(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102629
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】苗マット、及び苗マットの植付け方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20240724BHJP
A01G 24/44 20180101ALI20240724BHJP
A01G 24/35 20180101ALI20240724BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240724BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240724BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A01G9/02 601
A01G24/44
A01G24/35
C08L101/00
C08L7/00
C08L33/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006642
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 創
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智洋
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏典
(72)【発明者】
【氏名】坂垣内 貴保
(72)【発明者】
【氏名】大井戸 直幸
(72)【発明者】
【氏名】宇野 愼一
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】日戸 誠也
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
4J002
【Fターム(参考)】
2B022BA03
2B022BA04
2B022BA16
2B022BA24
2B022BB02
2B327NC02
2B327NC05
2B327ND03
2B327QA02
4J002AC011
4J002BG032
4J002DJ000
4J002GA00
(57)【要約】
【課題】移植機械が備える植付爪からの苗の落下が少なく、且つ根あばれが発生し難い苗マットを提供する。
【解決手段】苗マットは、培地を有する。培地は、有機バインダーを少なくとも含有する。培地の水分率が60%であるときの培地の曲げ最大荷重は、520N以上2600N以下である。培地の水分率が60%であるときの培地の表面硬さは、12N以上26N以下であることが好ましい。有機バインダーは、天然ゴムを少なくとも含むことが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地を有し、
前記培地は、有機バインダーを少なくとも含有し、
前記培地の水分率が60%であるときの前記培地の曲げ最大荷重は、520N以上2600N以下である、苗マット。
【請求項2】
前記培地の水分率が60%であるときの前記培地の表面硬さは、12N以上26N以下である、請求項1に記載の苗マット。
【請求項3】
前記曲げ最大荷重は、550N以上1750N以下であり、
前記表面硬さは、12N以上19N以下である、請求項2に記載の苗マット。
【請求項4】
前記有機バインダーは、天然ゴムを少なくとも含み、
前記培地は、培土基材を更に含有し、
前記培土基材と前記天然ゴムとの合計質量に対する、前記天然ゴムの含有率は、8.0質量%以上21.0質量%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の苗マット。
【請求項5】
前記有機バインダーは、天然ゴムと、アクリルポリマーとを含み、
前記天然ゴムの質量に対する、前記アクリルポリマーの質量比率は、0.02以上0.07以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の苗マット。
【請求項6】
前記有機バインダーは、天然ゴムと、アクリルポリマーとを含み、
前記培地は、培土基材を更に含有し、
前記培土基材と前記天然ゴムと前記アクリルポリマーとの合計質量に対する、前記天然ゴムの含有率は、8.0質量%以上21.0質量%以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の苗マット。
【請求項7】
互いに対向する第1主面及び第2主面を有する苗床部と、
前記苗床部に設けられ、種子を配置するための複数の播種穴部と
を備え、
前記苗床部が、前記培地で構成されている、請求項1~3の何れか一項に記載の苗マット。
【請求項8】
前記有機バインダーの含有量は、前記第2主面の単位面積あたり、0.06g/cm2以上0.22g/cm2以下である、請求項7に記載の苗マット。
【請求項9】
請求項1~3の何れか一項に記載の苗マットの植付け方法であって、
前記苗マットに含水させる含水工程と、
移植機械によって前記苗マットから掻き取られた苗を農地に植付ける植付け工程とを含み、
前記含水工程において、前記苗マットが有する前記培地の水分率が60%以上となるまで、前記苗マットに含水させる、苗マットの植付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗マット、及び苗マットの植付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている植栽用基材は、所定の無機塩類を加えた水で水和反応性硬化剤が凝結硬化されることにより、骨材が相互接着されたブロック化物である。水和反応性硬化剤は、例えば、水硬性セメントである。特許文献1に記載されている植栽用基材は、例えば、建物の屋上及び縦壁面に施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水硬性セメントのような水和反応性硬化剤が使用されているため、特許文献1に記載の植栽用基材は、農地への植付けに適していない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、農地への植付けに適した苗マットを提供することである。具体的には、移植機械が備える植付爪からの苗の落下が少なく、且つ根あばれが発生し難い苗マットを提供することである。また、本発明の別の目的は、移植機械が備える植付爪からの苗の落下が少なく、且つ根あばれが発生し難い苗マットの植付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、苗マットは、培地を有する。前記培地は、有機バインダーを少なくとも含有する。前記培地の水分率が60%であるときの前記培地の曲げ最大荷重は、520N以上2600N以下である。
【0007】
本発明の一局面によれば、苗マットの植付け方法は、上述した苗マットの植付け方法である。本発明の苗マットの植付け方法は、前記苗マットに含水させる含水工程と、移植機械によって前記苗マットから掻き取られた苗を農地に植付ける植付け工程とを含む。前記含水工程において、前記苗マットが有する前記培地の水分率が60%以上となるまで、前記苗マットに含水させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の苗マット、及び本発明の苗マットの植付け方法によれば、移植機械が備える植付爪からの苗の落下が少なく、且つ根あばれが発生し難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る苗マットを示す斜視図である。
【
図2】(a)は、実施形態1に係る苗マットの播種穴部を拡大して示す平面図である。(b)は、(a)のIIB-IIB線に沿った断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係る苗マットを示す斜視図である。
【
図4】(a)は、実施形態2に係る苗マットの播種穴部及び窪み部を拡大して示す平面図である。(b)は、(a)のIVB-IVB線に沿った断面図である。
【
図5】試験片へ第1補助板及び第2補助板を取り付ける方法を説明するための図である。
【
図6】テクスチャーアナライザーに載置された試験片、支持台、及び曲げ試験用圧子を示す前面図である。
【
図7】テクスチャーアナライザーに載置された試験片、支持台、及び曲げ試験用圧子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図中、理解を容易にするために、三次元直交座標系のX軸、Y軸、及びZ軸を適宜図示している。以下、本明細書で用いられる用語について説明する。培地の質量、及び培土基材の質量は、何ら規定していなければ、含水されていない乾燥時の質量である。材料の「主成分」は、何ら規定していなければ、質量基準で、その材料に最も多く含まれる成分を意味する。本明細書に記載の各材料及び各成分は、各々、何ら規定していなければ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。以上、本明細書で用いられる用語について説明した。
【0011】
[実施形態1]
本発明の実施形態1は、苗マット100に関する。まず、
図1を参照して苗マット100の構造の概要を説明する。
図1に示される苗マット100は、苗床部1と、複数の播種穴部3とを備える。苗床部1は、第1主面F1及び第2主面F2を有する。複数の播種穴部3の各々には、複数の種子が播種される。以下、種子を「種子SD」と記載する。苗マット100は、培地を有する。苗床部1は、例えば、培地で構成されている。以上、
図1を参照して苗マット100の構造の概要を説明した。
【0012】
実施形態1に係る苗マット100には、種子SDが播種される。そして、苗マット100において、種子SDから発芽した苗が育苗される。育苗された苗は、移植機械の植付爪によって苗マット100から掻き取られ、移植機械によって農地に植付けられる。例えば、移植機械の植付爪は、種子SDから成長した苗とともに、苗マット100の一部分をブロック状に掻き取る。苗を農地に確実に植付けるために、苗マット100には、掻き取り位置がずれない程度の強さが要求される。また、苗を農地に確実に植付けるために、植付爪によって苗が掻き取られてから農地に搬送されるまでに、遠心力等により植付爪から苗が落下しない程度の強さが要求される。種子SDは、例えば、野菜の種子、又は水稲種子である。野菜苗の根数は水稲と比較して少ないため、野菜の種子が播種される場合には、苗マット100が、特に十分な強さを有している必要がある。また、苗マット100が含水された状態で、播種、育苗、及び植付けが実施されることが多い。このため、含水された苗マット100が十分な強さを有している必要がある。以上を踏まえ、苗マット100が有する培地の曲げ最大荷重が、後述する所望の範囲内となることが有効である。更に、培地の表面硬さが、後述する所望の範囲となることが好適である。以下、培地の曲げ最大荷重、及び培地の表面硬さについて、説明する。
【0013】
<培地の曲げ最大荷重>
培地の水分率が60%であるときの培地の曲げ最大荷重は、520N以上2600N以下である。以下、「培地の水分率が60%であるときの培地の曲げ最大荷重」を、「所定強さ」と記載することがある。本明細書において、「培地の曲げ最大荷重」とは、3点曲げ試験において、培地が破断に至るまでに、培地に付与される最大荷重を意味する。
【0014】
所定強さが520N以上であると、移植機械が備える植付爪によって苗マット100から掻き取られた苗が、遠心力等により植付爪から落下することを抑制できる。一方、所定強さが2600N以下であると、種子SDから培地内に根が十分に伸長し、根あばれの発生が抑制される。なお、根あばれは、苗マット100の培地内に根が十分に伸長せず、苗マット100の第1主面F1上に根が露出する現象である。移植機械が備える植付爪からの苗の落下を低減させるために、所定強さは、550N以上であることが好ましく、600N以上であることがより好ましく、950N以上であることが更に好ましい。根あばれの発生を抑制するために、所定強さは、2000N以下であることが好ましく、1750N以下であることが更に好ましい。
【0015】
所定強さは、温度25℃且つ相対湿度65%の環境下、テクスチャーアナライザーを用い、培地を支点間中心Cp(
図6参照)上に配置し、支点間距離Lp(
図6参照)が60mmであり、且つ曲げ試験用圧子24(
図6参照)の移動速度が0.50mm/秒である条件で、培地に対する3点曲げ試験を行うことにより測定される。以下、「曲げ試験用圧子24」を「曲げ圧子24」と記載することがある。所定強さの測定には、苗マット100が備える培地の水分率が60%となるように、含水させた苗マット100が使用される。支点間中心Cpは、苗マット100が備える苗床部1の第1主面F1において、複数の播種穴部3と異なる位置に設定される。また、実施形態2で後述する窪み部5(
図3参照)が苗床部1に形成される場合には、支点間中心Cp上に、窪み部5が配置され、曲げ圧子24を下降させた際に、曲げ圧子24によって窪み部5において培地が破断される。また、窪み部5が実施形態2で後述するスリットである場合には、支点間中心Cp上に、スリットが配置され、曲げ圧子24を下降させた際に、曲げ圧子24によってスリッドに沿って培地が破断される。
【0016】
<培地の表面硬さ>
培地の水分率が60%であるときの培地の表面硬さは、12N以上26N以下であることが好ましい。以下、「培地の水分率が60%であるときの培地の表面硬さ」を、単に「所定硬さ」と記載することがある。
【0017】
所定硬さが12N以上であると、移植機械が備える植付爪によって苗マット100から掻き取られた苗が、遠心力等により植付爪から落下することを抑制できる。一方、所定硬さが26N以下であると、種子SDから培地内に根が十分に伸長し、根あばれの発生が抑制される。移植機械が備える植付爪からの苗の落下を低減させるために、所定硬さは、13N以上であることが好ましく、18N以上であることがより好ましい。根あばれの発生を抑制するために、所定硬さは、23N以下であることが好ましく、19N以下であることがより好ましい。
【0018】
所定硬さは、温度25℃且つ相対湿度65%の環境下、プッシュプルゲージを用いた培地に対する押当試験により測定される。所定硬さは、押し込み速度2.0mm/秒且つ押し込み深さ7mmの条件で測定される。所定硬さの測定には、苗マット100が備える培地の水分率が60%となるように、含水させた苗マット100が使用される。なお、所定硬さの測定位置は、苗マット100が有する培地のうち、苗床部1の第1主面F1における複数の播種穴部3と異なる位置に設定される。また、実施形態2で後述する窪み部5(
図3参照)が形成される場合には、所定硬さの測定位置は、苗マット100が有する培地のうち、苗床部1の第1主面F1における複数の播種穴部3B(
図3参照)及び窪み部5と異なる位置に設定される。
【0019】
<培地の水分率>
本明細書において、「水分率」とは、温度25℃且つ相対湿度65%の環境下、加熱乾燥方式の水分率計により測定された相対水分率を意味する。水分率は、例えば、公知の水分率計により測定される。培地の水分率(単位:%)は、計算式「水分率=100×水の質量/(水の質量+培地の固形分の質量)」から算出される。
【0020】
<培地の成分>
培地は、有機バインダーを少なくとも含有する。培地は、有機バインダーに加えて、培土基材を更に含有することが好ましい。
【0021】
(有機バインダー)
有機バインダーは、例えば、培土基材を結着させて、固化させる。有機バインダーとしては、例えば、アクリルポリマー、天然ゴムのようなジエン系ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、フッ化ビニル樹脂(PVF)、ウレタン発樹脂、及びポリエステル樹脂が挙げられる。
【0022】
所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易いことから、有機バインダーは、天然ゴムを少なくとも含むことが好ましく、天然ゴムとアクリルポリマーとを含むことが更に好ましい。有機バインダーがアクリルポリマーを含むと、培地に適度な保水性及び柔らかさが付与される傾向にある。有機バインダーが天然ゴムを含むと、培地に適度な強さ及び硬さが付与される傾向にある。
【0023】
以下、ジエン系ゴムについて説明する。本明細書において、ジエン系ゴムは、その主鎖に炭素-炭素間二重結合を有するゴムを意味する。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びアクリロニトリルブタジエンゴムが挙げられる。培地に適度な強さ及び硬さが付与されることから、ジエン系ゴムとしては、天然ゴムが好ましい。天然ゴムの主成分は、シス-1,4-ポリイソプレンである。また、天然ゴムは、各種公知の架橋剤を用いて架橋されていてもよい。以上、ジエン系ゴムについて説明した。
【0024】
以下、アクリルポリマーについて説明する。アクリルポリマーは、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種の重合体である。アクリルポリマーの重合に使用可能なアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸アルキルエステル、及びアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。アクリルポリマーの重合に使用可能なメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。
【0025】
アクリルポリマーとしては、例えば、式(1)で表される繰り返し単位を有するアクリルポリマー(以下、ポリマー(1)と記載することがある)が挙げられる。
【0026】
【0027】
式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。R2は、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基、及びヒドロキシアルキル基は、各々、直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。R2が表すアルキル基としては、炭素原子数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、炭素原子数4のアルキル基が更に好ましく、n-ブチル基が特に好ましい。R2が表すヒドロキシアルキル基としては、炭素原子数1以上8以下のヒドロキシアルキル基が好ましい。式(1)中、R1は、水素原子を表し、R2は、アルキル基を表すことが好ましい。
【0028】
式(1)で表される繰り返し単位の好適な例としては、式(T)で表される繰り返し単位が挙げられる。以下、「式(T)で表される繰り返し単位を有するアクリルポリマー」を、「ポリマー(T)」と記載することがある。
【0029】
【0030】
ポリマー(1)は、繰り返し単位として、式(1)で表される繰り返し単位のみを有していてもよい。また、ポリマー(1)は、繰り返し単位として、式(1)で表される繰り返し単位に加えて、これ以外の繰り返し単位を更に有していてもよい。
【0031】
有機バインダーが天然ゴムとアクリルポリマーとを含む場合、天然ゴムの質量WAに対する、アクリルポリマーの質量WBの比率WB/WAは、0.02以上0.07以下であることが好ましい。比率WB/WAが0.02以上0.07以下であると、所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易い。
【0032】
所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易いことから、有機バインダーの含有量は、培地の質量に対して、6.0質量%以上35.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以上23.0質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
有機バインダーが天然ゴムを含み且つ培地が培土基材を更に含有する場合、培土基材と天然ゴムとの合計質量に対する、天然ゴムの含有率は、8.0質量%以上21.0質量%以下であることが好ましい。天然ゴムの含有率が8.0質量%以上21.0質量%以下であると、所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易い。天然ゴムの含有率は、計算式「天然ゴムの含有率=100×天然ゴムの質量/(培土基材の質量+天然ゴムの質量)」から算出される。
【0034】
有機バインダーが天然ゴムとアクリルポリマーとを含み且つ培地が培土基材を更に含有する場合、培土基材と天然ゴムとアクリルポリマーとの合計質量に対する、天然ゴムの含有率は、8.0質量%以上21.0質量%以下であることが好ましい。有機バインダーが天然ゴムとアクリルポリマーとを含み且つ培地が培土基材を更に含有する場合、培土基材と天然ゴムとアクリルポリマーとの合計質量に対する、アクリルポリマーの含有率は、0.3質量%以上0.7質量%以下であり、且つ天然ゴムの含有率は、8.0質量%以上21.0質量%以下であることがより好ましい。天然ゴムの含有率が8.0質量%以上21.0質量%以下であると、所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易い。アクリルポリマーの含有率は、計算式「アクリルポリマーの含有率=100×アクリルポリマーの質量/(培土基材の質量+アクリルポリマーの質量+天然ゴムの質量)」から算出され、天然ゴムの含有率は、計算式「天然ゴムの含有率=100×天然ゴムの質量/(培土基材の質量+アクリルポリマーの質量+天然ゴムの質量)」から算出される。
【0035】
有機バインダーの含有量は、苗床部1の第2主面F2の単位面積あたり、0.06g/cm2以上0.22g/cm2以下であることが好ましい。以下、「第2主面F2の単位面積あたりの有機バインダーの含有量」を、「単位面積バインダー量」と記載することがある。単位面積バインダー量が0.06g/cm2以上0.22g/cm2以下であると、所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易い。単位面積バインダー量は、計算式「単位面積バインダー量=有機バインダーの質量/苗床部1の第2主面F2の面積」から算出される。この計算式において、有機バインダーの質量は、苗床部1に含有される有機バインダーの質量である。2種以上の有機バインダーが含有される場合は、有機バインダーの質量は、2種以上の有機バインダーの合計質量である。例えば、有機バインダーが天然ゴムとアクリルポリマーとである場合、有機バインダーの質量は、天然ゴム及びアクリルポリマーの合計質量である。
【0036】
(培土基材)
培土基材としては、例えば、土、砂、鉱物、有機資材、炭、及び鉱物と有機資材との混合体が挙げられる。土としては、例えば、赤玉土、鹿沼土、荒木田土、及び腐葉土が挙げられる。砂としては、例えば、川砂、海砂、浜砂、山砂、及び桐生砂が挙げられる。鉱物としては、例えば、パーライト、バーミキュライト、ロックウール、及びゼオライトが挙げられる。有機資材としては、例えば、ピートモス、ココピート、水苔、パーク堆肥、モミガラ、フスマ、及びハスクチップが挙げられる。炭としては、木炭、竹炭、ヤシガラ炭、藁灰、消炭、及び製紙スラッジ灰が挙げられる。
【0037】
所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易いことから、培土基材としては、土、ココピート、バーミキュライト又はハスクチップが好ましく、土がより好ましい。
【0038】
所定強さ及び所定硬さが所望の範囲に調整され易いことから、培土基材の含有量は、培地の質量に対して、70質量%以上91質量%以下であることが好ましく、77質量%以上91質量%以下であることがより好ましい。2種以上の培土基材が培地に含有される場合には、上記培土基材の含有量は、2種以上の培土基材の合計含有量である。
【0039】
(その他の培地の成分)
培地は、必要に応じて、有機バインダー及び培土基材以外の成分(以下、その他の培地の成分と記載することがある)を、更に含有してもよい。その他の培地の成分としては、例えば、肥料、界面活性剤、及び土壌改良剤が挙げられる。なお、農地への植付けに好適な苗マットを得るために、培地及び苗マット100には、各々、水硬性セメントのような水和反応性硬化剤が含有されていないことが好ましい。
【0040】
<苗マット100の製造方法>
以下、実施形態1に係る苗マット100の製造方法の一例について、説明する。苗マット100の製造方法は、混合工程と、加熱工程とを少なくとも含む。苗マット100の製造工程は、成形工程を更に含んでいてもよい。成形工程は、混合工程の後で且つ加熱工程の前に実施されてもよい。また、成形工程は、混合工程及び加熱工程の後に実施されてもよい。
【0041】
混合工程において、有機バインダーと水とを少なくとも混合して混合物が得られる。有機バインダーと水とに加えて、培土基材及びその他の培地の成分の一方又は両方が、更に混合されてもよい。混合には、公知の混合装置が用いられる。
【0042】
加熱工程において、混合工程で得られた混合物が加熱される。その結果、乾燥物が得られる。加熱には、例えば、公知の加熱装置が用いられる。加熱装置としては、例えば、乾燥機が挙げられる。加熱条件は、特に限定されないが、例えば、加熱温度は50℃以上150℃以下であり、加熱時間は1時間以上48時間以下である。また、加熱工程では、混合物を常圧下又は減圧下で加熱してもよい。
【0043】
以下、成形工程が、混合工程の後で且つ加熱工程の前に実施される場合について、説明する。成形工程において、混合工程で得られた混合物が成形される。
【0044】
成形方法の一例としては、混合物をトレイに流し込み、苗マット100の型をとった板形状の治具を押当てる方法が挙げられる。また、成形方法の別の例としては、苗マット100の型をとった容器に混合物を流し込む方法が挙げられる。苗マット100の型は、例えば、播種穴部3が形成可能な型である。なお、後述する実施形態2に係る苗マット100Bの型は、例えば、播種穴部3B及び窪み部5が形成可能な型である。成形工程で得られた成形物(成形された混合物に相当)は、加熱工程において加熱され、苗マット100が得られる。
【0045】
次に、成形工程が、混合工程及び加熱工程の後に実施される場合について、説明する。成形工程において、加熱工程で得られた乾燥物が成形される。
【0046】
成形方法の一例としては、ドリルを用い、乾燥物に播種穴部3を形成する方法が挙げられる。成形方法の別の例としては、形成される苗マット100よりも大きい乾燥物を形成し、カッター又は裁断機を用い、苗マット100の形状に裁断する方法が挙げられる。なお、後述する実施形態2に係る苗マット100Bを成形する場合には、例えばカッター又はサンダーを用い、シート状の乾燥物に窪み部5を形成することができる。その結果、成形工程において、苗マット100が得られる。
【0047】
<苗マット100の植付け方法>
以下、実施形態1に係る苗マット100の植付け方法の一例について、説明する。苗マット100の植付け方法は、含水工程と、植付け工程とを含む。
【0048】
含水工程において、苗マット100が含水される。具体的には、含水工程において、苗マット100が有する培地の水分率が60%以上となるまで、苗マット100に含水させる。実施形態1に係る苗マット100は、培地の水分率が60%であるとき、所望の範囲の所定強さを有するように設計されている。従って、培地の水分率が60%以上となるまで苗マット100を含水させた場合でも、遠心力等により移植機械が備える植付爪から苗が落下することを抑制できる。また、含水工程における根あばれの発生も抑制できる。含水工程において含水された培地の水分率の上限は、特に限定されないが、例えば、95%以下である。培地の水分率が60%以上の範囲内(例えば、60%以上95%以下)である場合、培地の曲げ最大荷重は略一定となる傾向があり、培地の表面硬さも、略一定となる傾向がある。従って、含水後の苗マット100が有する、水分率が60%以上の範囲内となった培地の曲げ最大荷重の好適範囲は、既に述べた所定強さの好適範囲と同様である。また、含水後の苗マット100が有する、水分率が60%以上の範囲内となった培地の表面硬さの好適範囲は、既に述べた所定硬さの好適範囲と同様である。
【0049】
苗マット100を含水させる方法としては、例えば、苗マット100を水に浸漬される方法、及び苗マット100に散水する方法が挙げられる。なお、含水工程が実施されるタイミングは、特に限定されない。含水工程は、苗マット100へ種子SDが播種される際に実施されてもよい。また、含水工程は、苗マット100において苗が育苗される間に実施されてもよい。また、含水工程は、植付け工程が実施される直前に、実施されてもよい。根あばれの発生を抑制するために、苗マット100において苗が育苗される間、培地の水分率が60%以上に維持されていることが好ましい。また、移植機械が備える植付爪から苗が落下することを抑制するために、植付け工程において、移植機械によって苗マット100から掻き取られる際の培地の水分率が、60%以上であることが好ましい。
【0050】
植付け工程において、移植機械によって苗マット100から掻き取られた苗が、農地に植付けられる。植付け工程に用いられる移植機械は、特に限定されず、公知の移植機械を用いることができる。移植機械は、例えば、植付爪と、押出部材とを備える。苗マット100の第1主面F1における播種穴部3とは異なる位置に、移植機械の植付爪が侵入する。移植機械の植付爪は、種子SDから成長した苗とともに、苗マット100の一部分をブロック状に掻き取る。以下、「ブロック状に掻き取られた苗マット100の一部分」を、「苗ブロック」と記載することがある。次いで、植付け爪が、苗ブロックを農地まで運ぶ。次いで、移植機械の押出部材が苗ブロックを押出し、苗ブロックが農地に植付けられる。以上、苗マット100の植付け方法の一例について、説明した。
【0051】
<苗マット100の構造>
以下、
図1を参照して苗マット100の構造を具体的に説明する。
図1は、実施形態1に係る苗マット100を示す斜視図である。
【0052】
図1の例では、苗マット100は、略直方体形状(例えば、略矩形平板形状)を有する。苗マット100は、苗床部1と、複数の播種穴部3とを備える。苗床部1は、略直方体形状(例えば、略矩形平板形状)を有する。苗床部1は、第1主面F1及び第2主面F2を有する。第1主面F1及び第2主面F2は、互いに対向しており、略平行である。例えば、苗床部1の表面と裏面とのうち、第1主面F1は表面に相当し、第2主面F2は裏面に相当する。
【0053】
苗床部1は、培地で構成されている。苗床部1のうち、播種穴部3を囲む領域、及び第1主面F1における移植機械の植付爪が侵入する領域が、少なくとも培地で構成されていればよい。ただし、製造コストの観点から、苗床部1の全体が、培地で構成されていることが好ましい。
【0054】
複数の播種穴部3は、苗床部1に設けられる。複数の播種穴部3の各々は、種子SDを配置するための穴部である。従って、複数の播種穴部3の各々には、種子SDが播種される。
【0055】
図1の例では、複数の播種穴部3は、略正方格子状又は略矩形格子状に配置される。具体的には、2以上の播種穴部3が第1方向D1に一直線上に配置される。第1方向D1に隣り合う播種穴部3は、間隔Lxをあけて配置される。また、2以上の播種穴部3が第2方向D2に一直線上に配置される。第2方向D2に隣り合う播種穴部3は、間隔Lyをあけて配置される。間隔Lxと間隔Lyとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1方向D1及び第2方向D2は、第1主面F1に略平行である。第1方向D1と第2方向D2とは、互いに略直交する。
【0056】
次に、
図2(a)及び
図2(b)を参照して、播種穴部3を説明する。
図2(a)は、播種穴部3を拡大して示す平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のIIB-IIB線に沿った断面図である。
【0057】
図2(b)に示すように、複数の播種穴部3の各々は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向かって延びている。具体的には、複数の播種穴部3の各々は、苗床部1の第1主面F1から所定方向D31に延びている。所定方向D31は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向いている。
図2(b)の例では、所定方向D31は、第1主面F1及び第2主面F2に略直交する。従って、所定方向D31は、
図1に示す第1方向D1及び第2方向D2に略直交する。
【0058】
具体的には、播種穴部3は、第1穴部31と、第2穴部32とを有する。第1穴部31は、苗床部1の第1主面F1から所定方向D31に延びる。播種穴部3の第1穴部31は略柱体形状を有する。具体的には、第1穴部31は、壁面W1と、壁面W1に囲まれた空間SP1とを有する。壁面W1は略筒面である。従って、空間SP1は略柱体形状を有する。
【0059】
第2穴部32は、第1穴部31よりも苗床部1の第1主面F1から離隔した位置に配置される。第2穴部32は、所定方向D31における第1穴部31の先端部において、第1穴部31に繋がる。つまり、第2穴部32は、所定方向D31における第1穴部31の先端部から、所定方向D31に延びている。第2穴部32は、所定方向D31に向かって先細りになっている。つまり、第2穴部32の穴幅d2は、所定方向D31に向かって狭まっている。第2穴部32は略錐体形状を有する。具体的には、第2穴部32は、壁面W2と、壁面W2に囲まれた空間SP2とを有する。壁面W2は略錐面である。従って、空間SP1は略錐体形状を有する。
【0060】
従って、実施形態1によれば、播種穴部3における種子SDの位置の精度が向上する。例えば、複数の播種穴部3において、種子SDの位置がばらつくことを抑制できる。播種穴部3における種子SDの位置の精度を向上できると、種子SDから成長した苗の位置の精度も向上する。従って、移植機械の植付爪によって苗を掻き取る際に、苗が折損することを効果的に抑制できる。
【0061】
加えて、実施形態1によれば、第1穴部31の穴幅d1は、所定方向D31に向かって略一定である。従って、播種穴部3の開口PNが過剰に大きくなることを抑制できる。その結果、苗マット100の強度が低下することを抑制できる。また、複数の播種穴部3の各々は、第1主面F1に開口している。播種穴部3の開口PNは、第1主面F1側における第1穴部31の開口31aである。
【0062】
なお、
図2(b)の例では、第2穴部32の所定方向D31の長さH2は、第1穴部31の所定方向D31の長さH1よりも短い。ただし、長さH2は長さH1以上であってもよい。また、播種穴部3は、第1主面F1からの深さDP3を有する。深さDP3は、長さH1と長さH2との和である。つまり、深さDP3は、所定方向D31における播種穴部3の長さを示す。播種穴部3の深さDP3は、苗床部1の厚みtよりも小さい。従って、播種穴部3は苗床部1を貫通していない。ただし、播種穴部3は苗床部1を貫通していてもよい。
【0063】
[実施形態2]
次に、
図3~
図4(b)を参照して、本発明の実施形態2に係る苗マット100Bを説明する。実施形態2に係る苗マット100Bが窪み部5を備える点で、実施形態2は、
図1~
図2(b)を参照して説明した実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0064】
まず、
図3を参照して苗マット100Bを説明する。
図3は、実施形態2に係る苗マット100Bを示す斜視図である。
図3に示すように、苗マット100Bは、苗床部1と、複数の播種穴部3Bと、少なくとも1つの窪み部5とを備える。
図3の例では、苗マット100Bは複数の窪み部5を備える。複数の窪み部5の各々は、苗床部1において、複数の播種穴部3Bと異なる位置に設けられる。つまり、窪み部5と播種穴部3Bとは離隔している。
【0065】
複数の窪み部5の各々は、苗床部1の第1主面F1から所定方向D31に窪んでいる。つまり、複数の窪み部5の各々は、苗床部1の第1主面F1に対して窪んでいる。移植機械が備える植付爪は、例えば、第1主面F1側からに窪み部5に侵入する。窪み部5に植付爪が侵入することで、植付爪の掻き取り位置が更にずれ難く、苗が折損することを効果的に抑制できる。また、窪み部5を通して、苗床部1の通気性が向上し、種子SDの発芽率の低下を抑制できる。
【0066】
特に、実施形態2では、複数の窪み部5の各々は、苗床部1の第1主面F1に沿って苗床部1の一方縁1Aから他方縁1Bまで延びていることが好ましい。以下、「苗床部1の第1主面F1に沿って苗床部1の一方縁1Aから他方縁1Bまで延びている窪み部5」を、「スリット」と記載することがある。この好ましい例によれば、植付爪の掻き取り位置が更にずれ難く、苗が折損することを効果的に抑制できる。また、窪み部5を通して、苗床部1の通気性が更に向上し、苗床部1の排水性も向上する。
【0067】
図3の例では、複数の窪み部5の各々は、略溝形状を有し、第1方向D1に略直線状に延びている。複数の窪み部5は、第2方向D2に互いに間隔Lyaをあけて並んでいる。複数の窪み部5は略平行である。互いに隣り合う窪み部5と窪み部5との間において、複数の播種穴部3Bが第1方向D1に一直線上に並んでいる。なお、窪み部5が第1主面F1に対して窪んでいる限りにおいては、窪み部5の形状は、特に限定されない。
【0068】
複数の播種穴部3Bは、苗床部1に設けられる。複数の播種穴部3Bの各々は、種子SDを配置するための穴部である。また、複数の播種穴部3Bの配置は、
図1を参照して説明した複数の播種穴部3の配置と同様である。
【0069】
次に、
図4(a)及び
図4(b)を参照して播種穴部3B及び窪み部5を説明する。
図4(a)は、播種穴部3B及び窪み部5を拡大して示す平面図である。
図4(a)では、図面を明確にするために、窪み部5にドットハッチングを付している。
図4(b)は、
図4(a)のIVB-IVB線に沿った断面図である。
【0070】
図4(b)に示すように、複数の播種穴部3Bの各々は、苗床部1の第1主面F1から第2主面F2に向かって延びている。具体的には、複数の播種穴部3Bの各々は、苗床部1の第1主面F1から所定方向D31に延びている。その他、播種穴部3Bの構成は、
図2(b)を参照して説明した第1穴部31の構成と同様である。例えば、第1穴部31の穴幅d1に相当する播種穴部3Bの穴幅d1は、種子SDの最小径よりも大きいことが好ましい。なお、例えば、播種穴部3Bの穴幅d1は、種子SDの最大径よりも大きくてもよい。実施形態2では、播種穴部3Bは、壁面W1に加えて、底面BMを有する。種子SDは底面BMに配置される。実施形態2では、苗マット100Bが窪み部5を備える限りにおいて、播種穴部3Bの構成は、
図2(b)を参照して説明した第1穴部31の構成に限定されず、任意の構成を取り得る。例えば、播種穴部3Bは、
図2(b)を参照して説明した播種穴部3と同様の形状であってもよい。また、例えば、播種穴部3Bは、略柱体形状(例えば、略円柱形状又は略角柱形状)、略錐体形状(例えば、略円錐形状又は略角錐形状)、又は、略錐台形状(例えば、略円錐台形状又は略角錐台形状)であってもよい。
【0071】
窪み部5は、播種穴部3Bに対して、第2方向D2に間隔Lybをあけて離隔している。
図4(b)の例では、苗床部1の第1主面F1に対する窪み部5の深さDP5は、苗床部1の第1主面F1に対する播種穴部3Bの深さDP3よりも深い。深さDP5が深さDP3よりも深いことで、植付爪の掻き取り位置が更にずれ難く、苗が折損することを効果的に抑制できる。また、窪み部5を通して、苗床部1の通気性が更に向上し、苗床部1の排水性も向上する。ただし、窪み部5の深さDP5が播種穴部3Bの深さDP3と略同じであってもよいし、窪み部5の深さDP5が播種穴部3Bの深さDP3より浅くてもよい。
【0072】
実施形態1と同様に、実施形態2においても、苗床部1は、培地で構成されている。従って、実施形態1と同様の理由から、実施形態2に係る苗マット100Bによれば、移植機械が備える植付爪からの苗の落下が少なく、且つ根あばれが発生し難い。苗床部1のうち、播種穴部3Bを囲む領域、及び窪み部5を囲む領域が、少なくとも培地で構成されていればよい。ただし、製造コストの観点から、苗床部1の全体が、培地で構成されていることが好ましい。
【0073】
本願は、以下の付記を開示する。以下の付記は、本発明を限定するものではない。
(付記1)培地を有し、前記培地は、有機バインダーを少なくとも含有し、前記培地の水分率が60%であるときの前記培地の曲げ最大荷重は、520N以上2600N以下である、苗マット。
(付記2)前記培地の水分率が60%であるときの前記培地の表面硬さは、12N以上26N以下である、付記1に記載の苗マット。
(付記3)前記曲げ最大荷重は、550N以上1750N以下であり、前記表面硬さは、12N以上19N以下である、付記2に記載の苗マット。
(付記4)前記有機バインダーは、天然ゴムを少なくとも含み、前記培地は、培土基材を更に含有し、前記培土基材と前記天然ゴムとの合計質量に対する、前記天然ゴムの含有率は、8.0質量%以上21.0質量%以下である、付記1~3の何れかに記載の苗マット。
(付記5)前記有機バインダーは、天然ゴムと、アクリルポリマーとを含み、前記天然ゴムの質量に対する、前記アクリルポリマーの質量比率は、0.02以上0.07以下である、付記1~4の何れかに記載の苗マット。
(付記6)前記有機バインダーは、天然ゴムと、アクリルポリマーとを含み、前記培地は、培土基材を更に含有し、前記培土基材と前記天然ゴムと前記アクリルポリマーとの合計質量に対する、前記天然ゴムの含有率は、8.0質量%以上21.0質量%以下である、付記1~5の何れかに記載の苗マット。
(付記7)互いに対向する第1主面及び第2主面を有する苗床部と、前記苗床部に設けられ、種子を配置するための複数の播種穴部とを備え、前記苗床部が、前記培地で構成されている、付記1~6の何れかに記載の苗マット。
(付記8)前記有機バインダーの含有量は、前記第2主面の単位面積あたり、0.06g/cm2以上0.22g/cm2以下である、付記7に記載の苗マット。
(付記9)付記1~8の何れかに記載の苗マットの植付け方法であって、前記苗マットに含水させる含水工程と、移植機械によって前記苗マットから掻き取られた苗を農地に植付ける植付け工程とを含み、前記含水工程において、前記苗マットが有する前記培地の水分率が60%以上となるまで、前記苗マットに含水させる、苗マットの植付け方法。
【実施例0074】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0075】
[苗マットの調製]
苗マット(M-1)~(M-20)を調製した。苗マット(M-1)~(M-20)の各々を調製するために使用した材料を、下記表1に示す。また、参考のために、苗マット(M-1)~(M-20)の各々の材料の質量比率、材料の含有率、及び単位面積バインダー量を、下記表2に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
表1において用いられる用語の意味は、以下のとおりである。ポリマー(T)の「液量」は、ポリマー(T)のエマルジョンの質量(単位:g)を示し、ポリマー(T)の「固形分量TS」は、ポリマー(T)のエマルジョンに含有されるポリマー(T)の固形分の質量(単位:g)を示す。天然ゴムの「液量」は、天然ゴムのラテックスの質量(単位:g)を示し、天然ゴムの「固形分量LS」は、天然ゴムのラテックスに含有される固形分の質量(単位:g)を示す。
【0079】
表2において用いられる用語の意味は、以下のとおりである。「TS/LS」は、天然ゴムの質量に対するアクリルポリマーの質量比率を示す。TS/LSは、表1に示す固形分量TS(単位:g)及び固形分量LS(単位:g)から、計算式「TS/LS=固形分量TS/固形分量LS」に基づき算出した。「TS含有率」は、培土基材とアクリルポリマーと天然ゴムとの合計質量に対するアクリルポリマーの含有率(単位:質量%)を示す。TS含有率は、表1に示す土の量(単位:mL)、後述する土の密度(単位:g/mL)、後述するココピートの質量(単位:g)、後述するバーミキュライトの質量(単位:g)、固形分量TS(単位:g)、及び固形分量LS(単位:g)から、計算式「TS含有率=100×固形分量TS/[土の質量+ココピートの質量+バーミキュライトの質量+固形分量TS+固形分量LS]=100×固形分量TS/[(土の密度×土の量)+ココピートの質量+バーミキュライトの質量+固形分量TS+固形分量LS]」に基づき算出した。「LS含有率」は、培土基材とアクリルポリマーと天然ゴムとの合計質量に対する天然ゴムの含有率(単位:質量%)を示す。LS含有率は、表1に示す土の量(単位:mL)、後述する土の密度(単位:g/mL)、後述するココピートの質量(単位:g)、後述するバーミキュライトの質量(単位:g)、固形分量TS(単位:g)、及び固形分量LS(単位:g)から、計算式「LS含有率=100×固形分量LS/[土の質量+ココピートの質量+バーミキュライトの質量+固形分量TS+固形分量LS]=100×固形分量LS/[(土の密度×土の量)+ココピートの質量+バーミキュライトの質量+固形分量TS+固形分量LS]」に基づき算出した。単位面積バインダー量は、表1に示す固形分量TS(単位:g)、固形分量LS(単位:g)、及び後述する調製した苗マットの苗床部1の長さ580mm(即ち58cm)及び幅280mm(即ち、28cm)から、計算式「単位面積バインダー量=(固形分量TS+固形分量LS)/(58×28)」に基づき算出した。
【0080】
<苗マット(M-1)の調製>
まず、混合工程を行った。詳しくは、パン型ミキサーを用いて、150mLの土(密度:0.94g/mL、141gに相当)と、2900mLのココピート(密度:0.15g/mL、含水率:30%、2900×0.15×0.7=304.5gに相当)と、2900mLのバーミキュライト(密度:0.21g/mL、609gに相当)と、水とを、1分間混合し、混合物Aを得た。別途、100gのポリマー(T)のエマルジョン(荒川化学工業株式会社製、ポリマー:繰り返し単位として式(T)で表される繰り返し単位のみを有するポリマー(T))と、水とを混合し、分散液Bを得た。また、300gの天然ゴムのラテックス(CADENZA CHEMICALS社製「HA-60」、固形分濃度:61.3質量%)と、水とを混合し、分散液Cを得た。パン型ミキサーを用いて、混合物Aと、分散液Bと、分散液Cとを混合し、培地用混合物を得た。
【0081】
次に、成形工程を行った。詳しくは、培地用混合物を、トレイ(長さ580mm、幅280mm、且つ深さ30mm)に充填した。次に、板形状の治具を、培地用混合物に押当てた。板形状の治具は、その主面に、播種穴部と窪み部に相当するスリットとを成形するための凹凸を有していた。治具を押当ることにより、播種穴部及びスリットを形成し、未乾燥成形品を得た。
【0082】
次に、加熱工程を行った。乾燥機を用いて、未乾燥成形品をトレイごと加熱し、水分量が10%になるまで未乾燥成形品を乾燥させた。このようにして、乾燥成形品である苗マット(M-1)を得た。得られた苗マット(M-1)は、その全体が培地で構成されていた。
【0083】
<苗マット(M-2)~(M-20)の調製>
表1に示す量で各材料を使用したこと以外は、苗マット(M-1)の調製と同じ方法により、苗マット(M-2)~(M-20)の各々を調製した。
【0084】
得られた苗マット(M-1)~(M-20)の寸法を、
図3、及び
図4(b)を参照して説明する。苗床部1の長さは580mmであり、幅は280mmであり、厚みtは30mmであった。互いに隣り合う窪み部5と窪み部5との間隔Lyaは29mmであった。互いに隣り合う播種穴部3Bと播種穴部3Bとの間隔Lxは、28mmであった。窪み部5(スリット)の数は、19本であった。10個の播種穴部3Bが第1方向D1に一直線上に形成された。20個の播種穴部3Bが第2方向D2に一直線上に形成された。従って、合計200個(=10個×20列)の播種穴部が形成された。
【0085】
[測定]
<培地の水分率の測定>
培地の水分率は、温度25℃且つ相対湿度65%の環境下、水分率計(A&D社製「ML-50」)を用いて測定した。この水分率計の測定方式は、加熱乾燥方式であった。
【0086】
<所定硬さの測定>
(押当試験用圧子)
押当試験用圧子(以下、押当圧子と記載することがある)を準備した。この押当圧子は、鉄から構成され、円錐形状の先端を有していた。詳しくは、押当圧子は、直径10mm且つ高さ23mmの円柱形状の円柱部と、直径10mm且つ高さ7mmの円錐形状の円錐部とを有し、円柱部の底面が円錐部の底面に接合されていた。
【0087】
(測定)
所定硬さの測定は、温度25℃且つ相対湿度65%の環境下で実施した。所定硬さの測定には、苗マットが備える培地の水分率が60%となるように、含水させた苗マットを使用した。押当圧子の円柱部を、プッシュプルゲージ(日本電産シンポ株式会社製のデジタルフォースゲージ「FGJN-50」)に取り付けた。培地の表面(
図3で示す第1主面F1に相当)における測定位置に、押当圧子の円錐部の先端を当接させた。測定位置は、
図3で示す苗床部1の第1主面F1において、複数の播種穴部3及び窪み部5と異なる位置であった。そして、押し込み速度2.0mm/秒且つ押し込み深さ7mmの条件で、培地の表面に対して垂直方向(
図4(b)で示す所定方向D31に相当)に、押当圧子を押し込んだ。なお、押し込み深さが7mmであるため、押し込み終了時には、押当圧子の円錐部の全体が、培地内に埋没していた。プッシュプルゲージを用い、押当圧子の当接から押し込み終了までの押付力のピーク値を測定した。苗マットの4箇所についてピーク値を測定し、それらの平均値を所定硬さ(単位:N)とした。測定された所定硬さを、表3に示す。
【0088】
<所定強さの測定>
(曲げ試験に用いる治具)
図5~
図7を参照して、曲げ試験に用いる治具について説明する。
図5は、試験片100sへ第1補助板21及び第2補助板22を取り付ける方法を説明するための図である。
図6は、テクスチャーアナライザーに載置された試験片100s、支持台23、及び曲げ圧子24を示す前面図である。
図7は、テクスチャーアナライザーに載置された試験片100s、支持台23、及び曲げ圧子24を示す側面図である。
図5~
図7において、X軸-Y軸平面が、水平面である。Z軸方向が、鉛直方向である。曲げ試験に用いる治具として、第1補助板21、第2補助板22、支持台23、及び曲げ圧子24を準備した。
【0089】
第1補助板21は、第1支点P1における試験片100sの変形を防止するために用いられる。
図5及び
図6に示すように、第1補助板21は、長さL21が40mmであり、幅W21が60mmであり、高さH21が3mmの平板形状である。第1補助板21は、鉄製である。
【0090】
第2補助板22は、第2支点P2における試験片100sの変形を防止するために用いられる。第2補助板22は、第1補助板21と同形状である。
図5及び
図6に示すように、第2補助板22は、長さL22が40mmであり、幅W22が60mmであり、高さH22が3mmの平板形状である。第2補助板22は、鉄製である。
【0091】
図6及び
図7に示すように、支持台23は、第1支持台231と、第2支持台232とを含む。第1支持台231と、第2支持台232とは、各々、試験片100sを支持する。第1支持台231は、長さL231が30mmであり、幅W231が40mmであり、高さH231が30mmの直方体状である。第2支持台232は、第1支持台231と同形状である。
図6及び
図7に示すように、第2支持台232は、長さL232が30mmであり、幅(不図示)が40mmであり、高さH232が30mmの直方体状である。なお、第1支持台231の高さH231と、第2支持台232の高さH232とは、試験片100sが破断可能なように、試験片100sの厚みt100sに応じて適宜調整される。
【0092】
図6及び
図7に示すように、曲げ圧子24は、試験片100sに荷重Fを付与する。曲げ圧子24は、直径d24が4mmである円柱を曲げて形成される。曲げ圧子24は、鉄製である。曲げ圧子24は、側面視で略U字形状であり、第1円柱部241、第2円柱部242、及び第3円柱部243が、記載された順に繋がっている。第2円柱部242は第1円柱部241に対して垂直に設けられ、第2円柱部242の一方端が第1円柱部241の一方端と繋がっている。第2円柱部242は第3円柱部243に対して垂直に設けられ、第2円柱部242の他方端が第3円柱部243の一方端と繋がっている。第1円柱部241の他方端及び第3円柱部243の他方端が、各々、テクスチャーアナライザーに取り付けられる。第2円柱部242が、3点曲げ試験において試験片100sに接触する。第2円柱部242の幅W242は、試験片100sの幅W100sよりも大きく、60mmである。以上、曲げ試験に用いる治具について説明した。
【0093】
(試験片100sの準備)
培地の水分率が60%となるように、苗マットに含水させた。
図5~
図7に示すように、幅W100sが56mmであり、長さL100sが116mmである大きさとなるように、苗マットを裁断し、試験片100sを得た。試験片100sの厚みt100sは、苗マットの苗床部1の厚みtと同じ、30mmであった。なお、試験片100sがスリットを有する場合には、1本のスリットが後述する第1中心線C1と一致するように、苗マットを裁断した。
【0094】
(試験片100sへの第1補助板21及び第2補助板22の取り付け)
以下、
図5を参照して、試験片100sへの第1補助板21及び第2補助板22の取り付けについて説明する。まず、試験片100sの第1主面F1に、仮想線である第1中心線C1を引いた。第1中心線C1は、試験片100sの長さ方向(
図5中のY軸方向)における中間点を通り、且つ試験片100sの幅方向(
図5中のX軸方向)に平行な仮想線であった。また、試験片100sの第1主面F1に、仮想線である第2中心線C2を引いた。第2中心線C2は、試験片100sの幅方向(
図5中のX軸方向)における中間点を通り、且つ試験片100sの長さ方向(
図5中のY軸方向)に平行な仮想線であった。また、第1補助板21に、仮想線である中心線C21を引いた。第1補助板21の中心線C21は、第1補助板21の幅方向(
図5中のX軸方向)における中間点を通り、且つ第1補助板21の長さ方向(
図5中のY軸方向)に平行な仮想線であった。また、第2補助板22に、仮想線である中心線C22を引いた。第2補助板22の中心線C22は、第2補助板22の幅方向(
図5中のX軸方向)における中間点を通り、且つ第2補助板22の長さ方向(
図5中のY軸方向)に平行な仮想線であった。
【0095】
次に、試験片100sの第1中心線C1に対して線対称となるように、第1補助板21及び第2補助板22を、試験片100sに取り付けた。具体的には、第1主面F1における第1中心線C1に対して一方の側に、第1補助板21を配置し、第1主面F1における第1中心線C1に対して他方の側に、第2補助板22を配置した。このとき、第1中心線C1に対向する第1補助板21の一方縁211は、第1中心線C1と平行であった。試験片100sの第1中心線C1から、第1補助板21の一方縁211までの距離L211は、10mmであった。また、第1補助板21の中心線C21が、試験片100sの第2中心線C2と重なっていた。また、第1中心線C1に対向する第2補助板22の一方縁221は、第1中心線C1と平行であった。試験片100sの第1中心線C1から、第2補助板22の一方縁221までの距離L221は、10mmであった。また、第2補助板22の中心線C22が、試験片100sの第2中心線C2と重なっていた。
【0096】
(テクスチャーアナライザーへの試験片100sの載置)
以下、
図6及び
図7を参照して、テクスチャーアナライザーへの試験片100sの載置方法について説明する。まず、テクスチャーアナライザー(ブルックフィールド社製「CT3」)に、曲げ圧子24を取り付けた。テクスチャーアナライザーの水平台25に、支持台23である第1支持台231及び第2支持台232を載置した。第1支持台231の側面231aは、第2支持台232の側面232aと平行に対向していた。第1支持台231の側面231aと上面231bとがなす辺上に、第1支点P1が位置する。第2支持台232の側面232aと上面232bとがなす辺上に、第2支点P2が位置する。第1支点P1と第2支点P2との距離が、支点間距離Lpである。また、第1支点P1と第2支点P2との間の中点が、支点間中心Cpである。支点間距離Lpは、第1支持台231の側面231aと、第2支持台232の側面232aの間の距離に等しい。第1支持台231の側面231aと、第2支持台232の側面232aの間の距離は、60mmであった。つまり、支点間距離Lpは、60mmであった。
【0097】
試験片100sの第1主面F1が支持台23側に、試験片100sの第2主面F2が曲げ圧子24側に配置されるように、試験片100sを支持台23に載置した。このとき、試験片100sに取り付けられた第1補助板21が、第1支持台231の上面231bと接していた。試験片100sに取り付けられた第2補助板22が、第2支持台232の上面232bと接していた。また、曲げ圧子24の第2円柱部242の外縁242a、試験片100sの第1中心線C1、及び支持台23の支点間中心Cpが、鉛直方向に一直線に配置された。従って、曲げ圧子24を鉛直方向に下降させた際に、曲げ圧子24の第2円柱部242の外縁242aが、試験片100sの第1中心線C1を通るように、試験片100sが配置された。
【0098】
(測定)
テクスチャーアナライザーを、以下の条件に設定した。即ち、曲げ圧子24による試験片100sの変位量(ターゲット値)を、20.0mmに設定した。ホールド時間を、0秒に設定した。センシングが開始される荷重(トリガー負荷)を、20gに設定した。曲げ圧子24の移動速度(テストスピード)を、0.50mm/秒に設定した。なお、曲げ圧子24と接触する試験片100sの幅W100sは、56mmであった。
【0099】
所定強さの測定は、温度25℃且つ相対湿度65%の環境下で実施した。テクスチャーアナライザーが備える曲げ圧子24によって、試験片100sに対して、鉛直方向に荷重Fを付与した。そして、曲げ圧子24によって、試験片100sの第1中心線C1を通るスリッドに沿って、試験片100sを破断した。テクスチャーアナライザーを用い、培地に相当する試験片100sが破断に至るまでに付与される最大荷重Fmax(単位:N)を測定した。2個の試験片100sについて最大荷重Fmaxを測定し、それらの平均値を所定強さ(単位:N)とした。測定された所定強さを、表3に示す。
【0100】
[評価]
苗マット(M-1)~(M-20)の各々を評価するために、以下に示す異常苗発生率の測定試験、抜け率の測定試験、及び振り回し試験を実施した。これらの試験には、200個の播種穴部の各々にキャベツの種子を播種し10日間育苗させた苗マットを使用した。
【0101】
<異常苗発生率の測定試験>
10日間育苗させた苗マットを観察し、出芽した苗の数(出芽苗数)と、出芽した苗のうち根が苗マットの表面(
図3に示す第1主面F1に相当)上に露出している苗の数(露出苗数)とをカウントした。そして、計算式「異常苗発生率=100×露出苗数/出芽苗数」から、異常苗発生率(単位:%)を算出した。算出した異常苗発生率を、表3に示す。異常苗発生率が低いほど、根あばれが発生し難いことを示す。異常苗発生率が10.0%以下である苗マットを、合格と判定した。
【0102】
<抜け率の測定試験>
培地の水分率が60%となるまで、苗マットを含水させた。含水後、苗マットを移植機械に搭載し、移植機械の植付爪によって苗マットから苗を100回掻き取った。1回の掻き取りにつき1個の苗が掻き取られるため、掻き取られた苗数は、100個であった。植付爪によって苗が掻き取られてから植付爪が下死点に到達するまでに、植付爪から落下した苗の数(落下苗数)をカウントした。そして、計算式「抜け率=100×落下苗数/掻き取られた苗数」から、抜け率(単位:%)を算出した。算出した抜け率を、表3に示す。抜け率が低いほど、移植機械が備える植付爪からの苗の落下が少ないことを示す。抜け率が30%以下である苗マットを、合格と判定した。
【0103】
<振り回し試験>
培地の水分率が60%となるまで、苗マットを含水させた。含水後、苗マットの振り回し試験として、次に示す第1試験、第2試験、及び第3試験の各々を実施した。第1試験において、両手で苗マットを持ち上げ、5秒間保持した。第2試験において、片手で苗マットを持ち上げ、5秒間保持した。第3試験において、両手で苗マットを持ち上げ、腕をまっすぐ伸ばした状態で振り子のように腕を振ることで、苗マットを揺動させた。具体的には、前方45度から後方45度まで、1往復/秒の速さで5往復、苗マットを揺動させた。そして、以下の基準で、苗マットに点数を付与した。苗マットに付与された点数を、表3に示す。苗マットに付与された点数が高いほど、持ち上げ時及び揺動時に、マットが崩壊し難いことを示す。また、苗マットに付与された点数が2点以上であれば、実使用可能な程度にマットの崩壊が抑制されていると判断される。
1点:第1試験において、苗マットが崩壊した。
2点:第1試験において、苗マットは崩壊しなかった。しかしながら、第2試験において、苗マットが崩壊した。
3点:第1試験及び第2試験において、苗マットは崩壊しなかった。しかしながら、第3試験において、苗マットが崩壊した。
4点:第1試験、第2試験、及び第3試験において、苗マットが崩壊しなかった。
【0104】
【0105】
表3において用いられる用語の意味は、以下のとおりである。「振り回し」は、振り回し試験において苗マットに付与された点数を示す。
【0106】
表3に示すように、苗マット(M-4)及び(M-17)の所定強さは、520N未満であった。このため、苗マット(M-4)及び(M-17)の抜け率は30%を超えていた。従って、苗マット(M-4)及び(M-17)を使用した場合、移植機械が備える植付爪からの苗の落下が多かった。
【0107】
表3に示すように、苗マット(M-15)及び(M-20)の所定強さは、2600Nを超えていた。このため、苗マット(M-15)及び(M-20)の異常苗発生率は10.0%を超えていた。従って、苗マット(M-15)及び(M-20)を使用した場合、多数の根あばれが発生した。
【0108】
一方、表3に示すように、苗マット(M-1)~(M-3)、(M-5)~(M-14)、(M-16)、(M-18)、及び(M-19)の所定強さは、520N以上2600N以下であった。このため、苗マット(M-1)~(M-3)、(M-5)~(M-14)、(M-16)、(M-18)、及び(M-19)の抜け率は30%以下であり、異常苗発生率は10.0%以下であった。従って、これらの苗マットを包含する本発明の苗マットは、移植機械が備える植付爪からの苗の落下が少なく、且つ根あばれの発生が少ないと判断される。
【0109】
また、振り回し試験における苗マット(M-1)~(M-3)、(M-5)~(M-14)、(M-16)、(M-18)、及び(M-19)に付与された点数は2点以上であった。従って、これらの苗マットを包含する本発明の苗マットは、実使用可能な程度にマットの崩壊が抑制されていると判断される。
本発明に係る苗マットは、例えば、農地に植付ける苗を育苗するための苗マットとして利用できる。本発明に係る苗マットの植付け方法は、例えば、苗マットで育苗された苗を農地に植付けるために利用できる。
本発明の一局面によれば、苗マットは、培地を有する。前記培地は、有機バインダーを少なくとも含有する。前記培地の水分率が60%であるときの前記培地の曲げ最大荷重は、520g重以上2600g重以下である。
所定強さの測定は、温度25℃且つ相対湿度65%の環境下で実施した。テクスチャーアナライザーが備える曲げ圧子24によって、試験片100sに対して、鉛直方向に荷重Fを付与した。そして、曲げ圧子24によって、試験片100sの第1中心線C1を通るスリッドに沿って、試験片100sを破断した。テクスチャーアナライザーを用い、培地に相当する試験片100sが破断に至るまでに付与される最大荷重Fmax(単位:g重)を測定した。2個の試験片100sについて最大荷重Fmaxを測定し、それらの平均値を所定強さ(単位:g重)とした。測定された所定強さを、表3に示す。