する。本実施形態の送風装置(10)は、実施形態1の送風装置(10)において、報知部(19)を追加したものである。ここでは、本実施形態の送風装置(10)について、実施形態1と異なる点を説明する。
【0124】
図10に示すように、本実施形態の送風装置(10)は、本体部(15)、受信部(17)、記憶部(18)、及び制御部(40)に加えて、報知部(19)を更に備える。報知部(19)は、通信エラーが発生したときに、該通信エラーが発生したことを報知する。送風装置(10)が報知部(19)を備えることによって、例えば送風システム(1)の管理者や対象空間(S)に居る人に通信エラーが発生したことを知らせることができる。
【0125】
本実施形態の報知部(19)は、例えば、LED等の発光部、スピーカ等の音発生部、ディスプレイ等の表示部を含む。報知部(19)が発光部である場合には、発光部は対象空間(S)内で違和感のない色(例えば、白色や緑色)で発光する。この場合、発光部は点滅してもよい。報知部(19)が音発生部である場合には、音発生部からは、異常を示すようなエラー音ではなく、対象空間(S)内で違和感のない音(例えば、鳥の声)が発せられる。報知部(19)が表示部である場合には、管理者が所有するスマートフォンやタブレットなどの通信端末、パソコン等のディスプレイに通信エラーの発生を表示する。
【0126】
本実施形態の制御部(40)のエラー判定部(41)が通信エラーの判定処理を実行した結果、通信エラーが発生したと判定された場合には、制御部(40)が報知部(19)に対して通信エラーの発生を報知するよう指令する。
【0127】
このように、本実施形態の送風装置(10)は、通信エラーが発生したときに、該通信エラーが発生したことを報知する報知部(19)を更に備える。これにより、本実施形態では、通信エラーが発生したことを、例えば、送風装置(10)の管理者や、対象空間(S)に居る人に知らせることができる。
【0128】
また、報知部(19)は、対象空間(S)内において違和感なく自然な形で報知するので、対象空間(S)において送風装置(10)から吹き出す風を受ける人は、通信エラーが発生したことを認識しない一方、送風システム(1)の管理者だけが通信エラーの発生を認識できる。
【0129】
本実施形態では実施形態1と異なる点を説明したが、報知部(19)は、実施形態2及び3に適用してもよい。
【0130】
《参考技術1》
上記各実施形態の送風システム(1)において、通信エラーが発生したときに、送風ファン(30)の動作を停止してもよい。具体的には、制御部(40)のエラー判定部(41)が通信エラーの判定処理を実行した結果、通信エラーが発生したと判定した場合、制御部(40)は送風ファン(30)に対して運転を停止するように指令する。このように、送風システムに通信エラーが発生したときに、制御部(40)が送風ファン(30)を積極的に停止させることにより、送風ファン(30)の予期せぬ異常動作を抑制できる。
【0131】
《参考技術2》
上記各実施形態の送風システム(1)において、センサユニット(50)の送信部(52)及び送風装置(10)の受信部(17)は、互いに複数のネットワーク回線に接続されていてもよい。この場合、制御部(40)のエラー判定部(41)が通信エラーの判定処理を実行した結果、通信エラーが発生したと判定したとき、通信エラーが発生したネットワーク回線以外の別のネットワーク回線に接続を切り替える。これにより、通信障害による通信エラーが解消されるので、送風装置(10)の異常動作を抑制できる。
【0132】
《その他の実施形態》
上記実施形態、それらの変形例、及び参考技術(以下、上記実施形態等という)については、以下のような構成としてもよい。
【0133】
上記各実施形態等の送風装置(10)は、空気調和装置に備えられてもよい。この場合、空気調和装置は、送風装置(10)と、送風装置(10)に吸い込まれる供給空気を熱媒体と熱交換させて供給空気の温度を調節する熱交換器とを備える。空気調和装置は、熱交換器を通過する際に温度調節された供給空気を、送風装置(10)によって吹き出す。
【0134】
上記各実施形態等の送風装置(10)において、送風ファン(30)の型式は、プロペラファンに限られない。例えば、送風ファン(30)は、斜流ファンやシロッコファンであってもよい。
【0135】
上記各実施形態等の送風装置(10)では、いわゆるイオン風素子が本体部(15)に設けられていてもよい。イオン風素子は、放電によってプラズマを発生させ、発生したプラズマによって風を生起させるように構成された素子である。
【0136】
上記各実施形態等の送風システム(1)では、データの定義に合致するか否かの判定をセンサユニット(50)で実行してもよい。この場合、センサユニット(50)は、エラー判定部を有する。センサユニット(50)では、送信部(52)から風データを送信する前に、エラー判定部(41)が送信する風データがデータの定義に合致しているか否かを判定する。送信する風データがデータの定義に合致していた場合は、送信部(52)は風データを送信する。一方、送信する風データがデータの定義に合致していなかった場合は、送信部(52)はエラーが発生していることを示す信号を送信する。
【0137】
上記各実施形態等の送風システム(1)では、記憶部(18)は、送風装置(10)以外の場所に設けられてもよい。例えば、記憶部(18)は、通信回線(45)に接続されたサーバ装置に設けられてもよい。
【0138】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0139】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0140】
以上説明したように、本開示は、送風装置、送風システム、及びプログラムについて有用である。
【符号の説明】
【0141】
1 送風システム
10 送風装置
17 受信部
18 記憶部
19 報知部
30 送風ファン(ファン)
40 制御部
45 通信回線
50 センサユニット
51 センサ
52 送信部
52b 補助送信部
S 対象空間
図1
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