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特開2024-102655コイル導体およびそれを含むインダクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102655
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】コイル導体およびそれを含むインダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
H01F17/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006692
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 朋史
(72)【発明者】
【氏名】小松 聖虎
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070BB03
5E070CA01
5E070CA16
(57)【要約】
【課題】渦電流損の抑制が図られたコイル導体およびそれを含むインダクタを提供する。
【解決手段】 インダクタ1は、各コイル導体20が複数の導体板28を含む積層構造を有する。そのため、各コイル導体20は、各導体板28が延在する面方向には電流が流れやすく、それに比べて、各導体板28の厚さ方向には電流が流れにくくなっている。そのため、各コイル導体20に電圧が印加され、各コイル導体20を電流が流れた際に生じる磁束により渦電流が生じた場合であっても、導体板28の厚さ方向に流れる渦電流の流れが阻害されるため、その渦電流に起因する損失を抑制することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延びる第1導体と、前記第1方向に沿って延びるとともに前記第1方向に対して直交する第2方向において前記第1導体と隣り合う第2導体と、前記第2方向に沿って延びて前記第1導体と前記第2導体とを連結する第3導体とを備え、コイルのターンの一部を構成するコイル導体であって、
前記第1導体に対応する第1部分、前記第2導体に対応する第2部分、および前記第3導体に対応する第3部分を含む導体板を複数備え、該複数の導体板が前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において積層された、コイル導体。
【請求項2】
前記第1導体および前記第2導体は、前記第2方向に並んで位置する第1端部同士が前記第3導体により連結されており、
前記第1導体および前記第2導体の前記第2方向に並んで位置する第2端部から前記第2方向に沿ってそれぞれ延びる一対の第4導体をさらに備える、請求項1に記載のコイル導体。
【請求項3】
前記導体板が、前記一対の第4導体に対応する第4部分を含む、請求項2に記載のコイル導体。
【請求項4】
前記第1方向に関する前記第4導体の長さが、前記第2方向に関する前記第1導体および前記第2導体の長さより短い、請求項2に記載のコイル導体。
【請求項5】
前記各第4導体が、前記第1導体または前記第2導体に接続される基端部と、前記第1導体または前記第2導体から離れた側に位置する先端部と、前記基端部と前記先端部との間に位置する本体部とを有し、前記第1方向に関する前記先端部の長さが前記本体部の長さより長い、請求項2に記載のコイル導体。
【請求項6】
前記第1方向に関する前記第4導体の長さが、前記導体板の厚さより長い、請求項2に記載のコイル導体。
【請求項7】
前記第1方向に関する前記第3導体の長さが、前記第2方向に関する前記第1導体および前記第2導体の長さより短い、請求項1に記載のコイル導体。
【請求項8】
前記複数の導体板は絶縁層を介して積層されている、請求項1に記載のコイル導体。
【請求項9】
前記複数の導体板が、前記第3方向に関して最外に位置する一対の第1導体板と内側に位置する複数の第2導体板とを有し、前記第1導体板が前記第2導体板より薄い、請求項1に記載のコイル導体。
【請求項10】
前記導体板の前記第3方向において対面する一対の主面のうちの一方の外縁が、前記第3方向から見て他方の外縁より外側にある、請求項1に記載のコイル導体。
【請求項11】
請求項10に記載のコイル導体と、該コイル導体の少なくとも一部の表面を覆う樹脂とを備えるインダクタであって、
前記樹脂が、前記第1導体および前記第2導体の第2方向に関する端面の少なくとも一部、または、前記第3導体の前記第1方向に関する端面の少なくとも一部を覆う、インダクタ。
【請求項12】
前記第1導体および前記第2導体は、前記第2方向に並んで位置する第1端部同士が前記第3導体により連結されており、
前記第1導体および前記第2導体の前記第2方向に並んで位置する第2端部から前記第2方向に沿ってそれぞれ延びる一対の第4導体をさらに備え、
前記導体板が、前記一対の第4導体に対応する第4部分をさらに含み、
前記樹脂が、前記各第4導体の前記第1方向に関する端面および前記第2方向に関する端面の少なくとも一部を覆う、請求項11に記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイル導体およびそれを含むインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、1対の貫通孔が設けられた圧粉磁芯と、圧粉磁芯の1対の貫通孔の両方を貫通する1本のコイル導体とを備えた構成のインダクタが開示されている。本文献に開示されたコイル導体は、同じ長さを有するとともに平行に並ぶ一対の並列導体と、各並列導体の同じ側の端部から略直角に延びて一対の並列導体同士をつなぐ連結導体とを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-022724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係るコイル導体においては、電流が流れた際に生じる磁束により渦電流が生じ、その渦電流に起因する損失(渦電流損)が生じる。
【0005】
発明者らは、コイル導体の渦電流損について研究を重ね、渦電流損を抑制することができる技術を新たに見出した。
【0006】
本開示は、渦電流損の抑制が図られたコイル導体およびそれを含むインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係るコイル導体は、第1方向に沿って延びる第1導体と、前記第1方向に沿って延びるとともに前記第1方向に対して直交する第2方向において前記第1導体と隣り合う第2導体と、前記第2方向に沿って延びて前記第1導体と前記第2導体とを連結する第3導体とを備え、コイルのターンの一部を構成するコイル導体であって、前記第1導体に対応する第1部分、前記第2導体に対応する第2部分、および前記第3導体に対応する第3部分を含む導体板を複数備え、該複数の導体板が前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において積層されている。
【0008】
本開示の一形態に係るインダクタは、上記コイル導体と、該コイル導体の少なくとも一部の表面を覆う樹脂とを備えるインダクタであって、前記樹脂が、前記第1導体および前記第2導体の第2方向に関する端面の少なくとも一部、または、前記第3導体の前記第1方向に関する端面の少なくとも一部を覆っている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、渦電流損の抑制が図られたコイル導体およびそれを含むインダクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るインダクタを示す概略斜視図である。
図2図1のインダクタを端面から見た図である。
図3図1、2のコイル導体を示した概略斜視図である。
図4図1、2のコイル導体を示した正面図である。
図5図3のコイル導体のV-V線断面図である。
図6】異なる態様のコイル導体を示した図である。
図7】異なる態様のコイル導体を示した図である。
図8】異なる態様のコイル導体を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
図1に、一実施形態に係るインダクタ1を示す。インダクタ1は、素体10と、一つのコイル導体20とを備えて構成されている。
【0013】
素体10は、略直方体の外形を有する。素体10は、磁性材料12で構成されている。磁性材料12は、たとえば軟磁性金属粉と樹脂との混合物で構成されている。軟磁性金属粉は、たとえば鉄、鉄-ケイ素合金、パーマロイ、センダスト、アモルファス、微結晶合金の粉末を用いることができ、これらを組み合わせてもよい。樹脂は、たとえばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。また、磁性材料12は、たとえば複数の磁性薄帯が積層された構成であってもよく、フェライトコアであってもよい。磁性材料12は、1種で構成されていてもよく、2種以上の組合せで構成されていてもよい。素体10は、上面10a、下面10b、互いに対面する一対の端面10c、10dおよび互いに対面する一対の側面10e、10fを有する。
【0014】
コイル導体20は、図1、2に示すとおり、細長い帯状導体が略矩形波状となった構成を有する。より詳しくは、コイル導体20は、一対の並列部21と連結部22と一対の端子部23とを備えて構成されている。コイル導体20は、単独でコイルのターンの一部を構成している。本実施形態では、コイル導体20は、約3/4ターンのコイルを構成している。
【0015】
一対の並列部21は第1の並列部21A(第1導体)および第2の並列部21B(第2導体)で構成されており、第1の並列部21Aと第2の並列部21Bとは同じ長さを有し、互いに平行に延びている。図1に示すようにコイル導体20が素体10に取り付けられた状態では、一対の並列部21は素体10の厚さ方向(すなわち、上面10aと下面10bとの対面方向)に延びている。以下、並列部21の延在方向を第1方向とも称す。第1の並列部21Aおよび第2の並列部21Bはいずれも上面10a側に位置する上端部21a(第1端部)を有し、上端部21a同士は一対の側面10e、10fの対面方向に並んで位置している。同様に、第1の並列部21Aおよび第2の並列部21Bはいずれも下面10b側に位置する下端部21b(第2端部)を有し、下端部21b同士は一対の側面10e、10fの対面方向に並んで位置している。一対の並列部21はいずれも、図3に示すように、その延在方向に対して直交する断面において矩形状断面を有し、素体10の端面10c、10dに対して平行である側面21c、21dを有するとともに、素体10の側面10e、10fに対して平行である外側面21eおよび内側面21fを有する。並列部21の側面21cは素体10の端面10c側を向いており、側面21dは素体10の端面10d側を向いている。並列部21の外側面21eは外方を向いており、内側面21fは内方を向いて互いに対向している。一対の並列部21はいずれも同一の方向(すなわち、素体10の上面10aと下面10bとの対面方向)に沿って延びていれば、必ずしもに互いに平行でなくてもよい。たとえば、一対の並列部21の一方または両方が素体10の上面10aと下面10bとの対面方向に対して所定角度だけ傾いていてもよく、一対の並列部21の一方が他方に対して所定角度だけ傾いていてもよい。
【0016】
連結部22(第3導体)は、一対の並列部21のそれぞれの上端部21aを連結する部分であり、素体10の一対の側面10e、10fの対面方向に一直線状に延びている。以下、連結部22の延在方向を第2方向とも称す。連結部22は、図3に示すように、その延在方向に対して直交する断面において矩形状断面を有し、素体10の上下面10a、10bに対して平行である上下面22a、22bを有するとともに素体10の端面10c、10dに対して平行である側面22c、22dを有する。連結部22の側面22cは素体10の端面10c側を向いており、側面22dは素体10の端面10d側を向いている。連結部22は、素体10の一対の側面10e、10fの対面方向に沿って延びていれば、素体10の一対の側面10e、10fの対面方向に対して所定角度だけ傾いていてもよく、素体10の上面10aと下面10bとの対面方向における上側に凸となるようにある程度湾曲していてもよい。
【0017】
一対の端子部23(第4導体)はいずれもコイル導体20の端部であり、一対の並列部21のそれぞれの下端部21bから互いに離れるように延びている。図1、2に示すようにコイル導体20が素体10に取り付けられた状態では、一対の端子部23は、素体10の下面10b上に露出し、側面10e、10fの対面方向に沿って延びる。詳しくは、一対の端子部23のうちの第1の端子部23Aが側面10eに向かって延び、第2の端子部23Bが側面10fに向かって延びる。一対の端子部23はいずれも、図3に示すように、その延在方向に対して直交する断面において矩形状断面を有し、素体10の上下面10a、10bに対して平行である上下面23a、23bを有するとともに素体10の端面10c、10dに対して平行である側面23c、23dを有する。端子部23の側面23cは素体10の端面10c側を向いており、側面23dは素体10の端面10d側を向いている。本実施形態において、各端子部23の高さh(すなわち、第1方向に関する長さ)は、各並列部21の幅W(すなわち、第2方向に関する長さ)より短くなるように構成されている。一対の端子部23は、インダクタ1の端子として機能し、インダクタ1が表面実装される回路基板側の端子と電気的に接続され得る。本実施形態では、一対の端子部23は下面10b上において終端しているが、必要に応じて側面10e、10fに沿って延びるように引き延ばしてもよい。一対の端子部23はいずれも同一の方向(すなわち、素体10の側面10e、10fの対面方向)に沿って延びていればよく、一対の端子部23の一方または両方が素体10の側面10e、10fの対面方向に対して所定角度だけ傾いていてもよい。コイル導体20は、一対の端子部23を備えない態様であってもよく、この場合、一対の並列部21の下端部21bがインダクタ1の端子として機能し、インダクタ1が表面実装される回路基板側の端子と電気的に接続され得る。
【0018】
コイル導体20は、図3に示すように複数の導体板28が積層された積層構造を有する。本実施形態では、コイル導体20は8枚の導体板28を含んで構成されている。各導体板28は、Cu、Ag、Au、Al、Niなどから選ばれる金属で構成されており、本実施形態ではCuで構成されている。導体板28は、金属板(たとえばCu板)の打ち抜き加工により形成することができる。打ち抜き加工によって形成することにより、図4に示すような主面形状を正確に再現性良く得ることができる。たとえば、一対の並列部21の平行度や一対の端子部23の下面23b(底面)の平坦度を精度よく形成することができる。導体板28は、上述した第1方向および第2方向を含む面に対して平行に延在しており、複数の導体板28は第1方向および第2方向に対して直交する方向に積層されている。すなわち、複数の導体板28は、素体10の一対の端面10c、10dの対面方向において積層されている。以下、複数の導体板28の積層方向を第3方向とも称す。コイル導体20の一対の端子部23の高さhは、各導体板28の厚さよりも長くてもよい。この場合、一対の端子部23の強度が高まり、高い実装信頼性を実現することができる。
【0019】
図4に示すように、各導体板28は、コイル導体20の第1の並列部21Aに対応する第1部分28a、第2の並列部21Bに対応する第2部分28b、連結部22に対応する第3部分28c、および一対の端子部23にそれぞれ対応する第4部分28dを含むように構成されている。
【0020】
複数の導体板は互いに同じ寸法(第3方向から見たときの平面形状寸法、第3方向に関する長さ(厚さ))であってもよく、異なる寸法であってもよい。本実施形態では、図5に示すように、複数の導体板28の厚さに関しては、最外に位置する一対の表層導体板28A(第1導体板)の厚さtが、一対の表層導体板に挟まれた複数の内部導体板28B(第2導体板)の厚さTより薄くなるように構成されている。また、本実施形態においては、各導体板28は、第3方向において対面する一対の主面28h、28iのうちの一方の外縁が、第3方向から見て他方の外縁より外側になっている。図5に示した断面では、素体10の端面10c側に近いほうの主面28h(図5で左側に位置する主面)の外縁が、素体10の端面10d側に近いほうの主面28i(図5で右側に位置する主面)の外縁より外側になっている。たとえば打ち抜き加工により導体板28を形成することで一方の外縁を他方の外縁より外側にすることができる。それにより、複数の導体板28の外縁で形成されたコイル導体20の側面が微細な楔形状が連続する粗面となる。複数の導体板28の平面形状寸法に関しては、複数の導体板28すべて同じとなるように構成されている。
【0021】
本実施形態において、複数の導体板28は接着層29を介して積層されており、導体板28と接着層29とが交互に配置されている。接着層29は、絶縁性樹脂で構成されており絶縁層として機能し得る。そのため、積層方向において隣り合う導体板28同士は、接着層29により絶縁されている。複数の接着層29の厚さは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0022】
コイル導体20は、その表面が覆われて封止されていてもよい。具体的には、コイル導体20の各並列部21の側面21e、21f、連結部22の上下面22a、22b、各端子部23の上面23aおよび端面23eが素体10を構成する樹脂で覆われていてもよい。素体10を構成する樹脂は、コイル導体25の表面の一部を覆っていてもよく、表面の全部を覆っていてもよい。
【0023】
上述したとおり、インダクタ1のコイル導体20は、コイルのターンの一部を構成するコイル導体であって、第1方向に沿って延びる第1の並列部21Aと、第1方向に沿って延びるとともに第1方向に対して直交する第2方向において第1の並列部21Aと隣り合う第2の並列部21Bと、第2方向に沿って延びて第1の並列部21Aと第2の並列部21Bとを連結する連結部22とを備える。そして、コイル導体20は、第1方向および第2方向と直交する第3方向において積層された複数の導体板28を備えており、各導体板28は、第1の並列部21Aに対応する第1部分28a、第2の並列部21Bに対応する第2部分28b、および連結部22に対応する第3部分28cを含んでいる。
【0024】
このようなインダクタ1においては、コイル導体20が複数の導体板28を含む積層構造を有する。そのため、コイル導体20は、各導体板28が延在する面方向(すなわち、第1方向および第2方向を含む面に平行な面方向)には電流が流れやすく、それに比べて、各導体板28の厚さ方向(すなわち、第3方向)には電流が流れにくくなっている。そのため、コイル導体20に電圧が印加され、コイル導体20を電流が流れた際に生じる磁束変化により渦電流が生じた場合であっても、導体板28の厚さ方向に流れる渦電流の流れが阻害されるため、その渦電流に起因する損失を抑制することができる。また、このようなインダクタ1においては、寸法精度に優れたコイル導体20を得ることができる。
【0025】
特に、本実施形態のように、導体板28間に接着層29が介在した構成では、コイル導体20における導体板28の厚さ方向に関する電気抵抗が高いため、さらに渦電流が流れにくくなっており、渦電流に起因する損失をさらに抑制することができる。
【0026】
なお、上述したコイル導体20は図6~8に示すような態様であってもよい。
【0027】
図6に示したコイル導体20は、各端子部23が、並列部21に接続される基端部23fと、並列部21から離れた側に位置する先端部23gと、基端部23fと先端部23gとの間に位置する本体部23hとを有する。そして、端子部23の高さ(すなわち、第1方向に関する長さ)に関しては、先端部23gの高さHが本体部23hの高さhより高くなっている。図6に示した態様のコイル導体20においては、インダクタ1をはんだ実装する際、端子部23におけるはんだフィレットが増大し、高い実装信頼性を実現することができる。図6に示した態様では、各端子部23の先端部23gは先端に向かうにつれて高さが高くなっている。図7に示したコイル導体20は、連結部22の高さh(すなわち、第1方向に関する長さ)が、各並列部21の幅W(すなわち、第2方向に関する長さ)より短くなっている。図7に示した態様のコイル導体20においては、この場合、コイル導体20全体の高さが低くなり、コイル導体20およびインダクタ1の低背化を図ることができる。図8に示したコイル導体20では、一対の端子部23が、一対の並列部21のそれぞれの下端部21bから互いに近づくように延びている。図8に示した態様のコイル導体20においては、この場合も、一対の端子部23は、インダクタ1の端子として機能し、インダクタ1が表面実装される回路基板側の端子と電気的に接続され得る。
【0028】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本開示の一形態に係るコイル導体は、第1方向に沿って延びる第1導体と、前記第1方向に沿って延びるとともに前記第1方向に対して直交する第2方向において前記第1導体と隣り合う第2導体と、前記第2方向に沿って延びて前記第1導体と前記第2導体とを連結する第3導体とを備え、コイルのターンの一部を構成するコイル導体であって、前記第1導体に対応する第1部分、前記第2導体に対応する第2部分、および前記第3導体に対応する第3部分を含む導体板を複数備え、該複数の導体板が前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において積層されている。
【0030】
上記各コイル導体は、各導体板が延在する面方向(すなわち、第1方向および第2方向を含む面に平行な面方向)には電流が流れやすく、それに比べて、各導体板の厚さ方向(すなわち、第3方向)には電流が流れにくくなっている。そのため、各コイル導体に電圧が印加され、各コイル導体を電流が流れた際に生じる磁束により渦電流が生じた場合であっても、導体板の厚さ方向に流れる渦電流の流れが阻害されるため、その渦電流に起因する損失を抑制することができる。
【0031】
他の形態に係るコイル導体は、第1導体および第2導体は、第2方向に並んで位置する第1端部同士が第3導体により連結されており、第1導体および第2導体の第2方向に並んで位置する第2端部から第2方向に沿ってそれぞれ延びる一対の第4導体をさらに備える。この場合、第4導体を、コイル導体の端子として利用することができる。
【0032】
他の形態に係るコイル導体は、導体板が、一対の第4導体に対応する第4部分を含む。この場合、第4導体においても渦電流の抑制を図ることができる。
【0033】
他の形態に係るコイル導体は、第1方向に関する第4導体の長さが、第2方向に関する第1導体および第2導体の長さより短い。この場合、第1方向に関するコイル導体の長さを短縮することができ、コイル導体の低背化を図ることができる。
【0034】
他の形態に係るコイル導体は、各第4導体が、第1導体または第2導体に接続される基端部と、第1導体または第2導体から離れた側に位置する先端部と、基端部と先端部との間に位置する本体部とを有し、第1方向に関する先端部の長さが本体部の長さより長い。この場合、コイル導体(またはコイル導体を含むインダクタ)をはんだ実装する際、はんだフィレットが増大し、高い実装信頼性を実現することができる。
【0035】
他の形態に係るコイル導体は、第1方向に関する第4導体の長さが、導体板の厚さより長い。第1方向に関する第4導体の長さが導体板の厚さより薄い場合には第4導体において撓み等の変形が生じやすく平坦性が損なわれることで実装信頼性の低下につながるが、第1方向に関する第4導体の長さが導体板の厚さより長くなるように設計することで第4導体の強度が高まり、高い実装信頼性を実現することができる。
【0036】
他の形態に係るコイル導体は、第1方向に関する第3導体の長さが、第2方向に関する第1導体および第2導体の長さより短い。この場合、第1方向に関するコイル導体の長さを短縮することができ、コイル導体の低背化を図ることができる。
【0037】
他の形態に係るコイル導体は、複数の導体板は絶縁層を介して積層されている。この場合、コイル導体における導体板の厚さ方向に関する電気抵抗が高くなり、さらに渦電流が流れにくくなるため、渦電流に起因する損失をさらに抑制することができる。。
【0038】
他の形態に係るコイル導体は、複数の導体板が、第3方向に関して最外に位置する一対の第1導体板と内側に位置する複数の第2導体板とを有し、第1導体板が第2導体板より薄い。第1導体および第2導体に流れる電流によって作られる磁界は第1方向に垂直な面内に発生する。この場合、磁界は複数の導体板と第2方向および第3方向で鎖交するが、特に表層の第1導体板はその影響が大きく、厚いほど過電流が流れやすい。そのため、第1導体板の厚さを薄くすることで、第1導体板における渦電流損の抑制が図られる。特に、素体の透磁率が低いほどこの効果は大きくなり、または、素体内にエアギャップを設けた場合にこの効果は大きい。
【0039】
他の形態に係るコイル導体は、導体板の第3方向において対面する一対の主面のうちの一方の外縁が、第3方向から見て他方の外縁より外側にある。この場合、複数重なった導体板の外縁によりコイル導体に粗面が形成される。より詳しくは、コイル導体の表面のうち、第3方向において対面する一対の主面以外の面はすべて粗面となり得る。この粗面により、コイル導体と素体との密着性向上が図られる。また、コイル導体(またはコイル導体を含むインダクタ)をはんだ実装する場合には、はんだとの接合強度向上も図られる。
【0040】
本開示の一形態に係るインダクタは、上記コイル導体と、該コイル導体の少なくとも一部の表面を覆う樹脂とを備えるインダクタであって、該樹脂が、第1導体および第2導体の第2方向に関する端面の少なくとも一部、または、第3導体の第1方向に関する端面の少なくとも一部を覆っている。
【0041】
上記インダクタのコイル導体は、各導体板が延在する面方向(すなわち、第1方向および第2方向を含む面に平行な面方向)には電流が流れやすく、それに比べて、各導体板の厚さ方向(すなわち、第3方向)には電流が流れにくくなっている。そのため、各コイル導体に電圧が印加され、各コイル導体を電流が流れた際に生じる磁束により渦電流が生じた場合であっても、導体板の厚さ方向に流れる渦電流の流れが阻害されるため、その渦電流に起因する損失を抑制することができる。
【0042】
他の形態に係るインダクタは、第1導体および第2導体は、第2方向に並んで位置する第1端部同士が第3導体により連結されており、第1導体および第2導体の第2方向に並んで位置する第2端部から第2方向に沿ってそれぞれ延びる一対の第4導体をさらに備え、導体板が、一対の第4導体に対応する第4部分をさらに含み、樹脂が、各第4導体の第1方向に関する端面および第2方向に関する端面の少なくとも一部を覆っている。この場合、第4導体と周囲との絶縁を図りつつ、インダクタの実装をおこなうことができる。
【0043】
なお、本開示は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、インダクタに含まれるコイル導体は複数であってもよい。
【0044】
上述の記載から把握されるとおり、本明細書は下記を開示している。
[付記1]
第1方向に沿って延びる第1導体と、前記第1方向に沿って延びるとともに前記第1方向に対して直交する第2方向において前記第1導体と隣り合う第2導体と、前記第2方向に沿って延びて前記第1導体と前記第2導体とを連結する第3導体とを備え、コイルのターンの一部を構成するコイル導体であって、
前記第1導体に対応する第1部分、前記第2導体に対応する第2部分、および前記第3導体に対応する第3部分を含む導体板を複数備え、該複数の導体板が前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向において積層された、コイル導体。
[付記2]
前記第1導体および前記第2導体は、前記第2方向に並んで位置する第1端部同士が前記第3導体により連結されており、
前記第1導体および前記第2導体の前記第2方向に並んで位置する第2端部から前記第2方向に沿ってそれぞれ延びる一対の第4導体をさらに備える、付記1に記載のコイル導体。
[付記3]
前記導体板が、前記一対の第4導体に対応する第4部分を含む、付記2に記載のコイル導体。
[付記4]
前記第1方向に関する前記第4導体の長さが、前記第2方向に関する前記第1導体および前記第2導体の長さより短い、付記2または3に記載のコイル導体。
[付記5]
前記各第4導体が、前記第1導体または前記第2導体に接続される基端部と、前記第1導体または前記第2導体から離れた側に位置する先端部と、前記基端部と前記先端部との間に位置する本体部とを有し、前記第1方向に関する前記先端部の長さが前記本体部の長さより長い、付記2~4のいずれか一つに記載のコイル導体。
[付記6]
前記第1方向に関する前記第4導体の長さが、前記導体板の厚さより長い、付記2~5のいずれか一つに記載のコイル導体。
[付記7]
前記第1方向に関する前記第3導体の長さが、前記第2方向に関する前記第1導体および前記第2導体の長さより短い、付記1~6のいずれか一つに記載のコイル導体。
[付記8]
前記複数の導体板は絶縁層を介して積層されている、付記1~7のいずれか一つに記載のコイル導体。
[付記9]
前記複数の導体板が、前記第3方向に関して最外に位置する一対の第1導体板と内側に位置する複数の第2導体板とを有し、前記第1導体板が前記第2導体板より薄い、付記1~8のいずれか一つに記載のコイル導体。
[付記10]
前記導体板の前記第3方向において対面する一対の主面のうちの一方の外縁が、前記第3方向から見て他方の外縁より外側にある、付記1~9のいずれか一つに記載のコイル導体。
[付記11]
付記10に記載のコイル導体と、該コイル導体の少なくとも一部の表面を覆う樹脂とを備えるインダクタであって、
前記樹脂が、少なくとも、前記第1導体および前記第2導体の第2方向に関する端面の少なくとも一部、または、前記第3導体の前記第1方向に関する端面の少なくとも一部を覆う、インダクタ。
[付記12]
前記第1導体および前記第2導体は、前記第2方向に並んで位置する第1端部同士が前記第3導体により連結されており、
前記第1導体および前記第2導体の前記第2方向に並んで位置する第2端部から前記第2方向に沿ってそれぞれ延びる一対の第4導体をさらに備え、
前記導体板が、前記一対の第4導体に対応する第4部分をさらに含み、
前記樹脂が、前記各第4導体の前記第1方向に関する端面および前記第2方向に関する端面の少なくとも一部を覆う、付記11に記載のインダクタ。
【符号の説明】
【0045】
1…インダクタ、10…素体、20…コイル導体、21…並列部、22…連結部、23…端子部、28…導体板、28a…第1部分、28b…第2部分、28c…第3部分、28d…第4部分、29…接着層。
図1
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