(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102544
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
H05K1/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006507
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】野口 英俊
(72)【発明者】
【氏名】寺内 伊久哉
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA24
5E317BB12
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD27
5E317GG05
(57)【要約】
【課題】スルーホール内部の回路用金属が断線することを抑制することのできる配線基板を提供する。
【解決手段】本開示の配線基板は、1対の導電層に挟まれる絶縁層と、前記絶縁層を貫通し、前記1対の導電層同士を接続して電気回路の一部をなす回路用金属部材を内部に有する複数の第1スルーホールと、を有する配線基板であって、前記配線基板の外縁部で前記絶縁層を貫通して、前記複数の第1スルーホールを包囲すると共に、前記電気回路の一部をなさない非回路用金属部材を内部に有する複数の第2スルーホールを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の導電層に挟まれる絶縁層と、
前記絶縁層を貫通し、前記1対の導電層同士を接続して電気回路の一部をなす回路用金属部材を内部に有する複数の第1スルーホールと、を有する配線基板であって、
前記配線基板の外縁部で前記絶縁層を貫通して、前記複数の第1スルーホールを包囲すると共に、前記電気回路の一部をなさない非回路用金属部材を内部に有する複数の第2スルーホールを備える。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板であって、
前記複数の第2スルーホールの内部の前記非回路用金属部材は筒状をなし、前記非回路用金属部材の内部に樹脂が充填されている。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板であって、
前記複数の第1スルーホールの内部の前記回路用金属部材は筒状をなし、前記回路用金属部材の内部に樹脂が充填されている。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
前記絶縁層は、補強材としての繊維を含んでいる。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
前記絶縁層は、絶縁性樹脂が含浸した織布を含んでいる。
【請求項6】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
前記複数の第2スルーホールは、前記複数の第1スルーホールを二重以上に重ねて包囲するように配列されている。
【請求項7】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
前記第2スルーホールは、配線基板の外縁部の全周にわたって形成されている。
【請求項8】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
前記複数の第2スルーホールは、等ピッチで配置されている。
【請求項9】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
前記複数の第2スルーホールは、丸孔である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配線基板として、一対の導電層の間の絶縁層を貫通して形成されるスルーホールの内部に回路用金属が備えられているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-098424号公報(段落[0013],[0019],
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の配線基板においては、側面から発生するクラックがスルーホールにまで伝搬し、スルーホール内部の回路用金属が傷ついて断線してしまうことがあり、その対策が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の配線基板は、1対の導電層に挟まれる絶縁層と、前記絶縁層を貫通し、前記1対の導電層同士を接続して電気回路の一部をなす回路用金属部材を内部に有する複数の第1スルーホールと、を有する配線基板であって、前記配線基板の外縁部で前記絶縁層を貫通して、前記複数の第1スルーホールを包囲すると共に、前記電気回路の一部をなさない非回路用金属部材を内部に有する複数の第2スルーホールを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る配線基板によれば、配線基板の側面から発生するクラックが、第2スルーホールにぶつかって伝搬が食い止められるため、第1スルーホールの回路用金属部材の断線が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】本開示の他の実施形態に係るコア基板の一部正面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1から
図6には、本開示の一実施形態に係る配線基板10が示されている。配線基板10は、
図1に示されるように、全体が例えば四角形のコア基板11の表裏に、
図3に示されるビルドアップ部12を有する構造になっている。
【0009】
ビルドアップ部12は、コア基板11の表裏に交互に積層される層間絶縁層31及び導電層30を有する。各層間絶縁層31は、心材を有さず、例えば無機フィラーを含む熱硬化性樹脂からなるビルドアップ基板用の絶縁フィルム等で形成される。
【0010】
各導電層30は、各層間絶縁層31の上面を部分的に覆い、その一部または全体は電気回路になっている。そして、積層方向で隣り合う導電層30の電気回路同士が、層間絶縁層31を貫通するビア導体24によって接続されている。また、最外の導電層30はソルダーレジスト層32に覆われている。そして、導電層30のうちソルダーレジスト層32に形成された開口32Aから露出する部分は、図示しない電子部品が実装されるパッド30Aになっている。
【0011】
コア基板11は、絶縁層13と、その表裏の両面に積層される導電層14とを備えている。絶縁層13は、例えばプリプレグで構成されていて、第1繊維13A及び第2繊維13Bからなる補強材13Cと、補強材13Cに含浸する絶縁性樹脂13D(例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂)と、を有している。第1繊維13A及び第2繊維13Bは、複数の繊維が束ねられた繊維束であって、補強材13Cは、これら複数の第1繊維13Aと第2繊維13Bとを経糸及び横糸とする平織の織布になっている。
【0012】
なお、補強材13Cは不織布になっていてもよい。また、織布,不織布を問わず補強材13Cとして、例えば、ガラス繊維やアラミド繊維などがあげられるが、これらに限定されない。また、絶縁性樹脂13Dは、前述のエポキシ樹脂やポリイミド樹脂以外であってもよい。
【0013】
導電層14には、絶縁層13上に形成される銅箔16と、銅箔上の第1めっき膜14Aと、第1めっき膜14A上の第2めっき膜14Bとが含まれている。また、
図1に示すように、導電層14のうち配線基板10の外縁部より内側の領域の一部または全体は、電気回路になっている。さらに、導電層14の電気回路は
図3に示されるようにコア基板11の直上に積層される層間絶縁層31を貫通する複数のビア導体24によって、導電層30と接続されている。
【0014】
コア基板11の両面の導電層14の電気回路同士は、絶縁層13を貫通する複数の第1スルーホール導体25Aによって接続されている。具体的には、配線基板10の外縁部より内側の領域における絶縁層13には、複数の第1スルーホール15Aが形成されている。複数の第1スルーホール15Aは円形状の貫通孔である。
【0015】
各第1スルーホール導体25Aは、第1スルーホール15Aの内面全面を覆う筒状になっていて、その両端面は導電層14の電気回路を形成する第1めっき膜14Aに覆われている。
【0016】
各第1スルーホール導体25Aの内側孔17Aは、第1めっき膜14Aを貫通している。そして、その内側孔17Aは、充填用樹脂18によって埋められ、両端を第2めっき膜14Bによって塞がれている。
【0017】
図2に示されているように、コア基板11のうち、配線基板10の外縁部に当たる領域には、複数の第2スルーホール15Bが形成されている。それら複数の第2スルーホール15Bは、本実施形態では配線基板10の外縁に沿って、2列になるように等ピッチで並べられている。なお、
図1においては第2スルーホール15Bの開口上部を覆う第2めっき膜14Bのみが示されている。また、隣り合う第2スルーホール15Bの中心間の距離は300μm~400μmになっている。
【0018】
また、第1スルーホール15A群と第2スルーホール15B群の間には、絶縁層13が導電層14に覆われておらず、スルーホールも有していないフラット領域23が設けられていて、そのフラット領域23の幅は300μm~500μmになっている。
【0019】
なおフラット領域23は300μm~500μm以外の幅になっていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0020】
図3に示されるように、第2スルーホール15Bの内部及び両端は、第1スルーホール15Aの内部及び両端と同じ構造になっている。即ち第2スルーホール15Bは第1スルーホール15Aと同一径の円形の貫通孔であり、内面を筒状の第2スルーホール導体25Bで覆われている。そして第2スルーホール導体25Bの両端が導電層14に接続されるとともに、その内側孔17Bは充填用樹脂18で埋められている。
【0021】
このように、絶縁層13の両側の導電層14は第2スルーホール導体25Bによって接続されているが、第2スルーホール導体25B及び第2スルーホール導体25Bによって接続されている導電層14は、電気回路の一部をなしていない。即ち、第2スルーホール導体25Bは所謂ダミーのスルーホール導体になっているという点で、第1スルーホール導体25Aと相違している。
【0022】
本実施形態の配線基板10は、例えば、以下のようにして製造される。
(1)絶縁層13としての銅張積層板が用意される。銅張積層板は、絶縁性基材の表裏の両面に銅箔16が積層されたものである。次いで、
図4(A)に示されるように、絶縁層13に例えばドリル加工等によって複数のスルーホールが形成される。この時、絶縁層13の外縁部に形成されるものが第2スルーホール15Bになり、第2スルーホール15Bに包囲されるようにして絶縁層13の外縁部よりも内側の領域に形成されるものが第1スルーホール15Aになる。なお、
図4~6では、図の右側方向が配線基板中央になっている。
【0023】
(2)次いで、化学めっき処理及び電解めっき処理が行われ、絶縁層13の全面に第1めっき膜14Aが形成されるとともに、第1スルーホール15Aの内部に筒状の第1スルーホール導体25A、第2スルーホール15Bの内部に筒状の第2スルーホール導体25Bが形成される(
図4(B))。
【0024】
(3)
図4(C)に示されるように、第1及び第2スルーホール15A,15B内に充填用樹脂18が充填される。次いで、充填用樹脂18のうち、第1めっき膜14Aの表面よりも盛り上がった部分が研磨され、充填用樹脂18と第1めっき膜14Aの表面とが面一になる。
【0025】
(4)次いで、化学めっき処理及び電解めっき処理が行われ、第1めっき膜14A上と第1及び第2スルーホール15A,15Bから露出する充填用樹脂18上に第2めっき膜14Bが形成される(
図4(D))。
【0026】
(5)次いで、第2めっき膜14B上に所定の導体パターンを形成するためのエッチングレジストが形成されたあと、エッチングレジストから露出する銅箔16、第1めっき膜14A,第2めっき膜14Bが除去され、次いでエッチングレジストが除去される(
図5(A))。これにより、コア基板11及び導電層14の電気回路が得られる。
【0027】
(6)次いで、コア基板11の表裏の両面に、層間絶縁層31としてのビルドアップ基板用絶縁フィルムが積層されて加熱プレスされ、層間絶縁層31が形成される(
図5(B))。
【0028】
(7)コア基板11の両面の層間絶縁層31にレーザーが照射され、複数のビアホール24Hが形成される(
図5(C))。なお、ビアホール24Hは第1スルーホール15A上のみに形成され、第2スルーホール15B上には形成されない。
【0029】
(8)ビアホール24H内部のデスミア処理が行われた後、化学めっき処理が行われ、各層間絶縁層31上に化学めっき膜(図示せず)が形成される。次いで、化学めっき膜上に所定パターンのめっきレジスト26が形成される(
図5(D))。
【0030】
(9)次いで、化学めっき膜上に電解めっき処理が施された後、めっきレジスト及び化学めっき膜が除去されると、導電層30及びビア導体24が得られる。(
図6(A))。
【0031】
(10)そして工程(6)~(9)が繰り返され、コア基板11の表裏の両側に、ビルドアップ部12が積層される(
図6(B))。そして、最外の導電層30上にソルダーレジスト層32が積層され、レーザー加工やフォトリソグラフィ等によりソルダーレジスト層32に開口が形成される(
図6(C))。この開口から露出する導電層30がパッド30Aになる。
【0032】
本実施形態の配線基板10の構造及び製造工程の説明は以上である。以下、配線基板10の効果について説明する。配線基板10が電気製品に組み込まれると複数の第1スルーホール導体25Aを含んだ電気回路が通電状態になり、電気製品の一部として機能する。この時、複数の第2スルーホール導体25Bは配線基板10の電気回路の一部をなしていないため、通電状態にはならない。
【0033】
ところで、配線基板10が外力を受けたり、熱変形することで、コア基板11の側面から内部に向かって、第1繊維13A及び第2繊維13Bに沿ってクラックが発生することがある。
【0034】
しかしながら、本実施形態の配線基板10では、クラックの進行をコア基板11の外縁部全体に配置された第2スルーホール導体25Bによって食い止めることができる。詳細には、複数の第2スルーホール15Bがコア基板11を貫通することでクラックの伝搬を遮断することが可能になる。しかも、第2スルーホール導体25Bは導電層14の一部をなす第1めっき膜14Aと一体形成されるため、コア基板11のうち第1繊維13A及び第2繊維13Bを含んだ絶縁層13が表裏の両側から挟まれて固定されるため、クラックが拡大することも防がれる。
【0035】
さらに、第2スルーホール導体25Bは第1スルーホール導体25Aを2重に包囲しているため、外側の第2スルーホール導体25B群でクラックの伝搬を止められなかったとしても、それよりも内側の第2スルーホール導体25B群でクラックの伝搬を食い止めやすくなっている。
【0036】
また、第2スルーホール導体25Bは電気回路の一部をなさないスルーホール導体であるため、仮にクラックによって断線したとしても、配線基板10の導通には何ら影響はない。さらに、第2スルーホール導体25Bは第1スルーホール導体25Aと区別なく同様に作ることが可能であるため、余計な手順が増えることがない。
【0037】
[他の実施形態]
上記実施形態では、層間絶縁層31が熱硬化性樹脂からなる絶縁フィルムによって構成されていたが、絶縁層13と同じプリプレグによって構成されていてもよい。また、絶縁層13が熱硬化性樹脂からなる絶縁フィルムであってもよい。本実施形態の配線基板10のように、絶縁層13がプリプレグであれば、繊維に沿ってクラックが伝搬しやすくなることが懸念されるので、第2スルーホール導体25Bが設けられることの効果をより享受することができる。
【0038】
上記実施形態では、配線基板10は四角形になっていたが、これに限定されない。円形や、他の多角形になっていてもよい。
【0039】
上記実施形態では、第2スルーホール導体25Bは絶縁層13にのみ形成されていたが、ビルドアップ部12に形成されていてもよい。また、第2スルーホール導体25Bの代わりに、電気回路の一部をなさない複数のビア導体を形成してもよい。この構成であれば、層間絶縁層31のクラックの伝搬も抑制することが可能になる。
【0040】
上記実施形態では、第2スルーホール導体25Bが設けられていたが、第2スルーホール15Bだけが設けられる構成であってもよい。また、第2スルーホール15Bの内部に筒状の金属部材を備えず、充填用樹脂18だけが備えられている構成であってもよいし、充填用樹脂18が備えられず筒状の金属部材だけが備えられていてもよい。
【0041】
上記実施形態では、第2スルーホール15Bは丸孔になっていたが、開口形状が楕円形や四角形、その他の多角形になっていてもよい。また、配線基板10の外縁に沿って延びる溝形状であってもよい。また、第1スルーホール15Aと第2スルーホール15Bの開口形状は、同じであってもよいし、相違していてもよい。
【0042】
また、第2スルーホール導体25Bは、配線基板10の外周全体にわたって設けられていなくてもよい。例えば
図7(A)のように、角部など外縁の一部のみに設けられていてもよい。また、
図7(B)のように千鳥配置になっていてもよい。また、
図7(C)のように、第2スルーホール15Bの大きさがそれぞれ異なっていてもよい。また、
図7(D)のように、外縁のうち一部のみに2列以上設けられていてもよい。さらに、2列に限らず、1列だけ設けられていてもよいし、それ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 配線基板
11 コア基板
13 絶縁層
13A 第1繊維
13B 第2繊維
13C 補強材
13D 絶縁性樹脂
14 導電層
15A 第1スルーホール
15B 第2スルーホール
18 充填用樹脂
25A 第1スルーホール導体
25B 第2スルーホール導体