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特開2024-102556原子炉の異常緩和設備及び原子炉の異常緩和方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102556
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】原子炉の異常緩和設備及び原子炉の異常緩和方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 7/32 20060101AFI20240724BHJP
   G21D 3/04 20060101ALI20240724BHJP
   G21C 17/02 20060101ALI20240724BHJP
   G21C 15/02 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G21C7/32
G21D3/04 J
G21C17/02 100
G21C17/02 400
G21C15/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006526
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 学
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光
(72)【発明者】
【氏名】住田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大槻 昇平
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA05
2G075BA03
2G075DA03
2G075DA08
(57)【要約】
【課題】原子炉の異常に対して適切な緩和措置を実行して、一次冷却系の健全性を好適に担保する。
【解決手段】一次冷却系に含まれる原子炉の異常に対する緩和措置を行う原子炉の異常緩和設備において、前記一次冷却系の出力に関するパラメータである出力パラメータに基づいて、前記緩和措置を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記緩和措置の実行後に、前記原子炉の異常が継続している場合、前記一次冷却系を流通する冷却材の流量を、前記緩和措置の実行前に比して減少させる冷却材流量急減措置を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次冷却系に含まれる原子炉の異常に対する緩和措置を行う原子炉の異常緩和設備において、
前記一次冷却系の出力に関するパラメータである出力パラメータに基づいて、前記緩和措置を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
前記緩和措置の実行後に、前記原子炉の異常が継続している場合、前記一次冷却系を流通する冷却材の流量を、前記緩和措置の実行前に比して減少させる冷却材流量急減措置を実行する原子炉の異常緩和設備。
【請求項2】
前記制御部は、前記緩和措置を指示する緩和信号が出力されてから取得するまでの時間を遅延させる遅延回路を有する請求項1に記載の原子炉の異常緩和設備。
【請求項3】
前記一次冷却系は、二次冷却系との間で熱交換を行う蒸気発生器を備え、
前記緩和措置は、前記蒸気発生器において発生する蒸気を隔離する主蒸気隔離措置と、前記蒸気発生器へ向けて冷却材を供給する補助給水措置とのうち、少なくとも一方を含む請求項1に記載の原子炉の異常緩和設備。
【請求項4】
前記原子炉の異常は、前記原子炉に挿入される制御棒の挿入不良であり、
前記制御部は、前記制御棒の挿入不良として、原子炉トリップを行う遮断器の開失敗による前記制御棒の挿入不良と、前記制御棒の固着による前記制御棒の挿入不良とのうち、少なくとも一方を含む請求項1に記載の原子炉の異常緩和設備。
【請求項5】
前記出力パラメータは、前記原子炉へ流入する冷却材の流入温度と前記原子炉から流出する前記冷却材の流出温度との温度差分、及び前記原子炉において発生する中性子を計測する中性子計測装置の計測値のうち、少なくとも一方である請求項1に記載の原子炉の異常緩和設備。
【請求項6】
一次冷却系に含まれる原子炉の異常に対する緩和措置を行う原子炉の異常緩和方法において、
前記一次冷却系の出力に関するパラメータである出力パラメータに基づいて、前記緩和措置を実行し、
前記緩和措置の実行後に、前記緩和措置の実行前の前記一次冷却系の出力が維持されているか否かを判定し、
前記一次冷却系の出力が維持されていると判定した場合、前記一次冷却系を流通する冷却材の流量を、前記緩和措置の実行前に比して減少させる冷却材流量急減措置を実行する原子炉の異常緩和方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子炉の異常緩和設備及び原子炉の異常緩和方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉の異常緩和設備として、ATWS(Anticipated Transient Without Scram)緩和設備が知られている(例えば、特許文献1参照)。このATWS緩和設備では、ATWS事象発生時において緩和措置作動信号が出力されると、緩和措置として、タービントリップ措置を実行したり、蒸気発生器において発生する蒸気を隔離する主蒸気隔離措置を実行したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6505889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ATWS事象発生時において、ATWS緩和設備による緩和措置を実行した場合であっても、一次冷却系における圧力バウンダリの健全性の確保が困難であることを想定し、健全性に対するさらなる要求を満たすことが検討されている。一方で、過剰な緩和措置を実行することで、一次冷却系が有する原子炉の冷却性能が阻害される可能性があり、緩和措置の不用意な実行も抑制することが望ましい。
【0005】
そこで、本開示は、原子炉の異常に対して適切な緩和措置を実行して、一次冷却系の健全性を好適に担保することができる原子炉の異常緩和設備及び原子炉の異常緩和方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の原子炉の異常緩和設備は、一次冷却系に含まれる原子炉の異常に対する緩和措置を行う原子炉の異常緩和設備において、前記一次冷却系の出力に関するパラメータである出力パラメータに基づいて、前記緩和措置を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記緩和措置の実行後に、前記原子炉の異常が継続している場合、前記一次冷却系を流通する冷却材の流量を、前記緩和措置の実行前に比して減少させる冷却材流量急減措置を実行する。
【0007】
本開示の原子炉の異常緩和方法は、一次冷却系に含まれる原子炉の異常に対する緩和措置を行う原子炉の異常緩和方法において、前記一次冷却系の出力に関するパラメータである出力パラメータに基づいて、前記緩和措置を実行し、前記緩和措置の実行後に、前記緩和措置の実行前の前記一次冷却系の出力が維持されているか否かを判定し、前記一次冷却系の出力が維持されていると判定した場合、前記一次冷却系を流通する冷却材の流量を、前記緩和措置の実行前に比して減少させる冷却材流量急減措置を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、原子炉の異常に対して適切な緩和措置を実行して、一次冷却系の健全性を好適に担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る原子力施設の概略構成図である。
図2図2は、本実施形態に係る原子炉停止装置周りの構成図である。
図3図3は、本実施形態に係るATWS緩和設備の制御装置に設けられる制御回路の図である。
図4図4は、本実施形態に係るATWS緩和設備の緩和措置による効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0011】
[本実施形態]
図1は、本実施形態に係る原子力施設の概略構成図である。原子力施設(原子力設備)1は、原子炉2を有する。原子炉2は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)が用いられる。この加圧水型の原子炉2を用いた原子力施設1は、原子炉2を含む原子炉冷却系(一次冷却系)100と、原子炉冷却系100と熱交換するタービン系(二次冷却系)200とで構成される。原子炉冷却系100は、一次冷却材が流通し、タービン系200は、二次冷却材が流通する。
【0012】
原子炉冷却系100は、コールドレグ3aおよびホットレグ3bを介して原子炉2に接続された蒸気発生器4を有する。ホットレグ3bには、加圧器5が設けられ、コールドレグ3aは、一次冷却材ポンプ6が設けられている。そして、原子炉2、コールドレグ3a、ホットレグ3b、蒸気発生器4、加圧器5および一次冷却材ポンプ6は、原子炉格納容器7に収容されている。
【0013】
原子炉2は、上記したように加圧水型原子炉であり、その内部は一次冷却材で満たされる。一次冷却材は、中性子減速材として用いられるホウ素が溶解した軽水である。また、原子炉2は、原子炉容器10の内部に、多数の燃料集合体8が収容され、この各燃料集合体8に対し、燃料集合体8の核分裂を制御する多数の制御棒9が抜差し可能に設けられている。この制御棒9は、燃料集合体8に対し、制御棒駆動装置20により抜差し方向に駆動される。制御棒駆動装置20により制御棒9が燃料集合体8へ差し込まれると、燃料集合体8における核反応は低下して停止する。一方で、制御棒駆動装置20により制御棒9が引き抜かれると、燃料集合体8における核反応は増大して臨界状態となる。また、この制御棒駆動装置20は、電力の供給が遮断され、電力喪失状態となると、制御棒9を燃料集合体8に差し込むように構成されている。
【0014】
原子力施設1の原子炉冷却系100における一連の動作について説明する。原子炉2内において、制御棒9により核分裂反応を制御しながら燃料集合体8を核分裂させると、核分裂により熱エネルギーが発生する。この熱エネルギーにより、原子炉2内の一次冷却材が加熱されると、加熱された一次冷却材は、一次冷却材ポンプ6によりホットレグ3bを介して蒸気発生器4に送られる。ホットレグ3bを通過する高温の一次冷却材は、加圧器5により加圧されることで沸騰が抑制され、高温高圧となった状態で、蒸気発生器4に流入する。蒸気発生器4に流入した高温高圧の一次冷却材は、二次冷却材と熱交換を行うことにより冷却され、冷却された一次冷却材は、一次冷却材ポンプ6によりコールドレグ3aを介して原子炉2に送られる。そして、冷却された一次冷却材が原子炉2に流入することで、原子炉2が冷却される。このように、一次冷却材は、原子炉2と蒸気発生器4とを循環している。
【0015】
タービン系200は、蒸気管11を介して蒸気発生器4に接続されたタービン12、タービン12に接続された復水器13、および復水器13と蒸気発生器4とを接続する給水管14に介設された給水ポンプ15、を有している。そして、タービン12は、発電機16が接続されている。
【0016】
原子力施設1のタービン系200における一連の動作について説明する。蒸気管11を介して蒸気発生器4から蒸気がタービン12に流入すると、タービン12は回転を行う。タービン12が回転すると、タービン12に接続された発電機16は、発電を行う。この後、タービン12から流出した蒸気は復水器13に流入する。復水器13は、その内部に冷却管17が配設されており、冷却管17の一方には冷却水(例えば、海水)を供給するための取水管18が接続され、冷却管17の他方には冷却水を排水するための排水管19が接続されている。この復水器13は、タービン12から流入した蒸気を冷却管17により冷却することで、蒸気を液体に戻す。液体となった二次冷却材は、給水ポンプ15により給水管14を介して蒸気発生器4に送られる。蒸気発生器4に送られた二次冷却材は、蒸気発生器4において一次冷却材と熱交換を行うことにより再び蒸気となる。
【0017】
また、原子力施設1は、原子炉冷却系100及びタービン系200を制御する制御系300を備えている。制御系300は、図示しない中央制御設備の他、安全保護系設備30、ATWS緩和設備(異常緩和設備)31を含んで構成されている。
【0018】
図2に示すように、安全保護系設備30は、原子力施設1に異常が発生した場合、原子力施設1が安全に停止するように、原子力施設1に設けられた各機器を制御している。
【0019】
図2は、本実施形態に係る原子炉停止装置周りの構成図である。原子力施設1の制御系300は、原子炉2に異常が発生した場合を想定して、原子炉2の核反応を非常停止させる原子炉停止装置35を有している。原子炉停止装置35は、上記の安全保護系設備30と、原子炉トリップ遮断器37と、上記の制御棒駆動装置20と、制御棒9とを備えている。
【0020】
安全保護系設備30は、CPU等の演算装置やHDD等の記憶装置を搭載した、いわゆるデジタル設備であり、演算装置により記憶装置に記憶された各種プログラムを実行することで、原子力施設1の安全保護系を制御可能な設備となっている。なお、安全保護系とは、原子炉2の核反応を停止させる、原子力施設1を冷却する、原子力施設1からの放射性物質の漏洩を防ぐという機能を有する機能系統である。そして、安全保護系設備30は、確実に作動可能で、且つ、厳しい環境下においても作動可能なように、動作保証が高いものとなっている。
【0021】
安全保護系設備30には、原子力施設1内に配設された各種検出センサが接続されており、各種検出センサから出力された検出信号に基づいて、原子力施設1に異常が発生したか否かを判断している。そして、安全保護系設備30は、原子力施設1に異常が発生したと判断した場合、原子炉2を停止させるための原子炉トリップ信号を原子炉トリップ遮断器37へ向けて出力する。
【0022】
原子炉トリップ遮断器37は、安全保護系設備30から出力された原子炉トリップ信号に基づいて、制御棒駆動装置20へ供給される電力を遮断するものである。
【0023】
原子炉停止装置35は、安全保護系設備30から原子炉トリップ遮断器37へ向けて、原子炉トリップ信号を出力する。すると、原子炉トリップ遮断器37は、入力された原子炉トリップ信号に基づいて電力供給を遮断する開状態となり、制御棒駆動装置20へ供給される電力を遮断する。制御棒駆動装置20へ供給される電力が遮断されると、制御棒9の支持状態が解除されることで、制御棒9は、自重によって燃料集合体8に落下する。そして、燃料集合体8に制御棒9が挿し込まれることで、燃料の核反応が低下し、原子炉2が停止する。
【0024】
(ATWS緩和設備)
ATWS緩和設備31は、原子力施設1の異常時において行われる原子炉トリップの失敗事象(ATWS事象)に対して緩和措置を行う設備である。ATWS緩和設備31は、失敗事象を検知する制御回路50を有しており、緩和措置を実行するにあたり、制御回路50により失敗事象を検知し、検知した失敗事象に対応する緩和措置を実行する。具体的に、失敗事象としては、原子炉トリップ遮断器37の開失敗、安全保護系設備30の機能喪失、制御棒9の機械的固着による物理的挿入失敗がある。
【0025】
また、ATWS緩和設備31は、各種プラントデータ及びパラメータが入力され、このプラントデータに基づいて、制御回路(制御部)50により失敗事象の検知が行われる。ATWS緩和設備31に入力されるプラントデータとしては、原子炉2の流入側における一次冷却材の検出温度Tcold、原子炉2の流出側における一次冷却材の検出温度Thot、図示しない原子炉2内部に設けられる中性子計測装置の計測値(NIS)、原子炉トリップ遮断器37の開状態の検出信号である遮断器開信号(遮断器信号)、蒸気発生器4内の検出水位、補助給水機器の作動信号等がある。
【0026】
また、ATWS緩和設備31を含む制御系300は、これらのプラントデータに基づいて、各種データを生成する。生成されるプラントデータとしては、例えば、検出温度Tcold及び検出温度Thotの算術平均である平均検出温度Tave、検出温度Tcold及び検出温度Thotの差分である温度差分ΔTがある。ここで、中性子計測装置の計測値(NIS)及び温度差分ΔTは、原子炉冷却系100の出力に関する原子炉2(原子炉冷却系100)の出力パラメータとして取り扱われる。
【0027】
図3は、本実施形態に係るATWS緩和設備の制御装置に設けられる制御回路の図である。図3では、1つの原子炉2に対して、蒸気発生器4が4つ設置されている4系統(4ループ)の構成となっている。図3では、4系統の構成について説明するが、3系統の構成であってもよく、特に限定されない。図3に示すように、制御回路50は、安全保護系設備30の機能喪失を検知する第一制御回路51と、原子炉トリップ遮断器37の開失敗を検知する第二制御回路52と、制御棒9の機械的固着による物理的挿入失敗を検知する第三制御回路53と、を含んで構成されている。また、制御回路50は、緩和措置の実行後に、緩和措置の実行前の原子炉冷却系100の出力が維持されているか否かを検知する第四制御回路55を含んで構成されている。この制御回路50には、遮断器開信号、補助給水機器の作動信号、計測値(NIS)及び温度差分ΔT等の原子炉2の出力パラメータ、ATWS緩和設備31を使用する使用モードであることの入力値等が入力される。
【0028】
第一制御回路51は、第一多数決回路61と、第一タイマー62と、第一NOT回路63と、第二NOT回路64と、第一AND回路65と、OR回路67及びAND回路68からなる第一出力維持回路66と、を含んで構成されている。
【0029】
第一多数決回路61は、蒸気発生器4の検出水位が所定の水位よりも低いときに出力される水位低(狭域)信号が入力される。なお、原子炉2を冷却する原子炉冷却系100は、冗長性を持たせた4系統(4ループ)の構成であるため、この4系統の原子炉冷却系100に設けられる4つの蒸気発生器4の水位低(狭域)信号が第一多数決回路61に入力可能となっている。そして、第一多数決回路61は、4入力のうち、少なくとも3つの水位低(狭域)信号が入力された場合、原子力施設1に異常が発生しているとして、異常発生信号を出力する。なお、原子炉冷却系100が、例えば、3系統である場合、第一多数決回路61は、3入力のうち、少なくとも2つの水位低(狭域)信号が入力された場合、原子力施設1に異常が発生しているとして、異常発生信号を出力する。
【0030】
第一タイマー62は、第一多数決回路61から出力された異常発生信号が入力される。第一タイマー62は、第一多数決回路61に直列に接続され、第一多数決回路61を経て入力される異常発生信号の出力を、予め設定された設定時間分だけ遅延させる。つまり、第一タイマー62は、設定時間を超えて、異常発生信号が継続して入力された場合、異常発生信号を出力する一方で、異常発生信号の入力が設定時間以内となる場合、異常発生信号の出力をブロックする。
【0031】
第一NOT回路63は、タービン12の動力により作動する補助給水機器としての給水ポンプの起動に関する作動信号が入力される。第一NOT回路63は、作動信号が入力された場合、安全保護系設備30が作動しているとして、第一NOT回路63からの異常発生信号の出力をブロックする。一方で、第一NOT回路63は、作動信号が入力されない場合、安全保護系設備30が作動していないとして、異常発生信号を出力する。
【0032】
第二NOT回路64は、外部電源または非常用電源により作動する補助給水機器としての給水ポンプの起動に関する作動信号が入力される。第二NOT回路64は、作動信号が入力された場合、安全保護系設備30が作動しているとして、第二NOT回路64からの異常発生信号の出力をブロックする。一方で、第二NOT回路64は、作動信号が入力されない場合、安全保護系設備30が作動していないとして、異常発生信号を出力する。
【0033】
第一AND回路65は、第一タイマー62から出力される異常発生信号、第一NOT回路63から出力される異常発生信号、及び第二NOT回路64から出力される異常発生信号が入力される。第一AND回路65は、全ての異常発生信号の入力がある場合、異常発生信号を出力する一方で、いずれかの異常発生信号の入力がない場合、異常発生信号を出力しない。つまり、第一AND回路65は、安全保護系設備30が機能していないにもかかわらず、蒸気発生器4の水位に異常があることを検知すると、異常発生信号を出力する。
【0034】
第一出力維持回路66は、OR回路67及びAND回路68を含み、第一AND回路65から出力される異常発生信号が入力されると共に、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される。OR回路67は、第一AND回路65から出力される異常発生信号が入力され、また、AND回路68から出力される緩和措置作動信号が入力される。OR回路67は、異常発生信号及び緩和措置作動信号の少なくとも一方の信号が入力された場合、緩和措置作動信号を出力する。一方で、OR回路67は、異常発生信号及び緩和措置作動信号が入力されない場合、緩和措置作動信号を出力しない。AND回路68は、OR回路67から出力される緩和措置作動信号が入力されると共に、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される。AND回路68は、緩和措置作動信号及び入力値が入力される場合、緩和措置作動信号を出力する一方で、緩和措置作動信号及び入力値の少なくとも一方の信号が入力されない場合、緩和措置作動信号を出力しない。このため、第一出力維持回路66は、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される限り、入力された緩和措置作動信号を出力し続ける。
【0035】
第一制御回路51から緩和措置作動信号が出力されると、ATWS緩和設備31は、補助給水機器としての給水ポンプを作動させる。このように、第一制御回路51において、安全保護系設備30の機能喪失を検知すると、ATWS緩和設備31は、緩和措置作動信号に基づいて、ATWSに対する緩和措置を実行する。
【0036】
第二制御回路52は、第三NOT回路71と、第二タイマー72と、第二AND回路73と、第二出力維持回路74と、を含んで構成されている。
【0037】
第三NOT回路71は、安全保護系設備30から遮断器開信号が入力される。第三NOT回路71は、遮断器開信号が入力される場合、原子炉トリップ遮断器37が作動したとして、第三NOT回路71からの異常発生信号を出力しない一方で、遮断器開信号が入力されない場合、原子炉トリップ遮断器37が作動していないとして、第三NOT回路71からの異常発生信号を出力する。
【0038】
第二タイマー72は、第一制御回路51の第一多数決回路61から出力された異常発生信号を利用しており、この異常発生信号が入力される。第二タイマー72は、第一多数決回路61に直列に接続され、第一多数決回路61を経て入力される異常発生信号の出力を、予め設定された設定時間分だけ遅延させる。つまり、第二タイマー72は、設定時間を超えて、異常発生信号が継続して入力された場合、異常発生信号を出力する一方で、異常発生信号の入力が設定時間以内となる場合、異常発生信号の出力をブロックする。
【0039】
第二AND回路73は、第三NOT回路71から出力される異常発生信号、及び第二タイマー72から出力される異常発生信号が入力される。第二AND回路73は、全ての異常発生信号の入力がある場合、異常発生信号を出力する一方で、いずれかの異常発生信号の入力がない場合、異常発生信号を出力しない。つまり、第二AND回路73は、原子炉トリップ遮断器37の開状態でないにもかかわらず、蒸気発生器4の水位に異常があることを検知すると、異常発生信号を出力する。
【0040】
第二出力維持回路74は、第一出力維持回路66と同様の構成となっており、OR回路67及びAND回路68を含み、第二AND回路73から出力される異常発生信号が入力されると共に、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される。なお、第二出力維持回路74は、第一出力維持回路66と同様の構成であるため、説明を省略する。そして、第二出力維持回路74は、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される限り、入力された緩和措置作動信号を出力し続ける。
【0041】
第三制御回路53は、第二多数決回路81と、第三タイマー82と、第三AND回路83と、第三多数決回路84と、第四AND回路85と、第三出力維持回路86と、を含んで構成されている。なお、第二多数決回路81及び第三多数決回路84は、第一多数決回路61と同様に、原子炉冷却系100が4系統である場合の構成となっているが、原子炉冷却系100が3系統である場合には、3系統に応じた構成であってもよい。
【0042】
第二多数決回路81は、原子炉2の出力パラメータとしての計測値(NIS)または温度差分ΔTが異常であるときに、すなわち、原子炉2の出力が低下しないときに出力される出力異常信号が入力される。なお、原子炉出力パラメータとして計測値(NIS)が用いられる場合、原子炉2内に設けられる中性子計測装置から出力される複数の計測値(NIS)に基づく複数の出力異常信号が、第二多数決回路81に入力可能となっている。また、原子炉2の出力パラメータとして温度差分Δが用いられる場合、冗長性を持たせた4系統の原子炉冷却系100から得られる温度差分ΔTに基づく複数の出力異常信号が、第二多数決回路81に入力可能となっている。そして、第二多数決回路81は、4入力のうち、少なくとも3つの出力異常信号が入力された場合、原子力施設1に異常が発生しているとして、異常発生信号を出力する。
【0043】
第三タイマー82は、安全保護系設備30から遮断器開信号が入力される。第三タイマー82は、入力される遮断器開信号の出力を、予め設定された設定時間分だけ遅延させる。つまり、第三タイマー82は、設定時間を超えて、遮断器開信号が継続して入力された場合、遮断器開信号を出力する一方で、遮断器開信号の入力が設定時間以内となる場合、遮断器開信号出力をしない。
【0044】
第三AND回路83は、第二多数決回路81から出力される異常発生信号、及び第三タイマー82から出力される遮断器開信号が入力される。第三AND回路83は、異常発生信号及び遮断器開信号が入力される場合、原子炉トリップ遮断器37が開状態であっても、原子炉2の出力が異常である(低下しない)ことから、制御棒9の固着が発生しているとして、異常発生信号を出力する。一方で、第三AND回路83は、異常発生信号及び遮断器開信号の少なくとも一方の信号が入力されない場合、異常発生信号を出力しない。
【0045】
第三多数決回路84は、蒸気発生器4の検出水位が所定の水位よりも低いときに出力される水位低(広域)信号が入力される。なお、水位低(広域)信号も水位低(狭域)信号と同様に、4系統の4つの蒸気発生器4に対応して、第三多数決回路84にそれぞれ入力可能となっている。そして、第三多数決回路84は、4入力のうち、少なくとも3つの水位低(広域)信号が入力された場合、原子力施設1に異常が発生しているとして、異常発生信号を出力する。
【0046】
第四AND回路85は、第三AND回路83から出力される異常発生信号、及び第三多数決回路84から出力される異常発生信号が入力される。第四AND回路85は、全ての異常発生信号の入力がある場合、異常発生信号を出力する一方で、いずれかの異常発生信号の入力がない場合、異常発生信号を出力しない。
【0047】
第三出力維持回路86は、第一出力維持回路66及び第二出力維持回路74と同様の構成となっており、OR回路67及びAND回路68を含み、第四AND回路85から出力される異常発生信号が入力されると共に、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される。なお、第三出力維持回路86は、第一出力維持回路66及び第二出力維持回路74と同様の構成であるため、説明を省略する。そして、第三出力維持回路86は、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される限り、入力された緩和措置作動信号を出力し続ける。
【0048】
また、制御回路50は、第二制御回路52から出力された緩和措置作動信号、及び第三制御回路53から出力された緩和措置作動信号が入力される第一OR回路54を有している。第一OR回路54は、全ての緩和措置作動信号のうち、少なくとも一つの緩和措置作動信号が入力される場合、緩和措置作動信号を出力する。一方で、第一OR回路54は、全ての緩和措置作動信号のうち、全ての緩和措置作動信号が入力されない場合、緩和措置作動信号を出力しない。
【0049】
そして、第一OR回路54から緩和措置作動信号が出力されると、ATWS緩和設備31は、タービントリップ動作を実行したり、蒸気管11に設けられる図示しない蒸気隔離弁の閉動作を実行したりする。このように、第二制御回路52において、原子炉トリップ遮断器37の開失敗を検知すると、ATWS緩和設備31は、緩和措置作動信号に基づいて、ATWSに対する緩和措置を実行する。また、第三制御回路53において、制御棒の機械的固着による物理的挿入失敗を検知すると、ATWS緩和設備31は、緩和措置作動信号に基づいて、ATWSに対する緩和措置を実行する。
【0050】
第四制御回路55は、第四タイマー(遅延回路)92と、第五AND回路93と、第四出力維持回路94と、を含んで構成されている。
【0051】
第四タイマー92は、第一OR回路54から緩和措置作動信号が入力される。第四タイマー92は、入力される緩和措置作動信号の出力を、予め設定された設定時間分だけ遅延させる。つまり、第四タイマー92は、緩和装置作動信号が入力されてから設定時間経過後に第五AND回路93へ信号を出力する。換言すれば、第四タイマー92は、緩和措置実行後において、第二多数決回路81の原子炉2の出力パラメータが依然として異常でないかを確認するために、第一OR回路54からの緩和措置作動信号の出力後、設定時間分だけ遅延させている。
【0052】
第五AND回路93は、第三AND回路83から出力される異常発生信号、及び第四タイマー92から出力される緩和措置作動信号が入力される。第五AND回路93は、異常発生信号及び緩和措置作動信号の入力がある場合、緩和措置作動信号を出力する一方で、異常発生信号及び緩和措置作動信号の少なくとも一方の入力がない場合、緩和措置作動信号を出力しない。つまり、第五AND回路93は、緩和措置実行後における原子炉2の出力パラメータが、依然として異常である場合、さらなる緩和措置を実行すべく、緩和措置作動信号を出力する。
【0053】
第四出力維持回路94は、第一出力維持回路66から第三出力維持回路86と同様の構成となっており、OR回路67及びAND回路68を含み、第五AND回路93から出力される緩和措置作動信号が入力されると共に、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される。なお、第四出力維持回路94は、は、第一出力維持回路66から第三出力維持回路86と同様の構成であるため、説明を省略する。そして、第四出力維持回路94は、ATWS緩和設備31の使用モードの入力値が入力される限り、入力された緩和措置作動信号を出力し続ける。
【0054】
そして、第四出力維持回路94から緩和措置作動信号が出力されると、ATWS緩和設備31は、RCPトリップ動作を実行する。RCPトリップは、原子炉冷却系100を流通する一次冷却材の供給流量を減少させる冷却材流量急減措置であり、具体的に、一次冷却材ポンプ6を作動停止させる。なお、RCPトリップは、一次冷却材ポンプ6が流量調整可能なものであれば、一次冷却材の流量が減少するように作動させてもよい。また、冷却材流量急減措置は、RCPトリップに特に限定されず、一次冷却材の供給流量を緩和措置の実行前に比して減少させる措置であればよい。このように、第四制御回路55において、緩和措置実行後に、原子炉2の出力パラメータが依然として異常であることを検知すると、ATWS緩和設備31は、緩和措置作動信号に基づいて、ATWSに対する更なる緩和措置としてのRCPトリップを実行する。
【0055】
(原子炉の異常緩和方法)
次に、図3を参照して、原子炉の異常緩和方法について説明する。原子炉の異常緩和方法では、上記したとおり、ATWS事象の発生時において緩和措置が実行される。ATWS事象としては、例えば、原子炉トリップ遮断器37の開失敗及び制御棒9の機械的固着の少なくとも一方である。
【0056】
原子炉トリップ遮断器37の開失敗である場合、原子炉の異常緩和方法では、制御回路50において、第二制御回路52から緩和措置作動信号が出力されることで、緩和措置として主蒸気隔離が実行される。主蒸気隔離の実行後、原子炉の異常緩和方法では、緩和措置の実行前の原子炉冷却系100における原子炉2の出力が維持されているか否かを、第四タイマー92の遅延によって判定することで、依然として原子炉出力が高い(例えば、温度差分ΔTが高い)場合、RCPトリップを実行する。
【0057】
制御棒9の機械的固着である場合、原子炉の異常緩和方法では、制御回路50において、第三制御回路53から緩和措置作動信号が出力されることで、緩和措置として主蒸気隔離が実行される。主蒸気隔離の実行後、上記と同様に、原子炉の異常緩和方法では、緩和措置の実行前の原子炉冷却系100における原子炉2の出力が維持されているか否かを、第四タイマー92の遅延によって判定することで、依然として原子炉出力が高い(例えば、温度差分ΔTが高い)場合、RCPトリップを実行する。
【0058】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るATWS緩和設備31における、RCS圧力バウンダリ(原子炉冷却系100における圧力バウンダリ)の変化について説明する。図4は、本実施形態に係るATWS緩和設備の緩和措置による効果を示すグラフである。図4は、その横軸が時間となっており、その縦軸がRCS圧力バウンダリとなっている。また、図4に示す点線Lは、予め規定されたしきい値となる判断基準Lとなっており、RCS圧力バウンダリが判断基準L以下となることが好ましい。なお、図4に示すグラフは、シミュレーションによる解析結果となっている。
【0059】
図4に示すように、本実施形態のATWS緩和設備31では、緩和措置の実行後、依然として異常の場合、RCPトリップが実行される。このため、RCS圧力バウンダリの上昇を抑制する緩和措置の実行後に、再びRCS圧力バウンダリが上昇した場合、RCPトリップが実行されるため、RCS圧力バウンダリが判断基準Lよりも小さくとなることが解析結果から確認された。
【0060】
なお、本実施形態では、加圧水型原子炉に適用して説明したが、沸騰水型原子炉に適用してもよい。
【0061】
以上のように、本実施形態に記載の原子炉の異常緩和設備(ATWS緩和設備31)は、例えば、以下のように把握される。
【0062】
第1の態様に係る原子炉の異常緩和設備は、一次冷却系(原子炉冷却系100)に含まれる原子炉2の異常に対する緩和措置を行う原子炉2の異常緩和設備において、前記一次冷却系の出力に関するパラメータである出力パラメータに基づいて、前記緩和措置を実行する制御部(制御回路50)を備え、前記制御部は、前記緩和措置の実行後に、前記原子炉2の異常が継続している場合、前記一次冷却系を流通する冷却材の流量を、前記緩和措置の実行前に比して減少させる冷却材流量急減措置を実行する。
【0063】
この構成によれば、緩和措置の実行後に、原子炉2の異常が継続している場合であっても、原子炉の異常に対して冷却材流量急減措置を実行することで、一次冷却系の健全性を好適に担保することができる。また、冷却材流量急減措置は、緩和措置の実行後であって、原子炉2の異常が継続している場合に実行されることから、緩和措置の不用意な実行も抑制することができる。
【0064】
第2の態様として、第1の態様に係る原子炉の異常緩和設備において、前記制御部は、前記緩和措置を指示する緩和信号が出力されてから取得するまでの時間を遅延させる遅延回路(第四タイマー92)を有する。
【0065】
この構成によれば、遅延回路により緩和信号の取得を遅延させることができるため、緩和措置が実行されたときからの出力パラメータの推移を、遅延させた時間の分だけ待つことができる。つまり、緩和信号が出力されると、緩和措置が実行されることから、一次冷却系の出力が低下するまでの時間を待って、冷却材流量急減措置を実行するか否かを判定することができる。
【0066】
第3の態様として、第1または第2の態様に係る原子炉の異常緩和設備において、前記一次冷却系は、二次冷却系(タービン系200)との間で熱交換を行う蒸気発生器4を備え、前記緩和措置は、前記蒸気発生器4において発生する蒸気を隔離する主蒸気隔離措置と、前記蒸気発生器4へ向けて冷却材を供給する補助給水措置とのうち、少なくとも一方を含む。
【0067】
この構成によれば、冷却材流量急減措置の実行前に実行される緩和措置として、主蒸気隔離措置及び補助給水措置の少なくとも一方を実行することにより、一次冷却系の出力を低下させる適切な緩和措置を実行することができる。
【0068】
第4の態様として、第1から第3のいずれか1つの態様に係る原子炉の異常緩和設備において、前記原子炉2の異常は、前記原子炉2に挿入される制御棒9の挿入不良であり、前記制御部は、前記制御棒9の挿入不良として、原子炉トリップを行う遮断器の開失敗による前記制御棒9の挿入不良と、前記制御棒9の固着による前記制御棒の挿入不良とのうち、少なくとも一方を含む。
【0069】
この構成によれば、遮断器の開失敗、制御棒の固着に対する適切な緩和措置を実行することができる。
【0070】
第5の態様として、第1から第4のいずれか1つの態様に係る原子炉の異常緩和設備において、前記出力パラメータは、前記原子炉2へ流入する冷却材の流入温度と前記原子炉2から流出する前記冷却材の流出温度との温度差分、及び前記原子炉2において発生する中性子を計測する中性子計測装置の計測値のうち、少なくとも一方である。
【0071】
この構成によれば、出力パラメータとして、制御棒の固着以外の要因を受け難いパラメータを用いることができるため、制御棒の固着を適切に判定することができる。
【0072】
第6の態様に係る原子炉の異常緩和方法は、一次冷却系に含まれる原子炉2の異常に対する緩和措置を行う原子炉2の異常緩和方法において、前記一次冷却系の出力に関するパラメータである出力パラメータに基づいて、前記緩和措置を実行し、前記緩和措置の実行後に、前記緩和措置の実行前の前記一次冷却系の出力が維持されているか否かを判定し、前記一次冷却系の出力が維持されていると判定した場合、前記一次冷却系を流通する冷却材の流量を、前記緩和措置の実行前に比して減少させる冷却材流量急減措置を実行する。
【0073】
この構成によれば、緩和措置の実行後に、原子炉2の異常が継続している場合であっても、原子炉の異常に対して冷却材流量急減措置を実行することで、一次冷却系の健全性を好適に担保することができる。また、冷却材流量急減措置は、緩和措置の実行後であって、原子炉2の異常が継続している場合に実行されることから、緩和措置の不用意な実行も抑制することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 原子力施設
2 原子炉
3a コールドレグ
3b ホットレグ
4 蒸気発生器
5 加圧器
6 一次冷却材ポンプ
7 原子炉格納容器
8 燃料集合体
9 制御棒
10 原子炉容器
11 蒸気管
12 タービン
13 復水器
14 給水管
15 給水ポンプ
16 発電機
20 制御棒駆動装置
30 安全保護系設備
31 ATWS緩和設備
35 原子炉停止装置
37 原子炉トリップ遮断器
50 制御回路
51 第一制御回路
52 第二制御回路
53 第三制御回路
54 第一OR回路
55 第四制御回路
61 第一多数決回路
62 第一タイマー
63 第一NOT回路
64 第二NOT回路
65 第一AND回路
66 第一出力維持回路
67 OR回路
68 AND回路
71 第三NOT回路
72 第二タイマー
73 第二AND回路
74 第二出力維持回路
81 第二多数決回路
82 第三タイマー
83 第三AND回路
84 第三多数決回路
85 第四AND回路
86 第三出力維持回路
92 第四タイマー
93 第五AND回路
94 第四出力維持回路
100 原子炉冷却系
200 タービン系
300 制御系
図1
図2
図3
図4