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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102597
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】睫毛用メーキャップ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20240724BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240724BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20240724BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240724BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20240724BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240724BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/44
A61K8/891
A61K8/31
A61Q1/10
A61K8/25
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023006597
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・ブララ
(72)【発明者】
【氏名】フイチ・ジュアン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC842
4C083AC932
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD261
4C083BB13
4C083CC14
4C083DD23
4C083DD30
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】睫毛等のケラチン繊維用の組成物、特にマスカラであって、改善された長期耐性及びカール維持効果をケラチン繊維にもたらすことができる、組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、睫毛等のケラチン繊維のための組成物であって、
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有する少なくとも1種のアクリルポリマーと、
(b)(b-1)フィラー、(b-2)非フェニルシリコーン油、及び(b-3)フェニルシリコーン油から選択される少なくとも1種の耐性付与剤と、
(c)少なくとも1種の炭化水素系油と
を含む、組成物に関する。
本発明による組成物は、ケラチン繊維に、改善された長期耐性及びカール維持効果をもたらすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
睫毛等のケラチン繊維のための組成物であって、
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有する少なくとも1種のアクリルポリマーと、
(b)(b-1)フィラー、(b-2)非フェニルシリコーン油、及び(b-3)フェニルシリコーン油から選択される少なくとも1種の耐性付与剤と、
(c)少なくとも1種の炭化水素系油と
を含む、組成物。
【請求項2】
(a)アクリルポリマーのC8~C30アルキル側鎖が、直鎖状且つ飽和である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(a)アクリルポリマーが、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸(C8~C30)アルキルに由来する少なくとも1つの単位を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(メタ)アクリル酸(C8~C30)アルキルが、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、及び(メタ)アクリル酸ヘキサデシルから選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
(a)アクリルポリマーが、架橋されていない、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(b)耐性付与剤が、ラウロイルリジン、タルク、セルロース、及びこれらの混合物から選択される(b-1)少なくとも1種のフィラーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
(b)耐性付与剤が、不揮発性非フェニルシリコーン油から選択される(b-2)少なくとも1種の非フェニルシリコーン油を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(b)耐性付与剤が、直鎖状非フェニルシリコーン油から選択される(b-2)少なくとも1種の非フェニルシリコーン油を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
(c)炭化水素系油が、8~16個の炭素原子を含有する揮発性炭化水素系油から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
(c)炭化水素系油が、少なくとも2つのタイプの炭化水素系油を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーが、組成物の総質量に対して10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
(b)耐性付与剤が、組成物の総質量に対して、合計で0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%の量で存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
(c)炭化水素系油が、組成物の総質量に対して、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%の量で存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
水を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含む、又は無水である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ケラチン繊維、好ましくは睫毛をメーキャップするための美容方法であって、
請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物をケラチン繊維上に適用する工程
を含む、美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、好ましくは睫毛のメーキャップのための組成物、例えば、マスカラ、並びに該組成物に関連する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
長時間持続する特性による更に強力なカール効果は、ケラチン繊維、好ましくは睫毛のメーキャップ、例えばマスカラ製品にとって重要な特徴の一つである。例えば、FR3111556A1及びFR3088201A1は、半永久的なメーキャップ及び/又はケア効果を有する、睫毛及び眉毛等のケラチン物質並びにそれらの輪郭をメーキャップ及び/又はケアするための組成物に関連する技術的事項を開示している。
【0003】
しかしながら、ケラチン繊維、特に睫毛のための組成物であって、長時間持続する特性によるカール維持効果をケラチン繊維にもたらすことができる組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】FR3111556A1
【特許文献2】FR3088201A1
【特許文献3】米国特許第5,538,793号
【特許文献4】DE10 2008 012 457
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、睫毛等のケラチン繊維用の組成物、特にマスカラであって、改善された長期耐性及びカール維持効果をケラチン繊維にもたらすことができる、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有する少なくとも1種のアクリルポリマーと、
(b)(b-1)フィラー、(b-2)非フェニルシリコーン油、及び(b-3)フェニルシリコーン油から選択される少なくとも1種の耐性付与剤と、
(c)少なくとも1種の炭化水素油と
を含む組成物によって達成することができる。
【0008】
(a)アクリルポリマーのC8~C30アルキル側鎖は、直鎖状且つ飽和であってもよい。
【0009】
(a)アクリルポリマーは、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸(C8~C30)アルキルに由来する少なくとも1つの単位を含んでもよい。
【0010】
(メタ)アクリル酸(C8~C30)アルキルは、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、及び(メタ)アクリル酸ヘキサデシルから選択されうる。
【0011】
(a)アクリルポリマーは、架橋されていない。
【0012】
(b)耐性付与剤は、ラウロイルリジン、タルク、セルロース、及びこれらの混合物から選択される(b-1)フィラーを含んでもよい。
【0013】
(b)耐性付与剤は、不揮発性非フェニルシリコーン油から選択される(b-2)非フェニルシリコーン油を含んでもよい。
【0014】
(b)耐性付与剤は、直鎖状非フェニルシリコーン油から選択される(b-2)少なくとも1種の非フェニルシリコーン油を含んでもよい。
【0015】
(c)炭化水素系油は、8~16個の炭素原子を含有する揮発性炭化水素系油から選択することができる。
【0016】
(c)炭化水素系油は、少なくとも2つのタイプの炭化水素系油を含んでもよい。
【0017】
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、組成物の総質量に対して10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%の量で存在してもよい。
【0018】
(b)耐性付与剤は、組成物の総質量に対して、合計で0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%の量で存在してもよい。
【0019】
(c)炭化水素系油は、組成物の総質量に対して、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%の量で存在してもよい。
【0020】
本発明による組成物は、水を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で含んでもよく、又は無水であってもよい。
【0021】
本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは睫毛をメーキャップするための美容方法であって、本発明による組成物を適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
鋭意検討の結果、本発明者らは、成分(a)~(c)の組合せが、ケラチン繊維に、改善された長期耐性及びカール維持効果をもたらすことができる、睫毛等のケラチン繊維のための組成物、特にマスカラ組成物を生成することができることを発見した。
【0023】
そのため、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有する少なくとも1種のアクリルポリマーと、
(b)(b-1)フィラー、(b-2)非フェニルシリコーン油、及び(b-3)フェニルシリコーン油から選択される少なくとも1種の耐性付与剤と、
(c)少なくとも1種の炭化水素油と
を含む組成物である。
【0024】
本発明による組成物は、ケラチン繊維、好ましくは睫毛に、改善された長期耐性及びカール維持効果をもたらすことができる。即ち、本発明による組成物は、カールを長時間維持するように、ケラチン繊維上に非常に強靭な付着物を付与することができる。
【0025】
本発明による組成物は、好ましくは睫毛用である。特に、本発明による組成物はマスカラとして有用である。
【0026】
以下に、本発明による組成物、方法、及び使用をより詳細に説明する。
【0027】
[組成物]
(少なくとも1つのC8~C30アルキル鎖を有するアクリルポリマー)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有する少なくとも1種のアクリルポリマーを含む。2種以上の(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーを組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプのアクリルポリマー、又は異なるタイプのアクリルポリマーの組合せを使用することができる。
【0028】
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、C8~C30アルキル側鎖に起因して疎水性でありうる。したがって、(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、水及び皮脂に対する、本発明による組成物の耐久性を改善又は強化することができる。
【0029】
C8~C30アルキル側鎖は、本明細書では、少なくとも1つのC8~C30アルキル部分を含む側鎖又はペンダント基を意味する。そのため、(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、アクリル又はアクリレートモノマー由来のポリマー骨格又は主鎖、及び少なくとも1つのC8~C30アルキル部分を含む少なくとも1つの側鎖を有する。
【0030】
C8~C30アルキル側鎖は、好ましくはC9~C28、より好ましくはC10~C26、更により好ましくはC12~C24、優先的にはC14~C22、特にC16~C20アルキル側鎖であってもよい。
【0031】
C8~C30アルキル側鎖は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、好ましくは直鎖状である。C8~C30アルキル側鎖は、飽和であっても不飽和であってもよく、好ましくは飽和である。
【0032】
C8~C30アルキル側鎖は、直鎖状且つ飽和のC8~C30アルキル側鎖であってもよい。
【0033】
(a)少なくとも1つのタウレート側鎖を有するアクリルポリマーは、1 000~20 000 000g/molの範囲、好ましくは20 000~5 000 000g/molの範囲、更により優先的には100 000~1 500 000g/molの範囲の数平均分子量を有しうる。
【0034】
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、少なくとも1つのC8~C30アルキル部分を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーから得ることができる。これは、(a)アクリルポリマーが、少なくとも1つのC8~C30アルキル部分を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーに由来する少なくとも1つの単位を含みうることを意味する。
【0035】
少なくとも1つのC8~C30アルキル部分を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸の(C8~C30)アルキルエステル、即ち(メタ)アクリル酸(C8~C30)アルキルから選択することができる。これは、(a)アクリルポリマーが、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸(C8~C30)アルキルに由来する少なくとも1つの単位を含みうることを意味する。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態によれば、(メタ)アクリル酸(C8~C30)アルキルは、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、及び(メタ)アクリル酸ヘキサデシルから選択されうる。
【0037】
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、コポリマーであってもよい。この場合、少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーに加えて、少なくとも1種の追加のコモノマーも使用してよい。追加のコモノマーは、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸C1~C4アルキル、並びにこれらの混合物から選択されるエチレン性不飽和モノマーであってもよい。
【0038】
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。好ましくは、(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーは、架橋されていない。
【0039】
(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーの市販製品としては、アクリレート/ステアリルメタクリレートコポリマーを挙げることができる。
【0040】
本発明による組成物中の(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーの量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であってもよい。
【0041】
本発明による組成物中の(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーの量は、組成物の総質量に対して、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であってもよい。
【0042】
本発明による組成物中の(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーの量は、組成物の総質量に対して、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%であってもよい。
【0043】
(耐性付与剤)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の耐性付与剤を含む。2種以上の(b)耐性付与剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの耐性付与剤、又は異なるタイプの耐性付与剤の組合せを使用することができる。
【0044】
本発明の耐性付与剤は、(b-1)フィラー、(b-2)非フェニルシリコーン油、及び(b-3)フェニルシリコーン油から選択される。(b)耐性付与剤は、(b-1)フィラー、(b-2)非フェニルシリコーン油、及び(b-3)フェニルシリコーン油のいずれか1つを含んでよい、又は(b)耐性付与剤は、(b-1)フィラー、(b-2)非フェニルシリコーン油、及び/若しくは(b-3)フェニルシリコーン油を任意の組合せで含んでよい。
【0045】
- フィラー
(b-1)フィラーは、単一のタイプのフィラー又は2つ以上のタイプのフィラーの組合せを含んでよい。
【0046】
「フィラー」という用語は、組成物が製造される温度にかかわりなく、組成物の媒体に不溶性である、任意の形状の鉱物又は合成粒子を意味すると理解されるべきである。
【0047】
本発明の(b-1)フィラーは、組成物に機械的靭性を与えて、組成物のより強力な付着物、特により高い温度に対する耐性をもたらすことができる。そのため、(b-1)フィラーは、そのような耐性を組成物に付与することができる。
【0048】
フィラーは、結晶形(例えば、層状、立方晶、六方晶、斜方晶等)にかかわりなく、いずれの形状でもよく、血小板形状、球状、又は長楕円形でもよい。
【0049】
フィラーは、無機又は有機粉末であってよく、表面被覆されていても、されていなくてもよい。
【0050】
フィラーの平均粒径は、限定されないが、一般に、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは10μm以下である。フィラーの平均粒径は、0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上である。「平均粒径」という用語は、本明細書で使用する場合、集団の半数に対して統計的粒径分布によって与えられる数平均サイズ平均直径(number-average size mean diameter)を表し、D50と称される。例えば、数平均サイズ平均直径は、レーザー回折粒径分布アナライザー、例えばMalvern Corp社によるMastersizer 2000で測定することができる。
【0051】
本発明の(b-1)フィラーは、「顔料」とは異なることに留意されたい。顔料は、一般に、200μm以上の平均粒径によって特徴付けられる。
【0052】
無機フィラーとして、タルク、マイカ、シリカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリメチルシロキシシリケート又はシリル化シリカ、カオリン、ベントン、炭酸カルシウム、炭酸水素マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、フルオロフロゴパイト、セリサイト、焼成タルク、焼成マイカ、焼成セリサイト、合成マイカ、パーライト、金属石鹸、オキシ塩化ビスマス、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素マグネシウム(magnesium hydrocarbonate)、ヒドロキシアパタイト、中空シリカ微小球(Maprecos社製のSilica Beads(登録商標))、ガラス又はセラミックマイクロカプセル、及びこれらの混合物を挙げることができ、これらは任意選択により親水性処理又は疎水性処理がされている。金属石鹸は、8~22個の炭素原子、好ましくは12~18個の炭素原子を含有する有機カルボン酸に由来する金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、又はミリスチン酸マグネシウムであってもよい。
【0053】
有機フィラーとして、アクリルポリマー粉末、シリコーン粉末、ワックス粉末、ポリアミド粉末、ウレタンポリマー粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末、ポリアクリロニトリル粉末、ポリ-β-アラニン粉末、ポリエチレン粉末、ポリテトラフルオロエチレン粉末、ラウロイルリジン、デンプン、セルロース粉末、テトラフルオロエチレンポリマー粉末及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
アクリルポリマー粉末として、ポリメチルメタクリレート粉末、ポリメチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート粉末、ポリアリルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート粉末、ラウリルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート粉末、アクリレート/エチルヘキシルアクリレート粉末、及びアクリロニトリル/メタクリレート/塩化ビニリデンコポリマー等のアクリロニトリル(コ)ポリマーの発泡中空粒子を挙げることができる。
【0055】
アクリルポリマー粉末の例として、以下を挙げることができる:
- 架橋されたポリメチルメタクリレートの粉末、例えばLC Wackherr社によって販売される「Covabead LH85」、又は架橋されていないポリメチルメタクリレートの粉末、例えば日本純薬株式会社によって販売されるSJ Touch 1、
- Sepipress Mという名称でSeppic社によって販売されるメチルメタクリレート/ブチルアクリレートコポリマーの粉末、
- EMAAという名称でKobo Products Inc.社によって販売されるメチルアクリレート/エチレンコポリマーの粉末、
- メチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート架橋コポリマーの粉末であって、Ganzpearl GMP 0820という名称でGanz Chemical社によって販売されるもの、Techpolymer MBP-8という名称で積水化成品工業株式会社によって販売されるもの、或いはSUNPMMA-Sという名称でSunjin Chemical社によって販売されるもの、
- ポリメチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートの粉末、例えば、Dow Corning社によって販売される「Dow Corning 5640 Microsponge Skin Oil Adsorber」、
- Ganzpearl PM 030という名称でGanz Chemical社によって販売されるメチルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレート架橋コポリマーの粉末、
- ポリアリルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートの粉末、例えば、Amcol社によって販売されている「Poly-Pore L200」、又は「Poly-Pore E200」、
- ラウリルメタクリレート/エチレングリコールジメタクリレートコポリマーの粉末、例えば、Dow Corning社によって販売されている「Polytrap 6603」、
- アクリレート/エチルヘキシルアクリレートコポリマーの粉末、例えば積水化成品工業株式会社から販売されている「Techpolymer ACP-8C」、
- アクリロニトリル/メタクリレート/塩化ビニリデンコポリマーの粉末であって、Expancelという名称でExpancel社によって参照名551 DE 50、551 DE 20、551 DE 12、551 DE 80、及び461 DE 50で販売されるもの。
【0056】
ポリウレタン粉末として、トリメチロールヘキシルラクトンを含むコポリマーを含む架橋ポリウレタンの粉末、例としてはToshiki社により名称Plastic Powder D-400(登録商標)又はPlastic Powder D-800(登録商標)で販売されているヘキサメチレンジイソシアネート/トリメチロールヘキシルラクトンポリマーを挙げることができる。
【0057】
シリコーン粉末として、オルガノポリシルセスキオキサン粉末、オルガノポリシロキサン粉末、及びシリコーン樹脂粉末を挙げることができる。
【0058】
オルガノポリシルセスキオキサン粉末は、好ましくは、ポリメチルシルセスキオキサン粉末である。Momentive Performance Materials社により「TOSPEARL」の商標名で販売されている材料、並びに日興リカ株式会社によりMSP-N050及びMSP-N080の名称で販売されている材料が、ポリメチルシルセスキオキサン粉末の例である。
【0059】
オルガノポリシロキサン粉末は、エラストマー性であっても、非エラストマー性であってもよい。エラストマー性オルガノポリシロキサン粉末又はオルガノポリシロキサンエラストマー粉末を使用することが好ましい。
【0060】
エラストマー性オルガノポリシロキサンは、例えば、架橋することができ、且つ
少なくとも1個の、ケイ素に連結した水素を含むジオルガノポリシロキサンと、少なくとも1つの、ケイ素に連結したエチレン性不飽和基を含むジオルガノポリシロキサンとの、好ましくは例えば白金触媒の存在下での架橋付加反応を介して;又は
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、少なくとも1個の、ケイ素に連結した水素を含むジオルガノポリシロキサンとの間の、好ましくは例えば有機スズ化合物の存在下での脱水素架橋縮合反応を介して;又は
少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含むジオルガノポリシロキサンと、加水分解性オルガノポリシランとの架橋縮合反応を介して;又は
オルガノポリシロキサンの、好ましくは例えばオルガノペルオキシド触媒の存在下での熱架橋を介して;又は
ガンマ線、紫外線若しくは電子ビーム等の高エネルギー放射線による、オルガノポリシロキサンの架橋を介して
得ることができる。
【0061】
使用することができるエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末としては、「Dow Corning 9505 Powder」及び「Dow Corning 9506 Powder」の名称でDow Corning社によって販売されているものが挙げられる。これらの粉末は、INCI名:ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーを有する。
【0062】
エラストマー性オルガノポリシロキサン粉末は、例えば、シリコーン樹脂で、例えば、その内容が参照により組み込まれる米国特許第5,538,793号に記載されている、シルセスキオキサン樹脂で被覆されたエラストマー性オルガノポリシロキサン粉末から選択されてよい。こうしたエラストマー性粉末は、信越化学工業株式会社により名称「KSP-100」、「KSP-101」、「KSP-102」、「KSP-103」、「KSP-104」及び「KSP-105」で販売されており、INCI名がビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマーである。
【0063】
球状粉末の形態にある他のエラストマー性オルガノポリシロキサンは、フルオロアルキル基で官能化されたハイブリッドシリコーンの粉末であってよく、例えば信越化学工業株式会社により名称「KSP-200」で販売されており、且つフェニル基で官能化されたハイブリッドシリコーンの粉末であってよく、例えば信越化学工業株式会社により名称「KSP-300」で販売されている。
【0064】
ワックス粉末として、カルナウバマイクロワックス、例えば、Micro Powders社により名称Micro Care 350(登録商標)で販売されている製品、合成マイクロワックス、例えばパラフィンワックス粉末、例えばMicro Powders社により名称MicroEase 114S(登録商標)で販売されている製品、カルナウバワックスとポリエチレンワックスとの混合物から形成されるマイクロワックス、例えばMicro Powders社により名称Micro Care 300(登録商標)及び310(登録商標)で販売されているもの、カルナウバワックスと合成ワックスとの混合物から形成されるマイクロワックス、例えばMicro Powders社により名称Micro Care 325(登録商標)で販売されている製品、並びにポリエチレンマイクロワックス、例えばMicro Powders社により名称Micropoly 200(登録商標)、220(登録商標)、220L(登録商標)及び250S(登録商標)で販売されているものを挙げることができる。
【0065】
ポリアミド粉末として、Atochem社により名称「Orgasol」で販売されているものを挙げることができる。これらのポリアミド粉末粒子は、更に、「ナイロン12」又は「ナイロン6」の名称で、それらの様々な生理化学的性質によって知られている。本発明において有用なポリアミド粉末としてはまた、東レ株式会社により名称SP500で販売されているものも挙げることができる。
【0066】
本発明の好ましいフィラーとして、ラウロイルリジン、タルク、セルロース、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0067】
(b-1)フィラーは、存在する場合、概して、組成物の総質量に対して0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%の範囲の量である。
【0068】
- 非フェニルシリコーン油
(b-2)非フェニルシリコーン油は、単一のタイプの非フェニルシリコーン油を又は2つ以上のタイプの非フェニルシリコーン油を組み合わせて含みうる。
【0069】
本明細書では、「油」は、25℃で水溶性が0.5質量%未満である、大気圧下(760mmHg)及び室温(25℃)で液体又はペーストの形態である化合物又は物質を意味する。
【0070】
「シリコーン油」という用語は、本明細書では、少なくとも1個のケイ素原子、特に少なくとも1つのSi-O基、より具体的にはオルガノポリシロキサンを含む油を指す。
【0071】
「非フェニルシリコーン油」又は「非フェニル化シリコーン油」という用語は、フェニル基を一切含有しないシリコーン油を指す。
【0072】
本発明の(b-2)非フェニルシリコーン油は、組成物に、ケラチン繊維、特に睫毛への接着性を与えることができる。そのため、(b-2)非フェニルシリコーン油は、耐性を組成物に付与することができる。
【0073】
非フェニルシリコーン油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0074】
「揮発性」という用語は、本明細書では、100℃未満の引火点を有する物質を意味する。「不揮発性」という用語は、本明細書では、100℃以上の引火点を有する物質を意味する。
【0075】
揮発性油は、揮発性化粧用化合物であり、この化合物は、室温で液体であり、特に室温及び大気圧においてゼロでない蒸気圧を有し、特に0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)の範囲、具体的には1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)の範囲、より具体的には1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲の蒸気圧を有する。
【0076】
「不揮発性油」という用語は、室温及び大気圧で、皮膚又はケラチン繊維上に少なくとも数時間残り、特に10-3mmHg(0.13Pa)未満の蒸気圧を有する油を指す。
【0077】
不揮発性非フェニルシリコーン油は、好ましくは、25℃における粘度が8~5000センチストーク(cSt)(10-6m2/s)、より優先的には10~1000cSt、より具体的には50~500cSt、更により良好には50~150cStの範囲である油から選択される。粘度は、規格DIN53018に従って測定してよい。
【0078】
挙げることができるこれらの不揮発性非フェニル化シリコーン油の代表例には、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン);アルキルジメチコン;ビニルメチルメチコン;更には任意選択でフッ素化された脂肪族基で修飾された、又はヒドロキシル基、チオール基及び/若しくはアミン基等の官能基で修飾されたシリコーンが含まれる。
【0079】
そのため、挙げることができる不揮発性非フェニル化シリコーン油には、以下がある:
- ペンダントであり且つ/又はシリコーン鎖の末端にある、それぞれが2~24個の炭素原子を含有するアルキル基又はアルコキシ基を含むPDMS、
- 脂肪族基、又はヒドロキシル、チオール及び/若しくはアミン基等の官能基を含むPDMS、
- フッ素化基で任意選択により置換されたポリアルキルメチルシロキサン、例えばポリメチルトリフルオロプロピルジメチルシロキサン、
- ヒドロキシル、チオール及び/又はアミン基等の官能基で置換されたポリアルキルメチルシロキサン、例えばジヒドロキシジメチルシロキサン(ジメチコノール)、
- 脂肪酸、脂肪族アルコール又はポリオキシアルキレンで修飾されたポリシロキサン、並びに
- これらの混合物。
【0080】
一実施形態によれば、非フェニル化シリコーン油は、直鎖状の非フェニル化シリコーン油から選択される。
【0081】
一実施形態によれば、非フェニル化シリコーン油は、直鎖状の不揮発性非フェニル化シリコーン油から選択される。
【0082】
直鎖状の不揮発性非フェニル化シリコーン油は、特に次式:
【0083】
【化1】
【0084】
(式中、
R1、R2、R5及びR6は、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
R3及びR4は、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、ビニル基、アミン基又はヒドロキシル基であり、
Xは、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、ヒドロキシル基又はアミン基であり、
n及びpは、流体化合物を有するように選択される整数である)
のシリコーンから選択することができる。
【0085】
本発明に従って使用されうる不揮発性非フェニル化シリコーン油として、下記を挙げることができる:
- 置換基R1~R6及びXがメチル基を表し、p及びnが、粘度が500 000cStとなるような数であるもの、例えば、General Electric社により名称SE30で販売されている製品、Wacker社により名称AK 500000で販売されている製品、Bluestar社により名称Mirasil DM 500 000で販売されている製品、及びDow Corning社により名称Dow Corning 200 Fluid 500 000 cStで販売されている製品、
- 置換基R1~R6及びXがメチル基を表し、p及びnが、粘度が300 000cStとなるような数であるもの、例えばWacker社により名称Wacker Belsil DM 300 000で販売されている製品、
- 置換基R1~R6及びXがメチル基を表し、p及びnが、粘度が60 000cStとなるような数のもの、例えばDow Corning社によって名称Dow Corning 200 Fluid 60000 CSで販売されている製品、及びWacker社によって名称Wacker Belsil DM 60 000で販売されている製品、
- 置換基R1~R6及びXがメチル基を表し、p及びnが、粘度が350cStとなるような数のもの、例えばDow Corning社により名称Dow Corning 200 Fluid 350 CSで販売されている製品、
- 置換基R1~R6がメチル基を表し、X基が、ヒドロキシル基を表し、n及びpが、粘度が700cStとなるような数のもの、例えばMomentive社により名称Baysilone Fluid T0.7で販売されている製品。
【0086】
揮発性非フェニル化シリコーン油は、60℃から260℃の間の沸点を有するものから、更により特定すると、以下からのものから選択することができる:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。これらは、例えば、特にUnion Carbide社によりVolatile Silicone(登録商標)7207又はRhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V2の名称で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社によりVolatile Silicone(登録商標)7158、Rhodia社によりSilbione(登録商標)70045 V5の名称で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社によりSilsoft 1217の名称で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン等のタイプのシクロコポリマー、例えば、次式の、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109もまた挙げることができる:
【0087】
【化2】
【0088】
環状ポリジアルキルシロキサンと有機ケイ素化合物との混合物、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物もまた挙げることができる。
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃において5×10-6m2/s以下の粘度を有する、直鎖状の揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にToray Silicone社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。このカテゴリーに属するシリコーンは、Cosmetics and Toiletries、第91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsに公表されている論文にも記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445附属書Cに従って、25℃にて測定される。
【0089】
(b-2)非フェニルシリコーン油は、好ましくは、不揮発性非フェニルシリコーン油、より好ましくは直鎖状の不揮発性非フェニルシリコーン油、例えばジメチコンから選択される。
【0090】
(b-2)非フェニルシリコーン油は、存在する場合、概して、組成物の総質量に対して0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%の範囲の量である。
【0091】
- フェニルシリコーン油
(b-3)フェニルシリコーン油は、単一のタイプのフェニルシリコーン油を又は2つ以上のタイプのフェニルシリコーン油を組み合わせて含みうる。
【0092】
本発明の(b-3)フェニルシリコーン油は、組成物に、ケラチン繊維、特に睫毛への接着性を与えることができる。そのため、(b-3)フェニルシリコーン油は、耐性を組成物に付与することができる。
【0093】
フェニルシリコーン油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよく、好ましくは不揮発性である。
【0094】
挙げることができるこれらの不揮発性フェニルシリコーン油の代表例には、以下のものがある:
- 次式:
【0095】
【化3】
【0096】
[式(I)中、R基は、互いに独立に、メチル又はフェニルを表し、但し少なくとも1つのR基はフェニルを表す。好ましくは、この式中、フェニルシリコーン油は、少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、少なくとも5つ又は少なくとも6つのフェニル基を含む]
に相当するフェニルシリコーン油。
- 次式:
【0097】
【化4】
【0098】
[式(II)中、R基は、互いに独立に、メチル又はフェニルを表し、但し少なくとも1つのR基はフェニルを表す。好ましくは、この式中、前記オルガノポリシロキサンは、少なくとも3つの、例えば少なくとも4つ又は少なくとも5つのフェニル基を含む]
に相当するフェニルシリコーン油。前述のフェニルオルガノポリシロキサンの混合物を使用してもよい。挙げることができる例には、トリフェニル、テトラフェニル又はペンタフェニルオルガノポリシロキサンの混合物がある。
- 次式:
【0099】
【化5】
【0100】
[式(III)中、Meはメチルを表し、Phはフェニルを表す]
に相当するフェニルシリコーン油。このようなフェニルシリコーンは、特にDow Corning社により参照名PH-1555 HRI又はDow Corning 555 Cosmetic Fluid(化学名:1,3,5-トリメチル-1,1,3,5,5-ペンタフェニルトリシロキサン;INCI名:トリメチルペンタフェニルトリシロキサン)で製造されている。参照名Dow Corning 554 Cosmetic Fluidもまた使用することができる。
- 次式:
【0101】
【化6】
【0102】
[式(IV)中、Meはメチルを表し、yは1から1000の間であり、Xは-CH2-CH(CH3)(Ph)を表す]
に相当するフェニルシリコーン油。
- 次式(V):
【0103】
【化7】
【0104】
[式(V)中、化合物(V)が不揮発性油であるように、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、OR'は、-OSiMe3基を表し、yは、0であるか又は1から1000の間の範囲であり、zは、1から1000の間の範囲である]
に相当するフェニルシリコーン油。第1の実施形態によれば、yは1から1000の間の範囲である。使用できるのは、例えば、Wacker社により、特にBelsil PDM 1000の参照名で販売されているトリメチルシロキシフェニルジメチコンである。第2の実施形態によれば、yは0に等しい。使用できるのは、例えば、特に参照名Dow Corning 556 Cosmetic Grade Fluidで販売されているフェニルトリメチルシロキシトリシロキサンである。
- 次式(VI):
【0105】
【化8】
【0106】
[式(VI)中、
- R1~R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基であり、
- m、n、p及びqは、互いに独立に、0から900の間の整数であり、但し和m+n+qは0以外であり、好ましくは、和m+n+qは、1から100の間である]
に相当するフェニルシリコーン油、及びこれらの混合物。好ましくは、和m+n+p+qは、1から900の間であり、更により良好には1から800の間である。好ましくは、qは0に等しい。
- 次式(VII):
【0107】
【化9】
【0108】
[式(VII)中、
- R1~R6は、互いに独立に、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基であり、
- m、n及びpは、互いに独立に、0から100の間の整数であり、但し和n+mは1から100の間であり、好ましくは、R1~R6は、互いに独立に、飽和の、直鎖状又は分枝状のC1~C30、特にC1~C12炭化水素系基、具体的にはメチル、エチル、プロピル又はブチル基を表し、R1~R6は、特に同一であってもよく、加えてメチル基であってもよい]
に相当するフェニルシリコーン油、及びこれらの混合物。好ましくは、式(VII)中、m=1若しくは2若しくは3及び/又はn=0及び/又はp=0若しくは1が当てはまりうる。
- 式(VIII):
【0109】
【化10】
【0110】
[式(VIII)中、
- Rは、C1~C30アルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、
- nは、0~100を範囲とする整数であり、
- mは、0~100を範囲とする整数であり、但し和n+mは、1~100を範囲とする]
に相当するフェニルシリコーン油、及びこれらの混合物。特に、式(VIII)のR基及び前に定義したR1~R10は、それぞれ、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキル基、特にC2~C20アルキル基、特にC3~C16アルキル基、更に特定するとC4~C10アルキル基を表し、又は単環式若しくは多環式のC6~C14及び特にC10~C13アリール基を表し、又はそのアリール及びアルキル残基が前に定義した通りであるアラルキル基を表すことができる。好ましくは、式(VIII)のR及びR1~R10は、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、デシル、ドデシル又はオクタデシル基、或いはフェニル、トリル、ベンジル又はフェネチル基を表すことができる]。一実施形態によれば、25℃での粘度が5から1500mm2/sの間(即ち5~1500cSt)、好ましくは粘度が5から1000mm2/sの間(即ち5~1000cSt)である、式(VIII)のフェニルシリコーン油を使用することができる。式(VIII)のフェニルシリコーン油として、Dow Corning社からのDC556(22.5cSt)、Rhone-Poulenc社からの油Silbione 70663V30(28cSt)等のフェニルトリメチコン、又はWacker社からのBelsil油、特にBelsil PDM 1000(1000cSt)、Belsil PDM 200(200cSt)及びBelsil PDM 20(20cSt)等のジフェニルジメチコンを使用することが特に可能である。括弧内の値は、25℃での粘度を表す。
- 次式:
【0111】
【化11】
【0112】
[式(IX)中、
R1、R2、R5及びR6は、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基であり、
R3及びR4は、一緒に又は別々に、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、又はアリール基であり、
Xは、1~6個の炭素原子を含有するアルキル基、ヒドロキシル基又はビニル基であり、
n及びpは、油に、200000g/mol未満、好ましくは150000g/mol未満、より好ましくは100000g/mol未満の質量平均分子量を付与するように選択される]
に相当するフェニルシリコーン油、及びこれらの混合物。
【0113】
本発明における使用に最も特定して好適なフェニルシリコーンは、本明細書において上記の式(II)に、特に式(III)、(V)及び(VIII)に相当するものであってもよい。
【0114】
より具体的には、フェニルシリコーンは、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニル-トリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン及び2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0115】
好ましくは、本発明に従って使用されるフェニルシリコーン油の質量平均分子量は、500~10000g/molの範囲であってもよい。
【0116】
本発明による組成物中の(b)耐性付与剤の量は、組成物の総質量に対して、合計で0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上でありうる。
【0117】
本発明による組成物中の(b)耐性付与剤の量は、組成物の総質量に対して、合計で20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下でもよい。
【0118】
本発明による組成物中の(b)耐性付与剤の量は、組成物の総質量に対して、合計で0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%であってよい。
【0119】
(炭化水素系油)
本発明による組成物は、(c)少なくとも1種の炭化水素系油を含む。2種以上の(c)炭化水素系油を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの炭化水素系油又は異なるタイプの炭化水素系油の組合せを使用することができる。
【0120】
用語「炭化水素系油」(又は「炭化水素化油」若しくは「炭化水素油」)は、炭素原子及び水素原子、並びに任意選択で酸素原子及び窒素原子から本質的に形成され、又は構成されさえし、ケイ素原子又はフッ素原子を全く含有しない油を意味する。これは、アルコール基、エステル基、エーテル基、カルボン酸基、アミン基及び/又はアミド基を含有してもよい。
【0121】
炭化水素油は、非極性油であってもよい。
【0122】
炭化水素系油は、揮発性であっても、不揮発性であってもよい。
【0123】
一態様において、用語「不揮発性油」は、室温及び圧力で厳密に0.01mg/cm2/min未満の蒸発速度を有する油を意味する。用語「揮発性油」は、室温及び圧力で厳密に0.01mg/cm2/min以上の蒸発速度を有する油を意味する。
【0124】
(c)炭化水素油は、好ましくは、揮発性である。
【0125】
一実施形態によれば、揮発性炭化水素油は、65℃超、更により良好には80℃超の引火点を有する。
【0126】
揮発性炭化水素系油は、8~16個の炭素原子を含有する炭化水素系油から、特に分枝状のC8~C16アルカン(イソパラフィンとしても知られる)、例としてはイソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとも呼ばれる)、イソデカン及びイソヘキサデカン、並びにこれらの混合物から選択されうる。
【0127】
揮発性炭化水素系油はまた、7~17個の炭素原子、好ましくは8~16個の炭素原子、特に9~15個の炭素原子、より特定すると11~13個の炭素原子を含有する直鎖状の揮発性アルカンであってもよい。特に挙げることができるのは、n-ノナデカン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン及びn-ヘキサデカン、並びにこれらの混合物、又は分枝状C8~C16エステル等の分枝状エステル、例えば、ネオペンタン酸イソヘキシルである。
【0128】
その他の揮発性炭化水素系油、例えば、石油蒸留物、特に、Shell社によって名称Shell Soltで販売されているもの;揮発性の直鎖状アルカン、例えばCognis社からの特許出願DE10 2008 012 457に記載されているものも使用されうる。
【0129】
揮発性炭化水素系油は、好ましくは、イソドデカン、イソヘキサデカン、ウンデカン、トリデカン、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0130】
本発明の一実施形態において、不揮発性炭化水素油は、65℃以上、好ましくは80℃以上の引火点を有する。
【0131】
不揮発性炭化水素系油として、以下を挙げることができる:
- 16個超の炭素原子を含有する脂肪酸トリグリセリド等の植物由来の炭化水素系油、例としてはStearineries Dubois社により販売されているもの又はDynamit Nobel社により名称Miglyol 810(登録商標)、812(登録商標)及び818(登録商標)で販売されているもの等のカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド;Stearineries Dubois社により名称DUB TGI 24(登録商標)で販売されているもの等の分枝状C18~C36脂肪酸とグリセロールのトリグリセリド(INCI名:C18~36酸トリグリセリド);
- 鉱物又は合成由来の、16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば、流動パラフィン及びその誘導体、ワセリン、水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)又はスクアレン;並びに
- これらの混合物。
【0132】
(c)炭化水素系油は、好ましくは、揮発性炭化水素系油、より好ましくは分枝状C8~C16アルカン、例えばイソドデカン、イソデカン及びイソヘキサデカン、並びにこれらの混合物から選択される。
【0133】
本発明の特定の一実施形態において、(c)炭化水素系油は、好ましくは、揮発性炭化水素系油、より好ましくは分枝状C8~C16アルカン、特にイソドデカン、イソデカン及びイソヘキサデカン、並びにこれらの混合物から選択される、少なくとも2つのタイプの炭化水素系油を含む。
【0134】
本発明による組成物中の(c)炭化水素系油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であってもよい。
【0135】
本発明による組成物中の(c)炭化水素系油の量は、組成物の総質量に対して、70質量%以下、好ましくは60質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよい。
【0136】
本発明による組成物中の(c)炭化水素系油の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~70質量%、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは30質量%~50質量%であってもよい。
【0137】
(任意選択の成分)
- 顔料
本発明による組成物は、少なくとも1種の顔料を含んでもよい。2種以上の顔料を組み合わせて使用してもよい。したがって、単一のタイプの顔料、又は異なるタイプの顔料の組合せを使用できる。
【0138】
「顔料」という用語は、水性媒体に不溶性であり、且つ結果として得られる組成物を着色及び/又は不透明化することを意図した、白色又は有色の、鉱物又は有機粒子を意味する。これらの顔料は、白色であっても有色であってもよく、無機及び/又は有機でありうる。
【0139】
特定の実施形態によれば、本発明において使用される顔料は、鉱物顔料から選択される。用語「鉱物顔料」は、任意の無機顔料を意味する。本発明において有用である鉱物顔料の中でも、酸化ジルコニウム又は酸化セリウム等の金属酸化物、二酸化チタン及びまた酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色若しくは赤色)又は酸化クロム、並びにマンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物及びフェリックブルー、並びに金属粉末、例えばアルミニウム粉末若しくは銅粉末、又はこれらの任意の組合せを挙げることができる。以下の鉱物顔料も使用することができる: TiO2、ZrO2、Nb2O5、CeO2又はZnSとの混合物としてのTa2O5、Ti3O5、Ti2O3、TiO、ZrO2。本発明の文脈において、鉱物顔料は、より具体的には酸化鉄及び/又は二酸化チタンである。
【0140】
被覆顔料の平均粒径は、概して200nm以上である。本発明による被覆顔料の平均粒径は、200nm~25μm、好ましくは200nm~10μmの範囲であってもよい。本発明の目的のためには、D50サイズ又は体積平均サイズは、粒子の50体積%がD50超のサイズを有するように定義された粒径に相当する。体積平均サイズは、Malvern MasterSizerレーザー粒径アナライザーを用いた光回析により評価することができ、評価される前記粒子は、液体媒体中に、例としてはネオペンタン酸オクチルドデシル中に分散されている。
【0141】
顔料はまた、真珠光沢剤及び/又は金属の輝きを有する粒子であってもよい。「真珠光沢剤」という用語は、任意の形状の虹色又は非虹色の有色粒子を意味すると理解すべきであり、これらは、特に、ある特定の軟体動物によってその殻中で生成されるか、或いは合成され、光学干渉を介して色彩効果を有する。
【0142】
真珠光沢剤は、真珠光沢顔料、例えば、酸化鉄で被覆されたチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスで被覆されたチタンマイカ、酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、有機染料で被覆されたチタンマイカ、更にはオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料から選択することができる。それらはまた、金属酸化物及び/又は有機染料の少なくとも2つの連続層が表面に重ねられたマイカ粒子であってもよい。
【0143】
本発明の顔料は、疎水性表面処理される。言い換えれば、本発明の顔料は、疎水性コーティングを有する。疎水性コーティングは、好ましくは脂肪物質、シリコーン表面剤、フッ素化表面剤、フルオロシリコーン表面剤、金属石鹸、N-アシル化アミノ酸及びその塩、レシチン及びその誘導体、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、セバシン酸イソステアリル、リン脂質並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の疎水性化合物を好ましくは含む。
【0144】
本発明の好ましい一実施形態において、疎水性表面処理顔料は、トリイソステアリン酸イソプロピルチタンで被覆される。
【0145】
脂肪物質のタイプは限定されない。単一のタイプの脂肪物質、又は異なるタイプの脂肪物質の組合せを使用することができる。
【0146】
本明細書で使用するとき、用語「脂肪物質」は、室温及び大気圧(760mmHg)において水に不溶性(溶解度が5%未満、好ましくは1%未満、更により好ましくは0.1%未満)である有機化合物を意味する。脂肪物質は、その構造中に、少なくとも1つの、連続する少なくとも2つのシロキサン基、又は少なくとも1つの、少なくとも6個の炭素原子を含有する炭化水素系鎖を含んでいてもよい。脂肪物質は、一般に親油性物質であり、室温及び大気圧で有機溶媒、例えばクロロホルム、エタノール、ベンゼン、液体ワセリン、又はデカメチルシクロペンタシロキサンに可溶性であってもよい。
【0147】
一実施形態では、脂肪物質は油である。本明細書で使用するとき、「油」は、室温及び大気圧で固体形態でない任意の脂肪物質を意味する。美容的使用に好適な任意の油を、本発明において使用できる。好適な油には、揮発性及び不揮発性油の両方が含まれていてもよい。
【0148】
脂肪物質は、炭化水素油、シリコーン油、フルオロ油、及びワックスから選択されてもよく、好ましくは、炭化水素油及びワックスから選択されてもよい。
【0149】
炭化水素油は、動物、植物、鉱物、又は合成由来の炭化水素系油であってもよい。
【0150】
動物由来の炭化水素系油の例には、スクアレン、ペルヒドロスクアレン及びスクアランが含まれていてもよいが、これらに限定されない。
【0151】
植物由来の炭化水素系油には、植物油又は野菜油として知られている油が含まれていてもよい。植物由来の炭化水素系油の例には、ホホバ油、アボカド油、オリーブ油、イヌバラ油、スウィートアーモンド油、コリアンダー油、落花生油、ココナッツ油、シア脂油、パーム油、亜麻仁油、ツバキ油、マカダミアナッツ油、ヒマワリ油、アプリコット油、ダイズ油、アララ油、ヘイゼルナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、アーモンド油、ブドウ種子油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナッツ油、ゴマ種子油、キャノーラ油、アプリコット油、マンゴー油、クルミ油、ケシ種子油、オオムギ油、ライムギ油、及びそれらの混合物が含まれていてもよいが、これらに限定されない。それらの中で、ホホバ油、特にホホバ種子油、アボカド油、オリーブ油、特にオリーブ果実油、イヌバラ油、特にイヌバラ果実油及びそれらの混合物を好ましく使用してもよい。
【0152】
鉱物又は合成由来の炭化水素系油は、揮発性でも不揮発性でもよく、このような油の例には、液体パラフィン、ワセリン、液体ワセリン(鉱油)、水添イソパラフィン又は水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、ペルヒドロスクアレン、ポリデセン、イソヘキサデカン、イソドデカン、及びそれらの混合物が含まれていてもよいが、これらに限定されない。それらの中で、特に好ましくは、鉱油が使用できる。
【0153】
一実施形態では、脂肪物質はワックスである。本明細書で使用するとき、「ワックス」は、室温、大気圧下で実質的に固体であり、例えば30℃以上の融点を有する脂肪物質を意味する。このようなワックスの代表的な例には、動物、植物、又は鉱物由来のワックス、例えばカンデリラワックス、ビーズワックス、カルナウバワックス、オーリクリーワックス、サトウキビワックス、パラフィンワックス、ラノリンワックス、モンタンワックス、及びオゾケライト、硬化油、例えば水添ホホバ油、合成由来のワックス、例えばポリエチレンワックス、並びにシリコーンワックス、例えばアルキル-及びアルコキシ-ポリ(ジ)メチルシロキサン又はポリ(ジ)メチルシロキサンエステルが含まれていてもよい。それらの中で、好ましくは、カンデリラワックスが使用できる。
【0154】
脂肪物質はまた、脂肪酸、合成エステル及びエーテル、脂肪族アルコール並びに脂肪アミドから選択されてもよい。
【0155】
脂肪酸の例として、C12~C22高級脂肪酸、例えばC12~C22飽和脂肪酸、例えばステアリン酸;C12~C22不飽和脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸、及びリノレン酸;並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0156】
合成エステル及びエーテルの例には、式R1COOR2及びR1-OR2(式中、R1は、8~29個の炭素原子を含む脂肪酸又は脂肪族アルコールの残基を表し、R2は、3~30個の炭素原子を含む分枝状又は非分枝状炭化水素鎖を表す)の油が含まれていてもよいが、これらに限定されない。例えば、ピュアセリンオイル、2-エチルヘキシルパルミテート(又はオクチルパルミテート)、イソプロピルラノレート、イソプロピルラウレート、2-オクチルドデシルステアレート、2-オクチルドデシルエルケート若しくはイソステアリルイソステアレート;ヒドロキシル化エステル、例えばイソステアリルラクテート、オクチルヒドロキシステアレート、オクチルドデシルヒドロキシステアレート、ジイソステアリルマレート、トリイソセチルシトレート若しくは脂肪族アルコールのヘプタノエート、オクタノエート若しくはデカノエート;ポリオールエステル、例えばプロピレングリコールジオクタノエート、ネオペンチルグリコールジヘプタノエート及びジエチレングリコールジイソノナノエート;並びにペンタエリスリトールエステル、例えばペンタエリスリチルテトライソステアレート;又はアミノ酸の親油性誘導体、例えばイソプロピルラウロイルサルコシネートを使用できる。
【0157】
他の例示的エステルには、例えば、2-エチルヘキシルカプレート/カプリレート(又はオクチルカプレート/カプリレート)、エチルラウレート、ブチルラウレート、ヘキシルラウレート、イソヘキシルラウレート、メチルミリステート、エチルミリステート、ブチルミリステート、イソブチルミリステート、イソプロピルミリステート、2-オクチルドデシルミリステート、2-エチルヘキシルモノココエート(又はオクチルモノココエート)、メチルパルミテート、エチルパルミテート、イソプロピルパルミテート、イソブチルパルミテート、ブチルステアレート、イソプロピルステアレート、イソブチルステアレート、2-エチルヘキシルステアレート(又はオクチルステアレート)、イソプロピルイソステアレート、イソセチルステアレート、イソステアリルイソステアレート、2-エチルヘキシルペラルゴネート(又はオクチルペラルゴネート)、2-エチルヘキシルヒドロキシステアレート(又はオクチルヒドロキシステアレート)、デシルオレエート、ジイソプロピルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート(又はジオクチルアジペート)、ジイソセチルアジペート、2-エチルヘキシルスクシネート(又はオクチルスクシネート)、ジイソプロピルセバセート、2-エチルヘキシルマレート(又はオクチルマレート)、ペンタエリスリチルカプレート/カプリレート、2-エチルヘキシルヘキサノエート(又はオクチルヘキサノエート)、オクチルドデシルオクタノエート、イソデシルネオペンタノエート、イソステアリルネオペンタノエート、オクチルドデシルネオペンタノエート、イソノニルイソノナノエート、イソトリデシルイソノナノエート、セテアリルイソノナノエート、イソデシルイソノナノエート、イソトリデシルイソノナノエート、ラウリルラクテート、ミリスチルラクテート、セチルラクテート、ミリスチルプロピオネート、2-エチルヘキシル2-エチルヘキサノエート(又はオクチル2-エチルヘキサノエート)、2-エチルヘキシルオクタノエート(又はオクチルオクタノエート)、及びセチル2-エチルヘキサノエートが含まれていてもよい。
【0158】
本発明において有用でありうる脂肪族アルコールは、非アルコキシル化、飽和又は不飽和、直鎖状又は分枝状で、6~30個の炭素原子、より具体的には8~30個の炭素原子を有していてもよい。本発明において好ましく使用されうる脂肪族アルコールは、室温で液体形態であるか、又は固体ではない。脂肪族アルコールの例には、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びそれらの混合物(セチルステアリルアルコール)、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、2-ブチルオクタノール、2-ヘキシルデカノール、2-ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコール(oleic alcohol)及びリノレイルアルコール(linoleic alcohol)が含まれていてもよいが、これらに限定されない。ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びミリシルアルコールもまた使用できる。
【0159】
脂肪アミドの例には、イソプロピルラウロイルサルコシネートが含まれる。
【0160】
脂肪物質はまた、揮発性又は不揮発性シリコーン油であってもよい。本発明において好ましく使用される揮発性又は不揮発性シリコーン油の例には、シクロポリジメチルシロキサン(シクロメチコン)、例えばシクロヘキサシロキサン、アルキル、アルコキシ又はフェニル基を含むポリジメチルシロキサン、フェニルシリコーン、例えばフェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケート及びポリメチルフェニルシロキサンが含まれていてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0161】
本発明に好適でありうるフルオロ油には、ペルフルオロメチルシクロペンタン及びノナフルオロメトキシブタンが含まれていてもよい。
【0162】
好ましくは、脂肪物質は、炭化水素油、ワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、植物又は鉱物由来の炭化水素系油、ワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、ホホバ油、特にホホバ種子油、アボカド油、オリーブ油、特にオリーブ果実油、イヌバラ油、特にイヌバラ果実油、カンデリラワックス及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0163】
シリコーン表面剤は、オルガノポリシロキサン、シラン誘導体、シリコン-アクリレートコポリマー、シリコーン樹脂、及びそれらの混合物から選択されうる。オルガノポリシロキサンという用語は、交互にケイ素原子及び酸素原子を含み、且つケイ素原子と結合した有機基を含む構造を有する化合物を示す。
【0164】
フッ素化表面剤は、ペルフルオロアルキルホスフェート、ペルフルオロポリエーテル、ポリテトラフルオロポリエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロアルキルシラザン、ヘキサフルオロプロピレンポリオキシド、又はペルフルオロアルキルペルフルオロポリエーテル基を含むポリオルガノシロキサンから選択されうる。ペルフルオロアルキル基という用語は、すべての水素原子がフッ素原子に置き換えられているアルキル基を示す。
【0165】
フルオロシリコーン表面剤は、ペルフルオロアルキルジメチコン、ペルフルオロアルキルシラン、及びペルフルオロアルキルトリアルコキシシランから選択されうる。
【0166】
疎水性化合物は、金属石鹸、例えば、ジミリスチン酸アルミニウム、水添タロウグルタメートのアルミニウム塩から選択してもよい。金属石鹸として、具体的には、12~22個の炭素原子を有する脂肪酸、特に12~18個の炭素原子を有する脂肪酸の金属石鹸を挙げることができる。金属石鹸の金属は、特に、亜鉛又はマグネシウムであってもよい。金属石鹸としては、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、及びそれらの混合物を使用することができる。
【0167】
疎水性化合物は、8~22個の炭素原子を有するアシル基、例えば、2-エチルヘキサノイル、カプロイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、若しくはココイル基を含みうるN-アシル化アミノ酸又はその塩から選択することもできる。アミノ酸は、例えばリジン、グルタミン酸又はアラニンであってよい。これらの化合物の塩は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、ナトリウム又はカリウム塩であってもよい。このように、特に好ましい一実施形態によれば、N-アシル化アミノ酸誘導体は、具体的にはグルタミン酸誘導体及び/又はその塩のいずれか、より具体的には、ステアロイルグルタメート、例えばステアロイルグルタミン酸アルミニウム等であってよい。
【0168】
疎水性コーティング中の疎水性化合物、好ましくは脂肪物質の量は、疎水性コーティングの総質量に対して、50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
【0169】
本発明の好ましい一実施形態において、疎水性表面処理顔料は、トリイソステアリン酸イソプロピルチタンで被覆された顔料から選択され、即ち、顔料の表面は、トリイソステアリン酸イソプロピルチタンで被覆又は処理されている。
【0170】
疎水性表面処理顔料は、当業者には周知である、化学的、電子的、機械化学的又は機械的性質の表面処理技法に従って調製することができる。また、市販の製品を使用してもよい。トリイソステアリン酸イソプロピルチタンの表面剤は、溶媒の蒸発、化学反応、及び共有結合の形成によって、顔料の表面に吸収、吸着、又はグラフト化されうる。
【0171】
顔料は、組成物の総質量に対して、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上の量、且つ/又は20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下の量で存在してもよい。
【0172】
本発明による組成物中の顔料の量は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは2質量%~10質量%でもよい。
【0173】
- 親油性ゲル化剤
本発明による組成物は、少なくとも1種の親油性ゲル化剤を含んでもよい。2種以上の親油性ゲル化剤を使用する場合、それらは同じであっても異なっていてもよい。
【0174】
用語「親油性ゲル化剤」は、本発明による組成物中の炭化水素系油をゲル化できる助剤を意味する。
【0175】
本発明による組成物は、好ましくは微粒子である少なくとも1種の親油性ゲル化剤を含む。
【0176】
用語「微粒子」の親油性ゲル化剤は、粒子の形態又は結晶の形態にある(微粒子又は結晶体)、親油性ゲル化剤を意味する。
【0177】
本発明によれば、親油性ゲル化剤は、好ましくは有機変性クレイから選択される。
【0178】
クレイは、ラメラ構造の水和シリケート及び/又はアルミノシリケートをベースとした材料を示す。
【0179】
クレイは、天然であっても合成であってもよく、C10~C22塩化アンモニウム、特に塩化ステアラルコニウム又は塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム塩を用いた処理によって親油性にされている。
【0180】
これらのクレイは、ベントナイト、具体的にはベントナイト、ヘクトライト及びモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、セピオライト、黒雲母、アタパルジャイト、バーミキュライト、並びにゼオライトから選択することができる。
【0181】
有機変性クレイは、特に第四級アミン及び第三級アミンから選択される化合物で処理されたクレイであってもよい。挙げることができる有機変性クレイには、有機変性ベントナイト、例えばRheox社により名称Bentone 34で販売されている製品、及び有機変性ヘクトライト、例えばRheox社により名称Bentone 27及びBentone 38で販売されている製品が含まれる。特に、変性シリル化マグネシウム等の変性クレイ(Rheox社からのBentone gel VS38)、C10~C22脂肪酸アンモニウムクロリドで変性されたヘクトライト、例としてはジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで変性されたヘクトライト等の変性ヘクトライト、例としてはElementis社により名称Bentone 38VCGで販売されている製品、又はRheox社により名称Bentone 38 CEで販売されている製品、又はElementis社により名称Bentone Gel V5 5Vで販売されている製品を挙げることができる。
【0182】
親油性ゲル化剤はまた、疎水性ヒュームドシリカから選択することもでき、これはシラノール基の数を減少させる化学反応を介してシリカの表面を変性することにより得ることができ、これらのシラノール基は場合により、特に疎水性基によって置換されている。疎水性基は、トリメチルシロキシル基とすることができ、これは、特にヘキサメチルジシラザンの存在下でヒュームドシリカを処理することによって得られる。このように処理されたシリカは、CTFA辞典(第6版、1995年)により、「シリル化シリカ」として公知である。それらは、例えば、Degussa社により参照名Aerosil R812(登録商標)で、及びCabot社により参照名Cab-O-Sil TS-530(登録商標)で販売されている。疎水性基は、ジメチルシリルオキシル基又はポリジメチルシロキサン基であってもよく、これらは、特に、ポリジメチルシロキサン又はジメチルジクロロシランの存在下でヒュームドシリカを処理することによって得られる。このように処理されたシリカは、CTFA辞典(第6版、1995年)により、「ジメチルシリル化シリカ」として公知である。これらは、例えば、Degussa社により参照名Aerosil R972(登録商標)及びAerosil R974(登録商標)で、並びにCabot社によりCab-O-Sil TS-610(登録商標)及びCab-O-Sil TS-720(登録商標)で販売されている。
【0183】
親油性ゲル化剤はまた、例えばDow Corning社により名称VM-2260(INCI名:シリル化シリカ)で販売されている製品であり、その粒子の平均サイズが約1000ミクロンであり、1質量単位当たりの比表面積が600~800m2/gを範囲とする疎水性シリカエアロゲルから選択することができ;更に、Cabot社により参照名Aerogel TLD 201、Aerogel OGD 201、Aerogel TLD 203、Enova(登録商標)Aerogel MT 1 100、Enova Aerogel MT 1200で販売されているエアロゲルも挙げることができる。
【0184】
親油性ゲル化剤はまた、カルボキシビニルポリマー、例えばCarbopol製品(カルボマー)及びPemulen製品(アクリレート/C10~C30アルキルアクリレートコポリマー)又はINCI名「ポリC10~30アルキルアクリレート」を有するポリマー、例えばAir Products社製の製品Intelimer(登録商標)、例えばポリステアリルアクリレートである製品Intelimer(登録商標)IPA 13-1、又はベヘニルポリマーである製品30 Intelimer(登録商標)IPA 13-6から選択することができる親油性ポリマー増粘剤から選択してもよい。
【0185】
親油性ゲル化剤は、有機変性クレイ、特にジステアルジモニウムヘクトライトであることが好ましいことがある。
【0186】
本発明による組成物中の親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%超、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であってもよく、且つ/又は15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってもよい。
【0187】
本発明による組成物中の親油性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~15質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%、より好ましくは1質量%~5質量%であってもよい。
【0188】
- 炭酸アルキル又はアルキレン
本発明による組成物は、少なくとも1種の炭酸アルキル又はアルキレンを含んでもよい。単一のタイプの炭酸アルキル若しくはアルキレン、又は異なるタイプの炭酸アルキル若しくはアルキレンの組合せを、本発明による組成物中に使用することができる。
【0189】
炭酸アルキル又はアルキレンは、増粘剤と共に本発明の組成物を濃化するように作用する増粘助剤としての機能を有しうる。
【0190】
一実施形態によれば、本発明による組成物中に存在する炭酸アルキレンのアルキレン鎖及び/又は炭酸アルキルのアルキル基は、1~6個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、より好ましくは2~4個の炭素原子を含み、最終的に1つ以上のヒドロキシル基によって置換される。
【0191】
別の実施形態によれば、本発明による組成物中に存在する炭酸アルキレンのアルキレン鎖の炭素の和及び/又は炭酸アルキルのアルキル基の炭素の和は、2~6個の炭素原子の範囲である。
【0192】
炭酸アルキレンは、特に、以下の式(4):
【0193】
【化12】
【0194】
[式(4)中、
R'は、水素原子、直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基、直鎖状又は分枝状C1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、
R"は、水素原子、直鎖状又は分枝状C1~C6アルキル基、直鎖状又は分枝状C1~C4ヒドロキシアルキル基を表し、
mは、1、2又は3である]
のものから選択される。
【0195】
好ましくは、R'基は、水素原子、直鎖状又は分枝状C1~C4アルキル基、直鎖状又は分枝状C1~C2ヒドロキシアルキル基を表す。
R''は、水素原子、直鎖状又は分枝状C1~C2アルキル基、直鎖状又は分枝状C1~C2ヒドロキシアルキル基を表す。
好ましくは、mは1である。
【0196】
炭酸アルキレンの特に有利な例として、R'基が水素原子(炭酸エチレンに対応する)、メチル基(炭酸プロピレンに対応する)、エチル(炭酸1,2-ブチレンに対応する)、ヒドロキシメチル(R'=-CH2OH;炭酸グリセリルに対応する)を表す化合物を挙げることができる。好ましくは、使用される炭酸アルキレンは、炭酸プロピレンである。
【0197】
炭酸アルキルは、特に、以下の式(5):
R'-O-CO-O-R''
[式(5)中、
R'は、直鎖状又は分枝状C1~C5アルキル基、直鎖状又は分枝状C1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、
R''は、直鎖状又は分枝状C1~C5アルキル基、直鎖状又は分枝状C1~C4ヒドロキシアルキル基を表し、
R'及びR''の炭素の和は、2~6の範囲である]
のものから選択される。
【0198】
好ましくは、R'基は、直鎖状C1~C3アルキル基又は直鎖状C1~C2ヒドロキシアルキル基を表す。
R''は、直鎖状C1~C3アルキル基又は直鎖状C1~C2ヒドロキシアルキル基を表す]。
【0199】
より具体的には、炭酸ジエチル及び炭酸ジプロピルを挙げることができる。
【0200】
本発明によるカーボネートは、好ましくは、炭酸アルキレン、より具体的には炭酸プロピレンである。
【0201】
炭酸アルキル又はアルキレンは、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上の量で、且つ/又は5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下の量で存在してもよい。
【0202】
本発明による組成物中の増粘助剤の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~5質量%、好ましくは0.2質量%~3質量%、より好ましくは0.5質量%~1.5質量%であってもよい。
【0203】
- その他の任意選択の添加剤
本発明による組成物は、例えば、溶媒、ゴム、樹脂、分散剤、酸化防止剤、フェノキシエタノール等の保存剤、香料、UV遮蔽剤、ビタミン、保湿剤、皮膚軟化剤又はコラーゲン保護剤等の化粧活性剤、及びこれらの混合物から選択される、化粧品分野で通常使用される他の任意の添加剤も含んでよい。
【0204】
本発明による組成物は、水を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量で任意選択により含んでもよく、最も好ましくは水を含まない。
【0205】
言い換えれば、一実施形態において、本発明による組成物は無水である。用語「無水」は、本発明による組成物が、水を全く含まない又は水を、組成物の総質量に対して、1質量%以下、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下の量でしか含まないことを意味する。
【0206】
[方法及び使用]
本発明による組成物は、ケラチン繊維、より好ましくは睫毛を被覆するために使用することができる。
【0207】
例えば、本発明による組成物は、ケラチン繊維を被覆するための方法であって、本発明による組成物をケラチン繊維上に塗布して、ケラチン繊維上に少なくとも1つのコーティングを形成する工程を含む方法によって使用することができる。
【0208】
そのため、本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは睫毛をメーキャップするための美容方法であって、本発明による組成物を適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【0209】
上記の美容方法は、ケラチン繊維にカールを付けること、並びに長時間持続する特性によってケラチン繊維のカールを維持すること(即ち、カールを保たせること)を目的としうる。
【実施例0210】
本発明を、実施例によって、より詳細な方法で説明する。しかしながら、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものとは解釈すべきでない。以下の実施例は、本発明の分野における非限定的な例示として提示される。
【0211】
(実施例1~3及び比較例1~3)
Table 1(表1)に示す実施例1~3及び比較例1~3の睫毛用の化粧用組成物(マスカラ)を、Table 1(表1)に示す成分を均一になるまで混合することにより調製した。成分の量の数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づく。
【0212】
[評価]
(長期耐性)
実施例1~3及び比較例1~3による各組成物を、厚さ300μmのプラスチックシートに適用し、室温で1時間放置して乾燥させて、付着物の膜を調製した。人工皮脂又は水の液滴を乾燥付着物の表面上にキャストし、24時間接触を維持した。表面から液滴を除去した後に次いで、付着物を指で擦ることによって付着物の耐薬品性を評価した。付着物の耐性の評価は、以下の基準に従って、付着物の粘着性及び分解の面に関して実施した。
非常に良好: 膜上に損傷は観察されなかった。
良好: 表面上に若干の変化が観察されたが、損傷はなかった。
不良: 膜上に損傷が観察され、粘着性だった。
非常に不良: 膜は完全に破壊された。
【0213】
(カール維持能力)
実施例1~3及び比較例1~3による各組成物を手でマスカラブラシを用いて6名のテスターのつけまつげ(eyelashes)に塗布した(それぞれ30ストローク)。以下の工程によって、つけまつげを種々の媒体中に浸した。
1)つけまつげを、室温で水、人工皮脂、及びシャワー用ジェル液中に1分間、成功裏に浸漬させ、各溶媒中への浸漬の後、指で擦った。この一連工程は、試験の一サイクルを構成する。
2)つけまつげのカール角度を、VHS-5000デジタル顕微鏡を用いて分析した。
3)操作1及び2を4回繰り返した(合計で4サイクル)。
【0214】
カールを、初期時間と4サイクル後との間の角度の差を比較することによって評価した。各組成物のカール維持能力を以下の基準により評価した。
非常に良好: カール角度は、30度以上だった。
良好: カール角度は、15度以上であり、30度未満だった。
不良: カール角度は、10度以上であり、15度未満だった。
非常に不良: カール角度は、10度未満だった。
【0215】
(耐温水性)
実施例1~3及び比較例1~3による各組成物を手でマスカラブラシを用いてつけまつげに塗布した(それぞれ30ストローク)。つけまつげを45℃の水浴中に浸し、攪拌しながら1時間媒体中に維持した。次いで、つけまつげを指で擦り(10ストローク)、つけまつげ上のコーティング密着性及び被覆の質を、以下の基準に従って評価した。
非常に良好: つけまつげのコーティングに変化は全く観察されなかった。
良好: つけまつげのコーティングに若干の変化が観察されたが、保たれていた。
不良: 一部のコーティングがつけまつげから除去された。
非常に不良: コーティングが完全につけまつげから除去された。
【0216】
結果をTable 1(表1)に示す。
【0217】
【表1】
【0218】
Table 1(表1)に示すように、本発明の成分(a)~(c)の組合せを含む実施例1~3による化粧用組成物は、改善された耐性及びカール維持効果を示した。
【0219】
一方、(a)少なくとも1つのC8~C30アルキル側鎖を有するアクリルポリマーを含まない比較例1及び2による化粧用組成物は、乏しいカール維持能力を示した。加えて、比較例2による組成物では、皮脂に対する長期耐性も不良だった。また、本発明の耐性付与剤を含まない比較例3による化粧用組成物は、温水に対して乏しい耐性を示した。
【0220】
これに応じて、本発明による組成物は、ケラチン繊維に、改善された長期耐性及びカール維持効果をもたらすことができるため、ケラチン繊維のための化粧用組成物として、特に睫毛用のメーキャップ組成物、例えばマスカラとして非常に適していることが理解されうる。
【外国語明細書】