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特開2024-102552ロボットハンド及びロボットシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102552
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ロボットハンド及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B25J15/08 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006521
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 泰生
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 寿文
(72)【発明者】
【氏名】坂原 洋人
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707KS33
3C707KX07
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】従来のロボットハンドにおいては、対象物への作用に関する状態を適切に把握することが困難であった。
【解決手段】ロボットハンド2は、対象物900への作用に伴って変化する力を検知する力センサ5と共に用いられる。ロボットハンド2は、対象物900に接触する接触部27を有するハンド部10と、力センサ5と接触部27とに接続されており、接触部27に加わった力の変化に応じて力センサ5により検知される力が変化するように接触部27に加わった力を伝達する伝達部7とを備える。伝達部7は、接触部27の力センサ5に対する位置が所定の範囲にある場合において、接触部27の変位に伴って力センサ5に伝達する力を非線形に変化させるように構成されている。ロボットハンド2により、接触部27の力センサ5に対する位置が所定の範囲にあるか否かを容易に検出可能になる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物への作用に伴って変化する力を検知する力センサと共に用いられるロボットハンドであって、
前記対象物に接触する接触部を有するハンド部と、
前記力センサと前記接触部とに接続されており、前記接触部に加わった力の変化に応じて前記力センサにより検知される力が変化するように前記接触部に加わった力を伝達する伝達部とを備え、
前記接触部は、前記力センサに対して所定の方向において変位可能であり、
前記伝達部は、前記接触部の前記力センサに対する位置が所定の範囲にある場合において、前記接触部の変位に伴って前記力センサに伝達する力を非線形に変化させるように構成された伝達力変化手段を有している、ロボットハンド。
【請求項2】
前記伝達力変化手段は、前記接触部の前記力センサに対する位置が所定の範囲にある場合においてクリック感を発生させて、当該クリック感を前記力センサに伝達するように構成されている、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記伝達部は、前記力センサに接続される第一構造と、前記接触部と共に前記第一構造に対して変位可能な第二構造とを有し、
前記第一構造及び前記第二構造は、前記伝達力変化手段に接続されており、
前記伝達力変化手段は、複数の歯と、当該複数の歯のうち少なくとも1つに係合する係合部とを有し、前記第一構造に対する前記第二構造の位置の変化に応じて前記複数の歯と前記係合部との係合状態が変化するように構成されている、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記ハンド部は、前記接触部が前記対象物に接触して前記力センサに対して所定の方向において変位するのに伴って前記対象物に近づくように構成された作用部を有する、請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のロボットハンドを少なくとも2つ備え、
前記各ロボットハンドのハンド部同士が、第一方向において対向するように配置されており、
前記対象物に対して前記各ハンド部を同時に近づけて作用することが可能に構成された、双腕型の、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対して作用するロボットハンド及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造現場などにおいて対象物に対して種々の作用を行うためのロボットシステムが用いられている。このようなロボットシステムとして、対象物に対して接触したり、対象物に対して用いる種々の用具を把持等したりするためのロボットハンドを有するものがある。ロボットハンドを有するロボットシステムにおいて、ロボットハンドに加わる力を検知するための力センサが用いられることがある。例えば、力センサの検知結果に応じて、ロボットハンドの位置や動き等の制御を行うことができる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ロボットを用いた嵌合作業中に発生する詰まりの対象に関し、力センサを用いて勘合部品の詰まりを検知する手法が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、ハンドを用いて把持した部品をワークに組みつける組付装置において、力センサによって障害物を検知し、部品の組付穴の探索軌道を変更するようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-28532号公報
【特許文献2】特開平8-197342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ロボットハンドを用いて、上述のように力センサを使って対象物への作用に関する状態を把握しながら制御を行うことにより、把持や嵌合などのタスクを実現する場面では、制御の難易度が高くなる場合があるという問題がある。すなわち、一般的に、力センサで検知される力には、例えば摩擦力などの、状況によって変化する推定しにくい力が含まれる場合がある。このような、検知目的となる力とは異なる要因の力が力センサで合わせて検知される場合、対象物への作用に関する状態を適切に把握することが困難になる場合がある。そのため、力センサの検知結果に基づく制御を適切に行うことが困難になる場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、対象物への作用に関する状態を適切に把握しやすいロボットハンド及びロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第一の発明のロボットハンドは、対象物への作用に伴って変化する力を検知する力センサと共に用いられるロボットハンドであって、対象物に接触する接触部を有するハンド部と、力センサと接触部とに接続されており、接触部に加わった力の変化に応じて力センサにより検知される力が変化するように接触部に加わった力を伝達する伝達部とを備え、接触部は、力センサに対して所定の方向において変位可能であり、伝達部は、接触部の力センサに対する位置が所定の範囲にある場合において、接触部の変位に伴って力センサに伝達する力を非線形に変化させるように構成された伝達力変化手段を有している、ロボットハンドである。
【0009】
かかる構成により、接触部の力センサに対する位置が所定の範囲にあるか否かを容易に検出可能になり、対象物への作用に関する状態を適切に把握することができる。
【0010】
また、本第二の発明のロボットハンドは、第一の発明に対して、伝達力変化手段は、接触部の力センサに対する位置が所定の範囲にある場合においてクリック感を発生させて、クリック感を力センサに伝達するように構成されている、ロボットハンドである。
【0011】
かかる構成により、接触部の力センサに対する位置が所定の範囲にあるか否かをより容易に検出することができる。
【0012】
また、本第三の発明のロボットハンドは、第一又は二の発明に対して、伝達部は、力センサに接続される第一構造と、接触部と共に第一構造に対して変位可能な第二構造とを有し、第一構造及び第二構造は、伝達力変化手段に接続されており、伝達力変化手段は、複数の歯と、複数の歯のうち少なくとも1つに係合する係合部とを有し、第一構造に対する第二構造の位置の変化に応じて複数の歯と係合部との係合状態が変化するように構成されている、ロボットハンドである。
【0013】
かかる構成により、接触部の力センサに対する位置が所定の範囲にあるか否かを容易に検出することができる。
【0014】
また、本第四の発明のロボットハンドは、第一から三のいずれか1つの発明に対して、ハンド部は、接触部が対象物に接触して力センサに対して所定の方向において変位するのに伴って対象物に近づくように構成された作用部を有する、ロボットハンドである。
かかる構成により、対象物への作用に関する状態を適切に把握して、作用部による対象物への作用を制御することができる。
【0015】
また、本第五の発明の双腕型の、ロボットシステムは、第一から四のいずれか1つの発明に対して、ロボットハンドを少なくとも2つ備え、各ロボットハンドのハンド部同士が、第一方向において対向するように配置されており、対象物に対して各ハンド部を同時に近づけて作用することが可能に構成された、双腕型の、ロボットシステムである。
【0016】
かかる構成により、双腕型のロボットシステムにおいて、対象物への作用に関する状態を適切に把握することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるロボットハンドによれば、対象物への作用に関する状態を適切に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態によるロボットシステムを示す斜視図
図2】同ハンド部及び伝達部の構造を示す側面図
図3】同伝達力変化手段の構成及び動作の一例を示す図
図4】同力センサにより検出される第一方向の力と、接触部の第一方向における変位量との関係の一例を示すグラフ
図5】本実施の形態の一変形例に係る伝達部の構成例を示す図
図6】本変形例における、力センサにより検出される第一方向の力と、接触部の第一方向における変位量との関係の一例を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、ロボットハンド及びそれを用いたロボットシステムの実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
以下の図面において示される座標は、各図同士で共通している。ロボットシステムについて、座標のz方向は、水平面に対して垂直な方向である。x方向は、z方向に対して垂直な方向であり、y方向は、z方向に対して垂直な方向であってx方向に対して垂直な方向である。なお、z方向を上下方向(図示される座標の原点から見てz軸で正となる方向が上)ということがあり、x方向を左右方向(図示される座標の原点から見てx軸で正となる方向が左)ということがあり、y方向を前後方向(図示される座標の原点から見てy軸で正となる方向が後)ということがある。
【0021】
また、ロボットハンドについて、座標のZ方向は、水平面に対して垂直な方向である。X方向は、Z方向に対して垂直な方向であり、Y方向は、Z方向に対して垂直な方向であってX方向に対して垂直な方向である。なお、Z方向を上下方向(図示される座標の原点から見てZ軸で正となる方向が上)ということがあり、Y方向を左右方向(図示される座標の原点から見てY軸で正となる方向が右)ということがあり、X方向を前後方向(図示される座標の原点から見てX軸で正となる方向が前)ということがある。
【0022】
なお、以下の説明において、このように各方向を示して各部の形状や位置関係を説明することがあるが、方向の明示はあくまで説明の便宜のためのものに過ぎず、本発明に係る各装置等の使用時における向きや姿勢などを限定するものではない。
【0023】
(実施の形態)
【0024】
図1は、本実施の形態によるロボットシステム1を示す斜視図である。
【0025】
ロボットシステム1は、2つのロボットハンド2(第一ロボットハンド2b,第二ロボットハンド2c)と、第一移動部110と、第二移動部120と、第三移動部130と、台車140とを備える。
【0026】
図1においては、ロボットハンド2により対象物900を把持している状態のロボットシステム1が示されている。本実施の形態において用いられるロボットハンド2は、特に、搬送対象物(以下、対象物900という)を把持するために用いられる。
【0027】
対象物900は特に限定されないが、例えば、プラズマ電源や溶接の治具などのように、製造現場で用いられるものであってもよい。対象物900の重量は特に限定されないが、人間による搬送が困難な重量、例えば、30kg以上であってもよく、50kg以上であってもよい。また、対象物900の重量は、フォークリフトなどの大型の運搬車両を用いる必要のない程度の重量、例えば、200kg以下であってもよく、150kg以下であってもよく、100kg以下であってもよい。ロボットシステム1は、例えば、一の方向における両端部分において所定の範囲の厚みを有する板状部を有しているような対象物900を把持可能である。
【0028】
図1においては、一例として、平板状の対象物900を把持している場合が示されているが、対象物900は立体的な物体であってもよいし、板状の部材に別の装置などが載置されたものであってもよい。後者の場合には、例えば、板状の部材と、その板状の部材に載置されている装置などの載置物とが対象物900であってもよい。なお、対象物900は、平板状の板状部を有していないものであってもよい。
【0029】
本実施の形態において、2つのロボットハンド2は、水平面内の第一方向において離間して配置されている。以下において、x方向を第一方向であるものとして説明する。2つのロボットハンド2は、左右方向において互いに離れるようにして配置されている。第一ロボットハンド2bは右側に配置されており、第二ロボットハンド2cは左側に配置されている。
【0030】
第一ロボットハンド2bと第二ロボットハンド2cとは、それぞれ、ハンド部10を支持するアーム部4と、伝達部7と、ハンド部10と、アーム部4と伝達部7との間に設けられている力センサ5とを含んでいる。すなわち、本実施の形態において、ロボットシステム1は、互いに左右に離れて配置された2つのアーム部4を有している。それぞれのアーム部4には、力センサ5及び伝達部7を介して間接的に、ハンド部10が取り付けられている。2つのロボットハンド2のそれぞれのハンド部10同士が、第一方向において対向するように配置されている。
【0031】
本実施の形態において、各ハンド部10は、対象物900を同時に保持可能に構成されている。すなわち、ロボットシステム1は、2つのハンド部10を同時に対象物900に近づけて、対象物900に対して作用することができるように構成されている。2つのハンド部10によって対象物900を保持することによって、対象物の搬送時にハンド部10に対して掛かるモーメントの大きさを小さくすることができる。そのため、ロボットシステム1の各部材に必要な強度や剛性等の要件を軽減することができ、例えば、ロボットシステム1の小型化、軽量化を実現しやすくなる。
【0032】
力センサ5は、ハンド部10に掛かる力を検出可能である。力センサ5は、ハンド部10による対象物900への作用に伴って変化する力を検知する。本実施の形態において、力センサ5には、伝達部7を介して、ハンド部10に掛かる力が伝達される。力センサ5は、例えば、ハンド部10により保持されている対象物900の重量を取得するために用いられる。それぞれの力センサ5は、例えば、外力を検出するためのセンサである。外力を検出するためのセンサは、例えば、3軸又は6軸の力覚センサであってもよい。それぞれの力センサ5が外力を検出するためのセンサである場合には、そのセンサが各ハンド部10で保持された対象物900の重量を測定できるように配置されていることが好適である。
【0033】
伝達部7は、ハンド部10と力センサ5との間に配置されている。伝達部7は、ハンド部10に加わった力を力センサ5に伝達可能に構成されている。力センサ5により、伝達部7により伝達される力が検出されると言ってもよい。なお、伝達部7は、力センサ5により検出される力のうち一部の成分を伝達するように構成されていてもよい。換言すると、力センサ5は、伝達部7により伝達される力と、その他の部位により伝達される力とを合わせて検出するように構成されていてもよい。なお、伝達部7はハンド部10の一部を構成する、としてハンド部10の構成を捉えてもよい。換言すると、ハンド部10は伝達部7を含むものとしてハンド部10の構成を特定するようにしてもよい。
【0034】
本実施の形態において、力センサ5には、ハンド部10に掛かる第一方向の力が、伝達部7を介して特徴的な力として伝達されうる。このことについての詳細は、後述する。
【0035】
それぞれのアーム部4のうち他方のアーム部4に対向する面には、ハンド部10等が取り付けられるハンド取付部(図示せず)が設けられていると言ってもよい。力センサ5は、ハンド取付部に加わる力を検知するためのセンサであると言ってもよい。
【0036】
なお、力センサ5の搭載位置は、アーム部4とハンド部10との間の位置に限られない。力センサ5は、例えば、アーム部4と、第一ロボットハンド2bや第二ロボットハンド2cを支持する構造体との間に配置されていてもよい。また、アーム部4が複数の部材により構成されており、いずれかの部材間に力センサ5が配置されていてもよい。また、力センサ5が、アーム部4等を構成する部材に取り付けられ、当該部材の歪み等を検知可能なセンサ(例えば、歪みゲージなど)であってもよい。
【0037】
また、伝達部7の搭載位置は、力センサ5とハンド部10との間であるが、力センサ5と伝達部7との間や、伝達部7とハンド部10との間に、他の部材や構造体が配置されるようにしてもよい。
【0038】
尚、本実施の形態において、第一ロボットハンド2bと第二ロボットハンド2cとのそれぞれにおいて、力センサ5によって、ハンド部10に掛かる重量が取得可能である。それぞれの力センサ5によって取得される重量の合計は、例えば、対象物900の重量となってもよく、又は対象物900の重量に両ハンド部10や伝達部7の重量を加算したものであってもよい。
【0039】
各ロボットハンド2は、移動部110,120,130によって、台車140に対して移動可能である。各ハンド部10は、水平面内において第一方向及び第二方向に移動可能であり、鉛直方向すなわちz方向に移動可能である。なお、第二方向は、第一方向に垂直な方向すなわちy方向である。各ハンド部10は、直交座標系における3軸の方向にそれぞれ移動されることになる。なお、移動部110,120,130のいずれかがロボットハンド2に含まれるものとして、ロボットハンド2の構成を捉えてもよい。
【0040】
第一移動部110は、各ロボットハンド2を支持している。すなわち、第一移動部110は、各ハンド部10を支持している。第一移動部110は、各ハンド部10をそれぞれ第一方向に変位させる。第一移動部110は、例えば、各ハンド部10を第一方向にそれぞれ独立して移動できる。すなわち、第一移動部110は、アーム部4を変位させて、2つのハンド部10間の距離を変化させることができるように構成されている。第一移動部110は、ロボットシステム1は、第一移動部110によって各ハンド部10を移動させることによって、例えば、各ハンド部10による対象物900の保持を行ったり、その保持を解除したりすることができるように構成されている。また、ロボットシステム1は、第一移動部110によって各ハンド部10を同時に同じ向きに移動させることによって、例えば、各ハンド部10によって保持されている対象物900を第一方向に移動させることもできる。
【0041】
第一移動部110は、一例として、各ハンド部10を支持する第一支持部111と、第一支持部111に対して各ハンド部10を第一方向に移動させるリニアアクチュエータとを有している。より具体的には、例えば、第一方向に延びる第一支持部111の底面に第一方向に沿ったガイドが設けられており、そのガイドにスライダが第一方向にスライド可能に組み付けられている。そして、各ハンド部10が取り付けられている各アーム部4が、それぞれ異なるスライダに固定されている。
【0042】
第二移動部120は、第一移動部110を支持しており、その第一移動部110を第二方向に移動させる。したがって、第二移動部120によって、各ハンド部10が一緒に第二方向に移動されることになる。第二移動部120は、一例として、第一移動部110の第一支持部111を支持する第二支持部121と、第二支持部121に対して第一支持部111を第二方向に移動させるリニアアクチュエータとを有している。より具体的には、例えば、第二方向に延びる第二支持部121の底面に第二方向に沿ったガイドが設けられており、そのガイドにスライダが第二方向にスライド可能に組み付けられていてもよい。そして、第一支持部111の上面がそのスライダに固定されていてもよい。
【0043】
第三移動部130は、第二移動部120を支持しており、その第二移動部120を鉛直方向に移動させる。したがって、第三移動部130によって、各ハンド部10が一緒に鉛直方向に移動されることになる。第三移動部130は、一例として、第一方向に離間して配置された一対の支柱131,132と、支柱131,132の上端側を繋ぐ上面板133と、一対の支柱131,132によって端部が支持されており、第二移動部120の第二支持部121を支持する昇降部134と、昇降部134を一対の支柱131,132に対して鉛直方向に同期して移動させる一対のリニアアクチュエータとを有している。より具体的には、鉛直方向に延びる支柱131,132の昇降部134側の面にそれぞれ鉛直方向に沿ったガイドが設けられており、そのガイドにスライダが鉛直方向にスライド可能に組み付けられていてもよい。そして、昇降部134の第一方向の両端がそれぞれスライダに固定されていてもよい。
【0044】
移動部110,120,130において、例えば、スライダは、平行に設けられた2以上のガイドに組み付けられていてもよい。また、移動部110,120,130が有するリニアアクチュエータはそれぞれ独立して、例えば、ラックアンドピニオン機構と、ピニオンを回転させる駆動手段とを有するものであってもよく、ボールねじ機構と、ボールねじ機構のねじ軸を回転させる駆動手段とを有するものであってもよく、一対のプーリと、その一対のプーリに掛け渡された無端のベルトと、プーリを回転させる駆動手段とを有するものであってもよく、そのプーリ及びベルトに代えてスプロケット及びチェーンを用いたものであってもよく、その他の構成であってもよい。各ハンド部10を第一方向にそれぞれ独立して移動させるため、第一移動部110は、第一ロボットハンド2bを移動させるリニアアクチュエータと、第二ロボットハンド2cを移動させるリニアアクチュエータとを有していてもよい。なお、ガイドやスライダ、リニアアクチュエータなどを用いて支持対象を直線方向に移動させる機構はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。図1では、ガイドやスライダ、リニアアクチュエータの図示は省略している。
【0045】
台車140には、第三移動部130が固定されている。なお、第三移動部130の基端側、すなわち下方側の端部が台車140に固定されていてもよい。台車140は、一例として、第三移動部130の基端側が固定された基台141と、基台141に固定されており、床面などの走行面を走行可能な複数の走行手段142とを有してもよい。基台141は、一例として、板状の部材であってもよい。走行手段142は、通常、車輪であるが、車輪以外のローラ、無限軌道、ボールを有するボールキャスタなどであってもよい。また、台車140は、走行手段142を駆動するための駆動手段を有していてもよく、又は、そうでなくてもよい。後者の場合には、台車140は、手動で移動されてもよい。また、手動で移動される台車140は、移動部110,120,130による対象物900の局所的な搬送を行う際に台車140が動かないように走行手段142を固定するための固定手段を有していてもよい。固定手段は、例えば、車輪のストッパなどであってもよい。本実施の形態では、台車140が駆動手段を有しておらず、手動で移動される場合について主に説明する。移動部110,120,130によって対象物900が局所的に搬送されるのに対して、台車140によって対象物900がより大域的に搬送されることになる。
【0046】
なお、ロボットシステム1は、ユーザから操作や指示を受け付けるための受付部(図示せず)や、移動部110,120,130の動作を制御する制御部(図示せず)を有している。受付部は、例えば、移動部110,120,130に関する操作や指示を受け付けてもよく、台車140に関する操作や指示を受け付けてもよい。受け付けは、例えば、入力デバイス(例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなど)から入力された情報の受け付けでもよく、有線又は無線の通信回線を介して送信された情報の受信でもよい。なお、受付部は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、入力デバイス、通信デバイスなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、受付部は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0047】
制御部は、第一移動部110、第二移動部120、及び第三移動部130をそれぞれ制御する。この制御部による制御によって、例えば、対象物900が各ハンド部10によって保持されたり、またその保持が解除されたりすることになる。また、この制御によって、対象物900の位置決めなどの局所的な搬送が行われることになる。また、例えば、台車140が駆動手段を有している場合には、制御部は、台車140の移動制御をも行ってもよい。これらの制御は、例えば、受付部によって受け付けられた操作や指示に応じて行われてもよい。台車140の移動制御は、例えば、受付部によって受け付けられた操作に応じた移動方向や移動速度に関する移動制御であってもよく、あらかじめ決められた出発地から目的地までの自律的な移動制御であってもよい。
【0048】
次に、ハンド部10及び伝達部7の構造の一例についてより具体的に説明する。なお、ハンド部10や伝達部7の構造の説明において示す各方向は、上述のロボットシステム1の構成の説明において示した各方向とは、必ずしも一致しない、独立したものである。
【0049】
なお、本実施の形態において、ある部位がある部位に近づいたり離れたりする方向に変位する、例えば接触部25が力センサ5に近づく方向に変位するというような表現は、相対的な変位を表す表現である。すなわち、外部から見て同じ位置にある接触部25に対して、アーム部4等とともに力センサ5が変位することにより、接触部25の力センサ5に対する位置が変化するような場合も、上記表現により表される事象に含まれる。
【0050】
図2は、同ハンド部10及び伝達部7の構造を示す側面図である。
【0051】
本実施の形態において、ハンド部10は、ベース11、作用部21及び接触部25を備えている。
【0052】
ベース11は、本実施の形態において、水平面に平行な板状をなすように構成されている。ベース11の上面が、対象物900の把持時において対象物900が接触しうる接触面となる。接触面は、略平坦な平面である。本実施の形態において、接触面は、X方向及びY方向に平行である。X方向は、アーム部4からハンド部10が延びる方向であり、ここでは第一方向と呼ぶことがある。Y方向は、X方向に対して垂直な方向であり、ここでは第二方向と呼ぶことがある。接触面は、X方向に延びる形状を有していると言ってもよい。
【0053】
ベース11は、各アーム部4に、力センサ5、伝達部7及び接触部25を介して取り付けられている。すなわち、ベース11は、アーム部4により保持可能に構成されている。なお、ベース11のアーム部4側の部材への取付方法は種々の手段を用いることができる。ベース11は、アーム部4や力センサ5等に対して接触部25を介さずに保持されていてもよい。
【0054】
本実施の形態において、ベース11の後端側であって、接触面の上側には、接触部25が配置されている。接触部25は、第一方向において変位可能となるように、ベース11に配置されている。すなわち、接触部25は、力センサ5に対して、所定の方向である第一方向において変位可能である。
【0055】
ハンド部10により対象物900の把持等の作用が行われる場合において、接触部25は、対象物900に接触する部位の1つとなる。本実施の形態において、接触部25は、第一方向において、対象物900に対して当接可能である。
【0056】
作用部21は、例えば、ベース11の上方に配置されている。作用部21は、ベース11の上方に位置し、ベース11の接触面に対向するように配置された作用箇所21bを有している。
【0057】
本実施の形態において、作用部21は、複数の軸を介して互いに回転可能な複数のリンク部材を有するリンク構造23を用いて構成されている。図に実線と二点鎖線とで示されるように、リンク構造23は、例えば、接触部25の第一方向における変位に応じて、作用箇所21bを変位させるように構成されている。接触部25が後方に変位することにより、作用箇所21bとベース11との間の上下方向における距離が小さくなるようになっている。
【0058】
このように作用部21が構成されていることにより、ハンド部10によって、対象物900を把持することができるようになっている。すなわち、本実施の形態において、作用部21は、接触部25が前方にある対象物900に接触して、対象物900が接触部25と共に力センサ5に対して後方に変位するのに伴って、作用箇所21bが対象物900に近づくように構成されている。対象物900が、作用箇所21bとベース11の接触面との間で挟まれることにより、対象物900が把持されるようになっている。
【0059】
なお、対象物900は、その左右両端部近傍が、2つのロボットハンド2の各ハンド部10により把持されることで、ロボットシステム1により搬送可能に把持されうる。
【0060】
なお、作用部21として、上述の構成のものとは異なる構成のものを用いることができる。上述とは異なるリンク構造を用いたり、例えば、歯車やラックアンドピニオン、プーリ等の種々の動力伝達機構を用いたりして、作用部21が接触部25の第一方向における変位に応じた動作を行うように構成されていてもよい。また、作用部21は、接触部25の第一方向における変位に応じて動作を行うものに限られない。例えば、接触部25の上述とは異なる方向(例えば、第二方向や上下方向)の変位や、ベース11等の変位や、その他ハンド部10に加わる力の変化等に応じて動作を行うように構成されているものであってもよい。
【0061】
また、ハンド部10にアクチュエータが搭載されており、アクチュエータにより作用部21が動作を行うように構成されていてもよい。アクチュエータの動作は、接触部25の第一方向における変位の検知結果に応じて行われるようにしてもよいし、その他の事象に起因して行われるようにしてもよい。
【0062】
伝達部7は、本実施の形態において、第一構造71、第二構造72及び伝達力変化手段75を備える。伝達部7は、例えば、第一構造71と第二構造72とが、伝達力変化手段75を介して、第一方向において並んだ構造を有している。
【0063】
第一構造71は、力センサ5に接続されているが、直接に接続されているか間接的に接続されているかは問わない。換言すると、第一構造71は、伝達力変化手段75と力センサ5との間にある構造であるといえる。本実施の形態において、第一構造71は、力センサ5に力を入力可能に配置されたロッド状の部材を有しているが、これに限られない。
【0064】
第二構造72は、ハンド部10に接続されている。第二構造72は、接触部25に接続されているが、直接に接続されているか間接的に接続されているかは問わない。換言すると、第二構造72は、伝達力変化手段75と接触部25との間にある構造であるといえる。
【0065】
第二構造72は、第一構造71に対して、接触部25と共に変位可能である。すなわち、第二構造72は、接触部25の第一方向への変位に伴って第一方向に変位可能である。
【0066】
すなわち、本実施の形態において、伝達部7は、力センサ5と接触部25とに接続されている。これにより、伝達部7は、接触部25に加わった力の変化に応じて、力センサ5により検知される力が変化するように、接触部25に加わった力を力センサ5に対して伝達するように構成されている。
【0067】
ここで、伝達部7において接触部25に加わった力が力センサ5に対して伝達される際、伝達力変化手段75によって、力が非線形に変化するように構成されている。伝達力変化手段75は、接触部25の変位に伴って力センサ5に伝達する力を非線形に変化させるように構成されている。伝達力変化手段75は、接触部25の力センサ5に対する位置(以下、単に接触部25の位置ということがある)が、所定の範囲にある場合において、力を非線形に変化させるように構成されている。所定の範囲とは、幅のある範囲であってもよいし、幅がない(ゼロに近い)範囲であってもよい。すなわち、所定の範囲とは、ある位置から別の位置までの範囲であってもよいし、ある地点といえる位置であってもよい。
【0068】
非線形に変化させるとは、接触部25の変位に応じて線形的に変化する状態ではない変化状態をいう。例えば、接触部25の位置が所定の範囲ではない領域においては接触部25が力センサ5に対して近づくにつれて力センサ5で検出される第一方向の力の大きさが線形的に大きくなっていく場合を想定する。この場合、接触部25の位置が所定の範囲にある場合に、急激に力センサ5で検出される第一方向の力が減少したり、接触部25が力センサ5に対して近づくにつれて力センサ5で検出される第一方向の力の大きさが小さくなったりするような変化を、非線形に変化すると言うことができる。
【0069】
本実施の形態においては、伝達力変化手段75は、接触部25の位置が所定の範囲にある場合において、クリック感を発生させて、クリック感を力センサ5に伝達するように構成されている。クリック感とは、伝達される力が急激に減少することをいう。クリック感を発生させることを、力センサ5に伝達する力を急激に減少させると言い替えてもよい。クリック感を力センサ5に伝達するとは、力センサ5により検出される力の大きさが急激に減少するように力を伝達することであると言える。
【0070】
図3は、同伝達力変化手段75の構成及び動作の一例を示す図である。
【0071】
本実施の形態において、伝達力変化手段75は、例えば、複数の歯76と、複数の歯76のうち少なくとも1つに係合可能な係合部77とを有している。また、伝達力変化手段75は、第一構造71と第二構造72との間に配置されたばね78を有している。ばね78は、第一方向における第一構造71と第二構造72との間の距離を変化可能にするとともに、第一構造71と第二構造72との間で第一方向における力を伝達する。
【0072】
伝達力変化手段75は、例えば、ノック式ボールペンにおいて、ノックすることによりペン先のついたリフィルを繰り出したりペン軸内に収容したりすることを実現するために用いられている、公知の、いわゆるノックカム機構と同様の構造を有している。図3に示される伝達力変化手段75の構成は、一部簡略化されて示されているものであるが、実際には、公知のノックカム機構と同様に、種々の必要な構成が含まれうるものである。伝達力変化手段75の動作は、例えば以下のようである。すなわち、例えば、複数の歯76が構成された回転カムに対して、第二構造72の変位に伴って変位する係合部77が係合する(ステップS1)。第二構造72が第一構造71に向かって変位すると、第二構造72が回転カムを押しつけてばね78を圧縮し、ばね78の他端にある第一構造71に加わる力が増大する。このとき、歯76と係合部77との係合に応じて、回転カムが所定の方向(第一方向に沿う軸周りの所定方向)に回転する(ステップS2)そてい、さらに第二構造72が第一構造71に向かって変位すると、回転カムがさらに所定の方向に回転し、歯76と係合部77との係合状態が、別の状態に変化する。ばね78の反発力により、回転カムが第一構造71から離れる方向に変位するため、ばね78の圧縮量が急激に減少し、第一構造71に加わる力が急激に減少する。すなわち、クリック感が発生する(ステップS3)。それ以後、第二構造72が第一構造71に向かって変位すると、第一構造71と第二構造72との距離が最接近するまでは変位量に応じて第一構造71に加わる力が線形的に増大することになる。なお、第二構造72に加えられる第一構造71に向けた力が解除されると、第二構造72がそれまでとは反対側に変位可能となる。回転カムと係合部77との係合が解除されると、回転カムが所定の方向に回転し、次の歯76と係合部77とが係合可能となる(ステップS1に戻る)。
【0073】
図4は、同力センサ5により検出される第一方向の力と、接触部25の第一方向における変位量との関係の一例を示すグラフである。
【0074】
上述のように伝達力変化手段75が構成されていることにより、本実施の形態においては、図に示されるように、接触部25の第一方向における変位に伴って、力センサ5により検出される第一方向の力の大きさが変化する。本実施の形態においては、第二構造72の第一方向における変位に伴って、力センサ5により検出される第一方向の力の大きさが変化すると言ってもよい。すなわち、上述のように、ノックカム機構において、回転カムの回転に伴って係合部77と歯76との係合状態がそれまでとは別の状態に変化するまでの間には、接触部25の変位量が大きくなるにつれて、略線形に、力の大きさが大きくなっていく。変位量がT1に達する地点は、接触部25が所定の範囲にある状態である。すなわち、変位量がT1に達すると、係合部77と歯76との係合状態がそれまでとは別の状態に変化し、ばね78の圧縮量が急激に減少する。それに伴って、検出される力の大きさが急激に減少する。このような現象は、クリック感として感じ取れるものである。すなわち、変位量がT1に達すると、クリック感が発生し、クリック感が力センサ5に伝達されるといえる。
【0075】
その後、さらに接触部25の変位量が大きくなると、再び、略線形に力の大きさが大きくなっていく。このような変位量と検出される力の大きさとの関係は、第一構造71に対して第二構造72が近づくことができる位置まで継続することとなる。
【0076】
なお、図に示される力の大きさの推移は、模式的に示されたものであり、実際は、ばね78のばね特性の違い(プログレッシブ性の大きさの違いなど)や、その他の影響により、これとは異なるようになっていてもよい。
【0077】
このように、本実施の形態においては、接触部25に加わる力の変化に応じて力センサ5により検出される力が変化するように構成されているところ、接触部25の力センサ5に対する位置が所定の範囲にある場合に、力センサ5により検出される力が非線形に変化する。したがって、ハンド部10に加わっている力を力センサ5により検知しながら制御動作を行う場合において、従来は力センサ5によっては得られなかった接触部25の力センサ5に対する位置が所定の範囲にある否かを判断するための情報を、力センサ5によって得ることができる。接触部25の力センサ5に対する位置が所定の範囲にある否かを容易に検出することができるため、対象物900への作用に関する状態を、適切に把握することができる。
【0078】
なお、例えば、伝達力変化手段の構成は、上述のようなノックカム機構を用いたものに限られない。例えば、以下のようにしてもよい。
【0079】
図5は、本実施の形態の一変形例に係る伝達部307の構成例を示す図である。
【0080】
図に示されるように、伝達部307は、第一構造371と、第二構造372と、伝達力変化手段375とを有している。伝達力変化手段375は、第一方向において並ぶ複数の歯376と、歯376のいずれかに係合可能な係合部377と有するものである。歯376は、例えば、第一構造371に一体に形成されている。また、係合部377は、第二構造372に形成されている。
【0081】
本変形例において、第一構造371は、第二構造372の先端部がはまり込むような筒部を有している。その筒部の内周面に、第一方向において並ぶように、第一方向に対して垂直な方向において凹凸をなす複数の歯376が形成されている。複数の歯376は、係合部377に対向する凹凸面をなす部位であると言ってもよい。
【0082】
係合部377は、第一方向に対して垂直な方向に向けて突出し、歯376のいずれかに接触(係合)する突出部377bを有している。突出部377bは、例えばばねにより歯376に向けて付勢されている。
【0083】
なお、第一構造371と第二構造372との間には、ばね78が配置されているばね78の役割は上述の実施の形態と同様である。
【0084】
図6は、本変形例における、力センサ5により検出される第一方向の力と、接触部25の第一方向における変位量との関係の一例を示すグラフである。
【0085】
このように構成された伝達力変化手段375によって、複数の歯376のいずれかと係合部377とが係合するような接触部25の位置においては、接触部25の第一方向における変化に応じて、力センサ5により検出される力が非線形に変化する。すなわち、一番奥にある歯376との係合部377との係合が解除されるような範囲(グラフにおいて変位量T2までの範囲)においては、接触部25の変位に応じて係合部377と歯376との係合状態が切り替わるのに伴って、検出される力が強くなったり弱くなったりすることが繰り返される。このような力の変化を検出することにより、接触部25の変位量を推定可能な情報として利用することができ、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
なお、伝達力変化手段は、さらに異なる構成を有していてもよい。例えば、板ばね状である係合部が、第一方向において形成された複数の歯や、第一方向において所定の位置に形成された突起部に係合可能であり、第一構造と第二構造との位置関係に応じて係合部と突起部との係合状態が変化すると、力センサ5により検出される力にその影響が及ぶようになっていてもよい。例えばタクタイル感やクリック感を生じさせるための公知の機構など、第一構造と第二構造との位置関係の変化により非線形な力の変化を生じさせることができる種々の機構を、伝達力変化手段として用いることができる。
【0087】
(その他)
【0088】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0089】
上述の実施の形態や変形例の構成要素を適宜他の要素と置換したり組み合わせたりしてもよい。また、上述の実施の形態や変形例のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【0090】
ロボットシステムは、上述のような搬送装置に限られない。ロボットシステムは、ロボットハンドを一つ以上有するものであればよい。例えばロボットシステムのマニピュレータとして、上述の実施の形態に係るロボットハンドを用いることにより、対象物への作用に関する状態を把握するために有用な情報を力センサにより得ることができるようになる。ロボットシステムは、台車を有しないものであってもよい。例えば、ロボットシステムは、固定台座等に固定されているものであってもよい。
【0091】
ロボットハンドは、対象物を把持するものに限られない。ロボットハンドは、対象物へ作用するために接触する接触部を有していればよい。例えば、ボタン等の対象物を押下することが必要な用途において、接触部により対象物を押下するようにロボットハンドを構成することができる。また、対象物を引っ張ることが必要な用途において、対象物に係合可能な接触部により対象物を引っ張ることができるようにロボットハンドを構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明にかかるロボットハンドは、対象物への作用に関する状態を適切に把握しやすくなるという効果を有し、ロボットハンド等として有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 ロボットシステム、2 ロボットハンド、4 アーム部、5 力センサ、7、307 伝達部、10 ハンド部、11 ベース、21 作用部、25 接触部、71,371 第一構造、72,372 第二構造、75,375 伝達力変化手段、76,376 歯、77,377 係合部、900 対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6