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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102553
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ハンド部及びロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/00 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B25J15/00 F
B25J15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006522
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 泰生
(72)【発明者】
【氏名】坂原 洋人
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS03
3C707CS08
3C707CV05
3C707DS01
3C707ES02
3C707ET02
3C707EU13
3C707EV05
3C707EV10
3C707KS34
3C707KX06
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】よりシンプルな構造のハンド部が必要とされている。
【解決手段】ハンド部10は、ベース11と、ベース11に対して回転軸41を中心に回転可能な回転部材21とを備え、回転部材21は、回転軸41に沿う軸方向から見て第一方向に延びる第一部分22と、軸方向から見て第一方向とは異なる第二方向に延びる第二部分25とを有し、第二部分25は、第一部分22がベース11に対向するような姿勢である状態で、ベース11から第一部分22に向かう方向においてベース11と第一部分22との間に位置するように構成されており、対象物の板状部が第二部分25に近づく方向に変位して第二部分25に接触するのに伴って回転部材21が回転し、ベース11と第一部分22との間で板状部を挟持する挟持状態となるように構成されている。アクチュエータを用いずに板状部を有する対象物を把持可能である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持するハンド部に加わる力を検知する力センサを有するロボットシステムにおいて、板状部を有する対象物を把持するために用いられるハンド部であって、
ベースと、
前記ベースに対して回転軸を中心に回転可能な回転部材とを備え、
前記回転部材は、前記回転軸に沿う軸方向から見て第一方向に延びる第一部分と、軸方向から見て第一方向とは異なる第二方向に延びる第二部分とを有し、
前記第二部分は、前記第一部分が前記ベースに対向するような姿勢である状態で、前記ベースから前記第一部分に向かう方向において前記ベースと前記第一部分との間に位置するように構成されており、
前記ベースと前記第一部分との間において前記対象物の板状部を配置可能な開放状態から、前記板状部が前記第二部分に近づく方向に変位して前記第二部分に接触するのに伴って前記回転部材が前記ベースに対して回転し、前記ベースと前記第一部分との間で前記板状部を挟持する挟持状態となるように構成されている、ハンド部。
【請求項2】
前記第一部分のうち、前記ベースに対向する面には、前記板状部との間の摩擦係数が前記第一部分の他の部位と前記板状部との間の摩擦係数よりも大きくなるように構成された滑止部が形成されている、請求項1に記載のハンド部。
【請求項3】
前記滑止部は、前記挟持状態において当該板状部の表面に接触可能なゴム製の部位である、請求項2に記載のハンド部。
【請求項4】
前記第二部分に前記板状部が接触していない状態において前記開放状態が維持されるように前記回転部材を付勢する付勢部材を備える、請求項1に記載のハンド部。
【請求項5】
2つの、請求項1から4のいずれか1項に記載のハンド部と、
前記2つのハンド部のそれぞれが取り付けられており、互いに左右に離れて配置された2つのアーム部と、
前記アーム部を変位させて前記2つのハンド部間の距離を変化させる移動部と、
前記ハンド部に掛かる力を検出可能な力センサとを備える、ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部を有する対象物を把持するハンド部及びロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造現場などにおいて、人間では搬送することが困難な重量の搬送対象物、例えば、溶接の治具やプラズマ電源等の機材や、ワーク等を搬送したいという要望がある。そのような搬送対象物を搬送するため、フォークリフトを用いることも考えられるが、フォークリフトで搬送するほど搬送対象物の重量が大きくないこともある。また、搬送対象物がパレットに載置されていない場合には、フォークリフトで搬送することが困難である。
【0003】
このような要望、特に板状部を有するような対象物を対象とする用途について、対象物を把持するハンド部を設けたロボットシステムが種々提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1や特許文献2には、双腕を適切な位置に配置してから両方のハンドにつけてある軸を動作させることで板状の部材を掴むようにする双腕ロボットの制御手法が記載されている。
【0005】
なお、下記特許文献3には、複数のハンドを有する双腕ロボットの例が記載されている。このような双腕ロボットは、様々な構成のアームを用いるものであり、複雑な組立作業等には有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-228022号公報
【特許文献2】特開2010-228024号公報
【特許文献3】特開2011-115877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2に記載されているような双腕ロボットとその制御手法を用いる場合、それぞれのハンド部においてアクチュエータを搭載する必要がある。また、この場合、ハンド部を含めた制御が複雑になるという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献3に記載されている双腕ロボットのような複雑な構成は、例えば搬送対象物を把持し搬送するような比較的シンプルなタスクを目的とする場合には不要である。すなわち、よりシンプルな構造のハンド部を用いることができることが望ましい。また、例えば搬送対象物を搬送する目的に利用される場合、ハンド部の構成が複雑であって比較的重いと、可搬重量が低下させる要因となってしまうことも問題である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、シンプルな構造を有し、板状部を有する対象物を把持することができるハンド部及びロボットシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本第一の発明のハンド部は、対象物を把持するハンド部に加わる力を検知する力センサを有するロボットシステムにおいて、板状部を有する対象物を把持するために用いられるハンド部であって、ベースと、ベースに対して回転軸を中心に回転可能な回転部材とを備え、回転部材は、回転軸に沿う軸方向から見て第一方向に延びる第一部分と、軸方向から見て第一方向とは異なる第二方向に延びる第二部分とを有し、第二部分は、第一部分がベースに対向するような姿勢である状態で、ベースから第一部分に向かう方向においてベースと第一部分との間に位置するように構成されており、ベースと第一部分との間において対象物の板状部を配置可能な開放状態から、板状部が第二部分に近づく方向に変位して第二部分に接触するのに伴って回転部材がベースに対して回転し、ベースと第一部分との間で板状部を挟持する挟持状態となるように構成されている、ハンド部である。
【0011】
かかる構成により、アクチュエータを用いずに板状部を有する対象物を把持可能になる。
【0012】
また、本第二の発明のハンド部は、第一の発明に対して、第一部分のうち、ベースに対向する面には、板状部との間の摩擦係数が第一部分の他の部位と板状部との間の摩擦係数よりも大きくなるように構成された滑止部が形成されている、ハンド部である。
【0013】
かかる構成により、板状部を挟持している状態を容易に維持することができる。
【0014】
また、本第三の発明のハンド部は、第二の発明に対して、滑止部は、挟持状態において板状部の表面に接触可能なゴム製の部位である、ハンド部である。
【0015】
かかる構成により、より確実に、板状部を挟持している状態を維持することができる。
【0016】
また、本第四の発明のハンド部は、第一から三のいずれか1つの発明に対して、第二部分に板状部が接触していない状態において開放状態が維持されるように回転部材を付勢する付勢部材を備える、ハンド部である。
【0017】
かかる構成により、挟持状態でない場合に確実に開放状態を維持することができる。
【0018】
また、本第五の発明のロボットシステムは、第一から四のいずれか1つの発明に対して、2つの、ハンド部と、2つのハンド部のそれぞれが取り付けられており、互いに左右に離れて配置された2つのアーム部と、アーム部を変位させて2つのハンド部間の距離を変化させる移動部と、ハンド部に掛かる力を検出可能な力センサとを備える、ロボットシステムである。
【0019】
かかる構成により、力センサを用いて、より簡素な構造のハンド部により対象物を把持する動作を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるハンド部は、アクチュエータを用いずに板状部を有する対象物を把持可能である。シンプルな構造により、板状部を有する対象物を把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態によるロボットシステムを示す斜視図
図2】同ハンド部を示す斜視図
図3】同ハンド部の左上後方から見た分解斜視図
図4】同ハンド部の左上前方から見た分解斜視図
図5】同ハンド部の動作を説明する図
図6】本実施の形態の一変形例に係るハンド部を示す斜視図
図7】本実施の形態の別の変形例に係るハンド部の動作を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、ハンド部及びそれを用いたロボットシステムの実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
以下の図面において示される座標は、各図同士で共通している。ロボットシステムについて、座標のz方向は、水平面に対して垂直な方向である。x方向は、z方向に対して垂直な方向であり、y方向は、z方向に対して垂直な方向であってx方向に対して垂直な方向である。なお、z方向を上下方向(図示される座標の原点から見てz軸で正となる方向が上)ということがあり、x方向を左右方向(図示される座標の原点から見てx軸で正となる方向が左)ということがあり、y方向を前後方向(図示される座標の原点から見てy軸で正となる方向が後)ということがある。
【0024】
また、ハンド部について、座標のZ方向は、水平面に対して垂直な方向である。X方向は、Z方向に対して垂直な方向であり、Y方向は、Z方向に対して垂直な方向であってX方向に対して垂直な方向である。なお、Z方向を上下方向(図示される座標の原点から見てZ軸で正となる方向が上)ということがあり、Y方向を左右方向(図示される座標の原点から見てY軸で正となる方向が右)ということがあり、X方向を前後方向(図示される座標の原点から見てX軸で正となる方向が前)ということがある。
【0025】
なお、以下の説明において、このように各方向を示して各部の形状や位置関係を説明することがあるが、方向の明示はあくまで説明の便宜のためのものに過ぎず、本発明に係る各装置等の使用時における向きや姿勢などを限定するものではない。
【0026】
(実施の形態)
【0027】
本実施の形態に係るロボットシステムは、例えば、搬送対象物を搬送する動作を実行可能な搬送装置である。搬送装置は、例えば、2個のハンド部を3軸方向に移動させる移動部を有し、基端側の第三移動部が台車に固定されているものである。ロボットシステムは、それぞれのハンド部に加わる力を検知する力センサを有するものである。以下、このようなロボットシステムの構成と、同ロボットシステムに用いられるハンド部の構成とについて説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態によるロボットシステム100を示す斜視図である。
【0029】
ロボットシステム100は、2つのハンド部10と、第一移動部110と、第二移動部120と、第三移動部130と、台車140とを備える。
【0030】
図1においては、ハンド部10により対象物900を把持している状態のロボットシステム100が示されている。本実施の形態において用いられるハンド部10は、特に、板状部901を有する搬送対象物(以下、対象物900という)を把持するために用いられる。
【0031】
対象物900は特に限定されないが、例えば、プラズマ電源や溶接の治具などのように、製造現場で用いられるものであってもよい。対象物900の重量は特に限定されないが、人間による搬送が困難な重量、例えば、30kg以上であってもよく、50kg以上であってもよい。また、対象物900の重量は、フォークリフトなどの大型の運搬車両を用いる必要のない程度の重量、例えば、200kg以下であってもよく、150kg以下であってもよく、100kg以下であってもよい。ハンド部10を用いたロボットシステム100は、一の方向における両端部分において所定の範囲の厚みを有する板状部901を有しているような対象物900を把持可能である。
【0032】
図1においては、一例として、平板状の対象物900を把持している場合が示されているが、対象物900は立体的な物体であってもよいし、板状の部材に別の装置などが載置されたものであってもよい。後者の場合には、例えば、板状の部材と、その板状の部材に載置されている装置などの載置物とが対象物900であってもよい。平板状の対象物900は、その略全体が板状部901であると言ってもよい。
【0033】
本実施の形態において、2つのハンド部10は、水平面内の第一方向において離間して配置されている。以下において、x方向を第一方向であるものとして説明する。すなわち、二つのハンド部10は、左右方向において互いに離れるようにして配置されている。
【0034】
本実施の形態において、各ハンド部10は、対象物900を同時に保持可能に構成されている。2つのハンド部10によって対象物900を保持することによって、対象物の搬送時にハンド部10に対して掛かるモーメントの大きさを小さくすることができる。そのため、ロボットシステム100の各部材に必要な強度や剛性等の要件を軽減することができ、例えば、ロボットシステム100の小型化、軽量化を実現しやすくなる。
【0035】
2つのハンド部10は、それぞれ、左右方向において互いに離れている第一保持構造112bと第二保持構造112cとに設けられている。第一保持構造112bは右側に配置されており、第二保持構造112cは左側に配置されている。第一保持構造112bと第二保持構造112cとは、それぞれ、ハンド部10を支持するアーム部113と、ハンド部10と、アーム部113とハンド部10との間に設けられている力センサ115とを含んでいる。すなわち、本実施の形態において、ロボットシステム100は、互いに左右に離れて配置された2つのアーム部113を有している。それぞれのアーム部113には、力センサ115を介して間接的に、ハンド部10が取り付けられている。
【0036】
力センサ115は、ハンド部10に掛かる力を検出可能である。力センサ115は、例えば、ハンド部10により保持されている対象物900の重量を取得するために用いられる。それぞれの力センサ115は、例えば、外力を検出するためのセンサであってもよく、重量センサであってもよい。外力を検出するためのセンサは、例えば、3軸又は6軸の力覚センサであってもよい。それぞれの力センサ115が外力を検出するためのセンサである場合には、そのセンサが各ハンド部10で保持された対象物900の重量を測定できるように配置されていることが好適である。
【0037】
それぞれのアーム部113のうち他方のアーム部113に対向する面には、ハンド部10が取り付けられるハンド取付部(図示せず)が設けられていると言ってもよい。力センサ115は、ハンド取付部に加わる力を検知するためのセンサであると言ってもよい。
【0038】
なお、力センサ115の搭載位置は、アーム部113とハンド部10との間の位置に限られない。力センサ115は、例えば、アーム部113と、第一保持構造112bや第二保持構造112cを支持する構造体との間に配置されていてもよい。また、アーム部113が複数の部材により構成されており、いずれかの部材間に力センサ115が配置されていてもよい。また、力センサ115が、アーム部113等を構成する部材に取り付けられ、当該部材の歪み等を検知可能なセンサ(例えば、歪みゲージなど)であってもよい。また、第一保持構造112bや第二保持構造112cは、力センサ115を有していなくてもよい。これらの場合、ハンド部10は、アーム部113に直接又は間接に接続されていてもよい。
【0039】
第一保持構造112bと第二保持構造112cとのそれぞれにおいて、力センサ115によって、ハンド部10に掛かる重量が取得可能である。それぞれの力センサ115によって取得される重量の合計は、例えば、対象物900の重量となってもよく、又は対象物900の重量に両ハンド部10の重量を加算したものであってもよい。
【0040】
各保持構造112b,112cと共に、各ハンド部10は、移動部110,120,130によって、台車140に対して移動可能である。各ハンド部10は、水平面内において第一方向及び第二方向に移動可能であり、鉛直方向すなわちz方向に移動可能である。なお、第二方向は、第一方向に垂直な方向すなわちy方向である。各ハンド部10は、直交座標系における3軸の方向にそれぞれ移動されることになる。
【0041】
第一移動部110は、各保持構造112b,112cを支持している。すなわち、第一移動部110は、各ハンド部10を支持している。第一移動部110は、各ハンド部10をそれぞれ第一方向に変位させる。第一移動部110は、例えば、各ハンド部10を第一方向にそれぞれ独立して移動できる。すなわち、第一移動部110は、アーム部113を変位させて、2つのハンド部10間の距離を変化させることができるように構成されている。第一移動部110は、ロボットシステム100は、第一移動部110によって各ハンド部10を移動させることによって、例えば、各ハンド部10による対象物900の保持を行ったり、その保持を解除したりすることができるように構成されている。また、ロボットシステム100は、第一移動部110によって各ハンド部10を同時に同じ向きに移動させることによって、例えば、各ハンド部10によって保持されている対象物900を第一方向に移動させることもできる。
【0042】
第一移動部110は、一例として、各ハンド部10を支持する第一支持部111と、第一支持部111に対して各ハンド部10を第一方向に移動させるリニアアクチュエータとを有している。より具体的には、例えば、第一方向に延びる第一支持部111の底面に第一方向に沿ったガイドが設けられており、そのガイドにスライダが第一方向にスライド可能に組み付けられている。そして、各ハンド部10が取り付けられている各アーム部113が、それぞれ異なるスライダに固定されている。
【0043】
第二移動部120は、第一移動部110を支持しており、その第一移動部110を第二方向に移動させる。したがって、第二移動部120によって、各ハンド部10が一緒に第二方向に移動されることになる。第二移動部120は、一例として、第一移動部110の第一支持部111を支持する第二支持部121と、第二支持部121に対して第一支持部111を第二方向に移動させるリニアアクチュエータとを有している。より具体的には、例えば、第二方向に延びる第二支持部121の底面に第二方向に沿ったガイドが設けられており、そのガイドにスライダが第二方向にスライド可能に組み付けられていてもよい。そして、第一支持部111の上面がそのスライダに固定されていてもよい。
【0044】
第三移動部130は、第二移動部120を支持しており、その第二移動部120を鉛直方向に移動させる。したがって、第三移動部130によって、各ハンド部10が一緒に鉛直方向に移動されることになる。第三移動部130は、一例として、第一方向に離間して配置された一対の支柱131,132と、支柱131,132の上端側を繋ぐ上面板133と、一対の支柱131,132によって端部が支持されており、第二移動部120の第二支持部121を支持する昇降部134と、昇降部134を一対の支柱131,132に対して鉛直方向に同期して移動させる一対のリニアアクチュエータとを有している。より具体的には、鉛直方向に延びる支柱131,132の昇降部134側の面にそれぞれ鉛直方向に沿ったガイドが設けられており、そのガイドにスライダが鉛直方向にスライド可能に組み付けられていてもよい。そして、昇降部134の第一方向の両端がそれぞれスライダに固定されていてもよい。
【0045】
移動部110,120,130において、例えば、スライダは、平行に設けられた2以上のガイドに組み付けられていてもよい。また、移動部110,120,130が有するリニアアクチュエータはそれぞれ独立して、例えば、ラックアンドピニオン機構と、ピニオンを回転させる駆動手段とを有するものであってもよく、ボールねじ機構と、ボールねじ機構のねじ軸を回転させる駆動手段とを有するものであってもよく、一対のプーリと、その一対のプーリに掛け渡された無端のベルトと、プーリを回転させる駆動手段とを有するものであってもよく、そのプーリ及びベルトに代えてスプロケット及びチェーンを用いたものであってもよく、その他の構成であってもよい。各ハンド部10を第一方向にそれぞれ独立して移動させるため、第一移動部110は、第一保持構造112bを移動させるリニアアクチュエータと、第二保持構造112cを移動させるリニアアクチュエータとを有していてもよい。なお、ガイドやスライダ、リニアアクチュエータなどを用いて支持対象を直線方向に移動させる機構はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。図1では、ガイドやスライダ、リニアアクチュエータの図示は省略している。
【0046】
台車140には、第三移動部130が固定されている。なお、第三移動部130の基端側、すなわち下方側の端部が台車140に固定されていてもよい。台車140は、一例として、第三移動部130の基端側が固定された基台141と、基台141に固定されており、床面などの走行面を走行可能な複数の走行手段142とを有してもよい。基台141は、一例として、板状の部材であってもよい。走行手段142は、通常、車輪であるが、車輪以外のローラ、無限軌道、ボールを有するボールキャスタなどであってもよい。また、台車140は、走行手段142を駆動するための駆動手段を有していてもよく、又は、そうでなくてもよい。後者の場合には、台車140は、手動で移動されてもよい。また、手動で移動される台車140は、移動部110,120,130による対象物900の局所的な搬送を行う際に台車140が動かないように走行手段142を固定するための固定手段を有していてもよい。固定手段は、例えば、車輪のストッパなどであってもよい。本実施の形態では、台車140が駆動手段を有しておらず、手動で移動される場合について主に説明する。移動部110,120,130によって対象物900が局所的に搬送されるのに対して、台車140によって対象物900がより大域的に搬送されることになる。
【0047】
なお、ロボットシステム100は、ユーザから操作や指示を受け付けるための受付部(図示せず)や、移動部110,120,130の動作を制御する制御部(図示せず)を有している。受付部は、例えば、移動部110,120,130に関する操作や指示を受け付けてもよく、台車140に関する操作や指示を受け付けてもよい。受け付けは、例えば、入力デバイス(例えば、キーボードやマウス、タッチパネルなど)から入力された情報の受け付けでもよく、有線又は無線の通信回線を介して送信された情報の受信でもよい。なお、受付部は、受け付けを行うためのデバイス(例えば、入力デバイス、通信デバイスなど)を含んでもよく、あるいは含まなくてもよい。また、受付部は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは所定のデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0048】
制御部は、第一移動部110、第二移動部120、及び第三移動部130をそれぞれ制御する。この制御部による制御によって、例えば、対象物900が各ハンド部10によって保持されたり、またその保持が解除されたりすることになる。また、この制御によって、対象物900の位置決めなどの局所的な搬送が行われることになる。また、例えば、台車140が駆動手段を有している場合には、制御部は、台車140の移動制御をも行ってもよい。これらの制御は、例えば、受付部によって受け付けられた操作や指示に応じて行われてもよい。台車140の移動制御は、例えば、受付部によって受け付けられた操作に応じた移動方向や移動速度に関する移動制御であってもよく、あらかじめ決められた出発地から目的地までの自律的な移動制御であってもよい。
【0049】
次に、ハンド部10の構造の一例についてより具体的に説明する。なお、ハンド部10の構造の説明において示す各方向は、上述のロボットシステム100の構成の説明において示した各方向とは、必ずしも一致しない、独立したものである。
【0050】
図2は、同ハンド部10を示す斜視図である。図3は、同ハンド部10の左上後方から見た分解斜視図である。図4は、同ハンド部10の左上前方から見た分解斜視図である。
【0051】
ハンド部10は、ベース11、回転部材21、回転軸41及び付勢部材51を備えている。
【0052】
ベース11は、本実施の形態において、平面視で略矩形の形状を有している。ベース11は、水平面に平行な板状をなすベース本体12を有している。ベース本体12の上面が、対象物900の把持時において板状部901が接触しうるベース面13となる。ベース面13は、回転軸41に沿う軸方向に対して略平行な平面である。ベース面13は、略平坦な平面である。ベース面13を接触面13と言ってもよい。本実施の形態において、軸方向はY方向である。ベース面13は、前後方向すなわちX方向に延びる形状を有していると言ってもよい。
【0053】
ベース11は、各アーム部113のハンド取付部に、力センサ115を介して取り付け可能である。すなわち、ベース11は、アーム部113により保持可能に構成されている。本実施の形態において、ベース11の後端面が、アーム部113側への取り付けられる取付面19となっている。取付面19には、例えば、ねじが挿脱可能な穴が形成されている。この穴を通るように配置したねじに、ベース本体12の底面側から配置されるボルト61が結合されることにより、ベース11が、取付面19に面する部材(例えば、力センサ115やアーム部113等)に固定可能になるように構成されている。なお、ベース11のアーム部113側の部材への取付方法はこれに限られず、種々の手段を用いることができる。
【0054】
ベース11の後端側には、ベース面13から上方すなわちZ方向に立ち上がるように形成された支持部15が形成されている。支持部15のそれぞれは、板状の部位である。支持部15は、ベース面13の左右両端部に立設されている。すなわち、支持部15は、軸方向において、ベース面13の両端部に位置している。
【0055】
支持部15のうち、ベース面13から上方に離れた部位には、軸支部16が形成されている。軸支部16は、回転軸41を保持する。
【0056】
本実施の形態において、2つの支持部15のそれぞれにおいて、他方の支持部15に対向する面に、当該他方の支持部15に向かって突出するように、軸支部16が形成されている。軸支部16の中央部には、回転軸41の端部が嵌まる凹状部が形成されている。回転軸41は、このような凹状部に両端部のそれぞれが嵌まるようにして、ベース11に対して配置可能となっている。なお、各軸支部16には、凹状部から前方上方に向かって延びる、回転軸41の直径ほどの幅の溝状の着脱溝16bが形成されている。各着脱溝16bは、例えば、回転軸41がY方向に平行な姿勢のまま、ベース11の前方上方から回転軸41の両端部が着脱溝16bを通して凹状部に配置可能となるように、左右対称に形成されている。
【0057】
ベース11は、例えば金属製であるが、エンジニアリングプラスチックなどの樹脂製であってもよく、種々の材料を用いて構成することができる。ベース11は、本実施の形態においては、材料の塊から切削されたり、型を利用した鋳造やその他の成形加工によったりして、各部が一体に形成されたものであるが、これに限られない。別個に形成された複数の部材同士が組み合わされてベース11が構成されるようにしてもよい。
【0058】
回転部材21は、本実施の形態において、平面視で略矩形の形状を有している。回転部材21は、ベース11に対して、回転軸41を中心に回転可能である。本実施の形態において、回転部材21は、ベース11に対して回転することにより、回転部材21とベース11との間で板状部901を挟持しない開放状態と、回転部材21とベース11との間で板状部901を把持する把持状態とのそれぞれの状態をとることができるようになっている。
【0059】
回転部材21は、その一部を回転軸41が貫通するように構成されている。本実施の形態において、回転部材21には、Y方向すなわち軸方向に沿って貫通孔が形成されている。貫通孔が形成されている近傍の部位の、軸方向における幅寸法は、ベース11の支持部15に設けられている軸支部16同士の間の寸法よりわずかに小さくなっている。貫通孔を回転軸41が通り、貫通孔が形成されている近傍の部位が両軸支部16の間に位置するようにして、回転部材21がベース11に対して配置されている。このように、回転部材21は、ベース11に対して回転軸41周りに回転可能に支持されているといえる。
【0060】
回転部材21は、第一部分22と、第二部分25とを有している。第一部分22は、軸方向とは異なる第一方向に延びる部分である。また、第二部分25は、軸方向及び第一方向とは異なる第二方向に延びる部分である。すなわち、回転部材21は、軸方向から見て、第一方向に延びる第一部分22と、第一方向とは異なる第二方向に延びる第二部分25とを有しているといえる。本実施の形態において、第一方向及び第二方向は、それぞれ、軸方向に対して垂直な方向である。また、第一方向は、第二方向に対して略垂直な方向である。なお、第一方向に対する第二方向の角度は、これに限られず、互いに異なる方向であればよい。
【0061】
本実施の形態において、第一部分22と第二部分25とは、それぞれ、回転軸41が位置する部位を基点として、第一方向及び第二方向に延びるように形成されている。回転部材21は、軸方向において垂直な断面が、どの断面においても略同じ形状となるように形成されている。すなわち、回転部材21は、回転軸41が位置する部位において折れ曲がるような形状を有している。
【0062】
第一方向において、回転軸41が位置する部位から離れた第一部分22の先端部は、ベース11のベース面13の前端部の近くに位置している。第一部分22は、ベース面13に対向する挟持面23を有している。挟持面23は、ベース面13に対向する対向面であると言ってもよい。挟持面23は、回転軸41に沿う軸方向に対して略平行な平面である。挟持面23は、略平坦な平面である。開放状態において、挟持面23は、ベース面13に対して若干傾斜した状態となるようになっている。
【0063】
第二部分25は、第一部分22がベース11に対向するような姿勢である状態で、ベース11から第一部分22に向かう方向において、ベース11と第一部分22との間に位置している。すなわち、第二部分25は、ベース面13に挟持面23が対向する状態において、上下方向において、ベース面13と第一部分22との間に位置するように構成されている。本実施の形態において、より具体的には、第二部分25は、ベース面13に挟持面23が対向する状態において、上下方向においてベース面13と回転軸41との間に位置する部位である。
【0064】
本実施の形態において、第二方向における、回転軸41が位置する部位から離れた第二部分25の先端部は、回転軸41を中心とする円筒面を有している。なお、当該先端部はこれ以外の形状を有していてもよい。第二部分25とベース面13との間の距離は、ベース11に対する回転部材21の回転軸41周りの位置に限られず、小さくなっていることが望ましい。本実施の形態において、第二部分25は、軸方向に対して略平行であって、第一方向に対して略垂直な平面を有している。この平面は、挟持面23に対して90度よりも若干小さい角度となるように形成されているが、これに限られない。
【0065】
本実施の形態において、回転部材21は、滑止部24を有している。滑止部24は、例えば、第一部分22のうちベース面13に対向する部位の一部に配置されている。すなわち、滑止部24の表面は、挟持面23の一部を構成する。
【0066】
滑止部24は、回転部材21のそれ以外の本体部分とは異なる素材を用いて形成された部位である。滑止部24は、板状部901との間の摩擦係数が第一部分22の他の部位と板状部901との間の摩擦係数よりも大きくなるように構成されている。本実施の形態においては、例えば、回転部材21の本体部分は、金属製又はエンジニアリングプラスチックなどの樹脂製である。滑止部24は、例えば、ゴム製である。
【0067】
このように設けられた滑止部24は、後述のように、挟持状態において板状部901の表面に接触可能なゴム製の部位であるといえる。
【0068】
回転軸41は、例えば、金属製の軸であるが、材質はこれに限られない。なお、部材として別個の回転軸41が設けられていなくてもよい。例えば、ベース11や回転部材21と一体に成形された軸や、ベース11や回転部材21に対して固定された軸を回転軸として、ベース11に対して回転部材21が回転可能に支持されるようにしてもよい。
【0069】
付勢部材51は、第二部分25に板状部901が接触していない状態において、開放状態が維持されるように回転部材21を付勢する。開放状態が維持されるように付勢するとは、回転軸41周りのベース11と回転部材21との間の角度を大きくするように付勢すると言ってもよい。
【0070】
本実施の形態において、付勢部材51は、例えば、コイルばねである。付勢部材51は、自然状態(負荷がかかっていない状態)から延びた状態になるように、回転部材21とベース11との間に掛けられている。付勢部材51は、このような構造のものに限られない。例えば、ベース11に対する回転部材21の回転に伴ってねじられるように配置されたねじりばねにより、回転軸41周りのベース11と回転部材21との間の角度を大きくするように付勢が行われるようにしてもよい。
【0071】
ここで、ハンド部10には、ベース11に対する回転部材21の回転可能な範囲を規制する回転規制手段30(図5に示す)が設けられている。回転規制手段30は、回転軸41周りの所定の回転方向においてベース11に対して回転部材21が回転する場合において、回転部材21が所定の回転位置になった場合に、それ以上所定の回転方向に回転部材21が回転しないように、回転部材21の回転を規制するように構成されている。このように回転規制手段30が設けられていることにより、回転部材21の回転可能な範囲が制限され、確実にハンド部10による対象物900の把持動作が行われるようになっている。
【0072】
本実施の形態において、回転規制手段30は、例えば、ベース11に設けられている回転規制部17と、回転部材21に形成された接触部27とを含んでいる。
【0073】
すなわち、ベース11の支持部15には、回転規制部17が形成されている。回転規制部17は、2つの支持部15のそれぞれにおいて、他方の支持部15に対向する面に、当該他方の支持部15に向かって突出するように形成されている凸状の部位である。
【0074】
他方、回転部材21の回転軸41が通る部位には、他の部位より回転中心から突出するように形成された接触部27が設けられている。接触部27は、例えば、軸方向に沿って延びるリブ状の突出部である。回転軸41の中心から接触部27の径方向(軸方向に対して垂直な方向)の先端部までの距離は、回転軸41の中心から回転規制部17が形成されている位置までの径方向における距離よりも大きくなっている。
【0075】
本実施の形態においては、このように構成された回転規制手段30により、開放状態において回転部材21のベース11に対する角度が所定の角度まで開いた場合に、回転規制部17に接触部27が接触し、回転部材21がそれ以上回転しないように維持される。付勢部材51により回転部材21が開くように付勢されているので、板状部901を把持しない通常時においては、回転規制部17に接触部27が接触した状態が維持される。
【0076】
以下に、以上のように構成されたハンド部10の動作について説明する。ハンド部10は、以上のように、回転部材21が、回転軸41に対して垂直な第一方向に延びる第一部分22と、回転軸41に対して垂直な第二方向に伸びる第二部分25とを有し、第二部分25が回転軸41とベース面13との間に位置するように配置されている。ハンド部10は、ベース11と第一部分22との間において対象物900の板状部901を配置可能である開放状態になることができる。また、ハンド部10は、ベース11と第一部分22との間で板状部901を挟持する挟持状態になることができる。ハンド部10は、開放状態において、板状部901が第二部分25に近づく方向に変位して、板状部901が第二部分25に接触するのに伴って、回転部材21がベース11に対して回転することにより、挟持状態になるように構成されている。すなわち、ハンド部10は、開放状態と挟持状態とを変化させるためだけのアクチュエータを用いることなく、板状部901の挟持と開放とを切替可能に構成されている。
【0077】
なお、本実施の形態において、ある部位がある部位に近づいたり離れたりする方向に変位する、例えば板状部901が第二部分25に近づく方向に変位するというような表現は、相対的な変位を表す表現である。すなわち、静止している対象物900に対してハンド部10が変位することにより、板状部901の第二部分25に対する位置が変化する場合も、上記表現により表される事象に含まれる。
【0078】
図5は、同ハンド部10の動作を説明する図である。
【0079】
図5において、ステップS1が開放状態を示し、ステップS4が挟持状態を示す。ステップS2及びステップS3は、開放状態から挟持状態へ変化しつつある状態や、又はその逆の状態を示す、過渡的な状態を示す。
【0080】
すなわち、ステップS1として示されるように、開放状態において、第二部分25は、回転軸41とベース面13との間に位置している。回転部材21がベース11に対して開いていることから、第二部分25は、比較的前方に位置している。
【0081】
このような開放状態では、上述のように、回転規制手段30において、回転規制部17に接触部27が接触している状態となっている。したがって、回転部材21がベース11に対してこれ以上開かないようになっている。
【0082】
板状部901を把持する際には、まず、このような開放状態において、板状部901がベース面13の上に位置するように、板状部901に対してハンド部10が配置される。板状部901は、ハンド部10の前側からベース11と回転部材21との間のスペースに導入される。板状部901は、上下方向において、ベース11と回転部材21との間に位置する。
【0083】
その後、板状部901に対して、ハンド部10を前方に変位させる。これにより、板状部901の後端部が第二部分25に近づき、第二部分25に接触する(ステップS2)。
【0084】
さらに板状部901に対してハンド部10が前方に変位すると、それに伴って、板状部901により第二部分25が後方に押し込まれ、ベース11に対して回転部材21が回転する(ステップS3)。ベース面13と挟持面23とがなす角が小さくなるように、回転部材21が回転する。
【0085】
さらに板状部901に対してハンド部10が前方に変位すると、それに伴って回転部材21が回転し、板状部901の上面に回転部材21の挟持面23が接触する状態となる(ステップS4)。このように、板状部901が、上下方向においてベース面13と挟持面23とにより挟まれて、挟持状態となる。挟持状態においては、回転部材21が板状部901の上面に当接している状態となるため、それ以上回転部材21が回転しない。そのため、板状部901に対してハンド部10が前方に変位することができなくなっている。
【0086】
このような挟持状態において、板状部901の上面には、滑止部24が接触するように構成されている。挟持状態において板状部901と滑止部24との間の摩擦力を大きくすることができるので、対象物900を把持した状態で対象物900の位置がずれにくくなるようにすることができる。滑止部24はゴム製であるので、滑止部24が板状部901に接触した場合において、さらに滑止部24が若干変形するまで、板状部901に対してハンド部10を前方に変位させて、板状部901を把持することができる。より強い力で板状部901を把持することができ、確実に板状部901を把持している状態を維持することができる。
【0087】
なお、挟持状態において、挟持面23はベース面13に略平行となるように構成されていることが好ましい。挟持面23はベース面13に略平行となる場合、挟持面23やベース面13における板状部901の表面に接触する領域の面積をより大きく確保することができる。換言すると、ハンド部10は、挟持面23がベース面13に対して平行となる場合における挟持面23とベース面13との間隔と略等しい厚みの板状部901を有する対象物900の把持を行う目的に特に向いているといえる。
【0088】
なお、本実施の形態に係るロボットシステム100において、板状の対象物900を左右から2つのハンド部10により把持する場合には、各ハンド部10に対応する力センサ115の計測結果を利用して、適切に把持が行われるように自動的に制御動作が行われるようにしてもよい。
【0089】
すなわち、次のような動作が、制御部等により行われればよい。例えば、左右それぞれのハンド部10を、両ハンド部10間の距離が小さくなるように移動させる。そうすると、各ハンド部10の第二部分25に対象物900の各板状部901が当接しながら、回転部材21が回転する。
【0090】
この間、いずれか一方のハンド部10に対応する力センサ115により検出された値が、第一閾値よりも大きくなった場合、当該ハンド部10の移動を停止させる。そして、他方のハンド部10の移動を継続し、当該他方のハンド部10に対応する力センサ115により検出された値が、第一閾値よりも大きくなった場合、こちらのハンド部10の移動も停止させる。第一閾値は、例えば、ハンド部10により板状部901が比較的軽く把持される把持状態となるような場合における力センサ115の検出値と同等の値に設定することができる。このように両ハンド部10の制御を行うことにより、2つのハンド部10のそれぞれで、一旦、対象物900の各板状部901を把持することができる。
【0091】
次に、両方のハンド部10を、さらに、両ハンド部10間の距離が小さくなる方向に移動させる。そうすると、各ハンド部10に対応する力センサ115の検出値が上昇する。そして、いずれかの力センサ115の検出値が、第一閾値よりも大きい第二閾値よりも大きくなった場合に、両ハンド部10の移動を停止させ、その把持状態を維持する。このように、一旦対象物900を両ハンド部10で把持した状態としてから、さらに強い把持力で対象物900が把持されるようにすることにより、対象物900を確実に、かつ、強固に把持することができる。
【0092】
なお、ロボットシステム100の動作はこれに限られず、2つの力センサ115のそれぞれの検出値が第一閾値を超えたか否かのみによって対応するハンド部10による把持が完了したか否かを判断するようにしてもよい。この場合、第一閾値は、上記の場合よりも比較的大きい値にすることが好ましい。
【0093】
本実施の形態において、ロボットシステム100は、例えば、床面ではなく棚や台などに載置されている対象物900をピックアップしてもよく、また、棚や台などに対象物900を搬送してもよい。また、ロボットシステム100は、搬送先に配置されている位置決めのための部材に対して位置決めが行われるように対象物900を搬送してもよい。具体的には、搬送先において、位置決めのためのガイド部材などに沿うように、対象物900が位置決めされてもよい。
【0094】
以上のように、本実施の形態によるロボットシステム100は、ハンド部10を移動させるためのアクチュエータに加えて把持する動作を行うためのアクチュエータを用いる必要なく対象物900を把持可能な、シンプルな構造を有するハンド部10を用いて構成されている。したがって、ロボットシステム100の構成をより簡素にすることができる。各ハンド部10側の重量が増加しないようにすることができ、それに応じて可搬重量をより大きくすることができる。また、双腕ロボットと比較して部品数が少なくなったことにより、ロボットシステム100の重量を抑えることができ、また全体として小型にすることもできるようになる。
【0095】
ハンド部10には滑止部24が設けられているので、板状部901を挟持している状態を、容易に、かつ、より確実に維持することができる。また、付勢部材51により回転部材21を付勢することができるので、挟持状態でない場合に、確実に開放状態を維持することができ、把持や把持の解除を確実に繰り返すことができる。
【0096】
(変形例の説明)
【0097】
なお、本実施の形態において、以下のようにハンド部の構成を変形してもよい。いずれの場合も、上述と同様の効果を得ることができる。
【0098】
図6は、本実施の形態の一変形例に係るハンド部310を示す斜視図である。
【0099】
図に示されるように、ハンド部310は、上述の実施の形態に係るハンド部10とは、前端部の形状が若干異なるベース311を有しているものである。その他の、回転部材21やそのベース311による軸支構造などは、ハンド部10のそれと同様である。
【0100】
本変形例において、ベース311は、ベース本体12の前端部に、前方に延びる先端部312が形成されているものである。先端部312は、軸方向から見てテーパ形状をなし、平面視で先細となるように構成されている。先端部312の上面は、前端部におけるベース311の底面近傍から後方に行くにつれて高さが高くなるなだらかな傾斜面である。先端部312の上面は、ベース本体12の上面のベース面13まで繋がっている。
【0101】
このような先端部312が形成されていることにより、対象物900を把持する場合にハンド部310を対象物900に向けて移動させると、対象物900の下側に容易に先端部312を位置させることができる。したがって、対象物900の板状部901がベース面13上に位置するように、容易に、対象物900に対するハンド部310の位置をセットすることができる。したがって、ハンド部310を用いて、スムーズに板状部901を把持することができるようになる。
【0102】
図7は、本実施の形態の別の変形例に係るハンド部410の動作を示す図である。
【0103】
図に示されるように、ハンド部410は、上側にベース411が位置し、ベース411の下側に回転部材421が位置するように構成されている。回転部材421は、ベース411に対して、回転軸41を中心に回転可能に、支持されている。
【0104】
ベース411は、ベース本体12の下側の面がベース面413となるように構成されている。ベース面413のうち板状部901が接触しうる部分には、滑止部414が配置されている。滑止部414は、上述の実施の形態における滑止部24と同様に構成することができる。
【0105】
回転部材421は、ベース411から吊り下げされている。回転部材421は、回転軸41から前方に延びており上面に挟持面423が形成されている部位と、上下方向において挟持面423とベース面413との間に位置するように形成された第二部分25とを有している。また、回転軸41よりも後方には、回転部材421のベース411に対する回転位置が所定の位置である場合にベース411に接触する接触部427が設けられている。接触部427とベース面413とは、ベース411から吊り下げられている回転部材421が所定の角度までしか開かないようにする回転規制手段30を構成する。これにより、ステップS31として示されるような開放状態が維持されるようになっている。
【0106】
なお、開放状態において、回転部材21が自重により開いた状態を維持するように構成されているため、付勢部材等は設けられていないが、付勢部材が設けられていてもよい。
【0107】
このようなハンド部410も、上述の実施の形態に係るハンド部10と同様に、ハンド部410を対象物900の板状部901に向かって移動させることにより、板状部901を把持させることができる。
【0108】
すなわち、ステップS31に示されるように、まず、開放状態において、回転部材21の先端部が板状部901の下側に位置するように、ハンド部410を対象物900に対して移動させる。
【0109】
ステップS32に示されるように、ハンド部410を対象物900に向かって変位させると、板状部901の端部が挟持面423の上面を通って、第二部分25に近づく。なお、この場合、ハンド部410の対象物900に向けた変位に伴ってベース411を徐々に下に移動させ、板状部901が挟持面423の上をスムーズに移動するようにしてもよい。
【0110】
さらにハンド部410を対象物900に向かって変位させると、板状部901が第二部分25に当接し、ベース411に対して回転部材421が回転する。そして、ステップS33に示されるように、板状部901が回転部材421とベース411との間で挟まれた挟持状態となり、ハンド部410によって対象物900が把持される。
【0111】
(その他)
【0112】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0113】
上述の実施の形態や変形例の構成要素を適宜他の要素と置換したり組み合わせたりしてもよい。また、上述の実施の形態や変形例のうち、一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。
【0114】
ロボットシステムは、上述のような搬送装置に限られない。ロボットシステムは、ハンド部を一つ以上有するものであればよい。例えばロボットシステムのマニピュレータに、上述の実施の形態に係るハンド部を取り付けて用いることにより、シンプルな構造を有するロボットシステムを構成可能である。ロボットシステムは、台車を有しないものであってもよい。例えば、ロボットシステムは、固定台座等に固定されているものであってもよい。
【0115】
滑止部は、必ずしも設けられていなくてもよい。滑止部がベースに配置されていたり、回転部材に配置されていなかったりしてもよい。また、滑止部として、必ずしも当該滑止部が設けられている部材の本体(ベース本体や、回転部材の本体)とは異なる材質のものが用いられていなくてもよい。滑止部として、部材の表面処理や形状、表面粗さ等が異なることにより、対象物の板状部との間の摩擦力が大きくなるように構成されたものが用いられるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
以上のように、本発明にかかるハンド部は、アクチュエータを用いずに板状部を有する対象物を把持可能であるという効果を有し、ハンド部等として有用である。
【符号の説明】
【0117】
10,310,410 ハンド部、11,311,411 ベース、21,421 回転部材、22 第一部分、24,414 滑止部、25 第二部分、41 回転軸、51 付勢部材、100 ロボットシステム、115 力センサ、900 対象物、901 板状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7