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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102610
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】医療用雄型接続装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
A61M39/10 100
A61M39/10 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006617
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000167325
【氏名又は名称】光陽産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】川合 敦斗
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066JJ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】上限トルクの低下を抑制できる医療用雄型接続装置を提供する。
【解決手段】医療用雄型接続装置1は、雄型コネクタ10と操作筒30とトルクリミット機構40を備え、雄型コネクタ10は、雄型ルアー部11とチューブホルダ12と、螺合筒14とを有している。トルクリミット機構は、締付方向のトルクが上限トルクを超えた時に操作筒を空回りさせる。トルクリミット機構は、操作筒の内周に全周にわたって形成された係合歯41と、螺合筒20一体をなす円盤形状の連接部13に形成された弾性爪45とを有し、弾性爪は、径方向外方向に突出して前記係合歯に噛み合う爪部47を有している。操作筒の空回りの際に、弾性爪の径方向内側への弾性変形に伴って爪部が係合歯を乗り越える。係合歯の軸方向奥端41xが爪部の軸方向中間部に位置している。操作筒が空回りして弾性爪が径方向内方向に弾性変形した時に、係合歯の奥端が爪部の中間部に局所的に当たる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型コネクタと協働して医療構成要素を接続する医療用雄型接続装置であって、
雄型コネクタと操作筒とトルクリミット機構を備え、
前記雄型コネクタは、前記雌型コネクタの雌型ルアー部と接合される雄型ルアー部と、前記雄型ルアー部の軸方向基端側に配置され医療構成要素を接続する接続部と、前記雄型ルアー部の径方向外側に配置され内周に前記雌型コネクタに螺合される雌ねじを有する螺合筒と、を含み、
前記操作筒は前記螺合筒の外周に前記螺合筒に対して回転可能に配置され、
前記トルクリミット機構は、前記操作筒の操作トルクを前記螺合筒に伝達し、前記螺合の際の締付方向のトルクが上限トルクを超えた時に、前記操作筒を空回りさせるように構成され、
前記トルクリミット機構は、前記操作筒の内周に形成された係合歯と、前記螺合筒または螺合筒と一体をなす部位に形成された弾性爪とを有し、前記弾性爪は、径方向外方向に突出して前記係合歯に噛み合う爪部を有し、前記操作筒の空回りの際に、前記弾性爪の径方向内側への弾性変形に伴って前記爪部が前記係合歯を乗り越えるようになっており、
前記係合歯の軸方向奥端が前記爪部の軸方向中間部に位置し、これにより、前記操作筒が空回りして前記弾性爪が径方向内方向に弾性変形した時に、前記係合歯の前記奥端が前記爪部の中間部に局所的に当たることを特徴とする医療用雄型接続装置。
【請求項2】
前記係合歯の軸方向奥側の端面が奥に向かって低くなる傾斜面からなり、前記係合歯の径方向内側を向く面と前記傾斜面との交差部が、前記係合歯の前記奥端として提供されることを特徴とする請求項1に記載の医療用雄型接続装置。
【請求項3】
前記雄型コネクタは、前記雄型ルアー部の基端側と前記螺合筒の基端側を一体に連ねる円盤形状の連接部を有し、
前記操作筒は、前記螺合筒と前記連接部を覆うとともに、前記連接部から前記螺合筒と反対側に突出する延長筒部を有し、前記延長筒部に前記係合歯が形成され、
前記弾性爪は、前記連接部に設けられ前記螺合筒の反対側に突出することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用雄型接続装置。
【請求項4】
前記雄型コネクタは、前記雄型ルアー部と前記雄型ルアー部の基端側に位置する支持部とを一体に有するコネクタ本体と、前記コネクタ本体と別体をなす前記螺合筒と、を備えており、
前記螺合筒は、前記支持部に回転可能に装着される中間の装着部と、前記雌ねじが形成された螺合部と、前記螺合部の反対側に位置する延長筒部とを有し、前記延長筒部に前記弾性爪が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用雄型接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ等の医療構成要素を接続するために雌型コネクタと協働して用いられる医療用雄型接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ等の医療構成要素同士を接続するために雄型コネクタと雌型コネクタとを備えた接続構造は周知である。雄型コネクタは、外周がテーパをなす雄型ルアー部と、この雄型ルアー部の径方向外側に配置され内周に雌ねじが形成された螺合筒と、を有している。雌型コネクタは、内周がテーパをなす雌型ルアー部と、この雌型ルアー部の先端部外周に形成された雄ねじの機能を有する係合突起と、を有している。これら雄型コネクタの螺合筒と雌型コネクタの係合突起の螺合を進めると、雄型ルアー部と雌型ルアー部が押圧力をもって接合し、所望のシール性能が得られるようになっている。
【0003】
上記螺合の締め付けが過剰になると、雄型ルアー部と雌型ルアー部が強く噛みついてしまい再接続することができない。また、雄型ルアー部や雌型ルアー部にひび割れ等の破損が生じることもある。これとは逆に締め付けが足りないと、所望のシール性能が得られない。
【0004】
そこで、本出願人は操作筒とトルクリミット機構を備えた医療用雄型接続装置を開発した。その一例が特許文献1の図8図9図11に開示されている。図中の符号を用いて簡単に説明すると、この医療用雄型接続装置は、螺合筒20の外周に回転可能に配置された操作筒30と、螺合筒と操作筒との間に設けられたトルクリミット機構50とを備えている。トルクリミット機構は、操作筒からの操作トルクを螺合筒に伝達し、締付時に操作トルクが上限トルクを超えた時に操作筒を空回りさせて螺合筒に過剰なトルクが付与されるのを防止している。
【0005】
上記トルクリミット機構は、操作筒の端部内周に全周にわたって形成された多数の係合歯51と、螺合筒20の端部に形成された弾性爪52と、を有している。弾性爪52は係合歯51と噛み合う爪部53を有している。上限トルクを超える操作トルクが付与された時には弾性爪が径方向内側に弾性変形し、これにより爪部53が係合歯51を越え、操作筒を空回りさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許6918324号公報(図8図9図11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の医療用雄型接続装置では、爪部の軸方向奥端が操作筒の係合歯の軸方向中間部に位置している。操作トルクが上限トルクを超えて操作筒が空回りする際には、弾性爪が弾性変形するため、爪部の奥端のエッジが係合歯の中間部に局所的に強く当たるため、この爪部の奥端のエッジ及びその近傍部で塑性変形が生じる。この塑性変形量は僅かではあるが、操作筒が空回りする際にこの爪部は複数の係合歯を乗り越えるため、塑性変形量が蓄積される。さらに雄型コネクタと雌型コネクタの接続、接続解除、再接続を繰り返すことにより塑性変形量が蓄積される。その結果、操作筒の操作トルクを螺合筒に伝達可能な上限トルク(操作筒を空回りさせる直前のトルク)が、当初設定されたトルクより低下する可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、雌型コネクタと協働して医療構成要素を接続する医療用雄型接続装置であって、
雄型コネクタと操作筒とトルクリミット機構を備え、
前記雄型コネクタは、前記雌型コネクタの雌型ルアー部と接合される雄型ルアー部と、前記雄型ルアー部の軸方向基端側に配置され医療構成要素を接続する接続部と、前記雄型ルアー部の径方向外側に配置され内周に前記雌型コネクタに螺合される雌ねじを有する螺合筒と、を含み、
前記操作筒は前記螺合筒の外周に前記螺合筒に対して回転可能に配置され、
前記トルクリミット機構は、前記操作筒の操作トルクを前記螺合筒に伝達し、前記螺合の際の締付方向のトルクが上限トルクを超えた時に、前記操作筒を空回りさせるように構成され、
前記トルクリミット機構は、前記操作筒の内周に形成された係合歯と、前記螺合筒または螺合筒と一体をなす部位に形成された弾性爪とを有し、前記弾性爪は、径方向外方向に突出して前記係合歯に噛み合う爪部を有し、前記操作筒の空回りの際に、前記弾性爪の径方向内側への弾性変形に伴って前記爪部が前記係合歯を乗り越えるようになっており、
前記係合歯の軸方向奥端が前記爪部の軸方向中間部に位置し、これにより、前記操作筒が空回りして前記弾性爪が径方向内方向に弾性変形した時に、前記係合歯の前記奥端が前記爪部の中間部に局所的に当たることを特徴とする。
【0009】
上述の構成によれば、操作筒が空回りする際に、弾性爪の爪部の中間部と係合歯の奥端が局所的に当たるため、弾性爪の爪部の中間部では押圧力が分散されて塑性変形が殆ど生じないか、塑性変形量をきわめて低く抑えることができる。他方、係合歯の奥端では僅かに塑性変形が生じるものの、1回の接続での操作筒の空回り時に係合歯の奥端が弾性爪に局所的に当たる回数は弾性爪に比べて少なく、接続、再接続を繰り返しても塑性変形の蓄積量は低く抑えられる。その結果、操作トルクの上限が当初に設定されたトルクから低下するのを抑制することができる。
【0010】
好ましくは、前記係合歯の軸方向奥側の端面が奥に向かって低くなる傾斜面からなり、前記係合歯の径方向内側を向く面と前記傾斜面との交差部が、前記係合歯の前記奥端として提供される。
この構成によれば、操作筒が空回りして操作筒の係合歯の奥端が弾性爪の爪部の中間部に局所的に当たる際に、押圧力を分散することができ、係合歯の奥端の塑性変形を抑えることができる。
【0011】
一具体的態様では、前記雄型コネクタは、前記雄型ルアー部の基端側と前記螺合筒の基端側を一体に連ねる円盤形状の連接部を有し、前記操作筒は、前記螺合筒と前記連接部を覆うとともに、前記連接部から前記螺合筒と反対側に突出する延長筒部を有し、前記延長筒部に前記係合歯が形成され、前記弾性爪は、前記連接部に設けられ前記螺合筒の反対側に突出する。
この構成によれば、部品点数を削減できるとともに構成を簡略化することができ、製造コストを低減させることができる。
【0012】
他の具体的態様では、前記雄型コネクタは、前記雄型ルアー部と前記雄型ルアー部の基端側に位置する支持部とを一体に有するコネクタ本体と、前記コネクタ本体と別体をなす前記螺合筒と、を備えており、前記螺合筒は、前記支持部に回転可能に装着される中間の装着部と、前記雌ねじが形成された螺合部と、前記螺合部の反対側に位置する延長筒部とを有し、前記延長筒部に前記弾性爪が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接続作業を繰り返しても、操作トルクの上限が当初に設定されたトルクから低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は本発明の第1実施形態に係る医療用雄型接続装置の雄型コネクタと操作筒の分解斜視図、図1(B)は雄型コネクタに操作筒を組み付けた状態を示す斜視図である。
図2図2(A)は上記雄型接続装置の雄型コネクタと操作筒の分解縦断面図、図2(B)は雄型コネクタに操作筒を組み付けた状態を示す縦断面図である。
図3】上記雄型接続装置と雌型コネクタの接続前の状態を示す縦断面図である。
図4図4(A)は上記雄型接続装置の操作筒を回すことにより雄型コネクタと雌型コネクタを接続した状態を示す縦断面図、図4(B)は図4(A)のB-B矢視横断面図、図4(C)は図4(A)のC部拡大断面図である。
図5図5(A)は上記雄型接続装置の操作筒が空回りしている状態を示す図4(A)相当図、図5(B)は図5(A)のB-B矢視横断面図、図5(C)は図5(A)のC部拡大断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係る医療用雄型接続装置の分解上面図である。
図7図7は同医療用雄型接続装置の分解縦断面図である。
図8図8(A)は同医療用雄型接続装置の縦断面図、図8(B)は図8(A)のB-B矢視横断面図、図8(C)は図8(A)のC部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る医療用雄型接続装置について、図1図5を参照しながら説明する。
図3に示すように雄型接続装置1は、雌型コネクタ80と協働して、薬液や血液等の液体を流すチューブ91、92(医療構成要素)を接続するものである。雄型接続装置1の各構成部材および雌型コネクタ80は樹脂により形成されている。
【0016】
<雌型コネクタの構成>
最初に、構成が簡単な雌型コネクタ80について図3を参照しながら説明する。雌型コネクタ80は、細長い筒形状をなし、その軸方向一端部(先端部)に雌型ルアー部81を有し、他端部(基端部)にチューブホルダ82(接続部)を有し、軸芯に沿って流体通路83を有している。雌型ルアー部81の内面は先端に向かって径が大きくなるような緩やかなテーパをなしている。雌型ルアー部81の先端部外周には、雄ねじの役割を持つ一対の係合突起84が周方向に180°離れて形成されている。チューブホルダ82にはチューブ92の端部が挿入固定される。
【0017】
<雄型コネクタの基本構成>
図1図2に示すように、雄型接続装置1は雄型コネクタ10を備えている。雄型コネクタ10は、雄型ルアー部11と、この雄型ルアー部11と同軸をなすチューブホルダ12(接続部)と、これら雄型ルアー部11とチューブホルダ12との間に配置された円盤形状の連接部13と、螺合筒14と、を一体に有しており、軸芯に沿って流体通路15を有している。
【0018】
雄型ルアー部11の外面は先端に向かって径が小さくなるような緩やかなテーパをなしている。この雄型ルアー部11の外面のテーパ角は雌型ルアー部81の内面のテーパ角と実質的に等しい。チューブホルダ12にはチューブ91の端部が挿入固定される。
【0019】
雄型ルアー部11の基端側と螺合筒14の基端側は、連接部13を介して一体に連なっている。螺合筒14は雄型ルアー部11の径方向外側に配置され、両者の間には環状の挿入空間16が形成されている。螺合筒14の内周には雌ねじ14aが形成されている。
【0020】
<操作筒とトルクリミット機構の構成>
図1図2に示すように、雄型接続装置1は、さらに操作筒30とトルクリミット機構40を備えている。
操作筒30は、雄型コネクタ10の螺合筒14と連接部13の外周を覆い、螺合筒14に回転可能かつ軸方向移動不能に取り付けられている。具体的には、操作筒30の一端部内周には径方向内方向に突出する係合突起31が周方向に間隔をおいて複数形成されており、これら係合突起31が螺合筒14の先端部外周に形成された環状の係合溝18にスナップ嵌めされている。
【0021】
トルクリミット機構40は後述するように、操作筒30からの操作トルクを螺合筒14に伝達するとともに、伝達するトルクを制限するためのものである。このトルクリミット機構40の構成について以下詳述する。
操作筒30は、雄型コネクタ10の連接部13からさらにチューブホルダ12側(螺合筒14の反対側)に延出する比較的短い延長筒部32を有しており、この延長筒部32の内周に全周にわたって多数の係合歯41が等間隔をなして形成されている。図4(B)に示すように、各係合歯41において、後述する締付方向Tを向く側面が傾斜し、緩み方向を向く側面が急峻である。
【0022】
一方、雄型コネクタ10の連接部13においてチューブホルダ12側(螺合筒14の反対側)には、一対の弾性爪45が設けられている。弾性爪45は、軸方向に延びる弾性片46と、この弾性片46の径方向外側の面に形成された爪部47を有している。弾性爪45は、チューブホルダ12から径方向外側に離間している。図4(B)に示すように、爪部47において、後述する緩み方向を向く側面が傾斜し、締付方向Tを向く側面が急峻である。
【0023】
図2(A)に示すように、係合歯41は、軸方向奥側の端面が軸方向に漸次低くなるように傾斜しており、この傾斜面と径方向内側を向く面との交差部が後述の作用をなす奥端41xとして提供される。この奥端41xは、操作筒30の延長筒部32の先端から軸方向に距離Da(図2(A)参照)だけ離れた位置にある。
【0024】
一方、弾性爪45の爪部47は、弾性片46の先端から奥に向かって一定高さで軸方向に延びており、この軸方向奥側の端面が軸方向に漸次低くなるように傾斜している。この傾斜面と径方向外側を向く面との交差部が爪部47の奥端47xとなっている。この奥端47xは、弾性片46の先端から距離Db(図2(A)参照)だけ離れた位置にある。
【0025】
爪部47の奥端47xの弾性片46の先端からの距離Dbは、係合歯41の奥端41xの延長筒部32の先端からの距離Daより長い。そのため、弾性片46の先端と延長筒部32の先端を略一致させて操作筒30が雄型コネクタ10に装着された状態では、図4(C)に示すように係合歯41の奥端41xが、弾性爪45の爪部47の奥端47xより先端側に位置し、爪部47の軸方向中間部に位置している。
【0026】
<雄型接続装置の作用>
図3に示すように、上記構成をなす雄型接続装置1に雌型コネクタ80を近づけ、雄型ルアー部11を雌型ルアー部81に挿入する。上記挿入は、上記雌型コネクタ80の係合突起84が雄型接続装置1の螺合筒14の雌ねじ14aに当たるまで抵抗なく進められる。
【0027】
次に、図4(B)に示すように操作筒30を締付方向Tに回すと、操作筒30のトルクがトルクリミット機構40を介して雄型コネクタ10に伝達される。トルクリミット機構40の弾性爪45の弾性係数が比較的大きいので、トルクリミット機構40の係合歯41の傾斜面と弾性爪45の爪部47の傾斜面が当たった状態で、係合歯41と弾性爪45の爪部47の噛み合い状態が維持されており、雄型コネクタ10が操作筒30と一緒に雌型コネクタ80に対して相対的に回転する。その結果、螺合筒14の雌ねじ14aと雌型コネクタ80の係合突起84との螺合が進み、図4(A)に示すように、雄型ルアー部11と雌型ルアー部81が押圧力をもって接合する。
【0028】
さらに操作筒30を回そうとすると、雄型ルアー部11と雌型ルアー部81の接合部から大きな抵抗を受け、操作トルクが上限トルクを超える。すると、図5(A)、図5(B)に示すように、弾性爪45の爪部47の傾斜面が係合歯41の傾斜面を滑り、弾性爪45の径方向内方向の弾性変形を伴って、爪部47が係合歯41を乗り越える。その結果、操作筒30が雄型コネクタ10に対して空回りし、操作筒30の操作トルクが雄型コネクタ10に伝達されないため、雄型コネクタ10ひいては螺合筒14に過剰なトルクが付与されず、雄型ルアー部11と雌型ルアー部81との間の押圧力が過剰になるのを回避できる。そのため、雄型ルアー部11や雌型ルアー部81の破損を防止でき、雄型ルアー部11と雌型ルアー部81が離脱不能な程度に噛み付くのを回避できる。
また、操作筒30を空回りするまで回すことにより、操作トルクを上限トルクまで確実に螺合筒14に付与することができ、その結果、十分なシール性能で雄型ルアー部11と雌型ルアー部81を接合することができる。
【0029】
雄型接続装置1と雌型コネクタ80の接続を解除する場合には、操作筒30を緩み方向に回す。すると、トルクリミット機構40の係合歯41の急峻な面が弾性爪45の爪部47の急峻な面に当たるため、操作筒30からの操作トルクが雄型コネクタ10に伝達され、雄型コネクタ10ひいては螺合筒14が雌型コネクタ80に対して緩み方向に回り、雄型ルアー部11と雌型ルアー部81の接合が解除される。
【0030】
再び雄型接続装置1と雌型コネクタ80を接続する場合には、上述したように操作筒30が空回りするまで回して、雄型ルアー部11と雌型ルアー部81を接合させる。
【0031】
上述したように操作トルクが上限トルクを超えて操作筒30が空回り時の作用について、図4(C)、図5(C)を参照しながら詳述する。弾性爪45が係合歯41を乗り越える初期の段階では、図4(C)に示すように、弾性爪45は径方向内側に弾性変形されず、係合歯41と爪部47の傾斜面同士が広い接触面積で当接している。弾性爪45が径方向内側に弾性変形し、その弾性変形量が大きくなるにしたがって接触面積が減少し、弾性変形量が最大限に達した時には、図5(C)に示すように、弾性爪45の爪部47の軸方向中間部の傾斜面に、係合歯41の奥端41xのうち締付方向側の角部が滑りながら局所的に強い押圧力で当たる。さらに、奥端41xは爪部47の軸方向中間部の径方向外側の面に局所的に強い押圧力で当たりながら滑る。その結果、この係合歯41の奥端41x及びその近傍部がわずかに塑性変形する。これに対して、弾性爪45の爪部47では軸方向中間部の傾斜面および径方向外側の面で強い力を受けるが、押圧力を分散することができ、塑性変形が殆ど生じないか係合歯41に比べてはるかに小さく抑えられる。
【0032】
上述したように係合歯41の奥端41xが僅かに塑性変形するものの、係合歯41の数が弾性爪45に比べてはるかに多く(本実施形態では5倍)、1回の接続作業において上記操作筒30が空回りする際に、1個の係合歯41が弾性爪45に当たる回数は、1個の弾性爪45が係合歯41に当たる回数よりはるかに少なく(本実施形態では約1/5)、通常2,3回であるため、1回の接続作業での係合歯41の奥端41xでの塑性変形は僅かで済む。上述の接続、接続解除、再接続を複数回繰り返すと、空回り時の係合歯41の奥端41xの塑性変形量が蓄積されるが、1回の接続作業での塑性変形量が小さいので、この塑性変形量の蓄積は、先行技術の雄型接続装置のように弾性爪の爪部の奥端が塑性変形する場合に比べてはるかに低く抑えられる。その結果、操作トルクの上限(操作筒30が空回りする直前のトルク)は、当初に設定されたトルクから低下するのを抑制することができ、当初の設定トルクに近いトルクを維持することができる。
【0033】
本実施形態では、雄型ルアー部11と螺合筒14が連接部13を介して一体に連なり、少ない部品点数で構成を簡略化している。それにも拘わらず、操作筒30が螺合筒14と連接部13を覆うとともに連接部13からさらに突出する延長筒部32を有し、この延長筒部32の内周に係合歯41を形成し、この係合歯41に噛み合う弾性爪45を連接部13から突出させることにより、トルクリミット機構40を構築することができる。
【0034】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る雄型接続装置1Aを図6図8を参照しながら説明する。本実施形態の雄型コネクタ100は、コネクタ本体110と、このコネクタ本体110と別部材をなす螺合筒120とを有している。コネクタ本体110は、一端側の雄型ルアー部111と、他端側のチューブホルダ112と、両者の間の中間筒部113とを、同軸をなして一体に有している。雄型ルアー部111と中間筒部113の境の外周には環状の支持部114が形成されている。コネクタ本体110の軸芯に沿って流体通路115が形成されている。
【0035】
螺合筒120は、一端側の螺合部121と、他端側の延長筒部122と、これら螺合部121と延長筒部122の境部に形成された装着部123とを有している。この装着部123がコネクタ本体110の支持部114に回転可能に支持されている。螺合部121の内周には雌ねじ121aが形成されている。
【0036】
雄型接続装置1Aはさらに、螺合筒120の外周に回転可能に設けられた操作筒130と、螺合筒120の延長筒部122の先端部と操作筒130の端部近傍との間に配置されたトルクリミット機構140と、を備えている。このトルクリミット機構140は、第1実施形態のトルクリミット機構40と同様に、操作筒130の内周に全周にわたって形成された係合歯141と、螺合筒120の延長筒部122の端部に形成された一対の弾性爪145とを有している。弾性爪145は、延長筒部122の端部に形成されたスリット間に配置されて軸方向に延びる弾性片146と、弾性片146の径方向外面に形成された爪部147とを有している。
【0037】
第1実施形態と同様に、係合歯141の締付方向Tを向く側面が傾斜し、緩み方向を向く面が急峻であり、爪部147の緩み方向を向く側面が傾斜し、締付方向Tを向く面が急峻である(図8(B)参照)。
【0038】
図8(C)に示すように、爪部147の径方向外側を向く面と傾斜した奥側の端面との交差部が、爪部147の奥端147xとして提供される。また、係合歯141の径方向内側を向く面と傾斜した軸方向奥端面との交差部が、係合歯141の奥端141xとして提供される。係合歯141の奥端141xは、爪部147の奥端147xより先端側に位置している。換言すれば、係合歯141の奥端141xは爪部147の軸方向中間部に位置している。
【0039】
本実施形態の雄型接続装置1Aはさらに、螺合筒120の延長筒部122とコネクタ本体110の中間筒部113との間に設けられた緩み防止機構150を備えている。この緩み防止機構150は、螺合筒120の延長筒部122の内周に全周にわたって形成されたラチェット歯151と、コネクタ本体110の中間筒部113の外周に形成された一対の弾性爪155とを有している。
【0040】
ラチェット歯151は、螺合筒120の延長筒部122において、トルクリミット機構140の弾性爪145が形成された先端部から軸方向に奥側にずれた位置に形成されている。ラチェット歯151は、後述する締付方向Tを向く側面が傾斜し、緩み方向を向く側面が急峻面をなしている。
【0041】
一対の弾性爪155がラチェット歯151に噛み合っている。弾性爪155の弾性係数はトルクリミット機構140の弾性爪145よりはるかに小さい。
【0042】
<第2実施形態の作用>
上記構成をなす雄型接続装置1Aにおいて、第1実施形態と同様に操作筒130を締付方向Tに回わすと、トルクリミット機構140を介して操作トルクが螺合筒120に伝達され、螺合筒120が回転して雌型コネクタ80(図3参照)との螺合が進み、雄型ルアー部111と雌型ルアー部81が接合される。操作筒130からの操作トルクが上限トルクを超えた時にトルクリミット機構140により操作筒130が空回りすることは第1実施形態と同様である。この接合の過程で、緩み防止機構150の弾性爪155はラチェット歯151の傾斜面を滑り、ラチェット歯151を乗り越えることができる。
【0043】
上記雄型ルアー部111と雌型ルアー部81の接合状態において、螺合筒120に意図しない緩み方向のトルクが加わっても、緩み防止機構150のラチェット歯151の急峻な側面が弾性爪155に当たるため、螺合筒120はコネクタ本体110に対して緩み方向の回動を阻止される。このように雄型ルアー部111と雌型ルアー部81の接合完了後に、螺合筒120がコネクタ本体110に対して緩み方向に回わらないので、螺合筒120の雌ねじ121aのネジ山の奥側の面が、雌型コネクタ80の係合突起84に当たった状態が維持される。その結果、流体の圧力が高い場合でも、雌型ルアー部81と雄型ルアー部111が離れる方向に変位することがなく、十分なシール性能を維持でき、ひいては流体の漏れを禁じることができる。
【0044】
上記のようにしてチューブ91,92を接続した後、接続の解除が必要になった場合には、操作筒120を緩み方向に回す。すると、トルクリミット機構140を介して螺合筒120が操作筒130と一緒に緩み方向に回る。これと同時に、緩み防止機構150において、螺合筒120のラチェット歯151の急峻な側面がコネクタ本体110の弾性片155の急峻面に当たるので、コネクタ本体110も螺合筒120と一緒に回る。このようにして、雄型ルアー部111と雌型ルアー部81の接合状態が解除される。
【0045】
接続、接続解除、再接続を複数回繰り返すと、空回りの度に係合歯141の奥端141x及びその近傍部が塑性変形されるが、第1実施形態と同様に、この奥端141xが弾性爪145に当たる回数は少ないので、塑性変形の蓄積量は小さく抑えられ、操作トルクの上限が当初の設定トルクよりの低下するのを抑制することができる。
【0046】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様が可能である。
トルクリミット機構の係合歯の数、弾性爪の数または弾性爪の爪部の数に特に制限はない。例えば、弾性爪は1つの弾性片に複数の爪部を有していてもよい。上述の実施形態では、係合歯は全周にわたって形成されているが、歯抜け領域があってもよい。いずれの場合でも、係合歯の数は爪部の数より多く、好ましくは2倍以上である。
【0047】
第1実施形態において、連接部における螺合筒の反対側に筒部を一体に設け、この筒部に形成されたスリットの近傍またはスリット間に弾性爪を形成してもよい。
雌型コネクタの係合突起はネジ形状であってもよい。
雄型コネクタのチューブホルダ(接続部)は、雄型ルアー部と別部材をなし雄型ルアー部に対して回転可能であってもよい、
本発明を三方活栓とチューブの接続に適用してもよいし、あらゆる医療用構成要素の接続に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、医療用の雄型接続装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1、1A 医療用雄型接続装置
10 雄型コネクタ
11 雄型ルアー部
12 チューブホルダ(接続部)
13 連接部
14 螺合筒
14a 雌ねじ
30 操作筒
32 延長筒部
40 トルクリミット機構
41 係合歯
41x 奥端
45 弾性爪
47 爪部
80 雌型コネクタ
81 雌型ルアー部
91,92 チューブ(医療構成要素)
100 雄型コネクタ
110 コネクタ本体
111 雄型ルアー部
112 チューブホルダ(接続部)
114 支持部
120 螺合筒
121 螺合部
121a 雌ねじ
122 延長筒部
123 装着部
130 操作筒
140 トルクリミット機構
141 係合歯
141x 奥端
145 弾性爪
147 爪部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8