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特開2024-102585着雪低減機器および着雪低減管状構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102585
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】着雪低減機器および着雪低減管状構造体
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/40 20160101AFI20240724BHJP
【FI】
E01F9/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006581
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】井口 優香
(72)【発明者】
【氏名】小森 敦
【テーマコード(参考)】
2D064
【Fターム(参考)】
2D064AA12
2D064AA22
2D064CA02
2D064DB03
2D064DB07
2D064HA01
(57)【要約】
【課題】
鋼管柱上の着雪を低減して大きな塊のまま落雪することを防ぐと共に、耐候性の高い着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体を提供する。
【解決手段】
本発明は、管状構造体20の頂部曲面に固定して管状構造体20への着雪を低減可能な着雪低減機器10であって、管状構造体20の頂部曲面に固定するための台座1と、台座1に固定される板であって、降雪を当該板の端面にて分けるための雪切板2とを備え、雪切板2は、主にシリコーンゴムから構成され、台座1は、頂部曲面に固定される底部4と反対側に頂部6を備えると共に、頂部6に雪切板2を立設しており、台座1は、雪切板2との固定部分から底部4に至る斜面5を備える着雪低減機器10、およびそれを管状構造体20に備える着雪低減管状構造体30に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状構造体の頂部曲面に固定して前記管状構造体への着雪を低減可能な着雪低減機器であって、
前記管状構造体の頂部曲面に固定するための台座と、
前記台座に固定される板であって、降雪を当該板の端面にて分けるための雪切板と、
を備え、
前記雪切板は、主にシリコーンゴムから構成され、
前記台座は、前記頂部曲面に固定される底部と反対側に頂部を備えると共に、前記頂部に前記雪切板を立設しており、
前記台座は、前記雪切板との固定部分から前記底部に至る斜面を備えることを特徴とする着雪低減機器。
【請求項2】
前記台座の外形は、三角柱の形状であり、
前記底部は、前記三角柱を構成する3つの長方形の側面の内の1つの側面であり、
前記雪切板は、前記三角柱の峰部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の着雪低減機器。
【請求項3】
前記台座は、主にシリコーンゴムから構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の着雪低減機器。
【請求項4】
前記台座は、中実の部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の着雪低減機器。
【請求項5】
前記台座は、前記台座の前記頂部に、前記雪切板を嵌め込み可能な溝を備えることを特徴とする請求項4に記載の着雪低減機器。
【請求項6】
前記台座は、中空の部材であることを特徴とする請求項1または2に記載の着雪低減機器。
【請求項7】
前記台座は、前記台座の前記頂部に、前記雪切板を嵌め込み可能な溝を備えることを特徴とする請求項6に記載の着雪低減機器。
【請求項8】
前記台座は、前記台座の前記頂部に、前記雪切板を貫通させる貫通部位を備え、
前記雪切板は、前記貫通部位から前記台座の中空領域に挿入されて前記台座に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の着雪低減機器。
【請求項9】
前記台座の高さは、前記着雪低減機器の高さの半分以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の着雪低減機器。
【請求項10】
請求項1または2に記載の着雪低減機器の底部を管状構造体の頂部曲面に固定した形態を有する着雪低減管状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状構造物への着雪を低減可能な着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、線路上や道路上にある鋼管柱(ビームや梁)では、冬の間、降雪により積雪が発生し、その後の大規模な落雪および落氷により交通障害が起きている。特に、豪雪地域においては、道路上方に設置されている道路標識や鋼管ビーム上に積雪して固化すると、日中の気温上昇によりそれが大きな塊りのまま路面や走行中の車輌上に落下して事故につながるおそれがある。
【0003】
このような落雪および落氷による事故を防ぐ方法として、例えば、標識板を設置する標識設置柱において、標識板を車道の上に支持する横支柱部上に雪庇防止具を配設する方法が知られている(特許文献1を参照。)。かかる雪庇防止具は、発泡スチロールよりなり、一対の傾斜部と底部とを有する傾斜部材と、傾斜部材の底部に配設され磁石を含むシート状部材と、磁力を利用して傾斜部材を横支柱部に固定する固定部材と、傾斜部材の傾斜部に対応して設けられたポリウレタン樹脂よりなる被覆層とを備え、従来よりも簡単かつ短期間で取り付けることができるという長所を有する。
【0004】
また、屋根部材が道路標識を覆うように、該道路標識の上方に支柱を介して設置された着雪防止構造も知られている(特許文献2を参照。)。この着雪防止構造において、屋根部材は、屋根面が枠体フレームに張設された膜材で構成され、支柱との間に設けられた振れ角規制部材により振れ角が規制された状態で、支柱に取付支点を介して揺動可能に支持されている。このような着雪防止構造により、簡易な構造でかつ耐久性があり、着雪した氷雪を効率よく除雪できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-139302号公報
【特許文献2】特開2001-323421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来の方法では、鋼管柱上の着雪を低減する効果が必ずしも十分ではない。また、長期の使用に伴い日光の作用による劣化を防ぐことが難しい。
【0007】
本発明は、鋼管柱上の着雪を低減して大きな塊のまま落雪することを防ぐと共に、耐候性の高い着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る着雪低減機器は、
管状構造体の頂部曲面に固定して前記管状構造体への着雪を低減可能な着雪低減機器であって、
前記管状構造体の頂部曲面に固定するための台座と、
前記台座に固定される板であって、降雪を当該板の端面にて分けるための雪切板と、
を備え、
前記雪切板は、主にシリコーンゴムから構成され、
前記台座は、前記頂部曲面に固定される底部と反対側に頂部を備えると共に、前記頂部に前記雪切板を立設しており、
前記台座は、前記雪切板との固定部分から前記底部に至る斜面を備える。
(2)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、
前記台座の外形は、三角柱の形状であり、
前記底部は、前記三角柱を構成する3つの長方形の側面の内の1つの側面であり、
前記雪切板は、前記三角柱の峰部に固定されていても良い。
(3)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記台座は、主にシリコーンゴムから構成されていても良い。
(4)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記台座は、中実の部材であっても良い。
(5)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記台座は、前記台座の前記頂部に、前記雪切板を嵌め込み可能な溝を備えても良い。
(6)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記台座は、中空の部材であっても良い。
(7)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記台座は、前記台座の前記頂部に、前記雪切板を嵌め込み可能な溝を備えても良い。
(8)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記台座は、前記台座の前記頂部に、前記雪切板を貫通させる貫通部位を備え、前記雪切板は、前記貫通部位から前記台座の中空領域に挿入されて前記台座に固定されていても良い。
(9)別の実施形態に係る着雪低減機器において、好ましくは、前記台座の高さは、前記着雪低減機器の高さの半分以下であっても良い。
(10)上記目的を達成するための一実施形態に係る着雪低減管状構造体は、上述のいずれかの着雪低減機器の底部を管状構造体の頂部曲面に固定した形態を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鋼管柱上の着雪を低減して大きな塊のまま落雪することを防ぐと共に、耐候性の高い着雪低減機器、およびそれを管状構造体に備える着雪低減管状構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る着雪低減機器の組み立て状況を表した斜視図を示す。
図2図2は、図1の要領で組み立てた着雪低減機器の斜視図を示す。
図3図3は、図2の着雪低減機器のA-A線断面図を示す。
図4図4は、図2の着雪低減機器を管状構造体に固定した状態の着雪低減管状構造体の正面図を示す。
図5図5は、図2の着雪低減機器の各種変形例(5A,5B,5C)を図3と同様の断面図にて示す。
図6図6は、図2の着雪低減機器の雪切板の形状を変更した第4変形例における雪切板の先端近傍の拡大断面図を示す。
図7図7は、実験状況の写真を示す。(7A)は、4種類のサンプルを視野に入れた写真を示す。(7B)は、実施例1のサンプルを拡大した写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲の各請求項に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る着雪低減機器の組み立て状況を表した斜視図を示す。図2は、図1の要領で組み立てた着雪低減機器の斜視図を示す。図3は、図2の着雪低減機器のA-A線断面図を示す。図4は、図2の着雪低減機器を管状構造体に固定した状態の着雪低減管状構造体の正面図を示す。
【0013】
この実施形態に係る着雪低減機器10は、管状構造体20の頂部曲面に固定して管状構造体20への着雪を低減可能な機器である。着雪低減機器10は、着雪低減の機能に加えて、落雪促進の機能を併せ持つ。少量の落雪を頻繁に行わせると、落雪事故の被害を小さくできる。かかる観点から、「着雪低減機器」は、別名で「落雪促進機器」と称しても良い。着雪低減機器10は、管状構造体20の頂部曲面に固定するための台座1と、台座1に固定される板であって降雪を当該板の端面にて分けるための雪切板2と、を備える。
【0014】
台座1は、合成樹脂、ゴム、金属、セラミックス、ガラス、炭素材料、木材などの如何なる材料から構成されていても良く、好ましくはゴム、さらに好ましくは耐候性を高くする目的で、主にシリコーンゴムから構成されている。ここで、「主に」は、全体に対して50体積%を超えることを意味する。台座1は、好ましくは50体積%超を、より好ましくは70体積%超を、さらにより好ましくは90体積%超を、シリコーンゴムで構成されている。台座1は、シリコーンゴム以外に、合成樹脂、金属、セラミックス等を含んでいても良い。また、シリコーンゴムには、シリカ、グラファイト等のフィラーが含まれていても良い。台座1は、透明な構造体、半透明な構造体、または不透明な有色構造体でも良い。台座1は、有色構造体の場合には、好ましくは黒色構造体である。台座1を黒色にすると、赤外線の吸収能が高くなり、積雪を抑止できる。台座1は、管状構造体20の頂部曲面に固定される底部4と反対側に頂部6を備えると共に、台座1の頂部6に雪切板2を立設している。台座1は、雪切板2との固定部分から底部4に至る斜面5,5を備える。
【0015】
台座1の外形は、好ましくは、三角柱の形状である。底部4は、三角柱を構成する3つの長方形の側面の内の1つの側面である。雪切板2は、上記三角柱の台座1の峰部(台座1の頂部6の一例)に固定されている。この実施形態では、台座1は、中実の部材であるが、後述するように中空の部材であっても良い。台座1は、好ましくは峰部の形態を有する頂部6に、雪切板2を嵌め込み可能な溝3を備える。ただし、溝3は、台座1に必須の構成ではない。例えば、台座1に溝3を形成せずに、雪切板2の端面に断面V字状若しくは断面U字状の溝を形成して、台座1の頂部6に雪切板2の溝を合わせて接着等の手法で固定しても良い。
【0016】
台座1と雪切板2との固定方法には、特に制約はなく、好ましくは、接着剤または粘着剤を用いた固定、または嵌め込み式の固定を例示できる。接着剤としては、シリコーン系接着剤を好適に用いることができる。シリコーン系接着剤の中でも、特に、室温硬化型接着剤(RTV接着剤)を用いるのが好ましい。
【0017】
台座1の高さ(図3に示すk・H)は、好ましくは、着雪低減機器10の高さ(図3に示すH)の半分以下である。ここで、kは、0<k≦0.5の範囲の係数である。台座1の高さを着雪低減機器10の高さの半分以下にすると、台座1上の雪切板2の高さを台座1の高さ以上とすることができる。この結果、雪切板2が水平方向に揺動しやすくなり、雪切板2自体への積雪を抑制できる。また、雪切板2の揺動は、台座1の斜面5および管状構造体20上の積雪にも影響を与え、さらに落雪を誘導する。
【0018】
雪切板2は、主にシリコーンゴムから構成される。「主に」の意味は、前述した台座1と同様である。雪切板2は、好ましくは50体積%超を、より好ましくは70体積%超を、さらにより好ましくは90体積%超を、シリコーンゴムで構成されている。このため、雪切板2の耐候性をより高めることができる。雪切板2は、シリコーンゴム以外に、合成樹脂、金属、セラミックス等を含んでいても良い。また、シリコーンゴムには、シリカ、グラファイト等のフィラーが含まれていても良い。雪切板2は、空から降ってくる雪を分ける役割を有する平板である。雪切板2は、透明な構造体、半透明な構造体、または不透明な有色構造体でも良い。雪切板2は、有色構造体の場合には、好ましくは黒色構造体である。雪切板2を黒色にすると、赤外線の吸収能が高くなり、雪切の温度を上げることができる。この結果、積雪が融けて水が生じやすく、落雪しやすくできる。
【0019】
雪切板2の厚さは、特に制約はないが、好ましくは3mm以上、より好ましくは3mm以上15mm以下、さらにより好ましくは5mm以上10mm以下である。雪切板2の厚さを3mm以上とすると、大量の積雪があっても、雪切板2が傾かず自立し、降雪を確実に2つに分けることができる。雪切板2の側面(最も広い面)と台座1の斜面5との成す角度θ1,θ2は、90度より大きく、180度未満である(図3を参照。)。これにより、着雪低減機器10に、地面に向かう傾斜領域を設けることができる。斜面5は、管状構造体20の曲面に積雪するのを防止するのに役立つ。この結果、頻繁に落雪を促すことができる。この実施形態では、θ1=θ2であるが、θ1<θ2またはθ1>θ2でも良い。なお、雪切板2と台座1との境界にはRが形成されており、当該境界に曲面が形成されている方が好ましい。
【0020】
この実施形態に係る着雪低減管状構造体30(図4を参照。)は、着雪低減機器10の底部4を管状構造体20の頂部曲面に固定した形態を有する。管状構造体20は、線路上や道路上にある鋼管柱(ビームや梁)を含むように解釈されるが、当該鋼管柱に限定されない。また、管状構造体20は、その内部を中空とするものに限定されず、中実で円柱状の構造体でも良い。管状構造体20の形状は、真円柱形状または真円筒形状に限定されず、楕円柱形状または楕円筒形状でも良い。
【0021】
着雪低減機器10の底部4を管状構造体20の頂部曲面に固定する方法としては、接着剤または粘着剤を用いた方法を例示できる。接着の好適な方法としては、シリコーン系接着剤の使用、パテの使用、あるいはその併用を挙げることができる。シリコーン系接着剤としては、硬化性シリコーン組成物、特に、空気中の水分を利用して硬化可能な縮合反応型の硬化性シリコーン組成物が好ましい。管状構造体20の頂部曲面と着雪低減機器10の底部4との強固な固定を実現するために、当該頂部曲面にプライマーを塗布してから、底部4または頂部曲面に硬化性シリコーン組成物を供するのが好ましい。このように、底部4と頂部曲面との間に接着剤または粘着剤を挟んで固定することにより、着雪低減機器10の管状構造体20への手軽でかつ確実な固定が可能となる。また、台座1を中実にして、その空間に磁石を入れ、台座1と管状構造体20との接着や粘着をサポートするようにしてもよい。
【0022】
着雪低減機器10の底部4は、好ましくは、管状構造体20の頂部曲面に沿って湾曲して固定される。台座1が比較的柔らかい材料、例えばシリコーンゴムで構成されている場合には、台座1の底部4を前記頂部曲面に沿って湾曲変形させることが容易である。底部4の弧の長さ(図4のA-B間の弧の長さ)は、好ましくは、管状構造体20の円周に対して1/11以上1/2以下である。この結果、管状構造体20の管形状を利用して落雪を促進できる。
【0023】
図5は、図2の着雪低減機器の各種変形例(5A,5B,5C)を図3と同様の断面図にて示す。
【0024】
(5A)は、図2の台座1に形成される溝3をさらに深く形成して、雪切板2を台座1a内に深く挿入させて固定した第1変形例を示す。第1変形例に係る着雪低減機器10aは、雪切板2をより安定して台座1aに固定できるという作用効果を発揮する。
【0025】
(5B)は、図2の台座1を中空の部材とした第2変形例を示す。第2変形例に係る着雪低減機器10bにおいて、台座1bは、台座1と同様、頂部6に雪切板2を嵌め込み可能な溝3を備える。台座1bに中空領域7を構成することにより、着雪低減機器10bは、軽量化を図ることができるという作用効果を発揮する。なお、第2変形例では、着雪低減機器10bの台座1bは、台座1bの長さ方向、すなわち三角柱の長さ方向に貫通する貫通路(中空領域7の一例)を有している。しかし、台座1bは、貫通路以外の中空領域7として、閉鎖空間、または長さ方向の一方のみに開口する凹部を有していても良い。台座1bをその長さ方向に垂直に切ったときの中空領域7の断面は、三角形に限定されず、例えば、円形、楕円形、または四角以上の多角形でも良い。
【0026】
(5C)は、(5B)の台座1bの溝3に代えて、頂部6から中空領域7に貫通する貫通部位8を備えた第3変形例を示す。第3変形例に係る着雪低減機器10cにおいて、雪切板2は、貫通部位8から中空領域7に挿通されて台座1cに固定される。台座1cをその長さ方向に垂直に切ったときの中空領域7の断面は、三角形に限定されず、例えば、円形、楕円形、または四角以上の多角形でも良い。第3変形例に係る着雪低減機器10cは、雪切板2をより安定して台座1cに固定できるという作用効果に加え、着雪低減機器10cの軽量化を図ることができるという作用効果も発揮する。
【0027】
着雪低減管状構造体30は、図5に示す着雪低減機器10a,10b,10cを備えても良い。
【0028】
図6は、図2の着雪低減機器の雪切板の形状を変更した第4変形例における雪切板の先端近傍の拡大断面図を示す。
【0029】
第4変形例では、雪切板2の先端9は、角度θ3を成して尖っている。θ3は、鋭角であって、好ましくは0度より大きく80度以下の角度である。雪切板2の先端9を鋭角に尖らせることにより、雪切板2の頂上部位への着雪を低減できる。
【0030】
着雪低減管状構造体30は、図6に示す雪切板2を備えた着雪低減機器を備えても良い。
【0031】
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は、これらの形態に限定されず、種々変形可能である。
【0032】
例えば、上述の実施形態では、管状構造体20の長さ方向に沿った雪切板2の長さと、管状構造体20の長さ方向に沿った台座1,1a,1b,1c(台座1等という。)の長さと、を同一としている。しかし、雪切板2の上記長さと台座1等の上記長さとを異なるようにしても良い。例えば、雪切板2の上記長さを台座1等の上記長さより大きくし、または小さくしても良い。また、台座1等の上記長さは、管状構造体20の長さと同一であるのが好ましいが、異なっていても良い。さらに、2以上の台座1等を上記長さ方向に並べて、1つまたは2以上の雪切板2を当該2以上の台座1等に固定しても良い。
【0033】
台座1等の好適な形状としては、台座1等の長さ方向の端面を三角形とする三角柱、またはその三角柱の長さ方向に貫通する貫通路を有する三角筒である。しかし、台座1等の形状は、上記好適な形状に限定されない。例えば、台座1等は、断面L字形状の長尺部材でも良い。その場合には、断面L字状の角部は台座1等の頂部となり、その角部から延びた先に位置する端部は台座1等の底部となる。
【0034】
台座1等の斜面5は、必ずしも2つとは限らない。台座1等は、斜面5を1つのみ備えていても良い。
【0035】
本発明に係る着雪低減機器および着雪低減管状構造体は、特許請求の範囲における各請求項記載の内容を、組み合わせ不可能な場合を除き、どのように組み合わせても良い。
【実施例0036】
次に、本発明の実施例について、比較例と比較して説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
1.評価対象の鋼管
積雪および落雪の評価対象となる管状構造体として、外径216mm、長さ1000mmの円筒形状のSTK490製鋼管を4本用意した。当該鋼管には、その外表面に溶融亜鉛メッキを施したものを用いた。
【0038】
2.サンプルの準備
2.1 実施例1
鋼管の曲面頂部に、三角柱形状の台座と当該台座の峰上部に固定された雪切板とを備える着雪低減機器をセットした。台座および雪切板は、それぞれ、シリコーンゴム製の台座および雪切板とした。台座は、70mm、70mmおよび70mmの三辺を有する正三角形を長さ方向の両端面とした厚さ3mmの三角筒状の台座とした。台座の3つの側面の内の1つを、鋼管の曲面頂部への接着面とした。雪切板には、鋼管の長さ方向にあたる長さを1000mm、台座の高さ方向に当たる高さを220mm、厚さを6mmとする平板を用いた。雪切板は、台座の峰部に形成された凹部に接着固定した。着雪低減機器は、以下の要領で、鋼管の曲面頂部に固定した。
まず、鋼管の曲面頂部に、刷毛を用いてプライマーを塗布した後、風乾した。プライマーには、信越化学工業株式会社製のプライマーAQ-1(商品名)を用いた。次に、台座の接着面の左右両端に、信越ポリマー株式会社製の湿気硬化型接着剤であるポリマエース(登録商標)を貼り付けた。さらに接着面の中央部に、信越化学工業株式会社製のRTV KE-45T(商品名)を用いて信越化学工業株式会社製のシンエツ パッチシール(登録商標)のゴムシート側を貼り付けた。その後、ポリマエースとパッチシールの粘着部側とを用いて、鋼管上に着雪低減機器の台座を固定した。上記の工程にて鋼管に着雪低減機器を固定した着雪低減管状構造体を、「雪切2019」と称する。
【0039】
2.2 比較例1
実施例1で用いた鋼管と同種の鋼管に、実施例1で用いた雪切板と同種の板(落雪促進シートと称する。)を巻いた。当該工程にて、鋼管の外周囲に落雪促進シートを貼付した着雪低減管状構造体を、「落雪促進シート貼付鋼管」と称する。
【0040】
2.3 比較例2
実施例1で用いた鋼管と同種の鋼管に、実施例1で用いた雪切板より背の高い鋼板(STK490製)を固定した。固定は、溶接により行った。比較例2の金属板の上端と、実施例1の雪切板の上端とは、同じ高さになるようにした。比較例2の金属板の表面には、ヨシモトポール株式会社製の品番ノンスノーαのフッ素系塗料を塗布した。当該工程にて、鋼管の曲面頂部に、フッ素系塗料付きの金属板のみを立てた着雪低減管状構造体を、「ノンスノーα」または単に「α」と称する。
【0041】
2.4 比較例3
実施例1の鋼管と同種の鋼管を、実施例1との比較に用いた。この鋼管を「裸鋼管」と称する。
【0042】
3.実験方法および評価方法
図7は、実験状況の写真を示す。(7A)は、4種類のサンプルを視野に入れた写真を示す。(7B)は、実施例1のサンプルを拡大した写真を示す。
【0043】
実験は、2019年12月~2020年3月までの約4カ月間にわたって青森県内にて行った。評価は、総落雪回数、気温摂氏0度未満時の落雪回数、夜間も含む(24時間)の落雪回数および雪移動の回数の4項目とした。なお、本実施例において、「雪移動」とは、鋼管柱上部の積雪が鋼管柱下部に滑るように移動し、そのままその地点で地面に落雪することなく氷結する現象のことである。実施例1、比較例1~3の合計4本の鋼管を水平な台に載せて、実験を行った。各評価項目は、株式会社ハイク製の電池式LT4Gクラウド対応IoT自動撮影カメラを用いて評価した。降雪開始から、各サンプルの落雪までの状況を上記カメラ、付属の時計および温度計を用いて3分間隔で記録・観察した。
【0044】
4.評価結果
表1および表2は、実施例1を特定の比較例と比較した評価結果を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1の実施例1と比較例3との比較から明らかなように、裸鋼管上に着雪低減機器をセットすると、総落雪回数が4.6倍も増加することがわかった。また、表1の実施例1と比較例1との比較から明らかなように、裸鋼管上に落雪促進シートを巻いただけでは、裸鋼管よりも総落雪回数は増えるものの、着雪低減機器をセットしたサンプルの総落雪回数には及ばないことがわかった。
【0048】
また、表2から明らかなように、着雪低減機器をセットすると、フッ素系塗料を塗布した金属板を立てた場合と比べ、総落雪回数が多く、かつ気温摂氏0度未満の落雪回数および夜間落雪の回数も多くなることがわかった。
【0049】
以上より、台座にシリコーンゴム製の雪切板を立てた構造の着雪低減機器を備えた着雪低減管状構造体(実施例1)は、落雪促進シート貼付鋼管(比較例1)、ノンスノーα(比較例2)および裸鋼管(比較例3)のいずれよりも落雪回数を促進できる構造体であることがわかった。このように頻繁に落雪することは、鋼管への着雪量の低減につながるので、落雪事故の低減に資すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、管状構造体への着雪低減を行う分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1,1a,1b,1c・・・台座、2・・・雪切板、3・・・溝、4・・・底部、5・・・斜面、6・・・頂部(一例として峰部)、7・・・中空領域、8・・・貫通部位、9・・・先端、10,10a,10b,10c・・・着雪低減機器、20・・・管状構造体、30・・・着雪低減管状構造体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7