(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102593
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ハンドルの芯金
(51)【国際特許分類】
B62D 1/08 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B62D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006590
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌司
(72)【発明者】
【氏名】長澤 康悟
(72)【発明者】
【氏名】小見山 将彦
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030CA06
3D030DA56
3D030DA64
3D030DA65
3D030DA66
3D030DA70
3D030DB32
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収性能を向上したステアリングホイールの芯金を提供する。
【解決手段】芯金10は、車両のステアリングシャフトと接続されるボス芯金部16と、ボス芯金部16を囲んで位置するリム芯金部17と、両側方向に延びてボス芯金部16の両側とリム芯金部17とを連結するスポーク芯金部18と、を備える。スポーク芯金部18は、ステアリングシャフトの中心軸に対し、幅中心Cが乗員側と反乗員側とのいずれか一方にオフセットされており、ボス芯金部16とリム芯金部17との中間部にて乗員側と反乗員側との他方に弱部30を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操向用シャフトと接続されるボス芯金部と、
このボス芯金部を囲んで位置するリム芯金部と、
両側方向に延びて前記ボス芯金部の両側と前記リム芯金部とを連結するスポーク芯金部と、を備え、
前記スポーク芯金部は、操向用シャフトの中心軸に対し、幅中心が乗員側と反乗員側とのいずれか一方にオフセットされており、前記ボス芯金部と前記リム芯金部との中間部にて前記乗員側と前記反乗員側との他方に弱部を有する
ことを特徴とするハンドルの芯金。
【請求項2】
スポーク芯金部は、弱部の断面積が前記スポーク芯金部の他部の断面積より小さくなるように形成された切欠部を有する
ことを特徴とする請求項1記載のハンドルの芯金。
【請求項3】
スポーク芯金部は、ボス芯金部側とリム芯金部側とにそれぞれ屈曲部を有し、
弱部は、前記屈曲部間に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドルの芯金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボス芯金部とリム芯金部とをスポーク芯金部により連結したハンドルの芯金に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両において、ステアリングシャフトと接続されるボス部と、円環状をなしボス部の周囲に位置して乗員に把持操作されるリム部と、これらボス部とリム部とを連結する複数のスポーク部と、を備えたハンドルであるステアリングホイールが用いられている。ステアリングホイールは、金属製の芯金を備えている。この芯金には、リム部、ボス部及び各スポーク部のそれぞれに対応するリム芯金部、ボス芯金部及び複数のスポーク芯金部が設定されている。
【0003】
このような芯金は、車両衝突時などに乗員を保護できるよう、乗員側からの接触に対してリム芯金部が変形して衝撃を吸収するように構成されている。例えば、スポーク芯金部とボス芯金部との接続部分にスリットを形成し、ステアリングシャフトの軸方向への入力に対して衝撃吸収するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-104239号公報 (第2頁、
図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、トラック、あるいはバスなど、通常の乗用車と比較してリム部が水平面に近い状態で設置される大型車両用のステアリングホイールにおいては、ステアリングシャフトの軸方向よりも、車両前後方向への入力が大きく、リム芯金部などの変形によって衝撃吸収をする場合でも、乗員がボス部に底づくまでの距離が長い。特に、リム芯金部の中心に対し、スポーク芯金部がオフセットされている場合、スポーク芯金部及びリム芯金部の剛性が高くなることで、衝撃吸収性能が低下しやすい。さらに、近年では、ステアリングホイールに乗員が操作するスイッチが設定されるため、衝撃によってリム芯金部が変形した際にスイッチが破損しないようにスイッチ周辺の強度は確保しておく必要がある。そのため、特に大型車両用のステアリングホイールの芯金においては、衝撃吸収のために、限られた範囲で大きな変形量を得ることが望まれる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、衝撃吸収性能を向上したハンドルの芯金を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のハンドルの芯金は、車両の操向用シャフトと接続されるボス芯金部と、このボス芯金部を囲んで位置するリム芯金部と、両側方向に延びて前記ボス芯金部の両側と前記リム芯金部とを連結するスポーク芯金部と、を備え、前記スポーク芯金部は、操向用シャフトの中心軸に対し、幅中心が乗員側と反乗員側とのいずれか一方にオフセットされており、前記ボス芯金部と前記リム芯金部との中間部にて前記乗員側と前記反乗員側との他方に弱部を有するものである。
【0008】
請求項2記載のハンドルの芯金は、請求項1記載のハンドルの芯金において、スポーク芯金部は、弱部の断面積が前記スポーク芯金部の他部の断面積より小さくなるように形成された切欠部を有するものである。
【0009】
請求項3記載のハンドルの芯金は、請求項1または2記載のハンドルの芯金において、スポーク芯金部は、ボス芯金部側とリム芯金部側とにそれぞれ屈曲部を有し、弱部は、前記屈曲部間に形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のハンドルの芯金によれば、乗員側からの過大荷重入力時にスポーク芯金部が弱部から容易にねじれることができるとともに、弱部によってリム芯金部を曲がりやすくできるとともに、リム芯金部の回転中心がリム芯金部の中心に移動するので、リム芯金部の回転モーメントを確保でき、大きな変形量を得ることができるため、衝撃吸収性能を向上できる。
【0011】
請求項2記載のハンドルの芯金によれば、請求項1記載のハンドルの芯金の効果に加えて、要求される共振周波数を確保しつつ、弱部を容易に形成できる。
【0012】
請求項3記載のハンドルの芯金によれば、請求項1または2記載のハンドルの芯金の効果に加えて、屈曲部間で変形しにくくかつ曲がりが少ない部分に弱部を設定し、要求される共振周波数を確保しつつ、ハンドルの転舵時などに乗員側から過大荷重が入力されたときに、応力を分散してスポーク芯金部の破断や破損を抑制し、スポーク芯金部全体をバランスよく変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のハンドルの芯金を示し、(a)は芯金の正面図、(b)は芯金の平面図である。
【
図2】同上ハンドルの芯金の使用状態を模式的に示す側面図である。
【
図3】(a)は同上芯金を備えるハンドルを示す正面図、(b)は同上ハンドルの使用状態を模式的に示す側面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態のハンドルの芯金を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図3(a)及び
図3(b)において、1は自動車部品としてのハンドル(ステアリングハンドル)であるステアリングホイールである。ステアリングホイール1は、自動車の運転席の乗員の前方に配置される。本実施の形態において、ステアリングホイール1は、例えばトラックやバスなどの、中型ないし大型の車両に搭載されるものを例に挙げて説明する。
【0016】
ステアリングホイール1は、ハンドル本体部であるステアリングホイール本体部2と、このステアリングホイール本体部2の乗員側に取り付けられるエアバッグ装置などの設置体であるモジュール3と、ステアリングホイール本体部2の乗員側とは反対側である反乗員側、すなわちモジュール3と反対側に取り付けられる図示しない被覆部材としてのカバー体であるバックカバーと、などから構成されている。また、ステアリングホイール1には、必要に応じて、ステアリングホイール本体部2の乗員側に図示しない装飾部材としてのフィニッシャ(ガーニッシュ)などが取り付けられる。
【0017】
ステアリングホイール1は、操縦装置としての操向用シャフトであるステアリングシャフト5に装着され、水平方向に対して所定のシャフト角θで傾斜した状態で車載される。以下、ステアリングホイール1が備えられる車体の直進方向を基準として、左右方向(矢印L,R方向)を説明するとともに、ステアリングホイール1を正面から見た状態を基準として上下方向(矢印U,D方向)を説明する。つまり、乗員側が下側、反乗員側(乗員側とは反対側)が上側である。また、ステアリングシャフト5の軸方向において、乗員に臨む側を正面側(矢印FR方向)、その反対側を背面側(矢印RR方向)として説明する。また、ステアリングホイール1は、特記しない限り操舵基準状態、すなわち中立(ニュートラル)状態として説明する。
【0018】
ステアリングホイール本体部2は、ステアリングシャフト5に装着されるハブ部であるボス部(マウント部)6と、ボス部6の周辺に位置するリム部(リング部)7と、これらボス部6とリム部7とを連結するスポーク部8と、から構成されている。
【0019】
ボス部6には、モジュール3が取り付けられている。
【0020】
リム部7は、乗員がステアリングホイール1を操作するために把持する部分である。リム部7は、ステアリングシャフト5の軸方向と直交する仮想面Pに沿って位置する。すなわち、水平前後方向に対する仮想面Pの傾斜角は、90°からシャフト角θを引いた角度となっている。本実施の形態において、仮想面Pは、水平方向(前後方向)に対する傾斜が45°未満、つまり水平に近い角度に設定されている。リム部7は、円弧状または楕円弧状に形成されている。本実施の形態において、リム部7は、円環状または楕円環状に連なって形成され、ボス部6の外方を囲んで位置している。
【0021】
スポーク部8は、複数設定されている。本実施の形態において、スポーク部8は、左右両側に設定されている。図示される例では、スポーク部8は、左右1本ずつ、計2本設定されている。すなわち、スポーク部8は、左右方向に延びて、ボス部6の左右両側部とリム部7の左右両側部とを連結するように左右方向に延びている。スポーク部8は、ステアリングホイール本体部2の中心に対し、左右対称または略左右対称に配置されている。また、スポーク部8には、被操作部であるスイッチ9が設定されている。本実施の形態では、スイッチ9は、左側のスポーク部8に設定されて、リム部7を把持した乗員が左手の親指で操作可能となっている。これに限らず、スイッチ9は、右側のスポーク部8に設定されていてもよいし、両側のスポーク部8にそれぞれ設定されていてもよい。
【0022】
ステアリングホイール本体部2は、芯金(アーマチュア)10の一部が合成樹脂製などの被覆部11により被覆されて構成されている。被覆部11の表面は、皮革や合成樹脂などの表皮体により覆われていてもよい。
【0023】
図1(a)及び
図1(b)に示す芯金10は、例えばアルミニウム、マグネシウム、あるいは鉄などの金属により一体に成形された、金属製のものである。芯金10は、図示しない成形型を用いて鋳造(ダイカスト成形)される。芯金10は、ボス部6と、リム部7と、スポーク部8と、に対応して、ボス芯金部16と、リム芯金部17と、スポーク芯金部18と、を有する。したがって、本実施の形態において、リム芯金部17は、ボス芯金部16の周辺に位置し、スポーク芯金部18は、ボス芯金部16の左右両側部に設定されている。芯金10は、概略として、略左右対称に形成されている。
【0024】
ボス芯金部16は、ボス部6の芯を構成し、モジュール3を支持する。ボス芯金部16は、モジュール3の背面側に位置し、モジュール3とバックカバーとの間に配置される。ボス芯金部16は、モジュール3の大きさに応じた面状に拡がって位置する。また、
図1(a)に示すように、ボス芯金部16は、ステアリングシャフト5(
図3(b))と連結されるボス開口部20を有する。ボス開口部20は、ステアリングシャフト5(
図3(b))とスプライン結合され、ステアリングホイール1(
図3(b))の回転中心となる。つまり、ボス開口部20の中心が、ステアリングシャフト5(
図3(b))の中心軸Xと一致または略一致する。ボス開口部20は、ボス芯金部16の左右方向の中央部に位置するとともに、ボス芯金部16の上側寄りにあり、図示される例では、ボス芯金部16の上縁近傍に位置する。つまり、ボス芯金部16は、ステアリングホイール本体部2の中央部に対して、上側よりも下側に広く配置されている。
【0025】
リム芯金部17は、リム部7(
図3(a))の芯を構成する。すなわち、本実施の形態のリム芯金部17は、
図2に示すように、仮想面Pに沿って位置する。リム芯金部17は、リム部7(
図3(a))の形状に応じて円弧状または楕円弧状に形成されている。本実施の形態において、リム芯金部17は、円環状または楕円環状に連なって形成され、ボス芯金部16を囲んでいる。
図1(a)に示すように、リム芯金部17の中心が、ボス開口部20の中心、すなわちステアリングシャフト5(
図3(a))の中心軸Xと一致または略一致する。リム芯金部17は、スポーク芯金部18と連結されるスポーク連結部22を有する。リム芯金部17の全体からスポーク連結部22を介してスポーク芯金部18の一部に亘る範囲が、被覆部11(
図3(a))により被覆される。
【0026】
スポーク連結部22は、リム芯金部17の左右両側部に設定されている。左右のスポーク連結部22間において、リム芯金部17の反乗員側である上側に、スポーク芯金部18と非連結の反乗員側非連結部である上側非連結部24が設定され、リム芯金部17の乗員側である下側に、スポーク芯金部18と非連結の乗員側非連結部である下側非連結部25が設定されている。すなわち、上側非連結部24の左端部と下側非連結部25の左端部との間に左側のスポーク連結部22が位置し、上側非連結部24の右端部と下側非連結部25の右端部との間に右側のスポーク連結部22が位置する。本実施の形態では、スポーク連結部22は、リム芯金部17を正面から見てアナログ時計の8時ないし9時位置と、4時ないし3時位置と、に設定されている。つまり、スポーク連結部22は、リム芯金部17の中央部よりも下側寄りにある。そのため、スポーク連結部22を境として、上側非連結部24が、下側非連結部25よりも緯線方向(矢印LT方向)の長さである周長が長く、すなわちリム芯金部17の緯線方向において広い範囲に設定されている。そこで、ボス部6と上側のリム部7との間の開口部を大きく形成して、インストルメントパネルのメータなどの視認性を向上している。
【0027】
上側非連結部24は、リム芯金部17を正面から見て、上端部を含む範囲に亘り形成される。つまり、上側非連結部24は、リム芯金部17において、アナログ時計の12時位置を含む範囲に形成されている。すなわち、上側非連結部24は、リム芯金部17において、乗員から最も離隔する位置を含む範囲に形成されている。上側非連結部24は、リム芯金部17の少なくとも上側の半分を構成する。本実施の形態では、上側非連結部24は、リム芯金部17の上側の半分よりも下側寄りの範囲までを構成する。上側非連結部24は、円弧状に連なって形成されている。上側非連結部24は、任意の断面形状としてよいが、本実施の形態では、背面側に開口するまたは背面側が窪んだU字状の断面形状を有する。
【0028】
下側非連結部25は、リム芯金部17を正面から見て、下端部を含む範囲に亘り形成される。つまり、下側非連結部25は、リム芯金部17において、アナログ時計の6時位置を含む範囲に形成されている。すなわち、下側非連結部25は、乗員に最も近接する位置を含む範囲に形成されている。下側非連結部25は、乗員側から荷重が加わったときにスポーク連結部22及びスポーク芯金部18とともに変形することで衝撃を吸収し、乗員を保護する部分である。
【0029】
下側非連結部25は、円弧状に連なって形成されている。下側非連結部25は、上側非連結部24と略同径に形成され、上側非連結部24と一体的に円環状のリム芯金部17を構成する。下側非連結部25は、スポーク連結部22及び上側非連結部24と比較して、断面積が小さく、つまり細く形成されている。
【0030】
そして、リム芯金部17と、ボス芯金部16の両側部と、を連結するスポーク芯金部18は、スポーク部8(
図3(a))の芯を構成する。スポーク芯金部18は、ボス芯金部16の両側部とリム芯金部17の両側部とを連結する。本実施の形態において、スポーク芯金部18は、ボス芯金部16からリム芯金部17に亘り、正面から見て左右方向に直線状に延び、上側または下側から見て、リム芯金部17よりも背面側に位置し、リム芯金部17からボス芯金部16に亘り、背面側に屈曲している。
図1(b)に示すように、スポーク芯金部18には、ボス芯金部16との連結部である一端部に、屈曲部であるボス側屈曲部27が形成されている。また、スポーク芯金部18には、リム芯金部17との連結部である他端部に、屈曲部であるリム側屈曲部28が形成されている。スポーク芯金部18において、屈曲部27,28間が、中間部29となっている。スポーク芯金部18は、屈曲部27,28の位置でそれぞれ前側に向かって屈曲し、これら屈曲部27,28間の中間部29が前側に凸状となるように湾曲している。
【0031】
また、
図1(a)に示すように、スポーク芯金部18は、ボス開口部20、すなわちステアリングホイール1(
図3(a))の回転中心、換言すればステアリングシャフト5の中心軸Xに対し、上下の幅中心Cが反乗員側である上側または乗員側である下側にオフセットされている。図示される例では、スポーク芯金部18は、ステアリングシャフト5の中心軸Xに対し、上下の幅中心Cが乗員側である下側にオフセットされている。
【0032】
そして、スポーク芯金部18には、弱部30が形成されている。弱部30は、スポーク芯金部18の残りの他部より断面積が小さい部分である。つまり、弱部30は、スポーク芯金部18において、最も断面積が小さい部分である。図示される例では、弱部30は、上下方向の幅がスポーク芯金部18において最も小さい部分である。本実施の形態において、弱部30は、スポーク芯金部18の乗員側である下側に形成された空間部である切欠部31によって切り欠かれたスポーク芯金部18の残部であり、スポーク芯金部18の反乗員側である上側に偏って位置する。弱部30は、正面から見て、スポーク芯金部18の上下方向の幅中心Cよりも上側に偏り、かつ、幅中心Cよりも下側の範囲にも一部が位置する。本実施の形態において、切欠部31は、反乗員側である上側に凸状の曲線状に滑らかに連なる縁部を有して形成されている。図示される例では、切欠部31は、例えば円弧状または略円弧状に形成されている。切欠部31により、スポーク芯金部18は弱部30からボス芯金部16及びリム芯金部17へと徐々に上下方向の幅が大きくなるように形成されている。
【0033】
弱部30及び切欠部31は、ボス芯金部16とリム芯金部17との間に形成されている。つまり、弱部30及び切欠部31は、屈曲部27,28間に位置して、中間部29に形成されている。すなわち、弱部30及び切欠部31は、ボス芯金部16及びリム芯金部17に対してそれぞれ離れて位置する。
【0034】
また、弱部30は、仮想面P(
図2)に対して背面側の位置にある。本実施の形態において、弱部30は、スイッチ9(
図3(a))が設定される被操作部設定範囲であるスイッチ設定範囲SWに対して、ボス芯金部16側に位置する。スイッチ設定範囲SWは、スポーク芯金部18において、リム芯金部17のスポーク連結部22に近接する端部に位置しており、少なくともリム側屈曲部28を含んでスポーク連結部22近傍に亘る範囲となっている。
【0035】
さらに、スポーク芯金部18には、開口部33が形成されている。開口部33は、モジュール3(
図3(a))をボス芯金部16から取り外す際に工具などが挿入される穴部として用いられる。開口部33は、スポーク芯金部18にてボス芯金部16側の端部近傍に位置する。本実施の形態において、開口部33は、ボス側屈曲部27にてスポーク芯金部18の幅中心C上に少なくとも一部が位置する。
【0036】
そして、芯金10は、所定の成形型を用いてダイカスト成形する。成形型から脱型した芯金10に対して、例えばRIM成形などを用いて被覆部11を形成することで、ステアリングホイール本体部2を形成する。形成したステアリングホイール本体部2は、ボス開口部20をステアリングシャフト5と連結して車体側に取り付けた後、ボス芯金部16にモジュール3を取り付ける。そして、必要に応じて被覆部11を表皮体で覆うとともに、スポーク部8にスイッチ9などを取り付けることで、ステアリングホイール1が車体に取り付けられた状態で完成する。この状態で、
図3(b)に示すように、ステアリングホイール1は、リム部7が仮想面Pに沿って位置する。
【0037】
例えば、車両の衝突などにより、運転者である乗員Aがステアリングホイール1に対して水平方向に侵入し、その腹部がステアリングホイール1のリム部7の下端部、つまりアナログ時計の6時方向に接触すると、リム部7(リム芯金部17)がスポーク部8(スポーク芯金部18)の上下方向の幅中心Cを軸に、下側が背面側、上側が正面側となるように回転しようとする。
【0038】
このとき、本実施の形態によれば、スポーク芯金部18のボス芯金部16とリム芯金部17との中間部に弱部30が形成されていることにより、乗員側からの過大荷重入力時にスポーク芯金部18が弱部30から容易にねじれることができる。また、スポーク芯金部18の幅中心Cが、ステアリングシャフト5の中心軸X(ボス開口部20)に対し乗員側にオフセットされていることで、間口が相対的に狭いリム芯金部17の下側非連結部25が、間口が相対的に広い上側非連結部24と比較して曲がりにくくなっているのに対して、スポーク芯金部18の反乗員側、つまりスポーク芯金部18のオフセットとは反対側に弱部30を形成しているので、乗員Aの接触に対し、リム芯金部17(リム部7)を曲がりやすくできるとともに、リム芯金部17(リム部7)の回転中心がリム芯金部17(リム部7)に対する打点から離れてリム芯金部17(リム部7)の中心側に移動するので、リム芯金部17(リム部7)の回転モーメントを確保でき、大きな変形量を得ることができる。
【0039】
そこで、衝撃吸収性能を向上でき、加害値を低減して、車両衝突時などの過大荷重に対して乗員Aを適切に保護できる。
【0040】
また、スポーク芯金部18のステアリングシャフト5に近い部分が細いと、剛性低下によりリム芯金部17(リム部7)の振れが大きくなり共振周波数が低下する。また、転舵時の車両の衝突などにより、運転者である乗員Aがステアリングホイール1に対して侵入し、その腹部がステアリングホイール1のリム部7の側部、つまりアナログ時計の3時方向または9時方向に接触する場合には、リム部7(リム芯金部17)及びスポーク部8(スポーク芯金部18)の変形により衝撃を吸収する。このような荷重の入力に対し、スポーク芯金部18において、屈曲部27,28は、応力が集中しやすい箇所となる。また、スポーク芯金部18に開口部33が形成されていると、開口部33の周辺に最も応力が集中しやすい。この点、開口部33の周辺には、リブなどの補強部を設けることが好ましく、かつ、強度のバランスを考慮すると、補強部は最小範囲とすることが好ましいが、過大荷重入力時には補強部の端末部分に応力が集中することとなる。そこで、弱部30を、スポーク芯金部18において、ボス芯金部16とリム芯金部17との中間部で、屈曲部27,28間に配置することで、変形しにくい中間部29でかつ曲がりが少ない部分に弱部30を設定し、要求される共振周波数を確保しつつ、乗員A側から過大荷重が入力されたときに、応力を分散して過大荷重入力による屈曲部27,28からのスポーク芯金部18の破断や開口部33周辺の補強部端末などでの破損を抑制し、スポーク芯金部18全体をバランスよく変形させることができる。
【0041】
また、弱部30は、スポーク芯金部18にて弱部30の断面積がスポーク芯金部18の他部の断面積より小さくなるように切欠部31によって形成されているので、要求される共振周波数を確保しつつ、弱部30を容易に形成できる。
【0042】
しかも、弱部30がスイッチ設定範囲SWから離れているので、リム芯金部17の変形に伴うスイッチ9の破損なども抑制できる。
【0043】
本発明の第2の実施の形態について
図4に示す。なお、第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0044】
本実施の形態の芯金10のスポーク芯金部18は、リム側屈曲部28とリム芯金部17(スポーク連結部22)との間に、穴部35が形成されている。そのため、穴部35の上下部が、それぞれ断面積が小さく細い連結部36となっている。スイッチ設定範囲SWは、リム側屈曲部28、穴部35及び連結部36,36を含む範囲に設定されている。
【0045】
また、スポーク芯金部18は、ステアリングシャフト5の中心軸Xに対し、上下の幅中心Cが乗員側である下側にオフセットされ、ボス芯金部16側からリム芯金部17側へと、徐々に下側に湾曲して形成されている。
【0046】
そして、スポーク芯金部18には、弱部30が切欠部31により形成されている。弱部30及び切欠部31は、穴部35よりもボス芯金部16側に位置し、ボス芯金部16とリム芯金部17との間にて、屈曲部27,28間の中間部29に位置している。
【0047】
このように、第2の実施の形態の芯金10においても、第1の実施の形態と同様にスポーク芯金部18に弱部30を有することにより、衝撃吸収性能を向上できるなど、第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
また、各実施の形態において、スポーク芯金部18は、ステアリングシャフト5の中心軸Xに対して、反乗員側である上側にオフセットされていてもよい。この場合には、弱部30をスポーク芯金部18の乗員側である下側に形成することで、衝撃吸収性能を向上できるなど、各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば自動車などの車両用のステアリングホイールの芯金として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ハンドルであるステアリングホイール
5 操向用シャフトであるステアリングシャフト
10 芯金
16 ボス芯金部
17 リム芯金部
18 スポーク芯金部
27 屈曲部であるボス側屈曲部
28 屈曲部であるリム側屈曲部
30 弱部
31 切欠部
C 幅中心
X 中心軸