(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102630
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】試料ホルダー、試料ホルダーセット、および試料作製方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20240724BHJP
G02B 21/26 20060101ALI20240724BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20240724BHJP
B23Q 3/04 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01J37/20 A
G02B21/26
H01J37/305 A
B23Q3/04
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006643
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】根岸 勉
(72)【発明者】
【氏名】森 忍
【テーマコード(参考)】
2H052
5C101
【Fターム(参考)】
2H052AD13
5C101AA34
5C101FF22
5C101FF34
5C101FF46
5C101FF58
(57)【要約】
【課題】試料の傾きを調整できる試料ホルダーを提供する。
【解決手段】試料ホルダー100は、ホルダー本体10と、試料Sが固定される試料台20と、試料台20をホルダー本体10に摺動可能に押圧する押圧部材としての第1プランジャ30および第2プランジャ40と、を含み、試料台20には、貫通孔24が設けられ、試料台20は、貫通孔24に挿入された調整治具2を傾けることによって、ホルダー本体10に対して傾く。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダー本体と、
試料が固定される試料台と、
前記試料台を前記ホルダー本体に摺動可能に押圧する押圧部材と、
を含み、
前記試料台には、貫通孔が設けられ、
前記試料台は、前記貫通孔に挿入された棒状部材を傾けることによって、前記ホルダー本体に対して傾く、試料ホルダー。
【請求項2】
請求項1において、
前記試料台は、第1面と、前記第1面とは反対方向を向く第2面と、前記第1面および前記第2面と直交する第3面と、を有し、
前記貫通孔は、前記試料台の前記第1面と前記第2面との間を貫通し、
前記押圧部材は、前記試料台の前記第3面を押圧する、試料ホルダー。
【請求項3】
請求項1において、
前記押圧部材は、前記試料台を前記ホルダー本体に押圧する力が可変である、試料ホルダー。
【請求項4】
請求項1において、
前記押圧部材は、第1プランジャおよび第2プランジャを含む、試料ホルダー。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1プランジャは、
前記試料台に接触する第1接触部材と、
前記第1接触部材に押圧力を付与する第1バネと、
外周面に雄ネジが形成され、内部に前記第1バネを収容する第1シャフトと、
を有し、
前記第2プランジャは、
前記試料台に接触する第2接触部材と、
前記第2接触部材に押圧力を付与する第2バネと、
外周面に雄ネジが形成され、内部に前記第2バネを収容する第2シャフトと、
を有し、
前記第1シャフトに形成された雄ネジは、前記ホルダー本体に設けられた第1孔の内面に形成された雌ネジに螺合され、
前記第2シャフトに形成された雄ネジは、前記ホルダー本体に設けられた第2孔の内面に形成された雌ネジに螺合され、
前記第1プランジャを回転させることによって、前記第1プランジャが前記試料台を前記ホルダー本体に押圧する力が変化し、
前記第2プランジャを回転させることによって、前記第2プランジャが前記試料台を前記ホルダー本体に押圧する力が変化する、試料ホルダー。
【請求項6】
請求項4において、
前記第1プランジャと前記第2プランジャを同時に移動させて、前記第1プランジャおよび前記第2プランジャが前記試料台を前記ホルダー本体に押圧する力を同時に変化させる移動機構を含む、試料ホルダー。
【請求項7】
請求項1において、
前記貫通孔の内面には、雌ネジが形成され、
前記棒状部材には、雄ネジが形成され、
前記試料台は、前記貫通孔に挿入された前記棒状部材を回転させることによって、前記棒状部材の軸に沿って移動する、試料ホルダー。
【請求項8】
請求項1において、
前記ホルダー本体は、イオンビーム加工装置の遮蔽板と機械研磨装置用の研磨目標治具が交換可能に装着される装着部を有している、試料ホルダー。
【請求項9】
請求項1において、
前記ホルダー本体には、前記試料台の移動範囲を制限するガイドが設けられている、試料ホルダー。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の試料ホルダーと、
前記棒状部材と、
を含む、試料ホルダーセット。
【請求項11】
試料台に試料を固定する工程と、
前記試料が固定された前記試料台を、押圧部材でホルダー本体に摺動可能に押圧する工程と、
前記試料台に設けられた貫通孔に棒状部材を挿入し、前記棒状部材を傾けることによって前記試料台の傾きを調整する工程と、
を含む、試料作製方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記試料台に固定された前記試料を機械研磨装置で加工する工程と、
前記試料台に固定された前記試料をイオンビーム加工装置で加工する工程と、
を含む、試料作製方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記イオンビーム加工装置で加工する工程の前に、前記ホルダー本体に前記試料の一部を遮蔽する遮蔽板を装着する工程を含む、試料作製方法。
【請求項14】
請求項12において、
前記機械研磨装置で加工する工程の前に、前記ホルダー本体に前記試料の研磨量の目印を保持するための研磨目標治具を装着する工程を含む、試料作製方法。
【請求項15】
請求項11において、
前記試料台の傾きを調整する工程では、前記押圧部材が前記試料台を第1押圧力で押圧し、
前記試料を機械研磨装置で加工する工程では、前記押圧部材が前記試料台を第2押圧力で押圧し、
前記第1押圧力は、前記第2押圧力よりも小さい、試料作製方法。
【請求項16】
請求項11において、
前記貫通孔に前記棒状部材を挿入し、前記棒状部材を回転させることによって前記貫通孔の内面に形成された雌ネジに前記棒状部材に形成された雄ネジを螺合させ、前記棒状部材の軸に沿って前記試料台を移動させる工程を含む、試料作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダー、試料ホルダーセット、および試料作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンビームを用いて試料を加工するイオンビーム加工装置として、試料の断面を加工するためのクロスセクションポリッシャ(登録商標)や、薄膜試料を作製するためのイオンスライサ(登録商標)などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、試料の一部を遮蔽板で覆い、試料の遮蔽板で覆われていない部分をイオンビームで切削して、試料の断面を加工する試料加工装置が開示されている。
【0004】
イオンビーム加工装置による断面試料作製の前処理として機械研磨が行われる場合がある。断面試料作製の前処理として行われる機械研磨では、例えば、試料を、数百μm程度研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イオンビーム加工装置や機械研磨装置で試料を加工する場合、試料の傾きを調整する。例えば、機械研磨装置で試料を加工する場合、試料の加工目標となる面が研磨面に対して平行になるように、試料の表面の傾きを調整する。また、例えば、イオンビーム加工装置を用いて試料を加工する場合、遮蔽板に対する試料の傾きを調整する。したがって、試料の傾きを調整できる試料ホルダーが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る試料ホルダーの一態様は、
ホルダー本体と、
試料が固定される試料台と、
前記試料台を前記ホルダー本体に摺動可能に押圧する押圧部材と、
を含み、
前記試料台には、貫通孔が設けられ、
前記試料台は、前記貫通孔に挿入された棒状部材を傾けることによって、前記ホルダー本体に対して傾く。
【0008】
このような試料ホルダーでは、試料台の貫通孔に挿入された棒状部材を傾けることによって、試料台の傾きを調整できる。したがって、このような試料ホルダーでは、試料の傾きを調整できる。
【0009】
本発明に係る試料ホルダーセットの一態様は、
上記試料ホルダーと、
上記棒状部材と、
を含む。
【0010】
本発明に係る試料作製方法の一態様は、
試料台に試料を固定する工程と、
前記試料が固定された前記試料台を、押圧部材でホルダー本体に摺動可能に押圧する工程と、
前記試料台に設けられた貫通孔に棒状部材を挿入し、前記棒状部材を傾けることによって前記試料台の傾きを調整する工程と、
を含む。
【0011】
このような試料作製方法では、試料台の貫通孔に挿入された棒状部材を傾けることによって、試料台の傾きを調整できる。したがって、このような試料作製方法では、試料の傾きを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図4】第1プランジャおよび第2プランジャを模式的に示す断面図。
【
図5】第1実施形態に係る試料ホルダーを用いた試料作製方法の一例を示すフローチャート。
【
図20】第2実施形態に係る試料ホルダーの構成を示す図。
【
図21】第2実施形態に係る試料ホルダーの構成を示す図。
【
図22】第2実施形態に係る試料ホルダーの構成を示す図。
【
図23】第2実施形態に係る試料ホルダーの構成を示す図。
【
図24】第3実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す斜視図。
【
図25】第3実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
【
図26】第3実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 第1実施形態
1.1. 試料ホルダー
まず、第1実施形態に係る試料ホルダーについて図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る試料ホルダー100を模式的に示す斜視図である。
図1では、ホルダー本体10がイオンビーム加工装置用のアダプター8に取り付けられている状態を図示
している。
【0015】
試料ホルダー100は、機械研磨装置とイオンビーム加工装置に共用可能な試料ホルダーである。試料ホルダー100は、
図1に示すように、ホルダー本体10と、試料台20と、第1プランジャ30と、第2プランジャ40と、を含む。
【0016】
図2は、試料ホルダー100のホルダー本体10を模式的に示す図である。ホルダー本体10は、試料台20を保持する。ホルダー本体10は、底部11と、底部11を囲む壁部13と、を有している。底部11と壁部13が形成する凹部12に試料台20が配置される。
【0017】
ホルダー本体10には、ガイド14が設けられている。ガイド14は、試料台20の移動範囲を制限する。ガイド14は、第1ガイドレール14aと、第2ガイドレール14bと、を有している。第1ガイドレール14aおよび第2ガイドレール14bは、壁部13から突き出した突出部である。
【0018】
ホルダー本体10は、イオンビーム加工装置用の遮蔽板6と機械研磨装置用の研磨目標治具が交換可能に装着される装着部16を有している。
図1に示す例では、装着部16には、遮蔽板6が装着されている。装着部16には、磁石18が埋め込まれており、磁石18によって遮蔽板6および研磨目標治具を固定する。そのため、装着部16に遮蔽板6と研磨目標治具を、交換可能に装着できる。なお、装着部16が遮蔽板6と研磨目標治具を交換可能に装着する手段は、磁石18に限定されず、ネジやクリップなど他の手段を用いてもよい。
【0019】
図3は、試料台20を模式的に示す図である。試料台20には、試料Sが固定される。試料Sは、例えば、固定用のワックスによって試料台20の試料載置面22に固定される。なお、試料台20に試料Sを固定する方法は特に限定されない。
【0020】
試料台20には、試料台20を貫通する貫通孔24が設けられている。貫通孔24は、試料台20の第1面23aと第2面23bとの間を貫通している。第1面23aおよび第2面23bは、試料載置面22に接続され、試料載置面22に直交する面である。第1面23aおよび第2面23bは、互いに反対方向を向く面、すなわち、表裏の関係にある面である。貫通孔24には、試料台20の位置を調整するための調整治具2が挿入される。調整治具2は、棒状部材であり、外周面に雄ネジが形成されている。貫通孔24には、調整治具2の雄ネジに螺合する雌ネジが形成されている。
【0021】
試料台20には、ホルダー本体10に設けられた第1ガイドレール14aに係合する第1溝26a、および第2ガイドレール14bに係合する第2溝26bが設けられている。第1ガイドレール14aは、第1溝26aの対向する内面27aと内面27cとの間を通る。第2ガイドレール14bは、第2溝26bの対向する内面27bと内面27dとの間を通る。そのため、試料台20の移動範囲が制限される。試料台20の形状は、
図3に示すように、例えば、H型である。
【0022】
第1プランジャ30および第2プランジャ40は、試料台20をホルダー本体10に摺動可能に押圧する。第1プランジャ30および第2プランジャ40は、試料台20の第3面23cを押圧する。第1プランジャ30および第2プランジャ40が第3面23cを押圧することによって、試料台20の第1溝26aの内面27aがホルダー本体10の第1ガイドレール14aの側面15aに押し当てられ、試料台20の第2溝26bの内面27bがホルダー本体10の第2ガイドレール14bの側面15bに押し当てられる。
【0023】
図4は、第1プランジャ30および第2プランジャ40を模式的に示す断面図である。
【0024】
第1プランジャ30は、第1接触部材32と、第1バネ34と、第1シャフト36と、を含む。第1接触部材32は、試料台20の第3面23cに接触する。第1接触部材32は、例えば、金属ボールや、樹脂ボールである。第1バネ34は、第1接触部材32に押圧力を付与する。第1バネ34は、例えば、圧縮コイルバネである。第1シャフト36は、内部に第1バネ34を収容している。第1シャフト36の外周面には、雄ネジが形成されている。
【0025】
第1プランジャ30は、ホルダー本体10の壁部13に設けられた第1孔17aに挿入されている。第1孔17aの内面には雌ネジが形成されており、第1シャフト36の外周面に形成された雄ネジと螺合する。そのため、第1プランジャ30を締めることによって(すなわち、時計回りに回転させることによって)、第1バネ34が圧縮され、第1プランジャ30が試料台20を押圧する力が大きくなる。また、第1プランジャ30を緩めることによって(すなわち、反時計回りに回転させることによって)、第1バネ34が伸張し、第1プランジャ30が試料台20を押圧する力が小さくなる。
【0026】
第2プランジャ40は、第2接触部材42と、第2バネ44と、第2シャフト46と、を含む。第2接触部材42は、試料台20の第3面23cに接触する。第2接触部材42は、例えば、金属ボールや、樹脂ボールである。第2バネ44は、第2接触部材42に押圧力を付与する。第2バネ44は、例えば、圧縮コイルバネである。第2シャフト46は、内部に第2バネ44を収容している。第2シャフト46の外周面には、雄ネジが形成されている。
【0027】
第2プランジャ40は、ホルダー本体10の壁部13に設けられた第2孔17bに挿入されている。第2孔17bの内面には雌ネジが形成されており、第2シャフト46の外周面に形成された雄ネジと螺合する。そのため、第2プランジャ40を締めることによって、第2バネ44が圧縮され、第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が大きくなる。また、第2プランジャ40を緩めることによって、第2バネ44が伸張し、第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が小さくなる。このように、第1プランジャ30および第2プランジャ40を用いることによって、試料台20をホルダー本体10に押圧する力を可変にできる。
【0028】
1.2. 試料作製方法
次に、試料ホルダー100を用いた試料作製方法について説明する。
図5は、試料ホルダー100を用いた試料作製方法の一例を示すフローチャートである。
図6~
図19は、試料ホルダー100を用いた試料作製工程を説明するための図である。ここでは、走査電子顕微鏡用の断面試料を作製する場合について説明する。
【0029】
(1)試料台に試料を固定する(S10)
図6に示すように、試料台20の試料載置面22に試料Sを固定する。試料Sは、例えば、固定用のワックスで試料台20に固定される。試料Sの端部が、試料台20から突き出るように試料Sを固定する。試料Sの試料台20から突き出た部分の長さは、例えば、2mm程度である。
【0030】
試料台20に試料Sを固定した後、試料台20の貫通孔24に、調整治具2を挿入する。
図7は、調整治具2を模式的に示す図である。調整治具2は、
図7に示すように、棒状部2aと、把持部2bと、を有している。棒状部2aの根元には雄ネジが形成されており、棒状部2aの先端部には雄ネジが形成されていない。棒状部2aの先端部に雄ネジを形成しないことにより、調整治具2を貫通孔24に挿入する際に、調整治具2を回転させる
回数を減らすことができる。
【0031】
図6に示すように、試料台20の第1面23a側から貫通孔24に調整治具2を挿入し、調整治具2を時計回りに回転させることによって、試料台20に調整治具2が固定される。このとき、調整治具2の棒状部2aの先端が、貫通孔24の第2面23bの開口から突き出るまで調整治具2を貫通孔24に挿入する。
【0032】
(2)試料台をホルダー本体に取り付ける(S20)
図8に示すように、ホルダー本体10に試料台20を取り付ける。具体的には、まず、試料台20をホルダー本体10の凹部12に配置する。このとき、調整治具2を介して試料台20を保持できるため、試料台20に直接触れることなく、試料台20を凹部12に配置できる。また、試料台20を凹部12に配置するときには、試料台20の第1溝26aを第1ガイドレール14aに係合させ、かつ、試料台20の第2溝26bを第2ガイドレール14bに係合させる。これにより、試料台20の移動範囲を制限できる。このように、ガイド14によって試料台20を凹部12に案内できるため、試料Sがホルダー本体10に接触して試料Sが破損することを防ぐことができる。
【0033】
次に、
図9に示すように、試料Sが固定された試料台20を、第1プランジャ30および第2プランジャ40でホルダー本体10に押圧する。試料台20の第3面23cを第1プランジャ30および第2プランジャ40で押圧することによって、試料台20の第1溝26aの内面27aがホルダー本体10の第1ガイドレール14aの側面15aに押し当てられ、試料台20の第2溝26bの内面27bがホルダー本体10の第2ガイドレール14bの側面15bに押し当てられる。なお、
図9では、便宜上、貫通孔24に挿入された調整治具2の図示を省略している。
【0034】
このとき、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力を、試料台20がホルダー本体10を摺動可能な力とする。これにより、内面27aと側面15aを試料台20が摺動する摺動面とし、内面27bと側面15bを試料台20が摺動する摺動面とすることができる。したがって、試料台20は、ホルダー本体10に対して摺動可能となる。
【0035】
(3)研磨目標治具をホルダー本体に取り付ける(S30)
図9に示すように、研磨目標治具3をホルダー本体10の装着部16に装着する。
図10は、研磨目標治具3を模式的に示す斜視図である。研磨目標治具3は、例えば、機械研磨装置で試料Sを研磨するときに試料Sの研磨量の目印となる目標物を保持するための治具である。例えば、研磨目標治具3の表面に防水テープ4を貼り、防水テープ4上に油性インク等で目印をつける。研磨工程において、目印が消えたら研磨を終了する。なお、目印は、防水テープ4に描かれた目印に限定されない。研磨目標治具3には、爪部3aおよび爪部3bが設けられている。
【0036】
図11に示すように、装着部16は、第1載置面19aと、2つの第2載置面19bと、を有している。第1載置面19aは、2つの第2載置面19bの間に位置している。第1載置面19aと各第2載置面19bとの間には段差があり、2つの第2載置面19bは第1載置面19aの上段に位置している。第1載置面19aには、研磨目標治具3が載置される。第1載置面19aに載置された研磨目標治具3は、2つの段差と、2つの爪部3a,3bによって固定される。なお、
図11では、便宜上、貫通孔24に挿入された調整治具2の図示を省略している。
【0037】
(4)試料台の位置を調整する(S40)
図12に示すように、試料台20の貫通孔24に挿入された調整治具2を用いて試料台
20の位置を調整する。具体的には、調整治具2を傾けることによって試料台20の傾きを調整する。これにより、試料Sの傾きを調整できる。例えば、ホルダー本体10に対して試料Sの加工位置が平行になるように試料Sの傾きを調整する。また、調整治具2を回転させることによって、調整治具2に形成された雄ネジに貫通孔24に形成された雌ネジを螺合させ、調整治具2の軸に沿って試料台20を移動させる。これにより、ホルダー本体10からの試料Sの突き出し量を調整できる。試料Sの突き出し量を調整することによって、試料Sの研磨量を調整できる。
【0038】
図13は、
図9のXIII-XIII線断面図である。
図13に示すように、第1ガイドレール14aと第2ガイドレール14bとの間の距離Dは、第1溝26aと第2溝26bとの間の試料台20の幅Wよりも大きい。すなわち、試料台20と第1ガイドレール14aとの間、および試料台20と第2ガイドレール14bとの間には、隙間ができる。そのため、ホルダー本体10に対して試料台20を傾けることができる。隙間の大きさは、例えば、1mm程度である。試料台20は、例えば、-5°から+5°の範囲で傾けることができる。
【0039】
調整治具2の先端は、ホルダー本体10の底面11a(底部11)に突き当たる。試料台20を傾けるときは、調整治具2の先端を支点として調整治具2を傾ける。このとき、調整治具2の先端と底面11aは擦れる。そのため、調整治具2の先端は、曲面が好ましい。また、底面11aは、摩擦係数が小さい材料が好ましい。例えば、底部11の全体を摩擦係数が小さい材料にしてもよいし、底部11の調整治具2が当たる部分およびその近傍のみを摩擦係数が小さい材料にしてもよい。また、例えば、底部11の材質をステンレス鋼とし、調整治具2の先端部を真鍮としてもよい。また、例えば、底部11の調整治具2の先端が当たる部分のみをステンレス鋼とし、底部11のその他の部分を銅またはアルミニウムなどの金属としてもよい。これにより、底部11の調整治具2が当たる部分の摩擦係数を小さくしつつ、ホルダー本体10の放熱性を向上できる。
【0040】
調整治具2を回転させることによって、調整治具2に形成された雄ネジに貫通孔24に形成された雌ネジが螺合するため、試料台20は、調整治具2の中心軸に沿って移動する。これにより、ホルダー本体10に対する試料Sの突き出し量を調整できる。
【0041】
上述したように、試料台20は、第1プランジャ30および第2プランジャ40によってホルダー本体10に摺動可能な力で押圧されている。そのため、試料台20の傾きおよび試料台20の突き出し量の調整を行うときには、常に、内面27aと側面15aが接触して摺動可能な状態であり、内面27bと側面15bが接触して摺動可能な状態である。したがって、試料台20を正確に位置決めできる。
【0042】
試料台20の位置を調整した後、試料台20をホルダー本体10に固定する。第1プランジャ30および第2プランジャ40を締めることによって、試料台20をホルダー本体10に固定する。第1プランジャ30を締めることによって、第1バネ34が圧縮され、第1プランジャ30が試料台20を押圧する力が大きくなる。同様に、第2プランジャ40を締めることによって、第2バネ44が圧縮され、第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が大きくなる。これにより、試料台20をホルダー本体10に固定できる。
【0043】
試料台20がホルダー本体10に固定された後、調整治具2を反時計回りに回転させて調整治具2を試料台20から取り外す。
【0044】
(5)機械研磨装置で試料を研磨する(S50)
図14に示すように、試料ホルダー100を機械研磨装置に取り付け、試料Sを研磨する。具体的には、まず、試料ホルダー100を機械研磨装置のホルダー5に取り付ける。
機械研磨装置では、ホルダー5を加圧しながら、研磨シートP上で試料Sを往復運動させることによって、試料Sを研磨する。研磨加圧は、例えば、200gである。研磨シートPの粒度は、例えば、30μm程度である。なお、研磨の条件は、試料Sの材質などによって適宜変更される。機械研磨装置としては、例えば、ハンディラップ(日本電子株式会社製)を用いることができる。機械研磨は、研磨シートPなどを用いた物理研磨をいう。
【0045】
ここでは、機械研磨装置を用いて試料Sを研磨する場合について説明したが、図示はしないが、試料ホルダー100を手動で研磨するためのホルダーに取り付け、手動で研磨シートP上で試料Sを往復運動させて、試料Sを研磨してもよい。
【0046】
研磨終了後、試料ホルダー100をホルダー5から取り外す。そして、試料ホルダー100を流水で洗浄し、エアブロー等で水分を飛ばして乾燥させる。また、装着部16から研磨目標治具3を取り外す。
【0047】
(6)遮蔽板をホルダー本体に取り付ける(S60)
図15に示すように、遮蔽板6をホルダー本体10の装着部16に装着する。遮蔽板6は、イオンビーム加工装置において、試料Sの一部を遮蔽するための部材である。遮蔽板6は、2つの第2載置面19bに跨るように配置される。そのため、遮蔽板6の配置の自由度が高い。遮蔽板6は、試料Sの表面に接するように配置される。そのため、試料Sの厚さに合わせて、遮蔽板6の位置を調整する。
【0048】
遮蔽板6を装着部16に装着した後、ホルダー本体10に固定された試料台20の貫通孔24に、調整治具2を挿入する。
【0049】
(7)試料台の位置を調整する(S70)
第1プランジャ30および第2プランジャ40を緩めて、試料台20をホルダー本体10に対して摺動可能とし、試料台20の位置を調整する。本工程S70は、上述した試料台20の位置を調整する工程S40と同様に行われる。すなわち、調整治具2を傾けることによって試料台20の傾きを調整する。これにより、遮蔽板6のエッジEに試料Sの加工位置(断面の位置)を合わせることができる。また、貫通孔24に調整治具2を挿入し、調整治具2を回転させることによって貫通孔24の内面に形成された雌ネジに調整治具2に形成された雄ネジを螺合させ、調整治具2の軸に沿って試料台20を移動させる。これにより、試料Sの遮蔽板6からの突き出し量を調整できる。
【0050】
ここでは、
図16に示すように、顕微鏡7で試料Sおよび遮蔽板6を観察しながら試料台20の位置を調整する。顕微鏡7は、例えば、光学顕微鏡や、実体顕微鏡である。顕微鏡7では、長焦点型のレンズを使い、顕微鏡7の対物レンズと試料ホルダー100との間の距離を長くして、調整作業を行う。観察倍率は、例えば、数十倍から数百倍の範囲である。
【0051】
図17および
図18に示すように、試料ホルダー100には、イオンビーム加工装置の試料ステージに試料ホルダー100を取り付けるためのアダプター8を介して、ホルダースタンド9に取り付けられている。ホルダースタンド9は、試料ホルダー100を安定して顕微鏡7下で観察するためのものである。ここでは、
図17に示すように、遮蔽板6越しに試料Sを観察し、遮蔽板6のエッジEの位置に試料Sの加工位置を合わせる。また、
図17に示す遮蔽板6越しに試料Sを観察している状態からホルダースタンド9を90°倒して、
図18に示す遮蔽板6と試料Sとの間の距離が確認できる状態として、遮蔽板6と試料Sとの間の距離を調整する。ホルダースタンド9は、90°倒しても試料Sの高さHが変わらない。したがって、
図17に示す遮蔽板6越しに試料Sを観察する状態からホルダースタンド9を倒して
図18に示す遮蔽板6と試料Sとの間の距離が確認できる状態
としても、顕微鏡7の焦点ずれを小さくできる。
【0052】
試料台20の位置の調整は、上述したように、調整治具2を用いて行うことができるため、顕微鏡7下であってもユーザーは容易に試料台20の位置を調整できる。
【0053】
試料台20の位置を調整した後、第1プランジャ30および第2プランジャ40を締めて、試料台20をホルダー本体10に固定する。試料台20がホルダー本体10に固定された後、調整治具2を反時計回りに回転させて調整治具2を試料台20から外す。また、ホルダースタンド9から試料ホルダー100が取り付けられたアダプター8を取り外す。
【0054】
なお、上述した試料台20の位置を調整する工程S40を、本工程S70と同様に顕微鏡下で行ってもよい。また、本工程S70を顕微鏡下で行わなくてもよい。
【0055】
(8)イオンビーム加工装置で試料を加工する(S80)
図19に示すように、試料ホルダー100に保持された試料Sをイオンビーム加工装置で加工する。まず、試料ホルダー100が取り付けられたアダプター8をイオンビーム加工装置の試料ステージに取り付ける。次に、試料Sの一部が遮蔽板6で覆われた状態でイオンビームIBを照射し、試料Sの断面を加工する。
【0056】
以上の工程により、走査電子顕微鏡用の断面試料を作製できる。
【0057】
1.3. 試料ホルダーセット
試料ホルダーセットは、試料ホルダー100と、調整治具2と、研磨目標治具3と、遮蔽板6と、アダプター8、ホルダースタンド9と、を含む。このような試料ホルダーセットを用いることによって、上述したように、走査電子顕微鏡用の断面試料を容易に作製できる。
【0058】
1.4. 効果
試料ホルダー100は、ホルダー本体10と、試料Sが固定される試料台20と、試料台20をホルダー本体10に摺動可能に押圧する押圧部材としての第1プランジャ30および第2プランジャ40と、を含む。また、試料台20には貫通孔24が設けられ、試料台20は、貫通孔24に挿入された調整治具2を傾けることによって、ホルダー本体10に対して傾く。そのため、試料ホルダー100では、試料台20の傾きを調整できる。したがって、試料ホルダー100では、試料Sの傾きを調整できる。また、試料ホルダー100では、貫通孔24に挿入された調整治具2を傾けることによって試料台20の傾きを調整できるため、試料台20の傾きを調整する機構を、簡易な構成で実現できる。
【0059】
試料ホルダー100では、試料台20は、第1面23aと、第1面23aとは反対方向を向く第2面23bと、第1面23aおよび第2面23bと直交する第3面23cと、を有している。また、貫通孔24は、試料台20の第1面23aと第2面23bとの間を貫通し、第1プランジャ30および第2プランジャ40は、試料台20の第3面23cを押圧する。そのため、試料ホルダー100では、試料台20をホルダー本体10に押圧しながら、試料台20をホルダー本体10に対して傾けることができる。
【0060】
試料ホルダー100では、第1プランジャ30および第2プランジャ40は、試料台20をホルダー本体10に押圧する力が可変である。そのため、試料台20の位置を調整する場合には、試料台20をホルダー本体10に摺動可能とし、機械研磨装置やイオンビーム加工装置で試料Sを加工する場合には試料台20をホルダー本体10に固定できる。
【0061】
試料ホルダー100では、試料台20を押圧する押圧部材は、第1プランジャ30およ
び第2プランジャ40を含む。このように、2つのプランジャを用いることによって、試料台20をホルダー本体10に固定するときに、試料台20の位置がずれることを防ぐことができる。例えば、プランジャが1つの場合、プランジャを締めるときに、当該プランジャの回転によって試料台20が回転してしまう。これに対して、プランジャが2つの場合、一方のプランジャを締めるときに、一方のプランジャが回転することによる試料台20の回転を他方のプランジャによって抑えることができる。したがって、試料台20をホルダー本体10に固定するときに、試料台20の位置がずれることを防ぐことができる。
【0062】
試料ホルダー100では、第1プランジャ30は、試料台20に接触する第1接触部材32と、第1接触部材32に押圧力を付与する第1バネ34と、外周面に雄ネジが形成され、内部に第1バネ34を収容する第1シャフト36と、を有している。また、第2プランジャ40は、試料台20に接触する第2接触部材42と、第2接触部材42に押圧力を付与する第2バネ44と、外周面に雄ネジが形成され、内部に第2バネ44を収容する第2シャフト46と、を有している。また、第1シャフト36に形成された雄ネジは、ホルダー本体10に設けられた第1孔17aの内面に形成された雌ネジに螺合され、第2シャフト46に形成された雄ネジは、ホルダー本体10に設けられた第2孔17bの内面に形成された雌ネジに螺合されている。また、第1プランジャ30を回転させることによって、第1プランジャ30が試料台20をホルダー本体10に押圧する力が変化し、第2プランジャ40を回転させることによって、第2プランジャ40が試料台20をホルダー本体10に押圧する力が変化する。そのため、試料ホルダー100では、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力を可変にできる。
【0063】
試料ホルダー100では、試料台20の貫通孔24の内面には雌ネジが形成され、調整治具2には雄ネジが形成され、試料台20は、貫通孔24に挿入された調整治具2を回転させることによって、調整治具2の軸に沿って移動する。そのため、試料ホルダー100では、調整治具2の軸に沿った試料台20の位置を調整できる。したがって、試料ホルダー100では、例えば、試料Sの遮蔽板6からの突き出し量を調整できる。
【0064】
試料ホルダー100では、ホルダー本体10は、イオンビーム加工装置の遮蔽板6と機械研磨装置用の研磨目標治具3が交換可能に装着される装着部16を有している。そのため、試料ホルダー100を機械研磨装置とイオンビーム加工装置に共用の試料ホルダーとして用いることができる。
【0065】
試料ホルダー100では、ホルダー本体10には、試料台20の移動範囲を制限するガイド14が設けられている。そのため、試料ホルダー100では、調整治具2を用いて試料台20の傾斜を容易に調整できる。
【0066】
試料ホルダーセットは、試料ホルダー100と、調整治具2と、を含む。そのため、試料ホルダーセットでは、調整治具2を用いて試料台20の傾きおよび試料台20の突き出し量を調整できる。
【0067】
第1実施形態における試料作製方法は、試料台20に試料Sを固定する工程と、試料Sが固定された試料台20を第1プランジャ30および第2プランジャ40でホルダー本体10に摺動可能に押圧する工程と、試料台20に設けられた貫通孔24に調整治具2を挿入し、調整治具2を傾けることによって試料台20の傾きを調整する工程と、を含む。そのため、第1実施形態における試料作製方法では、ホルダー本体10に取り付けられた試料台20の傾きを調整できる。
【0068】
第1実施形態における試料作製方法は、試料台20に固定された試料Sを機械研磨装置で加工する工程と、試料台20に固定された試料Sをイオンビーム加工装置で加工する工
程と、を含む。このように、第1実施形態における試料作製方法では、試料ホルダー100を機械研磨装置とイオンビーム加工装置で共用できる。
【0069】
第1実施形態における試料作製方法は、イオンビーム加工装置で加工する工程の前に、ホルダー本体10に試料Sの一部を遮蔽する遮蔽板6を装着する工程を含む。そのため、第1実施形態における試料作製方法では、遮蔽板6で試料Sの一部を覆った状態で、試料Sにイオンビームを照射できる。
【0070】
第1実施形態における試料作製方法は、機械研磨装置で加工する工程の前に、ホルダー本体10に試料Sの研磨量の目印を保持する研磨目標治具3を装着する工程を含む。そのため、第1実施形態における試料作製方法では、機械研磨において試料Sの研磨量を把握できる。
【0071】
第1実施形態における試料作製方法において、試料台20の傾きを調整する工程では、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を第1押圧力で押圧する。また、試料Sを機械研磨装置で加工する工程では、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を第2押圧力で押圧する。また、第1押圧力は、第2押圧力よりも小さい。そのため、第1実施形態における試料作製方法では、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を第1押圧力で押圧することによって試料台20をホルダー本体10に摺動可能とし、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を第2押圧力で押圧することによって試料台20をホルダー本体10に固定できる。
【0072】
第1実施形態における試料作製方法は、貫通孔24に調整治具2を挿入し、調整治具2を回転させることによって貫通孔24の内面に形成された雌ネジに調整治具2に形成された雄ネジを螺合させ、調整治具2の軸に沿って試料台20を移動させる工程を含む。そのため、第1実施形態における試料作製方法では、試料台20のホルダー本体10に対する突き出し量を調整できる。
【0073】
1.5. 変形例
1.5.1. 第1変形例
上述した第1実施形態では、機械研磨装置とイオンビーム加工装置を用いて試料を加工する場合について説明したが、機械研磨装置を用いて研磨する前に、試料を粗研磨してもよい。粗研磨では、
図5に示す機械研磨装置で試料を加工する工程S50における研磨よりも試料Sを粗く研磨する。試料Sを粗研磨する工程は、例えば、試料台20に試料Sを固定する工程S10の後、試料台20をホルダー本体10に取り付ける工程S20の前に行う。すなわち、粗研磨は、試料台20をホルダー本体10に取り付けないで行う。これにより、粗研磨によりホルダー本体10に付着した汚れが機械研磨装置やイオンビーム加工装置に持ち込まれることを防ぐことができる。
【0074】
1.5.2. 第2変形例
上述した第1実施形態では、機械研磨装置とイオンビーム加工装置の両方を用いて走査電子顕微鏡用の試料を作製する場合について説明したが、機械研磨装置を用いずにイオンビーム加工装置のみを用いて試料を作製してもよい。この場合、クリップや、板バネ等を用いて、試料Sを試料台20に固定してもよい。これにより、試料台20に試料Sを簡便に固定できる。このように、試料台20に試料Sを固定する手段は、試料Sの形状や、試料作製に用いる装置に応じて適宜変更可能である。
【0075】
2. 第2実施形態
2.1. 試料ホルダー
次に、第2実施形態に係る試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図2
0~
図23は、第2実施形態に係る試料ホルダー200の構成を示す図である。なお、
図20および
図21は、第1プランジャ30および第2プランジャ40によって、試料台20がホルダー本体10に固定されている状態を図示している。
図22および
図23は、第1プランジャ30および第2プランジャ40によって試料台20がホルダー本体10に摺動可能な力で押圧されている状態を図示している。以下、第2実施形態に係る試料ホルダー200において、第1実施形態に係る試料ホルダー100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0076】
試料ホルダー200は、
図20~
図23に示すように、第1プランジャ30と第2プランジャ40を同時に移動させる移動機構210を含む。移動機構210が第1プランジャ30および第2プランジャ40を同時に移動させることによって、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力を同時に変化させることができる。
【0077】
移動機構210は、ベース212と、ネジ214と、レバー216と、第1ストッパー218aと、第2ストッパー218bと、を含む。ベース212には、第1プランジャ30および第2プランジャ40が固定されている。ベース212には、貫通孔213aと貫通孔213bが形成されている。貫通孔213aには、第1プランジャ30の第1シャフト36に形成された雄ネジが螺合する雌ネジが形成されている。貫通孔213bには、第2プランジャ40の第2シャフト46に形成された雄ネジが螺合する雌ネジが形成されている。第1プランジャ30は貫通孔213aに挿入され、第2プランジャ40は貫通孔213bに挿入されている。
【0078】
ネジ214は、ベース212をホルダー本体10に固定している。ネジ214は、ホルダー本体10に形成されたネジ穴に螺合している。ネジ214を緩めることによって、
図23に示すように、ベース212と試料台20との間の距離が大きくなり、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が小さくなる。また、ネジ214を締めることによって、
図21に示すように、ベース212と試料台20との間の距離が小さくなり、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が大きくなる。
【0079】
レバー216は、ネジ214を回転させる。レバー216でネジ214を回転させることによって、ネジ214を緩めたり、ネジ214を締めたりすることができる。
【0080】
第1ストッパー218aおよび第2ストッパー218bは、レバー216の可動範囲を制限する。例えば、第1ストッパー218aおよび第2ストッパー218bによって、レバー216の動作範囲を、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が生じる範囲に制限できる。
【0081】
2.2. 試料作製方法
次に、試料ホルダー200を用いた試料作製方法について説明する。以下では、上述した試料ホルダー100を用いた試料作製方法の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0082】
試料台20の位置を調整する工程S40では、第1プランジャ30および第2プランジャ40によって試料台20がホルダー本体10に摺動可能な力で押圧されている状態で試料台20の位置を調整した後、試料台20をホルダー本体10に固定する。このとき、
図22に示すように、第1ストッパー218aに接していたレバー216を時計回りに回転させて、
図20に示すように、レバー216を第2ストッパー218bにあてる。これにより、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が大きくなり、試料台20をホルダー本体10に固定できる。
【0083】
試料台20の位置を調整する工程S70では、試料台20の位置を調整する前に、試料台20をホルダー本体10に摺動可能にする。このとき、
図20に示すように、第2ストッパー218bに接していたレバー216を反時計回りに回転させて、
図22に示すように、レバー216を第1ストッパー218aにあてる。これにより、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が弱くなり、試料台20をホルダー本体10に対して摺動可能にできる。
【0084】
また、試料台20の位置を調整した後、試料台20をホルダー本体10に固定する。このとき、
図22に示すように、第1ストッパー218aに接していたレバー216を時計回りに回転させて、
図20に示すように、レバー216を第2ストッパー218bにあてる。これにより、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を押圧する力が大きくなり、試料台20をホルダー本体10に固定できる。
【0085】
2.3. 効果
試料ホルダー200では、第1プランジャ30と第2プランジャ40を同時に移動させて、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20をホルダー本体10に押圧する力を同時に変化させる移動機構210を含む。そのため、試料ホルダー200では、試料台20をホルダー本体10に対して摺動可能にするモードと、試料台20をホルダー本体10に固定するモードと、を容易に切り替えることができる。
【0086】
3. 第3実施形態
3.1. 試料ホルダー
次に、第3実施形態に係る試料ホルダーについて、図面を参照しながら説明する。
図24は、第3実施形態に係る試料ホルダー300を模式的に示す斜視図である。
図25は、第3実施形態に係る試料ホルダー300を模式的に示す断面図である。以下、第3実施形態に係る試料ホルダー300において、第1実施形態に係る試料ホルダー100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0087】
上述した試料ホルダー100では、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20の第3面23cを押圧していた。これに対して、試料ホルダー300では、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20の試料載置面22を押圧できる。
【0088】
ホルダー本体10には、第1孔17aおよび第2孔17bが形成されている。ホルダー本体10は、さらに、第3孔17cおよび第4孔17dを有している。第1孔17aおよび第2孔17bは、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20の第3面23cに接触するように形成されている。第3孔17cおよび第4孔17dは、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20の試料載置面22に接触するように形成されている。
【0089】
図25に示す例では、第1プランジャ30は第3孔17cに挿入され、第2プランジャ40は第4孔17dに挿入されている。そのため、試料ホルダー300では、第1プランジャ30および第2プランジャ40が試料台20を遮蔽板6側から押圧できる。
【0090】
試料ホルダー300では、試料台20が第1プランジャ30および第2プランジャ40で押圧されることによって、試料台20の第1溝26aの内面27cがホルダー本体10の第1ガイドレール14aの側面15cに押し当てられ、試料台20の第2溝26bの内面27dがホルダー本体10の第2ガイドレール14bの側面15dに押し当てられる。そのため、内面27cおよび側面15cを試料台20が摺動する摺動面とし、内面27dおよび側面15dを試料台20が摺動する摺動面とすることができる。内面27cは、内
面27aと対向する面であり、内面27dは、内面27bと対向する面である。また、側面15cは、側面15aと反対方向を向く面であり、側面15dは、側面15bと反対方向を向く面である。
【0091】
3.2. 試料作製方法
次に、試料ホルダー300を用いた試料作製方法について説明する。以下では、上述した試料ホルダー100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0092】
試料台20の位置を調整する工程S70では、
図25に示すように、遮蔽板6を試料台20よりも上に配置する。これにより、遮蔽板6越しに試料Sを観察しながら調整治具2を操作できる。このとき、ユーザーは、調整治具2を水平に維持することは難しく、無意識に矢印で示す下方向に力を加えてしまう。試料ホルダー300では、第1プランジャ30および第2プランジャ40によって試料台20が上から押圧される。そのため、ユーザーが調整治具2に下方向に力を加えても試料台20を傾き難くすることができる。
【0093】
図26は、第1孔17aに第1プランジャ30を挿入し、第2孔17bに第2プランジャ40を挿入した場合の試料ホルダー300の動作を説明するための図である。
図26に示すように、遮蔽板6を試料台20よりも上に配置したときに、第1プランジャ30および第2プランジャ40によって試料台20が下から押圧される。そのため、ユーザーが下方向に力を加えた場合、第1プランジャ30(第1バネ34)および第2プランジャ40(第2バネ44)が圧縮されて試料台20が傾いてしまう。例えば、
図26に示すように、試料台20が傾くと、試料Sと遮蔽板6との間の距離が大きくなり、加工位置がずれてみえてしまう。
【0094】
これに対して、
図25に示すように、第3孔17cに第1プランジャ30を挿入し、第4孔17dに第2プランジャ40を挿入した場合、遮蔽板6を試料台20よりも上に配置したときに、第1プランジャ30および第2プランジャ40によって試料台20が上から押圧される。これにより、内面27cと側面15cが面で接触し、内面27dと側面15dが面で接触するため、調整治具2に下方向の力が加わっても試料台20が傾きにくい。そのため、調整治具2に下方向に力が加わっても試料台20を傾き難くすることができる。
【0095】
試料ホルダー300には、ホルダー本体10に第1孔17a、第2孔17b、第3孔17c、および第4孔17dが形成されているため、第1孔17aに第1プランジャ30を挿入し、第2孔17bに第2プランジャ40を挿入することもできる。したがって、試料ホルダー300では、第1プランジャ30および第2プランジャ40によって試料台20を押圧する方向を選択できる。なお、図示はしないが、ホルダー本体10に第1孔17aおよび第2孔17bが形成されずに、第3孔17cおよび第4孔17dが形成されていてもよい。
【0096】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0097】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説
明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0098】
2…調整治具、2a…棒状部、2b…把持部、3…研磨目標治具、3a…爪部、3b…爪部、4…防水テープ、5…ホルダー、6…遮蔽板、7…顕微鏡、8…アダプター、9…ホルダースタンド、10…ホルダー本体、11…底部、11a…底面、12…凹部、13…壁部、14…ガイド、14a…第1ガイドレール、14b…第2ガイドレール、15a…側面、15b…側面、15c…側面、15d…側面、16…装着部、17a…第1孔、17b…第2孔、17c…第3孔、17d…第4孔、18…磁石、19a…第1載置面、19b…第2載置面、20…試料台、22…試料載置面、24…貫通孔、26a…第1溝、26b…第2溝、27a…内面、27b…内面、27c…内面、27d…内面、30…第1プランジャ、32…第1接触部材、34…第1バネ、36…第1シャフト、40…第2プランジャ、42…第2接触部材、44…第2バネ、46…第2シャフト、100…試料ホルダー、200…試料ホルダー、210…移動機構、212…ベース、213a…貫通孔、213b…貫通孔、214…ネジ、216…レバー、218a…第1ストッパー、218b…第2ストッパー、300…試料ホルダー