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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102584
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240724BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240724BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20240724BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J7/22
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006580
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【弁理士】
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】由藤 拓三
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F061
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB04
4J004AC03
4J004CA06
4J004CC02
4J004EA05
4J004FA08
4J040BA172
4J040DF031
4J040DF062
4J040GA20
4J040JB02
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040KA37
4J040MA04
4J040MA10
4J040NA20
5F061AA01
5F061BA07
5F061CA22
(57)【要約】
【課題】被着体に対して良好に密着することが可能であり、かつ被着体からの除去性のよい粘着シートを提供する。
【解決手段】基材と、基材の片側に配置された第1粘着剤層と、基材の第1粘着剤層とは反対側に配置された第2粘着剤層とを備える粘着シートが提供される。第2粘着剤層の少なくとも表面は、熱膨張性微小球を含有する粘着剤により構成されている。また、第1粘着剤層の厚さは20μm以上70μm以下である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の片側に配置された第1粘着剤層と、該基材の該第1粘着剤層とは反対側に配置された第2粘着剤層とを備える粘着シートであって、
前記第2粘着剤層の少なくとも表面は、熱膨張性微小球を含有する粘着剤により構成されており、
前記第1粘着剤層の厚さは20μm以上70μm以下である、粘着シート。
【請求項2】
前記第1粘着剤層は、該第1粘着剤層の前記基材側から深さ5μmに位置する測定位置のFT-IRスペクトルにおいて、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度を基準として求められる、該第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理前後の該エポキシ系樹脂に由来するピーク強度の上昇量が、0.000以上0.030以下の範囲内である、ここで、前記エポキシ系樹脂に由来するピーク強度として、1505cm-1~1515cm-1の範囲に存在するピーク強度が用いられる、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記第1粘着剤層は、
該第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理後に100℃にて測定されるエポキシ系樹脂に対する密着力が0.01N/20mm以上3.00N/10mm以下であり、かつ、
23℃、50%RHの環境下で測定されるポリエチレンテレフタレートフィルムに対する粘着力が1.00N/20mm以上10.0N/20mm以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記第1粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率が0.10MPa以上0.50MPa以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記第1粘着剤層は、FT-IRスペクトルにおいて、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度に対する1700cm-1~1710cm-1の範囲に存在するピーク強度の比が0.325以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記第1粘着剤層はアクリル系ポリマーを含み、
前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素数が6以下である直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10~70重量%含有する、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項7】
半導体チップの樹脂封止工程で用いられる、請求項1または2に記載の粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により被着体に接着する性質を有する。かかる性質を活かして、粘着剤は、典型的には粘着剤層を備える粘着シートの形態で、各種の産業分野において広く利用されている。粘着シートの用途の一例として、被着体である各種物品の製造、加工、搬送等の際に該被着体に一時的に貼り付けられ、その目的を達成した後に被着体から除去される、いわゆる工程材としての用途が挙げられる。例えば、半導体チップを含む半導体部品の製造において、半導体チップの傷つき防止、金属配線の拡張等のために当該半導体チップを樹脂封止する樹脂封止工程において、作業性等の観点から、半導体チップの樹脂封止を粘着シートの上で行うことがある。例えば、仮固定材としての粘着シートの粘着剤層上に複数の半導体チップを配置し、当該粘着剤層上で半導体チップを一括に封止する。その後、所定の後工程において、封止樹脂と半導体チップとを含む構造体から上記粘着シートを剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-308116号公報
【特許文献2】特開2001-313350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、工程材として用いられる粘着シートには、所定の工程中、被着体によく密着する性能と、被着体からの除去時に被着体から良好に除去できる性能とが求められる。被着体との密着性に関しては、例えば、上記半導体チップの樹脂封止工程に用いられる粘着シートには、被着体である半導体チップをズレなく固定する性能が求められる。また、被着体からの除去性に関しては、例えば、粘着シートを剥離する際の負荷による被着体の損傷防止に適した軽剥離性や、粘着シートの剥離後に被着体上への粘着剤の残留(糊残り)を生じない性質を有することが望ましい。例えば、上記半導体チップの樹脂封止工程のように、被着体に貼り付けられた状態で該被着体に加熱を伴う加工を施す使用態様が想定される粘着シートでは、加熱後にも上記軽剥離性や糊残り防止性を発揮することが求められる。
【0005】
粘着シートを軽剥離化するための一手法として、粘着剤を適度に硬くすることが挙げられる。粘着剤を硬くすることは、粘着剤の凝集破壊による糊残りを防止する観点からも有利である。しかし、粘着剤を硬くすると、被着体との密着性が低下する傾向にあり、被着体をズレなく固定することが難しくなる傾向にある。例えば、上記半導体チップの樹脂封止工程用途では、被着体に対する密着性が十分でないと、樹脂封止工程時などにおいて、チップシフトと称される数十ミクロン程度の半導体チップの位置ズレを生じることがあり、歩留まり低下や不具合の原因となり得る。また、基材上に粘着剤層を有する形態の粘着シートでは、粘着剤を硬くすると基材と粘着剤層との密着性が低下し、投錨破壊(基材と粘着剤層との界面での剥離)による糊残りが生じやすくなる。
【0006】
被着体への密着性は、一般に、粘着剤層の厚みを大きくすることにより改善可能であるが、粘着シートの使用形態や適用箇所によっては粘着剤層の厚みを大きくすることによるデメリットが想定される。例えば、被着体の固定等の目的を達成した後、被着体から剥離される粘着シートでは、粘着剤層の厚みが大きいと、粘着シートの剥離時に凝集破壊により糊残りが生じやすくなる。また、上記半導体チップの樹脂封止工程用途では、粘着剤層の厚みが大きいと、樹脂封止時の加圧により、粘着剤層上に固定された半導体チップが該粘着剤層表面に沈み込みやすく、粘着シートの剥離後に半導体チップと封止樹脂との間に段差(スタンドオフ)が生じやすくなることが懸念される。上記段差は、半導体チップから周囲の封止樹脂上への配線形成性や半導体チップの保護性を低下させ得るため、低減されていることが望ましい。そのような理由から、上記半導体チップの樹脂封止工程に用いられる粘着剤層の厚さは、従来、10μm程度に制限されてきた。
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を行った結果、半導体チップの樹脂封止工程に用いられる粘着シートでは、封止樹脂として用いられるエポキシ系樹脂中の成分が粘着剤層に移行することにより、封止樹脂と粘着剤との密着性が上昇し、重剥離化や糊残りが発生しやすくなることを発見した。この知見に基づけば、粘着剤層表面において封止樹脂からの移行成分量を低減することにより、軽剥離性および糊残り防止性を改善できると考えられる。また、半導体チップと封止樹脂との段差についても、その程度が、樹脂封止工程において封止樹脂から粘着剤層に移行した成分の濃度に依存し得ることを発見した。具体的には、粘着剤層の厚みが大きい方が、封止樹脂からの移行成分が層内に拡散して全体として低濃度化し、その結果、糊残り防止性が向上し、かつ半導体チップと封止樹脂との段差が低減するという、従来の技術常識とは異なる結果を得た。本発明は、上記の発見に基づき創出されたものであり、半導体チップの樹脂封止工程で用いられる場合であっても、被着体に対して良好に密着することが可能であり、かつ被着体からの除去性のよい粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この明細書により提供される粘着シートは、基材と、該基材の片側に配置された第1粘着剤層と、該基材の該第1粘着剤層とは反対側に配置された第2粘着剤層とを備える。上記第2粘着剤層の少なくとも表面は、熱膨張性微小球を含有する粘着剤により構成されている。また、上記第1粘着剤層の厚さは20μm以上70μm以下である。
厚さが20μm以上である第1粘着剤層を備える構成によると、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層に移行した成分が第1粘着剤層内に拡散して全体として低濃度化し、第1粘着剤層表面における移行成分濃度が低下し、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りが生じにくい。また、第1粘着剤層の厚さが70μm以下であることにより、第1粘着剤層の凝集破壊による糊残りが生じにくい。さらに、上記第1粘着剤層は、被着体に対して良好に密着することができる。要するに、上記構成によると、被着体に対して良好に密着することが可能であり、かつ被着体からの除去性のよい粘着シートが実現される。また、上記構成の粘着シートを半導体チップの樹脂封止工程に用いる場合、第1粘着剤層の厚さが20μm以上であることにより、半導体チップと封止樹脂との段差を低減することができる。
また、上記構成の粘着シートは、第2粘着剤層を有し、上記第2粘着剤層の少なくとも表面は、熱膨張性微小球を含有する粘着剤により構成されているので、例えば上記第2粘着剤層を利用して適切な固定対象物(第2被着体)上に固定し、その状態で第1粘着剤層表面に密着させた第1被着体の加工(例えば上記第1粘着剤層上での樹脂封止工程)を行うことができるので使い勝手がよい。また、粘着シートを必要に応じて適切なタイミングで加熱して上記熱膨張性微小球を膨張させることにより、上記第2粘着剤層と第2被着体との接合を容易に解除し得る。
【0009】
いくつかの態様において、上記第1粘着剤層は、該第1粘着剤層の上記基材側から深さ5μmに位置する測定位置のFT-IRスペクトルにおいて、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度を基準として求められる、該第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理前後の該エポキシ系樹脂に由来するピーク強度の上昇量が、0.000以上0.030以下の範囲内である。ここで、上記エポキシ系樹脂に由来するピーク強度としては、1505cm-1~1515cm-1の範囲に存在するピーク強度が用いられる。上記エポキシ系樹脂に由来するピーク強度上昇量が0.030以下に制限されていることにより、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、エポキシ系封止樹脂からの移行成分が第1粘着剤層中で所定量以下に抑制され、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りがより生じにくい。
【0010】
いくつかの態様において、上記第1粘着剤層は、該第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理後に100℃にて測定されるエポキシ系樹脂に対する密着力(対エポキシ系樹脂密着力)が0.01N/10mm以上3.00N/10mm以下であり、かつ、23℃、50%RHの環境下で測定されるポリエチレンテレフタレートフィルムに対する粘着力(対PET粘着力)が1.00N/20mm以上10.0N/20mm以下である。第1粘着剤層の対エポキシ系樹脂密着力が上記範囲内にある粘着シートによると、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、第1粘着剤層は封止樹脂に対して良好に密着しつつ、封止樹脂からの剥離時に糊残りが生じにくい傾向がある。また、第1粘着剤層の対PET粘着力が上記範囲内にある粘着シートによると、第1粘着剤層により被着体(例えば、半導体チップ)を好ましく固定することができ、かつ、粘着シートの第1粘着剤層側を被着体から剥がす際に被着体に糊残りが生じにくい。半導体チップの樹脂封止工程用途においては、チップ保持性がよく、チップシフトが好ましく防止され得る。
【0011】
いくつかの態様において、上記第1粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率が0.10MPa以上0.50MPa以下である。上記範囲の23℃貯蔵弾性率を有する粘着剤は、適度な柔軟性と弾性を有し、被着体密着性と糊残り防止性とを両立しやすい。
【0012】
いくつかの態様において、上記第1粘着剤層は、FT-IRスペクトルにおいて、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度に対する1700cm-1~1710cm-1の範囲に存在するピーク強度の比が0.325以下である。上記ピーク強度比が0.325以下であることにより、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層に移行した成分は、第1粘着剤層全体に分散しやすく、第1粘着剤層表面に偏在しにくい。これにより、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りがより生じにくくなる傾向がある。
【0013】
いくつかの態様において、上記第1粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む。上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素数が6以下である直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10~70重量%含有する。上記のモノマー組成を有するアクリル系ポリマーを用いることにより、アクリル系ポリマーのガラス転移温度を、被着体密着性と糊残り防止性とを好ましく両立し得る適当な範囲に設定することができる。また、アクリル系ポリマーは、比較的短い側鎖の数が所定の範囲内にあるので、極性が適度に制御されており、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層への成分移行が抑制され、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りがより生じにくい傾向がある。
【0014】
ここに開示される粘着シートは、半導体チップの樹脂封止工程で用いられる場合に、被着体である半導体チップに対して良好に密着し得るので、チップ保持性がよく、かつ封止樹脂の除去性がよい。したがって、半導体チップの樹脂封止工程に特に好適である。なお、ここに開示される粘着シートの用途は、半導体チップの樹脂封止工程用途に限定されず、種々の用途に適用することができる。例えば、ここに開示される粘着シートは、従来の粘着シートと比べて、比較的低弾性かつ厚めで、糊残り防止性など被着体からの良好な除去性を発揮し得るので、その柔軟性、被着体密着性を活かして、小型のデバイスや表面凹凸を有するデバイス等の各種デバイスを加工する用途に用いられる加工用粘着シートとしても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
図2】(i)~(iv)は、図1に示す粘着シートを用いて行われる半導体チップ樹脂封止工程の一例を示す説明図である。
図3】(i)~(iv)は、図2に示す半導体チップ樹脂封止工程において従来の粘着シートを使用した場合の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0017】
この明細書において、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマーの主成分をいい、このこと以外、何ら限定的に解釈されるものではない。上記ゴム状ポリマーとは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
また、この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。アクリル系ポリマーの典型例として、該アクリル系ポリマーの合成に用いられる全モノマーのうちアクリル系モノマーの割合が50重量%超(好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)であるポリマーが挙げられる。以下、ポリマーの合成に用いられるモノマーのことを、該ポリマーを構成するモノマー成分ともいう。
また、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。したがって、ここでいうアクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。
【0018】
<粘着シートの概要>
ここに開示される粘着シートは、例えば、被着体である各種物品の製造、加工、搬送等の際に該被着体に一時的に貼り付けられ、その目的を達成した後に被着体から除去される工程材として好適に用いられ得る。かかる用途の一例として、半導体チップを樹脂封止する際の仮固定材としての用途が挙げられる。より詳細には、ここに開示される粘着シートは、該粘着シートの第1粘着剤層上に半導体チップを配列し、当該半導体チップを封止樹脂(通常、エポキシ系樹脂)で覆い、当該封止樹脂を硬化することによって半導体チップを樹脂封止する際の、当該半導体チップの仮固定材として用いられ得る。半導体チップを樹脂封止した後、所定の後工程(例えば、封止樹脂の裏面研削、パターン形成、バンプ形成、チップ化(切断))の際には、上記粘着シートは、封止樹脂と半導体チップを含んで構成された構造体から剥離され得る。封止樹脂のエポキシ当量は、例えば、50g/eq~500g/eqである。
【0019】
図1は、ここに開示される粘着シートの一実施形態を示す概略断面図である。粘着シート100は、基材10と、基材10の片側に配置された第1粘着剤層20とを備える。また、粘着シート100は、基材10の背面側(第1粘着剤層20とは反対側)に、第2粘着剤層30をさらに備える。すなわち、粘着シート100は、第1粘着剤層20と、基材10と、第2粘着剤層30とをこの順に備える。
【0020】
粘着シート100は、例えば図2に示すようにして半導体チップの樹脂封止に用いられ得る。まず、粘着シート100の第1粘着剤層上に複数の半導体チップ1を貼着する(工程(i))。次いで、半導体チップ1を封止樹脂の半硬化物2’で覆い(工程(ii))、この半硬化物2’を硬化させることにより半導体チップ1を封止樹脂2で封止する(工程(iii))。上記半硬化物2’は、例えばナフタレン型2官能エポキシ樹脂(エポキシ当量:144)を含む組成物を用いて形成することができる。その後、所定の後工程の際に、半導体チップ1と封止樹脂2とを含む構造体50から粘着シート100を剥離する(工程(iv))。
【0021】
かかる樹脂封止工程において、図3に示すように従来の粘着シート900を使用すると、工程(ii)や工程(iii)において第1粘着剤層と封止樹脂間での成分移行が生じ、粘着剤成分と封止樹脂成分との混合相が形成される。上記混合相の形成は、例えば封止樹脂成分が移行することによる粘着剤層の膨潤として把握され得る。粘着シート900を剥離する際に、そのような混合相が粘着シート900とともに剥離されると(工程(iv))、半導体チップ1と封止樹脂2との間に段差(スタンドオフ)のある構造体50となる。
【0022】
ここに開示される粘着シート100は、第1粘着剤層20の厚さが20μm以上であるので、封止樹脂2から第1粘着剤層20に移行した成分が第1粘着剤層20内に拡散して全体として低濃度化する。そのため、第1粘着剤層20表面における移行成分濃度が低下し、第1粘着剤層20表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りが生じにくい。また、第1粘着剤層20の厚さが70μm以下であることにより、第1粘着剤層20の凝集破壊による糊残りが生じにくい。上記第1粘着剤層20は、被着体である半導体チップ1に対して良好に密着することができる。さらに、上記第1粘着剤層20においては、移行成分の低濃度化により、第1粘着剤層20表面に形成される粘着剤成分と封止樹脂成分との混合相の厚さが小さくなり、該混合相の厚みに依存する半導体チップ1と封止樹脂2との段差を抑制することができる。さらに、第1粘着剤層20の厚さが20μm以上であることにより、該第1粘着剤層20が被着体の表面形状(例えば、半導体チップ1の粘着剤層側表面に存在し得る金属配線等による段差)に対して良好に追従することができ、粘着シート100と半導体チップ1との界面に封止樹脂2が侵入する不具合(モールドフラッシュ)の発生を防止することができる。したがって、粘着シート100は、半導体チップの樹脂封止工程に特に好適である。
【0023】
また、第2粘着剤層30を備えることにより、キャリア上で樹脂封止をする際に、第2粘着剤層30側を当該キャリアに貼着することにより、粘着シート100をキャリアに容易に固定することができる。さらに、第2粘着剤層30の少なくとも表面は、熱膨張性微小球を含む粘着剤により構成されている。このような熱膨張性微小球を含む粘着剤は、所定温度以上に加熱されることで上記熱膨張性微小球を膨張させて上記粘着剤層の表面に凹凸を生じさせ、粘着力を低下または消失させることができる。熱膨張性微小球を含む粘着剤によって第2粘着剤層30の少なくとも表面を構成することにより、該第2粘着剤層30を介して粘着シート100を固定(例えば、キャリアに固定)する際には必要な粘着性が発現され、粘着シート100を剥離する際(例えば、上記キャリアから剥離する際)には、加熱により粘着力を低下または消失させることで良好な剥離性が発現される。熱膨張性微小球を含む粘着剤層と基材10との間には、熱膨張性微小球を含まないかその含有量の少ない弾性中間層(粘着剤層であり得る。)が配置されていてもよい。
【0024】
<第1粘着剤層>
ここに開示される粘着シートにおいて、基材の片側に配置される第1粘着剤層を構成する粘着剤としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な粘着剤が用いられ得る。上記粘着剤層は、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤を含み得る。
【0025】
特に限定するものではないが、本発明の効果は、第1粘着剤層が、1種類の粘着剤を含む単層構造の形態で好ましく実現される。かかる第1粘着剤層は、均質な単層の粘着剤からなるため、被着体からの移行成分は、層内で、良好に、好ましくは均等に分散し、第1粘着剤層表面における移行成分濃度が低下しやすく、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りの発生を好ましく抑制することができる。
【0026】
(厚さ)
第1粘着剤層の厚さは20μm以上70μm以下である。第1粘着剤層の厚さを20μm以上70μm以下の範囲内とすることにより、被着体に対して良好に密着することができ、かつ、被着体からの剥離時には良好な糊残り防止性を発揮することができる。例えば、粘着シートを半導体チップの樹脂封止工程に用いる場合、良好なチップ保持性と、封止樹脂を原因とする糊残りの防止とを両立することができる。また、かかる用途においては、上記構成により、半導体チップと封止樹脂との段差を低減することができる。すなわち、半導体チップ保持性と段差低減性との両立、より具体的には、チップシフト防止とスタンドオフ低減とを両立することができる。さらに、第1粘着剤層が十分な厚さを有することにより、被着体の表面形状に対する良好な追従性を発揮しやすい。いくつかの態様において、移行成分を原因とする糊残りの防止、段差低減性、表面形状追従性等の観点から、第1粘着剤層の厚さは、25μm以上であってもよく、35μm以上でもよく、45μm以上であってもよく、55μm以上でもよく、65μm以上でもよい。また、いくつかの態様において、第1粘着剤層の凝集破壊による糊残りの防止等の観点から、第1粘着剤層の厚さは、60μm以下であってもよく、50μm以下でもよく、40μm以下でもよく、30μm以下でもよい。
【0027】
(FT-IRスペクトル特性)
いくつかの態様において、第1粘着剤層は、該第1粘着剤層の基材側から深さ5μmに位置する測定位置(以下、単に「測定位置A」ともいう。)のFT-IRスペクトルにおいて、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度を基準として求められる、該第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理前後の該エポキシ系樹脂に由来するピーク強度の上昇量(以下、単に「ピーク強度上昇量A」ともいう。)が0.030以下である。上記エポキシ系樹脂に由来するピーク強度上昇量が0.030以下に制限されていることにより、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、第1粘着剤層において、エポキシ系封止樹脂からの移行成分が所定量以下に抑制され、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りが生じにくい。また、粘着シートを半導体チップの樹脂封止工程に用いる場合、半導体チップと封止樹脂との段差がより低減される傾向がある。
【0028】
上記ピーク強度上昇量Aは、より具体的には、所定のエポキシ系樹脂処理前の第1粘着剤層の測定位置AのFT-IRスペクトルにおける、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度に対するエポキシ系樹脂に由来するピーク強度の比A0と、所定のエポキシ系樹脂処理後の第1粘着剤層の測定位置AのFT-IRスペクトルにおける、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度に対するエポキシ系樹脂に由来するピーク強度の比A1とを求め、両者の差分(A1―A0)から算出される。
【0029】
上記エポキシ系樹脂に由来するピーク強度としては、エポキシ系樹脂処理に用いられるエポキシ系樹脂が芳香環を含むことから、1505cm-1~1515cm-1の範囲に存在するピーク強度が用いられる。上記FT-IRスペクトルにおいて、1505cm-1~1515cm-1の範囲は芳香族環面内伸縮振動に基づく吸収帯である。また、上記FT-IRスペクトルにおいて、ピーク強度上昇量の算出の基準となるピーク強度の吸収帯である1725cm-1~1750cm-1の範囲は、エステルC=O伸縮振動に基づく吸収帯である。
【0030】
なお、第1粘着剤層が芳香環を含まないか、あるいは芳香環を少量しか含まない場合、エポキシ系樹脂処理前の測定位置AのFT-IRスペクトルにおいて、1505cm-1~1515cm-1の範囲にピークは認められないか、あるいは該ピークの高さはピーク強度上昇量Aに実質的に影響せず、無視してよい程度となり得る。その場合、エポキシ系樹脂処理前の測定位置AのFT-IRスペクトルにおける、1505cm-1~1515cm-1の範囲に存在するピーク強度(上記ピーク強度比A0)をゼロとみなし、エポキシ系樹脂処理後の測定位置Aのエポキシ系樹脂に由来するピーク強度(上記ピーク強度比A1)をピーク強度上昇量Aとみなしてもよい。
【0031】
上記第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理は、芳香環を含む標準エポキシ系樹脂を用いて、温度145℃、加圧条件0.2MPa、加熱加圧時間400秒の条件による加熱成形と、150℃、4時間加熱による封止樹脂硬化を行う処理であり、より具体的には、後述の実施例に記載の方法で実施される。
【0032】
いくつかの好ましい態様において、より優れた糊残り防止性を得る観点から、上記ピーク強度上昇量Aは0.025以下であり、0.020以下であってもよく、0.015以下でもよく、0.010以下でもよい。上記ピーク強度上昇量Aが所定値以下に制限されていることにより、第1粘着剤層と基材との密着性(投錨性)が良好に保たれ、投錨破壊が生じにくくなる傾向がある。また、粘着シートを半導体チップの樹脂封止工程に用いる場合、半導体チップと封止樹脂との段差がより低減される傾向がある。上記ピーク強度上昇量Aの下限値は、0.000以上であり、0.000よりも大きくてもよく、0.001以上であってもよく、実用上、凡そ0.003以上(例えば0.005以上)でもよい。
【0033】
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、第1粘着剤層は、FT-IRスペクトルにおいて、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度に対する1700cm-1~1710cm-1の範囲に存在するピーク強度の比(以下、単に「ピーク強度比B」ともいう。)が0.050以下程度であり、0.40以下が適当であり、0.325以下が好ましく、0.300以下がより好ましい。上記FT-IRスペクトルにおいて、1700cm-1~1710cm-1の範囲は、カルボン酸C=O伸縮振動に基づく吸収帯であり、上記範囲に存在するピーク強度は、カルボン酸に由来するピーク強度である。上記ピーク強度比Bが所定値以下であることにより、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層に移行した成分は、第1粘着剤層の表層部分において、カルボン酸(ポリマー中、カルボキシ基の形態であり得る。)に引き付けられる量が制限される。その結果、第1粘着剤層全体に良好に分散し、第1粘着剤層表面に偏在しにくい。これにより、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りがより生じにくくなる傾向がある。また、半導体チップと封止樹脂との段差がより低減される傾向がある。上記ピーク強度比Bが所定値以下であることにより、第1粘着剤層と基材との密着性(投錨性)が良好に保たれ、投錨破壊がより生じにくくなる傾向がある。また、いくつかの態様において、上記ピーク強度比Bは、カルボン酸含有に基づく特性(具体的には粘着特性)を得る観点から、0.010以上であってもよく、0.050以上でもよく、0.100以上でもよく、0.150以上でもよく、0.200以上でもよく、0.250以上でもよい。
【0034】
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、第1粘着剤層は、FT-IRスペクトルにおいて、1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度に対する2955cm-1~2965cm-1の範囲に存在するピーク強度の比(以下、単に「ピーク強度比C」ともいう。)が0.100以上であってもよく、0.120以上でもよく、0.130以上でもよい。上記FT-IRスペクトルにおいて、2955cm-1~2965cm-1の範囲はC-H伸縮振動に基づく吸収帯である。上記ピーク強度比Cが大きいほど、第1粘着剤層に存在するポリマーの側鎖が長くなる傾向にあり、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層への成分移行量が抑制されやすく、第1粘着剤層表面における該移行成分を原因とする糊残りが生じにくくなる傾向がある。また、いくつかの態様において、上記ピーク強度比Cは、0.300以下であってもよく、0.200以下でもよく、0.150以下でもよい。上記ピーク強度比Cが所定値以下であることにより、封止樹脂から第1粘着剤層表面に移行した成分は、第1粘着剤層表層から全体に拡散しやすい。上記ピーク強度比Cが上記の範囲内にあることにより、第1粘着剤層の極性が適度に保持されるため、第1粘着剤層と基材との密着性が得られやすく、投錨破壊が生じにくい傾向がある。また、粘着シートを半導体チップの樹脂封止工程に用いる場合、半導体チップと封止樹脂との段差がより低減される傾向がある。
【0035】
上記ピーク強度上昇量A、ピーク強度比BおよびCは、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0036】
上記ピーク強度上昇量A、ピーク強度比BおよびCは、第1粘着剤層の厚さを20~70μmの範囲内とし、第1粘着剤層に含まれるポリマーのモノマー組成(例えば、主モノマー種の選定、カルボキシ基含有モノマー種の選定、それらの重合割合等)、含有成分(架橋剤種等)により調節、設定することができる。
【0037】
(粘着特性)
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、第1粘着剤層は、該第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理後に100℃にて測定されるエポキシ系樹脂に対する密着力(対エポキシ系樹脂密着力)が0.01N/10mm以上3.00N/10mm以下の範囲内である。第1粘着剤層の対エポキシ系樹脂密着力が上記範囲内にある粘着シートによると、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、第1粘着剤層は封止樹脂に対して良好に密着しつつ、封止樹脂からの剥離時に糊残りが生じにくい傾向がある。上記対エポキシ系樹脂密着力は、0.10N/10mm以上であることが適当であり、0.30N/10mm以上であることが好ましく、0.50N/10mm以上でもよい。また、上記対エポキシ系樹脂密着力は、糊残り防止の観点から、2.00N/10mm以下であることが好ましく、1.50N/10mm以下であることがより好ましく、1.00N/10mm以下であってもよく、0.80N/10mm以下でもよく、0.60N/10mm以下でもよい。対エポキシ系樹脂密着力は、後述の実施例の対封止樹脂密着力の記載に基づいて測定される。
【0038】
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、第1粘着剤層は、23℃、50%RHの環境下で測定されるポリエチレンテレフタレートフィルムに対する粘着力(対PET粘着力)が1.00N/20mm以上10.0N/20mm以下である。第1粘着剤層の対PET粘着力が上記範囲内にある粘着シートによると、第1粘着剤層により被着体(例えば、半導体チップ)を好ましく固定することができ、かつ、粘着シートの第1粘着剤層側を被着体から剥がす際に被着体に糊残りが生じにくい。半導体チップの樹脂封止工程用途においては、チップシフトが好ましく防止され得る。いくつかの好ましい態様において、上記対PET粘着力は、被着体(例えば、半導体チップ)を好ましく固定する観点から、2.00N/20mm以上であってもよく、3.00N/20mm以上であることが適当であり、4.00N/20mm以上であることが好ましく、5.00N/20mm以上(例えば5.00N/20mm超)であることがより好ましい。また、いくつかの態様において、粘着シートを剥がす際の負荷による被着体の損傷を防止する観点から、上記対PET粘着力は、9.00N/20mm以下であってもよく、7.00N/20mm以下でもよく、5.00N/20mm以下でもよく、3.00N/20mm以下でもよい。対PET粘着力は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0039】
(貯蔵弾性率)
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、第1粘着剤層は、23℃における貯蔵弾性率が例えば0.05MPa以上1.00MPa以下の範囲内であってもよく、好ましくは0.10MPa以上0.50MPa以下の範囲内であり得る。上記範囲の23℃貯蔵弾性率を有する粘着剤は、適度な柔軟性と弾性を有し、被着体密着性と糊残り防止性とを両立しやすい。上記23℃貯蔵弾性率は、糊残り防止性向上の観点から、0.15MPa以上であってもよい。また、いくつかの好ましい態様において、被着体表面形状への追従性等の観点から、上記23℃貯蔵弾性率は、0.40MPa以下であってもよく、0.30MPa以下でもよく、0.20MPa以下でもよい。第1粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0040】
(アクリル系ポリマー)
第1粘着剤層は、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤を含むことが好ましい。アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系ポリマーは、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、必要に応じて上記主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー成分の重合物である。ここで主モノマーとは、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分における主成分、すなわち該モノマー成分に50重量%を超えて含まれる成分をいう。
【0041】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(A)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (A)
ここで、上記式(A)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)である。粘着特性の調節容易性等の観点から、RがC1-18の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、RがC1-12の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。上記アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。いくつかの態様において、C1-6(好ましくはC1-5、より好ましくはC1-4)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸ブチル)を用いることが好ましい。いくつかの態様において、C1-3(より好ましくはC1-2)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチルや(メタ)アクリル酸エチル)を用いることがさらに好ましい。また、いくつかの態様において、C7-20(より好ましくはC7-18、さらに好ましくはC8-12)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル)を用いることが好ましい。いくつかの好ましい態様において、C1-6(好ましくはC1-5、より好ましくはC1-4)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、C7-20(より好ましくはC7-18、さらに好ましくはC8-12)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは併用される。
【0043】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち30重量%以上が、上記式(A)におけるRが炭素数1~20の鎖状アルキル基である構造のアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、C1-20の鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート)である。上記アルキル(メタ)アクリレートを所定量以上用いることにより、目的とする粘着特性(粘着力等)を実現しやすい。そのような観点から、アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分における上記アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上であってもよい。また、モノマー成分における上記アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、副モノマーを共重合することによる作用(例えば凝集力)を効果的に得る観点から、99重量%以下であることが適当であり、95重量%以下であることが好ましい。
【0044】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち10重量%以上が、上記式(A)におけるRが炭素数6以下(好ましくは1~5、より好ましくは1~4)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である構造のアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、C1-6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)である。上記のモノマー組成を有するアクリル系ポリマーを用いることにより、第1粘着剤層の極性が適度に保持され、被着体や基材に対する密着性のよい粘着剤が得られやすい。また、上記モノマー組成を有するアクリル系ポリマーは、比較的短い側鎖を所定数以上有するので、かかるアクリル系ポリマーを第1粘着剤層に用いることにより、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層に移行した成分は、第1粘着剤層表層から全体に拡散しやすい。また、粘着シートを半導体チップの樹脂封止工程に用いる場合、半導体チップと封止樹脂との段差がより低減される傾向がある。いくつかの好ましい態様において、被着体に対する密着性を向上する観点から、アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分における上記C1-6(好ましくはC1-5、より好ましくはC1-4)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、30重量%以上であることが適当であり、40重量%以上であってもよく、50重量%以上でもよく、60重量%以上でもよい。また、モノマー成分における上記C1-6(好ましくはC1-5、より好ましくはC1-4)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限は、特に限定するものではないが、例えば、90重量%以下であってもよく、80重量%以下が適当であり、好ましくは70重量%以下であり、いくつかの態様において、50重量%以下であってもよく、30重量%以下でもよく、20重量%以下でもよい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを適当量使用することにより、アクリル系ポリマーのガラス転移温度を、被着体密着性と糊残り防止性とを好ましく両立し得る適当な範囲に設定することができる。また、上記モノマー組成を有するアクリル系ポリマーは、比較的短い側鎖が所定数以下に制限されているので、極性が適度に制御されており、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層への成分移行が抑制され、第1粘着剤層表面において被着体側からの移行成分を原因とする糊残りがより生じにくい傾向がある。C1-6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち10重量%以上が、上記式(A)におけるRが炭素数3以下(好ましくは1または2)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である構造のアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、C1-3の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)である。かかるアルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、第1粘着剤層の極性が適度に保持され、良好な被着体密着性が得られやすい。また、上記モノマー組成を有するアクリル系ポリマーを第1粘着剤層に用いることにより、例えば、半導体チップの樹脂封止工程に粘着シートを用いる態様において、封止樹脂から第1粘着剤層に移行した成分は、第1粘着剤層表層から全体に拡散しやすい。また、かかる用途において、半導体チップと封止樹脂との段差がより低減される傾向がある。いくつかの好ましい態様において、被着体に対する密着性を向上する観点から、アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分における上記C1-3(好ましくはC1-2)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、30重量%以上であることが適当であり、40重量%以上であることが好ましく、いくつかの態様では50重量%以上でもよく、60重量%以上でもよい。モノマー成分における上記C1-3(好ましくはC1-2)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量の上限は、特に限定するものではないが、例えば99重量%以下であることが適当であり、90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましく、いくつかの態様において、50重量%以下であってもよく、30重量%以下でもよく、20重量%以下でもよい。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを適当量使用することにより、アクリル系ポリマーのガラス転移温度を、被着体密着性と糊残り防止性とを好ましく両立し得る適当な範囲に設定することができる。C1-3の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のうち10重量%以上が、上記式(A)におけるRが炭素数7以上(例えば8以上。また、好ましくは18以下、例えば12以下、より好ましくは8以下)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である構造のアルキル(メタ)アクリレート(すなわち、C7以上の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル)である。かかるアルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、粘着剤層/封止樹脂間における成分移行が好ましく抑制され得る。アクリル系ポリマーの合成に用いられるモノマー成分における上記C7以上(より好ましくはC7-18、さらに好ましくはC8-12)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、20重量%以上であることが好ましく、いくつかの態様において30重量%以上でもよく、50重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。モノマー成分における上記C7以上(より好ましくはC7-18、さらに好ましくはC8-12)の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、良好な被着体密着性、糊残り防止性を得る観点から、90重量%以下であることが適当であり、70重量%以下であることが好ましく、50重量%以下でもよく、30重量%以下でもよい。C7以上の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力や耐熱性を高めたりするために役立ち得る。また、第1粘着剤層のFT-IRスペクトル特性(例えば、ピーク強度上昇量A、ピーク強度比B)の充足にも役立ち得る。副モノマーとしては、例えば、以下のような官能基含有モノマーを、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、以下のような官能基含有モノマーを、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等の、カルボキシ基含有モノマー;
無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等の、ヒドロキシ基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;
N-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等の、窒素原子含有環を有するモノマー;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の、アミノ基含有モノマー;
(メタ)アクリル酸グリシジル等の、エポキシ基含有アクリル系モノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の、シアノ基含有モノマー;
スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等の、スルホン酸基含有モノマー;
N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-フェニルマレイミド等の、マレイミド系モノマー;
N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等の、イタコンイミド系モノマー;
N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクルロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等の、スクシンイミド系モノマー;
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の、アルコキシシリル基含有モノマー。
【0049】
モノマー成分は、凝集力向上等の目的で、上記で例示したような官能基含有モノマー以外の他の共重合性モノマーの1種または2種以上を、副モノマーとして含んでいてもよい。かかる他の共重合性モノマーの例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系モノマー;
その他、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の複素環含有モノマー、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等;が挙げられる。
【0050】
モノマー成分は、上記他の共重合性モノマーとして、架橋等を目的として多官能性モノマーを含んでいてもよい。そのような多官能性モノマーの非限定的な例には、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、多官能エポキシアクリレート、多官能ポリエステルアクリレート、多官能ウレタンアクリレート等の多官能性モノマー;等が含まれ得る。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
いくつかの好ましい態様において、上記アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-5℃~150℃(好ましくは50℃~150℃、より好ましくは80℃~120℃)となるモノマー由来の構成単位aを含むことが好ましい。上記構成単位aの含有量は、アクリル系ポリマーを構成する全構成単位に対して、好ましくは0.1重量%~20重量%であり、より好ましくは1重量%~15重量%であり、特に好ましは1.5重量%~10重量%であり、最も好ましくは3重量%~10重量%である。
【0052】
ホモポリマーのTgが-5℃~150℃のモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート(Tg:-3℃)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Tg:77℃)、アクリル酸(Tg:102℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg:83℃)、アクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:120℃)、メタクリル酸ジシクロペンタニル(Tg:175℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg:94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg:150℃)、メタクリル酸t-ブチル(Tg:118℃)、メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、スチレン(Tg:80℃)、アクリルニトリル(Tg:97℃)、N-アクリロイルモルホリン(Tg:145℃)、等が挙げられる。上記以外のモノマーのホモポリマーのガラス転移温度としては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989年)等の公知資料に記載の値を用いるものとする。上記Polymer Handbookに複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。公知資料にホモポリマーのTgが記載されていない場合は、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
これらのモノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、メタクリル酸メチルは、粘着剤層の透明性を高めるため、加工時の被着体視認性を高める場合には好ましい。
【0053】
いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含んでもよいが、その含有量は制限されていることが好ましい。カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、アクリル系ポリマーを構成する全構成単位に対して10重量%以下とすることが適当であり、好ましくは7重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下である。上記アクリル系ポリマー中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位が制限されていることにより、第1粘着剤層のFT-IRスペクトル特性(例えば、ピーク強度上昇量A、ピーク強度比B)を好ましく充足することができ、良好な糊残り防止性や段差低減性が得られやすい。そのような観点から、いくつかの好ましい態様において、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、アクリル系ポリマーを構成する全構成単位に対して1重量%未満であり、0.1重量%未満であってもよく、上記アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含まなくてもよい。上記アクリル系ポリマーが、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含む態様において、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むことの効果(凝集力や接着力等)を得る観点から、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、0.1重量%以上であってもよく、1重量%以上でもよく、3重量%以上でもよい。
【0054】
いくつかの好ましい態様において、上記アクリル系ポリマーは、ヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位を含む。ヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、アクリル系ポリマーを構成する全構成単位に対して、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.1重量%以上であり、さらに好ましくは1重量%以上であり、例えば3重量%以上であってもよく、また、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、例えば7重量%以下である。
【0055】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、凡そ10×10以上であることが適当であり、好ましくは凡そ30×10以上であり、凡そ45×10以上であってもよく、50×10以上でもよい。また、上記Mwの上限は特に限定されず、例えば凡そ300×10以下であることが適当であり、粘着力や、粘着剤層形成時の塗工性等の観点から、好ましくは凡そ100×10以下であり、凡そ70×10以下でもあってもよい。
【0056】
アクリル系ポリマーのMwは、具体的には、GPC測定装置として商品名「HLC-8220GPC」(東ソー社製)を用いて、下記の条件で測定して求めることができる。後述の実施例においても同様である。
[GPCの測定条件]
サンプル濃度:1.0g/L(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:100μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):0.5mL/分
カラム温度(測定温度):40℃
カラム:東ソー社製、商品名「TSKgel GMH―H(S)」×2
カラムサイズ:7.8mmI.D.×300mm
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
サンプルは、調製後、一晩静置し、0.45μmメンブレンフィルターでろ過したものを使用する。
【0057】
(架橋剤)
いくつかの態様において、第1粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、上記ベースポリマーに加えて架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤を含ませることにより、第1粘着剤層の凝集力を向上させ得る。例えば、上記第1粘着剤層に含まれるベースポリマーは、該第1粘着剤層を構成する粘着剤中において架橋剤により架橋されていることが好ましい。例えば、ベースポリマーおよび適切な架橋剤を含む粘着剤組成物を用いることにより、該ベースポリマーが上記架橋剤で架橋された粘着剤により構成された第1粘着剤層を得ることができる。
【0058】
架橋剤の種類は特に制限されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤等から適宜選択して用いることができる。架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましい架橋剤として、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が挙げられる。
【0059】
イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;トリレンジイソシアネート(例えば、三井化学社製、商品名「タケネートD-101E」)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(東ソー社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。イソシアネート系架橋剤の使用量は、所望とする粘着力に応じて、任意の適切な量に設定することができる。いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、代表的には0.1重量部以上20重量部以下であり、好ましくは1重量部以上10重量部以下である。
【0060】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE-400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP-200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX-611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX-314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコールEX-512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の使用量は、目的とする特性に応じて、任意の適切な量に設定され得る。いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対するエポキシ系架橋剤の使用量は、例えば0.01重量部以上50重量部以下であってよく、好ましくは0.6重量部以上15重量部以下であり、より好ましくは2重量部以上13重量部以下であり、さらに好ましくは3重量部以上10重量部以下である。
【0061】
いくつかの態様において、第1粘着剤層に用いられる架橋剤として、イソシアネート系架橋剤を好ましく採用し得る。イソシアネート系架橋剤を用いることにより、良好な凝集力を有する粘着剤層を形成することができ、所望の密着力や粘着力を有しつつ、凝集破壊による糊残り防止を効果的に防止することができる。例えば、第1粘着剤層のベースポリマーとして、ヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーを使用する態様において、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられ得る。
【0062】
他のいくつかの態様において、第1粘着剤層に用いられる架橋剤として、エポキシ系架橋剤を採用し得る。例えば、第1粘着剤層のベースポリマーとして、カルボキシ基を有するアクリル系ポリマーを用いる態様においては、エポキシ系架橋剤を使用して、第1粘着剤層に所望の架橋構造を形成しつつ、第1粘着剤層中のカルボン酸量を低減することができる。これにより、第1粘着剤層のFT-IRスペクトル特性(例えば、ピーク強度上昇量A、ピーク強度比B)を好ましく充足することができる。ベースポリマーがエポキシ系架橋剤で架橋した架橋構造を有する第1粘着剤層によると、凝集力が高い粘着剤層を形成することができ、凝集破壊による糊残り防止を効果的に防止することができる。
【0063】
いくつかの態様において、上記架橋剤としては、窒素(N)原子を含む架橋剤が好ましく用いられ得る。N原子を含む架橋剤は、該N原子の触媒作用により架橋反応(例えば、ベースポリマー中のカルボキシ基との反応)が促進され、粘着剤のゲル分率を高めやすい点で有利である。N原子を含む架橋剤の具体例としては、上述のようなイソシアネート架橋剤のほか、N原子を含むエポキシ系架橋剤(例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンや1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等のように、グリシジルアミノ基を有するエポキシ系架橋剤)が挙げられる。N原子を含む架橋剤の使用量を適切に設定することにより、軽剥離性と表面形状追従性(好ましくは、さらに糊残り防止性や、半導体チップと封止樹脂との段差低減)とを好適に両立する粘着シートが得られやすい。
【0064】
いくつかの態様において、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)の有するカルボキシ基の量に対する架橋剤(好ましくはカルボキシ基との反応により架橋構造を形成する架橋剤。例えばエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等)の使用量は、好ましくは0.08モル当量以上2モル当量以下であり、より好ましくは0.1モル当量以上1モル当量以下である。上記使用量の架橋剤をベースポリマー中のカルボキシ基と架橋反応させることにより、第1粘着剤層中の残存カルボキシ基が少ない粘着シートを得ることができる。
【0065】
架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒の例としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が挙げられる。架橋触媒の使用量は特に制限されない。いくつかの態様において、架橋反応速度の速さと粘着剤組成物のポットライフの長さとのバランスを考慮して、ベースポリマー100重量部に対する架橋触媒の使用量を、例えば0.0001重量部以上1重量部以下(好ましくは0.001重量部以上0.5重量部以下)とすることができる。
【0066】
(その他の添加剤)
第1粘着剤層には、任意成分として、上記以外の適切な添加剤を必要に応じて含有させ得る。そのような添加剤としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0067】
上記粘着付与剤としては、任意の適切な粘着付与剤を用いることができる。粘着付与剤としては、例えば粘着付与樹脂が用いられる。該粘着付与樹脂の具体例としては、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、未変性ロジン、変性ロジン、ロジンフェノール系樹脂、ロジンエステル系樹脂など)、テルペン系粘着付与樹脂(例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂)、炭化水素系粘着付与樹脂(例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(例えば、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂など)、脂肪族・芳香族系石油樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂など)、フェノール系粘着付与樹脂(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂、レゾール、ノボラックなど)、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂などが挙げられる。なかでも好ましくは、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂または炭化水素系粘着付与樹脂(スチレン系樹脂など)である。粘着付与剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
いくつかの態様では、上記粘着付与樹脂として、軟化点またはガラス転移温度(Tg)の高い樹脂が用いられる。軟化点またはガラス転移温度(Tg)の高い樹脂を用いれば、高温環境下(例えば、半導体チップ封止時の加工等における高温環境下)においても、高い粘着性を発現し得る粘着剤層を形成することができる。粘着付与剤の軟化点は、好ましくは100℃~180℃であり、より好ましくは110℃~180℃であり、さらに好ましくは120℃~180℃である。粘着付与剤のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100℃~180℃であり、より好ましくは110℃~180℃であり、さらに好ましくは120℃~180℃である。
【0069】
いくつかの態様では、上記粘着付与樹脂として、低極性の粘着付与樹脂が用いられる。低極性の粘着付与樹脂を用いることは、封止材料との親和性が低い粘着剤層を形成する観点から有利である。低極性の粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(例えば、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂など)、脂肪族・芳香族系石油樹脂(C5/C9系石油樹脂と称されることもある。)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂当の炭化水素系粘着付与樹脂が挙げられる。なかでも脂肪族・芳香族系石油樹脂が好ましい。このような粘着付与樹脂は、低極性であるとともに、アクリル系ポリマーとの相溶性に優れ、広い温度範囲で相分離せず、安定性に優れた粘着剤層を形成することができる。
【0070】
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記粘着付与樹脂の酸価は、好ましくは40以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは10以下である。このような範囲であれば、封止材料との親和性が低い粘着剤層を形成することができる。上記粘着付与樹脂の水酸基価は、好ましくは60以下であり、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは20以下である。このような範囲であれば、封止材料との親和性が低く、粘着剤層/封止樹脂間における成分移行の抑制に適した粘着剤層を形成することができる。
【0071】
粘着付与剤の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば5重量部以上100重量部以下であってよく、好ましくは8重量部以上50重量部以下である。適当量の粘着付与剤を使用することにより、被着体に対して良好に密着する粘着剤を好ましく得ることができる。
【0072】
<基材>
ここに開示される粘着シートの基材は、例えば、樹脂シート、不織布、紙、金属箔、織布、ゴムシート、発泡シート、これらの積層体(特に、樹脂シートを含む積層体)等であり得る。樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、フッ素系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。不織布としては、マニラ麻を含む不織布等の耐熱性を有する天然繊維による不織布;ポリプロピレン樹脂不織布、ポリエチレン樹脂不織布、エステル系樹脂不織布等の合成樹脂不織布等が挙げられる。金属箔としては、銅箔、ステンレス箔、アルミニウム箔等が挙げられる。紙としては、和紙、クラフト紙等が挙げられる。
【0073】
いくつかの態様において、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上(好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上)の樹脂から構成される樹脂シートが、基材として好ましく用いられる。このような樹脂シートを用いれば、封止工程時の加熱によっても基材の形状が維持され、半導体チップの粘着シートへの埋まり込みが防止される。このような樹脂シートを構成する樹脂としては、芳香族環を有するポリマーが好ましく、具体例としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
上記基材の厚さは、所望とする強度または柔軟性、ならびに使用目的等に応じて、任意の適切な厚みに設定され得る。基材の厚みは、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは25μm以上1000μm以下であり、40μm以上500μm以下であってもよく、60μm以上300μm以下でもよく、80μm以上250μm以下でもよい。1つの実施形態においては、厚みが25μm以上の基材が用いられる。このような厚さの基材は、封止工程時の加圧によっても該基材の形状が維持されやすく、半導体チップの粘着シートへの埋まり込み防止に適している。基材の厚さは、取扱い性等の観点から、150μm以下であってもよく、100μm以下でもよく、50μm以下でもよい。
【0075】
1つの実施形態においては、基材の厚みが、粘着シートの総厚に対して、20%以上90%以下(好ましくは20%以上89%以下、より好ましくは20%以上88%以下)である。このような範囲において、半導体チップの粘着シートへの埋まり込みを好適に防止し得る。
【0076】
上記基材は、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理、下塗り剤によるコーティング処理等が挙げられる。
【0077】
上記下塗り剤としては、有機コーティング材料が用いられてもよい。上記有機コーティング材料としては、例えば、シーエムシー出版の「プラスチックハードコート材料II」(2004年出版)に記載される材料が挙げられる。好ましくはウレタン系ポリマー、より好ましくはポリアクリルウレタン、ポリエステルウレタンまたはこれらの前駆体が用いられる。基材への塗工・塗布が簡便であり、かつ、工業的に多種のものが選択でき、安価に入手できるからである。該ウレタン系ポリマーは、例えば、イソシアナートモノマーとアルコール性水酸基含有モノマー(例えば、水酸基含有アクリル化合物又は水酸基含有エステル化合物)との反応混合物からなるポリマーである。有機コーティング材料は、任意の添加剤として、ポリアミンなどの鎖延長剤、老化防止剤、酸化安定剤等を含んでいてもよい。有機コーティング層の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1μm~10μm程度が適しており、0.1μm~5μm程度が好ましく、0.5μm~5μm程度がより好ましい。
【0078】
<第2粘着剤層>
ここに開示される粘着シートは、上記基材と、上記基材の片側に配置された上記第1粘着剤層と、上記基材の上記第1粘着剤層とは反対側に配置された第2粘着剤層とを備える。かかる構成の粘着シート(基材付き両面粘着シート)は、例えば上記第2粘着剤層を利用して適切なキャリア(例えば、SUS板、ガラス板等)上に固定された形態で上記第1粘着剤層上での樹脂封止工程を行うことができるので使い勝手がよい。上記第2粘着剤層は、任意の適切な粘着剤から構成される粘着剤層であり得る。
【0079】
上記第2粘着剤層の少なくとも表面は、熱膨張性微小球を含有する粘着剤により構成されている。かかる態様の粘着シートは、必要に応じて適切なタイミングで加熱して上記熱膨張性微小球を膨張させることにより、上記第2粘着剤層と被着体(例えば上記キャリア)との接合を容易に解除し得るので好ましい。
【0080】
熱膨張性微小球を含有する粘着剤は、硬化型粘着剤(例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤)であってもよく、感圧型粘着剤であってもよい。感圧型粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。第2の粘着剤層に含まれる粘着剤の詳細は、例えば特開2018-009050号公報の記載を参照することができる。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0081】
上記熱膨張性微小球としては、加熱により膨張または発泡し得る微小球である限りにおいて、任意の適切な熱膨張性微小球を用いることができる。上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱により容易に膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球が用いられ得る。このような熱膨張性微小球は、任意の適切な方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法等により製造できる。
【0082】
加熱により容易に膨張する物質としては、例えば、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、メタンのハロゲン化物、テトラアルキルシラン等の低沸点液体;熱分解によりガス化するアゾジカルボンアミド;等が挙げられる。
【0083】
上記殻を構成する物質としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボン酸単量体;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレンモノマー;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアミド単量体;等から構成されるポリマーが挙げられる。これらの単量体から構成されるポリマーは、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。該コポリマーとしては、例えば、塩化ビニリデン‐メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-メタクリロニトリル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-メタクリロニトリル-イタコン酸共重合体等が挙げられる。
【0084】
上記熱膨張性微小球として、無機系発泡剤または有機系発泡剤を用いてもよい。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水酸化ホウ素ナトリウム、各種アジド類等が挙げられる。また、有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン系化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド;等のN-ニトロソ系化合物などが挙げられる。
【0085】
上記熱膨張性微小球は市販品を用いてもよい。市販品の熱膨張性微小球の具体例としては、松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー」(グレード:F-30、F-30D、F-36D、F-36LV、F-50、F-50D、F-65、F-65D、FN-100SS、FN-100SSD、FN-180SS、FN-180SSD、F-190D、F-260D、F-2800D)、日本フィライト社製の商品名「エクスパンセル」(グレード:053-40、031-40、920-40、909-80、930-120)、呉羽化学工業社製「ダイフォーム」(グレード:H750、H850、H1100、S2320D、S2640D、M330、M430、M520)、積水化学工業社製「アドバンセル」(グレード:EML101、EMH204、EHM301、EHM302、EHM303、EM304、EHM401、EM403、EM501)等が挙げられる。
【0086】
上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子径は、好ましくは0.5μm~80μmであり、より好ましくは5μm~45μmであり、さらに好ましくは10μm~20μmであり、特に好ましくは10μm~15μmである。よって、上記熱膨張性微小球の加熱前の粒子サイズを平均粒子径で言えば、好ましくは6μm~45μmであり、より好ましくは15μm~35μmである。上記の粒子径および平均粒子径は、レーザー散乱法における粒度分布測定法によって求められる値である。
【0087】
熱膨張性微小球を含む粘着剤により構成された粘着剤層の厚さ(例えば、第2粘着剤層の厚さであり得る。特に断りがないかぎり以下同じ。)は特に限定されず、例えば3μm以上とすることができる。熱膨張性微小球を含有することによる粘着面の平滑性低下を抑制する観点から、上記粘着剤層の厚さは、通常、7μm以上であることが適当であり、10μm超であることが好ましく、15μm超でもよく、25μm超でもよく、35μm超でもよい。上記粘着剤層の厚さの上限は特に制限されないが、通常は300μm以下であることが適当であり、200μm以下でもよく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよく、70μm以下でもよい。粘着剤層の厚さが大きすぎないことは、熱膨張性微小球の膨張により粘着剤層が凝集破壊することを避ける観点から有利となり得る。いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、60μm以下でもよく、50μm以下でもよく、45μm以下でもよい。
【0088】
上記粘着剤層の厚さTaは、熱膨張性微小球の加熱前の平均粒子径Dより大きいことが好ましい。すなわち、Ta/Dが1.0より大きいことが好ましい。粘着面の平滑性の観点から、いくつかの態様において、Ta/Dは、2.0以上であることが好ましく、3.0以上でもよく、4.0以上でもよい。また、熱膨張性微小球の膨張による剥離効果を発揮しやすくする観点から、Ta/Dは、通常、50以下であることが適当であり、20以下であることが好ましく、15以下でもよく、10以下でもよい。
【0089】
上記熱膨張性微小球は、体積膨張率が好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、さらに好ましくは10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有することが好ましい。このような熱膨張性微小球を用いる場合、加熱処理により粘着力を効率よく低下させることができる。
【0090】
熱膨張性微小球を含む粘着剤における該熱膨張性微小球の含有割合は、所望する粘着力の低下性等に応じて適切に設定し得る。熱膨張性微小球の含有割合は、該熱膨張性微小球を含む粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、例えば1重量部~150重量部であり、好ましくは10重量部~130重量部であり、さらに好ましくは20重量部~100重量部である。
【0091】
第2粘着剤層の表面を構成する粘着剤が熱膨張性微小球を含む場合、熱膨張性微小球が膨張する前(すなわち、加熱前)における上記第2粘着剤層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは400nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。このような範囲であれば、上記第2粘着剤層側において、被着体に対する密着性に優れた粘着シートを得ることができる。このように表面平滑性に優れる第2粘着剤層は、例えば、粘着剤層の厚みを上記範囲とすること、熱膨張性微小球を含む粘着剤組成物を剥離ライナーに塗布し乾燥させて形成した粘着剤層を基材に直接または該基材上に設けられた中間層(例えば弾性中間層)上に転写すること等により、得ることができる。
【0092】
第2粘着剤層が熱膨張性微小球を含む場合、上記粘着剤層は、80℃における動的貯蔵弾性率が5kPa~1MPa(より好ましくは10kPa~0.8MPa)の範囲にあるベースポリマーから構成される粘着剤を含むことが好ましい。このような粘着剤層であれば、加熱前に適度な粘着性を有し、加熱により粘着力が低下しやすい粘着シートを形成し得る。なお、動的貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(例えば、レオメトリックス社製の商品名「ARES」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/minの測定条件により測定され得る。
【0093】
<他の層>
いくつかの態様において、第1粘着剤層は基材上に直接配置されているが、ここに開示される粘着シートは、第1粘着剤層と基材との間に中間層(例えば、非粘着性の粘弾性層等)を有してもよい。
【0094】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートは、任意の適切な方法により製造することができる。本発明の粘着シートは、例えば、粘着剤層(第1粘着剤層、第2粘着剤層であり得る。)形成成分を含む粘着剤組成物を、基材に直接または該基材上に設けられた中間層(例えば弾性中間層等)に直接塗工して粘着剤層を形成する方法、任意の適切な剥離性工程材(例えば剥離ライナー)上に粘着剤組成物を塗工して該剥離性工程材上に粘着剤層を形成し、上記粘着剤層を基材または該基材上の中間層に転写する方法、これらの組合せ、等により製造することができる。上記粘着剤組成物は、任意の適切な溶媒を含む溶剤型粘着剤組成物であり得る。
【0095】
熱膨張性微小球を含む粘着剤層を形成する場合、熱膨張性微小球と粘着剤と任意の適切な溶媒とを含む組成物を基材に塗工して、該粘着剤層を形成することができる。あるいは、粘着剤塗工層に、熱膨張性微小球を振りかけた後、ラミネーター等を用いて、該熱膨張性微小球を粘着剤中に埋め込んで、熱膨張性微小球を含む粘着剤層を形成してもよい。
【0096】
上記粘着剤および各組成物の塗工方法としては、任意の適切な塗工方法が採用され得る。例えば、塗布した後に乾燥して各層を形成することができる。塗布方法としては、例えば、マルチコーター、ダイコーター、グラビアコーター、アプリケーター等を用いた塗布方法が挙げられる。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。加熱乾燥する場合の加熱温度は、乾燥対象となる物質の特性に応じて、任意の適切な温度に設定され得る。
【実施例0097】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0098】
<評価方法>
1.FT-IR測定
粘着シートを1cm角程度のサイズに切り出した評価用試料につき、第1粘着剤層表面側からArガスクラスターイオンでエッチングし、第1粘着剤層の基材側の面から深さ5μmの位置を表面に露出させた後、所定のGeプリズムを押し付け、顕微FT-IR測定を行った。上記測定位置は、例えば第1粘着剤層の厚さが20μmの場合、第1粘着剤層表面から深さ15μmの位置に相当するので、第1粘着剤層表面からArガスクラスターイオンで第1粘着剤層表面から深さ15μmの位置までエッチングを行い、露出面に対して測定を実施する。上記FT-IRの測定条件は下記のとおりである。
装置:Thermo Fisher Scientific社製、Nicolet6700/Thunderdome
測定モード:ATR(1回反射)法
入射角:45°
分解能:4cm-1
測定範囲:4000cm-1~675cm-1
積算回数:128回
検出器:MCT
プリズム:顕微IR用Geプリズム
1725cm-1~1750cm-1の範囲に存在するピーク強度を基準として求められる各ピーク強度の比は、解析ソフト「OMNIC ver.9」(Thermo Fisher Scientific社製)を使用して算出した。
また、エポキシ系樹脂に由来するピーク強度上昇量を測定するための、第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理後のFT-IRスペクトルは、下記のエポキシ系樹脂処理を行った粘着シートにつき、エポキシ系樹脂を剥離した後、上記と同様の方法により評価用試料を得て、Arガスクラスターイオンでエッチングし、第1粘着剤層の基材側の面から深さ5μmの位置にてFT-IR測定を行うことにより得た。
なお、1700cm-1~1710cm-1の範囲に存在するピーク強度、および、2955cm-1~2965cm-1の範囲に存在するピーク強度比は、上記エポキシ系樹脂処理前の第1粘着剤層に対するFT-IR測定により求められる。
【0099】
2.第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理
粘着シートを幅40mm、長さ200mmのサイズに裁断し、その第1粘着剤層表面に型枠(開口サイズ:幅20mm、長さ180mmの長方形、厚み:188μm、材質:ポリエチレンテレフタレート)を貼り合わせた。上記型枠内に顆粒状のエポキシ樹脂系封止材(住友ベークライト社製、G770)を、硬化後の樹脂厚みが0.188mmとなるように散布した後、シリコーン処理された剥離ライナーを被せ、ヒートプレス機(テスター産業社製、型番:TP-701-B HEAT SEAL TESTER)を用いて、温度145℃、加圧条件0.2MPa(300mm角のステージサイズ)、加熱加圧時間400秒の条件で、封止樹脂を第1粘着剤層上で加熱成形した。これを150℃で4時間加熱して封止樹脂を硬化させ、次いで23℃、50%RHの環境下に24時間静置した。上記エポキシ樹脂系封止材は、芳香環を含むエポキシ系樹脂である。
【0100】
3.対封止樹脂密着力
上記第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理後の粘着シートにつき、封止樹脂と第1粘着剤層とが接触している部分を幅10mm、長さ88mmのサイズにカットして評価用試料を作製した。この評価用試料を100℃の環境下に30分間放置した後、同環境下にて、引張試験機を用いて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で封止樹脂から粘着シート(第1粘着剤層側)を剥離した時の荷重を測定し、その際の平均荷重を粘着シート(第1粘着剤層)の対封止樹脂密着力とした。上記引張試験機としては、島津製作所製の商品名「オートグラフAG-120kN」を使用した。
【0101】
4.対PET粘着力
粘着シートを幅20mm、長さ140mmのサイズに裁断し、その背面側(第1粘着剤層が設けられた側とは反対側)の全面を、両面接着テープ(日東電工社製、商品名「No.531」)を介してSUS304板に、2kgのハンドローラーを用いて貼着した。なお、基材の背面側に第2粘着剤層を有する構成の粘着シートについては、第2粘着剤層が第1粘着剤層よりも強い粘着力を有する場合は、上記No.531両面接着テープを使用する代わりに、上記第2粘着剤層を介して上記粘着シートの背面側をSUS304板に貼着してもよい。
23℃、50%RHの環境下において、上記のように背面側がSUS304板に固定された粘着シートの粘着面(第1粘着剤層表面)に、被着体としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS-10」、厚さ25μm、幅30mm)を、2kgのローラーを1往復させて貼着した。これを上記環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で上記粘着シート(第1粘着剤層側)から上記PETフィルムを剥離した時の荷重を測定し、その際の平均荷重を粘着シート(第1粘着剤層)の対PET粘着力とした。上記引張試験機としては、島津製作社製の商品名「オートグラフAG-120kN」を使用した。
【0102】
5.23℃における貯蔵弾性率
第1粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、装置名「ARES」(レオメトリックス社製の粘弾性測定装置)を用いて、フィルム治具を使用し、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、歪み0.1%の測定条件により測定した。
【0103】
6. 糊残り防止性
上記第1粘着剤層表面に対するエポキシ系樹脂処理後の粘着シートにつき、封止樹脂と第1粘着剤層とが接触している部分を幅10mm、長さ90mmのサイズにカットして評価用試料を作製した。評価用試料を、190℃に加熱したホットプレート上で1分間加熱した後、ホットプレート上で加熱しながら評価用試料の粘着シートを封止樹脂から剥離し、封止樹脂上への糊残りの有無を確認した。剥離条件は、引張速度約1000mm/分、引張角度120°~180°とした。糊残りの有無は、粘着シートを剥がした箇所の封止樹脂面をホットプレート上で加熱した状態でピンセットで表面を擦り、その後の状態を目視観察により確認した。その結果に基づいて、糊残りが認められた場合は糊残り防止性「P」(Poor:糊残り防止性に乏しい)、糊残りが認められなかった場合は糊残り防止性「G」(Good:糊残り防止性良好)と判定した。
【0104】
7.スタンドオフ評価
粘着シートの第1粘着剤層表面上で、下記の条件により半導体チップ(Siチップ)の樹脂封止工程を実施し、封止樹脂とSiミラーチップとからなる構造体を得た。
この構造体につき、上記第1粘着剤層表面と接していた表面をレーザー共焦点顕微鏡(OLS-5000 OLYMPUS製)で観察し、中心に配置されたSiチップを対象として、上記表面におけるSiチップと封止樹脂の界面の段差高さ(スタンドオフ高さ)を計測した。上記表面上に粘着剤の残渣物(糊残り)等が確認された場合は、トルエンを用いて残渣物を取り除いた後に計測を行った。スタンドオフ高さが3.5μm以下であった場合は「G」(Good:スタンドオフが良好に抑制されている)、3.5μm超であった場合は「P」(Poor:スタンドオフの抑制が不十分)と判定される。
【0105】
(条件)
キャリア:SUS製キャリア(220mmΦ)
チップ:段差付ダミーチップ(7mm×7mm×400μm厚のシリコン基板の片面に銅製パッド(パッド狙い高さ5.5μm、マスク:GNC-300mm-G03-A-300S)を有するダミーチップ。グローバルネット社製)
ボンディング装置:東レエンジニアリング社製 FC3000W
ボンディング条件:圧着時間6秒、圧着圧力10N、圧着温度:23℃
封止設備:アピックヤマダ社製 MS-150HP
封止樹脂:住友ベークライト社製 G730
プレヒート条件:130℃×30秒
プレヒートから封止開始までの時間:1時間
封止温度:145℃
バキューム時間:5秒
封止時間:600秒
クランピングフォース:3.6MPa
封止厚み:600μm
【0106】
封止作業は、以下の手順で実施した。
1)両面粘着シートの第2粘着剤層表面をSUSキャリアに貼付した(貼付条件:23℃雰囲気下、貼付シリンダー圧力0.1MPa、貼付速度0.5m/min)。
2)SUSキャリアに固定された粘着シートの第1粘着剤層上に、上記ボンディング装置を使用して、合計25個の上記段差付ダミーチップを、中心角45度の8本の放射状の直線に沿って、中心から外周に向かうにつれて次第に間隔が広くなるように配置した。上記チップの向きは、該チップの段差面(パッド形成面)が第1粘着剤層に対向する向きとした。
3)粘着シートの第1粘着剤層上に段差付ダミーチップが配置された状態のSUSキャリアを、所定の条件でプレヒートした。
4)プレヒート後、23℃、50%RHの環境下で1時間静置したのち、上記ダミーチップの上から所定の封止樹脂を手で満遍なく散布し、所定の封止設備、封止条件にて封止した。
5)得られた積層体を、150℃で4時間加熱して封止樹脂を硬化させた。
6)加熱硬化させた積層体を23℃、50%RHの環境下で5日間放置した後、ホットプレート上で加熱することにより、粘着シートをSUSキャリアに固定している第2粘着剤層中の熱膨張性微小球を膨張させ、上記積層体からSUSキャリアを分離した。
7)SUSキャリアを分離した後の積層体から粘着シートを剥離して、封止樹脂と段差付ダミーチップとからなる構造体を得た。
【0107】
なお、上記各評価のうち、FT-IR測定、対封止樹脂密着力、対PET粘着力、23℃における貯蔵弾性率および糊残り防止性の評価は、後述の各例において、第1粘着剤層が基材の片面に配置された基材付き片面粘着シートを用いて実施した。スタンドオフ評価は、両面粘着シート(第1粘着剤層/基材/第2粘着剤層の構成を有する両面粘着シート)を用いて実施した。
【0108】
<例1>
ポリマーP1(アクリル酸エチル(EA)/アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)/メタクリル酸メチル(MMA)/アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)=70/30/5/5(重量比)のモノマー成分により構成されたアクリル系ポリマー。Mw47万)100部を含むトルエン溶液に、テルペンフェノール系粘着付与樹脂(住友ベークライト社製、商品名「スミライトレジン PR-12603」)10部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)1.5部と、希釈用のトルエンとを加えて混合し、第1粘着剤組成物を調製した。この第1粘着剤組成物を、基材としてのPETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み38μm)の片面に塗布して乾燥させることにより、上記基材上に第1粘着剤層(厚さ25μm)を形成し、第1粘着剤層が上記基材の片面に配置された粘着シート(基材/第1粘着剤層の構成を有する粘着シート)を得た。
【0109】
<例2~3、5~6>
第1粘着剤層の厚さを表1に示すとおりとした他は例1と同様にして、基材/第1粘着剤層の構成を有する粘着シートを得た。
【0110】
<例4>
ポリマーP1のトルエン溶液に替えて、ポリマーP2(EA/2EHA/MMA/HEA=10/90/5/5(重量比)のモノマー成分により構成されたアクリル系ポリマー。Mw50万)を含むトルエン溶液を用いた他は例2と同様の方法により、第1粘着剤組成物を調製し、得られた第1粘着剤組成物を用いて第1粘着剤層(厚さ20μm)を形成し、第1粘着剤層が基材の片面に配置された粘着シート(基材/第1粘着剤層の構成を有する粘着シート)を得た。
【0111】
<両面粘着シートの作製>
ポリマーP3(EA/2EHA/MMA/HEA=30/70/5/4(重量比)のモノマー成分により構成されたアクリル系ポリマー)100部を含むトルエン溶液に、熱膨張性微小球(松本油脂製薬社製、商品名「マツモトマイクロスフェアー F-190D」)30部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、商品名「コロネートL」)1.4部と、粘着付与剤(ヤスハラケミカル社製、商品名「マイティーエースG125」)10部と、希釈用のトルエン(合計100部となる量)とを加えて混合し、第2粘着剤組成物を調製した。得られた第2粘着剤組成物を剥離フィルムR1(東レフィルム加工社製、商品名「セラピールMDAR」、厚さ38μm)の剥離処理面に塗布して乾燥させることにより、該剥離フィルムR1上に第2粘着剤層(厚さ45μm)を形成した。
例1~6に係る粘着シートの基材背面に、上記剥離フィルムR1上に形成された第2粘着剤層の粘着面をそれぞれ貼り合わせることにより、第2粘着剤層/基材/第1粘着剤層の構成を有する両面粘着シートを得た。
【0112】
各例に係る粘着シートの概要と評価結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1:半導体チップ
2:封止樹脂
10:基材
20:第1粘着剤層
30:第2粘着剤層
100,900:粘着シート
図1
図2
図3