(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102562
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20240724BHJP
F21S 41/29 20180101ALI20240724BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20240724BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240724BHJP
【FI】
B60Q1/04 A
F21S41/29
F21V17/00 200
F21W102:13
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006542
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 貴丈
(72)【発明者】
【氏名】薦田 良
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆一
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 葵
【テーマコード(参考)】
3K011
3K339
【Fターム(参考)】
3K011CA02
3K011HA01
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA08
3K339BA18
3K339CA01
3K339GA01
3K339GB01
3K339GC01
3K339GC03
3K339LA06
(57)【要約】
【課題】薄肉軽量であっても十分な強度を備えたブラケットをランプボディに有する車両用灯具の提供。
【解決手段】前面開口部3を有するランプボディ2と、ランプボディ2の前面開口部3に取り付けられ、ランプボディ2との内側に灯室Sを形成する前面レンズと、車体への取付部としてランプボディ2に設けられたブラケット5と、を有する車両用灯具1において、ブラケット5は、ランプボディ2に連結される本体部6と、車体に係合される取付部7と、を有し、本体部6の基端部が、Y字形状の垂直断面を有するY字型基端部8として形成され、かつ、ランプボディ2の曲面部2aに一体形成されるようにした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口部を有するランプボディと、前記ランプボディの前面開口部に取り付けられ、ランプボディとの内側に灯室を形成する前面レンズと、車体への取付部として前記ランプボディに設けられたブラケットと、を有する車両用灯具において、
前記ブラケットは、ランプボディに連結される本体部と、車体に係合される取付部と、を有し、
前記本体部の基端部が、Y字形状の垂直断面を有するY字型基端部として形成され、かつ、前記ランプボディの曲面部に一体形成されたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記ランプボディの前面開口部には、シール部が設けられ、
前記本体部が、前記シール部に一体に形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
ブラケットの前記本体部が、前面レンズ取付用のボス部に連続するよう一体に形成されたことを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薄肉軽量で十分な強度を備えたブラケットをランプボディに有する車両用灯具に関する技術。
【背景技術】
【0002】
近年においては、カーボンニュートラルの観点から車両用灯具の軽量化が求められていることに伴い、部品を搭載するランプボディ各所の軽量化が求められている。一方で、近年の車両用灯具においては、安全性向上等の観点から設置されるセンサ類等、ランプボディに搭載される部品の点数が増大しており、特に車体への取付部であるブラケットの剛性強化が求められている。
【0003】
特許文献1の
図4,
図5には、リブを追加することで剛性を強化した車体取付部(ブラケット)を有するランプボディが開示されている。
【0004】
ブラケットの剛性強化は、ブラケットへのリブの追加形成や、ランプボディ側へのブラケット基端部の取付部位の厚肉化によって行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、各車体取付部(ブラケット)へのリブの追加はブラケットの剛性を増加する反面、ランプボディの自重を増加させる点でいずれも軽量化の要請に反する。
【0007】
一方で、ブラケット基端部とランプボディとの連結部は、応力集中を避けるために屈曲部とせずに極力大きな湾曲部を介して連結させるべきである反面、ランプボディ側のブラケット取付部が厚肉である場合に更に湾曲部を大きくし過ぎると、断面積増に伴う熱ひけの悪さによって連結部の強度を低下させるため、湾曲部を大きく出来ずに応力集中を避けづらいという問題がある。
【0008】
本願は、上記課題に鑑みて、ランプボディとブラケットとの連結部に応力集中を生じにくく、かつ薄肉軽量であっても十分な強度を備えたブラケットをランプボディに設けることで軽量化と剛性の向上を実現した車両用灯具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前面開口部を有するランプボディと、前記ランプボディの前面開口部に取り付けられ、ランプボディとの内側に灯室を形成する前面レンズと、車体への取付部として前記ランプボディに設けられたブラケットと、を有する車両用灯具において、前記ブラケットは、ランプボディに連結される本体部と、車体に係合される取付部と、を有し、前記本体部の基端部が、Y字形状の垂直断面を有するY字型基端部として形成され、かつ、前記ランプボディの曲面部に一体形成されるようにした。
【0010】
(作用)Y字形状の垂直断面を有する、ブラケット本体部の基端部には、ランプボディ側の取付部の薄肉化によってランプボディとの連結部との間に大きな湾曲部を形成出来るため、応力集中を緩和できる。また、ブラケットは、ランプボディに倣った湾曲形状を有することで、高い剛性を有する。
【0011】
また、前記ランプボディの前面開口部には、シール部が設けられ、前記本体部が、前記シール部に一体に形成されることが望ましい。
【0012】
(作用)ブラケットの本体部がランプボディのシール部に一体に形成される事で、ブラケットに生じる曲げ応力は、ブラケットのみならずシール部を介してランプボディにも作用する。
【0013】
また、ブラケットの前記本体部は、前面レンズ取付用のボス部に連続するよう一体に形成されることが望ましい。
【0014】
(作用)ブラケットの本体部が前面レンズ取付用のボス部に連続するよう一体に形成される事で、ブラケットに生じる曲げ応力は、ブラケットの及びランプボディのみならず、前面レンズにも作用する。
【発明の効果】
【0015】
車両用灯具によれば、Y字形状の垂直断面を有するようにブラケットの本体部を構成することにより、ランプボディ側におけるブラケット基端部の取付部を薄肉化でき、ランプボディ基端部と、ランプボディ側の連結部に大きな湾曲部を形成した状態で一体に形成出来ることで連結部の応力集中が低減され、また、ブラケットに補強リブを設けなくても、曲げに対する高い剛性を得られるため、ブラケットの軽量化かつ剛性向上によりランプボディ及び車両用灯具の軽量化を実現出来る。
【0016】
車両用灯具によれば、ブラケットに生じる曲げ応力をランプボディのシール部でも受けることにより、ランプボディとブラケットの双方でブラケットの剛性を実現出来るため、薄肉化によるブラケットの軽量化がなされつつ剛性が更に向上し、ランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。
【0017】
車両用灯具によれば、ブラケットに生じる曲げ応力をランプボディのみならず前面レンズで受けることにより、ブラケット、ランプボディ及び前面レンズでブラケットの剛性を実現できるため、ブラケットの剛性を更に向上させつつ、ブラケットの軽量化に伴うランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る車両用灯具の正面図(ブラケット5の詳細形態は省略)。
【
図2】(a)
図1の車両用灯具のブラケットの正面図。(b)
図1の車両用灯具のブラケットの背面図。
【
図3】(a)
図1のブラケットを右斜め前方かつ上方から見た斜視図。(b)
図1のブラケットを左斜め前方かつ下方から見た斜視図。
【
図4】(a)
図1のブラケットの平面図。(b)ブラケットをI-Iの位置で垂直に切断した端面図。(c)従来型の基端部を有するブラケットをI-Iと同じ位置で垂直に切断したと仮定した場合の端面図。
【
図5】(a)は、
図4(a)のブラケットをII-IIの位置で垂直に切断した端面図。(b)は、
図4(a)のブラケットをIII-IIIの位置で垂直に切断した端面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の車両用灯具の好適な実施形態を
図1から
図5に基づいて説明する。各図においては、車両用灯具の各方向を(前:後:左:右:上:下)として説明する。
【0020】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る車両用灯具1の正面図を示す。
図1の車両用灯具1は、ランプボディ2と、前面レンズ4と、を備える。ランプボディ2は、樹脂などで形成され、前後方向に沿った垂直断面において、上下に伸びる背面壁及び前後に伸びる底面壁を備えた容器形状を有し、その前端に開口部を有する。ランプボディ2の前端開口部には、
図3(a)(b)及び
図5(a)(b)の符号3に示すような、後方に凹む溝状のシール部3が全周に設けられる。前面レンズ4は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成され、シール部3に固定される。
【0021】
図1に示す画成された灯室S内には、前方(紙面手前方向)に前照灯光を照射する、ハイビーム用のランプユニットHiおよびロービーム用のランプユニットLoが収容されている。ハイビーム用のランプユニットHiおよびロービーム用のランプユニットLoは、光源からの出射光を車両前方に照射して、ハイビーム配光/ロービーム配光を形成するよう構成された光学ユニットである。各ランプユニット(Hi,Lo)には、従来周知の構成、例えば反射型、プロジェクタ型などのランプユニットが用いられており、その種類は問わない。
【0022】
図1に示すようにランプボディ2の上端部には、シール部3の後方に
図2から
図5に示す複数のブラケット5が一体に形成されている。
図1ではシール部3ブラケット5の詳細な形態を省略しているが、
図2(a)は、ブラケット5を
図1のランプボディ2の前方から見た正面図、
図2(b)は、ブラケット5の背面図、
図3(a)は、ブラケット5を右斜め前方かつ上側からみた斜視図、
図3(b)は、ブラケット5を
図1のランプボディ2の左斜め前方かつ下側からみた斜視図、
図4(a)は、ブラケット5の平面図である。
【0023】
図2(a)、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、溝状のシール部3の上端壁3cには、前面レンズ4をネジ止め固定するための有底円筒形のボス部9が前後に向けて突出形されている。前面レンズ4の外周縁部には、シール部3に沿って全集に形成された凸部(図示せず)と、凸部の外側において、ボス部9に対応する位置に凸部と一体成形された取付部(図示せず)が設けられる。前面レンズ4は、シール部3の内側に設けられる封止用の弾性部材(図示せず)に凸部を係合させた状態で取付部をタッピングねじ(図示せず)によって貫通し、ボス部9の孔9aにねじ切り固定される。前面レンズ4は、シール部3を介してランプボディ2の内側に密封された灯室Sを画成する。
【0024】
図3(a)及び
図3(b)に示す通り、ブラケット5は、本体部6と、取付部7から構成される。本体部6は、ランプボディ2に連結した状態で一体に形成され、上方に延出する。取付部7は、本体部6の後端6aから斜め後方かつ上方に屈曲した状態で本体部6に一体化される。取付部7は、取付孔7aを介して図示しない車体へ係合固定される。
【0025】
図2(a)及び(b)、
図3(a)及び(b)、
図4(a)に示すブラケット5の本体部6は、凹型湾曲部6cと凸型湾曲部6dが左右に交互に連続する波型湾曲形状を有する。また、
図2(b)及び
図3(a)に示すように、本体部6の最下部である基端部6eは、ランプボディ2の曲面部2aに一体形成されている。
【0026】
図4(b)は、
図4(a)に記載された本実施形態におけるランプボディ2のブラケット5における本体部6を切断線I-Iの位置で切断した端面図であり、
図4(c)は、従来形態のランプボディ2’のブラケット5’の本体部6’を上記切断線I-Iの位置で切断したと仮定した場合の端面図である。ブラケット5’は、本体部6’の構成を本実施形態の本体部6と入れ替えた他、ブラケット52と共通する構成を有する。
【0027】
図4(c)に示す通り、従来のブラケット5’における本体部6’は、垂直断面内において、ランプボディ2’の平面部h2から上方に突出し、T字を上下逆さに配置した形態のT字型基端部8’を有するように形成されていた。従来の本体部6’は、リブW(二点鎖線部位)を有することで曲げに対する剛性を強化されていた反面、リブWの追加による重量増の問題を生じていた。
【0028】
また、
図4(c)に示す通り、従来のT字型基端部8’には、本体部6’と平面部h2との連結部位に円弧部R3,R4を設けることにより、曲げ応力が作用した場合の応力集中を軽減していた。この円弧部R3,R4は、応力集中を軽減する観点から出来るだけ曲率を小さく、緩やかに形成することが望ましかった。しかし、ランプボディは、一般に樹脂などで成形されているため、円弧部R3’,R4’のように曲率が小さく、ゆるやかで大きな円弧部を形成した場合、T字型基端部8’には、厚肉化によって熱が冷めにくくなることに基づく強度低下を生じるおそれがあった。従って、従来のT字型基端部8’には、符号R3,R4で示すような曲率の大きな円弧部を作らざるを得ないことで、応力集中を軽減しづらいという問題もあった。
【0029】
図4(b)に示す、本実施形態におけるブラケット5の本体部6は、上記問題に鑑み、垂直断面内において、ランプボディ2の曲面部2aから上方に突出し、Y字を上下逆さに配置した形態のY字型基端部8を有するように形成されている。Y字型基端部8は、下面に凹型形状のゆるやかな円弧部R5、前曲面部8a及び後曲面部8bを備える。Y字型基端部8は、上方に凹型の下面を有することで、本体部6の支持部の薄肉化を実現すると共に、凹型下面を円弧状として平板部を円弧部とすることによって曲げに対する剛性を向上させている。
【0030】
また、
図4(b)(c)に示す通り、Y字型基端部8は、ランプボディ2の曲面部2aの一部である前曲面部8a及び後曲面部8bから本体部6を形成することにより、本体部6の根元に従来のT字型基端部8’の円弧部R3,R4よりも曲率が小さく、ゆるやかな円弧部R1,R2を形成することが出来るため、従来の本体部6’よりもランプボディ側との連結部位における応力集中を低減できる。
【0031】
また、
図4(b)に示す通り、本体部6は、従来の本体部6’のような直線形状では無く、前側の円弧部R1と後側の円弧部R2に倣い、即ちランプボディ2の曲面部の湾曲に倣うように連続する緩やかな円弧形状に形成されることが望ましい。本体部6は、円弧部R1,R2,R5を備えたY字型基端部8を有することにより、円弧形状の組み合わせによる曲げ剛性の向上が実現される。従って、本体部6の取付部である曲面部2aにおいて、
図4(c)の従来の平板部2hの肉厚d1’よりも曲面部2aの肉厚d1を薄くし、かつ従来のリブWを設けなくても従来と同等以上の剛性を実現できるため、本実施例のブラケット5は、剛性の向上を図りつつ、軽量化が実現され、ランプボディ2及び車両用灯具1の軽量化に寄与出来るものといえる。また、ブラケット5の剛性は、本体部6を円弧部R1及び円弧部R2に倣った湾曲形状とすることでさらに向上する。
【0032】
また、
図5(a)は、
図4(a)に記載された本実施形態におけるランプボディ2のブラケット5を切断線II-IIの位置で切断した端面図であり、
図5(b)は、
図4(a)に記載された本実施形態におけるランプボディ2のブラケット5を切断線III-IIIの位置で切断した端面図である。
【0033】
図5(a)に示すように、本実施形態において、複数あるブラケット5の本体部6(凸型湾曲部6d)の前端部6bの一部は、ランプボディ2のシール部3の後端部3aに連続するよう一体に形成され、かつ本体部6の基端部は、ランプボディ2の曲面部2aに一体に形成されることが望ましい。
【0034】
図5のように本体部6をシール部3に一体に形成した場合、ブラケット5に生じる曲げ応力は、ブラケット5のみならずシール部3を介してランプボディ2にも作用する。本実施形態の車両用灯具1によれば、ブラケット5に生じる曲げ応力をランプボディ2のシール部3でも受けることにより、ランプボディ2とブラケット5の双方でブラケットの剛性を実現出来るため、ブラケットの剛性が更に向上し、ランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。
【0035】
更に、
図5(b)に示すように、本実施形態において、複数あるブラケット5の本体部6(凸型湾曲部6d)の前端部6bの一部は、シール部3に一体に形成された取付用のボス部9に連続するよう一体に形成され、かつ本体部6の基端部は、ランプボディ2の曲面部2aに一体に形成されることが望ましい。
図5(b)においては、本体部6の上前端部6b1が、前面レンズ4の取付用のボス部9に一体に形成され、本体部6の下前端部6b2が、シール部3に一体に形成されている。
【0036】
図5のように本体部6を前面レンズ4の取付用のボス部9に一体に形成した場合、ブラケット5に生じる曲げ応力は、ブラケット5及びシール部3を介したランプボディのみならず、取付用のボス部9にネジ止め固定された前面レンズ4にも作用する。本実施形態の車両用灯具1によれば、ブラケット5に生じる曲げ応力をランプボディ2及び前面レンズ4でも受けることにより、ブラケット5、ランプボディ2及び前面レンズ4の全体でブラケットの剛性を実現出来るため、ブラケットの剛性が更に向上し、ランプボディ及び車両用灯具の更なる軽量化を実現出来る。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用灯具
2 ランプボディ
2a ランプボディの曲面部
3 シール部
4 前面レンズ
5 ブラケット
6 本体部
7 取付部
8 本体部のY字型基端部
9 前面レンズの取付用ボス部