特開 2024-102567 乾式壁構造およびスタッド拘束具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024102567

(43)【公開日】2024-07-31

(54)【発明の名称】乾式壁構造およびスタッド拘束具

(51)【国際特許分類】

   E04B 2/74 20060101AFI20240724BHJP

   E04B 2/76 20060101ALI20240724BHJP

   E04B 1/82 20060101ALI20240724BHJP

   E04B 1/86 20060101ALI20240724BHJP

【ＦＩ】

E04B2/74 551G

E04B2/76

E04B2/74 551F

E04B1/82 W

E04B1/86 N

【審査請求】未請求

【請求項の数】8

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023006549

(22)【出願日】2023-01-19

(71)【出願人】

【識別番号】390037154

【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001586

【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】針金 奏一郎

(72)【発明者】

【氏名】安江 俊彦

【テーマコード（参考）】

2E001

【Ｆターム（参考）】

2E001DF02

2E001FA03

2E001GA12

2E001GA42

2E001HA03

(57)【要約】

【課題】遮音性能を維持しながら、耐火性能を向上させることのできる乾式壁構造を提供すること。
【解決手段】乾式壁構造は、第１空間側の内装面材が固定される第１のスタッド（２１）と、第１のスタッドと背中合わせとなる位置に第１のスタッドとの間に間隔（２０）をあけた状態で配置され、第２空間側の内装面材が固定される第２のスタッド（２２）と、第１のスタッドおよび第２のスタッドの一方が他方から離れる方向に変形することを防止または抑制するスタッド拘束具（５Ａ）とを備える。スタッド拘束具は、第１のスタッドに固定され、被掛止部（６４２）が設けられた第１部材（６４）、および、第２のスタッドに固定され、被掛止部に掛止する掛止部（６５２）が設けられた第２部材（６５）を含み、通常の設置状態において、被掛止部と掛止部との間に隙間（６３０）が設けられている。
【選択図】図６

【特許請求の範囲】

【請求項1】

第１空間と第２空間とを仕切る乾式壁の構造であって、
前記第１空間側の内装面材が固定される第１のスタッドと、
前記第１のスタッドと背中合わせとなる位置に前記第１のスタッドとの間に間隔をあけた状態で配置され、前記第２空間側の内装面材が固定される第２のスタッドと、
前記第１のスタッドおよび前記第２のスタッドの一方が他方から離れる方向に変形することを防止または抑制するスタッド拘束具とを備え、
前記スタッド拘束具は、前記第１のスタッドに固定され、被掛止部が設けられた第１部材、および、前記第２のスタッドに固定され、前記被掛止部に掛止する掛止部が設けられた第２部材とを含み、
通常の設置状態において、前記被掛止部と前記掛止部との間に隙間が設けられている、乾式壁構造。

【請求項2】

前記被掛止部と前記掛止部との間の前記隙間に、弾性材が配置されている、請求項１に記載の乾式壁構造。

【請求項3】

前記第１のスタッドおよび前記第２のスタッドの両側部に、前記第１部材および前記第２部材からなる２つの接続部材が対をなして設けられている、請求項１に記載の乾式壁構造。

【請求項4】

第１空間と第２空間とを仕切る乾式壁の構造であって、
前記第１空間側の内装面材が固定される第１のスタッドと、
前記第１のスタッドと背中合わせとなる位置に前記第１のスタッドとの間に間隔をあけた状態で配置され、前記第２空間側の内装面材が固定される第２のスタッドと、
前記第１のスタッドおよび前記第２のスタッドのいずれか一方に固定され、前記第１のスタッドおよび前記第２のスタッドの一方が他方から離れる方向に変形することを防止または抑制するスタッド拘束具とを備え、
通常の設置状態において、前記スタッド拘束具と前記第１のスタッドまたは前記第２のスタッドとの間に隙間が設けられている、乾式壁構造。

【請求項5】

前記第１のスタッドおよび前記第２のスタッドは、内装面材が固定される閉鎖面部と、前記閉鎖面部に対面する一対のリップ部とを有するＣ形鋼であり、
前記スタッド拘束具は、前記第２のスタッドに固定される固定部と、前記第１のスタッドの前記リップ部の裏側に係合する係合部と、前記固定部および前記係合部を連結する連結部とを一体的に含み、
通常の設置状態において、前記係合部および前記連結部は前記第１のスタッドと非接触である、請求項４に記載の乾式壁構造。

【請求項6】

前記第１のスタッドおよび前記第２のスタッドの両側部に、前記固定部、前記係合部、および前記連結部からなる２つの接続部材が対をなして設けられており、
前記スタッド拘束具は、前記２つの接続部材を繋ぐ繋ぎ部をさらに含む、請求項５に記載の乾式壁構造。

【請求項7】

第１のスタッドと第２のスタッドとが背中合わせとなる位置に互いの間に間隔をあけた状態で配置された乾式壁に用いるスタッド拘束具であって、
前記第１のスタッドに固定され、被掛止部が設けられた第１部材、および、前記第２のスタッドに固定され、前記被掛止部に掛止する掛止部が設けられた第２部材を含み、
通常の設置状態において、前記被掛止部と前記掛止部との間に隙間が設けられている、スタッド拘束具。

【請求項8】

第１のスタッドと第２のスタッドとが背中合わせとなる位置に互いの間に間隔をあけた状態で配置された乾式壁に用いるスタッド拘束具であって、
前記第１のスタッドおよび前記第２のスタッドは、内装面材が固定される閉鎖面部と、前記閉鎖面部に対面する一対のリップ部とを有するＣ形鋼であり、
前記スタッド拘束具は、前記第２のスタッドに固定される固定部と、前記第１のスタッドの前記リップ部の裏側に係合する係合部と、前記固定部および前記係合部を連結する連結部とを一体的に含み、
通常の設置状態において、前記係合部および前記連結部は前記第１のスタッドと非接触である、スタッド拘束具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、乾式壁構造およびスタッド拘束具に関し、特に、界壁、または、遮音性が要求される間仕切り壁に適用可能な乾式壁の構造に関する。

【背景技術】

【0002】

特開２０１４－１１８７７７号公報（特許文献１）には、界壁に適用される乾式壁構造が開示されている。この乾式壁構造では、第１空間側の第１のスタッドと第２空間側の第２のスタッドとを弱軸構造で配置し、第１空間または第２空間から所定以上の荷重が掛かった場合に第１のスタッドの裏面と第２のスタッドの裏面とが当接し得るように、両スタッドの表裏方向（壁に直交する方向）の間隔が定められている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１４－１１８７７７号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１の乾式壁によれば、壁の厚みを増大させることなく遮音性能と壁の強度とを両立することができるものの、耐火性能については考慮されていない。

【0005】

本発明は、遮音性能を維持しながら、耐火性能を向上させることのできる乾式壁構造を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0006】

この発明のある局面に従う乾式壁構造は、第１空間と第２空間とを仕切る乾式壁の構造であって、第１空間側の内装面材が固定される第１のスタッドと、第１のスタッドと背中合わせとなる位置に第１のスタッドとの間に間隔をあけた状態で配置され、第２空間側の内装面材が固定される第２のスタッドと、第１のスタッドおよび第２のスタッドの一方が他方から離れる方向に変形することを防止または抑制するスタッド拘束具とを備えている。スタッド拘束具は、第１のスタッドに固定され、被掛止部が設けられた第１部材、および、第２のスタッドに固定され、被掛止部に掛止する掛止部が設けられた第２部材を含み、通常の設置状態において、被掛止部と掛止部との間に隙間が設けられている。

【0007】

好ましくは、被掛止部と掛止部との間の隙間に、弾性材が配置されている。

【0008】

好ましくは、第１のスタッドおよび第２のスタッドの両側部に、第１部材および前記第２部材からなる２つの接続部材が対をなして設けられている。

【0009】

なお、スタッド拘束具は、第１のスタッドおよび第２のスタッドの長手方向中央部、または、内装面材の目地に対応する部分に設けられていることが望ましい。

【0010】

この発明の他の局面に従う乾式壁構造では、スタッド拘束具が第１のスタッドおよび第２のスタッドのいずれか一方に固定され、通常の設置状態において、スタッド拘束具と第１のスタッドまたは第２のスタッドとの間に隙間が設けられている。

【0011】

この場合、好ましくは、第１のスタッドおよび第２のスタッドは、内装面材が固定される閉鎖面部と、閉鎖面部に対面する一対のリップ部とを有するＣ形鋼である。スタッド拘束具は、第２のスタッドに固定される固定部と、第１のスタッドのリップ部の裏側に係合する係合部と、固定部および係合部を連結する連結部とを一体的に含み、通常の設置状態において、係合部および連結部は第１のスタッドと非接触であることが望ましい。

【0012】

好ましくは、第１のスタッドおよび第２のスタッドの両側部に、固定部、係合部、および連結部からなる２つの接続部材が対をなして設けられており、スタッド拘束具は、２つの接続部材を繋ぐ繋ぎ部をさらに含む。

【0013】

上述のスタッド拘束具を、単体で提供してもよい。

【発明の効果】

【0014】

本発明によれば、遮音性能を維持しながら、耐火性能を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【0015】

【図1】本発明の実施の形態に係る乾式壁の内部構造を模式的に示す正面図である。

【図2】本発明の実施の形態に係る乾式壁の基本構造を示す横断面図である。

【図3】本発明の実施の形態に係る乾式壁の基本構造を示す縦断面図である。

【図4】（Ａ），（Ｂ）は、本発明の実施の形態のスタッド拘束具の参考例を示す図である。

【図5】（Ａ），（Ｂ）は、本発明の実施の形態のスタッド拘束具の他の参考例を示す図である。

【図6】本発明の実施の形態１に係るスタッド拘束具の構成例を示す縦断面図である。

【図7】図７に示したスタッド拘束具の要部を拡大して示す模式図である。

【図8】本発明の実施の形態１の変形例１のスタッド拘束具の要部を拡大して示す模式図である。

【図9】本発明の実施の形態１の変形例２のスタッド拘束具の要部を拡大して示す模式図である。

【図10】本発明の実施の形態２に係るスタッド拘束具の構成例を示す断面図である。

【図11】本発明の実施の形態２に係るスタッド拘束具を拡大して示す断面図である。

【図12】本発明の実施の形態２に係るスタッド拘束具の斜視図である。

【図13】本発明の実施の形態２の変形例のスタッド拘束具の構成例を示す断面図である。

【図14】本発明の実施の形態２の変形例のスタッド拘束具の斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0016】

本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。

【0017】

本実施の形態に係る乾式壁は、住宅等の建物内の隣り合う空間（部屋）を仕切る壁であり、建物の界壁（戸境壁）、あるいは、音楽室等の高遮音性が求められる間仕切り壁が想定される。

【0018】

＜基本構造について＞
図１および図２を参照して、本実施の形態に係る乾式壁１の基本構造について説明する。図１は、乾式壁１の内部構造を模式的に示す正面図である。図２は、図１のＩＩ－ＩＩ線に沿う乾式壁１の断面図であり、乾式壁１の基本構造を示す。図１の矢印Ａ１は上下方向（垂直方向）を示し、矢印Ａ２は乾式壁１の左右方向を示す。図２の矢印Ａ３は乾式壁１の奥行き方向（面外方向）を示す。以降の図も同様である。

【0019】

図２を参照して、乾式壁１は、第１空間Ｓ１と第２空間Ｓ２とを仕切る壁である。乾式壁１は、内部に、柱１０と、第１空間Ｓ１側に整列配置された複数の第１のスタッド２１と、第２空間Ｓ２側に整列配置された第２のスタッド２２とを備えている。第１および第２のスタッド２１，２２は、鋼製の下地桟（縦桟）である。以下の説明において、第１のスタッド２１と第２のスタッド２２とを区別する必要がない場合には、これらをスタッド２と称する。

【0020】

本実施の形態におけるスタッド２の形状はＣ形である。スタッド２は、閉鎖面部２０１と、一対の側面部２０２と、閉鎖面部２０１に対面する一対のリップ部２０３とを含む。スタッド２は、一対のリップ部２０３間に開口部を有している。本実施の形態では、リップ部２０３の先端に、閉鎖面部２０１側に折り曲げられた折曲げ片２０４が設けられている。

【0021】

断面視において側面部２０２の幅が閉鎖面部２０１の幅より短い。スタッド２は、乾式壁１の奥行き方向（面外方向）に短辺を配置する弱軸配置構造で配置されている。一例として、スタッド２の横幅寸法（閉鎖面部２０１の幅）は６０～７０ｍｍ程度であり、奥行寸法（側面部２０２の幅）が４０～５０ｍｍである。また、スタッド２の板厚は０．４～０．８ｍｍ程度である。

【0022】

第１空間Ｓ１側の内装面材４が第１のスタッド２１の各々に固定され、第２空間Ｓ２側の内装面材４が第２のスタッド２２の各々の閉鎖面部２０１に固定される。内装面材４は、たとえば二層の石膏ボード４１，４２により構成されている。内装面材４の耐火性能を強化するために、上張の石膏ボード４１は、ガラス繊維等が混入された「網入り強化石膏ボード」であることが望ましい。また、上張の石膏ボード４２の厚みが下張の石膏ボード４１の厚みよりも大きいことが望ましい。

【0023】

スタッド２の説明において、内装面材４の固定面である閉鎖面部２０１を表面といい、リップ部２０３を裏面または背面という。

【0024】

第１のスタッド２１と第２のスタッド２２は、背中合わせとなるように配置されている。具体的には、第１のスタッド２１の裏面（一対のリップ部２０３）と第２のスタッド２２の裏面（一対のリップ部２０３）とが、互いの間に間隔（空間２０）をあけた状態で対面している。第１のスタッド２１と第２のスタッド２２との間隔Ｄ１（図４（Ａ））は、たとえば５ｍｍ以上１０ｍｍ以下の範囲で定められている。なお、左右方向に隣り合うスタッド２間には、グラスウールなどの断熱材（図示せず）が充填されている。

【0025】

図１に示すように、スタッド２は、上下方向に延在しており、上下端部がランナー３１，３２により拘束されている。後述の図３に示されるように、下側のランナー３１は、奥行き方向に２個並べて配置されており、それぞれのランナー３１に第１および第２のスタッド２１，２２の下端部が独立して保持されている。上側のランナー３２も同様に、奥行き方向に２個並べて配置されており、それぞれのランナー３２に第１および第２のスタッド２１，２２の上端部が独立して保持されている。なお、下側のランナー３１は、たとえば床の梁９１等に固定され、上側のランナー３２は、たとえば天井の梁９２等に固定されている。

【0026】

上述のように、第１のスタッド２１と第２のスタッド２２とが、空間２０の分だけ離れた状態で背中合わせで配置されているので、両スタッド２１，２２間における音の伝搬を抑制できる（図２参照）。また、第１空間Ｓ１または第２空間Ｓ２側からの所定以上の荷重に対し、背中合わせの第１のスタッド２１と第２のスタッド２２とが一体となって対抗することができる。そのため、乾式壁１は、高い遮音性能と耐荷重性能とを備えている。

【0027】

一方で、耐火性能に関しては、たとえば第２空間Ｓ２から乾式壁１を加熱する加熱試験を行うと、第２空間Ｓ２に近い方のスタッド２、すなわち第２のスタッド２２が熱膨張し、弓状に変形することが判明した。具体的には、図３の二点鎖線で示すように、第２のスタッド２２の上下方向中央部が加熱側（第２空間Ｓ２側）に突出するような面外変形が見られた。また、第２のスタッド２２の面外変形により内装面材４（石膏ボード４１，４２）の目地が拡大や内装面材４の脱落が見られた。これにより、乾式壁１の内部空間（空気層）への入熱が促進されたため、柱１０の座屈が生じ、所望の耐火性能に至らなかった。

【0028】

他方、上述の加熱試験では非加熱側（第１空間Ｓ１側）に位置する第１のスタッド２１には変形が見られず、健全な状態を保っていることが分かった。そこで、本実施の形態の乾式壁１は、第１および第２のスタッド２１，２２の一方（加熱側のスタッド２）が他方（非加熱側のスタッド２）から離れる方向に変形することを防止または抑制するスタッド拘束具５を備えている。

【0029】

スタッド拘束具５は、第１および第２のスタッド２１，２２の組み合わせごとに設けられている必要はなく、たとえば、内装面材４（下張の石膏ボード４１）の縦目地４ａ（図１）に対応する位置に配置された第１および第２のスタッド２１，２２にのみ設けられていてもよい。また、スタッド拘束具５は、図３に示すように、高さ方向に複数個設けられることが望ましいものの、スタッド２の長手方向中央部Ｐ１のみに設けられていてもよいし、内装面材４（下張の石膏ボード４１）の横目地４ｂに対応する部分Ｐ２にのみ設けられていてもよい。

【0030】

＜スタッド拘束具の構成例および取り付け構造＞
（スタッド拘束具の基本構成について）
はじめに、図４を参照しながらスタッド拘束具５の基本構成について説明する。なお、図４に示すスタッド拘束具５は、本実施の形態の参考例を示し、後述する「振動減衰手段」を備えていない。図４は、本実施の形態の参考例のスタッド拘束具５の取り付け構造を拡大して示す図であり、図４（Ａ），（Ｂ）はそれぞれ、乾式壁１の横断面図および縦断面図である。

【0031】

図４（Ａ）を参照して、スタッド拘束具５は、第１および第２のスタッド２１，２２の両側部に配置される一対の接続部材６１と、一対の接続部材６１を第１および第２のスタッド２１，２２の両側部に固定するための複数（少なくとも４本）のビス８１とを含む。ビス８１は締結部材の一種である。

【0032】

各接続部材６１は、第１のスタッド２１の側部（側面部２０２）に固定される第１領域６１１、第２のスタッド２２の側部（側面部２０２）に固定される第２領域６１２、および、第１領域６１１と第２領域６１２とに連結された第３領域６１３とを一体的に有している。各接続部材６１は、第１のスタッド２１の側部から第２のスタッド２２の側部まで架け渡される金属製の平坦な板材（鋼板）により形成されており、第１領域６１１、第２領域６１２、および第３領域６１３が面一状に配置されている。接続部材６１の平面形状は典型的には矩形形状である。

【0033】

各接続部材６１は、ビス８１によって現場で固定される。ビス８１は、各接続部材６１の第１領域６１１および第２領域６１２と第１および第２のスタッド２１，２２の側部とをそれぞれ締結する。これにより、第１および第２のスタッド２１，２２の各側部が共通の接続部材６１によって接続されるので、第１および第２のスタッド２１，２２が接続部材６１により拘束される。

【0034】

なお、接続部材６１をスタッド２に固定するための締結部材は、ビス８１に限定されず、たとえば接着剤であってもよい。また、締結部材を用いず、スタッド２に接続部材６１を溶接工程してもよい。あるいは、たとえば図５に示すように、スタッド２の両側部に予め設けておいた突起物８２に、接続部材６２を嵌め込むことにより、接続部材６２をスタッド２に固定してもよい。

【0035】

図５の接続部材６２は、図４に示した接続部材６１と同様に平坦な鋼板により形成されており、面一状に配置された第１領域６２１、第２領域６２２、および第３領域６２３を含んでいる。図５の例では、第１および第２のスタッド２１，２２の両側部に突起物８２が設けられており、接続部材６２の第１領域６２１および第２領域６２２の下端縁に、切欠き部６２ａが設けられている。このような構成の場合、現場での取り付け作業を簡略化することができる。

【0036】

参考例では、第１および第２のスタッド２１、２２の両側部に、２つの接続部材６１（または接続部材６２）が対をなして（同じ高さに）設けられている。そのため、たとえば第２空間Ｓ２側からの加熱条件下において第２のスタッド２２が熱膨張したとしても、第２のスタッド２２が第１のスタッド２１に拘束されるので、第２のスタッド２２が第１のスタッド２１から離れる方向に変形することを防止することができる。第１空間Ｓ１側からの加熱条件下においても同様である。そのため、２つの（一対の）接続部材６１を含むスタッド拘束具５を備えることで、第１および第２のスタッド２１，２２間の間隔Ｄ１が広がることを防止できる。その結果、乾式壁１の耐火性能を向上させることができる。

【0037】

一方で、図４（Ａ）に示されるように、接続部材６１は第１および第２のスタッド２１，２２に面接触して配置されているため、スタッド拘束具５の配置箇所においては接続部材６１がサウンドブリッジとなり、たとえば第１空間Ｓ１側からの音が接続部材６１を介して第２空間Ｓ２に伝搬する可能性がある。そのため、単純に、第１および第２のスタッド２１，２２を接続する接続部材６１を設けるだけの構成では、乾式壁１の遮音性能が低下するおそれがある。

【0038】

そこで、以下に説明する各実施の形態のスタッド拘束具は、通常の設置状態（加熱されていない状態）では音の伝搬経路上に隙間を有するように構成されている。

【0039】

（実施の形態１）
図６および図７を参照して、本発明の実施の形態１に係るスタッド拘束具５Ａについて説明する。図６は、本発明の実施の形態１に係るスタッド拘束具５Ａの構成例を示す断面図であり、通常の設置状態を示す。図７は、スタッド拘束具５Ａの要部を拡大して示す図であり、第２のスタッド２２が熱膨張し始めた状態を示す。

【0040】

図６に示されるように、スタッド拘束具５Ａは、第１および第２のスタッド２１，２２の両側部に配置される一対の接続部材６３と、一対の接続部材６３を第１および第２のスタッド２１，２２の両側部に固定するための複数のビス（締結部材）８１とを含む。

【0041】

本実施の形態の接続部材６３は、第１のスタッド２１に固定される第１部材６４と、第２のスタッド２２に固定される第２部材６５とに分割されている点において、上記参考例の接続部材６１と相違する。

【0042】

第１部材６４は、第１のスタッド２１の側部に面接触してビス８１により固定される領域（以下「固定部」という）６４１に加え、被掛止部６４２を有している。被掛止部６４２は、後述の掛止部６５２が引っ掛かけられる部分である。第２部材６５は、第２のスタッド２２の側部に面接触してビス８１により固定される固定部６５１に加え、掛止部６５２を有している。

【0043】

第１部材６４の固定部６４１は参考例の接続部材６１の第１領域６１１に相当する。第２部材６５の固定部６５１は参考例の接続部材６１の第２領域６１２に相当する。第１部材６４の被掛止部６４２および第２部材６５の掛止部６５２が、参考例の接続部材６１の第３領域６１３と同様の機能を果たす。つまり、掛止部６５２が被掛止部６４２に引っ掛かった状態において第１部材６４および第２部材６５は一体となり、第１および第２のスタッド２１，２２を拘束する。

【0044】

ただし、第１部材６４の被掛止部６４２と第２部材６５の掛止部６５２は、通常の設置状態においては非接触であり、両者の間に隙間６３０が設けられている。つまり、スタッド拘束具５Ａは、通常の設置状態において互いに離隔して配置された第１部材６４と第２部材６５とを含む構成である。隙間６３０は接続部材６１の板厚よりも大きいことが望ましく、たとえば１．０ｍｍ以上である。図７に示すように、第１および第２のスタッド２１，２２の一方（たとえば第２のスタッド２２）が熱膨張により他方（たとえば第１のスタッド２１）から離れる方向に変位したことに応じて、第２部材６５の掛止部６５２が第１部材６４の被掛止部６４２に掛止する（引っ掛かって止まる）。

【0045】

被掛止部６４２および掛止部６５２の形状例については図７を参照して説明する。被掛止部６４２は、たとえば、固定部６４１の端部（第２部材６５側の端部）を延伸させた延長領域６４１ａを外側方に略Ｌ字状に折り返すことによって形成されており、第１空間Ｓ１側を指向する屈曲部６４２ａを先端に有している。

【0046】

掛止部６５２は、たとえば、固定部６５１の端部（第１部材６４側の端部）を延伸させた延長領域６５１ａを外側方に略Ｃ字状に折り曲げることによって形成されており、鉤状部６５２ａを先端に有している。鉤状部６５２ａは、被掛止部６４２の屈曲部６４２ａを取り囲むように配置される。

【0047】

通常の設置状態では、乾式壁１の奥行き方向に沿って、被掛止部６４２の屈曲部６４２ａの先端面と掛止部６５２の鉤状部６５２ａの内側面とが互いに対面する。また、鉤状部６５２ａの先端面と屈曲部６４２ａの根本部内側面とが互いに対面する。乾式壁１の奥行き方向に沿って互いに対面する二面間の間隔Ｄ２は、比較的小さいことが望ましく、たとえば２０ｍｍ以下である。

【0048】

上述のように、通常の設置状態においては、第１部材６４の被掛止部６４２と第２部材６５の掛止部６５２との間に隙間６３０が設けられている。これにより、図６に概念的に示すように、たとえば第１空間Ｓ１から第１のスタッド２１を介して第１部材６４に入力した音の振動エネルギーが隙間６３０において減衰するので、接続部材６３がサウンドブリッジとはならず、第１部材６４から第２部材６５への振動の伝達を無くすことができる。したがって、乾式壁１の内部にスタッド拘束具５Ａを配置したとしても、乾式壁１の遮音性能を維持することができる。

【0049】

また、たとえば第２空間Ｓ２側からの加熱条件下において第２のスタッド２２が熱膨張したとしても、第２部材６５の掛止部６５２（鉤状部６５２ａ）が第１部材６４の被掛止部６４２（屈曲部６４２ａ）に即座に掛止する（噛み合う）ため、第１および第２のスタッド２１，２２間の間隔Ｄ１の拡大を最低限（間隔Ｄ２程度）に抑えることができる。第１空間Ｓ１側からの加熱条件下においても同様である。したがって、本実施の形態によれば、加熱側のスタッド２の面外変形を最低限に抑えることができる。また、その結果、内装面材４の脱落等を防止することができる。

【0050】

以上より、スタッド拘束具５Ａを備えた乾式壁１によれば、遮音性能を維持しながら、耐火性能を向上させることができる。なお、本実施の形態のスタッド拘束具５Ａは、Ｃ形のスタッド２だけでなく、開口のない角形スタッドにも適用可能である。この場合、第１のスタッド２１および第２のスタッド２２が強軸配置されていてもよい。

【0051】

また、スタッド拘束具５Ａは、スタッド２の側部以外の箇所（たとえば２つのスタッド２が対面する部分）に固定されてもよい。

【0052】

（変形例１）
図８に示すように、被掛止部６４２と掛止部６５２との間の隙間６３０の全体または一部に、防振ゴムなどの弾性材８３が配置されていてもよい。これにより、被掛止部６４２と掛止部６５２とが噛み合って対抗する際においても、第１および第２のスタッド２１，２２間の振動の伝達を抑制することができる。また、第１部材６４および第２部材６５を予め一体化しておくことも可能となる。

【0053】

このように、隙間６３０は弾性材８３によって埋められていてもよい。

【0054】

（変形例２）
被掛止部６４２および掛止部６５２の形状は、図６および図７に示したような形状に限定されない。たとえば図９に示すように、被掛止部６４２および掛止部６５２が、互いに平行な傾斜部６４２ｂ，６５２ｂを有する構成であってもよい。被掛止部６４２の傾斜部６４２ｂは、固定部６４１に対して鋭角となるように設けられているので、第１のスタッド２１または第２のスタッド２２の熱膨張時に、掛止部６５２の傾斜部６５２ｂが被掛止部６４２の傾斜部６４２ｂに引っ掛かる。

【0055】

図９に示す変形例においても、被掛止部６４２と掛止部６５２との間の隙間６３０の全体または一部に、防振ゴムなどの弾性材８３が配置されていてもよい。

【0056】

（実施の形態２）
図１０～図１２を参照して、本発明の実施の形態２に係るスタッド拘束具５Ｂについて説明する。図１０は、本発明の実施の形態２に係るスタッド拘束具５Ｂの構成例を示す断面図であり、通常の設置状態を示す。図１１は、スタッド拘束具５Ｂを拡大して示す図であり、第２のスタッド２２が熱膨張し始めた状態を示す。図１２は、スタッド拘束具５Ｂの斜視図である。

【0057】

図１０および図１２に示されるように、スタッド拘束具５Ｂは、一対の接続部材７１と、一対の接続部材７１を繋ぐ繋ぎ部７５とを一体的に有する金物によって構成されている。スタッド拘束具５Ｂは、一枚の可撓性を有する鋼板を折り曲げ加工することによって形成されていることが望ましい。スタッド拘束具５Ｂは、スタッド２への取り付け時に後述の係合部７４が弾性的に撓むようにするために、たとえば厚さ１．０ｍｍ以下のばね鋼材（たとえばＳＵＳ３０４－Ｈ）によって形成されている。なお、図面上、スタッド拘束具５Ｂの板厚が大きく誇張されている。スタッド拘束具５Ｂの板厚はスタッド２の板厚よりも小さくてもよい。

【0058】

各接続部材７１は、第１および第２のスタッド２１，２２の一方（たとえば第２のスタッド２２）の側部に固定される固定部７２と、第１および第２のスタッド２１，２２の他方（たとえば第１のスタッド２１）のリップ部２０３の裏側に係合する係合部７４と、固定部７２および係合部７４を連結する連結部７３とを一体的に含む。繋ぎ部７５は、たとえば両接続部材７１の連結部７３間に掛け渡されて、両者を繋ぐ。本実施の形態では、繋ぎ部７５は連結部７３の上下方向一方端部（たとえば下端部）に設けられている。

【0059】

固定部７２は、たとえばＬ字状に形成されており、第２のスタッド２２の側面部２０２に面接触する側板部７２１と、第２のスタッド２２のリップ部２０３に面接触する横板部７２２とを有している。固定部７２の側板部７２１には、ビス８１を挿通するための貫通孔７２ａが予め設けられている。

【0060】

連結部７３は、第１および第２のスタッド２１，２２間の空間２０内を、乾式壁１の奥行方向に沿って延びる。連結部７３は係合部７４の基部７４１と一体となって面一状に延びている。

【0061】

係合部７４は、鉤状に形成されており、リップ部２０３の折曲げ片２０４に係合（掛止）する。係合部７４は、リップ部２０３の折曲げ片２０４に平行な基部７４１と、基部７４１の先端部が外側方に折り返した掛止片７４２とを有している。掛止片７４２は、可撓性（弾性）を有しており、係合部７４はＶ字状の板バネとして機能する。これにより、取り付け作業を容易に行うことができる。

【0062】

ここで、図１０に示されるように、スタッド拘束具５Ｂは、第２のスタッド２２に片持ち支持されており、通常の設置状態において係合部７４および連結部７３は第１のスタッド２１と非接触である。左右の連結部７３間の間隔が一対のリップ部２０３間の間隔よりも十分に小さくなるように、スタッド拘束具５Ｂが形成されている。図１１に示すように、第１および第２のスタッド２１，２２の一方（たとえば第２のスタッド２２）が熱膨張により他方（たとえば第１のスタッド２１）から離れる方向に変位したことに応じて、一対の係合部７４が第１のスタッド２１の一対の折曲げ片２０４に掛止する。

【0063】

なお、製造誤差等を考慮して、係合部７４および連結部７３のうち、リップ部２０３の折曲げ片２０４に対面する部分に、防振ゴムなどの薄型の弾性材（図示せず）を貼り付けておいてもよい。

【0064】

このように、本実施の形態においては、通常の設置状態において、スタッド拘束具５Ｂは第１のスタッド２１に対して非接触とされるため、スタッド拘束具５Ｂがサウンドブリッジとならない（図１０参照）。また、たとえば第２空間Ｓ２側からの加熱条件下において第２のスタッド２２が熱膨張した場合には、スタッド拘束具５Ｂの一対の係合部７４が第１のスタッド２１の折曲げ片２０４に即座に掛止する（噛み合う）ため、第１および第２のスタッド２１，２２間の間隔Ｄ１の拡大を最低限に抑えることができる。第１空間Ｓ１側からの加熱条件下においても同様である。したがって、本実施の形態においても、遮音性能を維持しながら、耐火性能を向上させることができる。

【0065】

遮音性能を考慮すると、スタッド拘束具５Ｂと第１のスタッド２１とは完全に非接触であることが望ましいものの、製造誤差等によってスタッド拘束具５Ｂの一部と第１のスタッド２１とが接触することは許容の範囲である。たとえば、スタッド拘束具５Ｂの連結部７３と第１のスタッド２１の折曲げ片２０４との間に隙間が殆ど存在しない状態であってもよい。

【0066】

なお、スタッド拘束具５Ｂは、繋ぎ部７５を有し、一つの金物により形成されていることが望ましいものの、繋ぎ部７５を有さず、二つに分割されていてもよい。つまり、２つの別体の接続部材７１によってスタッド拘束具５Ｂが構成されてもよい。スタッド拘束具５Ｂは、固定部７２と、係合部７４と、連結部７３とを一体的に含んでいればよい。

【0067】

（変形例）
スタッド拘束具５Ｂは、ビス８１によって固定部７２が固定されるものであるが、ビス８１を用いず着脱可能としてもよい。この場合の構成例を図１３および図１４に示す。図１３は、本実施の形態の変形例のスタッド拘束具５Ｃの構成例を示す断面図であり、通常の設置状態を示す。図１４は、スタッド拘束具５Ｃの斜視図である。

【0068】

スタッド拘束具５Ｃは、繋ぎ部７５を有し、一つの金物により形成されている。スタッド拘束具５Ｃは、上記固定部７２に代えて固定部７６を有している。固定部７６は、連結部７３に連なる縦板部７６１と、連結部７３に交差する横板部７６３と、縦板部７６１の端部に設けられた三角形状の支持部７６２とを含む。支持部７６２は、横板部７６３と平行な支持面７６０を有している。

【0069】

設置状態において、折曲げ片２０４を有するリップ部２０３が、横板部７６３と支持部７６２の支持面７６０とに挟持される。固定部７６は、折曲げ片２０４を有するリップ部２０３との摩擦力によってスタッド２に固定される。

【0070】

スタッド拘束具５Ｃの材料である鋼板は可撓性を有している。そのため、スタッド拘束具５Ｃを取り付ける際には、左右の縦板部７６１が互いに近づく方向に撓ませることで、第２のスタッド２２のリップ部２０３間の開口に支持部７６２を通すことができる。また、縦板部７６１の復元力によって支持部７６２を折曲げ片２０４に交差するように配置することができる。これにより、固定部７６が第２のスタッド２２に固定される。

【0071】

スタッド拘束具５Ｃの取り付けは、たとえば、第１のスタッド２１がランナー３１，３２に設置される前に、行われてもよい。具体的には、ランナー３１，３２に第２のスタッド２２が設置された状態で、スタッド拘束具５Ｃの固定部７６を第２のスタッド２２に固定し、その後、スタッド拘束具５Ｃの係合部７４の掛止片７４２にリップ部２０３を近づけ、リップ部２０３で掛止片７４２を押し下げながら第１のスタッド２１をランナー３１，３２に設置してもよい。

【0072】

あるいは、スタッド拘束具５Ｃの高さ寸法（上下方向長さ）が比較的短い場合には、スタッド拘束具５Ｃを略９０℃傾けた状態で、互いに対面する２つのスタッド２の開口部に固定部７６および掛止片７４２を挿入し、挿入した後でスタッド拘束具５Ｃを回転させて元の姿勢に戻してもよい。

【0073】

以上説明した各実施の形態によれば、通常の設置状態（加熱されていない状態）では音の伝搬経路上に隙間を有するように、スタッド拘束具が構成されているので、乾式壁１の内部にスタッド拘束具を設けることによる遮音性能の低下を抑制することができる。すなわち、スタッド拘束具によって第１のスタッド２１および第２のスタッド２２の一方が他方から離れる方向に変形することを防止または抑制するとともに、スタッド拘束具を介した第１のスタッド２１および第２のスタッド２２間の振動エネルギーの伝達を抑制することができる。したがって、各実施の形態の乾式壁１によれば、遮音性能を維持しながら、耐火性能を向上させることができる。

【0074】

今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【符号の説明】

【0075】

１ 乾式壁、２，２１，２２ スタッド、４ 内装面材、５，５Ａ，５Ｂ，５Ｃ スタッド拘束具、６１，６２，６３，７１ 接続部材、６４ 第１部材、６５ 第２部材、７２，７６ 固定部、７３ 連結部、７４ 係合部、７５ 繋ぎ部、８３ 弾性材、６３０ 隙間、６４１，６５１ 固定部、６４２ 被掛止部、６５２ 掛止部、Ｓ１ 第１空間、Ｓ２ 第２空間。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】