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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102573
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ビームカプラ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20240724BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G02B6/42
H01S3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006558
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 真之
【テーマコード(参考)】
2H137
5F172
【Fターム(参考)】
2H137AA13
2H137AB05
2H137AB06
2H137BB08
2H137BB14
2H137BC51
2H137CA15A
2H137CA45
2H137CB22
2H137CB28
2H137CB32
2H137CB33
2H137DB14
2H137HA05
5F172NN10
5F172NP06
5F172NP12
5F172NP16
5F172NR12
5F172NR30
5F172NS01
5F172ZA02
(57)【要約】
【課題】高出力レーザーを用いる場合であっても高い伝送品質を維持しつつ、光ファイバーの損傷を回避することが可能なビームカプラを提供する。
【解決手段】ビームカプラは、レーザーの進行方向に配置された光ファイバーに向けてレーザーを入射させるためのビームカプラであって、進行方向における光ファイバーの後方側に配置され、レーザーが通過するアパーチャが形成されたアパーチャ部材と、アパーチャ部材を外周側から囲うとともに、内部に冷媒が流通する流路が形成された冷却部材と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを、該レーザーの進行方向に配置された光ファイバーに向けて入射させるためのビームカプラであって、
前記進行方向における前記光ファイバーの後方側に配置され、前記レーザーが通過するアパーチャが形成されたアパーチャ部材と、
該アパーチャ部材を外周側から囲うとともに、内部に冷媒が流通する流路が形成された冷却部材と、
を備えるビームカプラ。
【請求項2】
前記冷媒の温度を計測する温度計測部と、
前記アパーチャ部材の二次元位置を変化させることで前記光ファイバーに入射する前記レーザーの焦点の二次元位置を調整することが可能な移動部と、
をさらに備える請求項1に記載のビームカプラ。
【請求項3】
前記温度計測部が計測した前記冷媒の温度に基づいて前記レーザーの二次元位置のズレを検知する検知部と、
該検知部が検知したズレと予め定められた基準範囲とを比較する比較判定部と、
該比較判定部によって前記ズレが前記基準範囲外にあると判定された場合に前記移動部を駆動して前記ズレが前記基準範囲内に収まるように調整する駆動部と、
を有する制御装置をさらに備える請求項2に記載のビームカプラ。
【請求項4】
前記レーザーの光路上に配置され、ビーム重心位置、及びビーム径の少なくとも一方を含むレーザー物理量を取得可能なレーザー物理量取得部をさらに備え、
前記制御装置では、前記検知部が前記レーザー物理量に基づいて前記レーザーの三次元位置の前記ズレを検知し、前記比較判定部が、前記ズレと予め定められた前記基準範囲とを比較し、前記駆動部は、前記比較判定部によって前記ズレが前記基準範囲外にあると判定された場合に前記移動部を駆動して前記ズレが前記基準範囲内に収まるように調整する請求項3に記載のビームカプラ。
【請求項5】
レーザーを、該レーザーの進行方向に配置された光ファイバーに向けて入射させるためのビームカプラであって、
前記進行方向における前記光ファイバーの後方側に配置され、前記レーザーが通過するアパーチャが形成されたアパーチャ部材と、
前記アパーチャ部材の三次元位置を変化させることで前記光ファイバーに入射する前記レーザーの焦点の三次元位置を調整することが可能な移動部と、
前記レーザーの光路上に配置され、ビーム重心位置、及びビーム径の少なくとも一方を含むレーザー物理量を取得可能なレーザー物理量取得部と、
前記レーザー物理量取得部が取得した前記レーザー物理量に基づいて前記レーザーの三次元位置のズレを検知する検知部と、該検知部が検知したズレと予め定められた基準範囲とを比較する比較判定部と、該比較判定部によって前記ズレが前記基準範囲外にあると判定された場合に前記移動部を駆動して前記ズレが前記基準範囲内に収まるように調整する駆動部と、を有する制御装置と、
を備えるビームカプラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビームカプラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばレーザー加工装置の周辺では、レーザーを光源から離れた場所に伝送するために光ファイバーと、ビームカプラと、が用いられる。ビームカプラは、一方側の光ファイバーから出射したレーザーを、他方側の光ファイバーに入射させるための光学的な中継機器である。
【0003】
ビームカプラの具体例として、下記特許文献1に記載されたものが知られている。このビームカプラは、一方側の光ファイバーから出射したレーザーをレンズによって収斂させた後、他方側の光ファイバーに入射させる構成を採用している。
【0004】
ここで、高出力レーザーを対象とする場合、一方側の光ファイバーから出射したレーザーの焦点位置にズレを生じることがある。この場合、下記特許文献1に係る装置では、レンズをレーザーの光軸方向に移動させることで、焦点位置の是正を図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6388920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにレンズを用いたビームカプラでは、数kW~数10kWのさらなる高出力レーザーを対象とする場合、熱レンズ効果を生じる虞がある。これにより、レーザーの焦点位置がさらに大きく変化してしまう。その結果、レーザーの伝送品質が低下したり、光ファイバーの損傷を生じたりする虞がある。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、高出力レーザーを用いる場合であっても高い伝送品質を維持しつつ、光ファイバーの損傷を回避することが可能なビームカプラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係るビームカプラは、第一の光ファイバーから出射したレーザーを、該レーザーの進行方向の前方側に間隔をあけて配置された第二の光ファイバーに向けて入射させるためのビームカプラであって、前記進行方向における前記第二の光ファイバーの後方側に配置され、前記レーザーが通過するアパーチャが形成されたアパーチャ部材と、該アパーチャ部材を外周側から囲うとともに、内部に冷媒が流通する流路が形成された冷却部材と、を備える。
【0009】
本開示に係るビームカプラは、第一の光ファイバーから出射したレーザーを、該レーザーの進行方向の前方側に間隔をあけて配置された第二の光ファイバーに向けて入射させるためのビームカプラであって、前記進行方向における前記第二の光ファイバーの後方側に配置され、前記レーザーが通過するアパーチャが形成されたアパーチャ部材と、前記アパーチャ部材の三次元位置を変化させることで前記第二の光ファイバーに入射する前記レーザーの焦点の三次元位置を調整することが可能な移動部と、前記レーザーの光路状に配置され、ビーム重心位置、及びビーム径の少なくとも一方を含むレーザー物理量を取得可能なレーザー物理量取得部と、前記レーザー物理量取得部が取得した前記レーザー物理量に基づいて前記レーザーの三次元位置のズレを検知する検知部と、該検知部が検知したズレと予め定められた基準範囲とを比較する比較判定部と、該比較判定部によって前記ズレが前記基準範囲外にあると判定された場合に前記移動部を駆動して前記ズレが前記基準範囲内に収まるように調整する駆動部と、を有する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高出力レーザーを用いる場合であっても高い伝送品質を維持しつつ、光ファイバーの損傷を回避することが可能なビームカプラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第一実施形態に係るビームカプラの構成を示す断面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るビームカプラをレーザーの進行方向から見た模式図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るビームカプラをレーザーの進行方向から見た模式図であって、レーザーの焦点位置の是正が必要な状態の一例を示す図である。
図4】本開示の第一実施形態に係るビームカプラをレーザーの進行方向から見た模式図であって、レーザーの焦点位置の是正が必要な状態の他の一例を示す図である。
図5】本開示の第二実施形態に係るビームカプラの構成を示す模式図である。
図6】本開示の第二実施形態に係る制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
図7】本開示の第二実施形態に係る制御装置の制御フローを示すフローチャートである。
図8】本開示の第三実施形態に係るビームカプラの構成を示す模式図である。
図9】本開示の第三実施形態に係るビームカプラの変形例を示す模式図である。
図10】本開示の各実施形態に係る制御装置の構成を示すハードウェア構成図である。
図11】本開示の各実施形態に共通するアパーチャ部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下、本開示の第一実施形態に係るビームカプラ1について、図1から図4を参照して説明する。このビームカプラ1は、レーザーLを生成する光源や、その他の光学機器から出射したレーザーLを、光ファイバー2に向けて中継するための光学機器である。
【0013】
図1に示すように、レーザーLは、図示しない光源や光学機器から照射された後、ビームカプラ1を経由して光ファイバー2に入射する。このレーザーLの進行方向を、以下の説明では単に「進行方向」と呼ぶことがある。また、光ファイバー2は、軸線Oを中心とする直径1mm程度の円柱状をなしている。光ファイバー2は、内周側に位置するコア21と、コア21を外周側から覆う筒状の被覆材22と、を有する。コア21は、例えば石英で形成されており、当該コア21の内部に入射した光は乱反射を繰り返しながら、進行方向に伝送される。
【0014】
(ビームカプラ1の構成)
ビームカプラ1は、アパーチャ部材11と、ハウジング12と、冷却部材13と、移動部14と、を備えている。アパーチャ部材11は、軸線Oに直交する面内に広がる板状をなしている。アパーチャ部材11は、軸線O方向から見て、例えば円形をなしている。アパーチャ部材11は、軸線Oを中心とする円形のアパーチャ15(貫通孔)を有する。アパーチャ15の内径は、光ファイバー2の径寸法やその他の仕様に応じて適宜決定されてよい。また、本実施形態ではアパーチャ15は、延在寸法の全域にわたって一定の内径寸法を有している。しかしながら、図11に示すように、アパーチャ15が、進行方向前方側に向かうに従って次第に縮径することでテーパ状をなしていてもよい。
【0015】
ハウジング12は、アパーチャ部材11に一体に連結されている。ハウジング12は、軸線Oを中心とする筒状の筒部31と、この筒部31におけるアパーチャ部材11とは反対側の開口部を閉止する底板部32と、を有する。底板部32の軸線O位置には光ファイバー2が挿通される挿通孔33が形成されている。つまり、ハウジング12は、光ファイバー2を軸線O位置で支持固定する機能も有している。
【0016】
冷却部材13は、レーザーLの照射によって高温となったアパーチャ部材11を冷却するために設けられている。冷却部材13は、軸線Oを中心としてアパーチャ部材11を外周側から覆う環状をなしている。冷却部材13の内部には、冷媒が流通するための流路Fが形成されている。この流路Fの周方向の一部には、冷媒を流路F内に供給するための供給部(図示省略)と、冷媒を外部に排出するための排出部(図示省略)とが設けられている。つまり、冷媒は、流路F内を周方向一方側から他方側に向かって流れる。その中途で、アパーチャ部材11の熱が冷媒に伝播し、当該アパーチャ部材11の温度が低下し、冷媒の温度は上昇する。
【0017】
移動部14は、上記のアパーチャ部材11、及びハウジング12の二次元位置を調整させるために設けられている。つまり、移動部14は、軸線O方向であるZ軸方向に直交するX軸方向と、Z軸方向及びX軸方向に直交するY軸方向に、それぞれ上記のアパーチャ部材11、及びハウジング12を二次元的に移動させることが可能である。
【0018】
(作用効果)
続いて、上記のビームカプラ1の動作の一例について図2から図4を参照して説明する。ビームカプラ1を使用するに当たっては、まず光源やその他の光学機器から、アパーチャ15に向けてレーザーLを照射する。レーザーLは、一例として図1に示したように、進行方向前方側に向かうに従って次第に収斂している(ビーム径が次第に小さくなっている。)。レーザーLの焦点位置が正常な状態にある場合には、図2に示すように、アパーチャ15の内側を軸線O位置(つまり、光ファイバー2の中心軸の位置)でレーザーLが通過する。これにより、光源等から光ファイバー2へのレーザーLの伝送が行われる。
【0019】
一方で、図3に示すように、レーザーLの焦点位置が、進行方向前方側にずれてしまう場合もあり得る。この場合には、同図に模式的に示すように、レーザーLの外周側の一部の成分が、アパーチャ15の端縁部によって遮られることとなる。これにより、アパーチャ15を通過した成分のみが光ファイバー2に入射する。また、図4に示すように、レーザーLの光軸が光ファイバー2の中心軸(つまり、軸線O)から径方向にずれてしまう事態も考えられる。この場合にも、アパーチャ15から外れた成分がアパーチャ15の端縁部によって遮られることとなる。これにより、アパーチャ15を通過した成分のみが光ファイバー2に入射する。
【0020】
これらの状態では、レーザーLの一部を遮ったことによって、アパーチャ部材11は発熱する。すると、冷却部材13によってアパーチャ部材11が冷却される。同時に、冷媒の温度上昇をモニターしておけば、上記のような焦点位置のズレに起因して、レーザーLがアパーチャ部材11に照射された状態となっていることを検知することができる。このような場合には、作業者が移動部14を適宜動作させることによって、アパーチャ部材11の二次元位置を調整し、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を是正することが可能である。
【0021】
以上、説明したように、上記構成によれば、まずレーザーLが、アパーチャ部材11のアパーチャ15を通過する。これにより、例えばレーザーLの焦点位置が光ファイバー2に対して基準位置からずれている場合には、アパーチャ15の端縁によってレーザーLの一部が遮られる。したがって、光ファイバー2には、アパーチャ15を通過した成分のみが入射することになる。これにより、光ファイバー2に異常なレーザーLが入射することによる伝送品質の低下や、光ファイバー2の焼損を回避することができる。また、ビームカプラ1にレンズが用いられていないことから、高出力のレーザーLを適用した場合であっても熱レンズ効果が生じない。したがって、熱レンズ効果の影響でレーザーLの焦点位置がさらにずれてしまう可能性を大きく下げることができる。さらに、熱レンズ効果の影響を考慮して他の補正機器等を設ける必要がないため、装置の製造コストやメンテナンスコストを大幅に下げることが可能となる。加えて、アパーチャ部材11の周囲に冷却部材13が設けられていることから、高出力のレーザーLを用いた場合であっても、アパーチャ部材11を冷媒によって冷却し、ビームカプラ1を安定的に機能させることができる。
【0022】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第一実施形態では、ビームカプラ1が移動部14を備える例について説明した。しかしながら、移動部14は必ずしも設けられている必要はなく、精度等が許容する限りにおいて、作業者がビームカプラ1を移動させることでレーザーLの焦点位置を調整することも可能である。また、アパーチャ15の形状は、必ずしも円形である必要はなく、内周面から径方向外側に向かって凹むスリットを周方向に間隔をあけて複数設けることも可能である。または、アパーチャ15の開口径を可変とするために、既存の光学機器で利用されている羽根式の絞り機構を用いることも可能である。
【0023】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態について、図5から図7を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。図5に示すように、本実施形態に係るビームカプラ1は、第一実施形態で説明した各構成に加えて、温度計測部3と、駆動装置4と、制御装置5と、をさらに備えている。
【0024】
温度計測部3は、上述した冷却部材13の流路Fを流れる冷媒の温度を常態的に、又は間欠的に計測する。温度計測部3が計測した温度の値は、電気信号として制御装置5に送られる。駆動装置4は、制御装置5から送出された信号に基づいて、上述した移動部14を動作させるアクチュエータである。
【0025】
図6に示すように、制御装置5は、検知部51と、比較判定部52と、駆動部53と、記憶部54と、を有する。検知部51は、温度計測部3が計測した冷媒の温度に基づいて、レーザーLの焦点位置のズレを取得・検知する。検知部51がズレを取得するに当たっては、例えば記憶部54に格納された、温度とズレ量との相関関係を示すテーブルが用いられる。
【0026】
比較判定部52は、検知部51が取得した焦点位置のズレが、予め定められた基準範囲内にあるか否かを判定する。比較判定部52によってズレが基準範囲外にあると判定された場合、駆動部53は、駆動装置4に対して信号を送出し、移動部14を動作させる。これにより、アパーチャ部材11の二次元位置が調整され、焦点位置のズレが是正される。なお、上記の基準範囲に関する情報も、記憶部54に予め格納されていることが望ましい。
【0027】
(制御フローについて)
次いで、図7を参照して、制御装置5の制御フローについて説明する。同図に示すように、まずステップS1では、温度計測部3によって冷媒の温度が計測される。計測された温度の値は、電気信号として制御装置5の検知部51に送られる。次いで、ステップS2では、検知部51が、冷媒の温度に基づいて焦点位置のズレを取得する。ステップS3では、このズレが基準範囲内にあるか否かが比較判定部52によって判定される。ステップS3でYesと判定された場合には、再びステップS1からステップS3を繰り返して実行する。一方で、ステップS3でNoと判定された場合には、続くステップS4で、駆動部53が駆動装置4に信号を送ることで、移動部14を動作させる。これにより、アパーチャ部材11の二次元位置が調整され、焦点位置のズレが是正される。その後、焦点位置が基準範囲内に収まるまで、ステップS1からステップS4を繰り返して実行する。
【0028】
(作用効果)
ここで、レーザーLの焦点位置にズレを生じている場合には、アパーチャ部材11にレーザーLの一部が照射させることで当該アパーチャ部材11、及び冷媒の温度が上昇する。温度計測部3によってこの冷媒の温度を計測することで、上記のレーザーLの焦点位置のズレを検知することができる。焦点位置のズレが検知された場合には、移動部14を動作させることでアパーチャ部材11を二次元的に移動させる。これにより、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を是正することが可能となる。特に、kW級のレーザーLを用いる場合、このレーザーLを進行方向から見た外周部(すそ部)が光ファイバー2に入射してしまうと、当該光ファイバー2が焼損してしまう可能性が懸念される。しかしながら、上記構成によれば、アパーチャ15によって、すそ部が遮られるため、光ファイバー2に入射するレーザーLの成分は、常態的に適正化される。これにより、光ファイバー2を長期にわたって安定的に使用し続けることができる。
【0029】
さらに、上記構成によれば、冷媒の温度上昇に基づいて、レーザーLの焦点位置のズレが検知部51によって検知される。このズレが基準範囲内にないと判定された場合には、駆動部53が指令信号を出すことで移動部14が動作し、アパーチャ部材11の二次元位置が調整される。これにより、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を自律的に是正することが可能となる。したがって、レーザーLの焦点位置が連続的に変化するような環境下であっても、この変化に柔軟に追従してアパーチャ部材11の位置を調整することができる。これにより、光ファイバー2への伝送品質をさらに向上させることができる。
【0030】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0031】
<第三実施形態>
続いて、本開示の第三実施形態について、図8を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態に係るビームカプラ1は、第一実施形態で説明した各構成に加えて、レーザー物理量取得部6と、第二実施形態で説明した制御装置5と、をさらに備えている。
【0032】
レーザー物理量取得部6は、レーザーLの物理量として、ビーム径、及びビーム重心位置の少なくとも一方を取得することが可能な機器である。レーザー物理量取得部6は、レーザーLの光路上に設けられた一対のミラー61と、このミラー61で反射されたレーザーLの一部から上記のビーム径やビーム重心位置を取得する複数の取得部本体62と、を有する。取得部本体62が取得したビーム径、及びビーム重心位置は、電気信号として制御装置5の検知部51に送られれる。つまり、レーザー物理量取得部6は、三次元空間におけるレーザーLの焦点位置のズレを検知することが可能である。検知部51では、この情報に基づいて、第二実施形態と同様に、レーザーLの焦点位置のズレを取得する。その後、比較判定部52によって、このズレが基準範囲内にあるか否かが判定される。ズレが基準範囲外であると判定された場合には、駆動部53によって移動部14が動作し、アパーチャ部材11の三次元位置が調整される。これにより、レーザーLの焦点位置が是正される。
【0033】
(作用効果)
上記構成によれば、レーザー物理量取得部6によって取得されたビーム重心位置やビーム径に基づいて、検知部51が焦点の三次元位置のズレを検知する。比較判定部52によってズレが基準範囲外にあると判定された場合には、駆動部53が指令信号を出すことで移動部14が動作し、アパーチャ部材11の三次元位置が調整される。これにより、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を自律的に是正することが可能となる。特に、レーザーLのビーム径やビーム重心位置に基づいて焦点位置のズレを検知することから、冷媒の温度上昇に基づいて焦点位置のズレを検知する場合に比べて応答速度が高い。これにより、レーザーLの焦点位置の是正を迅速かつ円滑に行うことができる。したがって、レーザーLの焦点位置が連続的に変化するような環境下であっても、この変化に柔軟に追従してアパーチャ部材11の位置を調整することができる。これにより、光ファイバー2への伝送品質をさらに向上させることができる。
【0034】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば図9に変形例として示すように、第二実施形態で説明した温度計測部3の計測した温度情報を制御装置5にさらに伝送することも可能である。つまり、第二実施形態と第三実施形態の構成を相互に組み合わせることが可能である。この場合、ビームの焦点位置をモニターするための手段が複数あることから、ビームカプラ1の可用性をさらに向上させることができる。
【0035】
なお、本開示の実施形態における制御装置5の処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0036】
本開示の実施形態における記憶部54、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部54、その他の記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0037】
上述した制御装置5による処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ200が読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータ200が読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータ200の具体例を以下に示す。
【0038】
図6に示すように、コンピュータ200は、CPU101と、メインメモリ102と、ストレージ103と、インターフェース104と、を備える。
例えば、上述の制御装置5はコンピュータ200に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ103に記憶されている。CPU101は、プログラムをストレージ103から読み出してメインメモリ102に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU101は、プログラムに従って、上述した記憶部54に対応する記憶領域をメインメモリ102に確保する。
【0039】
ストレージ103の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ103は、コンピュータ200のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース104または通信回線を介してコンピュータ200に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ200に配信される場合、配信を受けたコンピュータ200が当該プログラムをメインメモリ102に展開し、上記処理を実行してもよい。なお、ストレージ103は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0040】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータ200にすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0041】
なお、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、及びこれらに類する処理装置を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0042】
<付記>
各実施形態に記載のビームカプラ1は、例えば以下のように把握される。
【0043】
(1)第1の態様に係るビームカプラ1は、レーザーLを、該レーザーLの進行方向に配置された光ファイバー2に向けて入射させるためのビームカプラ1であって、前記進行方向における前記光ファイバー2の後方側に配置され、前記レーザーLが通過するアパーチャ15が形成されたアパーチャ部材11と、該アパーチャ部材11を外周側から囲うとともに、内部に冷媒が流通する流路Fが形成された冷却部材13と、を備える。
【0044】
上記構成によれば、まずレーザーLが、アパーチャ部材11のアパーチャ15を通過する。これにより、例えばレーザーLの焦点位置が光ファイバー2に対して基準位置からずれている場合には、アパーチャ15の端縁によってレーザーLの一部が遮られる。したがって、光ファイバー2には、アパーチャ15を通過した成分のみが入射することになる。これにより、光ファイバー2に異常なレーザーLが入射することによる伝送品質の低下や、光ファイバー2の焼損を回避することができる。加えて、冷却部材13が設けられていることから、高出力のレーザーLを用いた場合であっても、アパーチャ部材11を冷媒によって冷却し、ビームカプラ1を安定的に機能させることができる。
【0045】
(2)第2の態様に係るビームカプラ1は、(1)のビームカプラ1であって、前記冷媒の温度を計測する温度計測部3と、前記アパーチャ部材11の二次元位置を変化させることで前記光ファイバー2に入射する前記レーザーLの焦点の二次元位置を調整することが可能な移動部14と、をさらに備える。
【0046】
ここで、レーザーLの焦点位置にズレを生じている場合には、アパーチャ部材11にレーザーLの一部が照射させることで当該アパーチャ部材11、及び冷媒の温度が上昇する。温度計測部3によってこの冷媒の温度を計測することで、上記のレーザーLの焦点位置のズレを検知することができる。焦点位置のズレが検知された場合には、移動部14を動作させることでアパーチャ部材11を二次元的に移動させる。これにより、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を是正することが可能となる。
【0047】
(3)第3の態様に係るビームカプラ1は、(2)のビームカプラ1であって、前記温度計測部3が計測した前記冷媒の温度に基づいて前記焦点の二次元位置のズレを検知する検知部51と、該検知部51が検知したズレと予め定められた基準範囲とを比較する比較判定部52と、該比較判定部52によって前記ズレが前記基準範囲外にあると判定された場合に前記移動部14を駆動して前記ズレが前記基準範囲内に収まるように調整する駆動部53と、を有する制御装置5をさらに備える。
【0048】
上記構成によれば、冷媒の温度上昇に基づいて、レーザーLの焦点位置のズレが検知部51によって検知される。このズレが基準範囲内にないと判定された場合には、駆動部53が指令信号を出すことで移動部14が動作し、アパーチャ部材11の二次元位置が調整される。これにより、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を自律的に是正することが可能となる。
【0049】
(4)第4の態様に係るビームカプラ1は、(3)のビームカプラ1であって、前記レーザーLの光路上に配置され、ビーム重心位置、及びビーム径の少なくとも一方を含むレーザーL物理量を取得可能なレーザー物理量取得部6をさらに備え、前記制御装置5では、前記検知部51が前記レーザーL物理量に基づいて前記焦点の三次元位置の前記ズレを検知し、前記比較判定部52が、前記ズレと予め定められた前記基準範囲とを比較し、前記駆動部53は、前記比較判定部52によって前記ズレが前記基準範囲外にあると判定された場合に前記移動部14を駆動して前記ズレが前記基準範囲内に収まるように調整する。
【0050】
上記構成によれば、レーザー物理量取得部6によって取得されたビーム重心位置やビーム径に基づいて、検知部51が焦点の三次元位置のズレを検知する。比較判定部52によってズレが基準範囲外にあると判定された場合には、駆動部53が指令信号を出すことで移動部14が動作し、アパーチャ部材11の三次元位置が調整される。これにより、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を自律的に是正することが可能となる。特に、レーザーLのビーム径やビーム重心位置に基づいて焦点位置のズレを検知することから、冷媒の温度上昇に基づいて焦点位置のズレを検知する場合に比べて応答速度が高い。これにより、レーザーLの焦点位置の是正を迅速かつ円滑に行うことができる。
【0051】
(5)第5の態様に係るビームカプラ1は、レーザーLを、該レーザーLの進行方向に配置された光ファイバー2に向けて入射させるためのビームカプラ1であって、前記進行方向における前記光ファイバー2の後方側に配置され、前記レーザーLが通過するアパーチャ15が形成されたアパーチャ部材11と、前記アパーチャ部材11の三次元位置を変化させることで前記光ファイバー2に入射する前記レーザーLの焦点の三次元位置を調整することが可能な移動部14と、前記レーザーLの光路上に配置され、ビーム重心位置、及びビーム径の少なくとも一方を含むレーザーL物理量を取得可能なレーザー物理量取得部6と、前記レーザー物理量取得部6が取得した前記レーザーL物理量に基づいて前記焦点の三次元位置のズレを検知する検知部51と、該検知部51が検知したズレと予め定められた基準範囲とを比較する比較判定部52と、該比較判定部52によって前記ズレが前記基準範囲外にあると判定された場合に前記移動部14を駆動して前記ズレが前記基準範囲内に収まるように調整する駆動部53と、を有する制御装置5と、を備える。
【0052】
上記構成によれば、レーザー物理量取得部6によって取得されたビーム重心位置やビーム径に基づいて、検知部51が焦点の三次元位置のズレを検知する。比較判定部52によってズレが基準範囲外にあると判定された場合には、駆動部53が指令信号を出すことで移動部14が動作し、アパーチャ部材11の三次元位置が調整される。これにより、光ファイバー2に入射するレーザーLの焦点位置を自律的に是正することが可能となる。特に、レーザーLのビーム径やビーム重心位置に基づいて焦点位置のズレを検知することから、冷媒の温度上昇に基づいて焦点位置のズレを検知する場合に比べて応答速度が高い。これにより、レーザーLの焦点位置の是正を迅速かつ円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ビームカプラ
2…光ファイバー
3…温度計測部
4…駆動装置
5…制御装置
6…レーザー物理量取得部
11…アパーチャ部材
12…ハウジング
13…冷却部材
14…移動部
15…アパーチャ
21…コア
22…被覆材
31…筒部
32…底板部
33…挿通孔
51…検知部
52…比較判定部
53…駆動部
54…記憶部
61…ミラー
62…取得部本体
101…CPU
102…メインメモリ
103…ストレージ
104…インターフェース
200…コンピュータ
F…流路
L…レーザー
O…軸線
図1
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