(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102569
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240724BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20240724BHJP
H02K 5/06 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H02K3/34 B
H02K3/46 B
H02K5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006551
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯村 翼
(72)【発明者】
【氏名】須藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】石坂 和也
【テーマコード(参考)】
5H604
5H605
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DB01
5H604PB03
5H604QA01
5H604QA06
5H605AA01
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC03
5H605DD03
5H605DD12
5H605EA02
5H605GG06
5H605GG16
(57)【要約】
【課題】多極モータであってもインシュレータを精度良く容易に位置決めすることが可能なモータ装置を提供する。
【解決手段】ステータ20と、ステータ20に対して回転するロータ30と、を備えたSRモータ10であって、ステータ20は、ステータコア本体21aと、ステータコア本体21aの周方向に並んで設けられ、ステータコア本体21aから径方向に突出された合計12個のティース21bと、これらのティース21bにそれぞれ装着され、コイルCLが巻装された合計12個のインシュレータ23と、を有し、ステータ20の軸方向におけるインシュレータ23の一方側に、それぞれのインシュレータ23が固定され、インシュレータ23のティース21bに対する位置決めを行う位置決め部材24が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
を備えたモータ装置であって、
前記ステータは、
環状のコア本体と、
前記コア本体の周方向に並んで設けられ、前記コア本体から径方向に突出された複数のティースと、
複数の前記ティースにそれぞれ装着され、コイルが巻装された複数のインシュレータと、
を有し、
前記ステータの軸方向における前記インシュレータの一方側に、それぞれの前記インシュレータが固定され、前記インシュレータの前記ティースに対する位置決めを行う位置決め部材が設けられている、
モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記インシュレータは、前記ステータの径方向において前記位置決め部材に向けて突出された第1固定部を備え、
前記位置決め部材は、前記ステータの径方向において前記インシュレータに向けて突出された第2固定部を備え、
前記第1固定部および前記第2固定部は、締結部材により互いに固定されている、
モータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ装置において、
前記第1固定部は、前記ステータの径方向における前記第2固定部との対向部に第1テーパ部を備え、
前記第2固定部は、前記ステータの径方向における前記第1固定部との対向部に第2テーパ部を備え、
前記第2テーパ部は、前記第1テーパ部を、前記ステータの径方向に押圧している、
モータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記ステータの軸方向における前記インシュレータの他方側は、カバー部材により覆われており、
前記カバー部材は、前記インシュレータとの対向部分に環状凸部を備え、
前記インシュレータは、前記カバー部材との対向部分に前記環状凸部が入り込む凹部を有している、
モータ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のモータ装置において、
前記凹部の内側に、前記環状凸部を前記ステータの径方向から押圧する押圧突起が設けられている、
モータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよびロータを備えたモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ロータに永久磁石を設けることなく、駆動力を発生可能なスイッチトリラクタンスモータ(モータ装置)が記載されている。特許文献1に記載されたモータ装置は、環状のステータを備えており、当該ステータの径方向内側には、合計6つのステータティース(ティース)が一体に設けられている。
【0003】
それぞれのティースには、コイルが巻装されたコイルボビン(インシュレータ)が装着されている。そして、インシュレータがティースに対してずれないようにするために、1つのインシュレータを2つの金属ストッパで固定している。これらの金属ストッパは、その一端側がインシュレータに引っ掛けられ、その他端側がブラケットをステータに固定するための取付ボルトに支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載されたモータ装置では、1つのインシュレータを固定するのに2つの金属ストッパが必要となる。したがって、特に、ティースの数が多い多極モータ(例えば8極12スロット型等)においては、部品点数の増加が避けられず、かつ組み立て作業性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、多極モータであってもインシュレータを精度良く容易に位置決めすることが可能なモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、ステータと、前記ステータに対して回転するロータと、を備えたモータ装置であって、前記ステータは、環状のコア本体と、前記コア本体の周方向に並んで設けられ、前記コア本体から径方向に突出された複数のティースと、複数の前記ティースにそれぞれ装着され、コイルが巻装された複数のインシュレータと、を有し、前記ステータの軸方向における前記インシュレータの一方側に、それぞれの前記インシュレータが固定され、前記インシュレータの前記ティースに対する位置決めを行う位置決め部材が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のインシュレータを単一の位置決め部材に固定することにより、それぞれのインシュレータをティースに対して精度良く位置決めすることが可能となる。これにより、部品点数を削減することができ、ひいては多極モータであっても組み立て作業性の低下を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1のSRモータ全体を示す斜視図である。
【
図2】
図1のSRモータの回転軸に沿う断面図である。
【
図15】SRモータの組み立て手順1を説明する斜視図である。
【
図16】(a),(b),(c)は、SRモータの組み立て手順2を説明する平面図である。
【
図17】SRモータの組み立て手順3を説明する斜視図である。
【
図18】SRモータの組み立て手順4を説明する斜視図である。
【
図19】実施の形態2のSRモータの
図4に対応した拡大断面図である。
【
図20】(a),(b)は、実施の形態3のSRモータの
図4のH-H線に対応した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1は実施の形態1のSRモータ全体を示す斜視図を、
図2は
図1のSRモータの回転軸に沿う断面図を、
図3は
図2の破線円A部の拡大断面図を、
図4は
図2の破線円B部の拡大断面図を、
図5はフロントカバーの内側を示す斜視図を、
図6はステータおよびロータを示す斜視図を、
図7はステータのみを示す
図6のC矢視図を、
図8はステータのみを示す
図6のD矢視図を、
図9はステータコアを示す斜視図を、
図10はコイルユニットを示す斜視図を、
図11は
図10のE矢視図を、
図12は
図11のF-F線に沿う断面図を、
図13は
図11のG-G線に沿う断面図を、
図14は位置決め部材を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0012】
[SRモータの概要]
図1および
図2に示されるSRモータ10は、所謂スイッチトリラクタンスモータ(Switched Reluctance Motor)であり、本発明におけるモータ装置に相当する。本実施の形態に係るSRモータ10は、例えば、電動スクーターや電動カート等の車両の駆動源に用いられる。具体的には、SRモータ10は、略円柱状に形成されており、その外郭は、筒状ケース11,リアカバー12およびフロントカバー13により形成されている。
【0013】
図2に示されるように、筒状ケース11の内部には、ステータ20およびロータ30が収容されている。ステータ20は、筒状ケース11の内周壁11aに固定されており、ロータ30は、第1,第2ボールベアリングBB1,BB2を介して、リアカバー12およびフロントカバー13に回転自在に支持されている。そして、ステータ20とロータ30との間には、環状の微小隙間(エアギャップ)AGが形成されており、これにより、ロータ30はステータ20に対して回転自在となっている。
【0014】
[筒状ケース]
筒状ケース11は、溶融されたアルミ材料を射出成形等することで略筒状に形成されている。このように、筒状ケース11をアルミ製とすることで、軽量化および放熱性の向上が図られている。また、筒状ケース11の径方向外側には、表面積を増やしてさらに放熱性を向上させるべく、複数の冷却フィン11bが一体に設けられている。これらの冷却フィン11bは、筒状ケース11の周方向に略環状となるように延び、かつ筒状ケース11の軸方向に所定間隔で並んでいる。
【0015】
なお、
図2に示されるように、複数の冷却フィン11bは、筒状ケース11の軸方向においてステータ20が設けられる部分に配置されている。これにより、ステータ20が発生した熱を、筒状ケース11の外部に効率良く放熱可能としている。
【0016】
筒状ケース11の軸方向一側(
図2の右側)には、環状の第1ケース端面11cが設けられ、当該第1ケース端面11cには、溶接や固定ねじ等(図示せず)により、リアカバー12が固定されている。
【0017】
一方、筒状ケース11の軸方向他側(
図2の左側)には、環状の第2ケース端面11dが設けられ、当該第2ケース端面11dには、合計6つの雌ねじ11eが設けられている。これらの雌ねじ11eは、筒状ケース11の周方向に等間隔(60°間隔)で配置され、かつ軸方向に延びている。そして、それぞれの雌ねじ11eには、フロントカバー13を筒状ケース11に固定するための固定ボルトBTが、それぞれねじ結合される。
【0018】
このように、筒状ケース11の軸方向両側は、リアカバー12およびフロントカバー13によりそれぞれ覆われている。これにより、筒状ケース11の内部に埃等が進入することが防止される。
【0019】
[リアカバー]
図1および
図2に示されるように、リアカバー12は、溶融されたアルミ材料を射出成形等することで、略円盤状に形成されている。これによっても、SRモータ10全体の軽量化が図られている。
【0020】
リアカバー12は、リアカバー本体12aを備えている。また、リアカバー本体12aの中心部分には、略お椀状に形成された第1ベアリング保持部12bが一体に設けられている。第1ベアリング保持部12bは、第1ボールベアリングBB1を保持している。具体的には、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1が、第1ベアリング保持部12bに装着されている。
【0021】
さらに、リアカバー12には、中空の軸端収容室12cが設けられている。軸端収容室12cは、リアカバー本体12aと第1ベアリング保持部12bとで囲まれて形成されている。軸端収容室12cには、回転軸31の軸方向一端側に固定されたセンサマグネットSMが収容されている。さらには、軸端収容室12cには、センサマグネットSMと対向する磁気抵抗素子(ホールセンサ等)が実装されたセンサ基板(図示せず)が収容されている。
【0022】
これにより、車両側に設けられたコントローラ(図示せず)は、回転軸31の回転状態を把握しつつ、当該回転状態に基づいてロータ30の回転方向や回転数(回転状態)を精度良く制御する。
【0023】
[フロントカバー]
図1ないし
図3および
図5に示されるように、フロントカバー13は、溶融されたアルミ材料を射出成形等することで、略円盤状に形成されている。これによっても、SRモータ10全体の軽量化が図られている。
【0024】
フロントカバー13は、本発明におけるカバー部材に相当し、ステータ20の軸方向におけるインシュレータ23の他方側(
図2の左側)を覆っている。フロントカバー13は、フロントカバー本体13aを備えており、当該フロントカバー本体13aの中心部分には、略筒状に形成された第2ベアリング保持部13bが一体に設けられている。第2ベアリング保持部13bは、第2ボールベアリングBB2を保持している。具体的には、第2ボールベアリングBB2の外輪OR2が、第2ベアリング保持部13bに装着されている。
【0025】
ここで、第2ボールベアリングBB2は、回転軸31の軸方向他端側、具体的には、比較的大きな負荷(横力)が掛かる出力側を回転自在に支持する。そのため、第1ボールベアリングBB1よりも大型のものを採用している。よって、第2ボールベアリングBB2の第2ベアリング保持部13bからの外れを防止すべく、第2ベアリング保持部13bには、略円板状に形成された抜け止め板13cが取り付けられている。なお、抜け止め板13cは、合計6つの固定ねじS(
図18参照)をねじ穴13d(
図5参照)にねじ結合することで、第2ベアリング保持部13bに固定されている。
【0026】
さらに、フロントカバー本体13aの径方向外側には、筒状ケース11の第2ケース端面11dに突き当てられる環状縁部13eが一体に設けられている。環状縁部13eには、合計6つのボルト挿通穴13fが設けられ、これらのボルト挿通穴13fは、フロントカバー13の周方向に等間隔(60°間隔)で配置されている。これにより、フロントカバー13は、筒状ケース11に対して、合計6つの固定ボルトBTにより強固に固定される。
【0027】
また、フロントカバー本体13aの内側で、かつフロントカバー13の径方向における第2ベアリング保持部13bと環状縁部13eとの間には、環状凸部13gが一体に設けられている。この環状凸部13gは、フロントカバー13のインシュレータ23との対向部分に配置され、第2ベアリング保持部13bおよび環状縁部13eと同様に、筒状ケース11に向けて所定の高さで突出されている。
【0028】
具体的には、
図2に示されるように、環状凸部13gの突出高さh1は、第2ベアリング保持部13bおよび環状縁部13eの突出高さh2よりも、若干小さくなっている(h1<h2)。これにより、環状凸部13gが入り込む凹溝23kを備えたコイルユニット22(
図10参照)のそれぞれを、フロントカバー13の内側に入り込むように配置可能となっている(
図2および
図3参照)。これにより、SRモータ10の軸長が長くなることが抑えられている。
【0029】
[ロータ]
図2に示されるように、リアカバー12およびフロントカバー13は、第1ボールベアリングBB1および第2ボールベアリングBB2を介して、ロータ30を回転自在に支持している。
【0030】
図2および
図6に示されるように、ロータ30は、丸綱棒を切削加工等することで、軸方向に段付き形状となった回転軸31を備えている。回転軸31には、その軸方向において略半分の部分を占める大径部31aが設けられ、当該大径部31aには、ロータコア32が固定されている。また、回転軸31の軸方向一端側(
図2の右側)には、大径部31aよりも小径となった第1小径部31bが一体に設けられ、当該第1小径部31bには、第1ボールベアリングBB1の内輪IR1が装着されている。
【0031】
さらに、回転軸31の軸方向他端側(
図2の左側)には、大径部31aよりも小径でかつ第1小径部31bよりも大径となった第2小径部31cが一体に設けられている。この第2小径部31cには、第2ボールベアリングBB2の内輪IR2が装着されている。また、第2小径部31cの軸方向他端側には、さらに小径となった出力部31dが一体に設けられ、当該出力部31dには、車両の車輪を駆動するローラーチェーンが巻き掛けられるスプロケット(図示せず)が固定される。
【0032】
大径部31aに固定されるロータコア32は、
図2および
図6に示されるように、環状のロータコア本体32aと、当該ロータコア本体32aから径方向に突出された合計8つの突極32bと、を備えている。具体的には、合計8つの突極32bは、ロータコア本体32aの径方向外側に突出されている。
【0033】
ロータコア32には永久磁石(マグネット)が設けられておらず、薄肉鋼板(強磁性体)を複数枚積層して形成されている。それぞれの突極32bは、ロータコア本体32aの周方向に等間隔(45°間隔)に並んで設けられ、かつ突極32bの先端側は、ロータコア32の径方向において、ステータ20を形成する合計12個のティース21bと対向している。すなわち、本実施の形態に係るSRモータ10は、8極12スロット型のSRモータとなっている。
【0034】
[ステータ]
図6ないし
図8に示されるように、ステータ20は、ステータコア21と、合計12個のコイルユニット22と、それぞれのコイルユニット22をステータコア21に対して位置決めするための単一の(1個の)位置決め部材24と、を備えている。
【0035】
[ステータコア]
図9に示されるように、ステータコア21は、環状のステータコア本体21aと、当該ステータコア本体21aから径方向に突出された複数(合計12個)のティース21bと、を備えている。具体的には、合計12個のティース21bは、ステータコア本体21aの周方向に並んで設けられ、ステータコア本体21aの内側に突出されている。なお、ステータコア本体21aは、本発明におけるコア本体に相当する。
【0036】
ステータコア21は、薄肉鋼板(強磁性体)を複数枚積層して形成されている。それぞれのティース21bは、ステータコア本体21aの径方向内側に一体に設けられ、かつステータコア本体21aの周方向に等間隔(30°間隔)に並んで設けられている。そして、ティース21bの先端側は、ステータコア21の径方向において、ロータコア32を形成する合計8つの突極32b(
図4参照)と対向している。
【0037】
また、ステータコア21の周方向において、隣り合うティース21bの間には、スロットSLが設けられている。これらのスロットSLには、コイルユニット22を形成するコイルCLが、隣り合うスロットSLを跨ぐようにして配置されている。すなわち、スロットSLの総数は、ティース21bの総数(12個)と一致している。ここで、
図7および
図8では、コイルCLの配置状態を分かり易くするために、当該コイルCLを網掛けで示している。
【0038】
[コイルユニット]
合計12個のティース21bには、それぞれ個別にコイルユニット22が装着されている。すなわち、SRモータ10には、複数(合計12個)のコイルユニット22が設けられている。コイルユニット22は、いずれも同じものであり、
図10ないし
図13に示されるように、プラスチック等の樹脂材料(絶縁体)を射出成形することで所定形状に形成されたインシュレータ23と、当該インシュレータ23に対して集中巻きにより巻装されたコイルCLと、を備えている。
【0039】
ここで、コイルCLは、
図13に示されるように、断面が略長方形に形成された純銅製の平角線からなり、これにより十分な占積率を確保している。したがって、平角線からなるコイルCLは、SRモータ10の小型化にも貢献している。なお、
図10および
図11においても、コイルCLの配置状態を分かり易くするために、当該コイルCLを網掛けで示している。
【0040】
[インシュレータ]
インシュレータ23は、コイルCLが巻装されるコイル巻装部23aを備えている。コイル巻装部23aは、
図12および
図13に示されるように、中空の略直方体形状に形成されており、コイル巻装部23aの内側に、ティース21bが入り込んで装着される。つまり、インシュレータ23は、それぞれのティース21bに装着されており、コイルCLは、絶縁体であるコイル巻装部23aを介してティース21bに巻装されている。なお、コイル巻装部23aは、インシュレータ23を形成する部分の中でも薄肉であり、これによりコイルユニット22が大型化して、コイルCLの占積率が低下することを抑制している。
【0041】
図11に示されるように、ステータコア21の径方向(図中左右方向)におけるコイル巻装部23aの内側(図中左側)には、コイルCLがコイル巻装部23aの内側に倒れたり脱落したりするのを防止する内側壁部23bが一体に設けられている。内側壁部23bは、コイル巻装部23aを囲うように設けられ、具体的には、コイル巻装部23aからステータコア21の軸方向(図中上下方向)および周方向(図中奥行方向)に広がるように、鍔状に形成されている。
【0042】
また、内側壁部23bの長手方向一側(図中下側)には、ステータコア21の径方向内側(図中左側)に突出するようにして、第1固定部23cが一体に設けられている。つまり、第1固定部23cは、
図7および
図8に示されるように、ステータ20の径方向において、位置決め部材24に向けて突出されている。そして、第1固定部23cには、六角ボルトHBが挿通されるボルト穴23dが設けられている。なお、六角ボルトHBは、本発明における締結部材に相当する。
【0043】
ボルト穴23dは、インシュレータ23の長手方向に貫通しており、その内部には金属製のカラー部材23eが装着されている。これにより、六角ボルトHBの締め付け荷重が樹脂製の第1固定部23cに伝達されることが抑制され、樹脂製のインシュレータ23が損傷することを防止している。また、カラー部材23eを設けることで、六角ボルトHBの弛み止めにもなる。
【0044】
なお、第1固定部23cには、ボルト穴23dを挟むようにして、一対の補強リブRBが一体に設けられている(
図8参照)。これにより、第1固定部23cの剛性が高められ、コイルユニット22のティース21bに対する位置精度を向上させることができる。
【0045】
さらに、
図11に示されるように、ステータコア21の径方向(図中左右方向)におけるコイル巻装部23aの外側(図中右側)には、コイルCLがコイル巻装部23aの外側に倒れたり脱落したりするのを防止する外側壁部23fが一体に設けられている。外側壁部23fは、コイル巻装部23aを囲うように設けられ、具体的には、コイル巻装部23aからステータコア21の軸方向(図中上下方向)および周方向(図中奥行方向)に広がるように、鍔状に形成されている。
【0046】
また、外側壁部23fには、内側壁部23bに向けて浅く窪んだ窪み部23gが設けられている。この窪み部23gには、コイルユニット22をティース21bに装着した際に、ステータコア本体21aの径方向内側が入り込む。これにより、コイルユニット22は、ステータコア21の軸方向に対して精度良く位置決めされる。
【0047】
外側壁部23fの長手方向他側(図中上側)には、ステータコア21の径方向外側(図中右側)に突出するようにして、フロントカバー固定部23hが一体に設けられている。
図10および
図11に示されるように、フロントカバー固定部23hには、外側壁部23fの長手方向一側(図中下側)に窪むようにして凹溝23kが設けられている。ここで、凹溝23kは、本発明における凹部に相当し、インシュレータ23のフロントカバー13との対向部分に配置されている。そして、凹溝23kには、SRモータ10を組み立てた状態において、フロントカバー13の環状凸部13g(
図5参照)が入り込む。そのために、フロントカバー固定部23hは、環状凸部13gの曲率と同じ曲率の略円弧形状に形成されている。
【0048】
ここで、凹溝23kは、ステータコア21の径方向において、コイルCL側に配置された内壁23mと、コイルCL側とは反対側に配置された外壁23nと、内壁23mと外壁23nとの間の底壁23pに囲まれて形成されている。
【0049】
そして、外壁23nの内壁23mとの対向部分には、一対の押圧突起23rが一体に設けられている。つまり、一対の押圧突起23rは、凹溝23kの内側に設けられている。これらの押圧突起23rは、内壁23mに向けて突出しており、フロントカバー13の環状凸部13gを、ステータコア21の径方向から押圧する機能を有する。よって、コイルユニット22は、フロントカバー13に対してがたつくことなく、ステータコア21の径方向に対して精度良く位置決めされる。
【0050】
なお、凹溝23kの開口側(
図10の上側)には、当該凹溝23kに対して環状凸部13gを入り易くすべく、一対のテーパ部TPが設けられている。具体的には、一方のテーパ部TPは内壁23mに一体に設けられ、他方のテーパ部TPは外壁23nに一体に設けられている。これにより、SRモータ10の組み立て性向上が図られている。
【0051】
[位置決め部材]
図7および
図8に示されるように、合計12個のコイルユニット22は、合計12個のティース21bに対して、単一の位置決め部材24により位置決めされている。つまり、位置決め部材24は、それぞれのインシュレータ23をそれぞれのティース21bに対して位置決めを行う機能を有しており、当該位置決め部材24には、それぞれのインシュレータ23が固定される。具体的には、位置決め部材24は、ステータ20の軸方向におけるインシュレータ23の一方側(
図2の右側)に配置されている。
【0052】
図14に示されるように、位置決め部材24は、溶融されたアルミ材料を射出成形等することで略環状に形成されている。そして、位置決め部材24は、環状本体24aと、当該環状本体24aからその径方向外側に放射状に突出された合計12個の第2固定部24bと、を備えている。つまり、
図7に示されるように、第2固定部24bは、ステータ20の径方向において、インシュレータ23に向けて突出されている。
【0053】
ここで、合計12個の第2固定部24bは、平面視で略台形形状に形成されており、環状本体24aの周方向に等間隔(30°間隔)で並んで設けられている。また、位置決め部材24の周方向における第2固定部24bの幅寸法W1は、隣り合うコイルユニット22の第1固定部23cの間の寸法W2(
図15参照)よりも若干小さくなっている(W1<W2)。これにより、ステータ20の軸方向における第1固定部23cのステータコア21側に、位置決め部材24を組み付けられるようにしている(
図2および
図4参照)。
【0054】
さらに、位置決め部材24の径方向において、第2固定部24bの先端側、つまり第2固定部24bの環状本体24a側とは反対側には、一対の円弧状部24cが設けられている。これらの円弧状部24cは、位置決め部材24の周方向において、第2固定部24bの両側に配置されている。そして、円弧状部24cは、ティース21bに装着されたコイルユニット22に対して、位置決め部材24をインシュレータ23に引っ掛かり難くして、インシュレータ23に対して位置決め部材24を容易に回転できるようにする機能を有している。
【0055】
また、合計12個の第2固定部24bには、雌ねじ部24dがそれぞれ設けられている。これらの雌ねじ部24dは、位置決め部材24の板厚方向に貫通して設けられ、それぞれの雌ねじ部24dには、六角ボルトHB(
図8参照)がねじ結合される。具体的には、ステータ20の軸方向において、インシュレータ23の第1固定部23cに設けられたボルト穴23d(
図10参照)と、位置決め部材24の第2固定部24bに設けられた雌ねじ部24dとを重ね合わせた状態で、六角ボルトHBをねじ止めするようにする。
【0056】
このように、第1固定部23cおよび第2固定部24bは、六角ボルトHBにより互いに固定されている(
図4参照)。したがって、単一の位置決め部材24は、ステータ20の径方向および周方向に対して、合計12個のコイルユニット22を合計12個のティース21bに対して精度良く位置決めすることが可能となっている。
【0057】
[組み立て手順について]
次に、以上のように形成されたSRモータ10の組み立て手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0058】
図15はSRモータの組み立て手順1を説明する斜視図を、
図16(a),(b),(c)はSRモータの組み立て手順2を説明する平面図を、
図17はSRモータの組み立て手順3を説明する斜視図を、
図18はSRモータの組み立て手順4を説明する斜視図をそれぞれ示している。
【0059】
[手順1]
まず、
図15に示されるように、ステータコア21と、合計12個のコイルユニット22を準備する。次いで、コイルユニット22を、1つずつティース21bに装着していく。具体的には、図中破線矢印M1に示されるように、コイルユニット22をステータコア21の軸方向から臨ませて、ステータコア21の径方向内側に差し込む。
【0060】
その後、コイルユニット22の外側壁部23fが設けられる側をティース21bに向けつつ、ティース21bをコイル巻装部23aの内側に差し込む。さらに、コイルユニット22の窪み部23gに、ステータコア本体21aの径方向内側を入れ込む。これにより、1つのコイルユニット22の1つのティース21bへの仮装着が完了する。
【0061】
なお、上述のコイルユニット22のティース21bへの仮装着を、合計12回繰り返す。その際に、それぞれのコイルユニット22のステータコア21に対する差し込み方向を間違えないようにする。本実施の形態では、
図15に示されるように、コイルユニット22の第1固定部23cが、図中上方に来るようにそれぞれの向きを統一している。
【0062】
[手順2]
次に、単一の位置決め部材24を準備し、合計12個のコイルユニット22を、合計12個のティース21bに固定する作業を行う。まず、コイルユニット22が仮装着されたステータコア21に対して、その軸方向から位置決め部材24を臨ませる。このとき、
図15の上方側、つまりコイルユニット22の第1固定部23cが設けられる側から、位置決め部材24を臨ませる。
【0063】
具体的には、
図16(a)に示されるように、ステータコア21の軸方向視で、位置決め部材24の第2固定部24bを、コイルユニット22の第1固定部23cに対して重ねないようにして、それぞれの第2固定部24bを、隣り合う第1固定部23cの間に配置する。つまり、ステータコア21および位置決め部材24を、互いに15°ずれた状態として、第2固定部24bを第1固定部23cに対して重ならないようにする。
【0064】
その後、位置決め部材24をステータコア21の軸方向に移動させて、
図16(b)に示されるように、第1固定部23cの裏側に第2固定部24b(位置決め部材24)を配置する。そして、
図16(b)の破線矢印M2に示されるように、ステータコア21に対して位置決め部材24を回転させる。具体的には、位置決め部材24をステータコア21に対して15°回転させる。これにより、ステータコア21の軸方向において、第1固定部23cのボルト穴23d(
図10参照)と、第2固定部24bの雌ねじ部24d(
図14参照)とが重なる。
【0065】
次に、
図16(c)の破線矢印M3に示されるように、六角ボルトHBをボルト穴23d(カラー部材23e,
図10参照)に差し込み、かつ雌ねじ部24d(
図14参照)にねじ結合させる。これにより、コイルユニット22が単一の位置決め部材24に固定される。そして、この六角ボルトHBのねじ結合作業を、合計12回繰り返す。
【0066】
よって、合計12個のコイルユニット22が単一の位置決め部材24にそれぞれ固定されて、ひいては合計12個のコイルユニット22がそれぞれのティース21bに対して規定の位置に精度良く位置決めされる。
【0067】
[手順3]
次に、コイルユニット22が装着されたステータコア21を、筒状ケース11の内周壁11aに固定する作業を行う。まず、筒状ケース11を高温雰囲気(例えば80℃)に曝して加熱して、筒状ケース11を膨張させる。これに引き続き、
図17の破線矢印M4に示されるように、ステータコア21を筒状ケース11の内周壁11aに嵌め込む。そして、ステータコア21が装着された筒状ケース11を冷却する。これにより、接着剤等を用いることなく、ステータコア21が筒状ケース11に対して確りと固定される。
【0068】
その後、第1ボールベアリングBB1が装着されたリアカバー12を準備して、当該リアカバー12を、
図17の破線矢印M5に示されるように、ステータコア21の第1ケース端面11cに突き当てる。そして、溶接や固定ねじ等(図示せず)により、リアカバー12を第1ケース端面11cに固定する。
【0069】
[手順4]
次に、
図18に示されるように、予め別の製造工程で組み立てられたロータ30を準備し、かつ第2ボールベアリングBB2が装着されたフロントカバー13を準備する。そして、
図18の破線矢印M6に示されるように、ロータ30のセンサマグネットSM側を、筒状ケース11に差し込んで、ステータ20の径方向内側にロータ30を組み込む。
【0070】
その後、
図18の破線矢印M7に示されるように、フロントカバー13の環状凸部13gが設けられる側を、筒状ケース11に臨ませて、フロントカバー13の環状縁部13eを、筒状ケース11の第2ケース端面11dに突き当てる。これにより、環状凸部13gが、全てのコイルユニット22の凹溝23kに入り込み、コイルユニット22のフロントカバー13が設けられる側が、ティース21bに対して精度良く位置決めされる。
【0071】
次いで、合計6つの固定ボルトBT(
図1参照)を、それぞれフロントカバー13のボルト挿通穴13fに挿通しつつ、筒状ケース11の雌ねじ11eにねじ結合させる。これにより、SRモータ10の組み立てが完了する。
【0072】
ここで、本実施の形態のSRモータ10は、接着剤を用いることなく、ステータコア21を筒状ケース11に固定したり、コイルユニット22をティース21bに固定したりしている。これにより、接着剤を用いたものに比して、本実施の形態では、以下のように製造時間を短縮できることが判った。
【0073】
すなわち、接着剤を用いるものでは、接着剤が完全に硬化するまでに「約24時間」を要したが、接着剤を用いない本実施の形態では、1個当たり「約30分」で組み立てることができた。したがって、本実施の形態では、製造工程を簡素化して、製造エネルギーの省力化を図ることが可能となる。
【0074】
以上詳述したように、実施の形態1のSRモータ10によれば、複数のインシュレータ23を単一の位置決め部材24に固定することにより、それぞれのインシュレータ23をティース21bに対して精度良く位置決めすることが可能となる。これにより、部品点数を削減することができ、ひいては多極モータであっても組み立て作業性の低下を抑えることが可能となる。また、接着剤を不要にできるので、SRモータ10の組み立てに掛かる作業時間を短縮することが可能となる。
【0075】
また、実施の形態1のSRモータ10によれば、インシュレータ23は、ステータ20の径方向において位置決め部材24に向けて突出された第1固定部23cを備え、位置決め部材24は、ステータ20の径方向においてインシュレータ23に向けて突出された第2固定部24bを有し、第1固定部23cおよび第2固定部24bは、六角ボルトHBにより互いに固定されている。
【0076】
これにより、それぞれのコイルユニット22を、単一の位置決め部材24に対して、それぞれ個別に六角ボルトHBを用いて固定することができ、ひいてはコイルユニット22のそれぞれを、ティース21bに対して精度良く位置決めすることが可能となる。よって、製品毎にSRモータ10の特性(性能)がばらつくことが効果的に抑えられる。
【0077】
さらに、実施の形態1のSRモータ10によれば、ステータ20の軸方向におけるインシュレータ23の他方側は、フロントカバー13により覆われており、フロントカバー13は、インシュレータ23との対向部分に環状凸部13gを備え、インシュレータ23は、フロントカバー13との対向部分に環状凸部13gが入り込む凹溝23kを有している。
【0078】
これにより、ステータ20の軸方向におけるインシュレータ23の他方側においても、ティース21bに対して精度良く位置決めすることが可能となる。また、筒状ケース11にフロントカバー13を装着するだけで済むので、組み立て作業性を低下させることがない。
【0079】
また、実施の形態1のSRモータ10によれば、凹溝23kの内側に、環状凸部13gをステータ20の径方向から押圧する一対の押圧突起23rが設けられているので、それぞれのインシュレータ23(コイルユニット22)が、フロントカバー13に対してがたつくことを効果的に抑えることができる。よって、コイルユニット22のティース21bに対する位置精度を、長期に亘り維持することが可能となる。
【0080】
さらに、実施の形態1のSRモータ10によれば、接着剤を用いることなく製造時間を短縮することができ、ひいては製造工程を簡素化して製造エネルギーの省力化を図ることが可能となる。よって、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することができる。
【0081】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0082】
図19は実施の形態2のSRモータの
図4に対応した拡大断面図を示している。
【0083】
図19に示されるように、実施の形態2のSRモータ(モータ装置)40では、実施の形態1のSRモータ10(
図4参照)に比して、第1固定部23cおよび第2固定部24bの形状が若干異なっている。
【0084】
具体的には、実施の形態2では、第1固定部23cは、ステータ20(
図4参照)の径方向における第2固定部24bとの対向部に、第1テーパ部41を備えている。第1テーパ部41は、ステータ20の径方向に所定角度で傾斜された傾斜面からなり、当該第1テーパ部41は、ステータ20の径方向外側(
図19の上側)に向けて、第1固定部23cの肉厚を徐々に厚くするように傾斜されている。
【0085】
また、実施の形態2では、第2固定部24bは、ステータ20の径方向における第1固定部23cとの対向部に、第2テーパ部42を備えている。具体的には、第2テーパ部42は、ステータ20の径方向に第1テーパ部41と同じ角度で傾斜された傾斜面からなり、当該第2テーパ部42は、ステータ20の径方向外側(
図19の上側)に向けて、第2固定部24bの肉厚を徐々に薄くするように傾斜されている。
【0086】
そして、これらの第1テーパ部41および第2テーパ部42は、SRモータ40を組み立てた状態において、互いに面接触される。そして、
図19の破線矢印M8に示されるように、六角ボルトHBを締め込んで、第2固定部24bが第1固定部23cに近付くことで、第1テーパ部41および第2テーパ部42は互いに摺接する。そして、コイルユニット22(インシュレータ23)は、位置決め部材24により、
図19の破線矢印M9に示されるように、ステータ20の径方向外側に押圧される。つまり、第2テーパ部42は、第1テーパ部41を、ステータ20の径方向に押圧している。
【0087】
以上のように形成された実施の形態2においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2では、六角ボルトHBの締め込みにより、コイルユニット22(インシュレータ23)が、ステータ20の径方向外側に押圧されるので、それぞれのコイルユニット22を、より精度良くティース21b(
図4参照)に対して位置決めすることが可能となる。また、コイルユニット22のティース21bに対するがたつきを、より確実に抑えることが可能となる。
【0088】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0089】
図20(a),(b)は実施の形態3のSRモータの
図4のH-H線に対応した拡大断面図を示している。
【0090】
図20(a),(b)に示されるように、実施の形態3のSRモータ(モータ装置)50では、実施の形態1のSRモータ10(
図4参照)に比して、第1固定部23c(
図4参照)および第2固定部24bの形状が若干異なっている。
【0091】
具体的には、実施の形態3では、第1固定部23cは、ステータ20の径方向における第2固定部24bとの対向部に、テーパ凸部(第1テーパ部)51を備えている。テーパ凸部51は、第1固定部23cに一体に設けられ、位置決め部材24に向けて突出している。また、テーパ凸部51は、ステータ20の周方向に所定角度で傾斜された第1傾斜面SL1を備えている。当該第1傾斜面SL1は、ステータ20の周方向一側(
図20の右側)に向けて、テーパ凸部51の高さを高くするように傾斜されている。
【0092】
また、実施の形態3では、第2固定部24bは、ステータ20の径方向における第1固定部23cとの対向部に、テーパ切欠部(第2テーパ部)52を備えている。テーパ切欠部52は、第2固定部24bの先端側の一部を切り欠いて形成され、ステータ20の径方向において、テーパ凸部51と対向している。また、テーパ切欠部52は、ステータ20の周方向に第1傾斜面SL1と同じ角度で傾斜された第2傾斜面SL2を備えている。当該第2傾斜面SL2は、ステータ20の周方向一側(
図20の右側)に向けて、第2固定部24bの突出高さを低くするように傾斜されている。
【0093】
そして、これらのテーパ凸部51の第1傾斜面SL1およびテーパ切欠部52の第2傾斜面SL2は、SRモータ50を組み立てた状態において、互いに面接触される。具体的には、
図20(a)の破線矢印M10に示されるように、位置決め部材24をステータコア21に対して回転させることで、第1傾斜面SL1および第2傾斜面SL2は互いに摺接する。そして、六角ボルトHBにより第1固定部23cおよび第2固定部24bを互いに固定することで、
図20(b)の破線矢印M11に示されるように、位置決め部材24はコイルユニット22をステータ20の径方向外側に押圧する。つまり、テーパ切欠部52(第2傾斜面SL2)は、テーパ凸部51(第1傾斜面SL1)を、ステータ20の径方向に押圧している。
【0094】
以上のように形成された実施の形態3においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態3では、六角ボルトHBにより第1固定部23cおよび第2固定部24bを互いに固定することで、コイルユニット22(インシュレータ23)が、ステータ20の径方向外側に押圧されるので、実施の形態2と同様に、それぞれのコイルユニット22を、より精度良くティース21b(
図4参照)に対して位置決めすることが可能となる。また、コイルユニット22のティース21bに対するがたつきを、より確実に抑えることが可能となる。
【0095】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態では、SRモータ10,40,50が、電動スクーターや電動カート等の車両の駆動源に適用される例を挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、福祉機器である電動車椅子に搭載される駆動源等にも適用することができる。
【0096】
その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0097】
10:SRモータ(モータ装置),11:筒状ケース,11a:内周壁,11b:冷却フィン,11c:第1ケース端面,11d:第2ケース端面,11e:雌ねじ,12:リアカバー,12a:リアカバー本体,12b:第1ベアリング保持部,12c:軸端収容室,13:フロントカバー(カバー部材),13a:フロントカバー本体,13b:第2ベアリング保持部,13c:抜け止め板,13d:ねじ穴,13e:環状縁部,13f:ボルト挿通穴,13g:環状凸部,20:ステータ,21:ステータコア,21a:ステータコア本体(コア本体),21b:ティース,22:コイルユニット,23:インシュレータ,23a:コイル巻装部,23b:内側壁部,23c:第1固定部,23d:ボルト穴,23e:カラー部材,23f:外側壁部,23g:窪み部,23h:フロントカバー固定部,23k:凹溝(凹部),23m:内壁,23n:外壁,23p:底壁,23r:押圧突起,24:位置決め部材,24a:環状本体,24b:第2固定部,24c:円弧状部,24d:雌ねじ部,30:ロータ,31:回転軸,31a:大径部,31b:第1小径部,31c:第2小径部,31d:出力部,32:ロータコア,32a:ロータコア本体,32b:突極,40:SRモータ(モータ装置),41:第1テーパ部,42:第2テーパ部,50:SRモータ(モータ装置),51:テーパ凸部(第1テーパ部),52:テーパ切欠部(第2テーパ部),BB1:第1ボールベアリング,BB2:第2ボールベアリング,BT:固定ボルト,CL:コイル,HB:六角ボルト(締結部材),IR1,IR2:内輪,OR1,OR2:外輪,RB:補強リブ,S:固定ねじ,SL:スロット,SL1:第1傾斜面,SL2:第2傾斜面,SM:センサマグネット,TP:テーパ部