(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102566
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】水中構造物の点検装置
(51)【国際特許分類】
E02D 37/00 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
E02D37/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006547
(22)【出願日】2023-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名 新道路技術会議 刊行物名 道路政策の質の向上に資する技術開発成果報告レポート Nol.31-7 pp.17 発行年月日 令和4年5月
(71)【出願人】
【識別番号】308015522
【氏名又は名称】ジビル調査設計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 茂則
(72)【発明者】
【氏名】福田 英徳
(72)【発明者】
【氏名】神出 明
(72)【発明者】
【氏名】塚田 啓二
(57)【要約】
【課題】水中構造物の点検箇所に対して直接接触して正確かつ効率的に点検作業を行うことができる水中構造物の点検装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る点検装置1は、点検箇所に接触した状態でセンサにより測定する測定部10と、測定部10を点検箇所に対向した位置に移動させる移動部20と、測定部10を点検箇所に接触させた状態に設定する設定部30と、測定部10の両側に配置された複数対の圧接部材を備えるとともに測定部10の接触面に対して傾斜する面に圧接部材を圧接して測定部10を保持する保持部40とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中構造物の点検箇所に接触した状態でセンサにより測定する測定部と、前記測定部を前記点検箇所に対向した位置に移動させる移動部と、前記測定部を点検箇所に接触させた状態に設定する設定部と、前記測定部の両側に配置された複数対の圧接部材を備えるとともに前記水中構造物において前記測定部の接触面に対して傾斜する面に当該圧接部材を圧接して前記測定部を保持する保持部とを備えている水中構造物の点検装置。
【請求項2】
前記点検箇所の周囲の形状を検知する検知部を備えている請求項1に記載の水中構造物の点検装置。
【請求項3】
前記点検箇所の周囲を撮影する撮影部を備えている請求項1又は2に記載の水中構造物の点検装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記点検箇所に向かって前記測定部及び前記保持部を前進又は後退させる動作部材を備えている請求項1又は2に記載の水中構造物の点検装置。
【請求項5】
前記水中構造物は、鋼板を凹凸形状に配列しており、前記保持部は、前記鋼板の凹部の内側の傾斜面に対して前記圧接部材を離間するように動作させて押圧する内側駆動部と、前記鋼板の凸部の外側の傾斜面に対して前記圧接部材を接近するように動作させて押圧する外側駆動部とを備えている請求項1又は2に記載の水中構造物の点検装置。
【請求項6】
水中構造物の点検箇所に接触した状態でセンサにより測定する水中構造物の点検方法であって、前記センサにより測定する測定部を前記点検箇所に対向した位置に移動させ、前記測定部を点検箇所に接触させた状態に設定し、前記水中構造物において前記測定部の接触面に対して傾斜する面に前記測定部の両側に配置された複数対の圧接部材を圧接させて前記測定部を保持し、前記測定部を接触させた状態に保持して測定する水中構造物の点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の構造物に対して直接接触して点検を行う水中構造物の点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、港湾、河川等において構築された構造物では、老朽化に伴う強度劣化が問題となっており、特に水中の構造物への対応が求められている。
【0003】
水中の構造物に対して点検作業を行う場合、ダイバーが潜水して構造物を点検することが行われているが、潜水時間や潜水範囲が限られているため、広い範囲を効率的に点検することは難しい、といった課題があった。
【0004】
そのため、無人機により水中の構造物を点検することが提案されている。例えば、特許文献1には、鉄管内壁の点検作業を行う水中作業ロボットとして、推進装置と作業機器を備えたロボット本体の両側部に、先端部に電磁吸着盤を備えた1対の吸着アームを備えた水中作業ロボットが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、上昇下降用スラスタ、前後進用スラスタ及び左右用スラスタを備え、水中での遊泳と静止が可能な遠隔検査・補修塗装用のビークルが記載されている。また、特許文献3には、被点検物を撮影する撮影手段を設けた保持体と、保持体に左右方向に離隔して設けられた支持脚と、推進力を発生させる前後スラスタとを備え、前後スラスタの駆動により支持脚を介して被点検物に接触する水中点検装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2528690号公報
【特許文献2】特開2004-212194号公報
【特許文献3】特許第6485633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献では、スラスタ等の推進装置により点検装置本体を点検領域に移動させて点検作業を行うようになっているが、水中の濁りによる視界不良な状況において点検位置を視認することが難しい。また、海中のように常時波動が生じる状況では、装置本体が揺動して不安定な状態となることから、点検作業を安定して行うことが難しい。そのため、従来の水中点検装置では、こうした様々な状況に対して、正確な点検作業を効率よく行うことは難しいといった課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、水中構造物の点検箇所に対して直接接触して正確かつ効率的に点検作業を行うことができる水中構造物の点検装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る水中構造物の点検装置は、水中構造物の点検箇所に接触した状態でセンサにより測定する測定部と、前記測定部を前記点検箇所に対向した位置に移動させる移動部と、前記測定部を点検箇所に接触させた状態に設定する設定部と、前記測定部の両側に配置された複数対の圧接部材を備えるとともに前記水中構造物において前記測定部の接触面に対して傾斜する面に当該圧接部材を圧接して前記測定部を保持する保持部とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記のような構成を有することで、点検箇所に測定部を接触した状態に設定し、測定部の両側に配置した複数対の圧接部材を測定部の接触面に対して傾斜する面に圧接して接触させた状態の測定部を保持するようにしているので、測定を安定した状態で行うことが可能となり、正確で効率的な点検作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る水中構造物の点検装置に関する概略構成図である。
【
図3】測定部、設定部及び保持部を水平アームと直交する方向から見た説明図である。
【
図5】鋼矢板の凸部に対する測定を行う場合の動作説明図である。
【
図6】鋼矢板の凹部に対する測定を行う場合の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る水中構造物の点検装置に関する概略構成図である。この例では、港湾等の岸壁に構築された鋼矢板からなる擁壁構造物に対する点検作業に使用する場合について説明する。
【0014】
こうした点検作業では、鋼板を凹凸形状に形成した鋼矢板の腐食の進行を点検するために、磁気センサにより板厚を測定する技術が開発されているが、正確な測定結果を得るためには、磁気センサを鋼矢板の表面に接触した状態に設定することが必要になる。
【0015】
水中構造物の点検装置1は、港湾の岸壁Mに設置されており、岸壁の下方には、複数の鋼矢板Kが岸壁Mに沿って配列されて擁壁構造物が構築されている。
【0016】
点検装置1は、擁壁構造物の鋼矢板Kの点検箇所に接触した状態で磁気センサにより測定する測定部10及び測定部10を点検箇所に対向した位置に移動させる移動部20を備えている。
【0017】
移動部20は、岸壁M上を移動する作業車100に搭載された支持アーム21、支持アーム21の先端部に取り付けられた垂直ロッド22及び垂直ロッド22の下端部に取り付けられた水平アーム23を備えている。
【0018】
支持アーム21は、昇降可能で水平方向に回動又は移動可能に搭載されており、垂直ロッド22は、複数の管状部材を組み合せて上下方向に伸縮可能となるように構成されている。水平アーム23は、水平方向に移動可能に取り付けられており、水平アーム23の先端部には、矩形状の支持フレーム24が取り付けられている。支持フレーム24には、設定部30を介して測定部10が取り付けられているとともに、測定部10を点検箇所に接触した状態で保持する保持部40が取り付けられている。
【0019】
支持アーム21、垂直ロッド22及び水平アーム23の上下方向の移動並びに水平方向の回動及び移動を組み合せることで、点検箇所に対向した位置に測定部10を移動させることができる。なお、以下の説明では、水平アーム23を軸方向に沿って測定部10の取り付けられた側へ移動する動作を前方への移動動作とし、反対側へ移動する動作を後方への移動動作として説明する。
【0020】
作業車100には、測定部10、移動部20、設定部30及び保持部40を動作制御するための制御部101が搭載されており、作業者が遠隔操作により動作制御するようになっている。また、動作状況等を表示するための表示部102が搭載されており、検出画像、撮影画像及び測定結果といった点検作業に関するデータが表示されるようになっている。
【0021】
この例では、移動部20は、陸上から水中に設置された移動機構により動作するようになっているが、測定部10を点検箇所に対向した位置に移動させる機構であればよく、例えば、多関節のアーム部材を用いたり、水中ドローンのように推進装置により水中を移動する移動機構を用いて動作させることもでき、特に限定されない。
【0022】
図2は、支持フレーム24に関する説明図であり、
図2(a)は、水平アーム23の軸方向から見た図で、
図2(b)は、
図2(b)のA-A方向から見た図である。
【0023】
支持フレーム24は、水平アーム23と水平面で直交する方向に取り付けられた一対の水平枠体240及び水平枠体240の両端部に取り付けられた一対の垂直枠体241により矩形状に形成されており、中央部分に上下方向に沿って一対の支持枠体242が所定の間隔を空けて取り付けられている。
【0024】
水平アーム23の先端部には、点検箇所の周囲の形状を検知する検知部として水中ソナー50が取り付けられており、前方の点検箇所の凹凸形状を検出するようになっている。また、水中ソナー50により測定部10が点検箇所に対して移動する様子を検出することができ、水中ソナー50の検出画像を表示部102で確認して測定部10を所望の位置に設定するようになっている。水中ソナー50の検出画像を用いることで、濁った視界不良の環境下でも点検箇所の凹凸形状を確認して測定部10を点検箇所に対向する位置に正確に位置決めすることができる。
【0025】
また、水平枠体240の上部には、点検箇所の周囲を撮影する撮影部として一対の撮影カメラ51が取り付けられており、測定部10の移動状態及び点検箇所への接触状態を撮影して表示部102において確認できるようになっている。
【0026】
一方の水平枠体240(
図2では上側)には、保持部40として、吸盤からなる圧接部材410、圧接部材410を進退させるエアシリンダ411及びエアシリンダ411を先端部に取り付けた取付枠体412がそれぞれ両側に設けられている。取付枠体412は、先端部と反対側の基端部が水平枠体240に設けられたガイド部材243に嵌合して水平方向に突設しており、水平枠体240の長手方向に沿って摺動可能となるように取り付けられている。そのため、両側の取付枠体412を水平枠体240の長手方向に沿って互いに接近又は離間するように移動させることで、両者の間の間隔を調整することができる。
【0027】
他方の水平枠体240(
図2では下側)には、保持部40として、吸盤からなる圧接部材420、圧接部材420を進退させるエアシリンダ421及びエアシリンダ421を先端部に取り付けた取付枠体422がそれぞれ両側に設けられている。取付枠体422は、取付枠体412と同様にガイド部材243に嵌合して水平方向に突設するように取り付けられ、水平枠体240の長手方向に沿って摺動可能となっており、互いに接近又は離間して両者の間の間隔を調整するようになっている。
【0028】
圧接部材410及び420は、互いに対向するように配置され、水平アーム23の軸方向に沿って測定部10よりも離れた位置に設定されるように取付枠体412及び422の先端部に延設されている。取付枠体412及び422のそれぞれの間隔を点検箇所である鋼矢板の凸部の幅よりも広くなるように位置決めすることで、圧接部材410及び420を凸部の両側に対向する位置に設定することができる。そして、一対の圧接部材410及び420は、エアシリンダ411及び421を駆動して互いに接近するように前進させることで、凸部の両側の傾斜面に圧接させた状態に設定することができる。
【0029】
この例では、エアシリンダ411及び421が凸部の外側の傾斜面に対して圧接部材を接近するように動作させて押圧する外側駆動部として機能するようになっている。この場合、外側の傾斜面は、測定部の接触面に対して傾斜した面であればよく、特に限定されない。例えば、垂直面や曲面形状でもよく、測定部の両側から挟持して押圧することが可能な傾斜面であればよい。
【0030】
また、圧接部材410及び420は、自在継手を介してエアシリンダ411及び421に接続されているので、任意の傾斜面に合わせて圧接面を面接触させることができ、圧接部材を確実に吸着させて保持することが可能となる。
【0031】
支持枠体242の間には、測定部10を点検箇所に接触させた状態に設定する設定部30として、伸縮ロッド31、駆動シリンダ32及び案内ロッド33が上下方向に配列されて水平アーム23の軸方向に沿って支持されている。伸縮ロッド31、駆動シリンダ32及び案内ロッド33の先端部には、測定部10を取り付けるための取付板34が固定されている。
【0032】
伸縮ロッド31は、支持ブロック部材35に摺動可能に支持されており、支持ブロック部材35を支持枠体242の間に固定することで、支持されている。支持ブロック部材35の下側には、駆動シリンダ32を支持する取付部材352が固定されており、上側には、案内ロッド33を摺動可能に支持する取付部材351が固定されている。
【0033】
図3は、測定部10、設定部30及び保持部40を水平アーム23と直交する方向から見た説明図である。
図3では、装置構成の理解を容易にするため、支持フレーム24の一部を切り欠いて表示している。
【0034】
伸縮ロッド31、駆動シリンダ32及び案内ロッド33は、水平アーム23の軸方向に沿うように支持フレーム24に取り付けられている。駆動シリンダ32は、水平アーム23の軸方向に沿って駆動ロッドの進退動作を行うようになっており、駆動ロッドの前進動作又は後退動作に連動して先端部に取り付けられた取付板34が伸縮ロッド31及び案内ロッド33とともに前進又は後退するようになっている。
【0035】
伸縮ロッド31及び案内ロッド33は、水平アーム23の軸方向に沿って移動することで、先端部に取り付けた測定部10を水平アーム23の前方に移動させることができる。また、案内ロッド33が伸縮ロッド31とともに移動するので、測定部10が不用意に回動することなく直進動作を行うことが可能となる。
【0036】
取付板34の前面には、支持板36の中心部分が取り付けられている。支持板36は、水平方向には測定部10よりも広い幅で、上下方向には支持フレーム24よりも両側に延長された矩形状に形成されている。支持板36の中心部分には、一対の取付部材37が前方に向かって立設しており、取付部材37の先端部に矩形状の測定部10が取り付けられている。一対の取付部材37は、圧縮バネ等の伸縮部材を内蔵して伸縮可能となっており、測定部10の接触面である前面が点検箇所に接触した状態に合わせて伸縮することで、測定部10の接触面を点検箇所に面接触した状態に設定することができる。
【0037】
支持板36の上端部には、点検箇所の周囲を撮影する撮影部として撮影カメラ52が取り付けられており、測定部10の移動状態及び点検箇所への接触状態を撮影して表示部102において確認できるようになっている。
【0038】
支持板36の下端部には、水中スクリューからなる推進装置38が取り付けられており、推進装置38を駆動することで、支持板36を前進又は後退させるように移動させることができる。
【0039】
図4は、支持板36の前面側からみた説明図である。支持板36の前面には、測定部10の上側及び下側に、保持部40として、吸盤からなる圧接部材430を取り付けて進退させるエアシリンダ431及び吸盤からなる圧接部材440を取り付けて進退させるエアシリンダ441がそれぞれ両側に設けられている。圧接部材430及び440は、水平方向で互いに反対側となるように外側に向かって取り付けられており、エアシリンダ431及び441を同時に駆動することで、測定部10の上側及び下側において圧接部材430及び440を離間する方向に移動させる。そして、測定部10の上側及び下側において圧接部材430及び440を鋼矢板の凹部の両側の傾斜面に圧接させることで、測定部10を保持する動作を行う。
【0040】
この例では、エアシリンダ431及び441が凹部の内側の傾斜面に対して圧接部材を離間するように動作させて押圧する内側駆動部として機能するようになっている。この場合、内側の傾斜面は、測定部の接触面に対して傾斜した面であればよく、特に限定されない。例えば、垂直面や曲面形状でもよく、測定部の両側に突っ張るように押圧することが可能な傾斜面であればよい。
【0041】
また、圧接部材430及び440は、自在継手を介してエアシリンダ431及び441に接続されているので、任意の傾斜面に合わせて圧接面を面接触させることができ、圧接部材を確実に吸着させて保持することが可能となる。
【0042】
図5は、鋼矢板の凸部K1に対する測定を行う場合の動作説明図である。
図5(a)は、測定部10、設定部30及び保持部40を水平アーム23の軸方向と直交する水平方向から見た説明図であり、
図5(b)は、測定部10、設定部30及び保持部40を水平アーム23の軸方向と直交する上方向から見た説明図である。
【0043】
移動部20を動作制御して、測定部10が点検箇所である凸部K1の測定位置に対向する位置に位置決めした後、駆動シリンダ32を駆動させて伸縮ロッド31を前進させて伸縮ロッド31の先端部に支持板36及び取付部材37を介して取り付けられた測定部10の接触面を点検箇所に押し当てる。その際に、水中ソナー50の検出画像及び撮影カメラ51の撮影画像を確認しながら、伸縮ロッド31を前進させて測定部10を点検箇所に接触した状態に設定する。
【0044】
測定部10を点検箇所に接触した状態でエアシリンダ411及び421を駆動し、圧接部材410及び420を凸部K1の外側の傾斜面に挟持するように押し当てて測定部10の両側を保持した状態とする。そして、保持した状態を確認するために、推進装置38を後退する方向に駆動して測定部10が後退することがないか確認する。測定部10の保持状態を確認した後測定部10による鋼矢板の測定を行う。
【0045】
図6は、鋼矢板の凹部K2に対する測定を行う場合の動作説明図である。
図6(a)は、測定部10、設定部30及び保持部40を水平アーム23の軸方向と直交する水平方向から見た説明図であり、
図6(b)は、測定部10、設定部30及び保持部40を水平アーム23の軸方向と直交する上方向から見た説明図である。
【0046】
移動部20を動作制御して、測定部10が点検箇所である凹部K2の測定位置に対向する位置に位置決めした後、駆動シリンダ32を駆動させて伸縮ロッド31を前進させて伸縮ロッド31の先端部に支持板36及び取付部材37を介して取り付けられた測定部10の接触面を点検箇所に押し当てる。その際に、水中ソナー50の検出画像及び撮影カメラ51の撮影画像を確認しながら、伸縮ロッド31を前進させて測定部10を点検箇所に接触した状態に設定する。
【0047】
測定部10を点検箇所に接触した状態でエアシリンダ431及び441を駆動し、圧接部材430及び440を凹部K2の内側の傾斜面に突っ張るように押し当てて測定部10の両側を保持した状態とする。そして、保持した状態を確認するために、推進装置38を後退する方向に駆動して測定部10が後退することがないか確認する。測定部10の保持状態を確認した後測定部10による鋼矢板の測定を行う。
【0048】
以上説明したように、水中構造物の点検箇所に対向する位置に測定部を移動させて位置決めし、測定部を点検箇所に接触した状態に設定し、点検箇所の凹凸形状に合わせて圧接部材を傾斜面に圧接して接触状態を保持し、接触した状態を保持して測定部により測定を行うようにしているので、海中のように常時波動が生じている環境下でも測定を安定した状態で行うことが可能となり、正確で効率的な点検作業を行うことができる。
【0049】
なお、水中構造部の点検作業を点検箇所に対して所定の間隔を空けて測定部を設定することが必要な場合でも、本発明の点検装置を使用することで、遠隔操作により点検作業を正確かつ効率的に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・点検装置、10・・・測定部、20・・・移動部、21・・・支持アーム、22・・・垂直ロッド、23・・・水平アーム、24・・・支持フレーム、30・・・設定部、31・・・伸縮ロッド、32・・・駆動シリンダ、33・・・案内ロッド、34・・・取付板、35・・・支持ブロック部材、36・・・支持板、37・・・取付部材、38・・・推進装置、40・・・保持部、410,420、430、440・・・圧接部材、411、421、431、441・・・エアシリンダ、50・・・水中ソナー、51・・・撮影カメラ、100・・・作業車