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  • 特開-接着シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102634
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】接着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20240724BHJP
   C09J 115/02 20060101ALI20240724BHJP
   C09J 111/00 20060101ALI20240724BHJP
   C09J 123/34 20060101ALI20240724BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J115/02
C09J111/00
C09J123/34
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006651
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 秀二
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 容一
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA07
4J004AC03
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB03
4J004FA08
4J040CA141
4J040DA181
4J040EC062
4J040HB41
4J040KA37
4J040KA42
4J040LA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、作業スペースによらず、多孔質材料や接着面に隙間が生じ得る被着体であっても、空隙や隙間を埋めつつ、良好な接着性を発揮する接着シートを提供する。
【解決手段】ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性ゴム層を有する、接着シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層を有する、接着シート。
【請求項2】
前記発泡剤の発泡温度以上の温度で加熱した際の、前記接着シートの体積増加倍率が1倍超100倍以下である、請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
前記発泡剤が熱発泡性樹脂粒子である、請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項4】
前記ハロゲン原子が塩素原子を含む、請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項5】
前記ゴム成分がクロロプレンゴムを含む、請求項1又は2に記載の接着シート。
【請求項6】
前記ゴム成分がさらにクロロスルホン化ポリオレフィンを含む、請求項5に記載の接着シート。
【請求項7】
さらにエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートに関する。特に、本発明は、多孔質材料や接着面に隙間が生じ得る被着体であっても、空隙や隙間を埋めつつ、良好な接着性を発揮する接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場には多種多様な系統の接着剤が流通している。中でも、様々な被着体に接着するものとして、クロロプレンゴム系接着剤が多くの用途で使用されている。
【0003】
クロロプレンゴム系接着剤は、通常、クロロプレンゴムを有機溶剤に溶解させたり、水に分散させたりしたものであることから、乾燥工程を要する。
【0004】
これに対し、特許文献1では、調整されたクロロプレン系ラテックス型接着剤が、不織布などの多孔質シート状基材に含浸され乾燥されていることを特徴とするクロロプレン系接着シートが開示されている。これにより、接着作業時に接着剤の塗布・乾燥を要しないのみかシート状のため取扱い易い利点があるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-204078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被着体として、樹脂やゴム等の材質からなる多孔質材料が、断熱材、吸音材、制振材、緩衝材等として幅広く利用されている。一般的に、これら多孔質材料は、細かな空隙が多数形成されていることから、多孔質でない材料に比べて接着しにくい。
【0007】
そのため、被着体として多孔質材料を接着させる場合には、接着剤や接着シートを接着させる面に適用した後、多孔質材料の空隙内部まで接着剤を馴染ませるために、接着面の加圧(圧締)等の作業を要する。
【0008】
また、多孔質材料のみならず、接着する各材料の接着面の形状によっては、接着面に隙間ができる場合がある。このような隙間は接着に寄与しない部分になり得、その結果、接着信頼性の低下につながる。
【0009】
上記のような、多孔質材料や接着面に隙間が生じ得る被着体に対して、芯材に発泡体を用い、その片面又は両面に接着剤を敷設する方法が考えられる。
【0010】
しかしながら、芯材に発泡体を用い、その片面又は両面に接着剤を敷設した接着シートは、その場で芯材に接着剤を塗布し、可使時間の間に接着剤を敷設し、かつ、被着体に仮固定できるところまで養生する必要がある。上記は、被着体に接着シートを接着させるための十分な作業スペースがない場合には、困難性を伴う。
【0011】
そこで、本発明は、作業スペースによらず、多孔質材料や接着面に隙間が生じ得る被着体であっても、空隙や隙間を埋めつつ、良好な接着性を発揮する接着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層を有する、接着シート。
《態様2》
前記発泡剤の発泡温度以上の温度で加熱した際の、前記接着シートの体積増加倍率が1倍超100倍以下である、態様1に記載の接着シート。
《態様3》
前記発泡剤が熱発泡性樹脂粒子である、態様1又は2に記載の接着シート。
《態様4》
前記ハロゲン原子が塩素原子を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の接着シート。
《態様5》
前記ゴム成分がクロロプレンゴムを含む、態様1~4いずれか一項に記載の接着シート。
《態様6》
前記ゴム成分がさらにクロロスルホン化ポリオレフィンを含む、態様5に記載の接着シート。
《態様7》
さらにエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも一方を含む、態様1~6のいずれか一項に記載の接着シート。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る接着シートを用いた発泡接着性評価の方法を示す模式断面図であり、図1(a)は加熱前の接着シートを示し、図1(b)は発泡剤の発泡温度以上の温度で加熱した後の接着シートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《接着シート》
本実施形態に係る接着シートは、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層を有する。
【0015】
本実施形態に係る接着シートを上記構成にすることにより、加熱等によって発泡と接着とが同時に進行するため、上述した多孔質材料の接着や、材料間に隙間ができる箇所の接着においても、隙間や細かな空隙を埋めつつ、十分な接着性を発揮できる。そのため、各種被着体に対して優れた接着信頼性を発揮する。
【0016】
また、本実施形態に係る接着シートは、被着体に対して発泡剤と接着成分となるゴム成分とを同時に敷設できるため、被着体周辺の作業スペース等に制限されることなく、接着シートを用いることができる。
【0017】
ゴム成分は、ハロゲン原子を含めば特に限定されないが、特に塩素原子を含むことが好ましい。具体的には、ゴム成分として、クロロプレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリオレフィン、塩素化ポリエチレン等が挙げられ、これらのうち1種を用いても2種以上を併用してもよい。中でも、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリオレフィンがより好ましく、べたつきを防ぐタックレス性の観点からクロロプレンゴムがさらに好ましい。また、発泡接着性の観点からは、クロロプレンゴムとクロロスルホン化ポリオレフィンを併用することもさらに好ましい。
【0018】
ゴム成分としてクロロプレンゴムとクロロスルホン化ポリオレフィンを併用する場合、クロロプレンゴム:クロロスルホン化ポリオレフィンで表される質量比は、95:5~5:95が好ましく、90:10~10:90がより好ましく、85:15~15:85がさらに好ましい。
【0019】
ハロゲン原子を含むゴム成分は、その分子量等を適宜選択することで、得られる接着シートの接着性、軟化温度、タック(べたつき)等を調整することができる。例えば、その重量平均分子量Mwは、5万以上、10万以上、又は20万以上であってもよく、100万以下、50万以下、又は30万以下であってもよい。
【0020】
発泡剤は、発泡後に被着体の隙間や細かな空隙を埋める役割を果たせば特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系発泡剤、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系発泡剤、N,N-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ系発泡剤、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどの無機系発泡剤、ポリマーによる外殻の内部に液状炭化水素等を含む熱発泡性樹脂粒子などを用いることができる。
【0021】
発泡剤が発泡する機構は特に限定されないが、例えば、加熱することで発生する気体によって発泡させたり、ポリマーによる外殻の内部に含まれる液状の炭化水素が気化することによって発泡させたりすることができる。発泡剤の中でも、熱発泡性樹脂粒子からなる発泡剤が、作業性の観点から好ましい。
【0022】
熱発泡性樹脂粒子の外殻は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、(メタ)アクリル系ゴム、その他のエラストマー等が挙げられる。上記外殻の材質や粒子径によって、接着シートの可使温度域や、接着性、空隙への充填性等を調整できる。
【0023】
発泡剤を発泡させるための加熱温度、すなわち発泡温度によっても可使温度域を調整できる。発泡温度は、例えば80~200℃が好ましく、100~150℃がより好ましい。
【0024】
発泡剤を発泡させるための加熱の時間は、発泡剤が十分に発泡すれば特に限定されないが、例えば、30秒~10分が好ましい。ここで、上記加熱の時間は、発泡性の観点から30秒以上が好ましく、1分以上がより好ましい。また、作業性の観点から、加熱の時間は10分以下が好ましく、5分以下がより好ましい。
【0025】
発泡剤の発泡倍率や配合量によっても、接着性や空隙への充填性および発泡接着性を調整することができる。発泡剤の発泡倍率や配合量は、接着シートの体積増加倍率が1倍超100倍以下となるように調整することが好ましい。
【0026】
ハロゲン原子を含むゴム成分100質量部に対する発泡剤の含有量は、例えば、3~200質量部とすることができる。例えば、ゴム成分100質量部に対する発泡剤の含有量は、5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、又は20質量部以上であってもよく、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、50質量部以下、又は30質量部以下であってもよい。
【0027】
上記ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層は、上記ゴム成分及び発泡剤に加え、所望により他の成分を含有していてもよい。
【0028】
他の成分として、例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。これら樹脂により、接着シートと被着体との界面の接着強度を上げることができる。これら樹脂を含む場合には、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の合計の含有量は、ハロゲン原子を含むゴム成分100質量部に対して、例えば1~50質量部とすることができる。ここで、上記合計の含有量は、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、又は15質量部以上であってもよく、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、又は15質量部以下であってもよい。また、エポキシ樹脂やフェノール樹脂と共に、ジシアミンジアミド等の硬化触媒を併用してもよい。
【0029】
他の成分として、例えば、有機過酸化物系架橋剤やマレイミド系架橋剤等の架橋剤も挙げられる。これらにより、接着強度を高めることができる。架橋剤を含む場合、架橋剤の合計の含有量は、ハロゲン原子を含むゴム成分100質量部に対して、例えば1~30質量部とすることができる。ここで、上記合計の含有量は、3質量部以上、5質量部以上、10質量部以上、又は15質量部以上であってもよく、25質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってもよい。
【0030】
他の成分として、例えばフィラーも挙げられる。これは、接着シートの強度や弾性を高めたり、かさ増しのために使用できる。フィラーを含む場合、フィラーの合計の含有量は、ハロゲン原子を含むゴム成分100質量部に対して、例えば1~200質量部とすることができる。ここで、上記含有量は、5質量部以上、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、又は50質量部以上であってもよく、150質量部以下、120質量部以下、100質量部以下、80質量部以下、又は50質量部以下であってもよい。
【0031】
本実施形態に係る接着シートは、発泡剤を機能させた際の発泡倍率が、体積増加倍率で、例えば、1倍超120倍以下又は1倍超100倍以下とすることができる。接着シートの体積増加倍率は、多孔質材料に対する空隙充填性や被着体との隙間を埋める観点から、1倍超、1.2倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、又は5倍以上であってもよい。また、優れた発泡接着性を発現する観点から、接着シートの体積増加倍率は120倍以下、100倍以下、90倍以下、80倍以下、70倍以下、60倍以下、50倍以下、又は40倍以下であってもよい。
【0032】
なお、発泡倍率とは、発泡剤が機能する前の接着シートの体積を基準とし、発泡剤を機能させた後の接着シートの体積増加倍率を意味する。
【0033】
例えば、発泡剤が熱発泡性樹脂からなる場合には、発泡剤の発泡温度以上の温度で加熱させることにより、発泡剤を機能させることができる。すなわち、体積増加倍率は、加熱前の接着シートの体積Vに対する、加熱後の接着シートの体積Vの比(V/V)で表される。
【0034】
本実施形態に係る接着シートは一定以上の発泡接着性を有することにより、接着シートとして機能する。例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)とアルミニウム板とを発泡剤を機能させて接着させた後、アルミニウム板からEPDMを剥離するのに要する力を測定することにより、発泡接着性を評価できる。本実施形態に係る接着シートを用いて発泡接着させた際、アルミニウム板とEPDMとが接着していることが好ましく、剥離に要する力が大きいほど好ましい。
【0035】
本実施形態に係る接着シートは、タックレス性が高いことが好ましい。タックレス性は、接着シートにおけるハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層に対して、手指で押圧した際の触覚により評価できる。僅かにべたつきを感じても、作業上支障がなければよく、べたつきを感じないことが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る接着シートは、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層のみからなっていてもよく、他の層をさらに有していてもよい。他の層は、本実施形態に係る接着シートの効果を損なわない範囲で任意である。他の層は、例えば支持基材や、離型フィルム等が挙げられる。
【0037】
上記のうち、例えば支持基材は、接着シートを用いて接着する際に、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層と共に接着に寄与するか、又は、発泡剤を発泡させる際の加熱により分解する等により、接着シートの効果を損なうことなく、支持基材として機能する。
【0038】
また、本発明は、上記接着シートと、支持基材とを含む積層体にも関する。積層体における支持基材は、接着シートを製造する過程でハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層を形成するために用いた基材でもよく、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層を得た後に、その少なくとも一方の主面に重ね合わせてもよい。
【0039】
支持基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)シート等の発泡ゴムシート、セルロース繊維等の繊維を含む織布または不織布、金属箔等が挙げられる。また、発泡性接着層が積層される主面にコロナ処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0040】
支持基材の厚さは特に限定されないが、例えば2μm以上、5μm以上、又は10μm以上であってもよく、また、500μm以下、200μm以下、又は100μm以下であってもよい。
【0041】
積層体における離型フィルムは、接着シートを使用する前に剥離する。積層体における離型フィルムは、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層の一方の主面に重ね合わさっていても、両方の主面に重ね合わさっていてもよい。両方の主面に離型フィルムが重ね合わさっている場合、2つの離型フィルムは同じでも異なっていてもよい。
【0042】
離型フィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムや、上質紙等の紙の片面または両面に、シリコーン化合物、フッ素化合物、アルキド化合物などの離型性を有する材料によって離型層が形成されたものが挙げられる。
【0043】
本実施形態に係る接着シートは、被着体が多孔質材料である場合や、材料間に隙間ができる箇所の接着において有用であるが、これらに加え、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の難接着材料として知られる被着体同士の接着においても有用である。
【0044】
対象とする被着体は、幅広いものに適用できるため、様々な工業製品の接着に有用である。特に、空隙への充填と接着とを同時に行うことが求められる箇所や、振動環境下での接着が求められる箇所、防音性が求められる箇所、断熱性が求められる箇所、絶縁性が求められる箇所等に好適である。より具体的には、電化製品や電子機器の筐体等の空隙充填及び接着、モーターのステーターコアのスロット溝内の空隙充填及び接着、バッテリー周辺部材との絶縁、緩衝及び接着等の用途に好適である。
【0045】
《接着シートの製造方法》
本実施形態に係る接着シートの製造方法は、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層が得られれば特に限定されない。
【0046】
例えば、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を、任意の成分と共に溶媒中に混合、分散させ、樹脂組成物を得る。得られた樹脂組成物を、離型フィルム上に塗布、乾燥させることにより、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層が形成され、離型フィルムと接着シートとを含む積層体が得られる。塗布する方法は特に限定されないが、ドクターブレード等の塗布ローラーを用いた塗布、マイクログラビア(商標)ロールコート法による塗布、スロットダイコート法による塗布、リバースロールコート法による塗布、ナイフコート法による塗布等が挙げられる。また、接着シートの製造にあたり、所望により、他の層をさらに設けてもよい。
【0047】
接着シートの厚さは特に限定されないが、例えば5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってもよく、また、1000μm以下、800μm以下、又は600μm以下であってもよい。
【0048】
積層体は、接着シートの保管性の観点から、接着シートの他方の面にも離型フィルムを重ね合わせてもよい。また、接着シートを使用する際には、上記離型フィルムを剥離して用いる。
【0049】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例0050】
《製造例》
〈実施例1〉
クロロプレンゴム(CR)(ショウプレンAD、昭和電工株式会社製)100質量部に、発泡性粒子(エクスパンセル031-40、日本フィライト株式会社製)20質量部と、フィラー(ミペロンXM-220、三井化学株式会社製)60質量部を加え、トルエンで希釈した。そのあと、混合及び分散させて樹脂組成物を得た。
【0051】
得られた樹脂組成物を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを基材として、その上に塗布した。次いで、80℃で10分間乾燥させることにより、厚さ500μmのクロロプレンゴム及び発泡剤を含有する発泡性接着層からなる接着シートを得た。そして、剥離処理されたPETフィルムをさらに重ね合わせ、PET/接着シート/PETの構成である積層体を得た。
【0052】
〈実施例2~7、比較例1~4〉
使用した材料の種類及び配合量(質量部)を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、接着シートを含む積層体を得た。なお、表中の空欄は未配合であることを意味する。
【0053】
表1中、CSMとは、クロロスルホン化ポリエチレン(CN-1500、東ソー株式会社製、重量平均分子量24万)を意味する。NBRとは、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(ニポール1043、日本ゼオン株式会社製)を意味する。エポキシ樹脂はビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル株式会社製)を意味する。BPOは架橋剤である過酸化ベンゾイル(ナイパーNS、日油株式会社製)を意味する。BMIは架橋剤であるビスマレイミド(BMI-4000、大和化成工業株式会社製)を意味する。DICYはジシアミンジアミド(DICY7、三菱ケミカル株式会社製)を意味する。
【0054】
《試験方法》
〈体積増加倍率及び空隙充填性〉
得られた積層体を15mm×15mmの大きさに切断し、130℃で2分間加熱した。次いで、加熱後の積層体の寸法(縦、横、厚み)からPETフィルムを除いた接着シートの体積を求め、加熱前の体積Vに対する加熱後の体積Vの比(V/V)で表される体積増加倍率を求めた。また、空隙充填性の評価基準は下記のとおりとした。
◎:体積増加倍率が3以上であり非常に良好
○:体積増加倍率が1超3未満であり良好
×:体積増加倍率が1以下であり不良
結果を表1の「体積増加倍率」及び「空隙充填性」に示した。
【0055】
〈タックレス性〉
積層体から、一方のPETフィルムを剥離し、露出した接着シートの表面を、清浄にした手指で押圧することで、タックレス性の評価を行った。タックレス性の評価基準は下記のとおりとした。
○:べたつきを感じず、非常に良好
△:わずかにべたつきを感じるが、作業上支障がなく良好
×:明らかにべたつきがあり、作業上支障を生じ不良
なお、本タックレス性の評価における作業上の支障の有無とは、接着シートを敷設する作業において、接着シートに折れやシワが生じた際にこれを復元することが困難であったことを意味する。結果を表1の「タックレス性」に示した。
【0056】
〈発泡接着性〉
図1(a)に示すように、アルミニウム板1に対して、1cm×1cmの大きさに裁断し、両方のPETフィルムを剥離した接着シート2を貼り付けた。そして、厚さ1mmのスペーサー4を介して、エチレンプロピレンゴム(EPDM)材料3を重ねて固定した。
【0057】
なお、上記スペーサー4は、被着体が多孔質材料や接着面に隙間が生じる材料であった場合を模すためのものであり、接着シート2とエチレンプロピレンゴム(EPDM)材料3との間には空隙がある。
【0058】
これを評価用サンプルとし、130℃で2分間加熱することで、図1(b)に示すように、接着シート2が発泡した接着シート2’となり、接着シート2とエチレンプロピレンゴム(EPDM)材料3との間にあった空隙がなくなり、また、アルミニウム板1とEPDM材料3とを発泡接着させた。その後、常温環境下で2時間静置させた後、評価用サンプルからスペーサー4を取り除いた。
【0059】
そして、EPDM材料3の背面を鋼製の台座に固定し、引張試験機のチャックとアルミニウム板1をワイヤーでつないだ。この際、ワイヤーの取付位置は接着シート2の端部から2cm離れた位置とした。その後、接着シートの剥離にかかる剥離力を測定し、発泡接着性として下記の評価基準により評価した。
◎:剥離力が7N以上
○:剥離力が5N以上7N未満
△:剥離力が3N以上5N未満
×:剥離力が3N未満
結果を表1の「発泡接着性」に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1から分かるように、接着シートがハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層を含むことにより、体積増加倍率、空隙充填性、タックレス性、発泡接着性のいずれについても良好な結果が得られた。特に、ハロゲン原子を含むゴム成分として、クロロプレンゴムとクロロスルホン化ポリエチレンを併用することで、タックレス性を損なうことなく、非常に良好な発泡接着性が実現された。
【0062】
また、ハロゲン原子を含むゴム成分及び発泡剤を含有する発泡性接着層が、有機過酸化物系架橋剤である過酸化ベンゾイルやマレイミド系架橋剤といった架橋剤や、エポキシ樹脂等の他の成分を含んでいても、本発明の効果を損なうことなく、本発明の効果と他の成分による効果を両立できることが分かった。
【符号の説明】
【0063】
1 アルミニウム板
2 接着シート
2’ 発泡した接着シート
3 エチレンプロピレンゴム(EPDM)材料
4 スペーサー
図1