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特開2024-102594作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102594
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006591
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌保
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC11
2D003BB07
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
(57)【要約】
【課題】破砕対象物の飛び散りを抑制する。
【解決手段】作業機械は、破砕対象物を破砕する作業機と、作業機を駆動する駆動力を発生する電動モータと、コントローラとを備えている。コントローラは、破砕対象物に荷重が作用した状態で、破砕対象物に作用する荷重を逐次算出する。コントローラは、荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、電動モータが発生する駆動力を減少させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象物を破砕する作業機と、
前記作業機を駆動する駆動力を発生する電動モータと、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記破砕対象物に荷重が作用した状態で、前記破砕対象物に作用する前記荷重を逐次算出し、前記荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、前記電動モータが発生する駆動力を減少させる、作業機械。
【請求項2】
前記作業機の姿勢を検出する作業機姿勢センサをさらに備え、
前記作業機は、先端に設けられるアタッチメントを含み、
前記コントローラは、前記アタッチメントの先端の移動量を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記移動量の所定の増加に対する前記荷重の変化を算出する、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記移動量の所定の増加に対する前記荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、前記電動モータが発生する駆動力を減少させる、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
作動油により動作し、前記作業機を駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに前記作動油を供給する油圧ポンプと、をさらに備え、
前記電動モータは、前記油圧ポンプを駆動する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記圧力センサにより検出された前記作動油の圧力を用いて、前記破砕対象物に作用する荷重を算出する、請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記作業機は、先端に設けられるアタッチメントを含み、
前記油圧アクチュエータは、前記アタッチメントを駆動する油圧シリンダである、請求項5に記載の作業機械。
【請求項8】
破砕対象物を破砕する作業機と、
前記作業機を駆動する駆動力を発生する電動モータと、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記破砕対象物に荷重が作用した状態で、前記破砕対象物に作用する前記荷重を逐次算出し、前記荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、前記電動モータが発生する駆動力を減少させる、作業機械を含むシステム。
【請求項9】
破砕対象物を破砕する作業機を、電動モータが発生する駆動力で駆動することと、
前記破砕対象物に作用する荷重を逐次算出することと、
前記破砕対象物に前記荷重が作用した状態で、前記荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、前記電動モータが発生する駆動力を減少させることと、を備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2011-58281号公報(特許文献1)には、作業機械の作業腕に取付けたブレーカに作動油を供給するブレーカ制御弁をON・OFF操作するブレーカ操作器がONで、ブレーカを破砕対象物に押付ける作業腕の油圧シリンダの押付け油圧力が所定の圧力以下のときは、ブレーカ操作器をOFFにしてブレーカの作動を停止させる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-58281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械の作業機で、コンクリートなどの破砕対象物を破砕する場合、破砕対象物の破片が飛び散り、周囲への影響に配慮しながら作業しなければならない。
【0005】
本開示では、破砕対象物の飛び散りを抑制できる、作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、破砕対象物を破砕する作業機と、作業機を駆動する駆動力を発生する電動モータと、コントローラとを備える、作業機械、および作業機械を含むシステムが提案される。コントローラは、破砕対象物に荷重が作用した状態で、破砕対象物に作用する荷重を逐次算出する。コントローラは、荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、電動モータが発生する駆動力を減少させる。
【0007】
本開示のある局面に従うと、作業機械の制御方法が提案される。制御方法は、以下のステップを備えている。第1のステップは、破砕対象物を破砕する作業機を、電動モータが発生する駆動力で駆動することである。第2のステップは、破砕対象物に作用する荷重を逐次算出することである。第3のステップは、破砕対象物に荷重が作用した状態で、荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、電動モータが発生する駆動力を減少させることである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の作業機械、作業機械を含むシステム、および作業機械の制御方法によると、破砕対象物の飛び散りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における作業機械の構成を概略的に示す側面図である。
図2図1に示される作業機械のシステム構成を示すブロック図である。
図3】ポンプコントローラの機能ブロックを説明する図である。
図4】破砕対象物の破砕作業の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】油圧シリンダの概略構成を示す部分断面図である。
図6】破砕対象物に作用する荷重とアタッチメントの先端の移動量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0011】
以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、運転室2a内の運転席2bに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0012】
<作業機械の構成>
図1は、実施形態における作業機械の一例としての電動ショベル100の構成を概略的に示す側面図である。図1に示されるように、本実施の形態の電動ショベル100は、走行体1と、旋回体2と、作業機3とを主に有している。走行体1と旋回体2とにより、電動ショベル100の車体が構成されている。
【0013】
走行体1は、左右一対の履帯装置1aを有している。この左右一対の履帯装置1aの各々は、履帯を有している。左右一対の履帯が回転駆動されることにより、電動ショベル100が自走する。
【0014】
旋回体2は、走行体1に対して旋回自在に設置されている。この旋回体2は、運転室(キャブ)2aと、運転席2bと、外装カバーに覆われた機械室2cとを主に有している。運転室2aは、旋回体2のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。運転室2aの内部空間には、オペレータが着座するための運転席2bが配置されている。
【0015】
機械室2cは、運転室2aに対して旋回体2の後方側(車両後側)に配置されている。機械室2cには、バッテリ37、インバータ31、電動モータ40、油圧ポンプ43、旋回モータ24、メインバルブ41、および作動油タンク42(いずれも図2参照)などが配置されている。
【0016】
作業機3は、旋回体2の前方側であって運転室2aのたとえば右側において、旋回体2に支持されている。作業機3は、たとえばブーム3a、アーム3b、アタッチメント3cなどを有している。ブーム3aの基端部は、ブームフートピン5aにより旋回体2に回転可能に連結されている。アーム3bの基端部は、ブームトップピン5bによりブーム3aの先端部に回転可能に連結されている。アタッチメント3cは、アームトップピン5cによりアーム3bの先端部に回転可能に連結されている。
【0017】
ブーム3aは、ブームシリンダ4aにより駆動可能である。この駆動により、ブーム3aは、ブームフートピン5aを中心に旋回体2に対して上下方向に回動可能である。アーム3bは、アームシリンダ4bにより駆動可能である。この駆動により、アーム3bは、ブームトップピン5bを中心にブーム3aに対して上下方向に回動可能である。アタッチメント3cは、バケットシリンダ4cの駆動により、アームトップピン5cを中心にアーム3bに対して上下方向に回動可能である。
【0018】
アタッチメント3cは、一対の破砕歯3c1,3c2を有している。アタッチメント3cは、一対のアタッチメントシリンダ4d(4d1,4d2)を有するダブルシリンダ型の大割機である。破砕歯3c1は、アタッチメントシリンダ4d1により駆動可能である。破砕歯3c2は、アタッチメントシリンダ4d2により駆動可能である。アタッチメントシリンダ4d1,4d2が伸び動作をすると、破砕歯3c1,3c2は、歯先3c1a,3c2aが互いに近づくように動作する。アタッチメントシリンダ4d1,4d2が縮み動作をすると、破砕歯3c1,3c2は、歯先3c1a,3c2aが互いに離れるように動作する。このように作業機3は駆動可能である。
【0019】
図1に示されるアタッチメント3cは、一対の破砕歯3c1,3c2の間に破砕対象物を挟み込んで破砕する大割機であるが、これに限定されず、小割機であってもよい。また、作業機3は、他の種類のアタッチメントとして、バケット、ブレーカ、グラップルなどを、アーム3bの先端部に取り付けることが可能に構成されている。
【0020】
作業機3は、作業具リンク3dを有している。作業具リンク3dは、第1リンク部材3daと、第2リンク部材3dbとを有している。第1リンク部材3daの先端と第2リンク部材3dbの先端とは、バケットシリンダトップピン3dcを介して、相対回転可能に連結されている。バケットシリンダトップピン3dcは、バケットシリンダ4cの先端に連結されている。したがって第1リンク部材3daおよび第2リンク部材3dbは、バケットシリンダ4cにピン連結されている。
【0021】
第1リンク部材3daの基端は、第1リンクピン3ddによりアーム3bに回転可能に連結されている。第2リンク部材3dbの基端は、第2リンクピン3deによりアタッチメント3cの根元部分のブラケットに回転可能に連結されている。
【0022】
ブームシリンダ4aのヘッド側に設けられている圧力センサ6aは、ブームシリンダ4aのシリンダヘッド側油室14A内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。ブームシリンダ4aのボトム側に設けられている圧力センサ6bは、ブームシリンダ4aのシリンダボトム側油室14B内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。
【0023】
ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4cおよびアタッチメントシリンダ4d1,4d2のそれぞれには、ストロークセンサ7a,7b,7c,7d1,7d2が取り付けられている。ストロークセンサ7aは、ブームシリンダ4aにおけるシリンダ4aaに対するシリンダロッド4abの変位量を検出する。ストロークセンサ7bは、アームシリンダ4bにおけるシリンダロッドの変位量を検出する。ストロークセンサ7cは、バケットシリンダ4cにおけるシリンダロッドの変位量を検出する。ストロークセンサ7d1,7d2は、アタッチメントシリンダ4d1,4d2におけるシリンダロッドの変位量を検出する。
【0024】
ブームフートピン5a、ブームトップピン5bおよびアームトップピン5cのそれぞれの周囲には、角度センサ9a,9b,9cが取り付けられていてもよい。角度センサ9a,9b,9cは、ポテンショメータであってもよく、ロータリーエンコーダであってもよい。
【0025】
図1に示されるように、側方視において、ブームフートピン5aとブームトップピン5bとを通る直線(図1中に二点鎖線で図示)と、上下方向に延びる直線(図1中に破線で図示)とのなす角度を、ブーム角θbとする。ブーム角θbは、通常、鋭角である。ブーム角θbは、旋回体2に対するブーム3aの角度を表す。ブーム角θbは、ストロークセンサ7aの検出結果から算出することができ、また角度センサ9aの測定値から算出することができる。
【0026】
側方視において、ブームフートピン5aとブームトップピン5bとを通る直線と、ブームトップピン5bとアームトップピン5cとを通る直線(図1中に二点鎖線で図示)とのなす角度を、アーム角θaとする。アーム角θaは、側方視でアーム3bが回動する領域におけるブーム3aに対するアーム3bの角度を表す。アーム角θaは、ストロークセンサ7bの検出結果から算出することができ、また角度センサ9bの測定値から算出することができる。
【0027】
アーム3bに対するアタッチメント3cの角度は、ストロークセンサ7cの検出結果から算出することができ、また角度センサ9cの測定値から算出することができる。アタッチメントシリンダ4d1,4d2に取り付けられるストロークセンサ7d1,7d2の検出結果から、アタッチメント3cの歯先3c1a,3c2aの移動量を算出することができる。
【0028】
また旋回体2、ブーム3a、アーム3bおよび第1リンク部材3daのそれぞれには、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)8a,8b,8c,8dが取り付けられている。IMU8aは、前後方向、左右方向および上下方向における旋回体2の加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりの旋回体2の角速度とを計測する。IMU8b,8c,8dのそれぞれは、前後方向、左右方向および上下方向におけるブーム3a、アーム3b、第1リンク部材3daの加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりのブーム3a、アーム3b、第1リンク部材3daの角速度とを計測する。
【0029】
旋回体2に取り付けられたIMU8aで測定された加速度とブーム3aに取り付けられたIMU8bで測定された加速度との差分に基づいて、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度(ブームシリンダ4aの伸縮速度の変化量)を取得することができる。ブーム角θb、アーム角θa、アーム3bに対するアタッチメント3cの角度は、それぞれIMU8b,8c,8dの検出結果から算出されてもよい。
【0030】
IMU8aは、作業機械の車体に取り付けられ車体の位置を検出する車体位置センサを構成している。ストロークセンサ7a,7b,7c,7d1,7d2、角度センサ9a,9b,9c、およびIMU8b,8c,8dは、作業機3に取り付けられ作業機械の車体に対する作業機3の姿勢を検出する作業機姿勢センサを構成している。
【0031】
<システム構成>
図2は、図1に示される作業機械のシステム構成を示すブロック図である。電動ショベル100は、動力源としての電動モータ40を備えている。電動ショベル100では、作業機3を駆動する駆動力を、電動モータ40が発生する。電動モータ40は、作業機3を駆動可能である。ブーム3a、アーム3bおよびアタッチメント3cの各々が電動モータ40によって駆動されることにより、作業機3の動作が可能である。
【0032】
電動モータ40は、バッテリ37を電源として、インバータ31から供給された交流電力により駆動する。電動モータ40の回転速度は、インバータ31から供給される交流電力の周波数により制御される。
【0033】
バッテリ37は、蓄電装置であり、電気エネルギーを蓄える。バッテリ37は、蓄えた電気エネルギーを起電力として取り出す。バッテリ37は、たとえば複数のバッテリモジュールを含んでいる。複数のバッテリモジュールの各々は、複数のバッテリセルを有している。バッテリセルは、たとえば、正極と負極とを、セパレータを間に介在させて積層することにより、構成されている。
【0034】
インバータ31は、バッテリ37の出力である直流電流を、周波数などを制御した交流電流に変換する。インバータ31は、電気配線を通じて電動モータ40に交流電力を供給する。インバータ31は、電気コントローラ30から入力された制御信号に従って、電動モータ40の駆動を制御する。このようにバッテリ37に蓄えられた電気エネルギーは電動モータ40に供給される。
【0035】
バッテリ37とインバータ31とは、配電ユニット(PDU)35および高圧ジャンクションボックス(HVJB)36を介して、電気的に接続されている。配電ユニット35は、バッテリ37に蓄えられた電力を、インバータ31を含む各機器に分配する機能を有している。高圧ジャンクションボックス36には、バッテリ37が接続されており、また充電ポート38が接続されている。充電ポート38に、外部電源または外部の発電機が接続されて、バッテリ37が充電される。バッテリ37は、外部から得た電気エネルギーを蓄える。
【0036】
インバータ31、配電ユニット35、高圧ジャンクションボックス36、バッテリ37、充電ポート38、および電動モータ40は、高圧配線によって接続されている。バッテリ37は、高圧配線を通じてインバータ31に電力を供給する。
【0037】
電動モータ40の出力軸は、油圧ポンプ43の入力軸に機械的に接続されている。電動モータ40が駆動することにより、電動モータ40の駆動力が油圧ポンプ43に伝達され、油圧ポンプ43が駆動する。
【0038】
油圧ポンプ43は、駆動することにより、油圧配管を通じて作動油タンク42から作動油を汲み出す。作動油タンク42は、油圧ポンプ43に作動油を供給する役割をなす。油圧ポンプ43から吐出された作動油は、油圧配管を通じて、メインバルブ41へ供給される。油圧ポンプ43は、駆動することにより、メインバルブ41を通じて、油圧アクチュエータに作動油を供給する。メインバルブ41は、油圧ポンプ43と油圧アクチュエータとの間の油路(油圧配管)に配置されている。
【0039】
油圧アクチュエータは、図1にも示されるブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4cおよびアタッチメントシリンダ4dに加えて、旋回モータ24と、図示しない走行モータとを含む。ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4cおよびアタッチメントシリンダ4dは、油圧駆動される油圧シリンダである。旋回モータ24および走行モータは、油圧駆動される油圧モータである。
【0040】
メインバルブ41は、多数の制御弁、パイロット弁などの集合体として構成されている。メインバルブ41は、油圧ポンプ43により作動油タンク42から汲み出された作動油を、油圧アクチュエータに給排する。油圧アクチュエータから排出される作動油は、油圧配管およびメインバルブ41を経由して、作動油タンク42へと戻される。
【0041】
油圧ポンプ43から送出された油の一部は、自己圧減圧弁45によって一定の圧力に減圧される。その減圧された油は、パイロット油として使用される。パイロット油は、メインバルブ41のスプールを作動するために、メインバルブ41に供給される油である。メインバルブ41は、一対の受圧室を有している。所定の圧力(パイロット圧)を有しているパイロット油が各受圧室へ供給されることにより、パイロット圧に従ってスプールが移動して、メインバルブ41が制御される。
【0042】
パイロット油の油路に、EPC(電磁比例制御)弁46が設けられている。EPC弁46は、ポンプコントローラ34からの制御信号V1に従って、メインバルブ41に供給されるパイロット油を調整する。これによりEPC弁46は、メインバルブ41を制御する。
【0043】
運転室2aに搭乗したオペレータの操作に応じて、メインバルブ41における各弁の開閉が制御される。オペレータの運転操作に応じて、電動ショベル100の本体および作業機3を動作させることができる。具体的にはオペレータは、油圧シリンダ4a,4b,4c,4dを動作させることにより作業機3を操作でき、旋回モータ24を動作させることにより走行体1に対する旋回体2の旋回を操作でき、走行モータを動作させることにより電動ショベル100の走行を操作できる。
【0044】
ポンプ圧力センサ47は、油圧ポンプ43とメインバルブ41との間の油圧配管内の作動油の圧力を検出する。ポンプ圧力センサ47で検出された作動油の圧力のデータは、ポンプコントローラ34に入力される。
【0045】
リリーフ弁44は、油圧ポンプ43とメインバルブ41との間の油圧配管に接続されている。ポンプ圧力センサ47で検出された、油圧ポンプ43とメインバルブ41との間の油圧配管内の作動油の圧力が、所定のリリーフ圧よりも高い場合に、リリーフ弁44が開いて、作動油の一部をタンクへと流す。リリーフ弁44により、油圧ポンプ43からメインバルブ41へ供給される作動油の圧力を、所定のリリーフ圧以下に維持することが可能となる。
【0046】
電気コントローラ30およびポンプコントローラ34は、CPU(Central Processing Unit)およびメモリなどを含んで構成され、メモリに格納されている制御プログラムを実行することにより、電動ショベル100の動作を制御する。
【0047】
ブームシリンダ4aの、シリンダヘッド側油室14A(図1)に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6aが設けられている。ブームシリンダ4aの、シリンダボトム側油室14B(図1)に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6bが設けられている。圧力センサ6a,6bで検出された作動油の圧力のデータは、ポンプコントローラ34に入力される。
【0048】
アームシリンダ4bの、シリンダヘッド側の油室に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6cが設けられている。アームシリンダ4bの、シリンダボトム側の油室に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6dが設けられている。圧力センサ6c,6dで検出された作動油の圧力のデータは、ポンプコントローラ34に入力される。
【0049】
バケットシリンダ4cの、シリンダヘッド側の油室に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6eが設けられている。バケットシリンダ4cの、シリンダボトム側の油室に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6fが設けられている。圧力センサ6e,6fで検出された作動油の圧力のデータは、ポンプコントローラ34に入力される。
【0050】
アタッチメントシリンダ4dの、シリンダヘッド側の油室に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6gが設けられている。アタッチメントシリンダ4dの、シリンダボトム側の油室に接続されている油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6hが設けられている。圧力センサ6g,6hで検出された作動油の圧力のデータは、ポンプコントローラ34に入力される。
【0051】
旋回モータ24を時計回り方向に回転させるように旋回モータ24に作動油を供給する油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6iが設けられている。旋回モータ24を反時計回り方向に回転させるように旋回モータ24に作動油を供給する油圧配管に、その油圧配管内の作動油の圧力を検出する圧力センサ6jが設けられている。圧力センサ6i,6jで検出された作動油の圧力のデータは、ポンプコントローラ34に入力される。
【0052】
ブームシリンダ4aに取り付けられたストロークセンサ7aで検出された、ブームシリンダ4aにおけるシリンダ4aa(図1)に対するシリンダロッド4ab(図1)の変位量は、電気コントローラ30に入力される。アームシリンダ4bに取り付けられたストロークセンサ7bで検出された、アームシリンダ4bにおけるシリンダロッドの変位量は、電気コントローラ30に入力される。
【0053】
バケットシリンダ4cに取り付けられたストロークセンサ7cで検出された、バケットシリンダ4cにおけるシリンダロッドの変位量は、電気コントローラ30に入力される。アタッチメントシリンダ4dに取り付けられたストロークセンサ7dで検出された、アタッチメントシリンダ4dにおけるシリンダロッドの変位量を示す検出信号Sn1は、電気コントローラ30に入力される。
【0054】
旋回体2に取り付けられたIMU(車体IMU)8aで検出された、旋回体2の加速度および角速度は、電気コントローラ30に入力される。ブーム3aに取り付けられたIMU(ブームIMU)8bで検出された、ブーム3aの加速度および角速度は、電気コントローラ30に入力される。アーム3bに取り付けられたIMU(アームIMU)8cで検出された、アーム3bの加速度および角速度は、電気コントローラ30に入力される。第1リンク部材3daに取り付けられたIMU(バケットIMU)8dで検出された、第1リンク部材3daの加速度および角速度は、電気コントローラ30に入力される。
【0055】
電気コントローラ30と、ポンプコントローラ34とは、互いに電気的に接続されており、相互に信号の送受信が可能に構成されている。
【0056】
図3は、実施形態における電動ショベル100のポンプコントローラ34の機能ブロックを説明する図である。
【0057】
図3に示されるように、ポンプコントローラ34は、シリンダ発生力算出部341と、荷重変化量算出部342と、作業機移動量算出部343と、荷重変化率算出部344と、荷重変化率比較部345と、制御指令部346と、メモリ347と、タイマ348とを含んでいる。
【0058】
メモリ347には、電動ショベル100の動作を制御するためのプログラム、およびそのプログラムの実行に必要な各種データが記憶されている。メモリ347にはまた、電動ショベル100の動作に伴って発生するワーキングデータが一時的に記憶される。タイマ348は、時刻を計時する。
【0059】
<破砕対象物の破砕作業>
図4は、実施形態における電動ショベル100による、破砕対象物の破砕作業の処理の流れを示すフローチャートである。電動ショベル100は、作業機3を使用して破砕対象物を破砕する作業を実行する。以下、電動ショベル100が、アタッチメント3cの一対の破砕歯3c1,3c2を移動させることにより破砕歯3c1,3c2から破砕対象物に荷重を作用して破砕対象物を破砕する処理について、図3図4および後続の図を適宜参照して、説明する。
【0060】
まず、ステップS1において、作業機3の動作を開始する。オペレータは、図示しない操作装置を操作する。操作装置は、作業機3の動作のために操作される作業機操作装置を含んでいる。図示しない作業機操作検出部が、オペレータによる作業機操作装置の操作量を検出する。作業機操作検出部は、ポンプコントローラ34または電気コントローラ30に、検出信号を出力する。検出信号に基づいて、ポンプコントローラ34は、EPC弁46に制御信号V1を送信する。これによりメインバルブ41が制御され、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4cおよびアタッチメントシリンダ4dが適宜伸縮して、作業機3が動作する。
【0061】
典型的には、アタッチメント3cの一対の破砕歯3c1,3c2(図1)の間に破砕対象物を挟むように、作業機3が動作する。ブーム3a、アーム3bおよびアタッチメント3cは、アタッチメント3cの破砕歯3c1と破砕歯3c2との間に破砕対象物を配置するように、動作する。アタッチメントシリンダ4d1,4d2の各々が、伸びるように動作する。破砕歯3c1,3c2は、歯先3c1a,3c2a(図1)が互いに近づくように動作する。破砕対象物は、たとえば、建築物の解体作業などで発生する、コンクリート、屋根材を構成する陶器瓦、などの脆性材料である。
【0062】
ステップS2において、圧力センサ6g,6hは、油圧ポンプ43からアタッチメントシリンダ4dに供給される作動油の圧力を検出する。圧力センサ6g,6hにより検出された作動油の圧力は、ポンプコントローラ34のシリンダ発生力算出部341に入力される。油圧ポンプ43からアタッチメントシリンダ4dに供給される作動油の圧力は、破砕対象物に作用する荷重を算出するための検出値の一例に対応する。圧力センサ6g,6hは、検出値を検出する検出部の一例に対応する。
【0063】
ステップS3において、ポンプコントローラ34のシリンダ発生力算出部341は、圧力センサ6hにより検出された作動油の圧力を用いて、アタッチメントシリンダ4dが発生する推力を算出する。
【0064】
図5は、油圧シリンダの概略構成を示す部分断面図である。油圧シリンダの具体例として、アタッチメントシリンダ4dについて説明する。アタッチメントシリンダ4dは、シリンダチューブ4daと、ロッド4dbと、ピストン4dcとを有している。
【0065】
ピストン4dcは、シリンダチューブ4daの内部のシリンダ室内に収容されている。ピストン4dcは、シリンダ室内を、シリンダチューブ4daの長手方向(軸方向。図5においては図中の左右方向)に往復移動可能である。ロッド4dbは、シリンダチューブ4daの長手方向に延びている。ロッド4dbの基端は、シリンダチューブ4daのシリンダ室内に配置されており、ピストン4dcに固定されている。ロッド4dbの先端は、シリンダチューブ4daの外部に突き出している。
【0066】
シリンダチューブ4daの内部のシリンダ室は、ピストン4dcによって、シリンダヘッド側の油室と、シリンダボトム側の油室とに仕切られている。シリンダボトム側の油室に、ボトム側ポート4ddが形成されている。ボトム側ポート4ddに、油圧配管が接続されている。シリンダヘッド側の油室に、ヘッド側ポート4deが形成されている。ヘッド側ポート4deに、油圧配管が接続されている。
【0067】
ボトム側ポート4ddを介して、シリンダボトム側の油室への作動油の供給と、シリンダボトム側の油室からの作動油の排出とが行われる。ヘッド側ポート4deを介して、シリンダヘッド側の油室への作動油の供給と、シリンダヘッド側の油室からの作動油の排出とが行われる。シリンダボトム側の油室に作動油を供給すると、アタッチメントシリンダ4dが伸び、シリンダヘッド側の作動油は作動油タンク42に戻される。シリンダヘッド側の油室に作動油を供給すると、アタッチメントシリンダ4dが縮み、シリンダボトム側の作動油は作動油タンク42に戻される。
【0068】
シリンダ室は、内径D1を有している。ロッド4dbは、外径D2を有している。シリンダボトム側の油室に供給される作動油の圧力Pを用いて、アタッチメントシリンダ4dが伸びるときに発生する推力F1は、以下の式(1)で算出される。
【0069】
F1=(π/4)×(D1)×P ・・・ (式1)
シリンダ室の内径D1の値は、メモリ347に記憶されている。シリンダ発生力算出部341は、メモリ347から内径D1を読み出し、圧力センサ6hで検出される作動油の圧力Pの入力を受ける。シリンダ発生力算出部341は、内径D1と圧力Pとの値を用いて、式(1)に従って、アタッチメントシリンダ4dの推力F1を算出する。
【0070】
ステップS4において、シリンダ発生力算出部341は、破砕対象物に荷重が作用したか否かを判断する。破砕対象物に荷重が作用していないときには、アタッチメントシリンダ4dのシリンダボトム側の油室内の作動油の圧力変化は小さい。破砕対象物が破砕歯3c1と破砕歯3c2とによって挟まれて、破砕歯3c1,3c2から破砕対象物に荷重が作用すると、アタッチメントシリンダ4dのシリンダボトム側の油室内の作動油の圧力が増加する。
【0071】
シリンダ発生力算出部341は、圧力センサ6hで検出される作動油の圧力Pが増加していることを認識することで、破砕対象物に荷重が作用した状態であると判断できる。たとえば、所定時間の経過に対する作動油の圧力Pの増加量に関して閾値を予め設定し、その閾値をメモリ347に記憶してもよい。シリンダ発生力算出部341は、タイマ348から時刻を読み出して経過時間を算出し、その経過時間の開始時と終了時とにおける作動油の圧力Pの入力を受けて、所定時間の経過に対する作動油の圧力Pの増加量を算出してもよい。シリンダ発生力算出部341は、算出した圧力の増加量が閾値よりも小さければ破砕対象物に荷重が作用しておらず、算出した圧力の増加量が閾値以上であれば破砕対象物に荷重が作用していると判断してもよい。
【0072】
破砕対象物に作用する荷重は、アタッチメントシリンダ4dの発生する推力F1であるので、シリンダ発生力算出部341は、破砕対象物に作用する荷重を算出するといえる。シリンダ発生力算出部341は、圧力センサ6hにより検出された作動油の圧力Pを用いて、破砕対象物に作用する荷重を算出している。
【0073】
破砕対象物に荷重が作用していない(ステップS4の判断においてNO)と判断されると、ステップS2の作動油の圧力を検出する処理、およびステップS3のシリンダ発生力を算出する処理が繰り返される。
【0074】
破砕対象物に荷重が作用した(ステップS4の判断においてYES)と判断されると、ステップS5において、作業機3の姿勢が検出される。具体的に、アタッチメント3cの一対の破砕歯3c1,3c2の姿勢が検出される。アタッチメントシリンダ4dに取り付けられるストロークセンサ7dによる、シリンダストローク量の検出結果が、電気コントローラ30に入力され、電気コントローラ30からポンプコントローラ34の作業機移動量算出部343に送信される。作業機移動量算出部343は、アタッチメントシリンダ4dのシリンダストローク量から、破砕歯3c1の歯先3c1a、および、破砕歯3c2の歯先3c2aの、現在位置を特定する。
【0075】
一対の破砕歯3c1,3c2で破砕対象物を破砕する処理が実行されているので、電動ショベル100の車体に対するアタッチメント3cの相対位置を求めることは不要である。アタッチメント3cにおける、アタッチメントシリンダ4dの伸縮によって移動する破砕歯3c1,3c2の現在位置が求められればよい。
【0076】
ステップS6において、荷重変化量算出部342は、所定時間の経過に対する、破砕対象物に作用する荷重の増加量を算出する。荷重変化量算出部342は、タイマ348から時刻を読み出し、その時刻を開始時刻とする。シリンダ発生力算出部341は、開始時刻における作動油の圧力に従って、開始時刻における破砕対象物に作用する荷重を算出する。また荷重変化量算出部342は、タイマ348から時刻を逐次読み出し、開始時刻を起点として所定時間が経過した後の時刻を終了時刻とする。シリンダ発生力算出部341は、終了時刻における作動油の圧力に従って、終了時刻における破砕対象物に作用する荷重を算出する。破砕対象物に荷重が作用した状態で、シリンダ発生力算出部341は、破砕対象物に作用する荷重を逐次算出する。荷重変化量算出部342は、所定時間の経過に伴う、破砕対象物に作用する荷重の変化量を算出する。
【0077】
ステップS7において、作業機移動量算出部343は、所定時間の経過に対する、作業機3の移動量を算出する。作業機移動量算出部343は、上記の開始時刻における、破砕歯3c1の歯先3c1aおよび破砕歯3c2の歯先3c2aの位置を特定する。作業機移動量算出部343は、上記の終了時刻における、歯先3c1a,3c2aの位置を特定する。作業機移動量算出部343は、所定時間の経過に伴う、歯先3c1a,3c2aの移動量を算出する。
【0078】
ステップS8において、荷重変化率算出部344は、所定時間の経過に対する、破砕対象物に作用する荷重の変化率を算出する。荷重変化率算出部344は、ステップS6で算出した所定時間の経過に伴う荷重の変化量を、ステップS6で抽出した開始時刻から終了時刻までに経過した所定時間で割る演算をすることにより、所定時間の経過に対する荷重の変化率を算出する。また、荷重変化率算出部344は、ステップS6で算出した所定時間の経過に伴う荷重の変化量を、ステップS7で算出した所定時間の経過に伴う作業機3の移動量で割る演算をすることにより、作業機3の移動量の所定の増加に対する荷重の変化率を算出する。
【0079】
図6は、破砕対象物に作用する荷重とアタッチメント3cの先端の移動量との関係の一例を示すグラフである。図6には、破砕対象物に載荷速度一定で圧縮荷重を作用したときに、破砕対象物に接触する破砕歯3c1,3c2の移動量に対して破砕対象物に作用する荷重がどのように変化するか、を実験的に考察した結果が示される。図6に示されるグラフの横軸は、アタッチメント3cの先端(歯先3c1a,3c2a)の移動量を示し、縦軸は、破砕対象物に作用する荷重を示す。アタッチメントシリンダ4dのロッド4dbおよびピストン4dcが等速で移動するのであれば、歯先3c1a,3c2aの移動量は時間に比例するので、図6のグラフの横軸は時間であるともいえる。
【0080】
図6に示されるグラフの傾きが、所定時間の経過に対する荷重の変化率、または、作業機3の移動量(歯先3c1a,3c2aの移動量)の所定の増加に対する荷重の変化率に相当する。破砕歯3c1,3c2から破砕対象物に荷重が作用し始めた時点を、図6の原点とする。
【0081】
図6に示されるグラフが極大値をとるまでは、グラフの傾きは正の値となる。グラフの傾きが正となる範囲では、時間の経過に伴って、または歯先3c1a,3c2aが移動するにつれて、破砕対象物に作用する荷重が増加している。この範囲では、破砕対象物は未だ破砕しておらず、破砕対象物に作用する荷重は破砕対象物を破砕するためのエネルギーとして用いられる。
【0082】
図6に示されるグラフが極大値をとるときに、グラフの傾きはゼロとなる。図6に示されるグラフが極大値をとった後、破砕対象物に作用する荷重の変化が増加から減少に転じ、グラフの傾きが負となる。グラフの傾きが負となる範囲では、既に破砕対象物は脆性破砕している。この範囲で破砕対象物にさらに荷重を作用させると、その荷重は破砕対象物の破片を飛び散らせるエネルギーとして用いられることになる。破砕対象物の飛び散りを抑制するためには、破砕した後の破砕対象物に荷重を作用させなくすることが求められる。
【0083】
そこで、ステップS9において、荷重変化率比較部345は、ステップS8で算出した荷重の変化率と、閾値とを比較する。この比較に用いられる閾値は、負数である。閾値は、ゼロよりも小さい値である。閾値は、破砕対象物の材質毎に、メモリ347に記憶されている。荷重変化率比較部345は、現在の作業で破砕しようとする破砕対象物に対応する閾値を、メモリ347から読み出す。荷重変化率比較部345は、荷重の変化率と閾値とを比較する。
【0084】
破砕対象物に作用する荷重の変化率は図6に示されるグラフの傾きであり、グラフの傾きが正またはゼロの範囲では、破砕対象物を確実に破砕するために継続して荷重を作用させる処理が行われる。グラフの傾きが小さくなって負の値になり閾値を越えるまで、継続して荷重を作用させる処理が行われる。したがって、荷重変化率比較部345が、荷重の変化率が負数である閾値よりも大きいかまたは閾値と等しい(ステップS9においてNO)と判断すると、ステップS5~S8の処理が繰り返して実行され、その間、破砕対象物への荷重の作用が継続される。
【0085】
図6のグラフの傾きが負の値になり閾値を越えてさらに小さくなる(負数の絶対値が大きくなる)と、破砕対象物に作用する荷重を減少させる処理が行われる。荷重変化率比較部345が、荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなった(ステップS9においてYES)と判断すると、ステップS10に進み、制御指令部346は、電動モータ40を減速させることにより、電動モータ40が発生する駆動力を減少させる。
【0086】
制御指令部346は、電気コントローラ30からインバータ31に出力される制御信号の内容から、現時点での電動モータ40の速度を認識する。制御指令部346は、現時点での電動モータ40の速度よりも小さい、新たな電動モータ40の目標速度を設定する。制御指令部346は、その新たな電動モータ40の目標速度を、電気コントローラ30に送信する。電気コントローラ30は、電動モータ40の速度が新たな目標速度になるように、インバータ31に制御信号を出力する。このようにして、制御指令部346は、電動モータ40の回転数を減少させる。制御指令部346は、電動モータ40を連続的に減速させてもよく、段階的に減速させてもよく、急停止させてもよい。
【0087】
電動モータ40が減速することで、油圧ポンプ43が吐出する作動油の圧力が減少する。アタッチメントシリンダ4dに供給される作動油の圧力Pが小さくなるので、式(1)に従って、アタッチメントシリンダ4dが発生する推力F1が減少する。したがってアタッチメント3cを駆動する駆動力が減少する。
【0088】
ステップS11において、制御指令部346は、メインバルブ41の開口面積を減少させる。制御指令部346は、アタッチメントシリンダ4dに接続されている油圧配管に供給される作動油の流量を減少させるように、EPC弁46に制御信号V1を出力する。制御指令部346は、メインバルブ41の開口面積を連続的に減少させてもよく、段階的に減少させてもよく、直ちに全閉にしてもよい。
【0089】
電動モータ40の速度がゼロにまで減速し、またメインバルブ41の開口面積がゼロにまで減少することで、アタッチメントシリンダ4dに作動油が供給されなくなる。これによりステップS12において、作業機3が停止する。このようにして、アタッチメント3cで破砕対象物を破砕する一連の処理を終了する(図4の「エンド」)。
【0090】
上述したステップS9における処理では、荷重の変化率と負数である閾値との比較が行なわれているが、第2の閾値として、正数である閾値が設定されてメモリ347に保存されてもよい。第2の閾値として、ゼロよりも大きく、ゼロに近い、絶対値の小さい正の値が、設定されてもよい。図6に示されるグラフで荷重が極大値よりもわずかに小さい点であって、荷重が極大値となる移動量よりも移動量の小さい点における傾きが、第2の閾値として設定されてもよい。荷重の変化率と第2の閾値とを比較して、荷重の変化率が第2の閾値よりも小さくなったことを検知することができる。荷重の変化率と第2の閾値との比較の結果から、図6のグラフの傾きが次第に小さくなっておりグラフの極大点に近づいていることを、認識することができる。
【0091】
上記の実施形態では、アタッチメント3cとして大割機について説明したが、アタッチメント3cは、油圧ブレーカであってもよい。油圧ブレーカを使用して破砕対象物を破砕するときには、油圧ブレーカの工具から破砕対象物に断続的に打撃力が付与される。この打撃力を、油圧ブレーカに供給される作動油の圧力から計算して、打撃力が急に減少したことを検知することにより、破砕対象物が破砕したことを判断することができる。
【0092】
図4に示される一連の処理は、アタッチメント3cで破砕対象物を破砕する場合に限られず、電動ショベル100の本体に対してアーム3bを相対移動させることでコンクリート壁などの破砕対象物に荷重を作用させて破砕する場合にも、適用可能である。この場合、ステップS7における作業機3の移動量の算出は、図1,2に示されるIMU8b,8c,8dの検出結果に基づいて、および/または、図1に示される角度センサ9a,9b,9cの検出結果に基づいて、実行することができる。ステップS3においては、作業機3の先端における推力(刃先力)を算出する。刃先力は、式(1)で説明したシリンダ発生力に慣性力、粘性項、重力項などを考慮した、公知の6自由度マニピュレータの運動方程式より算出することができる。この刃先力を、破砕対象物に作用する荷重として取り扱うことができる。
【0093】
上記の実施形態で説明した、電動モータ40を制御するコントローラは、必ずしも電動ショベル100に搭載されていなくてもよい。電動ショベル100に搭載されたコントローラが、圧力センサ6g,6hの検出値および作業機姿勢センサの検出値を外部のコントローラへ送信する処理を行い、信号を受信した外部のコントローラが、破砕対象物に作用する荷重の変化率を算出して、電動モータ40を制御する制御信号を生成し、その制御信号を電動ショベル100に搭載されたコントローラに送信するシステムを構成してもよい。外部のコントローラは、電動ショベル100の作業現場に配置されてもよく、電動ショベル100の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0094】
上記の実施形態では、バッテリ37に蓄えられた電気エネルギーが電動モータ40に供給されて電動モータ40が駆動する例について説明した。作業機械は、必ずしもバッテリ37を備えなくてもよい。作業機械にエンジンと発電機とが搭載されて、エンジンで発電機を駆動し、発電機の発生する電力で電動モータ40を駆動してもよい。外部電源から電動モータ40に直接に電力が供給されて、電動モータ40を駆動してもよい。外部電源と電動モータ40とが有線接続されてもよい。
【0095】
上記の実施形態では、電動モータ40で油圧ポンプ43を駆動し、油圧ポンプ43の発生する圧油で油圧アクチュエータを駆動して、作業機3を動作させる例について説明した。この例に限られず、電動モータ40が電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、その機械エネルギーが動力伝達装置を介して機械的に作業機3に伝達されて、作業機3が駆動されてもよい。旋回モータ24は、油圧モータに替えて電動モータであってもよい。走行モータもまた、電動モータであってもよい。
【0096】
上記の実施形態では、作業機械の一例として電動ショベル100を挙げているが、電動ショベル100に限らず、電動モータを備え、電動モータの発生する駆動力で作業機を駆動する、他の種類の作業機械にも適用可能である。たとえば作業機械は、ジョークラッシャで破砕対象物を破砕する自走式破砕機であってもよい。
【0097】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0098】
図4に示されるステップS4において、ポンプコントローラ34のシリンダ発生力算出部341は、破砕対象物に荷重が作用したか否かを判断する。破砕対象物に荷重が作用した状態で、ステップS6において、ポンプコントローラ34のシリンダ発生力算出部341は、破砕対象物に作用する荷重を逐次算出する。ステップS8において、ポンプコントローラ34の荷重変化率算出部344は、破砕対象物に作用する荷重の変化率を算出する。ステップS9において、ポンプコントローラ34の荷重変化率比較部345は、図6に示されるように、所定時間の経過に対する荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったことを判断する。ステップS10において、ポンプコントローラ34の制御指令部346は、電動モータ40を減速させることにより、電動モータ40が発生する駆動力を減少させる。
【0099】
破砕対象物に作用する荷重をモニタリングすることで、作業機3で破砕対象物を破砕する作業を開始したことを認識し、その後に破砕対象物が破砕されたことを検知できる。破砕対象物に作用する荷重が下がり、破砕対象物の変形が大きくなる瞬間に、電動モータ40が発生する駆動力を減少させて、破砕対象物に作用する荷重を減少させる。破砕した後の破砕対象物の破片に荷重を作用させなくして破片を飛び散らせるためのエネルギーの付与を抑制することで、破砕対象物の飛び散りを抑制することができる。
【0100】
作業機3を駆動する駆動力を発生する駆動源として、エンジンに替えて、0回転まで急激に減速できる電動モータ40が用いられている。これにより、破砕対象物の破砕が始まったことを検知してから破砕対象物に作用する荷重を減少するまでの所要時間を短縮できる。破砕対象物の破片に付与される飛び散りのためのエネルギーを減少できるので、破砕対象物の飛び散りを確実に抑制することができる。
【0101】
図1,2に示されるように、アタッチメントシリンダ4dに、シリンダロッドの変位量を検出するストロークセンサ7dが取り付けられている。ストロークセンサ7dは、作業機3の姿勢、具体的にはアタッチメント3cの破砕歯3c1,3c2の歯先3c1a,3c2aの姿勢を検出可能である。図4および図6に示されるように、ポンプコントローラ34の作業機移動量算出部343は、所定の時間の開始時および終了時における作業機3の姿勢から、時間の変化に伴う作業機3の移動量を算出する。この作業機3の移動量を用いて、ポンプコントローラ34の荷重変化率算出部344は、時間の経過に対する荷重の変化率を算出することができる。
【0102】
図4に示されるように、ポンプコントローラ34の荷重変化率算出部344は、作業機3の移動量の所定の増加に対する荷重の変化を算出する。図6に示されるように、時間の経過に伴って、作業機3の移動量が増大する。荷重変化率算出部344は、荷重が増加しており荷重の変化率が正数であるか、荷重が減少しており荷重の変化率が負数であるか、を認識することができる。
【0103】
図4,6に示されるように、ポンプコントローラ34の荷重変化率比較部345は、ステップS9において、作業機3の移動量の所定の増加に対する荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったことを判断する。制御指令部346は、電動モータ40を減速させることにより、電動モータ40が発生する駆動力を減少させる。作業機3の移動量と、破砕対象物に作用する荷重とに基づいて、破砕対象物が破砕されたことを精度よく検知することができる。
【0104】
図1,2に示されるように、電動ショベル100は、油圧アクチュエータであるアタッチメントシリンダ4dと、アタッチメントシリンダ4dに作動油を供給する油圧ポンプ43とを備えている。電動モータ40は、油圧ポンプ43を駆動して、油圧アクチュエータを動作させる駆動力を発生している。アタッチメントシリンダ4dは、作業機3(アタッチメント3c)を駆動する。従来の油圧ショベルと同様に作業機3を油圧駆動させ、作業機3に作動油を供給する油圧ポンプ43をエンジンに替えて電動モータ40で駆動する構成とされている。これにより、電動ショベル100の信頼性を向上することができる。アタッチメントシリンダ4dにストロークセンサ7dを取り付けることで、作業機3の移動量を容易に算出することができる。
【0105】
図2に示されるように、圧力センサ6g,6hは、アタッチメントシリンダ4dに供給される作動油の圧力を検出する。圧力センサ6g,6hにより検出された作動油の圧力が、破砕対象物に作用する荷重を算出するための検出値として用いられる。ポンプコントローラ34のシリンダ発生力算出部341は、圧力センサ6g,6hにより検出された作動油の圧力を用いて、破砕対象物に作用する荷重を算出する。作動油の圧力からアタッチメントシリンダ4dの発生する推力を算出し、これを破砕対象物に作用する荷重とすることで、破砕対象物に作用する荷重の変化率を容易に算出することができる。
【0106】
図1,2に示されるように、作業機3の先端に設けられるアタッチメント3cを駆動するアタッチメントシリンダ4dは、油圧シリンダであってもよい。油圧シリンダの推力を算出する公知の計算式を用いて、作動油の圧力から破砕対象物に作用する荷重を容易に算出することができる。
【0107】
<付記>
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0108】
(付記1)
破砕対象物を破砕する作業機と、
前記作業機を駆動する駆動力を発生する電動モータと、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記破砕対象物に荷重が作用した状態で、前記破砕対象物に作用する前記荷重を逐次算出し、前記荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、前記電動モータが発生する駆動力を減少させる、作業機械。
【0109】
(付記2)
前記作業機の姿勢を検出する作業機姿勢センサをさらに備え、
前記作業機は、先端に設けられるアタッチメントを含み、
前記コントローラは、前記アタッチメントの先端の移動量を算出する、付記1に記載の作業機械。
【0110】
(付記3)
前記コントローラは、前記移動量の所定の増加に対する前記荷重の変化を算出する、付記2に記載の作業機械。
【0111】
(付記4)
前記コントローラは、前記移動量の所定の増加に対する前記荷重の変化率が負数である閾値よりも小さくなったとき、前記電動モータが発生する駆動力を減少させる、付記3に記載の作業機械。
【0112】
(付記5)
作動油により動作し、前記作業機を駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータに前記作動油を供給する油圧ポンプと、をさらに備え、
前記電動モータは、前記油圧ポンプを駆動する、付記1から付記4のいずれか1つに記載の作業機械。
【0113】
(付記6)
前記油圧ポンプから前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の圧力を検出する圧力センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記圧力センサにより検出された前記作動油の圧力を用いて、前記破砕対象物に作用する荷重を算出する、付記5に記載の作業機械。
【0114】
(付記7)
前記作業機は、先端に設けられるアタッチメントを含み、
前記油圧アクチュエータは、前記アタッチメントを駆動する油圧シリンダである、付記5または付記6に記載の作業機械。
【0115】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 走行体、2 旋回体、3 作業機、3a ブーム、3b アーム、3c アタッチメント、3c1,3c2 破砕歯、3c1a,3c2a 歯先、3d 作業具リンク、3da 第1リンク部材、4a ブームシリンダ、4b アームシリンダ、4c バケットシリンダ、4d,4d1,4d2 アタッチメントシリンダ、6a~6j 圧力センサ、7a,7b,7c,7d,7d1,7d2 ストロークセンサ、9a,9b,9c 角度センサ、30 電気コントローラ、31 インバータ、34 ポンプコントローラ、35 配電ユニット、36 高圧ジャンクションボックス、37 バッテリ、38 充電ポート、40 電動モータ、41 メインバルブ、43 油圧ポンプ、100 電動ショベル、341 シリンダ発生力算出部、342 荷重変化量算出部、343 作業機移動量算出部、344 荷重変化率算出部、345 荷重変化率比較部、346 制御指令部、347 メモリ、348 タイマ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6