(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102554
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】扁平梁
(51)【国際特許分類】
E04B 1/21 20060101AFI20240724BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20240724BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240724BHJP
E04C 5/04 20060101ALI20240724BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
E04B1/21 B
E04B1/24 N
E04B1/58 508A
E04C5/04
E04C5/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006523
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】千▲浜▼ 彬比古
【テーマコード(参考)】
2E125
2E164
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB12
2E125AC01
2E125BA02
2E125BA41
2E164CB23
(57)【要約】
【課題】扁平梁の張出し部に貫通孔や埋設物が存在する場合でも、貫通孔等との干渉を防止しながら所定の定着長を確保することのできる扁平梁を提供すること。
【解決手段】柱幅部10と張出し部20とを備え、張出し部20に上下方向に延びる貫通孔21が設けられている扁平梁30であり、鋼製で筒状の繋ぎ材50の上方に、第1Aリング体61と第1Bリング体62が相互に積層した状態でその一部が嵌め込まれ、第1Aリング体61と第1Bリング体62には、上端主筋を構成する第1分割上端主筋63と第2分割上端主筋64がそれぞれ溶接接合され、第1Aリング体61、第1Bリング体62、及び繋ぎ材50により管状ユニット70が形成され、貫通孔21に対して管状ユニット70が配設されている。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱の幅よりも広幅に形成され、前記柱の幅に相当する柱幅部と、前記柱から張出す張出し部とを備える、鉄筋コンクリート製の扁平梁において、前記張出し部に上下方向に延びる貫通孔が設けられている、扁平梁であって、
鋼製で筒状の繋ぎ材の上方に、第1Aリング体と第1Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第1Aリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第1分割上端主筋の端部が溶接接合され、前記第1Bリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第2分割上端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材により、管状ユニットが形成され、
前記貫通孔に対して前記管状ユニットが配設されていることを特徴とする、扁平梁。
【請求項2】
前記繋ぎ材の下方に、第2Aリング体と第2Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第2Aリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第1分割下端主筋の端部が溶接接合され、前記第2Bリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第2分割下端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材に加えて、さらに前記第2Aリング体と前記第2Bリング体により前記管状ユニットが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の扁平梁。
【請求項3】
前記張出し部において、前記上端主筋と前記下端主筋の長手方向に間隔を置いて複数の前記貫通孔が設けられており、
前記第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が、相互に直交する方向に延びており、
前記第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が、相互に直交する方向に延びていることを特徴とする、請求項2に記載の扁平梁。
【請求項4】
前記張出し部において、1つの前記貫通孔が設けられており、
前記第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が、平面視において前記張出し部の長手方向に連続するように延びており、
前記第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が、平面視において前記張出し部の長手方向に連続するように延びていることを特徴とする、請求項2に記載の扁平梁。
【請求項5】
柱の幅よりも広幅に形成され、前記柱の幅に相当する柱幅部と、前記柱から張出す張出し部とを備える、鉄筋コンクリート製の扁平梁において、前記張出し部に埋設物が埋設されている、扁平梁であって、
鋼製で筒状もしくは中実の繋ぎ材の上方に、第1Aリング体と第1Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第1Aリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第1分割上端主筋の端部が溶接接合され、前記第1Bリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第2分割上端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材により、管状ユニットが形成され、前記管状ユニットが前記埋設物の手前に配置され、
前記第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が、相互に直交する方向に延びていることを特徴とする、扁平梁。
【請求項6】
前記繋ぎ材の下方に、第2Aリング体と第2Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第2Aリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第1分割下端主筋の端部が溶接接合され、前記第2Bリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第2分割下端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材に加えて、さらに前記第2Aリング体と前記第2Bリング体により前記管状ユニットが形成され、
前記第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が、相互に直交する方向に延びていることを特徴とする、請求項5に記載の扁平梁。
【請求項7】
前記繋ぎ材の外周面には、側方に張り出す留め具が設けられており、
相互に積層している前記第1Aリング体と前記第1Bリング体が、前記繋ぎ材の上方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記留め具に係止されており、
相互に積層している前記第2Aリング体と前記第2Bリング体が、前記繋ぎ材の下方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の一部が前記繋ぎ材に溶接接合されていることを特徴とする、請求項2又は6に記載の扁平梁。
【請求項8】
前記繋ぎ材の外周面には、側方に張り出す留め具が設けられており、
前記第1Aリング体と前記第1Bリング体のいずれか一方の上に他方が載置され、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第1Aリング体と前記第1Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の上方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記留め具に係止されており、
前記第2Aリング体と前記第2Bリング体のいずれか一方の上に他方が載置され、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の下方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記繋ぎ材に溶接接合されていることを特徴とする、請求項2又は6に記載の扁平梁。
【請求項9】
前記繋ぎ材の外周面には、側方に張り出す留め具が設けられており、
前記第1Aリング体と前記第1Bリング体の双方の当接面が相互に噛み合う嵌合構造を備え、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第1Aリング体と前記第1Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の上方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記留め具に係止されており、
前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の双方の当接面が相互に噛み合う嵌合構造を備え、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の下方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記繋ぎ材に溶接接合されていることを特徴とする、請求項2又は6に記載の扁平梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平梁に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空間の有効利用の観点から梁せいを低くしようとすると、梁の性能が低下することから、この性能低下を補うべく、梁幅を柱幅よりも大きくする施工が行われる場合があり、このように柱幅よりも大きな幅の梁は扁平梁やワイドビームと称されている。集合住宅等においては、バルコニー側に扁平梁を設けることにより開けた空間を形成して建築物に付加価値を付与でき、高さ制限のある地域においては、各階に扁平梁を適用することにより建築物全体の高さを低くして所定階数の建築物の施工が可能になるなど、扁平梁を適用することによる効果は極めて高い。柱の幅よりも広幅に形成される扁平梁は、柱の幅に相当する柱幅部と、柱から張り出す張出し部とを備えている。
【0003】
ところで、例えばバルコニー側に張り出すように扁平梁が設けられることにより、扁平梁の上記張出し部における柱の近傍には、柱に沿って設置される雨樋や、避難孔となる人通孔等が上下方向に貫通する、貫通孔が設けられる場合が往々にしてある。また、貫通孔以外にも何らかの埋設物が埋設される場合もある。張出し部における柱の近傍領域においても、柱幅部と同様のピッチで上端主筋や下端主筋といった梁主筋が配筋されるのが一般的であるが、張出し部における柱の近傍に上記する貫通孔や埋設物がある場合には、貫通孔等に干渉し得る梁主筋を配筋できないといった課題がある。
【0004】
そこで、このように梁主筋が貫通孔等に干渉する場合は、梁主筋を貫通孔等の手前で斜め方向に折り曲げて柱へ定着させる措置が講じられるが、一般に大径の梁主筋の斜め方向への折り曲げ加工には手間がかかること、このように斜め方向へ折り曲げられた梁主筋を柱の内部に延ばした場合に、柱の内部にある柱主筋や、扁平梁の柱幅部の梁主筋等と錯綜し、柱の内部におけるコンクリートの充填不良を来すといった課題があって好ましくない。尚、貫通孔等の手前で梁主筋を切断すると、梁主筋が必要とする定着長を確保できないことから、そもそもこのような対策を講じることはできない。
【0005】
以上のことから、扁平梁の張出し部に上下方向に延びる貫通孔や埋設物が存在する場合でも、張出し部における梁主筋を折り曲げ加工することなく貫通孔等との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することのできる扁平梁が望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1には、柱と、柱に架設されて、上下方向に貫通する貫通孔を備えている扁平梁とを有する、柱梁構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の柱梁構造を形成する扁平梁も、上下方向に貫通する貫通孔を備えているものの、扁平梁の張出し部における梁主筋と貫通孔との干渉を防止する手段に関する記載は一切ない。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、扁平梁の張出し部に上下方向に延びる貫通孔や埋設物が存在する場合でも、張出し部における梁主筋を折り曲げ加工することなく貫通孔等との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することのできる、扁平梁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明による扁平梁の一態様は、
柱の幅よりも広幅に形成され、前記柱の幅に相当する柱幅部と、前記柱から張出す張出し部とを備える、鉄筋コンクリート製の扁平梁において、前記張出し部に上下方向に延びる貫通孔が設けられている、扁平梁であって、
鋼製で筒状の繋ぎ材の上方に、第1Aリング体と第1Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第1Aリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第1分割上端主筋の端部が溶接接合され、前記第1Bリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第2分割上端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材により、管状ユニットが形成され、
前記貫通孔に対して前記管状ユニットが配設されていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、上端主筋を構成する第1分割上端主筋と第2分割上端主筋のそれぞれの端部が溶接接合されている、第1Aリング体及び第1Bリング体の少なくとも一部が筒状の繋ぎ材の上方に嵌め込まれ、これら各リング体と繋ぎ材からなる管状ユニットが貫通孔に配設されていることにより、例えば第1分割上端主筋を定着部とすることができ、張出し部における梁主筋を折り曲げ加工することなく貫通孔との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することが可能になる。
【0012】
ここで、「筒状」には、円筒状の他、角筒状も含まれ、張出し部に設けられている貫通孔の平面視形状と相補的な形状が含まれる。
【0013】
また、本発明による扁平梁の他の態様は、
前記繋ぎ材の下方に、第2Aリング体と第2Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第2Aリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第1分割下端主筋の端部が溶接接合され、前記第2Bリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第2分割下端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材に加えて、さらに前記第2Aリング体と前記第2Bリング体により前記管状ユニットが形成されていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、下端主筋を構成する第1分割下端主筋と第2分割下端主筋のそれぞれの端部が溶接接合されている、第2Aリング体及び第2Bリング体の少なくとも一部が繋ぎ材の下方に嵌め込まれ、これら各リング体と繋ぎ材と第1Aリング体及び第1Bリング体とからなる管状ユニットが貫通孔に配設されていることにより、第2分割上端主筋の他に第2分割下端主筋も定着部とすることができ、張出し部における梁主筋を折り曲げ加工することなく貫通孔との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することが可能になる。
【0015】
また、本発明による扁平梁の他の態様は、
前記張出し部において、前記上端主筋と前記下端主筋の長手方向に間隔を置いて複数の前記貫通孔が設けられており、
前記第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が、相互に直交する方向に延びており、
前記第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が、相互に直交する方向に延びていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、張出し部において、梁主筋の長手方向に間隔を置いて複数の貫通孔が設けられている場合に、第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が相互に直交する方向に延び、第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が相互に直交する方向に延びていることにより、一方の貫通孔に配設される管状ユニットに溶接接合されている分割上端主筋と分割下端主筋が他方の貫通孔に干渉することを防止できる。
【0017】
また、本発明による扁平梁の他の態様は、
前記張出し部において、1つの前記貫通孔が設けられており、
前記第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が、平面視において前記張出し部の長手方向に連続するように延びており、
前記第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が、平面視において前記張出し部の長手方向に連続するように延びていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、張出し部において1つの前記貫通孔が設けられている場合に、第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が平面視において張出し部の長手方向に連続するように延び、第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が平面視において張出し部の長手方向に連続するように延びていることにより、貫通孔をかわした状態で梁主筋を配設することができる。
【0019】
また、本発明による扁平梁の他の態様は、
柱の幅よりも広幅に形成され、前記柱の幅に相当する柱幅部と、前記柱から張出す張出し部とを備える、鉄筋コンクリート製の扁平梁において、前記張出し部に埋設物が埋設されている、扁平梁であって、
鋼製で筒状もしくは中実の繋ぎ材の上方に、第1Aリング体と第1Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第1Aリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第1分割上端主筋の端部が溶接接合され、前記第1Bリング体には、前記張出し部の上端主筋を構成する第2分割上端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材により、管状ユニットが形成され、前記管状ユニットが前記埋設物の手前に配置され、
前記第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が、相互に直交する方向に延びていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、張出し部に埋設物が埋設されている場合であっても、各リング体と繋ぎ材からなる管状ユニットが埋設物の手前に配設され、第1分割上端主筋と第2分割上端主筋が相互に直交する方向に延びていることにより、例えば第2分割上端主筋を埋設物の手前で柱側へ延びる定着部とすることができ、張出し部における梁主筋を折り曲げ加工することなく埋設物との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することができる。
【0021】
また、本発明による扁平梁の他の態様は、
前記繋ぎ材の下方に、第2Aリング体と第2Bリング体が相互に積層した状態で少なくとも一部が嵌め込まれ、前記第2Aリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第1分割下端主筋の端部が溶接接合され、前記第2Bリング体には、前記張出し部の下端主筋を構成する第2分割下端主筋の端部が溶接接合されており、
前記第1Aリング体、前記第1Bリング体、及び前記繋ぎ材に加えて、さらに前記第2Aリング体と前記第2Bリング体により前記管状ユニットが形成され、
前記第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が、相互に直交する方向に延びていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、第1分割下端主筋と第2分割下端主筋が相互に直交する方向に延びていることにより、第2分割上端主筋の他に第2分割下端主筋も埋設物の手前で柱側へ延びる定着部とすることができ、張出し部における梁主筋を折り曲げ加工することなく埋設物との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することができる。
【0023】
また、本発明による扁平梁の他の態様において、
前記繋ぎ材の外周面には、側方に張り出す留め具が設けられており、
相互に積層している前記第1Aリング体と前記第1Bリング体が、前記繋ぎ材の上方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記留め具に係止されており、
相互に積層している前記第2Aリング体と前記第2Bリング体が、前記繋ぎ材の下方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の一部が前記繋ぎ材に溶接接合されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、繋ぎ材の外周面において側方に張り出す留め具が設けられていて、相互に積層している第1Aリング体と第1Bリング体が繋ぎ材の上方の外周面に嵌まり込んだ状態で留め具に係止されていることにより、第1Aリング体と第1Bリング体の落下を解消しながら、分割上端主筋を所定のかぶりを確保した状態で配設することができる。また、第2Aリング体と第2Bリング体が繋ぎ材の下方の外周面に嵌まり込んだ状態でその一部が繋ぎ材に溶接接合されていることにより、分割下端主筋を所定のかぶりを確保した状態で配設することができる。
【0025】
また、本発明による扁平梁の他の態様において、
前記繋ぎ材の外周面には、側方に張り出す留め具が設けられており、
前記第1Aリング体と前記第1Bリング体のいずれか一方の上に他方が載置され、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第1Aリング体と前記第1Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の上方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記留め具に係止されており、
前記第2Aリング体と前記第2Bリング体のいずれか一方の上に他方が載置され、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の下方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記繋ぎ材に溶接接合されていることを特徴とする。
【0026】
本態様によっても、第1Aリング体と第1Bリング体の落下を解消しながら、分割上端主筋を所定のかぶりを確保した状態で配設することができ、分割下端主筋を所定のかぶりを確保した状態で配設することができる。
【0027】
また、本発明による扁平梁の他の態様において、
前記繋ぎ材の外周面には、側方に張り出す留め具が設けられており、
前記第1Aリング体と前記第1Bリング体の双方の当接面が相互に噛み合う嵌合構造を備え、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第1Aリング体と前記第1Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の上方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記留め具に係止されており、
前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の双方の当接面が相互に噛み合う嵌合構造を備え、双方の当接箇所の少なくとも一部が溶接接合され、前記第2Aリング体と前記第2Bリング体の少なくとも一方が前記繋ぎ材の下方の外周面に嵌まり込んだ状態で、前記繋ぎ材に溶接接合されていることを特徴とする。
【0028】
本態様によっても、第1Aリング体と第1Bリング体の落下を解消しながら、分割上端主筋を所定のかぶりを確保した状態で配設することができ、分割下端主筋を所定のかぶりを確保した状態で配設することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上の説明から理解できるように、本発明の扁平梁によれば、扁平梁の張出し部に上下方向に延びる貫通孔や埋設物が存在する場合でも、張出し部における梁主筋を折り曲げ加工することなく貫通孔等との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】実施形態に係る扁平梁の平面図であって、柱の途中位置から扁平梁を見た図である。
【
図1B】
図1AのB方向矢視図であって扁平梁の側面図である。
【
図2】扁平梁の張出し部において、貫通孔と干渉する位置に梁主筋のピッチが長い隙間がある状態を説明する配筋図である。
【
図3】分割上端主筋と分割下端主筋を備えている管状ユニットの一例の組立方法を説明する図である。
【
図4】分割上端主筋と分割下端主筋を備えている管状ユニットの一例の組立状態を示す図である。
【
図5】管状ユニットの他の例の組立状態を示す図である。
【
図6A】実施形態に係る扁平梁の上端主筋を示す配筋図である。
【
図6B】
図6AのB-B矢視図であって、張出し部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態に扁平梁の一例について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0032】
[実施形態に係る扁平梁]
図1乃至
図6を参照して、実施形態に係る扁平梁の一例について説明する。ここで、
図1Aは、実施形態に係る扁平梁の平面図であって、柱の途中位置から扁平梁を見た図であり、
図1Bは、
図1AのB方向矢視図であって扁平梁の側面図である。
【0033】
尚、以下の説明では、扁平梁が上端主筋と下端主筋の双方を備え、軸状ユニットが、上端主筋に対応する第1Aリング体と第1Bリング体、及び、下端主筋に対応する第2Aリング体と第2Bリング体を繋ぎ材とともに備えている形態を取り上げて説明するが、その他の形態であってもよい。例えば、図示を省略するが、扁平梁が上端主筋のみ(一段の主筋のみ)を備え、軸状ユニットが、上端主筋に対応する第1Aリング体と第1Bリング体、及び繋ぎ材により形成される形態であってもよい。
【0034】
図示例は、柱40との接合部を含む扁平梁30である。扁平梁30は、柱40の幅よりも広幅に形成され、柱40の幅に相当する柱幅部10と、柱40から張出す張出し部20とを備える。
【0035】
柱40と扁平梁30はいずれも鉄筋コンクリート製の部材である。柱40の屋外側の側面には上下方向に延びる雨樋Tが配設され、柱40の側面に対して不図示の取り付け金具を介して固定される。
【0036】
扁平梁30の張出し部20には、上下方向に延びる貫通孔21が設けられており、貫通孔21に雨樋Tが挿通されるようになっている。ここで、図示例では、柱40の側方に2つの貫通孔21が間隔を置いて設けられており、各貫通孔21に対して固有の雨樋Tが挿通されるようになっている。
【0037】
ここで、図示を省略するが、張出し部20における柱40の近傍には、雨樋Tが挿通される貫通孔21の他にも、人通孔(避難孔)が設けられる場合がある。さらに、埋設物が埋設される場合もある。また、複数の貫通孔21に代わり、1つの貫通孔21が設けられる場合もある。
【0038】
図2は、扁平梁の上端主筋を示す配筋図であって、貫通孔と干渉する位置に梁主筋のピッチが長くなっている状態を説明する図である。
【0039】
扁平梁30では、その長手方向であるX方向に延設する上端主筋31(梁主筋の一例)がその短手方向であるY方向に所定のピッチに配筋されており、上端主筋31と不図示の下端主筋を包囲するせん断補強筋35(あばら筋)が長手方向に所定のピッチで配筋されている。一般に、せん断補強筋35に比べて梁主筋31の鉄筋径は大きく、大径の梁主筋31の折り曲げ加工は容易でない。
【0040】
一方、柱40は、その断面輪郭に沿って所定本数で柱40の長手方向に延設する柱主筋41が配筋され、複数の柱主筋41を包囲するせん断補強筋45(帯筋)が柱40の長手方向に所定のピッチで配筋される。
【0041】
また、柱40の内部には、扁平梁30の柱幅部10に配筋されている複数の梁主筋31が貫通し、さらにせん断補強筋35が貫通している。
【0042】
図2に示すように、張出し部20のうち、貫通孔21のある位置には、当該貫通孔21が梁主筋と干渉し得ることから、他の領域のように梁主筋を配筋できず、所定のピッチ以上の隙間Gが生じ得る。そこで、梁主筋と貫通孔21との干渉を解消するべく、梁主筋を貫通孔21の手前で斜め方向に折り曲げて柱へ定着させる措置が講じられるが、一般に大径の梁主筋31の斜め方向への折り曲げ加工は上記するように容易でない(手間がかかる)。さらには、このように斜め方向へ折り曲げられた梁主筋31を柱40の内部に延ばした場合に、柱40の内部にある柱主筋41や、扁平梁30の柱幅部10の梁主筋31やせん断補強筋35と錯綜し、柱40の内部におけるコンクリートの充填不良を来すといった課題が懸念される。
【0043】
そこで、扁平梁30は、
図3以降に示す管状ユニット70を有することにより、張出し部20における貫通孔21と干渉し得る位置に配筋される梁主筋を、貫通孔21及びここに挿通される雨樋Tと干渉することなく、所定の定着長を確保しながら配筋することを可能にしている。
【0044】
次に、
図3乃至
図6を参照して、張出し部20の貫通孔21に配設される管状ユニット70と、管状ユニット70が配設された扁平梁30について説明する。ここで、
図3は、分割上端主筋と分割下端主筋を備えている管状ユニットの一例の組立方法を説明する図であり、
図4は、分割上端主筋と分割下端主筋を備えている管状ユニットの一例の組立状態を示す図である。また、
図6Aは、実施形態に係る扁平梁の上端主筋を示す配筋図であり、
図6Bは、
図6AのB-B矢視図であって、張出し部の縦断面図である。
【0045】
図3に示すように、管状ユニット70は、鋼製で管状の繋ぎ材50と、繋ぎ材50の上方に嵌め込まれる、第1Bリング体62及び第1Aリング体61と、繋ぎ材50の下方に嵌め込まれる、第2Bリング体66及び第2Aリング体65とを有する。ここで、図示例の繋ぎ材50は、挿入される円柱状の貫通孔21に相補的な形状の円筒状であるが、貫通孔が例えば直方体状である場合は、相補的な直方体状の繋ぎ材が適用される。また、管状ユニット70の内部に雨樋Tのような被挿通物が挿通されない場合は、繋ぎ材50の内部が中実な構造であってもよい。
【0046】
繋ぎ材50の外周面には、側方に張り出す留め具52が設けられている。この留め具52は、繋ぎ材50の本体と一体に成形されてもよいし、本体とは別体の環状の留め具52が本体の外周に嵌め込まれ、本体に溶接接合されてもよい。
【0047】
第1Bリング体62の上方に第1Aリング体61がZ2方向に積層され、当接部の少なくとも一部が隅肉溶接等により溶接接合される。ここで、双方の接合は、一方に対して他方が螺合される方法であってもよいし、第1Bリング体62の上方に第1Aリング体61が積層されるのみで双方が接合されなくてもよい。
【0048】
繋ぎ材50の上方に第1Bリング体62がZ1方向に嵌め込まれ、第1Bリング体62の下端が留め具52に係止される。第1Bリング体62の例えば下端と留め具52とは溶接接合されてもよいし、接合されなくてもよい。
【0049】
第1Aリング体61には、梁主筋31の長手方向であるX方向に延設する第1分割上端主筋63の端部が溶接接合されている。一方、第1Bリング体62には、扁平梁30の短手方向であるY方向に延設する第2分割上端主筋64の端部が溶接接合されている。
【0050】
すなわち、第1分割上端主筋63と第2分割上端主筋64は相互に直交しており、第2分割上端主筋64は第1分割上端主筋63の定着部(定着筋)となる。
【0051】
第1分割上端主筋63と第2分割上端主筋64は、所定のかぶりを有した位置に配筋されている。
【0052】
一方、繋ぎ材50の下方に第2Bリング体66がZ3方向に嵌め込まれ、第2Bリング体66の例えば上端の少なくとも一部が繋ぎ材50の側面に溶接接合される。
【0053】
第2Bリング体66の下方に第2Aリング体65がZ4方向に積層され、双方の当接部の少なくとも一部が隅肉溶接等により溶接接合される。ここで、双方の接合は、一方に対して他方が螺合される方法であってもよい。
【0054】
第2Aリング体65には、梁主筋31の長手方向であるX方向に延設する第1分割下端主筋67の端部が溶接接合されている。一方、第2Bリング体66には、扁平梁30の短手方向であるY方向に延設する第2分割下端主筋68の端部が溶接接合されている。
【0055】
すなわち、第1分割下端主筋67と第2分割下端主筋68は相互に直交しており、第2分割下端主筋68は第1分割下端主筋67の定着部(定着筋)となる。
【0056】
第1分割下端主筋67と第2分割下端主筋68は、所定のかぶりを有した位置に配筋されている。
【0057】
上記する各部材同士の載置や溶接接合、及び嵌め込みにより、
図4に示すように管状ユニット70の組立状態が形成される。
【0058】
ここで、
図5は、他の例の管状ユニット70Aを示している。管状ユニット70Aを構成する第1Aリング体61Aと第1Bリング体62Aは、双方の当接面において相互に噛み合う嵌合部61a,62aを備えている。双方の当接箇所の少なくとも一部は溶接接合されてもよいし、第1Aリング体61Aが載置されるのみであってもよい。
【0059】
一方、管状ユニット70Aを構成する第2Aリング体65Aと第2Bリング体66Aも、双方の当接面において相互に噛み合う嵌合部65a、66aを備えている。そして、双方の当接箇所の少なくとも一部は溶接接合される。
【0060】
図6Aと
図6Bに示すように、貫通孔21に対応する位置に管状ユニット70が配設され、第1分割上端主筋63と第1分割下端主筋67が扁平梁30の長手方向であるX方向に配筋され、第2分割上端主筋64と第2分割下端主筋68が扁平梁30の短手方向であるY方向に配筋される。
【0061】
このように、分割上端主筋63,64と、分割下端主筋67,68を備えている管状ユニット70,70Aを貫通孔21に対応する位置に配設することにより、扁平梁30の張出し部20において上下方向に延びる貫通孔21や埋設物が存在する場合でも、張出し部20における梁主筋31を折り曲げ加工することなく貫通孔21等との干渉を防止しながら、所定の定着長を確保することができる。
【0062】
また、図示例のように張出し部20に2つの貫通孔21が間隔を置いて柱40の近傍にある場合でも、扁平梁30の長手方向に延びる一方の分割上端主筋63と分割下端主筋67が他方の貫通孔21に干渉することなく、所定の定着長を確保した状態で配筋できる。
【0063】
また、図示を省略するが、張出し部20において、柱40の近傍に1つの貫通孔21が設けられている形態では、第1分割上端主筋と第2分割上端主筋を、平面視において張出し部20の長手方向に連続するように直線状に配設し、第1分割下端主筋と第2分割下端主筋も、平面視において張出し部20の長手方向に連続するように直線状に配設することができる。
【0064】
上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0065】
10:柱幅部
20:張出し部
21:貫通孔
30:扁平梁
31:上端主筋(梁主筋)
35:せん断補強筋(あばら筋)
40:柱
41:柱主筋
45:せん断補強筋(帯筋)
50:繋ぎ材
52:留め具
61,61A:第1Aリング体
61a:嵌合部
62,62A:第1Bリング体
62a:嵌合部
63:第1分割上端主筋(分割上端主筋)
64:第2分割上端主筋(分割上端主筋)
65,65A:第2Aリング体
65a:嵌合部
66,66A:第2Bリング体
66a:嵌合部
67:第1分割下端主筋(分割下端主筋)
68:2分割下端主筋(分割下端主筋)
70:管状ユニット
T:雨樋
G:隙間