(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102648
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】燃料タンク用弁装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240724BHJP
F16K 31/22 20060101ALI20240724BHJP
F16K 24/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F02M37/00 311K
F02M37/00 301E
F02M37/00 311A
F16K31/22
F16K24/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006676
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢島 一樹
【テーマコード(参考)】
3H055
3H068
【Fターム(参考)】
3H055AA05
3H055AA22
3H055BA02
3H055BA03
3H055BA04
3H055BA11
3H055CC07
3H055CC20
3H055CC21
3H055CC25
3H055GG22
3H055HH08
3H055JJ03
3H068AA01
3H068BB52
3H068DD01
3H068DD11
3H068EE01
3H068FF07
3H068GG07
(57)【要約】
【課題】満タン規制位置を高くすることができる燃料タンク用弁装置を提供する。
【解決手段】この燃料タンク用弁装置10は、仕切壁22や開口25を有するハウジング15とフロート弁19とを有し、フロート弁19はロアー部材40と中間弁体50とアッパー部材60とを有する。ロアー部材40は組付け部43を有し、その外周には複数の第1突起45及び第2突起47が設けられ、アッパー部材60は、第1突起45に係合する第1弾性係合片70を有し、中間弁体50は、第2突起47に係合する第2弾性係合片51を有し、第2突起47の、第2弾性係合片51に対する係合面は、第1突起46の軸方向高さの範囲内に位置する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切壁を介して、下方に燃料タンクに連通する弁室、上方に燃料蒸気排出口に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室を連通する開口が設けられた、ハウジングと、
前記弁室に昇降可能に収容され、前記開口を開閉するフロート弁とを有し、
前記フロート弁は、フロート本体をなすロアー部材と、該ロアー部材の上方において、該ロアー部材に対して組付けられるアッパー部材と、該ロアー部材及び該アッパー部材の間に配置される中間弁体とを有しており、
前記ロアー部材は、その上方に、前記アッパー部材及び前記中間弁体が組付けられる組付け部を有しており、
前記組付け部の外周には、径方向外側に向けて突出し且つ軸方向に所定高さを有する、複数の第1突起が設けられていると共に、複数の前記第1突起の間に配置された第2突起が設けられており、
前記アッパー部材は、前記ロアー部材の前記第1突起に係合する第1弾性係合片を有しており、
前記中間弁体は、前記ロアー部材の前記第2突起に係合する第2弾性係合片を有しており、
前記第2突起の、前記第2弾性係合片に対する係合面は、前記第1突起の軸方向高さの範囲内に位置していることを特徴とする燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
前記第1突起の軸方向の上端部に、テーパ部が形成されており、
前記第2突起の前記第2弾性係合片に対する係合面は、前記テーパ部の軸方向高さの範囲内に位置する、請求項1に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
前記中間弁体は、前記第2弾性係合片を複数有していると共に、複数の前記第2弾性係合片の間に周壁が設けられており、
前記周壁は、軸方向下端が開口した切欠きを有しており、該切欠きを介して、前記第1突起が径方向外側に突出している、請求項1又は2に記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
前記第1突起の上面と前記第2突起の上面とが同一平面上に位置する請求項1又は2に記載の燃料タンク用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料流出防止弁や満タン規制弁等として用いられる、燃料タンク用弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクには、燃料タンク内の液面が、予め設定された満タン液面よりも上昇しないように、燃料タンク内への過給油を防止する満タン規制弁や、自動車が旋回したり傾いたりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する燃料流出防止弁等が取付けられている。
【0003】
これらの弁装置は、一般的には、開口を有する仕切壁及び弁室を有するハウジングと、弁室内に昇降可能に配置され、前記開口を開閉するフロート弁とを有する構造となっている。また、フロート弁が斜めに上昇した場合には、開口とのシール性が低下するため、フロート上方に揺動可能なアッパー部材を設ける構造も採用されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、仕切壁を介して、下方に燃料タンクに連通する弁室、上方に燃料蒸気排出口に連通する通気室が設けられ、仕切壁には弁室と通気室を連通する開口が設けられたハウジングと、弁室内に昇降可能に収容され、開口を開閉するフロート弁とを備えた、燃料タンク用弁装置が開示されている。
【0005】
また、フロート弁は、フロート本体をなすロアー部材と、ロアー部材の上方において、ロアー部材に対して所定距離だけ昇降可能に且つ傾動可能に組付けられるアッパー部材と、アッパー部材に装着されるシール部材と、ロアー部材に傾動可能に装着され、ロアー部材及びアッパー部材の間に配置される中間弁体とから構成されている。
【0006】
更に、ロアー部材上方には、アッパー部材組付部が設けられており、その上部中央から、アッパー部材組付部よりも縮径した環状突部が連設されている。また、アッパー部材組付部の上方外周に、被係合部が突設されており、中間弁体組付部の上方外周に環状突部が突設されている。
【0007】
そして、アッパー部材の弾性係合片が、被係合部に係合することで、アッパー部材組付け部に対してアッパー部材が所定距離だけ昇降可能に且つ傾動可能に組付けられると共に、中間弁体の係止枠が環状突部に係合することで、中間弁体組付部に対して中間弁体が傾動可能に組付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の燃料タンク用弁装置の場合、ロアー部材のアッパー部材組付部及び中間弁体組付部に、アッパー部材を係合させる被係合部と、中間弁体を係合させる環状突部とが、軸方向に2段に分かれて設けられているので、ロアー部材に所定の長さが必要である。
【0010】
しかし、ロアー部材の軸方向の長さが長くなると、フロート弁全体の軸方向の長さが長くなるので、開口がフロート弁で閉塞されるときの燃料高さ、すなわち、燃料タンク内へ供給される燃料の満タン位置(いわゆるロックポイント、SOH:Shut Off Height)の規制位置を高くしにくい、という不都合があった。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ロアー部材の軸方向の長さ、ひいてはフロート弁全体の軸方向の長さを短くして、満タン規制位置を高くすることができる、燃料タンク用弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料タンク用弁装置は、仕切壁を介して、下方に燃料タンクに連通する弁室、上方に燃料蒸気排出口に連通する通気室が設けられ、前記仕切壁に前記弁室と前記通気室を連通する開口が設けられた、ハウジングと、前記弁室に昇降可能に収容され、前記開口を開閉するフロート弁とを有し、前記フロート弁は、フロート本体をなすロアー部材と、該ロアー部材の上方において、該ロアー部材に対して組付けられるアッパー部材と、該ロアー部材及び該アッパー部材の間に配置される中間弁体とを有しており、前記ロアー部材は、その上方に、前記アッパー部材及び前記中間弁体が組付けられる組付け部を有しており、前記組付け部の外周には、径方向外側に向けて突出し且つ軸方向に所定高さを有する、複数の第1突起が設けられていると共に、複数の前記第1突起の間に配置された第2突起が設けられており、前記アッパー部材は、前記ロアー部材の前記第1突起に係合する第1弾性係合片を有しており、前記中間弁体は、前記ロアー部材の前記第2突起に係合する第2弾性係合片を有しており、前記第2突起の、前記第2弾性係合片に対する係合面は、前記第1突起の軸方向高さの範囲内に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中間弁体は、ロアー部材の第2突起に係合する第2弾性係合片を有しており、第2突起の、第2弾性係合片に対する係合面は、第1突起の軸方向高さの範囲内に位置しているので、第2突起の、第2弾性係合片に対する係合面と、第1突起の、第1弾性係合片に対する係合面との、軸方向の高さを近づけることができる。
【0014】
その結果、アッパー部材と中間弁体とをロアー部材に組付けた状態における、フロート弁の軸方向の長さを短くすることができる。よって、軸方向長さが長いフロート弁に比べて、弁室内において、フロート弁を高い位置まで上昇させることができるので 、満タン規制位置を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】同弁装置を構成するロアー部材の拡大斜視図である。
【
図3】同弁装置を構成するアッパー部材を示しており、(a)はその斜視図、(b)は(a)とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
【
図4】同弁装置を構成するロアー部材と中間弁体とを組み立てた状態の斜視図である。
【
図5】同弁装置を構成するロアー部材と中間弁体とアッパー部材とを組み立てた状態の、一部を破断した状態の斜視図である。
【
図6】同弁装置を構成するフロート弁の断面図である。
【
図7】同弁装置において、フロート弁が下降して、開口が開いた状態の断面図である。
【
図8】同弁装置において、フロート弁が上昇して、開口を閉じた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(燃料タンク用弁装置の一実施形態)
以下、
図1~8を参照して、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態について
説明する。
【0017】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。
【0018】
図1及び
図7に示すように、この実施形態における燃料タンク用弁装置10(以下、「弁装置10」という)は、略筒状をなし上方に仕切壁22を設けたハウジング本体20と、該ハウジング本体20の上方に装着される上カバー30と、前記ハウジング本体20の下方に装着される下キャップ35とを有する、ハウジング15を有している。
【0019】
そして、
図7に示すように、ハウジング本体20の下方に下キャップ35が装着されることで、仕切壁22を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンクに連通する弁室Vが形成され、ハウジング本体20の上方に上カバー30が装着されることで、仕切壁22を介して、ハウジング上方に図示しない燃料蒸気排出口に連通する通気室Rが形成されるようになっている。
【0020】
図1に示すように、前記ハウジング本体20は、下方が開口した略円筒状をなし、軸方向の中間部に通気溝21aが形成された本体周壁21を有している。この本体周壁21の外周下縁部には、複数の係止爪21bが突設されている。更に本体周壁21の上方からは、略円環状をなしたフランジ部23が張り出しており、このフランジ部23には、複数の挿通孔23aが形成されている。本体周壁21の外周の、フランジ部23寄りの位置であって、前記挿通孔23aに整合した位置には、複数の係止爪21cが突設されている。
【0021】
また、前記フランジ部23の内周には、リング装着溝24が形成されており、このリング装着溝24の内側に、円板状をなした前記仕切壁22が配置されている。この仕切壁22の中央に、円形状の開口25が形成されている。更に、開口25の内部には、略十字状をなしたリブ25bが形成されている。このリブ25bによって、開口25の表側内周縁からの、シールフランジ83(
図6~8参照)の飛び出しが防止されるようになっている。
【0022】
また、
図7及び
図8に示すように、開口25の裏側(下側)周縁からは、略円形突起状をなした弁座25aが突設されている。また、本体周壁21の内周であって、その高さ方向途中から前記仕切壁22に至る位置には、薄肉板状をなしたガイドリブ27が、複数形成されている。
【0023】
一方、上カバー30は、上方が閉塞した略ハット状をなしており、そのカバー周壁31の所定箇所から接続管32が外径方向に向けて延出している。接続管32は、燃料タンクの外部に配置される図示しないキャニスタに連結されるチューブが接続される。
【0024】
なお、接続管32は、カバー周壁31に設けた図示しない燃料蒸気排出口から延出している。また、カバー周壁31の下方からは、枠状の係止片33が延設されており、各係止片33には、係合孔34が形成されている。前記係止片33を、ハウジング本体20の対応する挿通孔23aに挿入し、同係止片33の係合孔34を、対応する係止爪21cに係止させることで、ハウジング本体20の上方に上カバー30が装着される。
【0025】
そして、
図7に示すように、リング装着溝24に装着されたシールリング17によって、上カバー30のカバー周壁31の下縁部内周と、ハウジング本体20の仕切壁22の外周の周面との隙間がシールされる。
【0026】
更に
図1に示すように、前記下キャップ35は、略円形板状をなした底壁36と、該底壁36の外周縁から円設されたキャップ周壁37とを有する、有底キャップ状をなしている。キャップ周壁37には複数の係止孔37aが形成されており、該係止孔37aに前記ハウジング本体20の係止爪21bが係止することで、ハウジング本体20の下方に下キャップ35が装着される。
【0027】
また、前記底壁36には、燃料タンク内部と弁室Vとを連通する通口36aが複数形成されている。更に、底壁36の中央部には、スプリング38の一端部を支持する、略十字突起状をなしたスプリング支持部39が突設されている。
【0028】
そして、前記弁室V内には、下キャップ35との間に、スプリング38を介して、前記ハウジング15の開口25を開閉するフロート弁19が昇降可能に配置されている。
【0029】
この実施形態のフロート弁19は、燃料浸漬時に浮力を発生させるフロート本体をなすロアー部材40と、該ロアー部材40の上方において、ロアー部材40に対して所定距離だけ昇降可能に、且つ、傾動可能に組付けられるアッパー部材60と、該アッパー部材60に装着されるシール部材80と、前記ロアー部材40及び前記アッパー部材60の間に配置される中間弁体50とから、主として構成されている。
【0030】
図1及び
図2に示すように、前記ロアー部材40は、所定径の円筒状をなしたロアー本体41と、該ロアー本体41の上部中央から突出し、前記ロアー本体41の外径よりも小径の組付け部43とを有している。
【0031】
図2に示すように、組付け部43は、円筒状の組付け周壁44を有している。
図2,6を併せて参照すると、この組付け周壁44は、所定径で立設した基部44aと、該基部44aの立設方向先端に配置された平坦面状をなした棚状面44bと、該棚状面44bから立設し、基部44aよりも縮径した先端部44cとを有している。すなわち、組付け周壁44の下方には基部44aが位置しており、上方には先端部44cが位置している。また、先端部44cの立設方向先端には、天井面44dが配置されている。
【0032】
そして、組付け周壁44の先端部44cの外周からは、周方向に均等な間隔を空けて、且つ、径方向外側に向け、複数の第1突起45が、基部44aの外周よりも突出するように突設されている(本実施形態においては4個の第1突起45を有しており、軸方向から見て略十字状をなしている)。
【0033】
各第1突起45は、軸方向に所定の高さで設けられており(軸方向に所定高さを有するとも言える)、その軸方向の上端部(突出方向先端部における上端部)には、ロアー部材下方に向けて次第に突出量が大きくなるテーパ部45aを有している。
【0034】
また、第1突起45の下面側に、ロアー部材40の軸心と直交する向きとなる、第1係合面45bが形成されている。この第1突起45の第1係合面45bに、アッパー部材60の第1弾性係合片70が係合可能となり(
図5参照)、組付け部43にアッパー部材60が装着される。
【0035】
なお、第1突起45の個数は特に限定されず、また、第1突起45の形状も、
図3等に示すアッパー部材60に設けた第1弾性係合片70に係合可能であればよい。
【0036】
また、組付け周壁44の先端部44cの上端外周であって、第1突起45,45の間からは、先端部44cの周方向に沿って略円弧状に延び且つ径方向外側に向けて突出する、第2突起47が突設されている。この第2突起47は、基部44aの外径よりも小径となっている。
【0037】
また、第2突起47の上端部には、テーパ面が形成されており、第2突起47の下面側には、ロアー部材40の軸心と直交する向きとなる、第2係合面47aが形成されている。この第2係合面47aが、本発明における「第2突起の、第2弾性係合片に対する係合面」をなしている。
【0038】
そして、
図6に示すように、この第2突起47の第2係合面47aに、中間弁体50の爪部51aが係合して、組付け部43に中間弁体50が装着される。
【0039】
また、第1突起45と第2突起47とは、フロート弁19の軸方向から見たときに、組付け周壁44の周方向に沿って互い違いに配置されており、更に、第1突起45の係合面45bに対して、第2突起47の第2係合面47aが上方に位置する関係となっている。
【0040】
ところで、周方向に隣接する第1突起45,45とその間に位置する第2突起47との間には、周方向内方に向けて所定深さで凹んだ凹部46が形成されている(
図2参照)。前記第2突起47は、上記凹部46を介して、その上方に形成されている、とも言える。また、第2突起47は、組付け周壁44の周方向に隣接する複数の第1突起45同士を連結している。
【0041】
なお、第2突起47の形状は、
図5や
図6に示す中間弁体50に設けた第2弾性係合片51に係合可能であればよい。
【0042】
更に
図2や
図6に示すように、組付け部43の天井面44dの径方向中央からは、中間弁体50を揺動可能に支持する、支持突起48が突設されている。
【0043】
図6に示すように、第2突起47の、第2弾性係合片51に対する係合面である、第2係合面47aは、前記第1突起45の軸方向高さW1の範囲内に位置している。また、この実施形態における第2係合面47aは、第1突起45に形成したテーパ部45aの軸方向高さW2の範囲内に位置している。なお、第1突起45の軸方向高さW1及びテーパ部45aの軸方向高さW2は、フロート弁19の軸方向(軸心に沿った方向)における長さを意味する。
【0044】
更に
図2に示すように、前記第1突起45の上面と第2突起47の上面とは同一平面上に位置している。
【0045】
また、
図4及び
図6に示すように、ロアー本体41の上部には、ロアー本体41の軸方向に貫通して、ロアー本体41の内外を連通する通気孔49が形成されている。この通気孔49が形成されていることにより、燃料タンク内の液面がロアー本体41の下端に到達したとき、ロアー本体41の内部の空気を、ロアー本体41の外部に逃がすことができ、ロアー本体41、ひいてはフロート弁19に余計な浮力が生じないようにすることができる。通気孔49は、複数箇所形成されていてもよい。
【0046】
更に
図4に示すように、ロアー本体41の上方であって、組付け部43の径方向に対向する箇所からは、径方向外方に向けて凹溝49aが形成されており、該凹溝49aを介して、組付け部43及びロアー本体41の上面の境界部分には、ロアー本体41を横方向に貫通して、ロアー本体41の内外を連通する連通孔49bが形成されている。この連通孔49bは、ロアー本体41の内部空気を排出可能として、ロアー本体41の浮力調整を図るものである。
【0047】
次に、中間弁体50について説明する。
【0048】
この実施形態の中間弁体50は、
図1、
図4、
図5、及び
図6に示すように、上方が閉塞し、その外周に枠状をなした複数の第2弾性係合片51を設けた、略ハット状をなしている。各第2弾性係合片51の下端内側には、ロアー部材40の第2突起47に係合する爪部51a(
図6参照)がそれぞれ突設されている。
【0049】
各第2弾性係合片51は、ロアー本体41の取付け部43に設けた周方向に隣接する第1突起45,45の間に入り込むと共に(
図4参照)、第2突起47に係合可能となっている(
図6参照)。
【0050】
また、
図6に示すように、爪部51aの下端部内側には、テーパ面51bが形成されており、このテーパ面51bは、組付け部43への中間弁体50の組付け時に、中間弁体50を押し込んで第2弾性係合片51を撓ませるときに、第2突起47のテーパ面と当接して、第2弾性係合片51を撓ませやすくする。
【0051】
更に、周方向に隣接する複数の第2弾性係合片51の間には、周壁53が設けられており、この周壁53には、軸方向下端及び径方向両側が開口した略アーチ形状(門型)をなした切欠き55が形成されている。また、この切欠き55は、組付け部43に中間弁体50を装着した状態において、ロアー部材40の第1突起45を挿通させて(切欠き55を介して)、径方向外側に突出させるものとなっている。
【0052】
なお、切欠き55は、軸方向下端が開口し、第1突起を径方向外側に突出可能な形状であればよく、例えば、
図4に示すようなアーチ形状のみならず、矩形状や、四角枠状等であってもよい。更に、複数の第2弾性係合片51は、それらの最小内径が、ロアー部材40の第2突起47の外径に適合する大きさとなっている。
【0053】
そして、ロアー部材40の組付け部43に対して中間弁体50を装着する際には、各切欠き55を対応する第1突起45に位置合わせした状態で、組付け部43に対して中間弁体50を押し込む。
【0054】
すると、
図4及び
図5に示すように、前記第1突起45が、周壁53の切欠き55に入り込んで、押込みガイドをなすと共に(切欠き55が第1突起45をスライドガイドする)、ロアー本体41の第1突起45,45間に第2弾性係合片51が入り込んで、テーパ面51bを介して爪部51aが第2突起47に押圧されて、各第2弾性係合片51が外方に撓み変形する。
【0055】
その後、爪部51aが第2突起47の第2係合面47aを乗り越えて、各第2弾性係合片51が弾性復帰することで、爪部51aが第2突起47の前記第2係合面47aに係合すると共に、中間弁体50の閉塞された上方中央が、前記支持突起48に支持されて、ロアー部材40に対して中間弁体50が傾動可能に装着される。なお、組付け部43に対する中間弁体50の装着状態において、ロアー部材40の第1突起45は、切欠き55を介して、径方向外側に突出している。
【0056】
なお、この中間弁体50は、
図6に示すように、常時は後述するシール部材80の軸部81の下端に当接して、オリフィス孔81bを閉塞している。
【0057】
次に、アッパー部材60について説明する。
【0058】
この実施形態のアッパー部材60は、
図3、
図5、及び
図6に示すように、仕切壁22に設けられた開口25の弁座25aに接離する天井部61と、この天井部61の外周縁部の裏面(下面)から延出する略円筒状をなした外側壁63と、天井部61の裏面であって、且つ、外側壁63の内側から下方に延出された枠状の第1弾性係合片70とを有している。
【0059】
図3(a)に示すように、前記天井部61は略円板状をなしており、その径方向中央部にはやや盛り上がった隆起部65が形成されており、この隆起部65の内側に円形状の支持孔67が形成されている。
【0060】
図6に示すように、前記支持孔67には、シール部材80の軸部81が挿入される。このシール部材80は、先端部(下端部)外周に突部81aを設けた軸部81と、該軸部81の基端部(上端部)周縁から環状に広がったシールフランジ83とからなり、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料で一体形成されている。また、軸部81は、その内側が軸方向に貫通しており、下端中央部には、小径のオリフィス孔81bが形成されている。
【0061】
そして、軸部81を前記支持孔67の表側から挿入し、同支持孔67の裏側周縁に突部81aを係止させることで、天井部61の表面(上面)側にシールフランジ83が配置された状態で、アッパー部材60にシール部材80が装着される。
【0062】
図7に示すように、アッパー部材60の上下を連通するオリフィス孔81bは、通常時には、中間弁体50によって閉塞されている。そして、
図8に示すように、フロート弁19が上昇し、シール部材80のシールフランジ83が弁座25aに当接して、開口25を閉塞した状態から、燃料液面が下降すると、まず、ロアー部材40及び中間弁体50が下降して、オリフィス孔81bを開放する。
【0063】
オリフィス孔81bが開放されると、開口通気室Rと弁室Vとが連通して、弁室V内の圧力が低下すると共に、アッパー部材60にロアー部材40の自重が作用するので、シールフランジ83が弁座25aからスムーズに剥がれて開口25が開き、フロート弁19全体が下降して
図7に示す状態に復帰する。
【0064】
また、
図3や
図5に示すように、天井部61の、第1弾性係合片70に整合した位置には、天井部61を貫通する抜け孔69が複数設けられており、該抜け孔69の内面と、第1弾性係合片70に設けた係合孔71の内面(
図5参照)とが、連続するように形成されている。すなわち、係合孔71は、抜け孔69を介して形成されている。
【0065】
なお、抜け孔69としては、例えば、丸孔や角孔、天井部の周方向に沿って延びる長孔等であってもよく、形状は特に限定されず、また、その個数も特に限定されない。
【0066】
一方、
図3や
図5に示すように、前記外側壁63は、略円板状をなした天井部61の裏面側の外周縁から、下方に向けて所定長さで延びる略円筒状をなしている。この外側壁63は、本体周壁21の内周に設けた複数のガイドリブ27(
図7,8参照)に対して近接配置され、フロート弁19昇降時におけるアッパー部材60の昇降ガイドとなっている。
【0067】
ただし、外側壁としては、上記のような筒状に限定されるものではなく、例えば、天井部61の裏面から下方に向けて、複数の柱状片を延出させて、これらを外側壁としてもよく、ハウジングの内周壁に対するガイド性を有するものであればよい。
【0068】
また、上記天井部61の裏面であって、且つ、外側壁63の内側から延出された前記第1弾性係合片70は、天井部61の裏面の、抜け孔69に整合した位置から延設されている。この第1弾性係合片70は、
図3(b)や
図5に示すように、抜け孔69の裏面の両側縁部から、同抜け孔69を跨ぐようにして延設されており、その内側に、同抜け孔69に対して連続するように、所定長さで延びる長孔状をなした係合孔71が設けられている。
【0069】
そのため、第1弾性係合片70は、略U字枠状をなしている。なお、
図3(b)に示すように、隣接する複数の第1弾性係合片70どうしは、連結壁73により連結されて、強度が確保されるようになっている。
【0070】
また、各第1弾性係合片70は、前記外側壁63の延出方向先端部よりも突出するように延出されている。更に
図5に示すように、複数の第1弾性係合片70は、それらの最小内径が、ロアー部材40の組付け部43の組付け周壁44の外径に適合する大きさとなっている。
【0071】
そして、前記係合孔71の内側に、切欠き55を介して径方向外側に突出した状態の第1突起45が入り込んで(
図6参照)、ロアー部材40に対してアッパー部材60が所定距離だけ昇降可能に、且つ傾動可能に組付けられる。
【0072】
なお、
図3(b)や
図5に示すように、各第1弾性係合片70の延出方向先端の内側面には、所定曲率のR状面75が形成されている。このR状面75は、組付け部43へのアッパー部材60の組付け時に、アッパー部材60を押し込んで第1弾性係合片70を撓ませるときに、第1突起45のテーパ部45aに当接させやすくして、第1弾性係合片70を撓ませやすくする。
【0073】
また、各第1弾性係合片70の延出方向先端の両側面には、所定角度でカットされた面取部77が形成されている。この面取部77は、ロアー部材40に対してアッパー部材60が傾動する際に、傾動させやすくする。
【0074】
(変形例)
本発明を構成するハウジング、該ハウジング本体を構成するハウジング本体、下部キャップ、上カバー、下キャップ、フロート弁を構成するロアー部材、中間弁体、アッパー部材、シール部材等の、形状や、構造、レイアウト等は、上記態様に限定されるものではない。
【0075】
また、上記実施形態におけるハウジング15は、ハウジング本体20と、上カバー30と、下キャップ35とから構成されているが、ハウジングとしては、少なくとも仕切壁を有する構造であればよい。
【0076】
更に、この実施形態におけるハウジング本体20の本体周壁21や、上カバー30のカバー周壁31等は、略円筒状をなしているが、例えば、楕円筒状や角筒状等であってもよい。
【0077】
また、この実施形態では、ハウジング15内に形成された一つの弁室V内に、一つのフロート弁19が収容配置された構造となっているが、例えば、一つの弁室内に複数のフロート弁を収容配置したり(満タン規制弁のほか、燃料カット弁や圧力調整弁等として機能する弁を配置する)、ハウジング内に複数の弁室を画成して、各弁室内にフロート弁を収容配置したりしてもよい。
【0078】
(作用効果)
次に、上記構成からなる本発明に係る弁装置10の作用効果について説明する。
【0079】
図7には、図示しない燃料タンク内の燃料が少なく、フロート弁19に燃料による浮力が作用せず、仕切壁22の開口25が開口した状態が示されている。
【0080】
この状態から、燃料タンク内に燃料が給油されて、フロート弁19に燃料が浸漬すると、フロート弁19自体の浮力及びスプリング38の付勢力によって、フロート弁19が上昇して、
図8に示すように、アッパー部材60に装着されたシール部材80のシールフランジ83が、開口25の弁座25aに当接して、同開口25が閉塞されるようになっている。
【0081】
その結果、燃料タンク内の空気の逃げ道が失われて、燃料タンク内の圧力が上昇し、燃料タンクの燃料給油管内を燃料が上昇して、給油ガンの検知センサが燃料を検知することで、給油が停止されて、いわゆる満タン規制がなされることになる。
【0082】
この際の、フロート弁19の浮力は、主としてロアー部材40が燃料液面下に浸漬することによって得られるので、ロアー部材40の軸方向の長さ、ひいてはフロート弁19全体の高さが、シール部材80が開口25の弁座25aに到達するときの燃料液面の高さに影響する。
【0083】
すなわち、ロアー部材40の軸方向の長さが長いと、フロート弁19全体の高さが大きくなるので、フロート弁19のシール部材80が、開口25の弁座25aに当接して開口25が閉塞されるタイミングが早くなり、燃料タンク内への燃料の給油量を規制する液面の高さ、つまり満タン規制位置が低くなるので、燃料タンク内への燃料供給量がその分だけ少なくなる。
【0084】
一方、ロアー部材40の軸方向の長さを短くすると、フロート弁19のシール部材80が、開口25の弁座25aに当接して開口25が閉塞されるタイミングが遅くなり、満タン規制位置が上昇して、燃料タンク内への燃料供給量がその分だけ多くなる。
【0085】
そして、この弁装置10においては、ロアー部材40の高さを低くすることができるので、フロート弁19の全体の高さを低くすることができ、上記満タン規制位置を高くすることができるようになっている。
【0086】
すなわち、この弁装置10においては、ロアー部材40の組付け部43において、中間弁体50に係合する第2突起47の係合面(第2係合面47a)は、アッパー部材60に係合する第1突起45の軸方向高さの範囲内に位置しており、中間弁体50の第2弾性係合片51は、第1突起45の間に入り込んで、第2突起47に係合すると共に(
図2,6参照)、アッパー部材60の第1弾性係合片70は、中間弁体50の第2弾性係合片51の間から延びる第1突起45に係合するようになっている(
図5参照)。
【0087】
そのため、ロアー部材40に中間弁体50とアッパー部材60とを組付けてフロート弁19を組み立てたとき、ロアー部材40と中間弁体50との係合面である、第2突起47の、第2弾性係合片51に対する係合面(第2係合面47a)と、ロアー部材40とアッパー部材60との係合面である、第1突起45の、第1弾性係合片70に対する係合面(第1係合面45b)との、軸方向の高さを近づけることができる。
【0088】
したがって、上記特許文献1のように、アッパー部材を係止する係合部と、中間弁体を係止する環状突部とが2段に分かれて配置された構造の場合と比べて、ロアー部材の軸方向の長さ及び、ロアー部材に中間弁体とアッパー部材とを組付けたフロート弁全体の軸方向の長さ(全高)を短くすることができる。
【0089】
その結果、ロアー部材40の高さを低くすることができるので、フロート弁19の全体の高さを低くすることができる。これにより、上記満タン規制位置を高くすることができ、燃料タンク内への燃料の供給量を高めることが可能となる。また、満タン規制位置を高くすることができるので、燃料タンクの満タン検知液面をタンク上方に設定することができ、薄型タンク等にも適用しやすくなり、タンクレイアウト性を向上させることができる。
【0090】
なお、この実施形態における弁装置10は、上述したように、燃料タンク内の液面が設定された満タン液面に達すると、開口25を閉塞してそれ以上の過給油を防止する、いわゆる満タン規制弁として機能するが、燃料の揺動等によって燃料タンク内の液面が異常に上昇したときに、フロート弁19が開口25を閉塞して燃料の外部漏出を防ぐ、いわゆる燃料流出防止弁として機能してもよい。
【0091】
例えば、車両が、カーブを曲がったり、凹凸のある道や坂道等を走行したり、或いは、事故によって転倒したり反転したりして、燃料タンク内の燃料が揺動して燃料液面が上昇すると、スプリング38の付勢力及びフロート弁19自体の浮力によって、フロート弁19が上昇して、シール部材80のシールフランジ83が開口25の裏側周縁部に当接して、同開口25を閉塞するので、燃料が開口25を通じて通気室R内に流入することが阻止されて、燃料タンク外部への燃料漏れを防止することができる。
【0092】
また、この実施形態においては、第1突起45の軸方向の上端部に、テーパ部45aが形成されており、第2突起47の、第2弾性係合片51に対する係合面(第2係合面47a)は、テーパ部45aの軸方向高さW1の範囲内に位置している(
図6参照)。
【0093】
上記態様によれば、第1突起45の軸方向の上端部に、テーパ部45aが形成されているので、アッパー部材60をロアー部材40に組付ける際に、第1弾性係合片70が第1突起45のテーパ部45aに押圧されてアッパー部材60の外径方向に撓んで、第1突起45を乗り越え易くなるため、ロアー部材40の組付け部43に対するアッパー部材60の組付作業性を向上できる。
【0094】
また、第2係合面47aは、テーパ部45aの軸方向高さの範囲内に位置しているので、第2突起47の、第2弾性係合片51に対する係合面(第2係合面47a)と、第1突起45の、第1弾性係合片70に対する係合面(第1係合面45b)との、軸方向の高さをより近づけることができ、フロート弁19の軸方向の長さをより短くすることができる。
【0095】
よって、ロアー部材40に対するアッパー部材60の組付け作業性を向上させながら、満タン規制位置を上昇させることができる。
【0096】
更に、この実施形態においては、中間弁体50は第2弾性係合片51を複数有していると共に、複数の第2弾性係合片51の間には周壁53が設けられており、周壁53は、軸方向下端が開口した切欠き55を有しており、該切欠き55を介して、第1突起45が径方向外側に突出している(
図4参照)。
【0097】
上記態様によれば、中間弁体50は第2弾性係合片51を複数有していると共に、複数の第2弾性係合片51の間には周壁53が設けられており、周壁53は、軸方向下端が開口した切欠き55を有しているので、中間弁体50をロアー部材40に組付ける際に、周壁53に設けた切欠き55がガイドとなり、ロアー部材40に対するアッパー部材60の組付け作業性をより向上させることができる。
【0098】
また、この実施形態においては、第1突起45の上面と第2突起47の上面とが同一平面上に配置されている(
図2参照)。
【0099】
上記態様によれば、第1突起45の上面と第2突起47の上面とが同一平面上に位置するので、ロアー部材40の、組付け部43の形状を単純化でき、ロアー部材40の成形性を向上することができる。
【0100】
また、第1突起45の上面と第2突起47の上面とが同一平面であるので、ロアー部材の軸方向の高さを低くすることができ、満タン規制位置を更に上昇させることができる。
【0101】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
10 燃料タンク用弁装置(弁装置)
15 ハウジング
19 フロート弁
20 ハウジング本体
40 ロアー部材
43 組付け部
45 第1突起
45a テーパ部
47 第2突起
50 中間弁体
51 第2弾性係合片
53 周壁
55 切欠き
60 アッパー部材
61 天井部
70 第1弾性係合片