(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102560
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】難燃処理木材及び難燃処理木材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B27K 3/34 20060101AFI20240724BHJP
B27K 3/16 20060101ALI20240724BHJP
B27K 3/02 20060101ALI20240724BHJP
E04B 1/94 20060101ALN20240724BHJP
【FI】
B27K3/34 B
B27K3/16
B27K3/02 C
E04B1/94 R
E04B1/94 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006537
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】米丸 啓介
【テーマコード(参考)】
2B230
2E001
【Fターム(参考)】
2B230AA07
2B230BA01
2B230CA19
2B230CB08
2B230CB21
2B230CB25
2B230CB30
2B230EB02
2E001DE01
2E001GA06
2E001GA12
2E001GA23
2E001GA63
2E001HB01
2E001HB04
2E001HC01
2E001HD01
2E001JA22
(57)【要約】
【課題】白華及び白濁を抑制できる難燃処理木材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】難燃処理木材は、木材と、前記木材に浸透した難燃剤、又は、前記木材の表面に形成された難燃性塗膜と、前記木材の木口を被覆する水蒸気遮断材と、を備える。前記水蒸気遮断材として、例えば、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む膜が挙げられる。前記水蒸気遮断材として、例えば、金属薄膜を含む膜が挙げられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材と、
前記木材に浸透した難燃剤、又は、前記木材の表面に形成された難燃性塗膜と、
前記木材の木口を被覆する水蒸気遮断材と、
を備える難燃処理木材。
【請求項2】
請求項1に記載の難燃処理木材であって、
前記水蒸気遮断材は、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む膜である、
難燃処理木材。
【請求項3】
請求項1に記載の難燃処理木材であって、
前記水蒸気遮断材は、金属薄膜を含む膜である、
難燃処理木材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の難燃処理木材であって、
前記木材の木表及び木裏の少なくとも一方である特定部に形成された前記水蒸気遮断材と、
前記特定部において前記水蒸気遮断材の上層に形成された前記難燃性塗膜と、
前記特定部において前記難燃性塗膜の上層に形成された、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む膜と、
をさらに備え、
前記難燃性塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む、
難燃処理木材。
【請求項5】
木材の木表及び木裏の少なくとも一方である特定部、並びに、前記木材の木口を水蒸気遮断材で被覆し、
前記特定部において前記水蒸気遮断材よりも上層に難燃性塗膜を形成し、
前記特定部において前記難燃性塗膜よりも上層に、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む膜を形成し、
前記難燃性塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む、
難燃処理木材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は難燃処理木材及び難燃処理木材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材に難燃剤を浸透させた難燃処理木材が知られている。特許文献1、2には、可燃性基材を難燃化することができる塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-063585号公報
【特許文献2】特開2022-143873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木材に難燃剤を浸透させた難燃処理木材において、難燃材が難燃処理木材の内部から表面に析出し、表面が白くなる白華という現象が生じる。白華が生じる原因は以下のとおりである。難燃剤として用いられるリン酸やリン酸化合物は極めて吸湿性が高い。難燃剤を浸透させた難燃処理木材は、空気中の湿気を多量に吸い込む。その結果、難燃処理木材の内部から表面に難燃剤が析出し、白華が生じる。
【0005】
特許文献1、2に記載の塗料組成物を木材の表面に塗布し、難燃処理木材を製造することが考えられる。塗料組成物の塗膜はリン酸を含む。そのため、経年変化により、空気中の水分の作用により塗膜が白濁する現象が生じる。
【0006】
本開示の1つの局面では、白華及び白濁を抑制できる難燃処理木材及びその製造方法を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、木材と、前記木材に浸透した難燃剤、又は、前記木材の表面に形成された難燃性塗膜と、前記木材の木口を被覆する水蒸気遮断材と、を備える難燃処理木材である。
【0008】
本開示の1つの局面である難燃処理木材は、白華及び白濁を抑制できる。
本開示の別の局面は、木材の木表及び木裏の少なくとも一方である特定部、並びに、前記木材の木口を水蒸気遮断材で被覆し、前記特定部において前記水蒸気遮断材よりも上層に難燃性塗膜を形成し、前記特定部において前記難燃性塗膜よりも上層に、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む膜を形成する難燃処理木材の製造方法である。前記難燃性塗膜は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む。
【0009】
本開示の別の局面である難燃処理木材の製造方法によれば、白華及び白濁が生じ難い難燃性木材を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1におけるII-II断面での断面図である。
【
図3】特定部における塗膜の積層構造を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
1.難燃処理木材1の構成
難燃処理木材1は、木材2を含む。木材2は、例えば、
図1に示す板状の形態、角柱状の形態、又は、円柱状の形態等を有する。板状の形態の場合、その厚みは、例えば、8mm以上、50mm以下である。板状の形態の場合、
図1に示すように、木材2の表面は、木口3、木表5、木裏7、及び木端9を有する。木口3は、木の導管断面が現れている側面である。木口3は、木材2の一方の端部と反対側の端部とにそれぞれ存在する。両方の木口3を、以下では2面の木口3とする。
【0012】
木表5は板の一方の主面である。木裏7は、木表5の反対側にある板の主面である。木端9は、木口3と直交する板の側面である。木端9は、木材2の一方の端部と反対側の端部とにそれぞれ存在する。両方の木端9を、以下では2面の木端9とする。角柱状の形態、及び、円柱状の形態の場合、軸方向と直交する端面が木口である。
【0013】
木材2の材種は特に限定されない。木材2の材種として、例えば、製材、合板、単板積層材(LVL)、集成材、直交集成板(CLT)等が挙げられる。木材2の樹種は特に限定されない。木材2の樹種として、例えば、スギ、ヒノキ、カラマツ等の針葉樹、ナラ、クリ等の広葉樹が挙げられる。
【0014】
難燃処理木材1は、木材2に浸透した難燃剤、又は、木材2の表面に形成された難燃性塗膜15を備える。難燃性塗膜15は、木材2の表面の全部に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。
【0015】
難燃剤は、例えば、水溶性の難燃剤である。難燃剤として、例えば、リン酸、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジン等のリン酸化合物、ホウ酸化合物、硫酸アンモニウム等の硫酸化合物、ハロゲン化合物等が挙げられる。これらの難燃剤のうち、屋外環境における溶脱抑制の観点から、リン酸グアニジンが好ましい。
【0016】
難燃剤を木材2に浸透させる方法は特に限定されない。難燃剤を木材2に浸透させる方法として、例えば、加圧注入法が挙げられる。また、難燃剤を木材2に浸透させる方法として、例えば、難燃剤水溶液又は難燃剤アルコール溶液等を木材2に塗布し、木材2の表面から難燃剤を浸透させる方法が挙げられる。
【0017】
加圧注入法は、例えば、以下の方法である。乾燥させた木材2を圧力容器内に収容する。次に、圧力容器を密閉して圧力容器内を減圧する。次に、圧力容器内を減圧状態に保ったまま、圧力容器内に難燃剤水溶液を供給し、木材2の全体を難燃剤水溶液中に浸漬する。次に、エアコンプレッサ等により圧力容器内に圧縮空気を供給することで圧力容器内を加圧し、木材2の内部に難燃剤を注入する。次に、圧力容器から難燃剤水溶液を排出し、圧力容器から木材2を取り出す。次に、乾燥機によって木材2を乾燥させる。以上の工程により、難燃剤が木材2に浸透した難燃処理木材1が得られる。
【0018】
難燃処理木材1は、
図1、
図2に示すように、木口3を被覆する水蒸気遮断材11を備える。水蒸気遮断材11は、例えば、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む膜(以下では水蒸気遮断材11Aとする)である。
【0019】
水蒸気遮断材11Aは、木材2の木目を視認できる程度に透明であることが好ましい。この場合、難燃処理木材1は、意匠性において優れる。水蒸気遮断材11Aは、厚さ3μm、40℃90RH%の条件で測定した場合の水蒸気透過率が1~50g/m2/日であることが好ましく、2~40g/m2/日以下であることがより好ましく、3~10g/m2/日以下であることが最も好ましい。
【0020】
水蒸気遮断材11Aの水蒸気透過率が1g/m2/日以上である場合、木材2が含有する水分の蒸発により水蒸気遮断材11Aが膨れてしまうことを抑制できる。水蒸気遮断材11Aの水蒸気透過率が50g/m2/日以下である場合、難燃剤の溶脱を抑制することができる。
【0021】
水蒸気遮断材11Aは、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種を含んでいてもよいし、2種又は3種を含んでいてもよい。水蒸気遮断材11Aは、塩化ビニリデン樹脂を含み、PET樹脂及び塩化ビニル樹脂は含まないことが好ましい。
【0022】
水蒸気遮断材11Aが、塩化ビニリデン樹脂に加えて、PET樹脂及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む場合、水蒸気遮断材11Aは、PET樹脂及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上の100質量部に対して、塩化ビニリデン樹脂を500質量部以上含むことが好ましい。
【0023】
水蒸気遮断材11Aは、他の合成樹脂をさらに含んでいてもよい。他の合成樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。他の合成樹脂は、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上と混合されていてもよいし、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上と共重合していてもよい。
【0024】
水蒸気遮断材11Aの全質量に対する、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上の質量の比率は、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0025】
水蒸気遮断材11Aは、例えば、塗料組成物を塗布することで形成できる。この塗料組成物を、遮断材用塗料組成物とする。遮断材用塗料組成物は、例えば、塩化ビニリデン樹脂20質量部、溶剤としての2-ブタノン80質量部、艶消し剤としてのシリカ5質量部、消泡剤1質量部、及び分散剤1質量部を含む。
【0026】
遮断材用塗料組成物の全質量に対し、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上の質量比は、3~50質量%であることが好ましい。
遮断材用塗料組成物は、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上に加えて、他の合成樹脂をさらに含んでいてもよい。他の合成樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。他の合成樹脂は、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上と混合されていてもよいし、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上と共重合していてもよい。
【0027】
遮断材用塗料組成物は、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種を含んでいてもよいし、2種又は3種を含んでいてもよい。遮断材用塗料組成物は、塩化ビニリデン樹脂を含み、PET樹脂及び塩化ビニル樹脂は含まないことが好ましい。
【0028】
遮断材用塗料組成物が、塩化ビニリデン樹脂に加えて、PET樹脂及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む場合、遮断材用塗料組成物は、PET樹脂及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上の100質量部に対して、塩化ビニリデン樹脂を500質量部以上含むことが好ましい。
【0029】
遮断材用塗料組成物の溶剤は、2-ブタノン以外の溶剤であってもよい。遮断材用塗料組成物の溶剤は、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を溶解できる溶剤から適宜選択することができる。溶剤として、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。溶剤は、これらのうちの2種以上を混合したものであってもよい。溶剤として、揮発性及び臭気の点から、酢酸エチルが好ましい。
【0030】
遮断材用塗料組成物において、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上は溶剤に溶解せず、界面活性剤等の作用により水中に分散していてもよい。この場合、遮断材用塗料組成物を低臭にすることができる。そのため、建築物に既設の木材2に遮断材用塗料組成物を塗布する場合でも、住民や建物使用者を隔離せずに塗布することができる。
【0031】
遮断材用塗料組成物の塗布量は、5~100g/m2であることが好ましく、10~50g/m2であることがより好ましい。なお、塗布量とは、塗料に含まれる不揮発成分の単位面積当たりの質量を意味する。塗布量が5g/m2以上の場合は、溶脱抑制効果が一層高い。塗布量が100g/m2以下である場合は、火災時の発熱量を抑制できる。
【0032】
遮断材用塗料組成物の塗膜厚さは、好ましくは2~80μmであり、より好ましくは10~50μmである。塗膜厚さが2μm以上の場合、溶脱抑制効果が一層高い。塗膜厚さが80μm以下の場合、火災時の発熱量を抑制できる。
【0033】
遮断材用塗料組成物は、必要に応じて、消泡剤や分散剤に限らず、通常の塗料に用いられる添加剤を含有することができる。添加剤として、例えば、湿潤剤、表面調整剤、増粘剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、防腐剤、抗酸化剤等が挙げられる。
【0034】
遮断材用塗料組成物は、着色顔料や体質顔料を含有していてもよい。着色顔料として、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウム等が挙げられる。遮断材用塗料組成物は、水蒸気遮断材11Aの透明性を損なわない範囲で、着色顔料や体質顔料を含有することが好ましい。
【0035】
遮断材用塗料組成物に含まれる艶消し剤はシリカに限定されない。遮断材用塗料組成物は、通常の塗料に用いられる艶消し剤を含んでいてもよい。艶消し剤として、例えば、球状アクリル樹脂等が挙げられる。また、遮断材用塗料組成物は、艶消し剤を含まない艶有り塗料であってもよい。
【0036】
遮断材用塗料組成物を木材2の表面へ塗布する方法として、通常の塗料の塗布方法を用いることができる。遮断材用塗料組成物を木材2の表面へ塗布する方法として、例えば、刷毛、スプレー、ローラー等を使用する塗布方法、ディッピングによる塗布方法、カーテンフローコータ、ロールコータ等の塗装機械を用いる塗布方法等が挙げられる。
【0037】
水蒸気遮断材11は、例えば、金属薄膜を含む膜(以下では水蒸気遮断材11Bとする)である。金属薄膜として、例えば、アルミニウム合金箔等が挙げられる。水蒸気遮断材11Bは、例えば、アルミニウム合金箔と、粘着層とを備える。粘着層を木口3に粘着させることにより、水蒸気遮断材11Bを木口3に取り付けることができる。
【0038】
アルミニウム合金箔の厚さは、例えば、5μm以上60μm以下であることが好ましく、15μmであることがさらに好ましい。粘着層として、例えば、アクリル樹脂粘着剤の層が挙げられる。粘着層の厚さは、例えば、30μmである。
【0039】
難燃処理木材1は、例えば、
図3に示すように、難燃処理木材1の表面の一部である特定部13において、水蒸気遮断材11と、難燃性塗膜15と、上塗り塗膜17とが積層された構造を有する。
【0040】
特定部13は、例えば、木表5及び木裏7の少なくとも一方を含む。特定部13は、例えば、木表5及び木裏7の少なくとも一方に加えて、木端9を含んでいてもよい。
特定部13において、難燃性塗膜15は、水蒸気遮断材11の上層に形成されている。上塗り塗膜17は、難燃性塗膜15の上層に形成されている。上層とは、木材2の表面から遠い側にある層を意味する。
【0041】
特定部13に形成されている水蒸気遮断材11は、水蒸気遮断材11Aであってもよいし、水蒸気遮断材11Bであってもよい。特定部13に形成されている水蒸気遮断材11が水蒸気遮断材11Aである場合、水蒸気遮断材11Aの塗布量は、100g/m2以上、500g/m2以下であることが好ましい。特定部13に形成されている水蒸気遮断材11の組成は、例えば、木口3に形成されている水蒸気遮断材11の組成と同じとすることができる。
【0042】
難燃性塗膜15は、例えば、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物と、を含む膜である。特定部13に形成されている難燃性塗膜15の塗布量は、300g/m2以上、800g/m2以下であることが好ましい。難燃性塗膜15の詳細は後述する。
【0043】
上塗り塗膜17は、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上を含む膜である。上塗り塗膜17の全質量に対する、PET樹脂、塩化ビニリデン樹脂、及び塩化ビニル樹脂のうちの1種以上の質量の比率は、75質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。特定部13に形成されている上塗り塗膜17の塗布量は、30g/m2以上、250g/m2以下であることが好ましい。上塗り塗膜17の組成は、例えば、水蒸気遮断材11Aと同様の組成である。
【0044】
2.難燃性塗膜15について
(1)難燃性塗料組成物の構成
難燃性塗膜15は、例えば、塗料組成物を塗布することで形成される。この塗料組成物を、難燃性塗料組成物とする。難燃性塗料組成物は以下の成分を含む。
【0045】
(1-1)(a)水溶性メラミン樹脂
難燃性塗料組成物は水溶性メラミン樹脂を含む。水溶性メラミン樹脂は、例えば、アルデヒド類とメラミンとをアルカリ触媒存在下で反応させることにより製造することができる。水溶性メラミン樹脂の製造方法は、例えば、特許第257115号公報、特開昭51-114492号公報、特開2006-124457号公報等に開示されている。
【0046】
水溶性メラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、アルコキシ化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。メチロールメラミン樹脂として、例えば、モノメチロールメラミン樹脂、ジメチロールメラミン樹脂、トリメチロールメラミン樹脂等が挙げられる。アルコキシ化メチロールメラミン樹脂として、例えば、メチロールメラミン樹脂、メチル化メチロールメラミン樹脂、メトキシメチロール化メラミン樹脂、ブチル化メチロールメラミン樹脂等が挙げられる。
【0047】
アルコキシ化メチロールメラミン樹脂は完全にアルコキシ化されていてもよいし、メチロール基が残存していてもよいし、イミノ基が残存していてもよい。また、難燃性塗料組成物は、水溶性メラミン樹脂とフェノール樹脂等との共重合体を含んでいてもよい。水溶性メラミン樹脂のうち、メチロールメラミン樹脂が一層好ましい。
【0048】
難燃性塗料組成物を、例えば、基材の表面に塗布し、難燃性塗膜15を形成することができる。基材は、例えば、木材2である。難燃性塗料組成物を塗布する前に、木材2の表面に他の層が形成されていてもよい。
【0049】
難燃性塗料組成物がメチロールメラミン樹脂を含む場合、基材の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。なお、本明細書において透明とは、完全な透明には限定されず、例えば、半透明であってもよい。
【0050】
(1-2)(b)縮重合リン酸エステル
難燃性塗料組成物は縮重合リン酸エステルを含む。縮重合リン酸エステルは、ポリリン酸とアルコールとの縮合反応により得られるエステルである。アルコールとして、例えば、脂肪族アルコール、グリコール、多価アルコール、グリセリン等が挙げられる。
【0051】
脂肪族アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等が挙げられる。グリコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0052】
縮重合リン酸エステルとして、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが好ましい。難燃性塗料組成物が、多価アルコールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、基材の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。縮重合リン酸エステルとして、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルが一層好ましい。難燃性塗料組成物が、ペンタエリスリトールを用いて得られた縮重合リン酸エステルを含む場合、基材の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。
【0053】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは120質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは170質量部である。
【0054】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が120質量部以上350質量部以下である場合、基材の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、基材の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。
【0055】
(1-3)(c)成分
難燃性塗料組成物は(c)成分を含む。(c)成分は、リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニア水のうちの1以上を含む。(c)成分は、例えば、リン酸とホウ酸との両方を含む。アンモニウム塩として、例えば、リン酸アンモニウム塩、ホウ酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0056】
アンモニウム塩及びアンモニア水から、アンモニアが徐々に揮発する。揮発したアンモニアは水溶性メラミン樹脂の硬化を遅らせる。
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合は、好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、最も好ましくは31質量部である。
【0057】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(c)成分の配合割合が15質量部以上90質量部以下である場合、基材の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0058】
また、(c)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が基材の水酸基と化学結合し、難燃性塗膜15と基材との密着性が向上する。基材が木材2の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、基材の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0059】
(1-4)(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物
難燃性塗料組成物は、(d)分子構造中にアミノ基を有する化合物(以下では(d)成分ともいう)を含む。難燃性塗料組成物が(d)成分を含むことにより、常温における難燃性塗料組成物の硬化が速くなる。常温における難燃性塗料組成物の硬化が速くなると、垂直面に難燃性塗料組成物を塗布した場合の垂れが少なくなる。
【0060】
(d)成分として、例えば、尿素、メラミン、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミンが挙げられる。
脂肪族アミンとして、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、スペルミン、アマンタジン等が挙げられる。
【0061】
芳香族アミンとして、例えば、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、カテコールアミン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等が挙げられる。
複素環式アミンとして、例えば、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0062】
(d)成分として、二以上のアミノ基を有するもの、又は尿素が好ましい。二以上のアミノ基を有する(d)成分として、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0063】
難燃性塗料組成物が(d)成分として、二以上のアミノ基を有するもの、又は尿素を含む場合、常温における難燃性塗料組成物の硬化が一層速くなる。
常温における難燃性塗料組成物の硬化が一層速くなる理由は、水溶性メラミン樹脂に残留するホルムアルデヒドと(d)成分との重縮合物が難燃性塗料組成物の流動性を低下させるためであると推測される。なお、(d)成分とホルムアルデヒドとの重縮合物は、後述する(D)成分である。
【0064】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(d)成分の配合割合は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下であり、特に好ましくは2.5質量部である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(d)成分の配合割合が0.05質量部以上5質量部以下である場合、常温における難燃性塗料組成物の硬化が一層速くなる。
【0065】
(1-5)(e)カオリン
難燃性塗料組成物は、例えば、(e)カオリンをさらに含む。カオリンとして、ハロイサイト(Al2Si2O5 (OH) 4・2H2O)が好ましい。ハロイサイトはチューブ状の結晶構造を有する。ハロイサイトは、外側にシロキサン(-Si-O-Si-)を有し、内側にアルミノール(-Al-O-Al-)を有している。そのため、ハロイサイトの表面は酸性を呈する。
【0066】
難燃性塗料組成物がカオリンを含む場合、難燃性塗料組成物の硬化が速くなる。難燃性塗料組成物がハロイサイトを含む場合、難燃性塗料組成物の硬化が一層速くなる。
カオリンの粒子径は1μm以上10μm以下であることが好ましい。カオリンの粒子径が1μm以上10μm以下である場合、難燃性塗料組成物の硬化が一層早くなる。
【0067】
水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合は、好ましくは20質量部以上250質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは150質量部以上180質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合が250質量部以下である場合、難燃性塗膜15が白濁することを一層抑制できる。
【0068】
難燃性塗料組成物は、例えば、(f)ガラス繊維をさらに含む。難燃性塗料組成物がガラス繊維を含む場合、加熱発泡後の発泡層の形状保持性が向上する。ガラス繊維の直径は、5μm以上15μm以下であることが好ましい。ガラス繊維の長さは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることが一層好ましい。ガラス繊維の長さをガラス繊維の直径で除した値を、ガラス繊維のアスペクト比とする。ガラス繊維のアスペクト比は、1.5以上5.5以下であることが好ましい。
【0069】
(1-6)他の成分
難燃性塗料組成物は、例えば、難燃性、難燃性塗膜15の透明性、及び難燃性塗膜15の硬化の速さを著しく損なわない範囲で、通常の塗料に使用される添加剤、顔料等を含むことができる。添加剤として、例えば、増粘剤、pH調整剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、染料等、消泡剤、顔料等が挙げられる。
【0070】
増粘剤として、例えば、ポリビニルアルコール、ウレタン変性ポリエーテル、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。pH調整剤として、例えば、アンモニア水、アミン等が挙げられる。顔料として、例えば、無機顔料、有機顔料、体質顔料等が挙げられる。無機顔料として、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。有機顔料として、例えば、キナクリドン、アゾ顔料等が挙げられる。体質含量として、例えば、シリカ、硫酸バリウム、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0071】
難燃性塗料組成物は、例えば、酸を含む。酸は、水溶性メラミン樹脂の硬化を促進する。酸として、例えば、スルホン酸、カルボン酸等が挙げられる。スルホン酸として、例えば、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。カルボン酸として、例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0072】
難燃性塗料組成物は、例えば、難燃性塗膜15の透明性を著しく損なわない範囲で、発泡性耐火被覆の成分を含む。発泡性耐火被覆の成分として、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン、多価アルコール等が挙げられる。多価アルコールとして、例えば、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0073】
(2)難燃性塗料組成物の形態
難燃性塗料組成物の形態は、例えば、第1剤と第2剤とにより構成される2液の形態である。第1剤は水溶性メラミン樹脂を含む。第2剤は、縮重合リン酸エステルと、(c)成分とを含む。第1剤と第2剤とは、使用前に混合される。難燃性塗料組成物の形態が2液の形態である場合、難燃性塗料組成物の貯蔵安定性が高い。
【0074】
(d)成分は、第2剤に含まれ、第1剤には含まれないことが好ましい。(d)成分が第2剤に含まれ、第1剤には含まれない場合、難燃性塗料組成物の貯蔵安定性が一層高い。
【0075】
(3)難燃性塗料組成物の使用方法
難燃性塗料組成物は、例えば、以下のように使用される。難燃性塗料組成物の形態が2液の形態である場合、第1剤と第2剤とを攪拌機を用いて混合する。次に、基材の表面に難燃性塗料組成物を塗布する。この塗布を1回目の塗布とする。
【0076】
難燃性塗料組成物を塗布する方法として、例えば、刷毛又はローラーを用いる方法等が挙げられる。難燃性塗料組成物の塗布量は、例えば、300g/m2である。
1回目の塗布後、室温で1時間放置する。次に、50℃で16時間強制乾燥を行う。次に、難燃性塗料組成物を再度塗布する。この塗布を2回目の塗布とする。2回目の塗布における塗布方法及び塗布量は、1回目の塗布と同じである。2回目の塗布後、室温で1時間放置する。次に、50℃で16時間強制乾燥を行う。
【0077】
次に、アクリル樹脂エマルジョンを含有するつや消し塗料を、エアスプレーを用いて塗布する。つや消し塗料の塗布量は、例えば、100g/m2である。次に、50℃で10分間乾燥させる。以上の工程により、難燃処理木材1を得ることができる。
【0078】
難燃性塗料組成物の塗布に使用する器具はローラー以外の器具であってもよい。難燃性塗料組成物の塗布に使用する器具として、通常の塗料を塗布するための器具を使用することができる。難燃性塗料組成物の塗布に使用する器具として、例えば、刷毛、ヘラ、スプレー、ロールコータ等が挙げられる。
【0079】
難燃性塗料組成物の塗布量は、必要とされる難燃性能に応じて任意に設定することができる。例えば、ISO5660-1に規定されているコーンカロリーメータ法により50kW/m2の輻射強度でスギ製材を10分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m2以下にするためには、塗布量が300g/m2~1000g/m2であることが好ましく、400g/m2~600g/m2であることがより好ましい。上記の条件で5分間加熱した場合の総発熱量を8MJ/m2以下にするためには、塗布量が100g/m2~400g/m2であることが好ましい。
【0080】
難燃性塗料組成物の塗布後、乾燥させるときの乾燥温度は80℃以下であることが好ましい。強制乾燥を行う場合、乾燥温度は35℃~70℃、より好ましくは45~60℃である。強制乾燥に代えて、自然乾燥を行ってもよい。
【0081】
難燃性塗料組成物の塗布後における乾燥時間は必要に応じて短縮又は延長することができる。強制乾燥を行う前の室温での放置時間は好ましくは30分~24時間であり、より好ましくは1時間~16時間である。強制乾燥での乾燥温度が60℃以下である場合は、室温での放置を行わず、塗布後すぐに強制乾燥を行ってもよい。
【0082】
つや消し塗料を塗布する目的は、意匠性を付与することである。意匠性を付与することを目的とする塗装を意匠性塗装とする。意匠性塗装では、つや消し塗料に代えてつやあり塗料を用いてもよい。意匠性塗装では、アクリル樹脂エマルジョンを含有する塗料に限らず、基材の視認性を著しく妨げない塗料を適宜選択して用いることができる。
【0083】
意匠性塗装で使用する塗料は、合成樹脂エマルジョンに代えて、合成樹脂溶液や合成樹脂水溶液を含む塗料であってもよい。意匠性塗装で使用する塗料は、アクリル樹脂に限らず、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の任意の合成樹脂を含む塗料であってもよい。意匠性塗装では、市販のクリヤー塗料を用いてもよい。意匠性塗装では、オレフィン樹脂溶液を含む塗料を用いることが好ましい。意匠性塗装は行わなくてもよい。
【0084】
(4)難燃性塗料組成物が奏する効果
(4-1)難燃性塗料組成物を基材の表面に塗布すると、基材の難燃性が高くなる。その理由は以下のように推測される。ここでは、難燃性塗料組成物が(c)成分としてリン酸を含む事例について説明する。
【0085】
難燃性塗料組成物を塗布し、さらに意匠性塗装を行った基材が火災時の燃焼熱を受けると、最表面の意匠性塗装の塗膜が数秒から数十秒で燃焼する。次に、難燃性塗料組成物の塗膜の発泡が始まり、縮重合リン酸エステルとリン酸との縮重合反応が生じて黒色の発泡断熱層を形成する。基材が木材2である場合、リン酸は、木材2の主成分であるセルロースの水酸基とも縮重合反応を生ずると考えられる。発泡断熱層は火災時の燃焼熱の伝導を抑制して、木材表面が発火温度に到達する時間を遅延させる。木材の発火温度は250~270℃である。その結果、基材の難燃性が向上する。
【0086】
(4-2)難燃性塗料組成物は、他の成分とともに(d)成分を含む。そのため、常温における難燃性塗料組成物の硬化が速い。常温における難燃性塗料組成物の硬化が速くなると、垂直面に難燃性塗料組成物を塗布した場合の垂れが少なくなる。
【0087】
(5)難燃性塗膜15の構成
難燃性塗膜15は、(A)水溶性メラミン樹脂と、(B)縮重合リン酸エステルと、(C)リン酸、ホウ酸、アンモニウム塩、及びアンモニアのうちの1以上(以下では(C)成分ともいう)と、(D)分子構造中にアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの重縮合物(以下では(D)成分ともいう)と、を含む。
【0088】
(A)水溶性メラミン樹脂は、例えば、難燃性塗料組成物に含まれる(a)水溶性メラミン樹脂と同様のものである。
(B)縮重合リン酸エステルは、例えば、難燃性塗料組成物に含まれる(b)縮重合リン酸エステルと同様のものである。
【0089】
難燃性塗膜15において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合は、好ましくは120質量部以上350質量部以下であり、より好ましくは130質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは170質量部である。
【0090】
難燃性塗膜15において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する縮重合リン酸エステルの配合割合が120質量部以上350質量部以下である場合、難燃処理木材1の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。水溶性メラミン樹脂に過剰の縮重合リン酸エステルを混合した場合、難燃処理木材1の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。
【0091】
(C)成分は、基本的には、難燃性塗料組成物に含まれる(c)成分と同様のものである。ただし、(C)成分における選択肢の1つは、アンモニア水ではなくアンモニアである。
【0092】
難燃性塗膜15において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合は、好ましくは15質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上50質量部以下であり、最も好ましくは31質量部である。
【0093】
難燃性塗膜15において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(C)成分の配合割合が15質量部以上90質量部以下である場合、難燃処理木材1の難燃性と、難燃性塗膜15の透明性とが一層顕著になる。(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、水溶性メラミン樹脂の硬化が促進される。
【0094】
また、(C)成分が水溶性メラミン樹脂に対し過剰のリン酸又はホウ酸を含む場合、余剰のリン酸又はホウ酸が基材の水酸基と化学結合し、難燃性塗膜15と基材との密着性が向上する。基材が木材2の場合、リン酸又はホウ酸はセルロースの水酸基と化学結合する。また、余剰のリン酸又はホウ酸は、火災時の燃焼熱により分解した水溶性メラミン樹脂と化学結合することで、難燃処理木材1の難燃性を一層高める。余剰のリン酸又はホウ酸は、水溶性メラミン樹脂の熱分解により生ずる水酸基と化学結合すると推測される。
【0095】
(D)成分における分子構造中にアミノ基を有する化合物は、例えば、難燃性塗料組成物に含まれる(d)成分と同様のものである。
難燃性塗膜15において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合は、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対する(D)成分の配合割合が0.05質量部以上5質量部以下である場合、難燃処理木材1を製造するとき、常温における難燃性塗膜15の硬化が一層速くなる。
【0096】
難燃性塗膜15は、例えば、例えば、(E)カオリンを含む。(E)カオリンは、例えば、難燃性塗料組成物に含まれる(e)成分と同様のものである。
難燃性塗膜15において、水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合は、好ましくは20質量部以上250質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上200質量部以下であり、最も好ましくは150質量部以上180質量部以下である。水溶性メラミン樹脂100質量部に対するカオリンの配合割合が250質量部以下である場合、難燃性塗膜15が白濁することを抑制できる。
【0097】
難燃性塗膜15は、例えば、(F)ガラス繊維を含む。(F)ガラス繊維は、例えば、難燃性塗料組成物に含まれる(f)成分と同様のものである。
難燃性塗膜15は、例えば、難燃性塗料組成物における「他の成分」を含んでいてもよい。難燃性塗膜15は、例えば、難燃性塗料組成物を塗布することにより形成される。
【0098】
火災が発生し、難燃性塗膜15が加熱されると、難燃性塗膜15は発泡し、断熱層を形成する。断熱層は難燃処理木材1の燃焼を抑制する。
(6)ガラス繊維部
難燃処理木材1はガラス繊維部をさらに備えていてもよい。ガラス繊維部は、ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布から成る。ガラス繊維部の少なくとも一部は、難燃性塗膜15に埋め込まれている。ガラス繊維部は難燃性塗膜15の発泡を抑制する。
【0099】
難燃性塗膜15とガラス繊維部とを併せたものを被覆層とする。ガラス繊維部は、被覆層の厚み方向における中央よりも、被覆層の表面の側にあることが好ましい。表面の側とは、基材の側の反対側である。この場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0100】
被覆層は、基材の側に、ガラス繊維部を含まない部分(以下では非含有部とする)を有することが好ましい。非含有部は、例えば、難燃性塗膜15のみから成る。被覆層が非含有部を有する場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0101】
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布を構成するガラスとして、例えば、アルミナ硼けい酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス等が挙げられる。アルミナ硼けい酸ガラスは熱膨張率が低く、熱衝撃に強いため、ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布を構成するガラスとして好ましい。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布を構成するガラスのうち、97質量%以上がアルミナ硼けい酸ガラスであることが好ましい。
【0102】
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布に含まれる集束剤として、例えば、でんぷん、アクリル樹脂、PVA、EVA等が挙げられる。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布における集束剤の含有量は、3質量%以下であることが好ましい。
【0103】
ガラス繊維クロスにおける縦方向での織り密度は、30本/25mm以上、70本/25mm以下であることが好ましく、53本/25mmであることがさらに好ましい。ガラス繊維クロスにおける横方向での織り密度は、30本/25mm以上、70本/25mm以下であることが好ましく、48本/25mmであることがさらに好ましい。
【0104】
縦方向又は横方向における織り密度が70本/25mm以下である場合、ガラス繊維クロスへの難燃性塗料組成物の染み込みが一層良好になる。縦方向又は横方向における織り密度が30本/25mm以上である場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0105】
ガラス繊維クロスの織り方として、平織が好ましい。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の単位面積当たりの質量は、70g/m2以上150g/m2以下が好ましく、92g/m2が一層好ましい。
【0106】
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の厚さは、0.05mm以上0.20mm以下が好ましく、0.09mm以上0.1mm以下がさらに好ましい。
ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の縦方向での引張強さは、300N/25mm以上1000N/25mm以下が好ましく、510N/25mmがさらに好ましい。ガラス繊維クロス又はガラス繊維不織布の横方向での引張強さは、300N/25mm以上1000N/25mm以下が好ましく、451N/25mmがさらに好ましい。
【0107】
難燃性塗膜15の単位面積当たりの質量は250g/m2以上550g/m2以下であり、難燃性塗膜15のうち、ガラス繊維部に含侵しているか、ガラス繊維部よりも表面の側にある部分の単位面積当たりの質量は75g/m2以上275g/m2以下であることが好ましい。この場合、発泡抑制効果が一層高い。
【0108】
3.難燃処理木材1の製造方法
例えば、内部に難燃剤が浸透した木材2、又は、表面に難燃性塗膜15が形成された木材2における木口3に水蒸気遮断材11を形成することで、難燃処理木材1を製造することができる。
【0109】
図3に示すように、特定部13に、水蒸気遮断材11と、難燃性塗膜15と、上塗り塗膜17とが積層された構造を有する難燃処理木材1の場合、例えば、以下の方法で難燃処理木材1を製造することができる。
【0110】
特定部13、並びに、木口3を水蒸気遮断材11で被覆する。次に、特定部13において水蒸気遮断材11よりも上層に難燃性塗膜15を形成する。次に、特定部13において難燃性塗膜15よりも上層に、上塗り塗膜17を形成する。
【0111】
4.難燃処理木材1が奏する効果
(4-1)難燃処理木材1は、白華及び白濁を抑制することができる。
(4-2)難燃処理木材1は、少なくとも木口3に水蒸気遮断材11を設ければよく、必ずしも木材2の全表面に水蒸気遮断材11を設けなくてよい。そのため、難燃処理木材1は生産性が高い。
【0112】
(4-3)難燃処理木材1は、例えば、特定部13に、水蒸気遮断材11と、難燃性塗膜15と、上塗り塗膜17とが積層された構造を有する。この場合、特定部13において、白濁を一層抑制することができる。
【0113】
5.実施例
(5-1)実施例1
(i)難燃処理木材1の製造
試験用の木材2を用意した。木材2の樹種はスギであった。木材2の形態は板状であった。木材2の厚さは30mmであった。木材2の大きさは、縦100mm、横100mmであった。
【0114】
木材2に難燃処理を行った。難燃処理の方法は以下のとおりであった。水100質量部と、リン酸アンモニウム25質量部と、ホウ酸5質量部とを混合して難燃剤水溶液を調製した。この難燃剤水溶液中に上記の木材2を沈めた。また、木材2が浮かないように、木材に重りを載せた。
【0115】
次に、難燃剤水溶液と、その中に沈んだ木材2とを圧力容器内に収容した。次に、圧力容器内を減圧し、真空状態とした。真空状態を60分間保持した。次に、圧力容器内を4kgf/cm2に加圧し、加圧した状態を50分間保持した。次に、圧力容器内を減圧して大気圧とした。次に、難燃剤水溶液から木材2を取り出した。最後に、温度65℃の条件で熱風乾燥を7日間行い、木材2を乾燥させた。木材2に浸透し、固定された難燃剤の量は、約150kg/m3であった。
【0116】
難燃処理の後、木材2における2面の木口3をそれぞれ水蒸気遮断材11Aで被覆した。水蒸気遮断材11Aは、塩化ビニリデン樹脂から成っていた。水蒸気遮断材11Aは、遮断材用塗料組成物を木口3に塗布することで形成した。遮断材用塗料組成物は、塩化ビニリデン樹脂10質量部と、酢酸エチル90質量部とから成っていた。水蒸気遮断材11Aの塗布量は300g/cm2であった。以上の工程により、難燃処理木材1が完成した。
【0117】
(ii)難燃処理木材1の評価
後述する高湿度暴露試験を行う前に、難燃処理木材1の外観を観察し、以下の基準で木目の視認性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0118】
【0119】
○:木目が視認でき、見え易い。
△:木目を視認できるが見えにくい。
×:木目を視認できない。
【0120】
難燃処理木材1に対し、高湿度暴露試験を行った。恒湿度暴露試験とは、30℃、90RH%の恒温高恒湿槽内で1週間静置し、次に、25℃、50RHの恒温恒湿槽内に1週間静置する試験であった。
【0121】
高湿度暴露試験の後、難燃処理木材1の外観を観察し、以下の基準で白華を評価した。評価結果を表1に示す。
【0122】
◎:高湿度暴露試験の前と変わらない。
○:木表5のうち、10%以内の面積の部分で、白華が生じている。
△:木表5のうち、10%を超え、30%以内の面積の部分で、白華が生じている。
×:木表5のうち、30%を超える面積の部分で、白華が生じている。
【0123】
以下の基準で難燃処理木材1の生産性を評価した。評価結果を表1に示す。
◎:難燃処理木材1の生産に要する時間は3分間以内である。
○:難燃処理木材1の生産に要する時間は3分間を超え、5分間以内である。
△:難燃処理木材1の生産に要する時間は5分間を超え、15分間以内である。
×:難燃処理木材1の生産に要する時間は15分間を超える。
【0124】
実施例1では、木目の視認性、白華、及び生産性の評価のいずれにおいても優れていた。
【0125】
(5-2)実施例2~8及び比較例1
基本的には実施例1と同様に、実施例2~8及び比較例1の難燃処理木材1を製造し、評価した。ただし、以下の点で実施例1と相違する。
【0126】
実施例2では、2面の木口3を、水蒸気遮断材11Aではなく、水蒸気遮断材11Bで被覆した。水蒸気遮断材11Bはアルミテープであった。アルミテープは、厚さ15μmのアルミニウム合金箔と、厚さ30μmのアクリル樹脂接着層との積層構造を有していた。アクリル樹脂接着層と木口3とを接着することにより、水蒸気遮断材11Bは木口3を覆った。
【0127】
実施例3では、2面の木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は200g/cm2であった。
実施例4では、2面の木口3と木表5とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。2面の木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は250g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。
【0128】
実施例5では、2面の木口3と、木表5と、2面の木端9とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木端9における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。
【0129】
実施例6では、2面の木口3を、水蒸気遮断材11Aではなく、水蒸気遮断材11Bで被覆した。また、実施例6では、2面の木端9も、水蒸気遮断材11Bで被覆した。水蒸気遮断材11Bは、実施例2と同様のものであった。
【0130】
実施例7では、2面の木口3と、木表5と、木裏7と、2面の木端9とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は300g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木裏7における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木端9における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。
【0131】
実施例8では、2面の木口3を、水蒸気遮断材11Aではなく、水蒸気遮断材11Bで被覆した。また、実施例8では、2面の木端9及び木裏7も、水蒸気遮断材11Bで被覆した。水蒸気遮断材11Bは、実施例2と同様のものであった。
【0132】
比較例1では、2面の木口3を被覆しなかった。
実施例2~8及び比較例1の評価結果を表1に示す。実施例2~6では、木目の視認性、白華、及び生産性の評価のいずれにおいても優れていた。実施例7~8では、木目の視認性、及び白華の評価において優れていた。比較例1では、白華の評価結果が不良であった。
【0133】
(5-3)実施例9
(i)難燃処理木材1の製造
実施例1と同様に、試験用の木材2を用意した。木材2に対し、実施例1で行った難燃処理は行わなかった。木材2における2面の木口3をそれぞれ水蒸気遮断材11Aで被覆した。水蒸気遮断材11Aは実施例1と同様のものであった。木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は300g/cm2であった。
【0134】
また、木表5に難燃性塗膜15を形成した。難燃性塗膜15は、難燃性塗料組成物を塗布することで形成された膜であった。難燃性塗料組成物は、以下の各成分と水とを混合することで得られたものであった。
【0135】
水溶性メラミン樹脂(メチロールメラミン樹脂):100質量部
縮重合リン酸エステル(ポリリン酸とペンタエリスリトールとの反応生成物):250質量部
リン酸:50質量部
尿素:2.5質量部
カオリン:8質量部
湿潤剤:1質量部
消泡剤:0.1質量部
難燃性塗料組成物の全質量に対し、不揮発分全体の質量比は64質量%であり、水の質量比は36質量%であった。以上の工程により、難燃処理木材1が完成した。
【0136】
(ii)難燃処理木材1の評価
基本的には実施例1と同様に、難燃処理木材1を評価した。ただし、白華の評価に代えて、高湿度暴露試験の後、難燃処理木材1の外観を観察し、以下の基準で白濁を評価した。
【0137】
◎:高湿度暴露試験の前と変わらない。
○:木表5のうち、10%以内の面積の部分で、白濁が生じている。
△:木表5のうち、10%を超え、30%以内の面積の部分で、白濁が生じている。
×:木表5のうち、30%を超える面積の部分で、白濁が生じている。
【0138】
また、生産性を評価するときの基準は以下のとおりとした。上塗り塗装時間とは、上塗り塗膜17を形成するために要する時間である。
【0139】
◎:上塗り塗装時間を除き、難燃処理木材1の生産に要する時間は3分間以内である。
○:上塗り塗装時間を除き、難燃処理木材1の生産に要する時間は3分間を超え、5分間以内である。
△:上塗り塗装時間を除き、難燃処理木材1の生産に要する時間は5分間を超え、15分間以内である。
×:上塗り塗装時間を除き、難燃処理木材1の生産に要する時間は15分間を超える。
【0140】
評価結果を表2に示す。実施例9では、木目の視認性、白濁、及び生産性の評価のいずれにおいても優れていた。
【0141】
【0142】
(5-4)実施例10~17
基本的には実施例9と同様に、実施例10~17の難燃処理木材1を製造し、評価した。ただし、以下の点で実施例9と相違する。
【0143】
実施例10では、2面の木口3を、水蒸気遮断材11Aではなく、水蒸気遮断材11Bで被覆した。水蒸気遮断材11Bは実施例2と同様のものであった。
実施例11では、2面の木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は200g/cm2であった。
【0144】
実施例12では、2面の木口3と木表5とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。2面の木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は250g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木表5では、下層が水蒸気遮断材11Aであり、上層が難燃性塗膜15である積層構造が形成された。なお、下層とは、木材2の表面に近い側の層である。
【0145】
実施例13では、2面の木口3と、木表5と、2面の木端9とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木端9における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木表5では、下層が水蒸気遮断材11Aであり、上層が難燃性塗膜15である積層構造が形成された。
【0146】
実施例14では、2面の木口3を、水蒸気遮断材11Aではなく、水蒸気遮断材11Bで被覆した。また、実施例14では、2面の木端9も、水蒸気遮断材11Bで被覆した。水蒸気遮断材11Bは、実施例2と同様のものであった。
【0147】
実施例15では、2面の木口3と、木表5と、2面の木端9とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は280g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は55g/cm2であった。木端9における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。
【0148】
また、実施例15では、木表5に上塗り塗膜17を形成した。上塗り塗膜17は、塩化ビニリデンから成る層であった。上塗り塗膜17は、以下の組成を有する上塗り塗料を塗布することで形成した。
【0149】
塩化ビニリデン樹脂:10質量部
酢酸エチル:90質量部
上塗り塗膜17の塗布量は120g/cm2であった。木表5では、下層が水蒸気遮断材11Aであり、中層が難燃性塗膜15であり、上層が上塗り塗膜17である積層構造が形成された。なお、中層とは、厚み方向において、下層と上層とに挟まれた層である。
【0150】
実施例16では、2面の木口3と、木表5と、2面の木端9とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は360g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は70g/cm2であった。木端9における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。
【0151】
また、実施例16では、木表5に上塗り塗膜17を形成した。上塗り塗膜17の組成及び形成方法は実施例15と同様であった。上塗り塗膜17の塗布量は120g/cm2であった。木表5では、下層が水蒸気遮断材11Aであり、中層が難燃性塗膜15であり、上層が上塗り塗膜17である積層構造が形成された。
【0152】
実施例17では、2面の木口3と、木表5と、2面の木端9とを水蒸気遮断材11Aで被覆した。木口3における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木表5における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。木端9における水蒸気遮断材11Aの塗布量は120g/cm2であった。
【0153】
また、実施例17では、木表5に上塗り塗膜17を形成した。上塗り塗膜17の組成及び形成方法は実施例15と同様であった。上塗り塗膜17の塗布量は80g/cm2であった。木表5では、下層が水蒸気遮断材11Aであり、中層が難燃性塗膜15であり、上層が上塗り塗膜17である積層構造が形成された。
【0154】
評価結果を表2に示す。実施例10~17では、木目の視認性、白濁、及び生産性の評価のいずれにおいても優れていた。
6.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0155】
1…難燃処理木材、2…木材、3…木口、5…木表、7…木裏、9…木端、11、11A、11B…水蒸気遮断材、13…特定部、15…難燃性塗膜、17…上塗り塗膜