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特開2024-102649レゾルバの制御方法及びレゾルバの制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102649
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】レゾルバの制御方法及びレゾルバの制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006682
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 正典
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA36
2F077CC02
2F077FF34
2F077FF39
2F077PP26
2F077TT82
(57)【要約】
【課題】消費電流を抑制可能なレゾルバの制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
制御装置20は、励磁周波数を設定する周波数設定部25と、設定された励磁周波数の励磁信号を出力する励磁信号出力部22と、励磁コイルが消費する消費電流を算出する消費電流算出部24と、を備え、励磁周波数を徐々に変更しながら、変更された励磁周波数毎に励磁信号を出力する第1ステップと、出力された励磁信号に基づいて、変更された励磁周波数毎に消費電流を算出する第2ステップと、算出された消費電流が最小となる励磁周波数を検出する第3ステップと、検出された励磁周波数を励磁コイルに出力する励磁周波数として決定する第4ステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転を検出するレゾルバの制御方法であって、
前記レゾルバが有する励磁コイルに励磁信号を出力する制御装置が備えられ、
前記制御装置は、励磁周波数を設定する周波数設定部と、設定された前記励磁周波数の前記励磁信号を出力する励磁信号出力部と、前記励磁コイルが消費する消費電流を算出する消費電流算出部と、を備え、
前記励磁周波数を徐々に変更しながら、変更された前記励磁周波数毎に前記励磁信号を出力する第1ステップと、
出力された前記励磁信号に基づいて、変更された前記励磁周波数毎に前記消費電流を算出する第2ステップと、
算出された前記消費電流が最小となる前記励磁周波数を検出する第3ステップと、
検出された前記励磁周波数を前記励磁コイルに出力する前記励磁周波数として決定する第4ステップと、を含む、
レゾルバの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレゾルバの制御方法であって、
前記第1ステップでは、設定し得る最大又は最小の前記励磁周波数から、前記励磁周波数を小さく又は大きくしながら、当該励磁周波数毎に前記励磁信号を出力する、
レゾルバの制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載のレゾルバの制御方法であって、
前記レゾルバは、車両に搭載され、
前記車両を起動させるスタート信号を受信したときに、前記第1ステップから前記第4ステップを実行する、
レゾルバの制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載のレゾルバの制御方法であって、
前記車両の起動後、所定の間隔で、前記第1ステップから前記第4ステップを実行する、
レゾルバの制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載のレゾルバの制御方法であって、
前記第3ステップでは、算出された前記消費電流が予め設定された所定の閾値よりも小さいときの前記励磁周波数を検出する、
レゾルバの制御方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のレゾルバの制御方法であって、
前記レゾルバの温度を検出する温度検出部を備え、
前記温度が所定温度以上である場合に、前記第1ステップから前記第4ステップの実行を中止する、
レゾルバの制御方法。
【請求項7】
回転体の回転を検出するレゾルバが有する励磁コイルに励磁信号を出力するレゾルバの制御装置であって、
前記励磁信号の励磁周波数を設定する周波数設定部と、
前記周波数設定部が設定した前記励磁周波数に基づいて前記励磁信号を出力する励磁信号出力部と、
出力された前記励磁信号に基づいて前記励磁コイルが消費する消費電流を算出する消費電流算出部と、
を備え、
前記周波数設定部は、
前記励磁周波数を徐々に変更し、
変更された前記励磁周波数毎に前記励磁信号出力部が出力する前記励磁信号に基づき、変更された前記励磁周波数毎に前記消費電流算出部が算出した前記消費電流が最小となる前記励磁周波数を検出し、
検出された前記励磁周波数を、前記励磁コイルに出力する前記励磁周波数として決定する、
レゾルバの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバの制御方法及びレゾルバの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の回転(回転角度)を検出するためにレゾルバが広く用いられている。特許文献1には、励磁コイルとコンデンサとを備え、励磁コイルとコンデンサとからなる共振回路の振幅が大きくなるように励磁信号を設定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5258079号公報
【発明の概要】
【0004】
特許文献1に記載のように、励磁コイルとコンデンサとからなる共振回路においては、励磁信号を共振回路の共振周波数に設定することにより、励磁コイルに印加される電圧を高く維持することができる。一方で、励磁コイルやコンデンサの部品毎のばらつきや温度変化により、共振周波数が変化する場合がある。このような場合は、励磁信号の周波数と共振周波数とにずれが発生し、励磁信号に必要な電圧を維持するための消費電流が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、共振周波数が変化した場合であっても、消費電流を抑制可能なレゾルバの制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様は、回転体の回転を検出するレゾルバの制御方法に適用される。レゾルバが有する励磁コイルに励磁信号を出力する制御装置は、励磁周波数を設定する周波数設定部と、設定された励磁周波数の励磁信号を出力する励磁信号出力部と、励磁コイルが消費する消費電流を算出する消費電流算出部と、を備える。レゾルバの制御方法は、励磁周波数を徐々に変更しながら、変更された励磁周波数毎に励磁信号を出力する第1ステップと、出力された励磁信号に基づいて、変更された励磁周波数毎に消費電流を算出する第2ステップと、算出された消費電流が最小となる励磁周波数を検出する第3ステップと、検出された励磁周波数を励磁コイルに出力する励磁周波数として決定する第4ステップと、を含む。
【0007】
本発明によれば、励磁周波数を徐々に変更しながら消費電流が最も小さくなる周波数を検出することで、最適な共振周波数を設定することができる。これにより、共振周波数が変化した場合であっても、レゾルバの消費電流を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のレゾルバの制御装置の構成図である。
図2図2は、制御装置が行う処理のフローチャートである。
図3図3は、励磁周波数と消費電流との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るレゾルバ制御システム1の説明図である。
【0011】
レゾルバ制御システム1は、レゾルバ10と制御装置20とを備える。
【0012】
レゾルバ10は、回転体14の周囲に配置される励磁コイル11と出力コイル12、13とにより構成される。励磁コイル11が、入力された励磁信号により励磁される。出力コイル12、13は、回転体14の回転に対応して、それぞれ異なる相の出力信号を出力する。
【0013】
制御装置20は、レゾルバ10の励磁コイル11に励磁信号を出力する。
【0014】
制御装置20は、コンデンサ15、励磁信号設定部21、励磁信号出力部22、電流検出部23、消費電流算出部24及び周波数設定部25を備える。
【0015】
コンデンサ15は、励磁コイル11に並列に接続され、励磁コイル11との間で共振回路を形成する。
【0016】
励磁信号設定部21は、周波数設定部25により設定された周波数の信号(サイン波)を励磁信号出力部22に出力する。
【0017】
励磁信号出力部22は、励磁信号設定部21から入力された信号に基づいて、励磁コイル11を励磁させるための励磁信号を出力する。
【0018】
電流検出部23は、例えばシャント抵抗により構成され、励磁信号出力部22が出力する励磁信号の電流値を検出する。
【0019】
消費電流算出部24は、電流検出部23が検出した電流値に基づいて、励磁信号出力部22が励磁コイル11に出力する励磁信号の消費電流を算出する。
【0020】
周波数設定部25は、励磁信号設定部21が出力する信号の周波数を決定して、励磁信号設定部21に決定した周波数を出力する。周波数設定部25には、温度センサ18からの温度信号が入力される。温度センサ18は、レゾルバ10の温度(例えばレゾルバ10が備えられるモータの冷却水温度)を検出する。
【0021】
レゾルバ制御システム1は、車両に搭載され、車両を駆動するモータの回転軸の回転を検出する。回転軸にはロータコアが備えられ、これらが回転体14として構成される。回転体14の周囲に励磁コイル11、出力コイル12、13が配置される。制御装置20は、車両の動作を司る車両側コンピュータと通信を行い、車両側コンピュータから車両の動作を開始するスタート信号を受信したときに動作を開始する。
【0022】
次に、このように構成された制御装置20の動作を説明する。
【0023】
レゾルバ10の励磁コイル11は、コンデンサ15との間で共振回路を形成している。この共振回路の共振周波数は、励磁コイル11の固有のインダクタンスとコンデンサ15の固有の静電容量とにより定まる。そこで、制御装置20において、周波数設定部25が、この共振周波数と等しい又はほぼ等しい周波数を励磁信号設定部21に設定し、励磁信号出力部22が、これに基づいた周波数の励磁信号を励磁コイル11に供給する。
【0024】
このように、共振周波数に等しい又はほぼ等しい周波数の励磁信号を励磁コイル11に入力することにより、レゾルバ10が回転を検出するために励磁コイル11が必要とする励磁電圧を発生させるのに必要な消費電流が最も少なくなる。従って、励磁信号が共振周波数に等しい又はほぼ等しい周波数である場合に、制御装置20が出力する励磁信号が最も少ない消費電流で済むことになる。
【0025】
ここで、共振周波数について説明する。
【0026】
共振周波数は、設計時における励磁コイル11のインダクタンスとコンデンサ15の静電容量とから一意に定まる値である。ところで、温度変化や経年変化、部品の個体差等により、インダクタンス及び静電容量の少なくとも一方が設計値から変化する場合がある。
【0027】
インダクタンス又は静電容量が変化した場合は、それに伴い共振周波数が変化し、設計時の共振周波数に対してずれが発生する。このとき、制御装置20が設計時における共振周波数の励磁信号を出力すると、設計時の共振周波数と実際の共振周波数とのずれから、励磁コイル11の励磁電圧が小さくなってしまう。従って、励磁コイル11に必要とされる励磁電圧を発生させるためには、制御装置20が出力する励磁信号の電流値を大きくする必要があり、制御装置20の消費電流が大きくなってしまうという問題があった。
【0028】
そこで、本実施形態では、次のような構成により、消費電力を抑制した。
【0029】
図2は、本実施形態の制御装置20の動作を示すフローチャートである。
【0030】
車両側コンピュータは、運転者によってパワースイッチ(又はイグニッションキー)が操作され、車両の動作が開始することを検出しときに、スタート信号を制御装置20に送信する。図2に示すフローチャートは、制御装置20がこのスタート信号を受信したときに開始される。
【0031】
フローチャートが開始されると、ステップS10において、周波数設定部25は、設定可能な最大の励磁周波数である初期値としての周波数Fm0を設定し、これを示す信号を励磁信号設定部21に出力する。
【0032】
設定可能な最大の励磁周波数とは、励磁信号出力部22が励磁コイル11に出力することができる励磁信号の励磁周波数の最大値である。例えば、励磁信号出力部22が、励磁周波数が7kHz~14kHzの範囲で励磁信号を出力可能に構成されている場合は、周波数設定部25は、励磁信号設定部21に、周波数Fm0として14kHzを示す信号を出力する。
【0033】
これにより、励磁信号設定部21が、設定された周波数Fm0の信号を励磁信号出力部22に出力する。励磁信号出力部22は、この信号に基づいて、励磁周波数が周波数Fm0に設定された励磁信号Vt0を出力する。出力される励磁信号Vt0は、レゾルバ10において、励磁信号により励磁された励磁コイル11対して、出力コイル12、13が十分な信号を出力するために必要な電圧値となるように、励磁信号出力部22により調整された信号である。なお、この励磁信号Vt0は、ステップS20及びステップS40において消費電流を算出するために出力させる信号であって、レゾルバ10により回転を検出させるための励磁信号とは異なる。
【0034】
次に、ステップS20において、消費電流算出部24は、励磁信号出力部22が出力する励磁信号Vt0により励磁コイル11が消費する消費電流を算出する。消費電流算出部24は、励磁信号出力部22が出力する励磁信号の電流値を電流検出部23により検出し、検出した電流値に基づいて、励磁信号の消費電流を算出する。消費電流算出部24は、算出された消費電流の値を前回値A0として記憶する。
【0035】
次に、ステップS30において、周波数設定部25が、ステップS10で設定した周波数Fm0から1ステップ減少させた周波数Fm1を、励磁信号設定部21に設定する。1ステップとは、周波数設定部25が変更可能な周波数の最小単位であり、例えば0.1kHzに設定される。従って、ステップS10において周波数設定部25が周波数Fm0を14kHzに設定した場合は、ステップS30では、周波数Fm1が13.9kHzに設定される。このときもステップS10と同様に、励磁信号設定部21が、設定された周波数Fm1の信号を励磁信号出力部22に出力し、励磁信号出力部22が、この信号に基づいて励磁コイル11を励磁させるための励磁信号Vt1を出力する。
【0036】
次に、ステップS40において、消費電流算出部24は、ステップS20と同様に、励磁信号出力部22が出力した励磁信号Vt1の消費電流を算出する。消費電流算出部24は、励磁信号出力部22が出力する励磁信号Vt1の電流値を電流検出部23により検出し、検出した電流値に基づいて、励磁信号の消費電流を算出する。消費電流算出部24は、算出された消費電流の値を今回値A1として記憶する。
【0037】
次に、ステップS50において、周波数設定部25が、記憶された前回値A0と今回値A1とを比較し、前回値A0よりも今回値A1が小さいか否かを判定する。
【0038】
前回値A0が今回値A1以上である場合は、ステップS30に戻り、周波数設定部25が、さらに1ステップ(例えば0.1kHz)減少させた周波数Fm1を励磁信号設定部21に設定する。そして、ステップS40において、この周波数Fm1により励磁信号出力部22が出力する励磁信号Vt1の消費電流を算出する。このとき、消費電流算出部24は、今回値A1を前回値A0として記憶しなおし、新たに算出された消費電流の値を、今回値A1として記憶する。
【0039】
ステップS50において、前回値A0が今回値A1よりも小さい場合は、前回値A0における周波数が、消費電力が最も小さくなる周波数、すなわち共振周波数にほぼ等しいと判断できる。そこで、この場合は、ステップS60に移行し、周波数設定部25は、ステップS50における前回値A0に対応する周波数Fm1を、レゾルバ10により回転を検出させるための励磁信号Vsの励磁周波数Fsとして、励磁信号設定部21に設定する。
【0040】
励磁信号設定部21は、設定された励磁周波数Fsに対応する信号を励磁信号出力部22に出力する。励磁信号出力部22は、この信号に基づいて励磁コイル11を励磁させるための励磁信号Vsを励磁コイル11に出力する。
【0041】
レゾルバ10において、励磁コイル11に励磁信号Vsが入力されることで、出力コイル12、13に、回転体14の回転に対応する信号が出力される。
【0042】
図3は、本実施形態の励磁コイル11における励磁信号の励磁周波数と消費電流との関係を示す説明図である。
【0043】
図3において、破線Bが、励磁コイル11とコンデンサ15とが、それぞれ設計時のインピーダンス及び静電容量である場合の励磁周波数と消費電流との関係を示すグラフである。これに対して、実線Aは、車両が動作を開始したときの励磁周波数と消費電流との関係を示すグラフである。
【0044】
破線Bに示すように、設計時では、消費電流が最も小さくなる励磁周波数、すなわち共振周波数がFeであるとき、消費電流Iuが最も小さな値となる。一方で、車両が動作を開始したとき、励磁コイル11とコンデンサ15との個体差や温度による影響等により、励磁周波数と消費電流との関係が実線Aのように変化し、共振周波数がFcに変化する。このとき、周波数設定部25が、設計時における励磁周波数Feを出力するように設定した場合は、これによる励磁信号の消費電流は図3に示すように消費電流Irとなる。従って、レゾルバ10が回転を検出するために消費される消費電流が(Ir-Iu)分だけ設計時より多く必要となってしまう。
【0045】
そこで、制御装置20が図2に示すフローチャートを実行することで、最も消費電流を抑制できる周波数を設定することができる。
【0046】
まず、図2のフローチャートのステップS10において、図3に示す励磁周波数Faが設定可能な最大の周波数である周波数Fmとして設定される。このときの消費電流Isが、前回値A0として記憶される。
【0047】
次に、ステップS30において、1ステップ(例えば0.1kHz)減少させた励磁周波数Fbが周波数Fm1に設定される。このときの消費電流Itが、今回値A1として記憶される。この場合、今回値A1は前回値A0よりも小さいので、ステップS50がNOとなり、ステップS30及びステップS40の処理が繰り返される。
【0048】
その後、図3に示す励磁周波数Fcにおける消費電流Ivが前回値A0として記憶され、励磁周波数Fdにおける消費電流Iuが前回値A1として記憶された場合は、今回値A1は前回値A0以上とある。すなわち、最大の励磁周波数Faから周波数を1ステップずつ徐々に小さくしながら消費電流を算出する過程において、消費電流Iuが最も小さい値となる。このときの励磁周波数Fcが共振周波数にほぼ等しいと判断できる。
【0049】
このように、励磁周波数と消費電流との関係が、破線Bから実線Aのように変化した場合であっても、制御装置20が図2に示すフローチャートを実行することにより、最も消費電流が小さくなる周波数を、励磁コイル11に入力する励磁信号の励磁周波数として設定することができる。
【0050】
なお、図2のフローチャートのステップS10において、設定可能な最大の周波数を周波数Fm0として設定したが、設定可能な最小の周波数(図3における励磁周波数Ff)を周波数Fm0として設定してもよい。この場合は、ステップS30において、周波数Fm0から1ステップ(例えば0.1kHz)増加させた周波数Fm1が設定される。さらに、周波数Fm0は設定可能な最大又は最小の周波数ではなく、共振周波数を中心とする所定の周波数幅(例えば5kHz)の最大値又は最小値に設定してもよい。
【0051】
また、図2のフローチャートのステップS50において、前回値A0と今回値A1とを比較したが、今回値A1と、予め設定された最小の消費電流A2とを比較するようにしてもよい。すなわち、励磁コイル11の消費電流が十分に小さいと判断できる値(消費電流A2)であれば、その時点での周波数を励磁周波数として設定することで、以降のフローチャートの動作を省略でき、厳密に最も消費電流が小さくなる周波数を検出するまでの時間が短縮される。この消費電流A2は、例えば設計値での共振周波数における消費電流に、5%の余裕分を付加した値に設定される。なお、この場合は、車両の動作が停止し再びスタート信号を受信するまで、設定した励磁周波数が維持される。
【0052】
また、制御装置20は、図2のフローチャートを車両の動作が開始したときに実行したが、車両の走行時に所定の間隔(例えば5分)で、図2のフローチャートを実行してもよい。車両が動作している場合は、モータやインバータ等の温度が変化するため、これに伴い、励磁コイル11とコンデンサ15との温度も変化する。そこで、この温度変化に対応するように所定の間隔で図2のフローチャートを実行することで、レゾルバ10の消費電流を常に最適とさせることができる。また所定の間隔だけでなく、温度センサ18が取得した温度の単位時間あたり変化が大きい場合に、図2のフローチャートを追加して実行するように構成してもよい。
【0053】
また、制御装置20は、温度センサ18が検出する温度が所定の温度(例えば120度)以上である場合は、図2のフローチャートの実行を中止してもよい。レゾルバ10の温度が十分に高い場合は、励磁コイル11及びコンデンサ15の特性の変化の度合いは小さくなる。そのため、レゾルバ10の温度が十分に高いと判断できる場合は、励磁周波数を変更する処理を省略することができる。この所定温度は、車両が高負荷のまま連続で走行した場合など、車両のモータやインバータが比較的高温の状態となる値に設定する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態では、レゾルバ10が有する励磁コイル11に励磁信号を出力する制御装置20が備えられ、制御装置20は、励磁周波数を設定する周波数設定部25と、設定された励磁周波数の励磁信号を出力する励磁信号出力部22と、励磁コイル11が消費する消費電流を算出する消費電流算出部24と、を備える。そして、レゾルバ10の制御方法においては、励磁周波数を徐々に変更しながら、変更された励磁周波数毎に励磁信号を出力する第1ステップと、出力された励磁信号に基づいて、変更された励磁周波数毎に消費電流を算出する第2ステップと、算出された消費電流が最小となる励磁周波数を検出する第3ステップと、検出された励磁周波数を励磁コイル11に出力する励磁周波数として決定する第4ステップと、を含む。
【0055】
この構成では、励磁周波数を徐々に変更しながら消費電流が最も小さくなる周波数を検出することで、最適な励磁周波数を設定することができる。これにより、部品の個体差や温度変化、経年変化等により共振周波数が変化した場合であっても、レゾルバ10の消費電流を抑制することが可能となる。
【0056】
また、本実施形態の、第1ステップでは、設定し得る最大又は最小の励磁周波数から、励磁周波数を小さく又は大きくしながら、当該励磁周波数毎に前記励磁信号を出力する。この構成では、最も消費電流が小さくなる励磁周波数を検出することができる。
【0057】
また、本実施形態では、レゾルバ10は、車両に搭載され、車両を起動させるスタート信号を受信したときに、第1ステップから第4ステップを実行する。この構成では、レゾルバ10が車両に搭載される構成であっても、車両の起動時に励磁周波数を決定することで、レゾルバ10の消費電流を抑制することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、車両の起動後、所定の間隔で、第1ステップから第4ステップを実行する。この構成では、レゾルバ10が車両に搭載される構成において、温度等の環境が変化したとしても、最適な励磁周波数を決定することができ、レゾルバ10の消費電流を抑制することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態の第3ステップでは、算出された消費電流が予め設定された所定の閾値よりも小さいときの励磁周波数を検出する。この構成では、消費電流が十分に小さいと判断できる値であれば、そのときの励磁周波数を用いることで、以降のステップを省略でき、システムの省力化を図れる。
【0060】
また、本実施形態では、レゾルバ10の温度を検出する温度検出部としての温度センサ18を備える。そして、検出された温度が所定温度以上である場合に、第1ステップから第4ステップの実行を中止する。この構成では、共振周波数の温度変化が十分に小さいと判断できる値であれば、以降のステップを省略でき、システムの省力化を図れる。
【0061】
以上本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0062】
前述した図2のフローチャートのステップS20では、1ステップとして設定可能な最小の周波数を設定するとしたが、これに限られない。1ステップが所定の周波数間隔(例えば1kHz)であってもよいし、最大の周波数と最小の周波数との間を複数に区切って(例えば50段階)この区切りを1ステップとして設定してもよい。
【0063】
また、ステップS10及びステップS30において出力される励磁信号Vt0、Vt1は、消費電流を算出するために出力させる信号であって、レゾルバ10により回転を検出させるための励磁信号とは異なるとしたが、これに限られない。レゾルバ10が、出力コイル12、13の出力により回転を検出しながら、励磁コイル11に入力される励磁信号の励磁周波数を徐々に変化させて、消費電流が最も小さくなる励磁周波数を検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10:レゾルバ、11:励磁コイル、14:回転体、15:コンデンサ、18:温度センサ、20:制御装置、21:励磁信号設定部、22:励磁信号出力部、23:電流検出部、24:消費電流算出部、25:周波数設定部
図1
図2
図3