(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102578
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
F01P 7/04 20060101AFI20240724BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20240724BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F01P7/04 L
F01P5/06 510
F01P7/04 M
E02F9/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006566
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】岡島 一道
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】より確実に熱交換器の清掃を行うことが可能な作業機械を提供すること。
【解決手段】油圧ショベル1は、エンジン41と、エンジンキー51と、熱交換器と、ファン43と、コントローラ61と、を備える。エンジンキー51は、エンジン41の停止信号c2を出力する。ファン43は、熱交換器を冷却する。コントローラ61は、停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの間に、ファン43の回転を正回転から逆回転に変更する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの停止信号を出力する操作部と、
熱交換器と、
前記熱交換器を冷却するファンと、
前記停止信号が入力されてから前記エンジンを停止するまでの間に、前記ファンの回転を正回転から逆回転に変更するコントローラと、を備えた、
作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記停止信号が入力されてから前記エンジンを停止するまでの間、前記エンジンを通常回転よりも低い低回転数で動作させる、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記エンジンの駆動によって発電する発電機をさらに備え、
前記ファンは、電動ファンであり、
前記電動ファンは、前記発電機によって発電された電気で駆動する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
前記エンジンからの排気ガスを処理する後処理装置を更に備え、
前記コントローラは、前記停止信号が入力されてから前記エンジンを停止するまでの間、前記後処理装置を冷却するために前記エンジンを前記低回転数で動作させる、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記ファン、前記熱交換器、および前記エンジンを収納する車両本体を更に備え、
前記ファンが正回転している場合、前記車両本体の外部から吸引された空気が前記熱交換器を通り、
前記ファンが逆回転している場合、前記車両本体の内部の空気が前記熱交換器を通って外部に排出される、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項6】
前記熱交換器は、前記エンジンの冷却水を冷却するラジエータであり、
前記冷却水の水温を検出する水温センサを更に備え、
前記コントローラは、前記冷却水の温度が所定温度以下の場合、前記ファンの回転を正回転から逆回転に変更し、前記冷却水の温度が所定温度より高い場合、前記ファンの回転を正回転に維持する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項7】
前記熱交換器は、作動油を冷却するオイルクーラであり、
前記作動油の温度を検出する油温センサを更に備え、
前記コントローラは、前記作動油の温度が所定温度以上の場合、前記ファンの回転を正回転から逆回転に変更し、前記作動油の温度が所定温度より高い場合、前記ファンの回転を正回転に維持する、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項8】
前記後処理装置の温度を検出する温度センサを更に備え、
前記コントローラは、前記後処理装置の温度が所定温度以下の場合、または、前記操作部から前記停止信号が入力されてから所定時間が経過した場合、前記エンジンおよび前記ファンを停止する、
請求項4に記載の作業機械。
【請求項9】
前記車両本体は、前記ファンによって空気が吸引または排出される空気口を有し、
前記空気口、前記熱交換器、前記ファン、および前記エンジンの順に並んで配置されている、
請求項5に記載の作業機械。
【請求項10】
エンジンを停止するための停止信号が入力される停止信号入力ステップと、
前記停止信号が入力されてから前記エンジンを停止するまでの間に、熱交換器を冷却するファンの回転を正回転から逆回転に変更する回転変更ステップと、を備えた、
作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械には、各種流体(冷媒等)を冷却するために複数の熱交換器を有する熱交換器ユニットと、熱交換器ユニットに冷却風を供給する冷却ファンが設けられている。熱交換器ユニットには、例えば、エンジンの冷却水が通るラジエータ、油圧アクチュエータを作動させるための作動油が通るオイルクーラ、圧縮された空気が通るアフタークーラ等が配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
作業機械が動作する現場では塵等が多量に浮遊しているため、特許文献1に示す作業機械では、冷却ファンの正回転により熱交換器ユニットに運ばれて付着した塵等を、冷却ファンを逆回転させることによって吹き飛ばしている。具体的には、冷却ファンの正転作動時間が第1所定時間に達した場合に、冷却ファンを第2所定時間逆転させている。また、冷却ファンの正転動作時間が第1所定時間に達していない場合でもスイッチの操作によって冷却ファンを第2所定時間逆回転させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両稼働中に高負荷となる作業を行っている状態では作動油および冷却水の温度が高くなるため、冷却効率が低下する冷却ファンの逆回転を行うことが出来ず、熱交換器の清掃を行うことが出来ない場合があった。
【0006】
本開示は、より確実に熱交換器の清掃を行うことが可能な作業機械、および作業機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様にかかる作業機械は、エンジンと、操作部と、熱交換器と、ファンと、コントローラと、を備える。操作部は、エンジンの停止信号を出力する。ファンは、熱交換器を冷却する。コントローラは、停止信号が入力されてからエンジンを停止するまでの間に、ファンの回転を正回転から逆回転に変更する。
【0008】
本開示の第2の態様にかかる作業機械の制御方法は、停止信号入力ステップと、回転変更ステップと、を備える。停止信号入力ステップは、エンジンを停止するための停止信号が入力される。回転変更ステップは、停止信号が入力されてからエンジンを停止するまでの間に、熱交換器を冷却するファンの回転を正回転から逆回転に変更する
【発明の効果】
【0009】
本開示の態様によれば、より確実に熱交換器の清掃を行うことが可能な作業機械、および作業機械の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルを示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの後方から視た斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルのエンジンルーム内の構成を示す平面図である。
【
図4】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルのエンジンルーム内の構成を示す平面図である。
【
図5】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの制御に関する構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの制御方法を示すフロー図である。
【
図7】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの制御方法を示すフロー図である。
【
図8】本開示の実施形態にかかる油圧ショベルの制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示にかかる作業機械の一例としての油圧ショベルについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0012】
<構成>
(油圧ショベル1の概要)
図1は、本実施の形態の油圧ショベル1の構成を示す模式図である。
【0013】
油圧ショベル1(作業機械の一例)は、車両本体2と、作業機3と、を有する。車両本体2は、
図1に示すように、走行体11と、旋回体12を有している。走行体11は、一対の走行装置11a、11bを有する。各走行装置11a、11bは、履帯11c、11dを有している。エンジン41(後述の
図2参照)からの駆動力によって走行モータが回転して履帯11c、11dが駆動されることによって油圧ショベル1が走行する。
【0014】
旋回体12は、走行体11上に載置されている。旋回体12は、図示しない旋回装置によって上下方向に沿った軸を中心として走行体11に対して旋回可能に構成されている。旋回体12の前部左側位置には、オペレータが運転時に着座する運転席としてのキャブ31が設けられている。キャブ31の内部には、運転席、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。
【0015】
尚、本実施の形態において断りなき場合、前後左右はキャブ31内の運転席を基準として説明する。運転席が正面に正対する方向を前方向(矢印Xf参照)とし、前方向に対向する方向を後方向(矢印Xb参照)とする。運転席が正面に正対したときの側方方向の右側、左側をそれぞれ右方向(矢印Yr参照)、左方向(矢印Yl参照)とする。また、本明細書において「高さ方向」、「鉛直方向」および「水平方向」は、特段記載のない限り、車両本体2が傾斜せずに水平な状態での方向を示している。
【0016】
作業機3は、旋回体12の前部中央位置に取り付けられている。作業機3は、
図1に示すように、ブーム21、アーム22、掘削バケット23を有する。ブーム21の基端部は、旋回体12に回動可能に連結されている。また、ブーム21の先端部はアーム22の基端部に回動可能に連結されている。アーム22の先端部は、掘削バケット23に回動可能に連結されている。掘削バケット23は、その開口が旋回体12の方向(後方)を向くことができるようにアーム22に取り付けられている。掘削バケット23が、このような向きに取り付けられた油圧ショベル1は、バックホウと呼ばれている。
【0017】
ブーム21、アーム22および掘削バケット23のそれぞれに対応するように油圧シリンダ24~26(ブームシリンダ24、アームシリンダ25およびバケットシリンダ26)が配置されている。これらの油圧シリンダ24~26が駆動されることによって作業機3が駆動される。これにより、掘削等の作業が行われる。
【0018】
旋回体12のキャブ31の後側には、エンジンルーム32が配置されている。
図2は、エンジンルーム32の内部構成を模式的に示す斜視図である。
図3は、エンジンルーム32の内部構成を示す油圧ショベル1の平面模式図である。旋回体12は、エンジン41と、熱交換部42と、複数のファン43と、後処理装置44と、を更に有する。
【0019】
図2および
図3に示すように、エンジンルーム32は、エンジン41、熱交換部42、複数のファン43、および排ガスの後処理装置44を収納する。熱交換部42、複数のファン43、およびエンジン41は、左側から右側に向かって順に並んで配置されている。
【0020】
エンジンは、駆動力を発生する。エンジン41は、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。
【0021】
熱交換部42の左側におけるエンジンルーム32の側壁には、空気口32aが配置されている。空気口32aには、ネットが配置されている。エンジン41の右側におけるエンジンルーム32の側壁には、空気口32bが配置されている。空気口32bには、ネットが配置されている。ファン43が正回転すると、
図3の矢印Aに示すように、空気口32aから外部の空気がエンジンルーム32内に取り込まれる。エンジンルーム32内に取り込まれた空気は、熱交換部42およびエンジン41を順に通過して空気口32bから外部に排出される。
【0022】
(熱交換部42)
熱交換部42は、
図3に示すように、オイルクーラ42aと、アフタークーラ42bと、ラジエータ42cと、を有する。これらオイルクーラ42a、アフタークーラ42b、およびラジエータ42cの各々は、熱交換器の一例である。熱交換部42は、少なくとも1つの熱交換器を有していればよい。
【0023】
オイルクーラ42aには、油圧シリンダ24~26等の油圧アクチュエータを作動させるための作動油が供給される。作動油はオイルクーラ42aを通過しながら冷却される。オイルクーラ42aは、
図3に示すように、熱交換部42の前部に配置されている。
【0024】
アフタークーラ42bには、図示しない過給機によって外気が取り込まれて圧縮された圧縮空気が供給される。アフタークーラ42bはエンジン41に接続される。圧縮空気は、アフタークーラ42bを通過しながら冷却され、エンジン41に送られる。アフタークーラ42bは、オイルクーラ42aの後側に配置されている。
【0025】
ラジエータ42cには、エンジン41の冷却水が供給される。供給された冷却水は、ラジエータ42cを通過しながら冷却され、エンジン41に向かって排出される。なお、エンジンの冷却水は、後処理装置44(詳細は後述)にも供給され、後処理装置44を冷却する役割も果たしている。また、エンジン41の冷却水は、エンジン41から駆動力を得て動作する水ポンプ(不図示)によって循環供給される。ラジエータ42cは、アフタークーラ42bの後側に配置されている。
【0026】
オイルクーラ42a、アフタークーラ42b、およびラジエータ42cは、油圧ショベル1の前側から後側に向かって順に並んで配置されている。
【0027】
(ファン43)
図2および
図3に示すように、複数のファン43は、左右方向において、エンジン41と熱交換部42の間に配置されている。ファン43は、電動ファンである。
【0028】
図5は、油圧ショベル1の制御に関する構成を示すブロック図である。なお、
図5では、信号の入出力は点線で示され、動力の伝達は一点鎖線で示され、電力の伝達は実線で示されている。
【0029】
油圧ショベル1は、オルタネータ45(発電機の一例)を有する。オルタネータ45は、エンジン41で発生した動力により電力を発生する。オルタネータ45で発生した電力がファン43に供給される。ファン43は、オルタネータ45で発生した電力によって駆動する。本実施形態では、
図2に示すように、2つファン43が上下方向に沿って並んで配置されている。各々のファン43は、その回転軸が左右方向に平行となるように配置されている。
【0030】
ファン43が正回転すると、
図3の矢印Aに示すように、外部の空気が空気口32aから吸引され、エンジンルーム32の内部に供給される。空気口32aから吸引された空気は、熱交換部42を通過し、熱交換部42を通過する際に、各々の熱交換器において冷却対象流体を冷却する。熱交換部42を通過した空気は、エンジン41を通過して、空気口32bを通ってエンジンルーム32から排出される。
【0031】
このようなファン43の正回転によって、周囲の塵等が空気口32aのメッシュに付着し、空気口32aを通り抜けた塵等が熱交換部42に付着する。本実施形態では、空気口32aおよび熱交換部42に付着した塵等を吹き飛ばすために、エンジンディレイシャットダウン(EDS)作動時にファン43を逆回転する。エンジンディレイシャットダウンとは、エンジンキーをオフ操作した後、後処理装置44が冷却されるまでエンジン41をローアイドル状態に維持し、その後、自動でエンジン41をオフする機能である。ここで、ローアイドル状態とは、エンジンを通常の回転数よりも低い低回転数で動作させる状態をいう。ファン43を逆回転することによって、空気口32aおよび熱交換部42の清掃が行われる。
図4において、逆回転した際の空気の流れる方向が、矢印Bで示されている。
【0032】
なお、逆回転させる際には、複数のファン43の全部を同時に逆回転させてもよいし、所定時間ごとに1つずつ順番に逆回転させてもよい。
【0033】
(後処理装置44)
後処理装置44は、エンジン41からの排気ガスを処理する。後処理装置44は、排気ガスを浄化する。例えば、後処理装置44は、選択触媒と還元剤とを利用して排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を還元して浄化する尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムを含む。後処理装置44では、還元剤としての尿素水(DEF)を選択触媒の上流の排気ガスに噴射し、気化して分解し、アンモニアと二酸化炭素を生成する。生成したアンモニアと選択触媒を組み合わせて、窒素酸化物を窒素と水に変換する。これにより、エンジン41からの排気ガスの処理が行われる。
【0034】
(油圧ショベル1の制御構成)
次に、本実施の形態の油圧ショベル1の制御に関する構成について説明する。
【0035】
油圧ショベル1は、
図5に示すように、エンジンキー51(操作部の一例)と、油温センサ52と、水温センサ53と、後処理装置温度センサ54と、タイマー55と、逆転機能オン・オフスイッチ56と、コントローラ61と、を更に有する。
【0036】
エンジンキー51は、キーを回転させることにより、エンジンのSTART位置と、ACC電源オンの位置と、エンジンのOFF位置の3つの位置をとる。キーがSTART位置に操作された場合、エンジンキー51は、エンジン41の始動信号c1をコントローラ61に送信する。キーがACC位置またはOFF位置に操作された場合、エンジンの停止信号c2をコントローラ61に送信する。
【0037】
油温センサ52は、オイルクーラ42aを通る作動油の温度を検出し、検出値の情報を含む検出信号c3をコントローラ61に出力する。油温センサ52は、例えば、オイルクーラ42aの入口における作動油の温度を検出する。なお、これに限らず、油温センサ52は、オイルクーラ42aの出口における作動油の温度を検出してもよく、更に入口と出口の双方における作動油の温度を検出してもよい。
【0038】
水温センサ53は、ラジエータ42cを通る冷却水の温度を検出し、検出値の情報を含む検出信号c4をコントローラ61に出力する。水温センサ53は、例えば、ラジエータ42cの入口における冷却水の温度を検出する。なお、これに限らず、水温センサ53は、ラジエータ42cの出口における冷却水の温度を検出してもよく、更に入口と出口の双方における冷却水の温度を検出してもよい。
【0039】
後処理装置温度センサ54は、後処理装置44の雰囲気温度を検出し、検出値の情報を含む検出信号c5をコントローラ61に送信する。
【0040】
タイマー55は、コントローラ61に時間情報を含む時間信号c6を出力する。例えば、時間信号c6は、EDSの作動開始からのEDS時間情報を含む。時間信号c6は、例えば、ファン43の逆転開始からの逆転時間情報を含む。
【0041】
逆転機能オン・オフスイッチ56は、オペレータが、EDS時のファン43の逆回転を実行するか否かを選択する際に操作される。逆転機能オン・オフスイッチ56は、スイッチのオンまたはオフの位置情報を含む位置信号c7をコントローラ61に出力する。
【0042】
油圧ショベル1は、作業機ロックスイッチ46と、作業機ロックソレノイド47と、を更に有する。作業機ロックスイッチ46は、作業機3をロックする際に用いられる。作業機ロックスイッチ46は、例えばレバーである。作業機ロックスイッチ46は、オペレータによって操作される。作業機ロックスイッチ46は、オペレータによって操作されると、操作信号c8をコントローラ61に出力する。
【0043】
作業機ロックソレノイド47は、作業機ロックバルブを動作して作業機3の駆動をロックする。作業機ロックバルブは、例えば、油圧シリンダ24、25、26に作動油を供給するバルブの弁体の位置を切り換えるパイロット油の供給を停止可能である。作業機ロックソレノイド47を動作し、作業機ロックバルブを動作させてパイロット油を遮断することによって、油圧シリンダ24、25、26の動作が停止し、作業機3の駆動がロックされる。コントローラ61は、操作信号c8に基づいて、作業機ロックスイッチ46が操作されたことを検知すると、動作指令信号c9を作業機ロックソレノイド47に出力する。作業機ロックソレノイド47は、コントローラ61からの動作指令信号c9に基づいて、作業機ロックバルブを動作するロック状態と、作業機ロックバルブを動作しない非ロック状態との間で切り替わる。作業機ロックソレノイド47は、ロック状態と非ロック状態のいずれの状態であるかを示す状態信号c10をコントローラ61に出力する。
【0044】
コントローラ61は、プロセッサおよび記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、停止信号c2が入力されると、入力される信号c3~c8、c10、c12に基づいて、プログラムに従って、EDSを作動し、ファン43を正回転から逆回転に変更する逆回転制御を実行する。
【0045】
記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよび/またはRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、ファン43の逆回転制御に関する第1閾値、第2閾値、第3閾値、EDS最大時間、および逆転設定時間を記憶する。第1閾値は、後処理装置温度センサ54によって検出される後処理装置の温度に対して設定されている。第2閾値は、油温センサ52によって検出される作動油の温度に対して設定されている。第3閾値は、水温センサ53によって検出される水温に対して設定されている。EDS最大時間および逆転設定時間は、タイマー55に検出される時間に対して設定されている。
【0046】
コントローラ61は、エンジンキー51においてキーがSTARTの位置に操作されて始動信号c1が入力されると、エンジン41に始動指令信号c20を出力する。コントローラ61は、作業機ロックスイッチ46が操作されて操作信号c8が入力されると、動作指令信号c9を作業機ロックソレノイド47に出力して作業機3をロック状態にする。コントローラ61は、エンジンキー51においてキーがACCまたはOFFの位置に操作されて停止信号c2が入力されると、信号c5、c6、c10に基づいてEDSの動作を実行し、EDSの動作時に、信号c3、c4、c6、c7に基づいてファン43を正回転から逆回転に変更する逆転制御を実行する。
【0047】
コントローラ61は、作業機ロックソレノイド47からの状態信号c10に基づいて油圧ショベル1がEDSを作動可能な状態であると判定し、検出信号c5より後処理装置44の温度が第1閾値以上と判定した場合には、EDSを作動する。
【0048】
コントローラ61は、作業機ロックソレノイド47からの状態信号c10に基づいて、作業機ロックソレノイド47が作動しているか否かを判定する。コントローラ61は、状態信号c10から作業機ロックソレノイド47が作動していることを検出した場合、作業機3がロック状態であるため、油圧ショベル1がEDSを作動可能な状態であると判定する。なお、コントローラ61は、状態信号c10の代わりに作業機ロックスイッチ46からの操作信号c8に基づいて、作業機3がロック状態であることを判断してもよい。
【0049】
コントローラ61は、検出信号c5から後処理装置44の温度が第1閾値以上と判定した場合、後処理装置44の温度が高く冷却する必要があるため、EDSを作動する。一方、コントローラ61は、後処理装置44の温度が第1閾値未満と判定した場合、後処理装置44の温度が高くないため、EDSを作動せずに通常のシャットダウンを行う。通常のシャットダウンでは、コントローラ61は、ファン43に停止指令信号c13を出力してファン43の回転を停止し、エンジン41に停止指令信号c15を出力してエンジン41を停止する。
【0050】
コントローラ61は、EDSを作動する際に、逆転機能オン・オフスイッチ56からの位置信号c7に基づいて逆転機能がオン状態であると判定した場合には、逆転指令信号c14を出力し、ファン43の逆回転を実行する。一方、コントローラ61は、EDSを作動する際に、逆転機能オン・オフスイッチ56からの位置信号c7に基づいて逆転機能がオフ状態であると判定した場合には、ファン43の逆回転を実行しない。なお、ファン43の逆回転は、2つ同時に行ってもよいし、1つずつ行ってもよい。1つずつ行う場合は、逆回転させているファン43以外のファン43は正回転させる方が好ましい。
【0051】
コントローラ61は、油温センサ52からの検出信号c3と水温センサ53からの検出信号c4に基づいて、作動油の温度が第2閾値以下であり、且つ水温が第3閾値以下の場合に、ファン43の逆回転を行う。ファン43の逆回転を実行するとファン43による冷却効率が下がる。そのため、コントローラ61は、作動油の温度が第2閾値より大きい場合は、EDSの作動時にファン43の逆回転を実行しない。また、コントローラ61は、水温が第3閾値より大きい場合は、EDSの作動時にファン43の逆回転を実行しない。
【0052】
コントローラ61は、タイマー55からの時間信号c6に基づいて、EDSの動作時間がEDS最大時間に達すると、エンジン41に停止指令信号c15を出力し、ファン43に停止指令信号c13を出力してEDSの動作を終了する。
【0053】
コントローラ61は、タイマー55からの時間信号c6に基づいて、ファン43の逆回転の時間が逆転設定時間に達すると、ファン43に正転指令信号c16を出力してファン43を正回転させる。
【0054】
<動作>
次に、本実施形態の油圧ショベル1の制御動作について説明する。
図6、
図7、および
図8は、本実施形態の油圧ショベル1の制御動作を示すフロー図である。
【0055】
はじめに、EDS作動開始の際の動作について説明する。
【0056】
ステップS10において、コントローラ61は、停止信号c2に基づいて、エンジンキー51がOFF位置またはACC位置に操作されたことを検出する。
【0057】
次に、ステップS11において、コントローラ61は、作業機ロックソレノイド47からの状態信号c10に基づいて油圧ショベル1がEDSを作動可能な状態であるか否かを判定する。コントローラ61は、状態信号c10に基づいて作業機ロックソレノイド47が作動していることを検出した場合、油圧ショベル1がEDSを作動可能な状態であると判定する。
【0058】
ステップS11において、EDSを作動可能な状態ではないと判定した場合、ステップS12において、コントローラ61は、EDS作動を行わず、通常のシャットダウンを行う。具体的には、コントローラ61は、ファン43に停止指令信号c13を出力してファン43の回転を停止し、エンジン41に停止指令信号c15を出力してエンジン41を停止する。
【0059】
ステップS11において、EDSを作動可能な状態であると判定した場合、ステップS13において、コントローラ61は、検出信号c5に基づいて後処理装置44の温度が第1閾値以上であるか否かを判定する。
【0060】
ステップS13において、後処理装置44の温度が第1閾値未満であると判定した場合、EDSを作動する必要がないため、制御はステップS12に進み、EDSを作動せず通常のシャットダウンが行われる。
【0061】
ステップS13において、後処理装置44の温度が第1閾値以上であると判定した場合、ステップS14において、コントローラ61は、EDSを作動する。具体的には、コントローラ61は、エンジン41に停止指令信号c15を出力せず、エンジン41をローアイドル状態に維持する。
【0062】
次に、ステップS15において、コントローラ61は、逆転機能オン・オフスイッチ56からの位置信号c7に基づいて逆転機能がオン状態であるか否かを判定する。ステップS15において、逆転機能がオフ状態であると判定した場合、ステップS16において、コントローラ61は、ファン43を正回転状態に維持する。
【0063】
一方、ステップS15において、逆転機能がオン状態ではあると判定した場合、ステップS17において、コントローラ61は、油温センサ52からの検出信号c3と水温センサ53からの検出信号c4に基づいて、作動油の温度が第2閾値以下であり、且つ水温が第3閾値以下であるか否かを判定する。ステップS17において、作動油の温度が第2閾値より高い、若しくは水温が第3閾値より高いと判定した場合、制御はステップS16に移動し、コントローラ61は、ファン43を正回転状態に維持する。
【0064】
一方、ステップS17において、作動油の温度が第2閾値以下であり、且つ水温が第3閾値以下であると判定した場合、ステップS18において、コントローラ61は、ファン43に逆転指令信号c14を出力し、ファン43を逆回転させる。
【0065】
次に、EDS作動終了の際の動作について説明する。
【0066】
ステップS18において、ファン43が逆回転すると、制御はステップS19に進む。
【0067】
ステップS19において、コントローラ61は、停止信号c2に基づいて、エンジンキー51におけるキーの位置がOFFまたはACCに配置されているか否かを判定する。キーの位置がOFFまたはACCに配置されていないと判定した場合、キーの位置がSTART位置に配置されていることから、ステップS20において、コントローラ61は、EDS作動を終了する。具体的には、コントローラ61は、復帰指令c21を出力し、エンジン41をローアイドル状態から復帰させ、ファン43に正転指令信号c16を出力してファン43を正回転に復帰させる。
【0068】
ステップS19において、キーの位置がOFFまたはACCに配置されていると判定した場合、ステップS21において、コントローラ61は、作業機ロックソレノイド47からの状態信号c10に基づいて油圧ショベル1がEDSを作動可能な状態であるか否かを判定する。ステップS21において、EDSを作動可能な状態ではないと判定した場合、ステップS22において、コントローラ61は、EDS作動を終了する。具体的には、コントローラ61は、エンジン41に停止指令信号c15を出力してエンジン41を停止し、ファン43に停止指令信号c13を出力してファン43を停止する。
【0069】
ステップS21において、EDSを作動可能な状態であると判定した場合、ステップS23において、コントローラ61は、検出信号c5に基づいて後処理装置44の温度が第1閾値以上であるか否かを判定する。ステップS23において、後処理装置44の温度が第1閾値未満であると判定した場合、制御はステップS22に進み、EDS動作を終了する。
【0070】
ステップS23において、後処理装置44の温度が第1閾値以上であると判定した場合、ステップS24において、コントローラ61は、タイマー55からの時間信号c6に基づいてEDSの動作時間がEDS最大時間に達しているか否かを判定する。ステップS24において、EDSの動作時間がEDS最大時間に達していると判定された場合、制御は、ステップS22に進み、EDS作動を終了する。
【0071】
ステップS24において、EDSの動作時間がEDS最大時間に達していないと判定された場合、ステップS25において、コントローラ61は、EDSの作動を継続する。
【0072】
次に、ステップS26において、コントローラ61は、油温センサ52からの検出信号c3と水温センサ53からの検出信号c4に基づいて、作動油の温度が第2閾値以下であり、且つ水温が第3閾値以下であるか否かを判定する。ステップS26において、作動油の温度が第2閾値より高い、若しくは水温が第3閾値より高いと判定した場合、冷却効率を上げるために、ステップS27において、コントローラ61は、ファン43に正転指令信号c16を出力し、ファン43を正回転に復帰させる。
【0073】
ステップS26において、作動油の温度が第2閾値以下であり、且つ水温が第3閾値以下であると判定した場合、ステップS28において、コントローラ61は、タイマー55からの時間信号c6に基づいて、ファン43の逆回転の時間が逆転設定時間に達しているか否かを判定する。ステップS28において、ファン43の逆回転の時間が逆転設定時間に達していると判定した場合、ステップS27において、コントローラ61は、ファン43を正回転させる。
【0074】
ステップS28において、ファン43の逆回転の時間が逆転設定時間に達していないと判定した場合、ステップS29において、コントローラ61は、ファン43の逆回転を継続させる。ステップS29の次は、制御はステップS19に移動する。
【0075】
一方、ステップS16およびステップS27においてファン43が正回転されている場合、制御は、ステップS30に進む。ステップS30において、コントローラ61は、停止信号c2に基づいて、エンジンキー51におけるキーの位置がOFFまたはACCに配置されているか否かを判定する。キーの位置がOFFまたはACCに配置されていないと判定した場合、キーの位置がSTART位置に配置されていることから、ステップS31において、コントローラ61は、EDS作動を終了する。具体的には、コントローラ61は、エンジン41に復帰指令c21を出力し、エンジン41をローアイドル状態から復帰させ、ファン43の正回転を継続する。
【0076】
ステップS30において、キーの位置がOFFまたはACCに配置されていると判定した場合、ステップS32において、コントローラ61は、作業機ロックスイッチ46からの状態信号c10に基づいて油圧ショベル1がEDSを作動可能な状態であるか否かを判定する。ステップS32において、EDSを作動可能な状態ではないと判定した場合、ステップS33において、コントローラ61は、EDS作動を終了する。具体的には、コントローラ61は、エンジン41に停止指令信号c15を出力してエンジン41を停止し、ファン43に停止指令信号c13を出力してファン43を停止する。
【0077】
ステップS32において、EDSを作動可能な状態であると判定した場合、ステップS34において、コントローラ61は、検出信号c5から後処理装置44の温度が第1閾値以上であるか否かを判定する。ステップS34において、後処理装置44の温度が第1閾値未満であると判定した場合、制御はステップS33に進み、EDS動作を終了する。
【0078】
ステップS34において、後処理装置44の温度が第1閾値以上であると判定した場合、ステップS35において、コントローラ61は、タイマー55からの時間信号c6に基づいて、EDSの作動時間がEDS最大時間に達しているか否かを判定する。ステップS35において、EDSの作動時間がEDS最大時間に達していると判定された場合、制御は、ステップS33に進み、EDS作動を終了する。
【0079】
ステップS35において、EDSの動作時間がEDS最大時間に達していないと判定された場合、ステップS36において、コントローラ61は、EDSの作動を継続する。
【0080】
次に、ステップS37において、コントローラ61は、油温センサ52からの検出信号c3と水温センサ53からの検出信号c4に基づいて、作動油の温度が第2閾値以下であり、且つ水温が第3閾値以下であるか否かを判定する。ステップS37において、作動油の温度が第2閾値より高い、若しくは水温が第3閾値より高いと判定した場合、ステップS38において、コントローラ61は、ファン43の正回転を継続する。ステップS38の次に、制御はステップS30に移動する。
【0081】
ステップS37において、作動油の温度が第2閾値以下であり、且つ水温が第3閾値以下であると判定した場合、ステップS39において、コントローラ61は、逆転指令信号c14をファン43に出力し、ファン43を逆回転させる。ステップS39の次は、制御はステップS19に移動する。
【0082】
以上のように、ステップS14においてEDSを作動すると、ステップS20、S22、S31、S33においてEDS作動が終了するまで、
図7および
図8に示す動作が繰り返される。また、EDS動作が継続している間は、作動油の温度が第2閾値以下、且つ水温が第3閾値以下になると、ファン43を逆転し、作動油の温度が第2閾値より大きく、または水温が第3閾値より大きくなるとファン43を正回転させるように制御が行われる。
【0083】
<特徴>
(1)
本実施形態の油圧ショベル1は、エンジン41と、エンジンキー51(操作部の一例)と、熱交換器と、ファン43と、コントローラ61と、を備える。エンジンキー51は、エンジン41の停止信号c2を出力する。ファン43は、熱交換器を冷却する。コントローラ61は、停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの間に、ファン43の回転を正回転から逆回転に変更する。
【0084】
これによって、停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの時間を確保し、その間にファン43の回転を逆回転し、清掃を行うことができる。このように、油圧ショベル1の稼働が終了し、エンジン41を停止する際に自動で清掃がおこなわれるため、より確実に熱交換器の清掃を行うことができる。
【0085】
(2)
本実施形態の油圧ショベル1では、コントローラ61は、停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの間、エンジン41を通常回転よりも低い回転で動作させる。
【0086】
これにより、停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの時間、エンジン41を例えばローアイドルで動作させることができる。高負荷作業を行っている場合、作動油の温度や水温が高くなるため、冷却効率を下げることになるファン43の逆回転を行うことが出来ない場合があるが、エンジンキー51の停止信号c2の入力後は作業を行わず停車した状態でエンジン41がローアイドルで回転しているだけであるため、負荷がかからず作動油の温度や水温が高くならず、ファン43をより確実に逆回転させることができる。
【0087】
(3)
本実施形態の油圧ショベル1は、エンジン41の駆動によって発電するオルタネータ45を更に備える。ファン43は、電動ファンである。ファン43は、オルタネータ45によって発電された電気で駆動する。
【0088】
このように、エンジン駆動中の発電機の発電によってファン43が駆動するため、EDS中のファン43の駆動によってバッテリーの充電の減少を抑制することができる。
【0089】
(4)
本実施形態の油圧ショベル1は、後処理装置44を更に備える。後処理装置は、エンジン41からの排気ガスを処理する。コントローラ61は、停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの間、後処理装置44を冷却するためにエンジン41を低回転数で動作させる。
【0090】
これにより、エンジンキー51から停止信号c2が入力されてから後処理装置44を冷却するEDSの作動時間においてファン43を逆回転して熱交換器の清掃を行うことができる。
【0091】
(5)
本実施形態の油圧ショベル1は、ファン43、熱交換器、およびエンジン41を収納する車両本体2を更に備える。ファン43が正回転している場合、車両本体2の外部から吸引された空気が熱交換器を通り、ファン43が逆回転している場合、車両本体2の内部の空気が熱交換器を通って外部に排出される。
【0092】
これにより、ファン43の正回転の際に熱交換器に付着した塵等を、ファン43を逆回転させることによって吹き飛ばして清掃することができる。
【0093】
(6)
本実施形態の油圧ショベル1では、熱交換器は、エンジン41の冷却水を冷却するラジエータ42cである。油圧ショベル1は、エンジン41の冷却水の水温を検出する水温センサ53を更に備える。コントローラ61は、冷却水の温度が第3閾値以下の場合、ファン43の回転を正回転から逆回転に変更し、冷却水の温度が第3閾値より高い場合、ファン43の回転を正回転に維持する。
【0094】
ファン43を逆回転させると冷却効率が下がるため、冷却水の温度が第3閾値より高い場合には、ファン43の逆回転による清掃を行わず、ファン43を正回転に維持する。これにより、冷却水の温度の低下を優先することができる。
【0095】
(7)
本実施形態の油圧ショベル1では、熱交換器は、作動油を冷却するオイルクーラ42aである。油圧ショベル1は、作動油の温度を検出する油温センサ52を更に備える。コントローラ61は、作動油の温度が第2閾値以下の場合、ファン43の回転を正回転から逆回転に変更し、作動油の温度が第2閾値より高い場合、ファン43の回転を正回転に維持する。
【0096】
ファン43を逆回転させると冷却効率が下がるため、作動油の温度が第2閾値より高い場合には、ファン43の逆回転による清掃を行わず、ファン43を正回転に維持する。これにより、作動油の温度の低下を優先することができる。
【0097】
(8)
本実施形態の油圧ショベル1は、後処理装置44の温度を検出する後処理装置温度センサ54(温度センサの一例)を更に備える。コントローラ61は、後処理装置44の温度が第1閾値(所定温度の一例)以下の場合、または、エンジンキー51から停止信号c2が入力されてから所定時間が経過した場合、エンジン41およびファン43を停止する。
【0098】
これにより、後処理装置44の温度が第1閾値以下になった場合、若しくは所定時間EDSを作動させた場合に、EDSの作動を終了することができる。
【0099】
(9)
本実施形態の油圧ショベル1では、車両本体2は、ファン43によって空気が吸引または排出される空気口32aを有する。空気口32a、熱交換器、ファン43、およびエンジン41の順に並んで配置されている。
【0100】
これにより、ファン43が正回転している場合、空気口32aから外部の空気がエンジンルーム32内に取り込まれる。エンジンルーム32内に取り込まれた空気は、熱交換器およびエンジン41を順に通過する。また、ファン43が逆回転している場合、車両本体2の内部から熱交換器を通って空気口32aから空気が排出される。これにより、空気口32aおよび熱交換器に付着した塵等を吹き飛ばすことができる。
【0101】
(10)
本実施形態の油圧ショベル1の制御方法は、ステップS10(停止信号入力ステップの一例)と、ステップS18(回転変更ステップの一例)と、を備える。ステップS10は、エンジン41を停止するための停止信号c2が入力される。ステップS18は、停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの間に、熱交換器を冷却するファンの回転を正回転から逆回転に変更する。
【0102】
これによって、エンジンキー51から停止信号c2が入力されてからエンジン41を停止するまでの時間を確保し、その間にファン43の回転を逆回転し、清掃を行うことができる。このように、油圧ショベル1の稼働が終了し、エンジン41を停止する際に自動で清掃がおこなわれるため、より確実に熱交換器の清掃を行うことができる。
【0103】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0104】
(A)
上記実施形態では、
図2に示すように、2つのファン43が上下方向に並んで配置されているが、ファン43の数および配置は、図に示す構成に限らなくてもよい。ファン43の数は、1つ若しくは3個以上であってもよい。また、ファン43の配置も上下に限らず車両の前後方向に並んで配置されてもよい。
【0105】
(B)
上記実施形態では、ラジエータ42cの冷却水の水温と、オイルクーラ42aの作動油の油温とを検出して、所定閾値以上であるか否かを検出しているが、これに限らなくてもよい。例えば、アフタークーラ42bを通る空気の温度を検出する温度センサを設け、空気の温度が所定閾値以下の場合に、ファン43の逆転を実行し、所定閾値より高い場合には、ファン43の逆転を行わないように制御してもよい。
【0106】
(C)
上記実施形態の油圧ショベル1にエンジン41のオイルパンに配置されているエンジンオイルの温度を検出する温度センサを設けてもよい。その場合、エンジンオイルの温度が所定閾値以下の場合に、ファン43の逆転を実行し、所定閾値より高い場合には、ファン43の逆転を行わないように制御してもよい。
【0107】
(D)
上記実施の形態では、作業機械の一例として油圧ショベルを用いて説明したが、これに限らなくてもよく、ブルドーザ、ホイールローダ、ダンプ、フォークリフト等であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示によれば、より確実に熱交換器の清掃を行うことが可能な効果を有し、作業機械等に有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 :油圧ショベル
2 :車両本体
32a :空気口
41 :エンジン
42a :オイルクーラ(熱交換器の一例)
42b :アフタークーラ
42c :ラジエータ(熱交換器の一例)
43 :ファン
44 :後処理装置
51 :エンジンキー(操作部の一例)
52 :油温センサ
53 :水温センサ
54 :後処理装置温度センサ(温度センサの一例)
55 :タイマー
61 :コントローラ
c2 :停止信号