(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102540
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】コネクタ、コネクタの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240724BHJP
H01R 43/20 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01R13/42 Z
H01R43/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006501
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高木 章義
(72)【発明者】
【氏名】増田 椋圭
【テーマコード(参考)】
5E063
5E087
【Fターム(参考)】
5E063HA05
5E063HB14
5E063HB19
5E063XA01
5E063XA20
5E087GG12
5E087MM08
5E087QQ04
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】部品公差や外力負荷による位置ずれを吸収することができ、組み立てが容易で簡素な構成のコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、電線2の端末に接続された接続金具7を収容したハウジング4と、接続金具7に接続された端子3を備えている。端子3は、相手コネクタの端子と嵌合する嵌合部31と、接続金具7に重ねられる板部32を備えている。板部32は、接続金具7と重ねられた状態でボルト6及びナット5によって接続金具7と共締め固定されている。板部32及び接続金具7の重なり面は、嵌合部31の嵌合方向及び電線2のハウジング4外への導出方向に対して傾斜している。ハウジング4には、板部32及び接続金具7を共締め固定する際の端子3の回り止めを行う治具9の挿入孔49が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に接続された板状の接続金具を収容したハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、前記接続金具に接続された端子と、を備え、
前記端子は、相手コネクタの端子と嵌合する嵌合部と、前記接続金具に重ねられる板部と、を備え、
前記板部は、前記接続金具と重ねられた状態でボルト及びナットによって前記接続金具と共締め固定されており、
前記ハウジングは、前記嵌合部を収容した第1収容部と、前記板部及び前記接続金具を収容した第2収容部と、前記電線を収容した第3収容部と、を備え、
前記嵌合部の嵌合方向と前記第3収容部から前記ハウジング外に導出された前記電線の導出方向とが直交しており、
前記板部は、前記接続金具との重なり面が前記嵌合方向及び前記導出方向に対して傾斜しており、
前記第1収容部に、前記板部及び前記接続金具を共締め固定する際の前記端子の回り止めを行う治具の挿入孔が設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記挿入孔が2つ設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタの組み立て方法であって、
前記嵌合方向に延びた棒状部分を備えた治具を用い、前記棒状部分を前記挿入孔に挿入して前記嵌合部に当接させた状態で、前記板部及び前記接続金具を共締め固定する
ことを特徴とするコネクタの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線同士又は電線と電子機器とを接続するためにコネクタが用いられている。コネクタの一例として、
図8に示すものが公知である(特許文献1を参照)。
【0003】
図8に示すコネクタ511は、相手端子と接続される端子513が収容されたフロントホルダ525と、ハウジング517と、蓋部材519と、導体連結用固定端子521と、柔軟性導体579と、を備えている。
【0004】
ハウジング517は、フロントホルダ525が挿着されたホルダ挿着部551と外部電線導出部553とが交差して略L字状に形成されている。ハウジング517には、組み立て作業を行うための作業開口部563が設けられている。この作業開口部563に蓋部材519が装着されている。
【0005】
導体連結用固定端子521は、一端側が外部電線515の芯線547に接続され、中間部565がハウジング517に固定されるとともに外部電線導出部553を通過可能に形成されてハウジング517に収容されている。
【0006】
柔軟性導体579は、軟質材で構成されており、一端部が端子513に接続され、他端部が導体連結用固定端子521の他端側に接続されている。また、柔軟性導体579には、余長によって弛ませた外力吸収部577が設けられている。
【0007】
上記コネクタ511においては、導体連結用固定端子521と端子513との間に生じた位置ずれを柔軟性導体579によって吸収することができる。これにより、端子513は、相手端子との良好な接触が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したコネクタ511は、部品公差や外力負荷による位置ずれを吸収する柔軟性導体579を有しているがゆえに、組み立てに手間がかかる上、部品点数が多くコスト高になってしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、部品公差や外力負荷による位置ずれを吸収することができ、組み立てが容易で簡素な構成のコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、電線の端末に接続された板状の接続金具を収容したハウジングと、前記ハウジング内に収容され、前記接続金具に接続された端子と、を備え、前記端子は、相手コネクタの端子と嵌合する嵌合部と、前記接続金具に重ねられる板部と、を備え、前記板部は、前記接続金具と重ねられた状態でボルト及びナットによって前記接続金具と共締め固定されており、前記ハウジングは、前記嵌合部を収容した第1収容部と、前記板部及び前記接続金具を収容した第2収容部と、前記電線を収容した第3収容部と、を備え、前記嵌合部の嵌合方向と前記第3収容部から前記ハウジング外に導出された前記電線の導出方向とが直交しており、前記板部は、前記接続金具との重なり面が前記嵌合方向及び前記導出方向に対して傾斜しており、前記第1収容部に、前記板部及び前記接続金具を共締め固定する際の前記端子の回り止めを行う治具の挿入孔が設けられていることを特徴とするコネクタである。
【0012】
本発明は、上記コネクタの組み立て方法であって、前記嵌合方向に延びた棒状部分を備えた治具を用い、前記棒状部分を前記挿入孔に挿入して前記嵌合部に当接させた状態で、前記板部及び前記接続金具を共締め固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品公差や外力負荷による位置ずれを吸収することができ、組み立てが容易で簡素な構成のコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコネクタの組み立て途中の状態を示す断面図である。
【
図5】
図1のコネクタに治具が取り付けられていない状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態にかかる「コネクタ」について、
図1~7を参照して説明する。
【0016】
図1,5に示すコネクタ1は、車載機器の筐体に取り付けられた相手コネクタに接続されるものである。このコネクタ1は、電線2の端末に接続された板状の接続金具7を収容したハウジング4と、ハウジング4内に収容され、接続金具7に接続された端子3等を備えている。
【0017】
電線2は、芯線21と絶縁被覆とを備えた丸形電線である。電線2の端末は、絶縁被覆が剥がれて芯線21が露出している。露出した芯線21は、接続金具7に超音波接合されている。また、本例のコネクタ1は、2本の電線2の端末に接続されている。
【0018】
端子3は、導電性の金属板にプレス加工等が施されて得られるものである。端子3は、相手コネクタの端子と嵌合する嵌合部31と、接続金具7に重ねられる板部32と、を備えている。嵌合部31は、雌型であり、相手コネクタの雄型の端子を受け入れる筒部38と、該筒部38の内側に設けられたバネ39と、筒部38の外方に突出した突起34と、を備えている。板部32は、接続金具7と重ねられた状態でボルト6及びナット5によって接続金具7と共締め固定されている。本例では、作業性を良くするためにナット5が板部32に取り付けられている。
【0019】
ハウジング4は、絶縁性の合成樹脂で構成されている。ハウジング4は、嵌合部31を収容した第1収容部41と、板部32及び接続金具7を収容した第2収容部42と、電線2を収容した第3収容部43と、を備えている。ハウジング4は、嵌合部31の嵌合方向と第3収容部43からハウジング4外に導出された電線2の導出方向とが直交するように形成されており、側方から見てL字状に形成されている。
【0020】
第1収容部41には、相手コネクタの端子が挿通される開口部44と、端子3の突起34を位置付ける凹部48(
図3,6参照)と、端子3に係止孔33に係止するランス47と、後述する治具9の挿入孔49が設けられている。また、
図2,3に示すように、本例では挿入孔49が2つ設けられている。
【0021】
第2収容部42には、板部32と接続金具7とをボルト6及びナット5によって共締め固定する際の作業用開口40が設けられている。作業用開口40は、第2収容部42における第1収容部41と反対側に設けられている。この作業用開口40は、不図示の蓋によって塞がれる。
【0022】
端子3の板部32が第2収容部42に収容された状態で、板部32は、接続金具7との重なり面が嵌合部31の嵌合方向及び電線2のハウジング4外への導出方向に対して傾斜している。よって、板部32に重ねられた接続金具7も板部32と同様に傾斜している。また、接続金具7に接合された電線2の端末は、当該電線2のハウジング4外への導出方向に対し作業用開口40側に曲がっている。
【0023】
また、本例では、ハウジング4に対して、端子3、接続金具7及び電線2をリジッドには固定していない。各部品の公差や嵌合部31が相手端子と嵌合する際の負荷等によって板部32及び接続金具7の位置は若干ずれることがあるが、このずれに応じて電線2の曲がり具合が変更されることで、端子3にかかる負荷を減少させることができる。即ち、コネクタ1は、部品公差や外力負荷による位置ずれを電線2で吸収することができる。
【0024】
続いて、上記コネクタ1の組み立て方法の一例を説明する。まず、電線2の端末の絶縁被覆を剥がし、芯線21を接続金具7に超音波接合する。次に、解放状態の作業用開口40からアクセスして第1収容部41に端子3を組み付ける。次に、電線2を第3収容部43側からハウジング4内に挿入し、接続金具7を板部32に重ねる。次に、作業用開口40からアクセスして接続金具7と板部32をボルト6及びナット5によって共締め固定する。そして、作業用開口40を蓋5で塞ぐ。このような手順を経てコネクタ1が組み立てられる。
【0025】
また、接続金具7と板部32をボルト6及びナット5によって共締め固定する際は、
図4に示す治具9を用いることで端子3の回り止めを行う。治具9は、平板部91と、平板部91の縁から立設した周壁92と、平板部91から立設した一対の棒状部分93と、を備えている。
【0026】
この治具9を
図1,2に示すようにハウジング4に取り付ける。詳細には、周壁92の内側に第1収容部41を位置付けるとともに、嵌合方向に延びた一対の棒状部分93を各挿入孔49に挿入して嵌合部31に当接させる。この状態で、板部32及び接続金具7を共締め固定する。
【0027】
治具9を用いず板部32及び接続金具7を共締め固定する場合、締結する際に端子3が回転して、
図6に示すように端子3の突起34がハウジング4の凹部48に干渉したり、
図7に示すように、ハウジング4のランス47が端子3の係止孔33に干渉したりする。このように干渉すると、ハウジング4の変形や破損が懸念される。治具9を用いることで、端子3の回転を規制することができ、ハウジング4の変形や破損を防止できる。また、挿入孔49は、導通確認の孔としても使用が可能である。
【0028】
このようにコネクタ1においては、電線2の端末を曲げた状態でハウジング4内に収容することで、従来品のように柔軟性導体(
図8を参照)を用いることなく、部品公差や外力負荷による位置ずれを吸収することができる。よって、端子3にかかる負荷を低減できる。また、コネクタ1は、柔軟性導体を廃止しているので、組み立ての手間や部品点数を減らすことができ、コスト低減が可能になる。
【0029】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0030】
1 コネクタ
2 電線
3 端子
4 ハウジング
5 ナット
6 ボルト
7 接続金具
9 治具
31 嵌合部
32 板部
41 第1収容部
42 第2収容部
43 第3収容部
49 挿入孔
93 棒状部分