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特開2024-102614電動移動体及び電動移動体の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102614
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】電動移動体及び電動移動体の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240724BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/09 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006622
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 明美
(72)【発明者】
【氏名】上田 隆司
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA05
5H181BB04
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】電動移動体によって信号のある横断歩道を通行する際の自動運転モードによる横断開始可否を効率的に判断する。
【解決手段】電動車椅子100は、カメラ10,センサー15,及び、通信モジュール17の少なくとも一部を用いて、進行方向に存在する物体に関する情報を取得する。制御装置30は、取得された前記情報を用いて、モーター40及びブレーキ50を制御する自動運転モードを実行する自動運転モード中に進行方向に信号機の存在を検知している場合に、当該信号機が青信号であり、かつ、当該信号機の赤信号から青信号への変化タイミングを検知しているときに、横断歩道の横断開始位置に対する位置に関する情報と、変化タイミングからの経過時間とに基づいて、自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動移動体であって、
走行を制御するアクチュエーターと、
前記電動移動体の進行方向に存在する物体に関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部によって取得された前記情報を用いて前記アクチュエーターを制御する自動運転モードを実行するための制御装置とを備え、
前記情報は、前記進行方向に存在する信号機及び横断歩道に関する情報を含み、
前記制御装置は、前記自動運転モード中に前記進行方向に前記信号機の存在を検知している場合に、当該信号機が青信号であり、かつ、当該信号機が赤信号から前記青信号への変化タイミングを検知しているときに、前記横断歩道の横断開始位置に対する前記電動移動体の位置に関する情報と、前記変化タイミングからの経過時間とに基づいて、前記自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否を判定する、電動移動体。
【請求項2】
前記制御装置は、前記信号機が青信号であっても、前記変化タイミングを検知していない場合には、前記自動運転モード前記横断歩道の通行開始を不許可とする、請求項1記載の電動移動体。
【請求項3】
前記位置に関する情報は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達しているか否かの情報を含み、
前記制御装置は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達している状態で、前記変化タイミングを検知すると、前記自動運転モードによる前記横断歩道の通行開始が可能と判定する、請求項1記載の電動移動体。
【請求項4】
前記位置に関する情報は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達しているか否かの情報を含み、
前記制御装置は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達した時点における前記経過時間に基づいて、前記自動運転モードによる前記横断歩道の通行開始の可否を判定する、請求項1記載の電動移動体。
【請求項5】
前記位置に関する情報は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達しているか否かの情報を含み、
前記制御装置は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達した時点における、上限時間から前記経過時間を差し引いた残り時間と、前記電動移動体が前記横断歩道の通行に要する予測時間に対応して設定された判定時間との比較結果に従って、前記自動運転モードによる前記横断歩道の通行開始の可否を判定する、請求項1記載の電動移動体。
【請求項6】
前記位置に関する情報は、前記電動移動体の現在位置から前記横断開始位置までの予測距離に関する情報を含み、
前記制御装置は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達する前の時点において、上限時間から前記経過時間を差し引いた残り時間と、前記予測距離に応じて可変に設定される判定時間との比較結果に従って、前記自動運転モードによる前記横断歩道の通行開始の可否を判定する、請求項1記載の電動移動体。
【請求項7】
前記判定時間は、前記電動移動体が前記予測距離を走行するのに要する予測時間と、前記電動移動体が前記横断歩道の通行に要する予測時間との和に従って設定される、請求項6記載の電動移動体。
【請求項8】
前記横断歩道に関する情報は、前記横断歩道の混雑度に関する情報を含み、
前記判定時間は、前記混雑度が高い場合には、前記混雑度が低い場合と比較して短く設定される、請求項5~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項9】
前記上限時間は、前記信号機の信号周期に対応して設定される、請求項5~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項10】
前記制御装置は、前記自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において前記通行開始を許可しないときには、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達した時点での前記残り時間が、前記判定時間よりも短く設定される下限時間よりも短いときに、自動ブレーキを作動させる様に前記アクチュエーターを制御する、請求項5~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項11】
前記制御装置は、前記自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において前記通行開始を許可しない場合であって、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達しているときには、前記経過時間に応じて、前記電動移動体の自動ブレーキを作動させる様に前記アクチュエーターを制御する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項12】
前記電動移動体の運転者に対してメッセージを報知するための報知部を更に備え、
前記制御装置は、前記自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において前記通行開始を許可しないときには、前記電動移動体の運転者に対して当該横断歩道の通行中止を促すメッセージを出力する様に前記報知部を制御する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項13】
前記電動移動体の運転者に対してメッセージを報知するための報知部を更に備え、
前記制御装置は、前記自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において前記通行開始を許可しないときには、前記自動運転モードを解除して前記運転者の操作によって前記電動移動体を走行させる手動運転モードへの切換を促すメッセージを出力する様に前記報知部を制御する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項14】
前記情報取得部は、前記電動移動体に搭載されたカメラによる撮影画像の画像解析によって前記信号機及び前記横断歩道に関する情報を取得する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項15】
前記情報取得部は、前記信号機との通信によって前記信号機に関する情報を取得する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電動移動体。
【請求項16】
進行方向に存在する物体に関する情報を取得して走行制御のアクチュエーターを自動制御する自動運転モードを有する電動移動体の制御方法であって、
前記情報に含まれる、前記進行方向に存在する信号機及び横断歩道に関する情報を取得するステップと、
前記情報を用いて前記信号機の存在を検知するステップと、
前記信号機の存在を検知したときに、当該信号機が赤信号から青信号に変化したタイミングを検知するステップと、
前記自動運転モード中に前記進行方向に前記信号機の存在を検知している場合に、当該信号機が青信号であり、かつ、当該信号機が赤信号から前記青信号への変化タイミングを検知しているときに、前記横断歩道の横断開始位置に対する前記電動移動体の位置に関する情報と、前記変化タイミングからの経過時間とに基づいて、前記自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否を判定するステップとを備える、電動移動体の制御方法。
【請求項17】
前記判定するステップは、前記信号機が青信号であっても、前記変化タイミングを検知していない場合には、前記自動運転モード前記横断歩道の通行開始を不許可とする、請求項16記載の電動移動体の制御方法。
【請求項18】
前記位置に関する情報は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達しているか否かの情報を含み、
前記判定するステップは、は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達している状態で、前記変化タイミングを検知すると、前記自動運転モードによる前記横断歩道の通行開始が可能と判定する、請求項16記載の電動移動体の制御方法。
【請求項19】
前記位置に関する情報は、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達しているか否かの情報を含み、
前記判定するステップは、前記電動移動体が前記横断開始位置に到達した時点における前記経過時間に基づいて、前記自動運転モードによる前記横断歩道の通行開始の可否を判定する、請求項16記載の電動移動体の制御方法。
【請求項20】
前記信号機及び前記横断歩道に関する情報は、前記電動移動体に搭載されたカメラによる撮影画像の画像解析によって取得される、請求項16~19のいずれか1項に記載の電動移動体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動移動体及び電動移動体の制御方法に関し、より特定的には、自動運転によって横断歩道を通行する際の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車椅子等の電動移動体の利用が拡大しているが、電動移動体では、進行方向を含む周囲に存在する物体(障害物、他の移動体、人物等)を認識するためのカメラ、センサー等を搭載した上で、これらの検出結果に基づいて、駆動モーター及び/又はブレーキ等の走行制御のアクチュエーターを自動制御して走行する、所謂、自動運転モードの導入が進んでいる。
【0003】
例えば、特開2020-35228号公報(特許文献1)には、誘導用の設備が無くても車道を横断するために適した現在位置にいるかどうかを判定することが可能な自動走行体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-35228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された自動走行体では、カメラ、ミリ波レーダー等を備えたセンサユニットを搭載して、車道を走行する車両の速度及び当該自動走行体との距離、並びに、障害物(街路樹、電柱等)の周囲の情報を取得する。更に、横断歩道を走行する場合には、自動走行体の現在位置から横断歩道までの距離、自動走行体が要する横断時間、車両が出現するまでの時間等を算出して、自動運転モードでの横断歩道の通行開始可否を判定することが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、信号が無い横断歩道を走行する際にも自動運転モードでの通行開始可否を判定できる一方で、複雑な制御演算が必要となる点が懸念される。
【0007】
本開示は上述のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面に従う目的は、電動移動体によって信号のある横断歩道を走行する際の横断開始可否を効率的に判断するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施の形態に従うと、電動移動体が提供される。この電動移動体は、走行を制御するアクチュエーターと、情報取得部と、制御装置とを備える。情報取得部は、電動移動体の進行方向に存在する物体に関する情報を取得する。この情報は、進行方向に存在する信号機及び横断歩道に関する情報を含む。制御装置は、情報取得部によって取得された情報を用いてアクチュエーターを制御する自動運転モードを実行する。制御装置は、自動運転モード中に進行方向に信号機の存在を検知している場合に、当該信号機が青信号であり、かつ、当該信号機が赤信号から青信号への変化タイミングを検知しているときに、横断歩道の横断開始位置に対する電動移動体の位置に関する情報と、変化タイミングからの経過時間とに基づいて、自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否を判定する。
【0009】
ある局面において、制御装置は、信号機が青信号であっても、変化タイミングを検知していない場合には、自動運転モード横断歩道の通行開始を不許可とする。
【0010】
ある局面において、位置に関する情報は、電動移動体が横断開始位置に到達しているか否かの情報を含む。制御装置は、電動移動体が横断開始位置に到達している状態で、変化タイミングを検知すると、自動運転モードによる横断歩道の通行開始が可能と判定する。
【0011】
ある局面において、位置に関する情報は、電動移動体が横断開始位置に到達しているか否かの情報を含む。制御装置は、電動移動体が横断開始位置に到達した時点における経過時間に基づいて、自動運転モードによる横断歩道の通行開始の可否を判定する。
【0012】
ある局面において、位置に関する情報は、電動移動体が横断開始位置に到達しているか否かの情報を含む。制御装置は、電動移動体が横断開始位置に到達した時点における、上限時間から経過時間を差し引いた残り時間と、電動移動体が横断歩道の通行に要する予測時間に対応して設定された判定時間との比較結果に従って、自動運転モードによる横断歩道の通行開始の可否を判定する。
【0013】
ある局面において、位置に関する情報は、電動移動体の現在位置から横断開始位置までの予測距離に関する情報を含む。制御装置は、電動移動体が横断開始位置に到達する前の時点において、上限時間から経過時間を差し引いた残り時間と、予測距離に応じて可変に設定される判定時間との比較結果に従って、自動運転モードによる横断歩道の通行開始の可否を判定する。
【0014】
ある局面において、判定時間は、電動移動体が予測距離を走行するのに要する予測時間と、電動移動体が横断歩道の通行に要する予測時間との和に従って設定される。
【0015】
ある局面において、横断歩道に関する情報は、横断歩道の混雑度に関する情報を含む。判定時間は、混雑度が高い場合には、混雑度が低い場合と比較して短く設定される。
【0016】
ある局面において、上限時間は、信号機の信号周期に対応して設定される。
ある局面において、制御装置は、自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において通行開始を許可しないときには、電動移動体が横断開始位置に到達した時点での残り時間が、判定時間よりも短く設定される下限時間よりも短いときに、自動ブレーキを作動させる様にアクチュエーターを制御する。
【0017】
ある局面において、制御装置は、自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において通行開始を許可しない場合であって、電動移動体が横断開始位置に到達しているときには、経過時間に応じて、電動移動体の自動ブレーキを作動させる様にアクチュエーターを制御する。
【0018】
ある局面において、電動移動体は、運転者に対してメッセージを報知するための報知部を更に備える。制御装置は、自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において通行開始を許可しないときには、電動移動体の運転者に対して当該横断歩道の通行中止を促すメッセージを出力する様に報知部を制御する。
【0019】
ある局面において、電動移動体は、運転者に対してメッセージを報知するための報知部を更に備える。制御装置は、自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否判定において通行開始を許可しないときには、自動運転モードを解除して運転者の操作によって電動移動体を走行させる手動運転モードへの切換を促すメッセージを出力する様に報知部を制御する。
【0020】
ある局面において、情報取得部は、電動移動体に搭載されたカメラによる撮影画像の画像解析によって信号機及び横断歩道に関する情報を取得する。
【0021】
ある局面において、情報取得部は、信号機との通信によって信号機に関する情報を取得する。
【0022】
他の実施の形態に従うと、進行方向に存在する物体に関する情報を取得して走行制御のアクチュエーターを自動制御する自動運転モードを有する電動移動体の制御方法が提供される。この制御方法は、情報に含まれる、進行方向に存在する信号機及び横断歩道に関する情報を取得するステップと、情報を用いて信号機の存在を検知するステップと、信号機の存在を検知したときに、当該信号機が赤信号から青信号に変化したタイミングを検知するステップと、自動運転モード中に進行方向に信号機の存在を検知している場合に、当該信号機が青信号であり、かつ、当該信号機が赤信号から青信号への変化タイミングを検知しているときに、横断歩道の横断開始位置に対する電動移動体の位置に関する情報と、変化タイミングからの経過時間とに基づいて、自動運転モードによる当該横断歩道の通行開始の可否を判定するステップとを備える。
【0023】
ある局面において、判定するステップは、信号機が青信号であっても、変化タイミングを検知していない場合には、自動運転モード横断歩道の通行開始を不許可とする。
【0024】
ある局面において、位置に関する情報は、電動移動体が横断開始位置に到達しているか否かの情報を含む。判定するステップは、は、電動移動体が横断開始位置に到達している状態で、変化タイミングを検知すると、自動運転モードによる横断歩道の通行開始が可能と判定する。
【0025】
ある局面において、位置に関する情報は、電動移動体が横断開始位置に到達しているか否かの情報を含む。判定するステップは、電動移動体が横断開始位置に到達した時点における経過時間に基づいて、自動運転モードによる横断歩道の通行開始の可否を判定する。
【0026】
ある局面において、信号機及び横断歩道に関する情報は、電動移動体に搭載されたカメラによる撮影画像の画像解析によって取得される。
【発明の効果】
【0027】
この実施の形態によると、電動移動体によって信号のある横断歩道を通行する際の自動運転モードによる横断開始可否を効率的に判断することができる。
【0028】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本実施の形態に係る電動移動体の代表例として示される電動車椅子の概略構成例を説明するブロック図である。
図2】信号のある横断歩道の通行開始可否判定に用いられる情報を説明する概念図である。
図3】本実施の形態に係る電動車椅子による信号のある横断歩道の通行開始可否判定を説明するフローチャートである。
図4図3中のステップS200の詳細を説明するフローチャートが示される。
図5】横断歩道の通行開始可否の判定結果の第1の例を説明する概念図である。
図6】横断歩道の通行開始可否の判定結果の第2の例を説明する概念図である。
図7図3中のステップS250の詳細を説明するフローチャートが示される。
図8図3中のステップS200の変形例を説明するフローチャートが示される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0031】
<概略構成>
図1は、本実施の形態に係る電動移動体の代表例として示される電動車椅子の概略構成例を説明するブロック図である。
【0032】
図1に示される様に、電動車椅子100は、カメラ10と、センサー15と、通信モジュール17と、運転操作部20と、制御装置30と、モーター40と、ブレーキ50と、スピーカー60と、モニター65と、車輪70とを備える。
【0033】
モーター40は、図示しない電源(バッテリ等)からの電力により車輪70を駆動するトルクを発生する。ブレーキ50は、図示しない機械的機構によって制動力(例えば、摩擦力)を付与することで、車輪70を減速又は停止させる機能を有する。又、モーター40は、車輪70の回転方向と反対方向のトルクを発生することで回生ブレーキとして作用することも可能である。モーター40及びブレーキ50は、電動車椅子100の「アクチュエーター」の一実施例を構成する。
【0034】
カメラ10は、電動車椅子100の進行方向の所定視野内の画像を撮影し、当該画像の解析によって、視野内に存在する物体(障害物、他の移動体、人物等)の存在を認識する機能、及び、認識した物体との距離を算出する機能とを有する。例えば、AI(Artificial Intelligence)等を用いた画像解析を用いることで、認識した物体が何であるかを区別することができる。この様な画像解析は、公知の任意の技術によって実現することができる。
【0035】
運転操作部20は、図示しないレバー、スイッチ等によって構成されて、少なくとも、手動運転モード及び自動運転モードの選択入力、及び、手動運転モードでのアクセル及びブレーキの操作入力が可能に構成される。
【0036】
センサー15は、ミリ波レーダー、LiDAR(light detection and ranging)等によって構成することが可能であり、センサーの検出視野内における物体の存在及び当該物体との距離を検出することができる。
【0037】
通信モジュール17は、所定の通信規格に従って電動車椅子100の外部との通信によって情報を送受信することができる。例えば、通信モジュール17は、GPS(Global Positioning System)受信機を含み、GPS衛星との通信によって電動車椅子100の位置情報を取得することができる。或いは、通信モジュール17は、インターネット通信によってサーバ(図示せず)等から地図情報を取得することも可能である。
【0038】
更に、本実施の形態では、通信モジュール17は、近傍の信号機から、当該信号機に関する情報、例えば、位置情報、現在の表示色、及び、信号周期(赤信号の時間長、及び、青信号時間長)を受信可能に構成することも可能である。
【0039】
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)31、メモリー32、及び、各種のインターフェイス(I/F)33、及び、タイマー34を含んで構成されて、電動車椅子100の走行に係る制御を実行する。CPU31、メモリー32、インターフェイス33、及び、タイマー34の間は図示しないバスで接続されており、相互に信号の授受が可能である。インターフェイス33は、カメラ10、センサー15、通信モジュール17、運転操作部20、モーター40、ブレーキ50、スピーカー60、及び、モニター65と、制御装置30との間で信号を授受するための機能部分を包括的に表記するものである。
【0040】
尚、図1の例では、制御装置30は、CPU31によって、メモリー32に予め格納されたプログラムを実行するコンピュータベースの構成を例示するが、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、電子回路(アナログ回路)等による構成とすることも可能であり、或いは、上述した要素の組み合わせによって構成することも可能である。
【0041】
手動運転モードでは、制御装置30は、運転操作部20に対する運転者のアクセル操作及びブレーキ操作に従って、モーター40及びブレーキ50を制御することで、電動車椅子100の走行を制御する。
【0042】
一方で、自動運転モードでは、制御装置30は、電動車椅子100は、カメラ10、センサー15、及び、通信モジュール17の少なくとも一部によって取得された情報によって、障害物、他の移動体、又は人物等の物体との衝突を避ける様に制御された自動走行を実行する。自動運転モードでは、運転者のアクセル操作が無くても制御装置30からの指令によってモーター40が作動することで、電動車椅子100は走行可能である。一方で、物体との近接が検知され得ると、運転者のブレーキ操作が無くても制御装置30からの指令によって自動的にブレーキ50及び/又はモーター40(回生ブレーキ)が作動する自動ブレーキ機能によって、電動車椅子100は停止可能である。
【0043】
或いは、自動運転モードには、運転者によるアクセル操作及びブレーキ操作に従った走行をベースとした上で、自動ブレーキ機能のみが有効化される、所謂、半自動運転モードが含まれてもよい。
【0044】
この様に、図1の構成例では、電動車椅子100は、カメラ10、センサー15、及び、通信モジュール17の少なくとも一部を備えることで、電動車椅子100の自動運転に必要な情報を取得するための「情報取得部」を構成することができる。
【0045】
制御装置30は、スピーカー60及び/又はモニター65を制御して、電動車椅子100の運転者が聴覚又は視覚によって認識可能なメッセージを出力することができる。即ち、スピーカー60及びモニター65の少なくとも一方は、運転者に対してメッセージを報知するための「報知部」の一実施例に対応する。
【0046】
<自動運転モードでの横断歩道の通行開始可否判定>
次に、本実施の形態に係る電動車椅子100における自動運転機能の一環である、自動運転モード中に信号のある横断歩道を通行する際の通行開始可否判定を説明する。
【0047】
図2は、信号のある横断歩道の通行開始可否判定に用いられる情報を説明する概念図である。
【0048】
図2に示される様に、電動車椅子100の「情報取得部」によって取得される情報には、進行方向に位置している信号機200の存在を検知する情報SGLと、当該信号機200の表示状態の情報CLRと、横断歩道250の横断開始位置Pstに対する現在位置の情報(例えば、横断開始位置と現在位置との距離Dsg)が少なくとも含まれる。情報CLRは、赤信号210及び青信号220のいずれが点灯しているかを示す。
【0049】
信号機200及びゼブラゾーンで表示される横断歩道250は、例えば、カメラ10によって周期的に取得される画像のAI解析によって認識することが可能であり、横断歩道250の長さ、並びに、電動車椅子100から横断歩道250の端部(横断開始位置Pst)及び信号機200のそれぞれまでの距離についても、画像処理によって得ることができる。又、情報SGLは、電動車椅子100の現在位置と信号機200との間の距離が所定値よりも短くなったときに、信号機200を検知する様に生成することができる。
【0050】
或いは、通信モジュール17によって、信号機200から受信した情報によって、信号機200に係る情報SGL,CLRを取得することも可能である。この場合には、信号周期(青信号の時間長の情報を含む)を取得することが期待できる。
【0051】
又、通信モジュール17によって、電動車椅子100の現在位置をGPS情報で取得するとともに、地図情報(マップデータ)から横断歩道250の横断開始位置Pstとを認識して、横断開始位置Pstに対する現在位置の情報(距離Dsg)を取得することも可能である。
【0052】
図3は、本実施の形態に係る電動車椅子による信号のある横断歩道の通行開始可否判定を説明するフローチャートである。図3に示される制御処理は、自動運転モードの選択中に繰り返し実行される。尚、図3に示される制御処理は、代表的には、制御装置30が予め格納されたプログラムを実行するソフトウェア処理によって実行することが可能であるが、一部又は全部のステップの処理、或いは、各ステップでの処理の一部については、ハードウェア処理で実現することも可能である。
【0053】
制御装置30は、ステップS100において、電動車椅子100の進行方向及び周囲に存在する物体(障害物、他の移動体、及び、人物等)に関する情報を取得する。ステップS100で取得される情報には、図2に示した横断歩道250及び信号機200に関する情報が含まれる。ステップS100による処理は、上述した「情報取得部」の機能によって実現される。
【0054】
制御装置30は、ステップS110では、ステップS100で取得した情報を用いて、進行方向に信号機200が検知されるか否かを判定する。図2に示した情報SGLを用いて、ステップS110の判定を実行することができる。
【0055】
ステップS110で信号機200が検知されない場合(S110のNO判定時)には、ステップS100が周期的に行われる毎に、ステップS110の判定が実行される。
【0056】
制御装置30は、信号機200が検知されている場合には(S110のYES判定時)、ステップS120に処理を進めて、後述する赤信号から青信号への変化タイミングの検知有無を示すフラグFLGを「0」に設定する。尚、後述するタイマー34による計時中には、ステップS120の処理は無効化されて、フラグFLGは現在の値に維持される。
【0057】
更に、ステップS130では、信号機200の赤信号から青信号への変化が検知された否かが判定される。前回周期と今回周期とで情報CLRを比較することによって、ステップS130の判定を実行することができる。
【0058】
制御装置30は、赤信号から青信号への変化が検知されたタイミングでは(S130のYES判定時)、ステップS140により、フラグFLGの値を「1」に設定するとともに、タイマー34を起動する。タイマー34は、赤信号から青信号へ変化してから、即ち、現在の青信号が開始されてからの経過時間Tsを計測する。タイマー34の起動時に経過時間Tsは初期化される(Ts=0)。タイマー34の起動により、赤信号から青信号への変化タイミングが検知されるともに、当該変化タイミングからの経過時間が計測される。
【0059】
タイマー34による計時は、ステップS100等で取得した情報に基づいて、信号機200の青信号から赤信号への変化、又は、横断歩道250の通行開始が検知されると停止される。
【0060】
一方で、赤信号から青信号への変化が検知されないタイミング(S130のNO判定時)には、ステップS140はスキップされて、フラグFLGの値は維持される。更に、タイマー34は、停止状態であれば停止状態が維持される一方で、起動後であれば計時が継続される。
【0061】
制御装置30は、ステップS150では、信号機200が現在青信号であるか否かを判定する。赤信号の場合(S150のNO判定時)には、信号機200が青信号に変わるまで、ステップS100~S150の処理が繰り返される。この場合には、次に赤信号から青信号に変わったときに、ステップS130がYES判定されて、フラグFLG=「1」に設定されるとともにタイマー34が起動された状態で、ステップS150がYES判定とされる。
【0062】
制御装置30は、信号機200が現在青信号である場合には(S150のYES判定時)には、ステップS160により、フラグFLGの現在の値を判定する。FLG=「0]のときには、ステップS160がNO判定とされる。ステップS160のNO判定時には、ステップS250に処理が進められて、自動運転モードでの横断歩道250の通行(横断)開始が不許可とされた上で、処理は「スタート」に戻される。
【0063】
制御装置30は、信号機200が現在青信号であり(S150のYES判定時)、FLG=「1]のときには、ステップS160をYES判定として、ステップS200による横断開始位置Pst(図2)に対する位置情報(距離Dsg)を用いた自動運転モードでの横断歩道250の通行(横断)開始可否判定を実行する。
【0064】
図4には、図3のステップS200の詳細を説明するフローチャートが示される。
図4を参照して、図3のステップS200は、ステップS201~S207を有する。
【0065】
制御装置30は、ステップS201では、電動車椅子100が横断開始位置Pstに居るか否かを判定する。例えば、図2で説明した距離Dsgが予め設定した判定値(たとえば、1[m]程度)よりも短いときに、ステップS201をYES判定とすることができる。
【0066】
制御装置30は、電動車椅子100が横断開始位置Pstに居ないとき(S201のNO判定時)には、ステップS202による、タイマー34による計時の継続、及び、電動車椅子100の位置情報の更新を伴って、ステップS201の判定を繰り返す。ステップS201がYES判定とされて、電動車椅子100が横断開始位置Pstに居る状態になると、制御装置30は、ステップS203により、上限時間Tlim及び判定時間Ttを設定する。更に、制御装置30は、ステップS204により、タイマー34によって計時された、現在の青信号が開始されてからの経過時間Tsを上限時間Tlimから減算した残り時間ΔTを求める(ΔT=Tlim-Ts)。
【0067】
制御装置30は、ステップS205では、ステップS204で算出された残り時間ΔTを判定時間Ttと比較する。そして、残り時間ΔTが判定時間Ttより長いときは(S205のYES判定時)、ステップS206により、横断歩道250の通行(横断)開始の判定結果は「OK」とされる。一方で、残り時間ΔTが判定値以下のときは(S205のNO判定時)、ステップS207により、横断歩道250の通行(横断)開始の判定結果は「NG」とされる。
【0068】
尚、ステップS203において、上限時間Tlimは、信号機200の信号周期に対応させて設定することが好ましいが、信号機200から信号周期に関する情報が得られない場合には、マージンを見込んで予め設定された固定値とされてもよい。
【0069】
同様に、ステップS203において、判定時間Ttは、電動車椅子100が横断歩道250の通行(横断)に要する予測時間に対して、マージンを設けて長く設定される。従って、判定時間Ttは、画像解析等によって得られた横断歩道250の長さに基づいて、例えば、横断歩道250の長さを電動車椅子100の走行速度で除算した値に従って可変に設定することができる。又、画像解析により、横断歩道250に多数の歩行者が認識される混雑度が高い場合には、混雑度が低い場合と比較して、上記マージンを長く確保して、判定時間Ttを長く設定することが好ましい。
【0070】
再び図3を参照して、制御装置30は、ステップS200による横断歩道250の通行開始可否判定後、S210により、処理を分岐する。ステップS206(図4)により判定結果が「OK」である場合には、ステップS210はYES判定とされて、ステップS220により、自動運転モードによる横断歩道250の通行開始が許可される。
【0071】
一方で、ステップS207(図4)により判定結果が「NG」である場合には、ステップS210はNO判定とされて、ステップS250により、自動運転モードによる横断歩道250の通行開始が不許可とされる。
【0072】
次に図5及び図6を用いて、通行開始可否の判定結果の例を説明する。
図5には、第1の例として、電動車椅子100が、信号機200が赤信号から青信号に変わったタイミングを検知することなく、横断開始位置Pstに到達したケースを説明する。
【0073】
図5(A)では、電動車椅子100は、青信号の横断歩道250の横断開始位置Pstに到達しているが(Dsg=0)、電動車椅子100が信号機200を検出した時点で信号機200は既に青信号である。
【0074】
従って、図5(A)よりも前の、青信号の信号機200を検知した時点では、図3の制御処理は、ステップS110がYES判定、ステップS130がNO判定、ステップS160及びS170がNO判定とされることで、ステップS250により、自動運転モードによる横断歩道250の通行(横断)開始は許可されない。
【0075】
図5(A)に示される様に、電動車椅子100が横断開始位置Pstに到達すると、図3の制御処理では、ステップS170がNO判定からYES判定に変化する。これにより、ステップS250により、この時点でも、自動運転モードによる横断歩道250の通行(横断)開始は許可されない。
【0076】
図5(B)には、図5(A)での判定結果に応じて電動車椅子100が横断開始位置Pstに止まった状態で、信号機200が赤信号に変化した状態が示される。この状態では、図3の制御処理では、ステップS110がYES判定、ステップS130がNO判定、かつ、ステップS150がNO判定とされることで、ステップS100~S150の処理を繰り返し実行するループが形成される。
【0077】
図5(C)では、図5(B)から時間が経過して信号機200が赤信号から青信号に変化する。このとき、図3の制御処理では、ステップS130がNO判定からYES判定に変化し、かつ、ステップS150もNO判定からYES判定に変化されるので、フラグFLG=「1」、かつ、経過時間Ts(タイマー34)がほぼゼロの状態で、ステップS160の判定が実行される。これにより、図5(C)の段階にて、ステップS200の通行(横断)開始可否判定が実行され、図4において、ステップS201及びS204がYES判定とされて、自動運転モードによる横断歩道250の通行(横断)開始が許可される(S260)。
【0078】
図6では、第2の例として、電動車椅子100が、信号機200を検出してから横断開始位置Pstに到達するまでに、赤信号から青信号に変わったケースを説明する。
【0079】
図6(A)では、電動車椅子100は、赤信号の信号機200を検知するが、この時点では、横断歩道250の横断開始位置Pstに到達していない(Dsg=D2)。このとき、図3の制御処理は、ステップS110がYES判定、ステップS130がNO判定、かつ、ステップS150がNO判定とされることで、ステップS100~S150を繰り返し実行するループが形成される状態となる。
【0080】
図6(B)では、電動車椅子100は、横断開始位置Pstに到達する前に(Dsg=D1)、信号機200の赤信号から青信号への変化を検知する。これに応じて、図3の制御処理では、ステップS130がNO判定からYES判定に変化し、かつ、ステップS150もNO判定からYES判定に変化されるので、フラグFLG=「1」に設定されるとともに、経過時間Ts(タイマー34)の計時が開始される。これにより、ステップS160がYES判定とされて、ステップS200の横断歩道250の通行(横断)開始可否判定が実行される。しかしながら、図6(B)の時点では、図4のステップS201がNO判定とされて、ステップS201及びS202によるループが形成される。
【0081】
図6(C)において、電動車椅子100は、信号機200が青信号のまま横断開始位置Pstに到達する。これにより、図4の制御処理では、ステップS201がNO判定からYES判定に変化して、この時点での経過時間Tsに基づいて、ステップS203~S207の処理が実行される。この結果、経過時間Tsに基づいて、自動運転モードによる横断歩道250の通行(横断)開始が許可(S206)又は不許可(S207)とされる。
【0082】
この様に、図3及び図4の制御処理によって、信号機200が赤信号から青信号へ変化するタイミングを起点として、簡易な制御演算によって、自動運転モードによる横断歩道250の通行(横断)開始の可否を判定することができる。
【0083】
次に、図7を用いて、図3のステップS250による処理の詳細、即ち、自動運転モードによる横断歩道250の通行(横断)開始が不許可とされたときの制御処理について説明する。
【0084】
図7に示される様に、ステップS250(図3)は、ステップS251~S259を有する。制御装置30は、ステップS251では、ステップS203(図4)と同様に残り時間ΔTを求める。ステップS210がNO判定とされて、ステップS250(S251)が実行される際には、ステップS203で算出された残り時間ΔTがそのまま用いられる。一方で、ステップS160がYES判定とされてステップS250(S251)が実行される際には、図4のステップS203及びS204と同様の処理を実行して、残り時間ΔTが算出される。
【0085】
制御装置30は、ステップS252では、下限時間Tminを設定する。下限時間Tminは、電動車椅子100が横断歩道250の通行(横断)に要する時間に対応させて、ステップS203で設定される判定時間Ttよりも短く設定される(Tt<Tmin)。そして、制御装置30は、ステップS253により、ステップS251で得られた残り時間ΔTを、ステップS252で設定された下限時間Tminと比較する。そして、残り時間ΔTが下限時間Tminより短いときは(S254のYES判定時)、更に、ステップS254により、ステップS201(図4)と同様に、電動車椅子100が横断開始位置Pstに居るか否が判定される。
【0086】
制御装置30は、ステップS253及びS254の両方がYES判定である場合、即ち、ΔT<Tminのときに横断開始位置Pstに居る場合には、ステップS255により、自動ブレーキを作動させる。即ち、モーター40による減速トルク(回生トルク)の出力、又は、ブレーキ50の作動により、電動車椅子100を停止される制御が実行される。
【0087】
一方で、制御装置30は、ステップS253及びS254の少なくとも一方がNO判定である場合には、ステップS256により、運転者に対してメッセージを出力する様に、スピーカー60及びモニター65の少なくとも一方を制御する。例えば、ステップS256では、運転者に対して、自動運転による横断歩道250の通行(横断)開始が許可されないことを報知する警告メッセージが出力される。或いは、これとともに、運転者に対して、運転モードの切換を問い掛けるメッセージが出力されてもよい。
【0088】
制御装置30は、ステップS256でのメッセージ出力に応じて、運転者が手動運転モードを選択したか否かをステップS257で判定し、運転操作部20に対して手動運転モードを選択する入力があった場合には、ステップS257をYES判定として、ステップS258により、手動運転モードへの切換を行う。一方で、手動運転モードを選択する入力が無かった場合には(S257のNO判定時)、ステップS259により、自動運手モードが「維持される。
【0089】
この様に、自動運転モードによる横断開始が不許可とされたときには、運転者に対するメッセージ出力、又は、自動ブレーキの作動を適切に実行することができる。
【0090】
<横断歩道の通行開始可否判定の変形例>
図8には、図3のステップS200による通行開始可否の判定処理の変形例が示される。
【0091】
図4に示した自動運転モードでの横断歩道250の通行(横断)開始可否判定では、電動車椅子100が、横断開始位置Pstに居る時点での情報に基づいて、最終的な横断可否判定が実行される。これに対して、図8には、横断開始位置Pstに到達する前の時点、例えば、図6(B)の時点においても通行可否判定を予備的に実行するための変形例が示される。即ち、図8に示される横断可否判定は、図4において、ステップS201がNO判定の期間に実行することができる。
【0092】
図8に示される変形例では、制御装置30は、ステップS203Xにより、ステップS203(図4)と同様に上限時間Tlimを設定する。制御装置30は、ステップS203Yにより、電動車椅子100の現在位置から横断開始位置Pstまでの距離Dsgを取得し、更に、距離Dsgに応じて判定時間Tt(Dsg)を設定する。判定時間Tt(Dsg)は、ステップS203(図4)で設定される判定時間Ttと、電動車椅子100が距離Dsgを走行するのに要する予測時間との和に従って設定される。
【0093】
制御装置30は、ステップS205Xでは、ステップS204Xで算出された残り時間ΔTを、ステップS203Yで設定された判定時間Tt(Dsg)と比較する。そして、残り時間ΔTが判定時間Tt(Dsg)より大きいときは(S205XのYES判定時)、現段階では自動運転モードを維持した横断が可能であるので、処理をステップS210に戻す。この場合には、電動車椅子100が横断開始位置Pstに到達したときに、S210がYES判定とされた最終的な通行開始可否判定が実行される。
【0094】
これに対して、残り時間ΔTが判定時間Tt(Dsg)以下であるときには(S205XのNO判定時)、ステップS207Xにより横断開始の判定結果を「NG」として、処置はステップS210に進められる。これに応じて、処理がステップS250に進められることにより、電動車椅子100が横断開始位置Pstに到達する前に、判定結果がNGであることを知らせるメッセージ(S256)を運転者に対して出力する。
【0095】
以上説明した様に、本実施の形態に係る電動車椅子によれば、信号機200が赤信号から青信号に変わったタイミングの検知に基づいて、複雑な予測計算を要することなく、信号のある横断歩道を通行する際の自動運転モードによる横断歩道250の通行(横断)開始可否を効率的に判断することができる。
【0096】
尚、本実施の形態では、電動移動体の代表例として電動車椅子を説明したが、本実施の形態に係る横断歩道の通行開始可否判定の適用は、電動車椅子に限定されるものではない。即ち、アクチュエーターを自動制御することによって進行する自動運転モードを有する任意の電動移動体に対して、本実施の形態に係る横断歩道の通行開始可否判定に係る制御を適用することが可能である。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
開示された技術的特徴は、例えば、電動車椅子等の電動移動体の自動運転に適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 カメラ、15 センサー、17 通信モジュール、20 運転操作部、30 制御装置、32 メモリー、33 インターフェイス、34 タイマー、40 モーター、50 ブレーキ、60 スピーカー、65 モニター、70 車輪、100 電動車椅子、200 信号機、250 横断歩道、CLR,SGL 情報、Dsg 距離(現在位置から横断開始位置まで)、Pst 横断開始位置、Tlim 上限時間、Ts 経過時間、Tt 判定時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8