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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102555
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】光照射システム
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/04 20060101AFI20240724BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20240724BHJP
   F21V 14/02 20060101ALI20240724BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240724BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240724BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240724BHJP
【FI】
F21V5/04 600
F21V5/00 500
F21V14/02 200
F21S2/00 670
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006524
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】宇田 尚典
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光の演出性をさらに向上させる。
【解決手段】光照射システムは、少なくとも1つの点光源を含む第1の光照射装置と、点光源から少なくとも距離方向に離れて配置される第1の光学素子とを備える。第1の光学素子は、点光源の1つから入射される入射光を第1の拡大方向に拡大するように屈折または透過させることにより、第1の拡大方向に沿って延びる線状の射出光を射出するように構成される。射出光は、少なくとも第1の観測位置と第2の観測位置において、第1の拡大方向とは異なる屈曲方向に屈曲するように観測される。距離方向における第1の光学素子と第1の観測位置との間の距離は、距離方向における第1の光学素子と第2の観測位置との間の距離より長い。第1の観測位置における屈曲方向は、第2の観測位置における屈曲方向と異なるように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光照射システムであって、
少なくとも1つの点光源を含む第1の光照射装置と、前記点光源から少なくとも距離方向に離れて配置される第1の光学素子とを備え、
前記第1の光学素子は、前記点光源の1つから入射される入射光を第1の拡大方向に拡大するように屈折または透過させることにより、前記第1の拡大方向に沿って延びる線状の射出光を射出するように構成され、ここで、前記射出光は、少なくとも第1の観測位置と第2の観測位置において、前記第1の拡大方向とは異なる屈曲方向に屈曲するように観測され、
前記距離方向における前記第1の光学素子と前記第1の観測位置との間の距離は、前記距離方向における前記第1の光学素子と前記第2の観測位置との間の距離より長く、
前記第1の観測位置における屈曲方向は、前記第2の観測位置における屈曲方向と異なるように構成される、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の光照射システムにおいて、
前記第1の光学素子は、平板状のレンチキュラーレンズを含む、もの。
【請求項3】
請求項1に記載の光照射システムにおいて、
前記距離方向における前記第1の光学素子からの距離が異なる複数の前記点光源を備える、もの。
【請求項4】
請求項1に記載の光照射システムにおいて、
さらに、前記第1の光照射装置と前記第1の光学素子との間に配置される第2の光照射装置を備え、
前記第1の光照射装置は、前記点光源とは異なる少なくとも1つの演出光源を備え、
前記演出光源は、前記第1の拡大方向に沿って延びる、もの。
【請求項5】
請求項4に記載の光照射システムにおいて、
前記第2の光照射装置は、第2の光学素子を備え、
前記第2の光学素子は、前記演出光源から入射する光を、前記第1の拡大方向とは異なる第2の拡大方向に拡大するように構成される、もの。
【請求項6】
請求項5に記載の光照射システムにおいて、
前記第2の光照射装置は、さらに回転部を備え、
前記回転部は、前記第1の拡大方向に沿って延びる回転軸を中心に、前記演出光源を回転させるように構成される、もの。
【請求項7】
請求項6に記載の光照射システムにおいて、
前記演出光源は、前記第1の拡大方向に沿って延びる、第1の演出光源と第2の演出光源とを備え、
前記第1の演出光源および前記第2の演出光源は、互いに異なる方向に光を射出するように配置され、前記回転部の回転によって移動するように構成される、もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンチキュラーレンズと光源との間の距離を局所的に変化させることのできる光演出装置を提供するための技術が開示されている。
【0003】
当該光演出装置は、板状のLEDアレイと、LEDアレイと対面する板状のレンチキュラーレンズと、を有する。レンチキュラーレンズは、第1面と第2面とを有する。レンチキュラーレンズの第1面は、列状に配列された凸レンズを有する。レンチキュラーレンズとLEDアレイとの間の距離は、レンチキュラーレンズの箇所によって異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-102709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記技術には、光の演出性等に関して未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、光照射システムが提供される。この光照射システムは、少なくとも1つの点光源を含む第1の光照射装置と、点光源から少なくとも距離方向に離れて配置される第1の光学素子とを備える。第1の光学素子は、点光源の1つから入射される入射光を第1の拡大方向に拡大するように屈折または透過させることにより、第1の拡大方向に沿って延びる線状の射出光を射出するように構成される。射出光は、少なくとも第1の観測位置と第2の観測位置において、第1の拡大方向とは異なる屈曲方向に屈曲するように観測される。距離方向における第1の光学素子と第1の観測位置との間の距離は、距離方向における第1の光学素子と第2の観測位置との間の距離より長い。第1の観測位置における屈曲方向は、第2の観測位置における屈曲方向と異なるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】光照射システム1の構成例を示す斜視図である。
図2図1に示される光照射システム1を上下方向から平面視した平面図である。
図3図1に示される光照射システム1を左右方向から平面視した側面図である。
図4図1に示される第1の光学素子3の拡大側面図である。
図5】第2の光照射装置4の構成例を示す斜視図である。
図6】情報処理装置5のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】プロセッサ53が備える機能部の一例を示す図である。
図8】1つの点光源22からの射出光L2と、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2の関係を説明するための図である。
図9図8に示す観測状況下において第1の観測位置P1で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。
図10図8に示す観測状況下において第2の観測位置P2で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。
図11】第1の観測位置P1における射出光L2の観測結果を示す写真図である。
図12】第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果を示す写真図である。
図13】複数の点光源22からの射出光L2と、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2の関係を説明するための図である。
図14図13に示す観測状況下において第1の観測位置P1で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。
図15図13に示す観測状況下において第2の観測位置P2で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。
図16図14に示される観測状況下での第1の観測位置P1における射出光L2の観測結果を示す写真図である。
図17図14に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て左側の領域の写真図である。
図18図14に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て右側の領域の写真図である。
図19】複数の表示部21全体に表示される連続画像の一例である。
図20図19に示される観測状況下での第1の観測位置P1における射出光L2の観測結果を示す写真図である。
図21図19に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て中央の領域の写真図である。
図22図19に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て左側の領域の写真図である。
図23図19に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て右側の領域の写真図である。
図24図19の連続画像に対してブルームフィルタをかけた連続画像である。
図25】第1の観測位置P1での図24に示される連続画像の観測結果を示す写真図である。
図26】第2の観測位置P2での図24に示される連続画像の観測結果を示す写真図である。
図27】第2の観測位置P2での図24に示される連続画像の観測結果を示す写真図である。
図28】第2の観測位置P2での図24に示される連続画像の観測結果を示す写真図である。
図29】人工生命を模した点群を連続的に移動させるように構成された連続画像である。
図30】第1の観測位置P1での図29に示される連続画像の観測結果とその時間変化を示す写真図である。
図31】第2の観測位置P2での図29に示される連続画像の観測結果とその時間変化を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0009】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0010】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0011】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0012】
1.光照射システムの概要について
本節では、光照射システム1の概要について説明する。なお、以下では説明の便宜上、観測者OB1から光照射システム1に向かう方向を前後方向とし、観測者OB1を基準に、当該前後方向に垂直な方向を上下方向および左右方向ということがある。
【0013】
<光照射システム1>
図1は、光照射システム1の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示される光照射システム1を上下方向から平面視した平面図である。図3は、図1に示される光照射システム1を左右方向から平面視した側面図である。図4は、図1に示される第1の光学素子3の拡大側面図である。光照射システム1は、ユーザに対して光を射出することにより、幻想的な映像を演出可能に構成されている。図1図4に示されるように、光照射システム1は、第1の光照射装置2と、第1の光学素子3と、第2の光照射装置4と、情報処理装置5と、を備える。
【0014】
<第1の光照射装置2>
第1の光照射装置2は、第1の光学素子3に対して光を照射可能に構成されている。本実施形態では、複数の表示部21を備える。表示部21のそれぞれは、互いに円弧状に配置されている。第1の光照射装置2は、これらの点光源22の発光態様を制御することにより、複数の表示部21全体で種々の画像を表示することができる。当該画像は、静止画像であっても、表示内容が時間とともに変化する動画像であってもよい。当該画像は、表示内容が時間とともに連続的に変化する連続画像である。表示部21のそれぞれは、少なくとも1つの(本実施形態では複数の)点光源22を備える。
【0015】
<点光源22>
点光源22のそれぞれは、後述する第1の光学素子3に向けて入射光L1を射出する。なお、点光源22は、単一の光源に限られず、複数の光源の集合体として構成されていてもよい。本実施形態の点光源22は、赤色、緑色、青色の3色のLED光源と、当該LED光源による入射光L1の射出態様を制御するための射出制御部(例えば液晶など)とを備える光源アセンブリである。点光源22は、表示部21によって構成される面内に二次元的に周期的に配置されている。このようにして、表示部21は、複数の点光源22を含むLEDアレイとして機能する。
【0016】
<第1の光学素子3>
第1の光学素子3は、点光源22の1つから入射される入射光L1を第1の拡大方向D1に拡大するように屈折または透過させることにより、第1の拡大方向D1に沿って延びる線状の射出光L2を射出するように構成される。第1の光学素子3は、平板状のレンチキュラーレンズを含む。詳細には、第1の光学素子3は、距離方向D0を法線方向に含む平板状のレンチキュラーレンズである。第1の光学素子3は、点光源22を含む第1の光照射装置2から少なくとも距離方向D0に離れて配置される。本実施形態では、第1の光学素子3は、円弧状に配置されている表示部21と向かい合う。これにより、複数の点光源22の少なくとも一部は、互いに距離方向D0における第1の光学素子3からの距離が異なる。第1の光学素子3は、入射面31と射出面32とを備える。
【0017】
<入射面31>
入射面31は、第1の光照射装置2からの入射光L1が入射される面であり、距離方向D0において第1の光照射装置2と向かい合っている。本実施形態では、入射面31は、複数の凸形状のシリンドリカルレンズによって形成されている。シリンドリカルレンズは、第1の拡大方向D1と垂直方向に延びている。複数のシリンドリカルレンズは第1の拡大方向D1に周期的に配置されており、これにより、入射面31に入射された入射光L1を第1の拡大方向D1に拡大するように構成される。以下、説明の便宜上、入射面31において第1の拡大方向D1とは垂直な方向を延在方向Dyという。延在方向Dyは、本実施形態の距離方向D0と垂直である。第1の拡大方向D1および延在方向Dyは、第1の光学素子3の平面を規定する。本実施形態において、距離方向D0は観測者OB1にとっての前後方向であり、第1の拡大方向D1は観測者OB1にとっての上下方向であり、延在方向Dyは観測者OB1にとっての左右方向である。
【0018】
<射出面32>
射出面32は、屈折または透過された入射光L1が射出される面であり、第1の光学素子3の厚さ方向において入射面31の反対に位置する。本実施形態では、射出面32は、平面状に形成されている。これにより、入射面31によって第1の拡大方向D1に拡大された入射光L1が、第1の拡大方向D1に拡大された状態で射出光L2として射出面32から射出される。本実施形態では、厚さ方向は距離方向D0と一致しているものとして取り扱われるが、厚さ方向が距離方向D0と異なっていてもよい。射出面32は、観測者OB1と向かい合うように構成されている。これにより、射出面32から射出される射出光L2が、少なくとも第1の観測位置P1および第2の観測位置P2に位置する観測者OB1によって観測可能となる。これらの観測位置と、それぞれの観測位置において観測される射出光L2の詳細については後述される。
【0019】
第1の拡大方向D1における第1の光学素子3の幅は、第1の拡大方向D1における第1の光学素子3の幅より長い。詳細には、第1の光学素子3の幅は、第1の拡大方向D1における点光源22が配置されている領域(表示部21)の幅より長い。本実施形態では、第1の拡大方向D1における第1の光学素子3の幅は任意であるが、具体的には例えば、180,190,200,210,220,230,240,250,260,270,280,290,300cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。特に、第1の拡大方向D1における第1の光学素子3の幅は、観測者OB1の視線と地表面の間の距離より長いことが好ましく、具体的には例えば、観測者OB1の視線と地表面の間の距離に対して1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
本実施形態の第1の光照射装置2および第1の光学素子3は、延在方向Dyに対称となるように配置されている。これにより、射出光L2による演出性を高めることができる。
【0021】
なお、第1の光学素子3の設置方法は任意であり、床に設置されていても、天井や壁面等に設置されていてもよく、キャスター等に取り付けられることによって移動可能に構成されていてもよい。
【0022】
<第2の光照射装置4>
第2の光照射装置4は、第2の光照射装置4は、点光源22のうちの少なくとも1つと第1の光学素子3との間に配置され、第1の光照射装置2とは別に、第1の光学素子3に対して光を照射するように構成される。詳細には、第2の光照射装置4は、円弧状に配置された第1の光照射装置2によって覆われるように配置される。これにより、第2の光照射装置4は、第1の光照射装置2から第1の光学素子3に向かって射出される入射光L1の一部を遮りつつ、第1の光学素子3に対して入射光L1とは異なる光を第1の光学素子3に向けて照射することで、第2の光照射装置4から第1の光学素子3を介してユーザに観測される射出光L2の演出性を高めることができる。以下、説明の便宜上、第2の光照射装置4から第1の光学素子3に向けて照射される光を、入射光L1と区別して演出光L3という。第1の光学素子3には、入射光L1と演出光L3とがそれぞれ重ね合わされた状態で入射することとなる。本実施形態の第2の光照射装置4は、回転可能に構成されている。これにより、当該回転に応じて演出光L3の照射態様が変わるため、第1の光学素子3から射出される光の演出性をさらに高めることができる。
【0023】
2.第2の光照射装置4の詳細について
本節では、前節にて説明された第2の光照射装置4の詳細について説明する。なお、ここで説明される第2の光照射装置4はあくまで一例であり、これに限られない。
【0024】
図5は、第2の光照射装置4の構成例を示す斜視図である。本実施形態の第2の光照射装置4は、支柱部41と、点光源22とは異なる少なくとも1つの演出光源42と、第2の光学素子43と、回転部44と、を備える。本実施形態では、第2の光照射装置4は、3つの演出光源42と、3つの演出光源42のそれぞれに対応する3つの第2の光学素子43とを備える。
【0025】
<支柱部41>
支柱部41は、後述される演出光源42が取り付け可能に構成されており、第2の光照射装置4の回転中心軸となる。支柱部41の形状は角柱、円柱、角錐、円錐など任意であるが、本実施形態では第1の拡大方向D1に延びる円筒状である。
【0026】
<演出光源42>
演出光源42のそれぞれは、例えば点光源22と同様に、複数の点光源によって構成される。演出光源42は、第1の拡大方向D1に沿って延びる。本実施形態では、演出光源42は、複数の点光源が第1の拡大方向D1に沿って一列に配置されることによって構成されている。複数の演出光源42は、互いに支柱部41の周方向に等間隔に配置される。本実施形態では、3つの演出光源42は、支柱部41の周方向に、支柱部41の回転軸を中心とした120度の間隔を空けて配置されている。言い換えれば、演出光源42は、第1の拡大方向D1に沿って延びる、第1の演出光源と第2の演出光源とを備え、第1の演出光源および第2の演出光源は、互いに異なる方向に光を射出するように配置されている。
【0027】
<第2の光学素子43>
第2の光学素子43は、演出光源42から入射する光(すなわち演出光L3)を、第1の拡大方向D1とは異なる第2の拡大方向D2に拡大するように構成される。これにより、演出光L3は、まず第2の光学素子43によって第2の拡大方向D2に拡大された後、さらに第1の光学素子3によって第1の拡大方向D1に拡大される。したがって、演出光源42の点光源の光が平面または立体などのより高次元な態様で観測者OB1に観測させることができる。本実施形態では、複数の演出光源42のそれぞれに対応する第2の光学素子43ごとに、第2の拡大方向D2が異なる。これにより、後述する回転部44の動作によって演出光L3の拡大態様が変わるため、回転部44の回転による光の演出性をさらに高めることができる。本実施形態の第2の光学素子43は、レンチキュラーレンズを含む。当該レンチキュラーレンズは、支柱部41の形状に応じて円弧状に湾曲されている。レンチキュラーレンズのそれぞれは、複数の演出光源42のそれぞれの正面に配置されている。隣り合うレンチキュラーレンズ同士は互いに接続または接着されており、これによりレンチキュラーレンズ全体が支柱部41の周面を囲うように円筒状に形成されている。
【0028】
<回転部44>
回転部44は、第1の拡大方向D1に沿って延びる回転軸を中心に、演出光源42を回転させるように構成される。これにより、複数の演出光源42に含まれる第1の演出光源と第2の演出光源とが回転部44の回転によって移動するように構成される。回転部44の動力源は任意であり、人力であっても、外部電源の電力であってもよい。回転部44の回転動作は、後述される情報処理装置5等によって制御されてもよい。この場合、回転部44は、パルスモータ等の回転駆動部を備えていてもよい。これにより、例えば、第1の光照射装置2の表示内容と合わせて回転部44の動作を調整するなどの第1の光照射装置2と第2の光照射装置4との連携を行うことにより、光の演出性を高めることができる。
【0029】
3.情報処理装置5のハードウェア構成例について
<情報処理装置5>
情報処理装置5は、ユーザの操作等に応じて光照射システム1に含まれる任意のデバイスを制御するように構成されている。情報処理装置5は、例えば、点光源22の発光態様、演出光源42の発光態様、回転部44の駆動態様などを制御するように構成されている。図6は、情報処理装置5のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置5は、通信部51と、記憶部52と、プロセッサ53と、表示部54と、HMIデバイス55とを備え、これらの構成要素が情報処理装置5の内部において通信バス50を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0030】
通信部51は、USB、IEEE1394、Thunderbolt(登録商標)、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、BLUETOOTH(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、情報処理装置5は、通信部51およびネットワークを介して、外部から種々の情報を通信してもよい。
【0031】
記憶部52は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、プロセッサ53によって実行される情報処理装置5に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。記憶部52は、プロセッサ53によって実行される情報処理装置5に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0032】
プロセッサ53は、情報処理装置5に関連する全体動作の処理・制御を行う。プロセッサ53は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。プロセッサ53は、記憶部52に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、情報処理装置5に係る種々の機能を実現する。すなわち、記憶部52に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例であるプロセッサ53によって具体的に実現されることで、プロセッサ53に含まれる各機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、プロセッサ53は単一であることに限定されず、機能ごとに複数のプロセッサ53を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0033】
表示部54は、ユーザに対して種々の情報を表示可能に構成されている。情報処理装置5の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。表示部54は、ユーザが操作可能なグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)の画面を表示する。これは例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示デバイスを、情報処理装置5の種類に応じて使い分けて実施することが好ましい。
【0034】
HMIデバイス55は、ヒューマン・マシン・インターフェースデバイスである。HMIデバイス55は、情報処理装置5の筐体に含まれるものであってもよいし、外付けされるものであってもよい。例えば、HMIデバイス55は、表示部54と一体となってタッチパネルとして実施されてもよい。タッチパネルであれば、ユーザは、タップ操作、スワイプ操作等を入力することができる。もちろん、タッチパネルに代えて、スイッチボタン、マウス、QWERTYキーボード、音声認識装置、ジェスチャ検出装置、視線検出装置、生体信号検出装置、撮像装置などを採用してもよい。すなわち、HMIデバイス55がユーザによってなされた操作入力を受け付ける。HMIデバイス55は、応答として、通信バス50を介し操作入力に対応する信号をプロセッサ53に転送する。プロセッサ53が必要に応じて所定の制御や演算を実行しうる。HMIデバイス55は、ユーザからの入力を受付可能に構成されている入力部を含むともいえる。
【0035】
4.情報処理装置5の機能構成
図7は、プロセッサ53が備える機能部の一例を示す図である。図7に示すように、プロセッサ53は、取得部531と、表示制御部532と、回転制御部533と、を備える。本節では、これらの機能部の概要を説明する。各機能部の詳細は、後述の情報処理と合わせて説明される。
【0036】
取得部531は、ユーザからの入力、または他のデバイスからの情報を取得可能に構成される。例えば、取得部531は、ユーザから入力される表示部21への表示内容の指定および表示部21に表示される画像の内容を取得する。取得部531は、記憶部52の少なくとも一部であるストレージ領域に記憶されている種々の情報を読み出し、読み出された情報を記憶部52の少なくとも一部である作業領域に書き込むことで、種々の情報を取得可能に構成されている。ストレージ領域とは、例えば、記憶部52のうち、SSD等のストレージデバイスとして実施される領域である。作業領域とは、例えば、RAM等のメモリとして実施される領域である。なお、取得部531による取得は、プロセッサ53に含まれる各機能部の出力結果を取得することを含む。
【0037】
表示制御部532は、種々の画像を第1の光照射装置2の表示部21または第2の光照射装置4の演出光源42を介して、ユーザに提示可能である。かかる場合、例えば、表示制御部532は、画面、静止画または動画を含む画像、アイコン、メッセージ等の視覚情報を、第1の光照射装置2の表示部21に表示させるように制御する。表示制御部532は、視覚情報を表示部21に表示させるためのレンダリング情報だけを生成してもよい。
【0038】
回転制御部533は、取得部531によって取得された情報等に基づき回転部44の回転動作を制御するように構成されている。例えば、回転制御部533は、表示部21に表示されている画像に基づき、回転部44を回転させ、第2の光照射装置4からの演出光L3の射出態様を変更する。
【0039】
5.光照射システム1から射出される射出光L2の詳細について
本節では、前節までに説明した光照射システム1から観測者OB1に向けて射出される射出光L2の詳細について説明する。
【0040】
5.1.単一の点光源22から射出される射出光L2の観測態様について
まず、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2における1つの点光源22からの射出光L2の観測態様について説明する。図8は、1つの点光源22からの射出光L2と、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2の関係を説明するための図である。距離方向D0における第1の光学素子3と第1の観測位置P1との間の距離d1は、距離方向D0における第1の光学素子3と第2の観測位置P2との間の距離d2より長い。以下、説明の便宜上、距離d1を第1の観測距離d1といい、距離d2を第2の観測距離d2という。第1の観測距離d1および第2の観測距離d2は、距離方向D0における点光源22と第1の光学素子3との距離d0や、各観測位置から点光源22への方位角θなどに応じて適宜決定すればよい。方位角θは、各観測位置から点光源22に向かう方向(言い換えれば、観測位置に向かう射出光L2の方向)が、距離方向D0を基準として左右方向(延在方向Dy)にどれだけ傾いているかを表す。
【0041】
図9は、図8に示す観測状況下において第1の観測位置P1で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。図10は、図8に示す観測状況下において第2の観測位置P2で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。
【0042】
以下で述べる屈曲方向D3とは、第1の拡大方向D1に直線的に拡大された点光源22からの入射光L1が、第1の拡大方向D1に対して屈曲する方向を示すものであり、本実施形態では、屈曲方向D3は、第1の拡大方向D1とほぼ垂直であり、延在方向Dyに沿っている。本実施形態では説明の便宜上、射出光L2が入射光L1に沿った直線に対して観測者OB1から離れるように屈曲している状態を射出光L2が正の屈曲方向D3に屈曲しているといい、射出光L2が入射光L1に沿った直線に対して観測者OB1に近づくように屈曲している状態を射出光L2が負の屈曲方向D3に屈曲しているという。言い換えれば、正の屈曲方向D3は、第1の光学素子3の中央から延在方向Dyの外縁に向かう方向であり、負の屈曲方向D3は、第1の光学素子3の延在方向Dyの外縁から第1の光学素子3の中央に向かう方向である。
【0043】
図9および図10に示されるように、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2のそれぞれにおいて観測される射出光L2は、第1の拡大方向D1に線状に延びている。そして、射出光L2は、少なくとも第1の観測位置P1と第2の観測位置P2において、第1の拡大方向D1とは異なる屈曲方向D3に屈曲するように観測される。これにより、観測者OB1は、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2において、少なくとも一部が正の屈曲方向D3または負の屈曲方向D3に凸となるような線状の射出光L2を観測することができる。
【0044】
ここで、図9に示されるように、第1の観測位置P1にて観測される射出光L2は、第1の拡大方向D1における第1の光学素子3の中央から外縁に向かうにつれて、延在方向Dyにおける第1の光学素子3の外縁から中央に向かうように屈曲している。これにより、第1の観測位置P1において観測される射出光L2は、正の屈曲方向D3に向かってなめらかな凸形状となるように屈曲するように観測される。すなわち、第1の観測位置P1において観測される射出光L2は、正の屈曲方向D3に屈曲している。
【0045】
一方、図10に示されるように、第2の観測位置P2にて観測される射出光L2は、第1の拡大方向D1における第1の光学素子3の中央から外縁に向かうにつれて、延在方向Dyにおける第1の光学素子3の中央から外縁に向かうように屈曲している。これにより、第2の観測位置P2において観測される射出光L2は、負の屈曲方向D3に向かってなめらかな凸形状となるように屈曲するように観測される。すなわち、第1の観測位置P1において観測される射出光L2は、正の屈曲方向D3に屈曲している。したがって、第1の観測位置P1における屈曲方向D3は、第2の観測位置P2における屈曲方向D3と異なるように構成される。
【0046】
図11は、第1の観測位置P1における射出光L2の観測結果を示す写真図である。この場合の第1の観測距離d1は、70cmより長く、1m以上である。図12は、第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果を示す写真図である。この場合の第2の観測距離d2は、おおよそ70cmである。表示部21に含まれる点光源22の1つが白色の入射光L1を発している。図11および図12から、全体的な傾向として第1の観測位置P1では射出光L2が正の屈曲方向D3に屈曲するように観測され、第2の観測位置P2では射出光L2が負の屈曲方向D3に屈曲するように観測されることが示されている。なお、あくまで射出光L2全体の傾向として上述のような屈曲方向D3に屈曲するように観測され、部分的に逆の屈曲方向D3に屈曲する可能性もあることに留意されたい。
【0047】
5.2.複数の点光源22および演出光源42から射出される射出光L2の観測態様について
次に、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2における複数の点光源22からの射出光L2の観測態様について説明する。図13は、複数の点光源22からの射出光L2と、第1の観測位置P1および第2の観測位置P2の関係を説明するための図である。表示制御部532は、円弧状に配置された表示部21上にて等間隔に配置された点を表すように複数の点光源22を白色に発光させる。また、表示制御部532は、演出光源42を発光させる。これにより、複数の点光源22のそれぞれからの入射光L1と、第1の光照射装置2からの演出光L3とが第1の光学素子3に入射する。なお、本節での第1の観測位置P1および第2の観測位置P2は前節での第1の観測位置P1および第2の観測位置P2の関係と同様であるため、説明を省略する。
【0048】
図14は、図13に示す観測状況下において第1の観測位置P1で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。図15は、図13に示す観測状況下において第2の観測位置P2で観測される射出光L2の一例を示す概念図である。
【0049】
図14および図15に示されるように、複数の点光源22からの入射光L1および演出光源42からの演出光L3は、第1の拡大方向D1に沿って延びる線状の射出光L2として第1の光学素子3から観測者OB1に向けて射出される。このとき、演出光L3が拡大された射出光L2は、延在方向Dyにおける第1の光学素子3の中央付近に観測される。以下、説明の便宜上、入射光L1が拡大された射出光L2を第1の射出光L21といい、演出光L3が拡大された射出光L2を第2の射出光L22ということがある。第2の射出光L22の輝度は、第1の射出光L21の輝度より高い。これは、演出光源42が第1の拡大方向D1に沿って配置され、互いに拡大された光を強め合うためである。また、第2の射出光L22は、第1の射出光L21に比べて太い。これは、第2の光学素子43の第2の拡大方向D2が第1の光学素子3の第1の拡大方向D1と異なる方向に延びることで、演出光L3が延在方向Dyに拡大された状態で第1の光学素子3に入射するためである。このような第2の射出光L22の存在により、第2の射出光L22は、第1の射出光L21に比べて観測者OB1の視線を集めやすくなるため、視点が定まることによる安心感を増強することができる。
【0050】
図14に示されるように、第1の観測位置P1にて観測される第1の射出光L21は正の屈曲方向D3に屈曲し、第1の光学素子3の中央から外縁に向かって突出する凸形状となるように屈曲する。一方、図15に示されるように、第2の観測位置P2にて観測される第1の射出光L21は負の屈曲方向D3に屈曲し、第1の光学素子3の外縁から中央に向かって突出する凸形状となるように屈曲する。
【0051】
これらの射出光L2の屈曲度合いは、延在方向Dyにおいて第1の光学素子3の中央から外縁に向かうにつれて大きくなる。言い換えれば、入射光L1の入射面31への入射角が大きくなるにつれて、射出光L2の屈曲度合いが大きくなる。これは、第1の光照射装置2が延在方向Dyに離れた位置に複数の点光源22を有することによるものである。このような構成により、光の演出性をさらに高めることができる。
【0052】
また、図15および図15に示されるように、第1の拡大方向D1の射出光L2の長さは、延在方向Dyにおける第1の光学素子3の中央から外縁に向かうにつれて短くなる。これは、光照射システム1が円弧状に配置されているために生じる現象である。点光源22と第1の光学素子3との距離方向D0の距離が短くなるにつれて、第1の光学素子3による第1の拡大方向D1への拡大率が小さくなる。言い換えれば、点光源22と第1の光学素子3との距離方向D0の距離が短くなるにつれて、レンチキュラーレンズの視野角が狭くなる。第1の光照射装置2が距離方向D0における第1の光学素子3との距離が異なる複数の点光源22を備えることにより、このような距離と拡大率の関係を用いてよりダイナミックな光の演出を行うことができる。
【0053】
図16は、図14に示される観測状況下での第1の観測位置P1における射出光L2の観測結果を示す写真図である。図17は、図14に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て左側の領域の写真図である。図18は、図14に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て右側の領域の写真図である。図17および図18に示されるように、第2の観測位置P2での観測結果は画角の関係上、表示内容の一部を撮影したものであるが、全体的な描像は図15に示されるものと同様である。表示部21に含まれる点光源22の1つが白色の入射光L1を発している。延在方向Dyにおける最外縁の第1の射出光L21の屈曲度合いが、他の第1の射出光L21の屈曲度合いに比べて特に大きいことがわかる。
【0054】
5.3.表示部21に連続画像が表示される場合の射出光L2の観測態様について
前節では、点光源22が等間隔に離れた白色点を示すように発光した場合の射出光L2の観測態様について説明したが、本節では、点光源22が全体として連続画像を示すように発光した場合の射出光L2の観測態様について説明する。この場合、個々の点光源22の入射光L1は拡大されることで線状の第1の射出光L21として射出されるが、個々の入射光L1からの第1の射出光L21を観測者OB1が区別することができるとは限らない状態で第1の射出光L21として射出される。
【0055】
図19は、複数の表示部21全体に表示される連続画像の一例である。なお、表示制御部532は、表示部21の表示内容を、黒(すなわち、無発光の点光源22)を背景として、白、黄色、青、緑などの連続的なグラデーションによって彩られる連続的な線状模様をとるように表示部21に含まれる個々の点光源22の発光態様を強調して制御する。表示制御部532は、予め定められたアルゴリズムに従ってこのような線状模様の形状およびグラデーションを連続的に経時変化させることで、図19に示されるような画像を連続的に表示部21に表示させる。連続画像は、表示される対象が連続的に移動または変形するように構成されていることが好ましい。これにより、表示内容が激しく変化することによる観測者OB1の負担を軽減し、よりリラクゼーション性の高い光の演出をすることができる。なお、表示制御部532は、前節の場合と同様に、演出光源42を発光させる。このとき、回転制御部533は、回転部44を一定速度で回転させる。当該回転速度は、表示部21の画像の変化速度に比べて緩やかである。
【0056】
図20は、図19に示される観測状況下での第1の観測位置P1における射出光L2の観測結果を示す写真図である。図21は、図19に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て中央の領域の写真図である。図22は、図19に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て左側の領域の写真図である。図23は、図19に示される観測状況下での第2の観測位置P2における射出光L2の観測結果のうちの、観測者OB1から見て右側の領域の写真図である。
【0057】
図20に示されるように、第1の観測位置P1では、観測者OB1は第1の光学素子3に投影される射出光L2の全体像を把握することができるため、第1の光学素子3を介して照射される表示部21の表示内容を客観的に把握しやすい。
【0058】
一方、図21に示されるように、第1の光学素子3に対して第2の光照射装置4の裏に位置する点光源22の入射光L1は、第1の光学素子3によって遮られる。そのため、図21に示されるように、第1の光学素子3の中央部分からは第2の射出光L22が射出され、その周辺で第1の射出光L21が射出されにくくなる。したがって、第2の光照射装置4を第1の光照射装置2と第1の光学素子3の間に配置することにより、より演出光源42が観測者OB1の注目を集めやすい演出をすることができる。
【0059】
また、図22および図23に示されるように、第2の観測位置P2では、延在方向Dyにおける第1の光学素子3の中央から外縁に向かうにつれて、第1の射出光L21が負の屈曲方向D3に屈曲するように画像が拡大された状態で観測される。そして、第2の観測位置P2では、観測者OB1は第1の光学素子3に投影される射出光L2が眼前に広がり、第1の光学素子3を介して照射される表示部21の表示内容の一部のみを視認することとなる。そのため、光照射システム1は、客観的に言語化することが困難な、いわゆる「文節することができない映像」を射出光L2を用いて演出することができる。
【0060】
6.その他
上記情報処理の態様はあくまで一例であり、これに限られない。
【0061】
表示部21に表示される連続画像は、上述したものに限られず、例えば、図24に示される連続画像であってもよい。図24は、図19の連続画像に対してブルームフィルタをかけた連続画像である。図25は、第1の観測位置P1での図24に示される連続画像の観測結果を示す写真図である。図26図28は、第2の観測位置P2での図24に示される連続画像の観測結果を示す写真図である。図26が第1の光学素子3の中央、図27が第1の光学素子3の左側、図28が第1の光学素子3の右側の観測結果に対応する。
【0062】
また、表示部21の表示内容の別例は、図29に示される連続画像であってもよい。図29は、人工生命を模した点群を連続的に移動させるように構成された連続画像である。図29に示される連続画像の変化速度は、図19または図24に示される連続画像の変化速度に比べて大きい。図30は、第1の観測位置P1での図29に示される連続画像の観測結果とその時間変化を示す写真図である。図31は、第2の観測位置P2での図29に示される連続画像の観測結果とその時間変化を示す写真図である。
【0063】
表示制御部532は、取得部531によって取得されるユーザからの画像の指定に基づき、これらの画像を切替可能に構成されていてもよい。また、表示制御部532は、ユーザからの指定に応じて、連続画像の変化速度を調整してもよい。これにより、ユーザが観測者OB1に対して演出したい心理描写を、画像全体の変更に比べて小さい負担で表現することができる。
【0064】
点光源22は、LED光源を含む光源アセンブリに限られず、任意であり、例えば、放電発光による光源(水銀燈、蛍光灯など)、レーザ発光によるレーザ光源などでもよい。要は、第1の光学素子3が当該点光源22からの入射光L1を第1の拡大方向D1に拡大することができればよい。
【0065】
表示部21の配置は円弧状に限られず任意であり、例えば直線的に配置されていてもよい。言い換えれば、複数の点光源22のそれぞれと第1の光学素子3との距離は任意である。
【0066】
第1の光学素子3は、平板状のレンチキュラーレンズに限られず、入射光L1を第1の拡大方向D1に、第1の観測位置P1と第2の観測位置P2とで屈曲方向D3が異なるように拡大させるものであれば任意である。例えば、第1の光学素子3は、射出面32が凹レンズ状に形成されたシリンドリカルレンズであってもよい。また、第1の光学素子3の形状は平板状に限られず、距離方向D0に向けて連続的に屈曲していてもよい。また、第1の光学素子3は、複数のレンチキュラーレンズの組み合わせによって構成されていてもよい。
【0067】
情報処理装置5は、オンプレミス形態であってもよく、クラウド形態であってもよい。クラウド形態の情報処理装置5としては、例えば、SaaS(Software as a Service)、クラウドコンピューティングという形態で、上述の機能や処理を提供してもよい。
【0068】
上記実施形態では、情報処理装置5が種々の記憶・制御を行ったが、情報処理装置5に代えて、複数の外部装置が用いられてもよい。すなわち、種々の情報やプログラムは、ブロックチェーン技術等を用いて複数の外部装置に分散して記憶されてもよい。
【0069】
光照射システム1は、情報処理装置5を備えていなくてもよい。この場合、第1の光照射装置2および第2の光照射装置4等は、光照射システム1に含まれない外部機器等によって制御されてもよい。
【0070】
上記光照射システム1等は、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0071】
(1)光照射システムであって、少なくとも1つの点光源を含む第1の光照射装置と、前記点光源から少なくとも距離方向に離れて配置される第1の光学素子とを備え、前記第1の光学素子は、前記点光源の1つから入射される入射光を第1の拡大方向に拡大するように屈折または透過させることにより、前記第1の拡大方向に沿って延びる線状の射出光を射出するように構成され、ここで、前記射出光は、少なくとも第1の観測位置と第2の観測位置において、前記第1の拡大方向とは異なる屈曲方向に屈曲するように観測され、前記距離方向における前記第1の光学素子と前記第1の観測位置との間の距離は、前記距離方向における前記第1の光学素子と前記第2の観測位置との間の距離より長く、前記第1の観測位置における屈曲方向は、前記第2の観測位置における屈曲方向と異なるように構成される、もの。
【0072】
このような構成によれば、光源から同じ光が照射されていても、第1の光学素子に対する観測位置を変えることで射出光の形状を変化させることができる。例えば、第1の観測位置から第2の観測位置に移動することによって、観測される射出光の屈曲方向が観測位置に応じて変化する。したがって、光の演出性を高めることができる。
【0073】
(2)上記(1)に記載の光照射システムにおいて、前記第1の光学素子は、平板状のレンチキュラーレンズを含む、もの。
【0074】
このような構成によれば、光学素子をスクリーンのように演出することができるため、光の演出性をさらに高めることができる。
【0075】
(3)上記(1)または(2)に記載の光照射システムにおいて、前記距離方向における前記第1の光学素子からの距離が異なる複数の前記点光源を備える、もの。
【0076】
このような構成によれば、複数の点光源からの入射光が、第1の光学素子との距離に応じて異なる拡大率で拡大される。そのため、それぞれの観測位置において観測される射出光の形状が、第1の点光源からの入射光と第2の点光源からの入射光とで異なる。そのため、第1の光学素子がより多様な形状の射出光を射出することができるため、さらに光の演出性を高めることができる。
【0077】
(4)上記(1)~(3)の何れか1つに記載の光照射システムにおいて、さらに、前記第1の光照射装置と前記第1の光学素子との間に配置される第2の光照射装置を備え、前記第1の光照射装置は、前記点光源とは異なる少なくとも1つの演出光源を備え、前記演出光源は、前記第1の拡大方向に沿って延びる、もの。
【0078】
このような構成によれば、演出光源の光が第1の光学素子に入射することで、第1の観測位置および第2の観測位置のそれぞれで、射出光として観測される。このとき、演出光源が第1の拡大方向に沿って延びているため、演出光源の光が射出光として互いに強め合うこととなる。そのため、演出光源からの射出光が他の点光源に基づく射出光に比べて各観測位置において強い輝度を有する状態で観測されやすくなるため、演出光源からの射出光が他の光源に比べて観測者からの視線を集めやすくなる。したがって、視線の定まった安定感のある光の演出をしやすくなる。
【0079】
(5)上記(4)に記載の光照射システムにおいて、前記第2の光照射装置は、第2の光学素子を備え、前記第2の光学素子は、前記演出光源から入射する光を、前記第1の拡大方向とは異なる第2の拡大方向に拡大するように構成される、もの。
【0080】
このような構成によれば、演出光源の光は、まず第2の光学素子によって第2の拡大方向に拡大された後に、さらに第1の拡大方向に拡大される。そのため、第2の拡大方向での演出光源の光の厚みが増すため、演出光源の光がさらに観測者からに注目されやすくなる。したがって、より視線の定まった安定感のある光の演出をしやすくなる。
【0081】
(6)上記(5)に記載の光照射システムにおいて、前記第2の光照射装置は、さらに回転部を備え、前記回転部は、前記第1の拡大方向に沿って延びる回転軸を中心に、前記演出光源を回転させるように構成される、もの。
【0082】
このような構成によれば、第2の光学素子による演出光源の光の拡大方向を保ちつつ、演出光源の回転によって第1の光学素子から射出される射出光の様相が変化する。したがって、光の演出性をさらに向上させることができる。
【0083】
(7)上記(6)に記載の光照射システムにおいて、前記演出光源は、前記第1の拡大方向に沿って延びる、第1の演出光源と第2の演出光源とを備え、前記第1の演出光源および前記第2の演出光源は、互いに異なる方向に光を射出するように配置され、前記回転部の回転によって移動するように構成される、もの。
【0084】
このような構成によれば、回転部の回転によって光照射装置から射出される光のパターンが変化するため、光の演出性をさらに向上させることができる。
もちろん、この限りではない。
【0085】
最後に、本開示に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 :光照射システム
2 :第1の光照射装置
20 :通信バス
21 :表示部
22 :点光源
3 :第1の光学素子
30 :通信バス
31 :入射面
32 :射出面
4 :第2の光照射装置
41 :支柱部
42 :演出光源
43 :第2の光学素子
44 :回転部
5 :情報処理装置
51 :通信部
52 :記憶部
53 :プロセッサ
54 :表示部
55 :HMIデバイス
531 :取得部
532 :表示制御部
533 :回転制御部
D0 :距離方向
D1 :第1の拡大方向
D2 :第2の拡大方向
D3 :屈曲方向
Dy :延在方向
L1 :入射光
L2 :射出光
L21 :第1の射出光
L22 :第2の射出光
L3 :演出光
OB1 :観測者
P1 :第1の観測位置
P2 :第2の観測位置
d0 :距離
d1 :第1の観測距離
d2 :第2の観測距離
θ :方位角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31