(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102656
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
H02N2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006693
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】713013504
【氏名又は名称】株式会社ミクロブ
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】秦 良彰
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA04
5H681BB02
5H681BB13
5H681BB15
5H681DD12
5H681DD23
5H681DD36
5H681DD45
5H681DD59
5H681DD66
5H681DD88
5H681FF21
(57)【要約】
【課題】駆動軸と該駆動軸に摩擦係合する移動体又は支持体とを圧電素子の駆動によって相対移動させる駆動装置の移動速度や駆動力を向上させる。
【解決手段】駆動装置800は、駆動軸812と、該駆動軸812に摩擦係合する移動体802又は支持体と、電気信号を機械的な振動に変換する圧電素子811A,811Bとを備え、圧電素子811A,811Bの駆動により駆動軸812と移動体802又は支持体とを相対移動させる駆動装置である。駆動軸812の一端に第1圧電素子811Aが固定され、他端に第2圧電素子811Bが固定されている。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、該駆動軸に摩擦係合する移動体又は支持体と、電気信号を機械的な振動に変換する圧電素子とを備え、前記圧電素子の駆動により前記駆動軸と前記移動体又は支持体とを相対移動させる駆動装置であって、
前記駆動軸の一端に第1圧電素子が固定され、他端に第2圧電素子が固定されている、駆動装置。
【請求項2】
前記第1圧電素子の駆動を制御する第1制御部と、前記第2圧電素子を駆動する第2制御部とを備えている、請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1制御部と前記第2制御部は、波形、周波数及び位相のうち少なくとも1つが互いに異なる電気信号を前記第1圧電素子と前記第2圧電素子に同時に供給する、請求項2に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを駆動力に変換する駆動装置に関するものであって、特に、
圧電素子の駆動により機械的動作を実行する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微小部品のピックアップや組み立て、細胞操作などにマイクロマニピュレータが用いられている(例えば特許文献1参照)。特許文献1のマイクロマニピュレータは、微小な把持対象物を把持するために、作業ツールとして開閉可能な複数本の把持アームを有するマイクログリッパーを備えている。マイクロマニピュレータの作業ツールとしては、マイクログリッパーの他に、例えばピペットや注射針などが使用される。
【0003】
また、特許文献1では、把持対象物が微小なため、顕微鏡を介して把持対象物を撮像するカメラが設けられており、オペレータはディスプレイに出力された画像を参照して把持アームを操作可能になっている。また、特許文献1のマニピュレータは、把持アーム先端部を中心としてマイクログリッパーを円弧状に移動可能な姿勢変更機構と、該マイクログリッパー及び姿勢変更機構を3次元移動させるXYZ移動機構とを備え、把持アーム先端部を顕微鏡視野内で姿勢変更可能に構成している。
【0004】
一方、電気エネルギーを機械的仕事に変換する装置として、圧電素子を利用した駆動装置がある。本出願人は、ガイド部材と拘束部材とで支持された駆動軸の一端に圧電素子を取り付け、当該圧電素子を伸縮させることで駆動軸を軸方向に移動させる駆動装置を提案している(特許文献2参照)。このような駆動装置では、鋸波の単一パルス又は連続パルスを圧電素子に電圧印加し、駆動軸と該駆動軸に摩擦係合する移動体又は支持体との接触面の状態を固着状態(スティック)と滑り状態(スリップ)とに変化させて、駆動軸と移動体又は支持体とを相対移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-342844号公報
【特許文献2】特開2015-128360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の駆動装置は、駆動軸の一端に固定された圧電素子の駆動によって、駆動軸と移動体又は支持体とを高い分解能で相対移動させることができる。しかしながら、特許文献2の駆動装置は、1つの圧電素子の駆動で駆動軸と移動体又は支持体とを相対移動させるので、移動速度や駆動力を向上させるには限界があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、駆動軸と該駆動軸に摩擦係合する移動体又は支持体とを圧電素子の駆動によって相対移動させる駆動装置の移動速度や駆動力を向上させることを技術的課題としている。
【0008】
本発明の一実施態様の駆動装置は、駆動軸と、該駆動軸に摩擦係合する移動体又は支持体と、電気信号を機械的な振動に変換する圧電素子とを備え、前記圧電素子の駆動により前記駆動軸と前記移動体又は支持体とを相対移動させる駆動装置であって、前記駆動軸の一端に第1圧電素子が固定され、他端に第2圧電素子が固定されているものである。
【0009】
上記一実施態様の駆動装置によれば、駆動軸の両端に第1圧電素子及び第2圧電素子を備えているので、それらの圧電素子を同時に駆動させることで駆動装置の移動速度や駆動力を向上できる。ひいては低速、低駆動力から高速、高駆動力までの駆動可能範囲を広げることができるので汎用性が向上する。
【0010】
上記一実施態様の駆動装置において、前記第1圧電素子の駆動を制御する第1制御部と、前記第2圧電素子を駆動する第2制御部とを備えているようにしてもよい。
【0011】
このような態様によれば、駆動軸と移動体又は支持体との相対移動のストローク内(移動可能な範囲内)において、第1及び第2圧電素子のうち一方の圧電素子の駆動で上記相対移動をさせる範囲を設けることができる。
【0012】
さらに、前記第1制御部と前記第2制御部は、波形、周波数及び位相のうち少なくとも1つが互いに異なる電気信号を前記第1圧電素子と前記第2圧電素子に同時に供給するようにしてもよい。
【0013】
このような態様によれば、例えば第1及び第2圧電素子の一方を主駆動用圧電素子とし、他方を補助駆動用圧電素子とし、主駆動用圧電素子の駆動による駆動軸の振動が上記相対移動のストローク内でなるべく均一になるように、補助駆動用圧電素子に供給する電気信号を調整して補助駆動用圧電素子を駆動させることで、上記ストローク内での移動体又は支持体の移動速度や駆動力を均一にできる。また、2つの圧電素子の駆動条件(波形の差、周波数の差、位相差など)の調整自由度が増すので、高速化、高駆動力化だけでなく、低速、低駆動力側にも駆動可能範囲を広げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、駆動軸と該駆動軸に摩擦係合する移動体又は支持体とを圧電素子の駆動によって相対移動させる駆動装置の移動速度や駆動力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】グリッパー装置の構成を示す概略斜視図である。
【
図2】同グリッパー装置の制御系を示す概略構成図である。
【
図3】同グリッパー装置における伸縮駆動装置の構成を示す概略図である。
【
図4】グリッパーモジュールを示し、(A)は左側面図、(B)は正面図である。
【
図7】同グリッパーモジュールのレンズ駆動装置の動作を説明するための図である。
【
図8】同グリッパーモジュールの分離斜視図である。
【
図9】撮像装置を示し、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
【
図10】(A)は撮像装置の分離斜視図、(B)はレンズ駆動装置の平面図、(C)はレンズ駆動装置の分離斜視図である。
【
図11】グリッパーを示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【
図12】同グリッパーの内部を説明するための平面図である。
【
図13】(A),(B)は、それぞれグリッパーの変形例を示す平面図である。
【
図14】アーム駆動用振動ユニットと把持アームの摩擦係合構造を説明するための概略図であり、(A)は分離斜視図、(B)は組み立てた状態の斜視図である。
【
図15】グリッパーモジュールの他の実施形態を示し、(A)は側面図、(B)は一部断面で示す正面図である。
【
図16】同実施形態での撮像装置を示し、(A)は平面図、(B)は一部断面で示す側面図、(C)は底面図である。
【
図17】グリッパー装置の変形例の構成を示す概略斜視図である。
【
図18】駆動装置の変形例の構成を示す概略構成図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【
図19】同駆動装置での圧電素子と駆動軸との接続構成の変形例を示す側面図である。
【
図20】同駆動装置の駆動制御を説明するための模式図である。
【
図21】駆動装置の他の例を説明するための概略構成図である。
【
図22】駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図23】駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図24】駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図25】駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図26】駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図27】駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【
図28】駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、カメラ付き作業モジュール及びカメラ付き作業装置の一実施形態であるグリッパーモジュール及びグリッパー装置を図面に基づいて説明する。
図1は、グリッパー装置の構成を示す概略斜視図である。
図2は、同グリッパー装置の制御系を示す概略構成図である。
図3は、同グリッパー装置における伸縮駆動装置の構成を示す概略図である。
図4は、グリッパーモジュールを拡大して示す図であり、(A)は左側面図、(B)は正面図である。
図5は、同グリッパーモジュールのツール回転装置の動作を説明するための平面図である。
図6は、同グリッパーモジュールの縦断面図である。
図7は、同グリッパーモジュールを側面視で示す拡大概念図であり、(A)は近距離視野の撮像状態を示し、(B)は遠距離視野の撮像状態を示す。
図8は、同グリッパーモジュールの分離斜視図である。
図9は、撮像装置を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は底面図である。
図10は、撮像装置を説明するための図であり、(A)は撮像装置の分離斜視図、(B)はレンズ駆動装置の平面図、(C)はレンズ駆動装置の分離斜視図である。
【0017】
なお、以下の説明で必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば「左右」「前後」「上下」など)を用いるが、これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、グリッパーは作業ツールの一例であり、例えばピペットや注射針などの他の作業ツールをカメラ付き作業モジュールに設けることも可能である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のグリッパー装置1000は、グリッパーモジュール100を直交3軸方向に移動させる3軸操作用駆動装置500(移動機構の一例)を備えている。グリッパーモジュール100は、3軸操作用駆動装置500の3軸移動可能な駆動軸504(伸縮駆動装置501Cの駆動軸504)の先端部に取り付けられている。
【0019】
図2及び
図4~
図8にも示すように、グリッパーモジュール100は、アーム駆動用圧電素子210の振動によって開閉する一対の把持アーム220を有するグリッパー200(作業ツールの一例)と、グリッパー200の把持アーム220の作業領域(把持アーム220が把持対象物を把持する位置)を撮像する撮像装置300と、グリッパー200を支持するとともにグリッパー200を上記作業領域に対して回転させるツール回転装置700と、ツール回転装置700と撮像装置300とを支持する台座部材450とを備えている。
【0020】
台座部材450は、伸縮駆動装置501Cの駆動軸504の先端部に固着される。グリッパー200は、アーム駆動用圧電素子210の振動によって開閉する一対の把持アーム220を有している。撮像装置300は、台座部材450に回転不能に保持されるとともに、ツール回転装置700によるグリッパー200の回転軸上に配置されている。
【0021】
図8等に示すように、台座部材450は、金属製又は樹脂製であり、下向き凸形の形態を有し、台座前面部451にツール回転装置700が取り付けられ、下向きに突出した台座下部452に撮像装置300が取り付けられる。台座部材450の中央部に設けた前後開口の取付け穴453に伸縮駆動装置501Cの駆動軸504の先端部が嵌め込まれて固定されることで、3軸操作用駆動装置500にグリッパーモジュール100が取り付けられる。なお、台座部材450と駆動軸504の先端部との連結方法は、例えば接着又はねじ締結であるが、特に限定されない。
【0022】
図4及び
図5等に示すように、ツール回転装置700は、台座前面部451に固着した回転装置本体701と、モータ出力軸711を下向きにして回転装置本体701に取り付けられるモータ710と、モータ出力軸711に相対回転不能に取り付けられてモータ出力軸711周りに回転するツール取付部材720とを有する。
【0023】
回転装置本体701は、金属製又は樹脂製であり、略直方体の形態を有し、左右縁部に設けた前後開口のねじ挿通孔に前方から挿通される左右のねじ730によって、台座部材450の台座前面部451に強固に固定される。
【0024】
モータ710は、例えば減速機付きのものであり、円筒形の形態を有し、回転装置本体701に設けた上下開口で円形穴状のモータ保持部702内に挿し込まれて例えば接着剤にて固着している。モータ出力軸711の先端部は、回転装置本体701の下面後縁部から垂下した前向きL形の出力軸支持部703に設けた軸支穴704に回転自在に支持されている。また、モータ出力軸711は、回転装置本体701の下面と出力軸支持部703との間に配設されるツール取付部材720の回転基端部721に設けた上下開口の出力軸挿込穴722に相対回転不能に挿し込まれて例えば接着剤にて固着している。
【0025】
ツール取付部材720の先端部に設けたツール取付部723は、前面が斜め下向きに傾斜した略台形柱の形態を有するとともに、回転基端部721よりも幅広に形成されている。グリッパー200は、ツール取付部723の前面部724にグリッパー取付ねじ205にて取り付けられ、左右方向に開閉可能な左右一対の把持アーム220が斜め下向きに延伸している。左右の把持アーム220の先端部は、閉じた状態でモータ出力軸711の下方に位置するように設けられている。
【0026】
ツール取付部材720は回転装置本体701とは固着しておらず、モータ出力軸711の回転により、モータ出力軸711周りに回転する。すなわち、ツール取付部材720に固着するグリッパー200の回転軸は、モータ出力軸711の軸線と一致する。なお、ツール取付部材720の回転許容範囲は、回転装置本体701の出力軸支持部703にて規制される。
図5に示すように、本実施形態では、ツール取付部材720は、概ね180度の範囲内で回転可能に設けられている。
【0027】
図6~
図10等に示すように、撮像装置300は、台座部材450の台座下部452に固着した撮像装置本体302と、レンズ301を光軸Lに沿って移動させるレンズ駆動装置310と、レンズ301を通過した光を受光する撮像素子330とを備えている。金属製又は樹脂製の撮像装置本体302の上面左右縁部の後ろ寄り部位に、前後方向に延びる左右一対の固定部303が上向きに立設されており、左右の固定部303で台座部材450の台座下部452を挟み込んだ状態で固定部303と台座下部452とが左右のねじ308にて連結されることで、撮像装置本体302が台座部材450に強固に固着される。
【0028】
撮像装置本体302の前半部は回転装置本体701の下方に延出しており、撮像装置本体302に保持された撮像素子330はモータ出力軸711の下方に配設されている。撮像素子330の下方には、撮像装置本体302に保持されたレンズ駆動装置310の動作によって上下移動可能なレンズ301が配設されている。本実施形態では、レンズ301の光軸Lは、グリッパー200の回転軸上(モータ出力軸711の軸線上)に設けられている。換言すれば、撮像装置300は、台座部材450に回転不能に保持されるとともに、レンズ301及び撮像素子330はツール回転装置700によるグリッパー200(作業ツール)の回転軸上に配置されている。そして、ツール回転装置700の駆動によって、グリッパー200の把持アーム220が光軸Lを中心として回転可能になっている。
【0029】
また、撮像装置300には、撮像装置本体302の下面後部から下向きに延出した第2カメラ取付座304に第2撮像素子340と第2レンズ341とが設けられている。第2レンズ341は、第2撮像素子340に対して位置固定されている。第2レンズ341の光軸LAはグリッパー200の作業領域を通っており、第2撮像素子340及び第2レンズ341は、グリッパー200の作業領域にピントが合うように設けられている。
【0030】
本実施形態のグリッパーモジュール100によれば、ツール回転装置700によってグリッパー200の姿勢(向き)を変更して作業の確実性及び正確性を向上できる。その上で、台座部材450にツール回転装置700と撮像装置300とを設け、撮像装置300をツール回転装置700によるグリッパー200の回転軸上に配置しているから、グリッパー200の回転軸に対して撮像装置300を移動させる機構が不要であり、コンパクトかつ軽量で作業性の高いカメラ付き作業モジュールを実現できる。このように、グリッパーモジュール100をコンパクトかつ軽量に構成することで、駆動力が小さい小型のロボットへの装着が可能になる。また、撮像装置300は台座部材450に回転不能に保持されているから、ツール回転装置700によってグリッパー200を回転させても、撮像装置300が取得する画像は回転しないのでオペレータにとって操作性がよい。
【0031】
本実施形態では、撮像装置300の光軸Lとグリッパー200の把持アーム220の延伸方向とが交差するように、把持アーム220を斜め下向きに延伸させることで、グリッパー200と撮像装置300とをコンパクトに配置できるとともに、把持アーム220の長さをなるべく短くして把持アーム220の強度を確保できる。また、把持アーム220が斜め下向きに延伸していることで、グリッパー200の下方(把持アーム220の基端部の下方)に空間が形成されるので、把持アーム220の先端部(把持対象物を把持する部位)以外の部位が把持対象物に衝突しないようにでき、グリッパー装置1000の操作性が向上する。
【0032】
また、グリッパーモジュール100によれば、グリッパー200とツール回転装置700とを撮像装置300と1つのツール取付部材720に組み付けてモジュール化することで、移動機構を有する様々なロボット(本実施形態では3軸操作用駆動装置500)にグリッパー200、ツール回転装置700及び撮像装置300を組み込むことが容易になる。また、グリッパーモジュール100では、撮像装置300が取得した画像を見ながら、グリッパー200の把持アーム220の位置を調整できる。そして、撮像装置300の光軸Lとツール回転装置700によるグリッパー200の回転軸とグリッパー200の把持アーム220の位置とを調整済みのグリッパーモジュール100を準備しておくことで、ロボット(例えば3軸操作用駆動装置500)へのグリッパー200、ツール回転装置700及び撮像装置300の取付けを迅速かつ容易に行える。
【0033】
また、グリッパーモジュール100では、撮像装置300のレンズ301の光軸Lが把持アーム220の作業領域を通っているので、レンズ301の収差の影響が小さい画像領域にて把持アームの作業領域を観察でき、把持アーム220による把持作業の容易性及び正確性が向上する。
【0034】
また、グリッパーモジュール100の撮像装置300は、グリッパー200の作業領域を撮像する2つの撮像素子330,340を備えているから、当該作業領域に配置された把持対象物のステレオ画像を見ながら把持作業を行えるので、操作性が向上する。また、光軸Lが上下方向に沿った撮像素子330の取得画像を使用して把持対象物を探し、グリッパー200にて把持対象物を把持する際には2つの撮像素子330,340が取得するステレオ画像を見ながら把持作業を行える。
【0035】
次に、3軸操作用駆動装置500について説明する。
図1~
図3に示すように、3軸操作用駆動装置500は、台座550上に一端が固定されて立設された上下方向(Z軸方向)用の伸縮駆動装置501Aと、伸縮駆動装置501Aの出力側となる他端に固定された左右方向(Y軸方向)用の伸縮駆動装置501Bと、伸縮駆動装置501Bの出力側に固定された前後方向(X軸方向)用の伸縮駆動装置501Cと、伸縮駆動装置501Cの出力側に固定された出力部材502とを備える。伸縮駆動装置501A~501Cはそれぞれ同一の構成を有しており、移動体ユニット503の駆動軸504を筐体505に対して軸方向にスライドさせて伸縮する。
【0036】
伸縮駆動装置501Aは、駆動軸504の軸方向が上下方向に沿って配置され、台座550に筐体505の下端が固定されて、台座550より立設しており、筐体505の上端側より移動体ユニット503を上下に摺動することで、伸縮駆動装置501B,501Cを介して接続された出力部材502を上下方向に移動させる。すなわち、伸縮駆動装置501Aは、出力部材502に固定されたグリッパーモジュール100を撮像装置300の光軸Lに沿って移動させる。これにより、撮像装置300で把持対象物を撮像しながら、グリッパーモジュール100を上下移動させて、グリッパー200の把持アーム220の先端部を把持対象物に位置合わせできる。
【0037】
伸縮駆動装置501Bは、伸縮駆動装置501Aにおける移動体ユニット503上端の出力側に筐体505の出力側(右側)が固定され、台座550に対して左右方向に水平に配置されており、筐体505の右端より移動体ユニット503を左右に摺動することで、伸縮駆動装置501Cを介して接続された出力部材502を左右方向に移動させる。伸縮駆動装置501Cは、伸縮駆動装置501Bにおける移動体ユニット503上端の出力側に筐体505の出力側(前側)が固定され、台座550に対して前後方向に水平に配置されており、筐体505の前端より移動体ユニット503を前後に摺動することで、移動体ユニット503前端に接続された出力部材502を前後方向に移動させる。
【0038】
次いで、伸縮駆動装置501A~501Cの概略構成について、
図3を参照して以下に説明する。以下では、伸縮駆動装置501A~501Cを単に伸縮駆動装置501とする。伸縮駆動装置501は、移動体ユニット503と、移動体ユニット503を支持する支持ユニット506と、電気信号を機械的な振動に変換する圧電素子507とを備える。圧電素子507の振動により移動体ユニット503が支持ユニット506に対して相対的に移動する。伸縮駆動コントローラ508は、圧電素子507に鋸歯状波の駆動パルスを供給して、駆動軸504を軸方向に振動させる。
【0039】
移動体ユニット503は、軸状の構成を有し、駆動軸504の一端に圧電素子507が固定される一方で、駆動軸504の他端に出力部材502が固定されている。そして、移動体ユニット503は、駆動軸504の他端に固定された出力部材502が筒状の筐体505の外部に配置されるようにして、筐体505内に配置されるとともに、駆動軸504が軸方向(スライド方向)にのみ自由度を有するように筐体505内で支持ユニット506に支持される。出力部材502は、筐体505の延長方向(軸方向)外側で、移動体ユニット503のスライド動作に従い、駆動軸504の軸方向に沿って移動する。
【0040】
図2に示すように、伸縮駆動装置501A~501Cには、それぞれ伸縮駆動コントローラ508が電気接続されている。また、グリッパーモジュール100のグリッパー200と撮像装置300のレンズ駆動装置310とツール回転装置700のモータ710には、アーム駆動用圧電素子210とレンズ駆動用圧電素子311に鋸歯状波の駆動パルスを供給し、モータ710に駆動電力を供給するモジュールコントローラ101が電気接続されている。
【0041】
これらのコントローラ101,508は、制御装置を構成するパーソナルコンピュータからなるPC1001に電気接続されている。また、グリッパーモジュール100の撮像装置300の撮像素子330は、PC1001に電気接続されている。PC1001は、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)や、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)と制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含む記憶装置、入力インターフェース等を有している。PC1001は、コントローラ101,508を介して、グリッパー200及び伸縮駆動装置501A~501Cが所望の動作をするように制御する。
【0042】
PC1001は、撮像装置300の撮像素子330,340が取得した画像を表示装置としてのモニター1002に表示可能に構成されている。また、PC1001は、モジュールコントローラ101を介して、レンズ301を移動させるレンズ駆動装置310を駆動させて、撮像装置300の撮像素子330が取得する画像のピントが合うようにオートフォーカス制御する。これにより、
図7(A)に示すように、グリッパー200の作業領域周辺の近距離視野Fsと、
図7(B)に示すように、作業領域下方の遠距離視野Flとの間で、どのような高さ位置に把持対象物が位置する場合でも、把持対象物にピント合わせできる。
【0043】
また、グリッパーモジュール100に対する把持対象物の高さ位置調整を行う際に、光軸LA上が作業領域を斜めに通るとともに作業領域にピント合わせされた第2撮像素子340及び第2レンズ341が取得する画像を使用して、把持対象物にピントが合うようにグリッパーモジュール100と把持対象物とを相対移動させることで、グリッパー200の作業領域に把持対象物を正確かつ確実に配置できる。なお、第2レンズ341を光軸LAに沿って移動させるレンズ駆動装置を設け、作業領域とは異なる位置でも第2撮像素子340及び第2レンズ341が取得する画像のピントが合うように構成しても構わない。第2レンズ341を移動させるレンズ駆動装置としては、例えばレンズ駆動装置310と同様の構成のものを使用できる。
【0044】
グリッパー装置1000による把持対象物の把持動作の一例を説明すると、撮像装置300を作動させながら、3軸操作用駆動装置500の駆動によりグリッパーモジュール100を移動させて、遠距離視野Flにて把持対象物を探す。そして、見つけた把持対象物にピントを合わせながら、グリッパー200の把持アーム220の作業領域(近距離視野Fs)に把持対象物が位置するように、3軸操作用駆動装置500の駆動によってグリッパーモジュール100を移動させ、ツール回転装置700によってグリッパー200の把持アーム220を所望の姿勢(向き)に変更した後、把持アーム220を駆動させて把持対象物を把持する。
【0045】
また、グリッパー200の先端部で把持対象物を突いたり、動かしたり、回転させて向きを変えたりすることが可能である。また、グリッパーの把持アームに替えて、キャピラリー等の針状部材を装着し、撮像装置300が細胞等の穿刺対象物にピント合わせして取得する画像を見ながら、穿刺対象物に針状部材を穿刺する操作を行うことも可能である。
【0046】
以上のように、グリッパー装置1000は、小型化及び軽量化が可能なグリッパーモジュール100を備えているので、グリッパー装置1000全体の小型化及び軽量化を実現できる。また、グリッパー装置1000は、グリッパーモジュール100を撮像装置300の光軸Lに沿って直線移動させる直動機構としての伸縮駆動装置501Bを備えている。これにより、グリッパーモジュール100の撮像装置300で把持対象物を撮像しながら、グリッパーモジュール100を上下移動させて、グリッパー200の把持アーム220の先端部を把持対象物に位置合わせできる。
【0047】
図4~
図10に示すように、撮像装置300は、撮像装置本体302と、レンズ駆動用圧電素子311の振動によってレンズ301を光軸Lに沿って上下方向に移動させるレンズ駆動装置310と、レンズ301を通過した光を受光する撮像素子330と、位置固定された第2レンズ341を通過した光を受講する第2撮像素子340とを備えている。
【0048】
レンズ駆動装置310は、レンズ駆動用圧電素子311の一端にレンズ駆動軸312を固定した軸状のレンズ駆動用振動ユニット313と、レンズ駆動軸312に摩擦係合してレンズ駆動軸312の軸方向に移動するレンズ支持体314と、レンズ駆動用振動ユニット313の両端を支持する駆動軸支持片315及び圧電素子支持片316を有する支持ケース317とを備えている。レンズ駆動装置310は、撮像装置本体302の左右一側部(本実施形態では左側部)を切り欠いて設けた下向き開口の駆動装置配置部305に例えば接着剤にて固着されている。
【0049】
支持ケース317は、板状の駆動軸支持片315と圧電素子支持片316とを連結する板状の支持ベース318を備え、圧電素子支持片316を上側にするとともに駆動軸支持片315を下側にして配置される。駆動軸支持片315及び圧電素子支持片316は、支持ベース318の上下端部から同じ向き(本実施形態では前向き)に延出しており、支持ケース317は、コの字形(C字形)の形態を有する。駆動軸支持片315及び圧電素子支持片316には切欠き凹部315a,316aが設けられている。支持ケース317は、切欠き凹部315aにレンズ駆動軸312の端部を保持する一方、切欠き凹部316aにレンズ駆動用圧電素子311を保持することで、レンズ駆動用振動ユニット313を支持ベース318とは間隔を空けて保持する。
【0050】
支持ケース317は、レンズ駆動用圧電素子311を上側にするようにして、撮像装置本体302に設けた切欠き凹状の駆動装置配置部305の後部に固着されている。撮像装置本体302には、支持ケース317の圧電素子支持片316の上面から上向きに突出したレンズ駆動用圧電素子311を収容する切欠き凹部305aが形成され、レンズ駆動用圧電素子311は撮像装置本体302とは隙間をあけて配置される。
【0051】
レンズ駆動用振動ユニット313のレンズ駆動軸312の下端部は、駆動軸支持片315の切欠き凹部315aに嵌め込まれて接着剤(図示省略)にて固着される。一方、レンズ駆動用圧電素子311の下部(レンズ駆動軸312との接合近傍部分)は、圧電素子支持片316の切欠き凹部316aに嵌め込まれて接着剤(図示省略)にて固着されている。レンズ駆動軸312の上端部は、圧電素子支持片316の下面に近接配置されている。
【0052】
このように、レンズ駆動用振動ユニット313の両端部を支持ケース317の一対の支持片315,316に設けた切欠き凹部315a,316aに嵌め込んで固着することで、レンズ駆動用振動ユニット313の両端部を支持ケース317に確実に固着できるとともに、支持片315,316の厚みを薄くでき、レンズ支持体314の可動範囲(上下ストローク)を確保しつつ、支持ケース317の長さ寸法(レンズ駆動用振動ユニット313の軸方向に沿った長さ寸法)を小さくでき、支持ケース317の小型化及び軽量化、ひいてはレンズ駆動装置310の小型化及び軽量化を実現できる。また、レンズ駆動軸312の下端部を駆動軸支持片315に固着する一方、レンズ駆動軸312の上端部を圧電素子支持片316に近接配置することで、レンズ駆動軸312に摩擦係合するレンズ支持体314の可動範囲を支持片315,316によって規制できる。
【0053】
また、支持ケース317の駆動軸支持片315の厚みを薄することで、レンズ支持体314がレンズ駆動装置310下端部(駆動軸支持片315下面)の近傍まで移動できるので、レンズ支持体314の駆動軸支持片315側の可動範囲端(レンズ支持体314の可動範囲下限)に対するレンズ駆動装置310下端部の突出寸法が小さいコンパクトなレンズ駆動装置310を実現できる。
【0054】
なお、レンズ駆動軸312の下端部が接着剤にて駆動軸支持片315に固着される構成においては、当該接着剤がレンズ駆動軸312の側面に回り込んでもよい。レンズ駆動用圧電素子311が圧電素子支持片316に接着剤にて固着される構成においても同様である。
【0055】
図4~
図10等に示すように、レンズ駆動装置310のレンズ支持体314は、レンズ駆動軸312に摩擦係合する支持体基材319と、支持体基材319に連結されたレンズ保持板320とを備えている。レンズ301は、レンズ保持板320に設けられた光透過穴320aに重なるようにしてレンズ保持板320に例えば接着剤にて固着されている。撮像装置本体302の前部には、下向き開口の空洞部306が設けられ、レンズ301及びレンズ保持板320は空洞部306内で上下動可能に設けられている。
【0056】
図4及び
図6~
図10では、支持体基材319の構成を簡略化して図示しており、支持体基材319は、例えば、後述する把持アーム220とアーム駆動軸211との摩擦係合構造(
図14参照)と同様の構造にて、レンズ駆動軸312に摩擦係合している。なお、レンズ支持体314をレンズ駆動軸312に摩擦係合させる構成は、
図14に示す構成と同様の構成に限定されず、レンズ駆動用圧電素子311の振動によってスティック状態(固着状態)とスリップ状態(滑り状態)とを繰り返してレンズ支持体314がレンズ駆動軸312に沿って移動する摩擦係合構造であればよい。
【0057】
図6及び
図10等に示すように、撮像装置本体302の上面には、該上面の前寄り部位から後縁部位にかけて前後方向に延びる回路配置溝307が形成されている。回路配置溝307の前部は空洞部306に連通しており、回路配置溝307の後部は撮像装置本体302の後面に開口している。撮像素子330は、フレキシブル基板331の一端部に搭載されており、フレキシブル基板331が撮像素子330を下向きにして回路配置溝307に沿って配置されるとともに、撮像素子330がレンズ301の上方に配置される。撮像素子330には、下方からレンズ301に入射してレンズ301を透過した光が光透過穴320aを介して入射する。
【0058】
フレキシブル基板331は、ツール回転装置700によるグリッパー200の回転を妨げないように、撮像装置本体302から後向きに延設される。なお、フレキシブル基板331の前端部の撮像素子330とは逆の面に裏打ち板(図示省略)を貼り付けて、フレキシブル基板331の剛性を高めて撮像素子330の揺れを抑制してもよい。
【0059】
図4、
図6及び
図9等に示すように、撮像装置本体302の下面後部に設けた第2カメラ取付座304に、第2撮像素子340を搭載した第2フレキシブル基板342の端部が固着されている。第2撮像素子340は箱型のカメラケース343で覆われている。第2レンズ341は、光軸LAをグリッパー200の作業領域に向けて、カメラケース343に支持されている。第2フレキシブル基板342は、ツール回転装置700によるグリッパー200の回転を妨げないように、撮像装置本体302の第2カメラ取付座304から後向きに延設される。
【0060】
本実施形態のグリッパーモジュール100では、撮像装置300は、レンズ駆動用圧電素子311の振動によってレンズ301を光軸Lに沿って移動させるレンズ駆動装置310と、レンズ301を通過した光を受光する撮像素子330とを備え、レンズ駆動用圧電素子311の振動によってレンズ301を移動させるようにしたので、レンズ駆動装置310の構成を簡素化でき、レンズ駆動装置310の小型化及び軽量化を実現できる。そして、撮像装置300の小型化及び軽量化、ひいてはカメラ付き作業モジュールの小型化及び軽量化を実現できる。
【0061】
また、撮像素子330から延びるフレキシブル基板331(配線部材の一例)がグリッパー200の回転可能範囲を避けて延設されるとともに、レンズ駆動装置310のレンズ駆動軸312は、撮像素子330の側方に配置されている。これにより、フレキシブル基板331がツール回転装置700によるグリッパー200の回転を妨げるのを防止しながら、撮像素子330の側方の空きスペースを有効活用してレンズ駆動装置310を配置でき、よりコンパクトなカメラ付き作業モジュールを実現できる。
【0062】
また、グリッパーモジュール100は、作業ツールとして開閉する把持アーム220を有するグリッパー200を備えているので、グリッパー200にて把持対象物を把持操作できるとともに、ツール回転装置700にてグリッパーの姿勢(向き)を変更できるので、コンパクトかつ軽量でより作業性の高いカメラ付き作業モジュールを実現できる。
【0063】
次に、
図6及び
図11~
図14等を参照しながら、グリッパーモジュール100のグリッパー200について説明する。なお、
図6において、グリッパー200の断面は、
図11(A)のX-X位置に対応している。
【0064】
グリッパー200は、アーム駆動用圧電素子210の左右両端に左右のアーム駆動軸211を固定したアーム駆動用振動ユニット212と、左右のアーム駆動軸211に摩擦係合してアーム駆動軸211の軸方向に移動する左右の把持アーム220とを備えている。左右の把持アーム220は、アーム駆動用圧電素子210の振動によって、互いに離れる方向へ、又は互いに接近する方向へ移動されることで開閉動作する。グリッパー200は、把持アーム220をアーム駆動用圧電素子210の振動によって開閉するので、グリッパー200の構成を簡素化でき、グリッパー200の小型化及び軽量化を実現できる。
【0065】
図12に示すように、アーム駆動用振動ユニット212は、左右長手のグリッパー台板201に固定されている。アーム駆動用圧電素子210の一側面が、グリッパー台板201の中央部に突設された台板載置台201aに接着剤202aにて固着されている。また、左右のアーム駆動軸211の端面がグリッパー台板201の左右端部に突設された左右の台板支持片201bの先端面に接着剤202bにて固着されている。
【0066】
なお、左右のアーム駆動軸211の端面は、
図13(A)に示すように、台板支持片201bに突合せ配置されて接着剤(図示省略)にて固着されてもよい。また、左右のアーム駆動軸211の端面は、グリッパー台板201に固着されていなくてもよく、例えば、
図13(A)に示す構成において、アーム駆動軸211と台板支持片201bとが互いに接着されていない場合には、台板支持片201bは、アーム駆動軸211を保護する保護部材として機能する。この場合、アーム駆動軸211と台板支持片201bとの間に隙間が形成されるようにしてもよい。
【0067】
また、
図13(B)に示すように、把持アーム220のアーム駆動軸211先端側(左右外側)への移動可能範囲を制限するストッパー部材227を設けてもよい。例えば、ストッパー部材227は、アーム駆動軸211の一側面(2つ以上の側面であってもよい)の先端寄り部位(アーム駆動用圧電素子210とは反対側の端部寄り部位)に付着された接着剤にて形成されている。ストッパー部材227により、把持アーム220の左右外側への移動が制限される。なお、把持アーム220のアーム駆動軸211基端側(左右内側)への移動可能範囲は、グリッパー台板201の台板載置台201aにて制限される。
【0068】
この変形例では、左右のアーム駆動軸211のそれぞれにストッパー部材227が設けられる一方、左右のアーム駆動軸211でストッパー部材227が設けられる左右方向位置が異なっている。これにより、左右の把持アーム220は、ストローク(移動可能範囲の左右方向長さ)が異なっている。
【0069】
左右の把持アーム220のストロークが異なっていることで、左右の把持アーム220が全開状態から閉じる動作をするときに、ストロークが短い方の把持アーム220が左右内側のストローク端(アーム駆動用圧電素子210側のストローク端)に到達し、ストロークが長い方の把持アーム220が遅れて左右内側のストローク端に到達する。このように、一方の把持アーム220を他方の把持アーム220に比べて左右内側のストローク端に先に到達させることで、左右の把持アーム220を閉じたときの把持アーム220の位置の再現性を向上できる。
【0070】
また、一方の把持アーム220を先に左右内側のストローク端に到達させることで、微小な把持対象物を把持する際に左右の把持アーム220が把持対象物を把持する位置を予測しやすくなり、左右の把持アーム220が把持対象物の把持を完了する前に把持対象物があまり移動しないようにできる。このように、把持操作完了前の把持対象物の変位を低減して、把持操作の再現性及び確実性(精度)を向上できる。
【0071】
また、把持対象物を所望の向きや位置に移動させるときに、ストロークが短い方の把持アーム220を左右内側のストローク端に到達させて把持対象物を移動させるようにすれば、他方の把持アーム220が把持対象物に接触する前に把持対象物の移動を完了できる。これにより、把持対象物の移動操作の再現性及び確実性(精度)を向上できる。
【0072】
左右の把持アーム220をともに左右内側のストローク端に位置させた状態で把持アーム220の先端部同士(フィンガー部材225の先端部同士)の間に隙間が形成されるように把持アーム220の形状及びストロークを設定した場合にも、左右の把持アーム220でストロークを互いに異ならせることで、上記と同様の効果が得られる。
【0073】
なお、左右のアーム駆動軸211のうち一方のアーム駆動軸211のみにストッパー部材227を設けることで、左右の把持アーム220のストロークを互いに異ならせることも可能である。また、アーム駆動軸211の基端寄り部位(アーム駆動用圧電素子210側の端部寄り部位)にストッパー部材を設けることによって、把持アーム220の左右内側のストローク端を設定することが可能である。また、左右の把持アーム220でストロークを互いに異ならせる構成は、
図13(A)に示した構成に適用可能であることは言うまでもない。なお、把持アーム220のストローク端を決定するストッパー部材は、アーム駆動軸211に設ける構成に限らず、例えばグリッパー台板201又はグリッパーケース203に設けた突起部によって形成される構成など、把持アーム220に接触して把持アーム220の移動可能範囲を制限する構成であればよい。
【0074】
左右のアーム駆動軸211に摩擦係合する左右の把持アーム220は、アーム駆動軸211に接触させた状態となるアーム本体221のアーム本体基端部223に、弾性を有するアーム固定部材222を装着することで、アーム駆動軸211と摩擦係合している。左右の把持アーム220は、左右対称の構成を有している。
図4、
図6及び
図7等では、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222の周辺を簡略化して図示している。
【0075】
図14を参照しながら、把持アーム220とアーム駆動軸211との摩擦係合の具体的な構成例を説明する。なお、
図14では、把持アーム220におけるアーム本体221のフィンガー取付部224を簡略化して図示するとともに、フィンガー部材225の図示を省略している。
【0076】
アーム本体221のアーム本体基端部223は、側面視で二股に分岐させたL字形状を有しており、一方が後方に延びた上側固定部223Aとなり、他方が下方に延びた前側固定部223Bとなる。アーム固定部材222は、例えば、側面視L字形状に屈曲された板状の摩擦バネなどの弾性体で構成され、アーム固定部材222の一端(後方上縁側)が、アーム本体基端部223の上側固定部223Aと連結される一方、アーム固定部材222の他端(下方前縁側)が、アーム本体基端部223の前側固定部223Bと連結される。
【0077】
アーム本体221は、アーム本体基端部223より前方に延設させたフィンガー取付部224を有している。フィンガー取付部224は、アーム本体基端部223の上側固定部223Aの左右一方の辺縁であって前側固定部223Bの前面から前方に向けて延設されている。アーム本体基端部223は、上側固定部223Aの後方縁に上側に突起させた上側係止部223Xを有する一方、前側固定部223Bの下方縁に前側に突起させた前側係止部223Yを有する。すなわち、アーム本体基端部223は、後方縁に側面視鈎状となる上側係止部223Xを有する上側固定部223Aと、下方縁に側面視鈎状となる前側係止部223Yを有する前側固定部223Bとを分岐させて構成されている。
【0078】
アーム固定部材222は、後側下方端から上方に向かって延びる後方板部222Aと、後方板部222Aの下方縁から前方に向かって延びる下方板部222Bとを有しており、後方板部222Aの上縁にL字状に屈曲させた上側係止部222Xが設けられる一方、下方板部222Bの前縁にL字状に屈曲させた前側係止部222Yが設けられる。アーム固定部材222は、後方板部222Aの上下中途部を前方に突設させるとともに、下方板部222Bの前後中途部を上方に突設させており、後方板部222Aと下方板部222Bとの連結部分が側面視でU字状に形成されている。また、上側係止部222Xが、後方板部222A上縁から前方に延びた後に下方へ屈曲させて構成されており、前側係止部222Yが、下方板部222B前縁から上方に延びた後に後方へ屈曲させて構成されている。
【0079】
アーム本体221は、アーム本体基端部223をアーム駆動軸211の外周面の一部に当接させるようにして、アーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。このとき、アーム本体基端部223において、上側固定部223A下面がアーム駆動軸211上面に接触するとともに、アーム本体基端部223の前側固定部223B後面がアーム駆動軸211前面に接触する。すなわち、アーム本体221は、アーム本体基端部223がアーム駆動軸211の左右方向一部における上面及び前面を覆うようにして、アーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。また、上側固定部223A後縁がアーム駆動軸211後縁よりも後方に突出するとともに、前側固定部223B下縁がアーム駆動軸211下縁よりも下方に突出している。
【0080】
アーム固定部材222が、アーム本体基端部223で覆われたアーム駆動軸211における露出した外周面を覆うようにして、アーム本体221が取り付けられたアーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。このとき、アーム固定部材222は、後方板部222Aの突設部分前面をアーム駆動軸211後面に当接させるとともに、下方板部222Bの突設部分上面をアーム駆動軸211下面に当接させる。すなわち、アーム固定部材222は、アーム駆動軸211のアーム本体221のアーム本体基端部223で覆われた箇所の後面及び下面を覆うようにして、アーム駆動用振動ユニット212に取り付けられる。また、アーム固定部材222は、後方板部222A上縁をアーム固定部材222のアーム本体基端部223上面より上方へ突出させることで、上側係止部222Xをアーム本体基端部223の上側係止部223Xに係止させる一方、下方板部222B前縁をアーム固定部材222のアーム本体基端部223前面より前方へ突出させることで、前側係止部222Yをアーム本体基端部223の前側係止部223Yに係止させる。
【0081】
アーム本体221は、アーム本体基端部223両端における上側係止部223X及び前側係止部223Yに、アーム固定部材222両端の上側係止部222X及び前側係止部222Yが引っ掛けられて、アーム駆動軸211との2か所の接触部でアーム駆動軸211を押さえつけて、アーム駆動軸211との間で摩擦力を発生する。すなわち、アーム本体221は、アーム固定部材222によりアーム駆動軸211の方向に引き付けられ、アーム駆動軸211と接触している二つの面(上面及び前面)においてアーム駆動軸211との間で摩擦力を発生させる。このようにして、アーム本体221とアーム固定部材222を組み合わせた把持アーム220がアーム駆動用振動ユニット212に対して摩擦係合した状態となる。
【0082】
移動体となるアーム本体221のアーム本体基端部223が、アーム駆動用振動ユニット212の軸方向から視てアーム駆動用振動ユニット212の外周の一部を覆う形状、すなわち、アーム駆動用振動ユニット212の軸方向に対して垂直な面上でアーム駆動用振動ユニット212の外周の一部を覆う形状を有している。そして、アーム本体基端部223をアーム駆動用振動ユニット212の外周に沿わせるとともにアーム本体基端部223の両端を弾性体であるアーム固定部材222で連結させて、アーム本体221をアーム駆動用振動ユニット212に係合させている。すなわち、アーム本体221のアーム本体基端部223を、アーム駆動軸211の前側上方より覆い被せるようにして、アーム駆動軸211の前面及び上面に当接させて設置する。その後、アーム固定部材222を広げて、アーム駆動軸211の後側下方よりアーム本体基端部223の両端を挟み込むようにして、上側係止部223X及び前側係止部223Yそれぞれを上側係止部222X及び前側係止部222Yを係止させて、アーム駆動軸211に対して、アーム本体221のアーム本体基端部223を摩擦係合させる。
【0083】
このように、把持アーム220は、アーム本体221のアーム本体基端部223と弾性体となるアーム固定部材222とでアーム駆動軸211を挟むようにしてアーム駆動用振動ユニット212に設置されるため、アーム駆動用振動ユニット212に対する把持アーム220の組み込みが容易に行えるとともに、把持アーム220を適度な力でアーム駆動用振動ユニット212に摩擦係合できる。このとき、アーム固定部材222の弾性力を変更することで、アーム駆動用振動ユニット212に対する把持アーム220の摩擦力を変更できるものとしてもよいし、アーム固定部材222のアーム駆動軸211への接触面積を変更することで、アーム駆動用振動ユニット212に対する把持アーム220の摩擦力を変更できるものとしてもよい。
【0084】
また、把持アーム220は、アーム本体221のフィンガー取付部224を前方に延設させた構成を有しているが、アーム駆動軸211を四角柱状とするとともに、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222をL字状に構成することで、フィンガー取付部224による回転モーメントにより把持アーム220がアーム駆動用振動ユニット212に対して回転することを規制できる。すなわち、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222それぞれがアーム駆動軸211の外周面を押圧しながら当接することにより、アーム駆動軸211に対するアーム本体221の回転を防止できる。このとき、アーム本体221のアーム本体基端部223及びアーム固定部材222は、前側固定部223Bと後方板部222Aとでアーム駆動軸211の前後を狭持するとともに、上側固定部223Aと下方板部222Bとでアーム駆動軸211の上下を狭持することで、アーム駆動軸211に摩擦係合している。
【0085】
このようにして、把持アーム220はアーム駆動軸211に摩擦係合している。なお、把持アーム220をアーム駆動軸211に摩擦係合させる構成は、
図14を参照して説明した構成に限定されず、アーム駆動用圧電素子210の振動によってスティック状態(固着状態)とスリップ状態(滑り状態)とを繰り返して把持アーム220がアーム駆動軸211に沿って移動する摩擦係合構造であればよい。
【0086】
図11~
図13等に戻ってグリッパー200の説明を続ける。把持アーム220のフィンガー取付部224の先端部に、板状のフィンガー部材225を保持するためのフィンガー取付溝224aが形成されている。フィンガー取付溝224aは、フィンガー取付部224の先端面、上面及び下面に開口している。フィンガー取付部224の先端部には、当該先端部の左右外側面からフィンガー取付溝224aに貫通するフィンガー固定用ねじ穴224bが形成されている。
【0087】
フィンガー取付溝224aにフィンガー部材225の基端部が差し込まれ、フィンガー固定用ねじ穴224bに左右外側から捩じ込まれるフィンガー固定用ねじ226によってフィンガー部材225の基端部がフィンガー取付溝224aの内壁面に押圧されることで、フィンガー部材225がアーム本体221に着脱可能に取り付けられている。フィンガー固定用ねじ226は例えば六角穴付き止めねじである。フィンガー部材225の先端側は、左右のフィンガー部材225の先端同士が互いに近づく方向へ向けて斜め内向きに延伸しており、フィンガー部材225の先端にて微小部品を把持しやすい構成になっている。
【0088】
アーム駆動用振動ユニット212及び把持アーム220の基端側は、グリッパー台板201に固着された略箱型のグリッパーケース203で覆われている。把持アーム220のアーム固定部材222とアーム本体221のアーム本体基端部223はグリッパーケース203内に配置され、アーム本体221のフィンガー取付部224はグリッパーケース203外に配置されている。グリッパーケース203の端面には、左右のアーム本体221が挿通される左右の把持アーム挿通穴203aが形成されている。把持アーム挿通穴203aは左右横長に形成されて、把持アーム220が左右方向に移動可能に構成されている。
【0089】
グリッパーケース203の上下両面の各中央部には、取付ねじ挿通穴203bがそれぞれ形成されている。取付ねじ挿通穴203bは、取付ねじ挿通穴203bに挿通されるグリッパー取付ねじ205がグリッパーケース203内の把持アーム220及びアーム駆動用振動ユニット212に干渉しない位置に設けられている。グリッパーケース203の左右側面に設けられた開口は、グリッパーケース203の左右側面及びグリッパー台板201の左右側面に貼り付けられた側面カバー204にて塞がれている。また、グリッパーケース203には、アーム駆動用圧電素子210に電気信号を供給する電気配線206をグリッパーケース203内から引き出すための配線挿通穴203cが形成されている。
【0090】
グリッパー200は、取付ねじ挿通穴203bに挿通されたグリッパー取付ねじ205が、ツール取付部723の前面部724に設けられたツール取付ねじ穴725に捩じ込まれることで、ツール取付部723に着脱可能に取り付けられる。グリッパー200は、左右の把持アーム220が閉じた状態で把持アーム220のフィンガー部材225がツール取付部723の下方に位置するように、斜め下向き姿勢でツール取付部723に固着されている。
【0091】
以上のように、グリッパーモジュール100によれば、グリッパー200の把持アーム220をアーム駆動用圧電素子210の振動によって開閉するようにしたので、グリッパー200の構成を簡素化でき、グリッパー200の小型化及び軽量化を実現できる。さらに、グリッパー200と撮像装置300とを同一の台座部材に取り付けるようにしたので、グリッパー200と撮像装置300とをコンパクトに配置でき、グリッパーモジュール100の小型化及び軽量化を実現できる。
【0092】
また、グリッパーモジュール100では、撮像装置300は、レンズ301と、レンズ301を支持するとともに移動させ得るレンズ駆動装置310と、撮像素子330を保持する撮像素子ホルダー332とを備えている。そして、レンズ駆動装置310及び撮像素子ホルダー332は、個別にツール取付部723に取り付けられている。これにより、モジュール化された撮像装置をツール取付部723に取り付ける場合に比べて、グリッパーモジュール100において撮像装置300が占める領域を小さくでき、グリッパーモジュール100をよりコンパクトな構成にして、グリッパーモジュール100の小型化及び軽量化を実現できる。なお、レンズ301は複数のレンズで構成されていてもよい。この場合、複数のレンズのうちいずれか1つ又は複数が移動されてピント調整可能な構成であってもよい。
【0093】
また、グリッパー200が取り付けられるツール取付部723に、レンズ駆動装置310及び撮像素子ホルダー332を個別に取り付けることで、グリッパー200に対するレンズ駆動装置310及び撮像素子ホルダー332のレイアウトの自由度が向上する。そして、撮像素子ホルダー332に対してグリッパー200及びレンズ駆動装置310を近接配置することで、グリッパー200及び撮像装置300のコンパクトな配置が可能になり、グリッパーモジュール100の小型化及び軽量化に寄与する。なお、レンズ駆動装置310が把持アーム220の開閉動作を妨げない構成であれば、グリッパー200とレンズ駆動装置310とを近接配置することも可能である。
【0094】
次に、
図15及び
図16を参照しながら、グリッパーモジュール100の他の実施形態について説明する。
図15は、グリッパーモジュールの他の実施形態を示し、(A)は側面図、(B)は一部断面で示す正面図である。
図16は、撮像装置を示し、(A)は平面図、(B)は一部断面で示す側面図、(C)は底面図である。
図16(A)では上カバー体354の図示を省略し、
図16(C)では下カバー体356の図示を省略している。
図15及び
図16において、
図1~
図10を参照して説明したグリッパーモジュール100と同様の部分には同じ符号を付し、それらの部分の説明は省略する。
【0095】
本実施形態のグリッパーモジュール100での撮像装置300Aは、レンズ駆動用圧電素子311の振動によってレンズ301を光軸Lに沿って移動させるレンズ駆動装置310のレンズ駆動軸312が、撮像素子330に対してレンズ301とは反対側の位置でレンズ301の光軸Lの延長線上に配置されている。
【0096】
撮像装置300の撮像装置本体302Aは、金属製又は樹脂製で直方体形の基体を有し、該基体の上面に左右の固定部303を有するとともに下面に第2カメラ取付座304を有している。撮像装置本体302Aの前面に上下開口の四角筒型のカメラホルダー351が固着され、カメラホルダー351内にレンズ301、レンズ駆動装置310及び撮像素子330が配設されている。カメラホルダー351は金属製又は樹脂製である。
【0097】
フレキシブル基板331の先端部には、撮像素子330の搭載面とは反対側の面に裏打ち板333が貼設されている。撮像素子330、フレキシブル基板331及び裏打ち板333は、撮像素子330を下側にして、カメラホルダー351の後側面部の上下中途部位に設けた配線用穴352を介してカメラホルダー351内に配設されるとともに、カメラホルダー351の左右内壁面に設けた段差部353に裏打ち板333の左右縁部が接着剤で固着されることで、カメラホルダー351に位置固定される。フレキシブル基板331は、撮像装置本体302Aの下面に沿って前後方向に延設され、フレキシブル基板331の中途部は、撮像装置本体302Aの第2カメラ取付座304の基部に設けた前後開口の配線保持穴309に挿通保持されている。
【0098】
レンズ駆動装置310は、裏打ち板333の上方(撮像素子330の上方)に配置される。カメラホルダー351の上端部には、カメラホルダー351の上部開口を塞ぐ上カバー体354が接着剤にて固着されている。上カバー体354の下面に、上下方向に延びるレンズ駆動軸312の一端(上端)が、駆動装置ホルダー355を介して固着されている。
【0099】
駆動装置ホルダー355は、上面と、左右一側面(ここでは左側面)と、前後一側面(後側面)とが開口した箱型であり、底面部の前後中途部には左右方向に延びて左向きに開口する切欠き部355aが形成されている。切欠き部355aに、レンズ駆動軸312の上端面に固着したレンズ駆動用圧電素子311が上下方向に挿通されるとともに、レンズ駆動軸312の上端部が駆動装置ホルダー355の底面部に接着剤にて固着している。上カバー体354の下面には、レンズ駆動用圧電素子311に対峙する凹部354aが形成され、レンズ駆動用圧電素子311と上カバー体354とが接触しないように構成されている。
【0100】
レンズ駆動装置310には、レンズ駆動軸312に摩擦係合してレンズ駆動軸312の軸方向(ここでは上下方向)に移動するレンズ支持体314が前後方向に延びて設けられている。レンズ支持体314の前端部は平面視で撮像素子330、フレキシブル基板331及び裏打ち板333の前方に位置しており、レンズ支持体314の前端部から垂下した連結部材321の下端にレンズ保持板320の前端部が固着している。
【0101】
板状のレンズ保持板320は、平面視で撮像素子330と重なるように、連結部材321から撮像素子330の下方に向けて後ろ向きに延設されており、撮像素子330の下方に光透過穴320aを備えている。レンズ保持板320の上面には、円筒状のレンズホルダー322が光透過穴320aの周囲を囲って固着されている。
【0102】
レンズ301は、レンズホルダー322内に保持され、撮像素子330の下方に配設されている。カメラホルダー351の下部開口は、例えば透明樹脂製又は透明ガラス製の光透過性の下カバー体356で塞がれている。撮像素子330には、下方から下カバー体356及び光透過穴320aを通ってレンズ301に入射してレンズ301を透過した光が入射する。
【0103】
撮像装置300Aは、レンズ駆動装置310のレンズ駆動軸312に摩擦係合したレンズ支持体314をレンズ駆動用圧電素子311の振動によって上下移動させることで、レンズ301を撮像素子330に対して上下移動させて、グリッパー200の作業領域に位置する把持対象物にピント合わせできるように構成されている。
【0104】
本実施形態のグリッパーモジュール100では、撮像装置300Aのレンズ駆動装置310のレンズ駆動軸312は、撮像素子330に対してレンズ301とは反対側の位置でレンズ301の光軸Lの延長線上に配置されている。これにより、撮像装置300Aの平面サイズ、特に左右方向幅寸法を小さくでき、ひいてはグリッパーモジュール100の平面サイズを小さくできる。また、撮像装置300Aの左右方向幅寸法を小さくできることで、ツール回転装置700によるグリッパー200の回動可能範囲を大きくすることも可能である。
【0105】
次に、
図17及び
図18を参照しながら、3軸操作用駆動装置500の変形例を説明する。
図17に示すように、グリッパーモジュール100を直交3軸方向に移動させる3軸操作用駆動装置500は、台座550上に一端側が固定されて立設された上下方向(Z軸方向)用の駆動装置800と、駆動装置800の出力部材800aに連結された左右方向(Y軸方向)用の伸縮駆動装置501Bと、伸縮駆動装置501Bの出力側に固定された前後方向(X軸方向)用の伸縮駆動装置501Cと、伸縮駆動装置501Cの出力側に固定された出力部材502とを備える。伸縮駆動装置501B,501C及びグリッパーモジュール100は、
図1等に示したものと同じである。
【0106】
図18に示すように、駆動装置800は、駆動軸812の両端に一対の圧電素子811A,811B(第1圧電素子、第2圧電素子)を固定した軸状の支持ユニット801と、支持ユニット801に摩擦係合して支持ユニット801の軸方向に移動する移動体ユニット802(移動体)とを備える。支持ユニット801において、圧電素子811A,811Bは伝達部材814を介して駆動軸812の端部に固定されている。なお、
図18では、移動体ユニット802の構成を簡略化して図示しており、移動体ユニット802は、例えば、
図14を参照して説明した把持アーム220とアーム駆動軸211との摩擦係合構造と同様の構造にて、駆動軸812に摩擦係合している。
【0107】
支持ユニット801及び移動体ユニット802は、直方体箱型の筐体803の内部に配設されており、伝達部材814が筐体803の内壁に固着されることで、支持ユニット801が筐体803に支持されている。筐体803の一側面部に駆動軸812に沿った長穴803aが形成されている。筐体803の外部に配設される出力部材800aは、長穴803aを介して移動体ユニット802に連結している。筐体803は駆動装置800を支持する台材である。
【0108】
圧電素子811A,811Bに鋸歯状波の駆動パルスを供給して駆動軸812を軸方向に振動させることで、移動体ユニット802及び出力部材800aが駆動軸812に沿って移動する。伝達部材814は、外形寸法が駆動軸812よりも大きいので、移動体ユニット802の移動範囲を制限するストッパーとして機能する。
【0109】
伝達部材814は、略直方体状又は側面視でH字状の形態を有し、駆動軸812の端部812a又は812bを収容する出力軸端収容凹部814aと、圧電素子811A又は811Bの一端部を収容する圧電素子端収容凹部814bとを備えている。伝達部材814の材料は、例えば金属、セラミック又は樹脂などである。
【0110】
駆動軸812の端部812a,812bは、伝達部材814の出力軸端収容凹部814aに収容され、例えば接着剤にて伝達部材814に固定される。なお、駆動軸812と伝達部材814との固定方法は、接着剤による固定など、他の方法であってもよい。
【0111】
また、圧電素子811A,811Bの一端部側は、伝達部材814の圧電素子端収容凹部814bに収容され、例えば接着剤にて伝達部材814に固定される。圧電素子811A,811Bは、例えば、駆動軸812の軸方向に圧電材料が積層された積層型のもので構成される。圧電素子811A,811Bそれぞれの側面部には、一対の端子が設けられ、各端子に半田又は導電接着剤などによりリード線813が接続されている。
【0112】
本実施形態では、圧電素子811A,811Bの振動は伝達部材814を介して駆動軸812に伝達するので、圧電素子811A,811Bと駆動軸812とが接着剤で直接連結されている構成に比べて、圧電素子811A,811Bと伝達部材814との間の接着剤にかかる負荷を低減でき、当該接着剤の付着力の低下を抑制して駆動装置800の動作を安定させることができる。また、圧電素子811A,811Bと駆動軸812との間に伝達部材814を介在させることで、接着剤として、圧電素子811A,811Bと駆動軸812との両方に対して接着力が高いものだけでなく、伝達部材814の素材を選定した上で接着剤を選定できるので、接着剤の選択の幅が広がるとともに、圧電素子811A,811B及び駆動軸812と伝達部材814とを適切な接着剤を用いて強力に接合できる。ここで、圧電素子811A,811Bと伝達部材814とを接合する接着剤と、駆動軸812と伝達部材814とを接合する接着剤とは、同じものであってもよいし、互いに成分が異なるものであってもよい。
【0113】
また、伝達部材814を設けることにより、圧電素子811A,811Bからの振動を受ける駆動軸812の固有振動数を調整して、圧電素子811A,811Bからの振動を効率的に駆動軸812に伝達し、速度や駆動力の面で駆動装置としての効率、性能の向上できる。
【0114】
図19は、圧電素子811A,811Bと駆動軸812との接続構成の変形例を説明するための図である。
図19(A)に示すように、圧電素子811A,811Bの端面と駆動軸812の端面との間に板状の伝達部材815を介在させ、伝達部材815を台材820に連結して圧電素子811A,811B及び駆動軸812を支持してもよい。圧電素子811A,811Bの端面及び駆動軸812の端面と、伝達部材815とは、例えば接着剤にて接続される。本実施形態では、伝達部材815は、金属製、セラミック製又は樹脂製のL字形部材で形成される。
【0115】
なお、圧電素子811Aと駆動軸812との接続構成と、圧電素子811Bと駆動軸812との接続構成は異なっていてもよい。例えば、
図19(B)に示すように、一方の圧電素子811Aと駆動軸812との間に伝達部材815を介在させ、他方の圧電素子812Bと駆動軸812との間に伝達部材814(
図18も参照)を介在させるようにしてもよい。このような構成によれば、伝達部材814によって支持ユニット801をしっかり支持しながら、簡素な構成の伝達部材815を振れ止めとして支持ユニット801の揺れ(振れ)を防止でき、軽量化及び低コスト化を図れる。
【0116】
また、
図19(C)及び(D)に示すように、圧電素子811A,811Bの端面と駆動軸812の端面との接合部817を接着剤にて接合するとともに、接合部817をまたぐように圧電素子811A,811B及び駆動軸812の外周面に、該外周面を囲う固定部材816を接着剤にて接合し、固定部材816を台材820に突設した台材突部820aに連結して圧電素子811A,811B及び駆動軸812(支持ユニット801)を支持してもよい。本実施形態では固定部材816は、金属製、セラミック製又は樹脂製の断面ロ字形の部材で形成される。また、駆動軸812は、圧電素子811A,811Bと同じ断面形状(矩形)を有する。なお、
図19(D)は、
図19(C)のD-D位置に沿った断面図である。
【0117】
また、
図19(E)及び(F)に示すように、圧電素子811A,811Bの端面と駆動軸812の端面との接合部817を接着剤にて接合するとともに、接合部817をまたぐように圧電素子811A,811B及び駆動軸812の左右両側面に固定部材818を接着剤にて接合し、固定部材818を台材820に連結して支持ユニット801を支持してもよい。本実施形態では、固定部材818は、金属製、セラミック製又は樹脂製の断面コ字形の部材で形成される。また、駆動軸812と、圧電素子811A,811Bとは、同じ左右方向幅寸法を有する(高さ方向寸法は、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい)。なお、
図19(F)は、
図19(E)のE-E位置に沿った断面図である。
【0118】
図19(A)~(B)に示す接続構成によれば、圧電素子811A,811Bと駆動軸812とが接着剤で直接接合されているだけの構成に比べて、圧電素子811A,811Bと伝達部材814,815との間の接着剤にかかる負荷を低減でき、当該接着剤の付着力の低下を抑制して駆動装置800の動作を安定させることができる。また、伝達部材814,815によって、圧電素子811A,811Bからの振動を受ける駆動軸812の固有振動数を調整でき、速度や駆動力の面で駆動装置としての効率、性能の向上できる。
【0119】
また、圧電素子811A,811Bと駆動軸812との接着接合に関し、
図18を参照して説明した伝達部材814を使用した構成と同様に、伝達部材814,815又は固定部材816,818の素材を選定した上で接着剤を選定できるので、接着剤の選択の幅が広がるとともに、圧電素子811A,811B及び駆動軸812と伝達部材814,815又は固定部材816,818とを適切な接着剤を用いて強力に接合できる。もちろん、圧電素子811A,811B側と、駆動軸812側とで、接着剤の成分を異ならせることも可能である。
【0120】
図17に示すグリッパー装置1000では、駆動軸812の軸方向が上下方向に沿って配置され、台座550に筐体505の下端側が固定されて、台座550より立設している。駆動装置800は、移動体ユニット802及び出力部材800aを駆動軸812に沿って上下に摺動させることで、出力部材800a及び伸縮駆動装置501B,501Cを介して接続された出力部材502及びグリッパーモジュール100を上下方向に移動させる。
【0121】
次いで、駆動装置800の駆動制御について、
図20を参照して以下に説明する。上述のように、駆動装置800は、移動体ユニット802と、移動体ユニット802を支持する支持ユニット801と、電気信号を機械的な振動に変換する一対の圧電素子811A,811B(第1圧電素子、第2圧電素子)とを備える。支持ユニット801を構成する駆動軸812の両端に圧電素子811A,811Bが固定されている。なお、
図20では、圧電素子811A,811Bの振動により移動体ユニット802が支持ユニット801に対して相対的に移動する。
【0122】
駆動コントローラ808は、圧電素子811A,811Bに鋸歯状波の駆動パルスを供給して、駆動軸812を軸方向に振動させて、駆動軸812に摩擦係合する移動体ユニット802を駆動軸812に沿って移動させる。駆動コントローラ808は、第1圧電素子としての圧電素子811Aの駆動を制御する第1制御部としての第1駆動コントローラ808Aと、第2圧電素子としての圧電素子811Bを駆動する第2制御部としての第2駆動コントローラ808Bとを備えている。第1及び第2駆動コントローラ808A,808Bは、駆動パルス(電気信号)に位相差を作るための同期信号配線で接続されている。なお、第1駆動コントローラ808Aと第2駆動コントローラ808Bは、1つの制御装置(例えば半導体チップ)内に設けられていてもよいし、別々の制御装置に設けられていてもよい。駆動コントローラ808は、移動体ユニット802を移動させるときに、移動体ユニット802のストロークS(往復動可能な範囲)内での移動体ユニット802の位置に応じて、圧電素子811A,811Bを同時に又は選択的に駆動する。
【0123】
具体的には、駆動コントローラ808は、移動体ユニット802を移動させるにあたり、移動体ユニット802が、ストローク中央領域SCに位置するときには圧電素子811A,811Bの両方に駆動パルスを供給し、圧電素子811A寄りのストローク端領域SAに位置するときには圧電素子811Aのみに駆動パルスを供給し、圧電素子811B寄りのストローク端領域SBに位置するときには圧電素子811Bのみに駆動パルスを供給する。なお、移動体ユニット802の位置は、例えばエンコーダなどの位置検出装置にて検出される。例えば、移動体ユニット802は、移動体ユニット802の少なくとも一部分が、ストローク端領域SAに位置するときは圧電素子811Aの駆動のみにて移動され、ストローク端領域SBに位置するときは圧電素子811Bの駆動のみにて移動される。
【0124】
移動体ユニット802がストローク中央領域SCに位置するときに、圧電素子811A,811Bの両方を同時に駆動させることで、移動体ユニット802の移動速度や駆動力を向上できる。ひいては低速、低駆動力から高速、高駆動力までの駆動可能範囲を広げることができるので汎用性が向上する。なお、第1及び第2駆動コントローラ808A,808Bは、圧電素子811A,811Bに同じ駆動波形、周波数及び位相の駆動パルスを供給してもよいし、駆動波形、周波数及び位相の少なくとも1つが互いに異なる駆動パルスを供給してもよい。後者の場合、2つの圧電素子811A,811Bの駆動条件(波形の差、周波数の差、位相差など)の調整自由度が増すので、高速化、高駆動力化だけでなく、低速、低駆動力側にも駆動可能範囲を広げることが可能である。
【0125】
一方、移動体ユニット802が圧電素子811A寄りのストローク端領域SAに位置するときには、移動体ユニット802と駆動軸812との摩擦係合部に対して、近い方の圧電素子811Aの振動が伝わる時間と遠い方の圧電素子811Bの振動が伝わる時間との時間差が大きくなる。したがって、ストローク端領域SAにおいては圧電素子811Aの駆動のみによって移動体ユニット802の移動を制御することで、移動体ユニット802から遠い方の圧電素子811Bの駆動(振動)が移動体ユニット802の移動を阻害するのを防止できる。すなわち、移動体ユニット802に近い方の圧電素子811Aの駆動のみによって移動体ユニット802の移動を制御することで、圧電素子811A,811Bに駆動波形を供給する駆動コントローラ808の回路設計及び駆動波形の設計が容易になるとともに、ストローク端領域SAにおける移動体ユニット802の移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0126】
同様に、移動体ユニット802が圧電素子811B寄りのストローク端領域SBに位置するときには、圧電素子811Bの駆動のみによって移動体ユニット802の移動を制御することで、駆動コントローラ808の回路設計及び駆動波形の設計が容易になるとともに、ストローク端領域SBにおける移動体ユニット802の移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0127】
また、一方の圧電素子811A又は811Bのみの駆動で移動体ユニット802を移動させるに当たり、他方の圧電素子811B又は811Aの2つの端子を短絡させるようにしてもよい。この場合、他方の圧電素子811B又は811Aは吸振器として作用し、駆動する圧電素子811A又は811Bが連結する駆動軸812の端部とは反対側の端部からの反射波の影響を低減でき、ひいては移動体ユニット802の移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0128】
また、移動体ユニット802を移動させるにあたり、ストロークSの全範囲において、第1及び第2駆動コントローラ808A,808Bによって圧電素子811A,811Bそれぞれに駆動パルスを供給して、圧電素子811A,811Bの両方を同時に駆動させるようにしてもよい。この場合、例えば圧電素子811Aを主駆動用圧電素子とし、圧電素子811Bを補助駆動用圧電素子とし、圧電素子811Aの駆動による駆動軸812の振動がストロークS内でなるべく均一になるように、第2駆動コントローラ808Bが供給する電気信号を調整して圧電素子811Bを駆動させることで、ストロークS内での移動体ユニット802の移動速度や駆動力を均一にできる。
【0129】
なお、例えば駆動軸812に対する移動体ユニット802の移動方向や、駆動軸812上での駆動軸812と移動体ユニット802との摩擦係合の位置に応じて主駆動用圧電素子と補助駆動用圧電素子とを入れ替えるように、第1及び第2駆動コントローラ808A,808Bが圧電素子811A,811Bに駆動パルスを供給するようにしても構わない。また、圧電素子811A,811Bの一方を主駆動用圧電素子とし、他方を補助駆動用圧電素子とする構成は、ストローク中央領域SCで圧電素子811A,811Bの両方を駆動させ、ストローク端領域SA,SBでは圧電素子811A,811Bの一方を駆動させる構成にも適用可能である。
【0130】
また、圧電素子811A,811Bは、同じ構造で出力特性が同じものであってもよいし、互いに構造が異なっていて出力特性も異なるものであってもよい。
【0131】
図21は、駆動装置の他の例を説明するための概略構成図である。駆動装置900は、移動体ユニット902と、移動体ユニット902を支持する支持ユニット901と、一対の圧電素子903,904とを備える。支持ユニット901を構成する駆動軸912の一端に駆動用圧電素子903が接続され、他端に吸振用圧電素子904が接続されている。吸振用圧電素子904の2つの端子904a,904bは、例えばリード線905などを介して短絡されている。
【0132】
駆動装置900では、駆動用圧電素子903の駆動(振動)によって、移動体ユニット902が支持ユニット901に対して相対的に移動する。駆動コントローラ908は、リード線913を介して駆動用圧電素子903に鋸歯状波の駆動パルスを供給して、駆動軸912を軸方向に振動させて、駆動軸912に摩擦係合する移動体ユニット902を駆動軸912に沿って移動させる。
【0133】
駆動装置900は、駆動軸912の両端に接続した圧電素子903,904のうち、駆動用圧電素子903に駆動波形を供給して駆動(振動)させる一方で、吸振用圧電素子904の2つの端子904a,904bを短絡させていることで、駆動用圧電素子903を駆動(振動)したときに駆動軸912の吸振用圧電素子904側の端部からの反射波の影響を低減でき、移動体ユニット902の移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0134】
なお、駆動装置900において、圧電素子903,904及び駆動軸912の接合構成及び支持構成は、例えば
図18及び
図19に示した圧電素子811A,811B及び駆動軸812の接合構成及び支持構成と同様の構成を採用できる。
【0135】
また、
図22に示すように、圧電素子の駆動によって振動する軸の両端に圧電素子を設ける構成は、駆動軸955に摩擦係合する支持ユニット952(支持体)を台材960に固定し、駆動軸955の両端に圧電素子953,954(第1圧電素子、第2圧電素子)を接続し、圧電素子953,954の両方又は一方の駆動によって駆動軸955及び圧電素子953,954を移動体ユニット951として移動させる駆動装置950にも適用可能である。
【0136】
圧電素子953,954と駆動軸955との接合構成に関し、
図22(A)に示すように圧電素子953,954の端面と駆動軸955の端面とを接着剤(図示省略)にて接合してもよいし、(B)に示すように略直方体状又は側面視でH字状の伝達部材914を介して接着剤にて接合してもよいし、(C)に示すように板状の伝達部材915を介して接着剤にて接合してもよいし、(D),(E)に示すように圧電素子953,954の端面と駆動軸955の端面との接合部917を接着剤にて接合するとともに、接合部917をまたぐように圧電素子953,954及び駆動軸955の外周面に、一対の断面コ字形の固定部材片916a,916bを突き合せて片該外周面を囲う固定部材916を接着剤にて接合してもよい。伝達部材914,915及び固定部材916の材料は、例えば金属、セラミック又は樹脂などである。
【0137】
図22(B)~(E)に示すように、圧電素子953,954と駆動軸955との接合部に伝達部材914,915及び固定部材916を設けることで、
図18及び
図19に示した各実施形態と同様の作用及び効果を奏する。すなわち、圧電素子953,954と駆動軸955とが接着剤で直接接合されているだけの構成(
図22(A)参照)に比べて、圧電素子953,954と伝達部材914,915又は固定部材916との間の接着剤の付着力の低下を抑制して駆動装置950の動作を安定させることができる。また、伝達部材914,915によって、圧電素子953,954からの振動を受ける駆動軸955の固有振動数を調整でき、速度や駆動力の面で駆動装置としての効率、性能の向上できる。さらに、圧電素子953,954と駆動軸955との接着接合に関し、伝達部材914,915又は固定部材916の素材を選定した上で接着剤を選定できるので、接着剤の選択の幅が広がるとともに、圧電素子953,954及び駆動軸955と伝達部材914,915又は固定部材916とを適切な接着剤を用いて強力に接合できる。ここでも、圧電素子953,954側と、伝達部材914,915又は固定部材916側とで、接着剤の成分を異ならせることも可能である。
【0138】
なお、
図22(D),(E)に示す固定部材916は断面ロ字形状の一体物で構成されてもよい。また、一対の断面コ字形の固定部材片916a,916bを突き合せて断面ロ字形の固定部材916を形成する構成は、
図19(C),(D)に示した固定部材818にも適用可能である。また、
図22(D),(E)に示した固定部材916に替えて、接合部817をまたぐように圧電素子953,954及び駆動軸955の左右両側面(もしくは上下両側面)に断面コ字形の伝達部材を接着剤にて接合しても構わない。また、例えば圧電素子953側に伝達部材914を設ける一方、圧電素子954側は駆動軸955と直接接合するなど、圧電素子953側と圧電素子954側とで、駆動軸955との接続構成を異ならせてもよい。
【0139】
このような駆動装置950において、
図20を参照して説明した制御と同様に、移動体ユニット951が、ストローク中央領域に位置するときには圧電素子953,954の両方に駆動パルスを供給し、一方の圧電素子953寄りのストローク端領域に位置するときには圧電素子953のみに駆動パルスを供給し、他方の圧電素子954寄りのストローク端領域に位置するときには圧電素子954のみに駆動パルスを供給することで、移動体ユニット951の移動の制御性及び正確性を向上できる。また、一方の圧電素子953又は954のみの駆動で移動体ユニット951を移動させるに当たり、他方の圧電素子954又は953の2つの端子を短絡させて他方の圧電素子954又は953を吸振器として作用させることで、移動体ユニット951の移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0140】
また、駆動装置950において、移動体ユニット951を移動させるにあたり、
図20を参照して説明した制御と同様に、第1及び第2駆動コントローラによって圧電素子953,954それぞれに駆動パルスを供給するとともに、圧電素子953,954の一方を主駆動用圧電素子とし、他方を補助駆動用圧電素子としてもよい。
【0141】
また、
図23(A)に示すように、一方の圧電素子954の2つの端子954a,954bをリード線905などにて短絡させて吸振用圧電素子とし、他方の圧電素子953を駆動用圧電素子とすることで、駆動用の圧電素子953を駆動(振動)したときに駆動軸955の吸振用の圧電素子954側の端部からの反射波の影響を低減でき、移動体ユニット802の移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0142】
図23(B)に示すように、駆動軸955の両端に圧電素子953,954を固定した移動体ユニット951の両端に取り付けた出力部材950a,950bのうち少なくとも一方を設けてもよい。圧電素子954に取り付けられた出力部材950aは、端子954a,954b及びリード線905の電気的特性に干渉しないように設けられている。圧電素子953に取り付けられた出力部材959bは、圧電素子953の端子及びリード線913の電気的特性に干渉しないように設けられている。
【0143】
出力部材950a,950bにカメラ付き作業モジュール100の台座部材450(
図2等参照)を直接又は他の部材や機構を介して連結することで、カメラ付き作業モジュール100のグリッパー200(作業ツール)を所望の位置へ迅速かつ高い分解能で正確に移動及び配置できる。なお、移動体ユニット951の両端に出力部材950a,950bを設ける構成は、圧電素子953,954の両方が駆動用素子として使用可能な構成(例えば、
図22の実施形態参照)にも適用可能である。
【0144】
図24は、駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。本実施形態の駆動装置900Aは、
図21に示した駆動装置900と比較して、吸振用圧電素子904の2つの端子904a,904bがリード線905の中途部に設けたスイッチ909を介して接続されている点で異なっている。駆動装置900Aのその他の構成は駆動装置900と同様である。また、駆動装置900Aにおいて、圧電素子903,904及び駆動軸912の接合構成及び支持構成は、駆動装置900と同様に、例えば
図18及び
図19に示した圧電素子811A,811B及び駆動軸812の接合構成及び支持構成と同様の構成を採用できる。
【0145】
スイッチ909は、移動体ユニット902がストロークS内で吸振用圧電素子904寄りのストローク領域Scloseに位置するときには吸振用圧電素子904の端子904a,904b間を短絡(ショート)するように構成されている。また、スイッチ909は、移動体ユニット902がストロークS内の中央領域及び駆動用圧電素子903寄りの端領域を含むストローク領域Sopen(ストロークSのうちストローク領域Scloseを除く領域)に位置するときには吸振用圧電素子904の端子904a,904b間を開放(オープン)するように構成されている。
【0146】
本実施形態では、スイッチ909は、導電性の可動片909a及び固定片909bを備えている。可動片909aは、固定片909bと駆動軸912との間に位置している。
図24(A)に示すように、移動体ユニット902がストローク領域Scloseから離れた領域に位置するときには、固定片909bと駆動軸912は互いに離間した状態になっている。すなわち、吸振用圧電素子904の端子904a,904b間は電気的に接続されておらず、端子904a,904b間の電気回路は開放されている。
【0147】
一方、移動体ユニット902がストローク領域Scloseに接近すると、スイッチ909の可動片909aの先端部が移動体ユニット902に押されて駆動軸912から離れる方向へ変位する。そして、移動体ユニット902の少なくとも一部分がストローク領域Scloseに進入した状態では、可動片909aが固定片909bに接触し、吸振用圧電素子904の端子904a,904b間が短絡した状態になる(
図24(B)参照)。なお、本実施形態では、スイッチ909の可動片909aの先端部が移動体ユニット902に押されて固定片909b側へ最大限変位した状態では、固定片909bの先端部は可動片909aに押されて駆動軸912側から離れる方向へ多少変位した状態になる。また、ストローク領域Scloseの範囲の大きさは適宜変更可能である。
【0148】
駆動装置900Aは、駆動コントローラ908が鋸歯状波の駆動パルスを駆動用圧電素子903に供給して駆動用圧電素子903を駆動(振動)させて駆動軸912を軸方向に振動させることで、駆動軸912に摩擦係合する移動体ユニット902を駆動軸912に沿って移動させる。そして、駆動装置900Aは、移動体ユニット902が駆動用圧電素子903から離れたストローク領域Scloseに位置するときには、スイッチ909によって吸振用圧電素子904の2つの端子904a,904b間を短絡させることで、駆動用圧電素子903を駆動(振動)したときに駆動軸912の吸振用圧電素子904側の端部からの反射波の影響を低減させる。これにより、駆動用圧電素子903から離れたストローク領域Scloseにおいて、移動体ユニット902の移動の制御性及び正確性を向上できる。例えば、駆動軸912の軸方向長さを長くして移動体ユニット902のストロークSを大きくしたロングストローク化が実現可能になる。
【0149】
なお、スイッチ909は、可動片909a及び固定片909bを備えた構成に限定されず、移動体ユニット902がストローク領域Scloseに位置するときには吸振用圧電素子904の端子904a,904b間を短絡(ショート)し、ストローク領域Sopenに位置するときには端子904a,904b間を開放(オープン)にすることが可能な構成であれば、どのような構成のものであっても構わない。
【0150】
また、
図23に示した駆動装置950において、圧電素子954の2つの端子954a,954bを接続するリード線905の中途部にスイッチ909を接続しても構わない。この場合、スイッチ909は、支持ユニット952に摩擦係合する駆動軸955が
図23の紙面左側へ移動し、支持ユニット952駆動用の圧電素子953が支持ユニット952から離れるとともに吸振用の圧電素子954が支持ユニット952に接近したときに、圧電素子954端子954a,954b間を短絡させるように構成すればよい。これにより、駆動用の圧電素子953と支持ユニット952との距離が大きくなった状態でも、駆動軸955の圧電素子954側の端部からの反射波の影響を低減させて、移動体ユニット951の移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0151】
図25及び
図26は、駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
図25及び
図26に示す実施形態は、駆動装置900の支持構成例を表している。
図25(A),(B)、
図25(C),(D)、
図25(E),(F)、
図26(A),(B)、
図26(C),(D)、
図26(E),(F)は、それぞれ異なる実施形態を示している。なお、
図25(B)は(A)のX-X位置に沿った断面図、
図25(D)は(C)のY-Y位置に沿った断面図、
図25(F)は(E)のZ-Z位置に沿った断面図である。
図26(B)は(A)のP-P位置に沿った断面図、
図26(D)は(C)のQ-Q位置に沿った断面図、
図26(F)は(E)のR-R位置に沿った断面図である。
【0152】
図25(A),(B)、
図25(C),(D)、
図25(E),(F)、
図26(A),(B)に示す各実施形態では、圧電素子903,904の端面と駆動軸912の端面との接合部917を接着剤にて接合し、圧電素子903,904及び駆動軸912の外周面に、接合部917をまたぐように断面コ字形の固定部材918を接着剤にて固着して支持ユニット901を構成している。固定部材918の材料は、例えば金属、セラミック又は樹脂などである。
【0153】
駆動装置900は、コ字形又は箱型の台材920の内部に一対の装置保持部930を介して取り付けられる。台材920は、駆動用圧電素子903の端面に対峙する第1台材部921と、吸振用圧電素子904の端面に対峙する第2台材部922と、駆動軸912の軸方向に延びて第1台材部921と第2台材部922とを支持する第3台材部923とを有する。装置保持部930は、圧電素子903,904、駆動軸912及び固定部材918を軸方向に振動可能に保持する。台材920及び装置保持部930の材料は、例えば金属、セラミック又は樹脂などである。なお、台材920の形状はコ字形又は箱型に限定されず、装置保持部930を支持可能な構成であればよい。また、台材920は複数の部材で形成されていてもよい。
【0154】
装置保持部930は、固定部材918を収容する凹部931aを有する保持ベース部材931と、凹部931aの開口を塞ぐ保持カバー部材932とを備える。保持カバー部材932は一対のカバー取付用ねじ933にて保持ベース部材931に連結している。保持ベース部材931はベース固定用ねじ934にて第3台材部923に固着している。本実施形態では、保持ベース部材931は、第3台材部923に固着する部位が凹部931aの形成部位よりも駆動軸912の軸方向に沿って長く形成された略L字形の形態を有する。
【0155】
凹部931aの内壁と固定部材918とは固着しておらず、また、保持カバー部材932と圧電素子903,904及び固定部材918とは固着していない。これにより、固定部材918は駆動軸912の径方向(軸方向に直交する方向)への移動を拘束されながら駆動軸912の軸方向に振動可能に保持され、ひいては支持ユニット901が駆動軸912の径方向への移動を拘束されながら駆動軸912の軸方向に振動可能に保持される。装置保持部930は、移動体ユニット902の移動可能範囲を制限するストッパー部材として機能する。
【0156】
図25(A),(B)に示す実施形態は、駆動用圧電素子903の端面と第1台材部921との間に介在する弾性体940を備えている。吸振用圧電素子904の端面は第2台材部922に接触している。すなわち、支持ユニット901は、弾性体940によって第2台材部922に向けて付勢されて位置決めされる。このように、支持ユニット901を弾性体940の反発力(弾性力)によって位置決めしながら駆動軸912の軸方向に振動可能に保持することで、駆動用圧電素子903の駆動によって発生する振動を駆動軸912に効率よく伝達できる。
【0157】
なお、弾性体940を吸振用圧電素子904と第2台材部922との間に介在させてもよいし、支持ユニット901の両端部と台材920との間のそれぞれに弾性体940を介在させてもよい。また、本実施形態では、弾性体940は圧縮コイルばねで構成しているが、当該弾性体は反発力で支持ユニット901を支持ユニット901の軸方向に付勢できるものであればよく、例えばゴムで形成されたものであってもよい。
【0158】
また、第1台材部921及び第2台材部922は、駆動軸912の軸方向の延長上で支持ユニット901の端部に対向するユニット位置決め体を構成している。当該ユニット位置決め体は、台材920とは異なる部材で構成されてもよく、例えば台材920又は装置保持部930に取り付けられた他部品で構成されてもよい。
【0159】
なお、凹部931aの内壁と固定部材918とが例えば接着剤などで固着されている場合であっても、圧電素子903の駆動によって発生する振動は駆動軸912に伝達され、移動体ユニット902を移動させることは可能である。ただし、凹部931aの内壁と固定部材918との間に微小な自由度(すき間)を持たせておくことで、圧電素子903の振動を駆動軸912により効率よく伝達でき、例えば移動体ユニット902の移動速度や駆動力を大きくすることができる。
【0160】
図25(C),(D)に示す実施形態は、圧電素子903,904が台材920とは間隔をあけて配置されている。駆動用圧電素子903側の固定部材918を支持する装置保持部930の保持ベース部材931は、第3台材部923側から凹部931aに貫通するピン保持穴931bを備えている。ピン保持穴931b内に配設された位置決め用のピン部材935の一端部が凹部931a内に突出して、固定部材918に設けた位置決め用のピン嵌入凹部918aに嵌り込んでいる。ピン部材935の材料は、例えば金属、セラミック又は樹脂などである。
【0161】
ピン保持穴931bの内壁とピン部材935の側面とは固着しておらず、また、ピン部材935とピン嵌入凹部918aとは固着していない。これにより、支持ユニット901は台材920及び装置保持部930に対して位置決めされながら、駆動軸912の軸方向に振動可能に保持されている。このように、支持ユニット901をピン部材935とピン嵌入凹部918aとで位置決めしながら駆動軸912の軸方向に振動可能に保持することで、駆動用圧電素子903の駆動によって発生する振動を駆動軸912に効率よく伝達できるとともに、支持ユニット901を簡素な構成で位置決めできる。
【0162】
なお、ピン部材935が保持ベース部材931と一体的に形成されることで凹部931a内壁に形成される突起部がピン嵌入凹部918aに嵌り込む構成であってもよい。また、ピン部材935に替えて、固定部材918の外周面に設けた突起部がピン保持穴931bに嵌り込む構成であってもよい。
【0163】
また、ピン部材935とピン嵌入凹部918aとが例えば接着剤などで固着されている場合であっても、圧電素子903の振動は駆動軸912に伝達される。ただし、ピン部材935とピン嵌入凹部918aとの間に微小な自由度(すき間)を持たせておくことで、圧電素子903の振動を駆動軸912により効率よく伝達でき、例えば移動体ユニット902の移動速度や駆動力を大きくすることができる。
【0164】
また、支持ユニット901を構成する駆動軸912や圧電素子903,904の形状や寸法、材料特性、駆動波形の周波数等の条件によっては、接合部917の位置あるいはその近傍に支持ユニット901の振動の節を持ってくることが可能である。振動の節またはこの近傍を固着しても振動に対する影響は少ないので、この場合は、一方又は両方の装置保持部930において、凹部931aの内壁と固定部材918とを接着剤等で固着してもよい。また、圧電素子903,904、駆動軸912および固定部材918のうち少なくともいずれかと保持カバー部材932とを固着してもよい。また、ピン部材935とピン嵌入凹部918aとの間を固着してもよい。このように、接合部917の位置あるいはその近傍に支持ユニット901の振動の節を持ってくる場合は、支持ユニットの形状や寸法、材料特性、駆動波形の周波数等の条件を設計する必要があるが、装置全体の剛性を高くすることができる。
【0165】
図25(E),(F)に示す実施形態は、
図25(C),(D)に示す実施形態と比較して、保持カバー部材932に替えて、押えバネ部材936を備えている。押えバネ部材936は、例えば金属製の板バネで形成され、左右両端部位がカバー取付用ねじ933にて保持ベース部材931に連結されるとともに、凸形に設けた中央部位が圧電素子903及び駆動軸912に接触している。
【0166】
本実施形態では、押えバネ部材936の反発力によって固定部材918を保持ベース部材931の凹部931aの底部側(第3台材部923側)に向けて押圧することで、支持ユニット901をその軸方向に振動可能に保持している。そして、保持ベース部材931へのカバー取付用ねじ933のねじ込み具合を調節することで、支持ユニット901に対する押えバネ部材936の反発力を調節して、支持ユニット901の振動のし易さを調節できる。
【0167】
なお、押えバネ部材936によって支持ユニット901を装置保持部930に保持する構成は、
図25(A),(B)に示した実施形態に適用可能であることは言うまでもない。
【0168】
図26(A),(B)に示す実施形態は、
図25(A),(B)に示す実施形態と比較して、支持ユニット901は吸振用圧電素子904を備えておらず、駆動軸912の端面が第2台材部922に接触している。駆動軸912の第2台材部922側の端部寄り部位には装置保持部930に支持される固定部材918が固着している。
【0169】
このように、弾性体940の反発力によって支持ユニット901を位置決めしながら駆動軸912の軸方向に振動可能に保持する支持構成は、駆動軸912の一端部に駆動用圧電素子903を接合した構成にも適用可能である。なお、吸振用圧電素子904を備えていない支持ユニット901の駆動軸912を装置保持部930にて支持する構成は、
図25(C),(D)に示す実施形態や
図25(E),(F)に示す実施形態にも適用可能である。
【0170】
図26(C),(D)に示す実施形態は、
図25(A),(B)に示す実施形態と比較して、支持ユニット901は、固定部材918が設けられておらず、接合部917を収容する凹部931cを備えた保持ベース部材931を有する一対の装置保持部930Aに支持されている。凹部931cの内壁と圧電素子903,904と駆動軸912とは固着しておらず、また、保持カバー部材932と圧電素子903,904とは固着していない。これにより、支持ユニット901が装置保持部930に駆動軸912の軸方向に振動可能に保持されている。装置保持部930Aは、移動体ユニット902の移動可能範囲を制限するストッパー部材として機能する。
【0171】
なお、装置保持部930Aは、接合部917を保持せずに駆動軸912の端部寄り部位を保持する構成であっても構わない。また、保持カバー部材932に替えて、押えバネ部材936(
図25(E),(F)参照)によって支持ユニット901を装置保持部930に保持する構成であっても構わない。
【0172】
図26(E),(F)に示す実施形態は、
図26(C),(D)に示す実施形態と比較して、圧電素子903,904が台材920とは間隔をあけて配置されている。そして、駆動用圧電素子903側の装置保持部930Aの保持ベース部材931は、
図25(C),(D)に示す実施形態の保持ベース部材931と同様に、位置決め用のピン部材935を保持するピン保持穴931bを備えている。ピン部材935の一端部が凹部931a内に突出して、駆動軸912の端部寄り部位に設けたピン嵌入凹部912aに嵌り込んでいる。駆動軸912は、押えバネ部材936の反発力によって保持ベース部材931の凹部931a内に拘束されている。
【0173】
ピン保持穴931bの内壁とピン部材935の側面とは固着しておらず、支持ユニット901は台材920及び装置保持部930に対して位置決めされながら、駆動軸912の軸方向に振動可能に保持されている。このように、駆動軸912に設けた凹部又は凸部と、それに係合する凸部又は凹部を有する装置保持部930Aとによって、支持ユニット901を駆動軸912の軸方向に振動可能に保持することも可能である。
【0174】
なお、
図25及び
図26に示す各実施形態において、吸振用圧電素子904は、リード線913を介して駆動コントローラ908(
図23参照)に接続された駆動用の圧電素子であってもよい。また、上述した実施形態及び変形例(なお書き等)で説明した各構成を組み合わせても構わないし、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【0175】
図27は、駆動装置のさらに他の例を説明するための概略構成図である。
図27に示す実施形態は、支持ユニット901の片持ち支持構成例を表している。
図27(A),(B)は同一の実施形態を示し、(A)は移動体ユニット902が駆動用圧電素子903側に位置している状態を示し、(B)は移動体ユニット902が圧電素子903とは反対側の端部寄りに位置している状態を示す。
【0176】
本実施形態では、駆動装置900の支持ユニット901は、駆動軸912の一端に駆動用圧電素子903を固定している。そして、支持ユニット901の圧電素子903寄りの部位が装置保持部930Aによって箱形状の台材920に片持ち支持されている。駆動軸912の他端部(圧電素子903とは反対側の端部)には、駆動軸912よりも大径のストッパー部材919が固着している。駆動軸912に摩擦係合する移動体ユニット902は、装置保持部930Aとストッパー部材919との間で駆動軸912の軸方向に沿って摺動可能に構成されている。
【0177】
移動体ユニット902には、支持ユニット901の他端側を覆う筒状の出力部材970が連結されている。筒状の出力部材970は、例えば一端側の開口が閉塞した四角筒状の形態を有し、駆動軸912の外周を覆う四角筒状の側面部971と、側面部971の開口を塞ぐ先端面部972とを有する。本実施形態では、移動体ユニット902の外周に設けたスペーサ部材902aに出力部材970の側面部971の内周面が固着具973によって接合されて、移動体ユニット902と出力部材970とが連結している。出力部材970の先端面部972はストッパー部材919に対向配置される。
【0178】
このように、出力部材970を筒状とすることで出力部材970の剛性を高めることができる。さらに、出力部材970は、支持ユニット901の他端側の端面に設けたストッパー部材919に対向して側面部971の先端側開口を塞ぐ先端面部972を備えているので、筒状の出力部材970の剛性をより高めることができる。また、出力部材970を筒状に設けることで、例えば側面部971の複数の面に移動対象を連結したり、先端面部972に移動対象を連結したりできるので、用途の汎用性が向上する。
【0179】
なお、駆動軸912に摩擦係合する移動体ユニット902は、
図27等では簡略化して図示されているが、直方体状の駆動軸912の4つの側面それぞれに摩擦係合している。例えば、移動体ユニット902は、駆動軸912の4つの側面ごとに設けた4つの部材、又は駆動軸912の隣り合う2つの側面ごとに設けたL字形の2つの部材を備え、それらの部材が駆動軸912に向けて押し付けられることで、駆動軸912と摩擦係合する。そして、駆動軸912の4つの側面のうち対向する2側面に摩擦係合する移動体ユニット902の2つ部位を、両方とも出力部材970に固着すると出力部材970の形状や寸法、剛性などが駆動軸912と移動体ユニット902との摩擦係合力に影響を与える可能性がある。そこで、本実施形態では、上記移動体ユニット902の2つ部位のうち一方の部位を固着具973によって出力部材970に固着し、他方の部位は出力部材970に固着しないようにしている。
【0180】
図27では、駆動軸912の4つの側面のうち対向する2側面に摩擦係合する移動体ユニット902の2つ部位に設けたスペーサ部材902aを図示しているが、
図27の紙面鉛直方向で対向する駆動軸912の2側面に摩擦係合する移動体ユニット902の2つ部位のうち一方に設けたスペーサ部材902aを出力部材970に固着しても構わない。なお、移動体ユニット902の上記他方の部位と出力部材970との間に、出力部材970には固着しないスペーサ部材902aを介在させることで、出力部材970に外力が加わったときの移動体ユニット902に対する出力部材970の変位を低減できる。
【0181】
また、固着具973は、移動体ユニット902と出力部材970とを接合できるものであればよく、例えばねじ部材であっても構わないし、接着剤であっても構わない。また、スペーサ部材902aは、駆動軸912に摩擦係合する移動体ユニット902の部材に一体形成されていてもよいし、接着剤やネジ部材などで固着されていてもよい。
【0182】
次に、本実施形態の片持ち支持構造について説明する。支持ユニット901の圧電素子903寄りの部位を保持する装置保持部930Aは、
図26(E),(F)に示した実施形態の装置保持部930Aと同様に、保持ベース部材931が駆動軸912を収容する凹部931cを備え、駆動軸912に設けたピン嵌入凹部912aにピン部材935を嵌め込むことで駆動軸912を位置決めしている。凹部931cに収容された駆動軸912は、カバー取付用ねじ933によって保持ベース部材931に取り付けられる保持カバー部材932によって拘束されている。
【0183】
このように、支持ユニット901において駆動軸912の圧電素子903寄り部位が台材920に片持ち支持されていることで、移動体ユニット902に連結する移動対象(例えば作業モジュール100の台座部材450や他の駆動装置など)を配置可能な空間を広げて設計の自由度および用途の汎用性を向上できる。さらに、外力によって駆動軸912に加わるモーメントが圧電素子903と駆動軸912との接合部917にはかからないので、圧電素子903の振動を駆動軸912に安定して伝達でき、駆動装置900の駆動安定性を確保できる。
【0184】
また、装置保持部930Aは、駆動軸912を固定する固定部937と、固定部937から圧電素子903とは反対向きに延びて駆動軸912の側面に対向配置される規制部938とを備えている。本実施形態では、保持カバー部材932を保持ベース部材931に固着するカバー取付用ねじ933が圧電素子903寄りの位置で保持ベース部材931に螺合している。これにより、凹部931cの部位のうち圧電素子903寄りの部位が駆動軸912をしっかりと固定する固定部937を構成し、圧電素子903から離れた部位が規制部938を構成する。
【0185】
本実施形態では、装置保持部930Aは、固定部937にて駆動軸912の圧電素子903寄り部位を台材920に確実に連結するとともに、外力のモーメントが駆動軸912に加わったときに固定部937及び規制部938によって駆動軸912の回転を抑制するので、固定部937に力が集中することによる装置保持部930A及び駆動軸912の破損を防止できる。また、規制部938は、固定部937に比べて駆動軸912の拘束力(駆動軸912と930Aとの固着力)が小さいので、圧電素子903の駆動による駆動軸912の振動の低下を抑制でき、装置保持部930Aは、駆動軸912をしっかり位置決めできる構成でありながら、移動体ユニット902の移動速度及び駆動力の低下を抑制できる。
【0186】
なお、固定部937において、装置保持部930Aと駆動軸912は接着剤にて固着されていても構わない。この場合、規制部938においては装置保持部930Aと駆動軸912は固着されていないようにすれば、上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、支持ユニット901を片持ち支持する構成は、接合部917を直接又は固定部材918を介して装置保持部930Aに拘束する構成であっても構わない。
【0187】
図27(C)に示すように、駆動軸912の他端に吸振用圧電素子904が接合されていても構わない。なお、吸振用圧電素子904に替えて、駆動コントローラからの電気信号によって駆動可能な圧電素子を駆動軸912の他端に設けても構わない。この場合、当該圧電素子から延びる配線を、例えば出力部材970の側面部971の一側面に駆動軸912に沿って設けた長穴又は溝に通すことで、出力部材970の外部に配設される駆動コントローラに接続できる。
【0188】
また、
図27(C)に示すように、駆動軸912に摩擦係合する移動体ユニット902が駆動軸912の軸方向で互いに分離した複数の移動体ユニット構成体902bに分割されて、各移動体ユニット構成体902bそれぞれが駆動軸912に摩擦係合していても構わない。これらの移動体ユニット構成体902bは、スペーサ部材902a及び出力部材970を介して互いに連結されている。
【0189】
移動体ユニット902と駆動軸912との摩擦係合部の駆動軸912の軸方向での長さが長いほど、圧電素子903から当該摩擦係合部に伝わる振動が平均化されて移動体ユニット902の駆動が安定する。しかしながら、摩擦係合部には駆動軸912と移動体ユニット902との接合面に高い平面度が要求されることから、軸方向に長い摩擦係合部を形成することは高度な加工技術が必要であり、製造コストが増大する。
【0190】
そこで、本実施形態のように、移動体ユニット902を軸方向で複数の移動体ユニット構成体902bに分割することで、移動体ユニット902と駆動軸912との摩擦係合部を分割して個々の摩擦係合部の軸方向長さを小さくできる。これにより、個々の摩擦係合部の軸方向長さを小さく設計して製造コストを抑制できる構成でありながら、移動体ユニット902と駆動軸912との摩擦係合部の合計の軸方向長さを長くでき、移動体ユニット902の駆動安定性を向上できる。
【0191】
なお、移動体ユニット902は、互いに分離した3つ以上の移動体ユニット構成体902bで構成されても構わない。また、駆動軸と移動体ユニット又は支持ユニットとの摩擦係合部を軸方向に2つ以上に分割する(分離して設ける)構成は、上記のいずれの実施形態にも適用可能である。また、上述した実施形態及び変形例(なお書き等)で説明した各構成を組み合わせても構わないし、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【0192】
図28に示すように、装置保持部930Aの保持ベース部材931は、駆動軸912の軸方向で互いに離間した複数個所(例えば2箇所)でベース固定用ねじ934によって台材920に固着していても構わない。これにより、装置保持部930Aと台材920とがより強固に連結されることで、駆動軸912に出力部材970等を介して外力が加わったときに駆動軸912の変位をより確実に低減でき、移動体ユニット902および出力部材970の位置決め精度を向上できる。
【0193】
なお、装置保持部と台材とを互いに離間した複数個所(駆動軸の軸方向に交差する方向で離間していてもよい)でねじによって固着する構成は、上記のいずれの実施形態にも適用可能である。また、装置保持部と台材とを固着する手段は、ねじ等の固着具に限らず、接着剤であっても構わないし、固着具と接着剤との両方で装置保持部と台材とを固着しても構わない。また、各圧電素子は、複数の積層型圧電素子が積層方向に直列に接合されたもので構成されても構わない。
【0194】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態での材料、形状、配置、個数等は一例であり、本発明は他にも様々に具体化できる。例えば、上記実施形態のカメラ付き作業モジュールが取り付けられるカメラ付き作業装置は、3軸操作用駆動装置以外にも、1軸操作用駆動装置や2軸操作用駆動装置であっても構わないし、回転動作を行う駆動装置と組み合わせたものとしても構わない。また、上述した実施形態及び変形例(なお書き等)で説明した各構成を組み合わせても構わないし、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
(付記)
ところで、特許文献1のマイクロマニピュレータでは、マイクログリッパーは、把持アームが電磁駆動方式で開閉動作するように構成されているので、構造が複雑であり、小型化及び軽量化が困難であるという問題があった。また、マイクログリッパーの把持アームの先端部周辺を撮像するカメラは、マイクログリッパーを支持する部材とは別の部材に支持されているので、マイクログリッパー装置の大型化及び重量化を招くという問題があった。
【0195】
また、特許文献1のマイクロマニピュレータでは、マイクログリッパー(作業ツール)の作業領域を撮像するカメラは顕微鏡に装着されるとともに、マイクログリッパーの把持アーム先端部を顕微鏡の視野内に移動させるためのXYZ移動機構が設けられていることから、大型化及び重量化を招くという問題があった。
【0196】
(付記1)
作業ツールの作業領域を撮像する撮像装置と、
前記作業ツールを支持するとともに前記作業ツールを前記作業領域に対して回転させるツール回転装置と、
前記ツール回転装置と前記撮像装置とを支持する台座部材とを備え、
前記撮像装置は、前記台座部材に回転不能に保持されるとともに、前記ツール回転装置による前記作業ツールの回転軸上に配置されている、カメラ付き作業モジュール。
【0197】
ここで、「撮像装置は、作業ツールの回転軸上に配置されている」構成には、撮像装置の光軸と作業ツールの回転軸とが一致している構成のほか、撮像装置の光軸と作業ツールの回転軸とが一致していない(ずれている)構成も含む。
【0198】
付記1のカメラ付き作業モジュールによれば、ツール回転装置によって作業ツールの姿勢(向き)を変更して作業の確実性及び正確性を向上できるとともに、台座部材にツール回転装置と撮像装置とを設け、撮像装置をツール回転装置による作業ツールの回転軸上に配置しているから、作業ツールの回転軸に対して撮像装置を移動させる機構が不要であり、コンパクトかつ軽量で作業性の高いカメラ付き作業モジュールを実現できる。このように、カメラ付き作業モジュールをコンパクトかつ軽量に構成することで、駆動力が小さい小型のロボットへの装着が可能になる。また、撮像装置は台座部材に回転不能に保持されているから、ツール回転装置によって作業ツールを回転させても、撮像装置が取得する画像は回転しないのでオペレータにとって操作性がよい。
【0199】
また、付記1のカメラ付き作業モジュールによれば、作業ツールとツール回転装置と撮像装置とを1つの台座部材に組み付けてモジュール化することで、移動機構を有する様々なロボットに作業ツールとツール回転装置と撮像装置を組み込むことが容易になる。また、付記1のカメラ付き作業モジュールでは、撮像装置が取得した画像を見ながら、作業ツールを操作できる。そして、撮像装置の光軸と作業ツールの作業領域(例えば作業ツールの先端部)とを調整済みのカメラ付き作業モジュールを準備しておくことで、ロボットへの作業ツール及び撮像装置の取付けを迅速かつ容易に行える。また、付記1のカメラ付き作業モジュールは、小型化及び軽量化を実現できるので、駆動力が小さい小型のロボットへの装着が可能になる。また、作業ツールの作業領域に撮像装置のレンズの光軸を通すことで、レンズの収差の影響が小さい画像領域にて作業ツールの作業領域を観察できる。
【0200】
(付記2)
前記撮像装置は、レンズ駆動用圧電素子の振動によってレンズを光軸に沿って移動させるレンズ駆動装置と、前記レンズを通過した光を受光する撮像素子と、を備えている、付記1に記載のカメラ付き作業モジュール。
【0201】
付記2のカメラ付き作業モジュールによれば、レンズ駆動用圧電素子の振動によってレンズを移動させるようにしたので、レンズ駆動装置の構成を簡素化でき、レンズ駆動装置の小型化及び軽量化を実現できる。そして、撮像装置の小型化及び軽量化、ひいてはカメラ付き作業モジュールの小型化及び軽量化を実現できる。
【0202】
(付記3)
前記撮像素子から延びる配線部材が前記作業ツールの回転可能範囲を避けて延設されるとともに、
前記レンズ駆動装置のレンズ駆動軸は、前記撮像素子の側方に配置されている、付記2に記載のカメラ付き作業モジュール。
【0203】
付記3のカメラ付き作業モジュールによれば、配線部材がツール回転装置による作業ツールの回転を妨げるのを防止しながら、撮像素子の側方の空きスペースを有効活用してレンズ駆動装置を配置でき、よりコンパクトなカメラ付き作業モジュールを実現できる。
【0204】
(付記4)
前記レンズ駆動装置のレンズ駆動軸は、前記撮像素子に対して前記レンズとは反対側の位置で前記レンズの光軸の延長線上に配置されている、付記2に記載のカメラ付き作業モジュール。
【0205】
付記4のカメラ付き作業モジュールによれば、撮像装置の平面サイズを小さくでき、ひいてはカメラ付き作業モジュールの平面サイズを小さくできる。
【0206】
(付記5)
前記作業ツールは、開閉する把持アームを有するグリッパーである、付記1から4のいずれか一項に記載のカメラ付き作業モジュール。
【0207】
付記5のカメラ付き作業モジュールによれば、グリッパーにて把持対象物を把持操作できるとともに、ツール回転装置にてグリッパーの姿勢(向き)を変更できるので、コンパクトかつ軽量でより作業性の高いカメラ付き作業モジュールを実現できる。
【0208】
(付記6)
前記グリッパーの前記把持アームは、前記撮像装置の前記光軸と前記把持アームの延伸方向とが交差するように斜め下向きに延伸している、
付記5に記載のカメラ付き作業モジュール。
【0209】
付記6のカメラ付き作業モジュールによれば、グリッパーと撮像装置とをコンパクトに配置できるとともに、把持アームの長さをなるべく短くして把持アームの強度を確保できる。また、把持アームが斜め下向きに延伸していることで、グリッパーの下方(把持アームの基端部の下方)に空間が形成されるので、把持アームの先端部(把持対象物を把持する部位)以外の部位が把持対象物に衝突しないようにでき、グリッパー装置の操作性が向上する。なお、撮像装置に光軸に沿って撮像装置から作業領域へ向かう方向を下向きとしている。
【0210】
(付記7)
前記撮像装置の前記レンズ及び前記撮像素子を第1レンズ及び第1撮像素子とし、
前記撮像装置は、前記第1レンズの光軸に対して傾斜した光軸で前記作業領域を撮像する第2レンズ及び第2撮像素子をさらに備え、
前記第2レンズは前記第2撮像素子に対して位置固定されている、
付記1から6のいずれか一項に記載のカメラ付き作業モジュール。
【0211】
付記7のカメラ付き作業モジュールによれば、撮像装置が作業ツールの作業領域を撮像する2つの撮像素子を備えているから、当該作業領域に配置された作業対象物のステレオ画像を見ながら把持作業を行うことができ、操作性が向上する。また、例えば一方の撮像素子の取得画像を使用して作業対象物を探し、作業ツールにて作業対象物を操作する際には2つの撮像素子が取得するステレオ画像を見ながら把持作業を行えるので、操作性に優れている。また、第2レンズは第2撮像素子に対して位置固定されているから、第2レンズ及び第2撮像素子を有する撮像装置を簡素な構成で形成できる。これにより、本実施形態はステレオ画像を取得できる構成でありながら、カメラ付き作業モジュールのコンパクト化を実現できる。なお、本実施形態は、第2レンズが第2撮像素子に対して移動可能で焦点距離を変更可能な構成を排除するものではない。また、第2レンズは複数のレンズで構成されても構わない。
【0212】
(付記8)
前記第1撮像素子から延びる配線部材が前記作業ツールの回転可能範囲を避けて延設されるとともに、
前記第2レンズ及び前記第2撮像素子は、前記作業ツールの回転軸と平行な方向で前記配線部材と重なる位置に配設されている、
付記7に記載のカメラ付き作業モジュール。
【0213】
付記8のカメラ付き作業モジュールによれば、作業ツールの回転可能範囲を小さくすることなくデッドスペースを活用して第2レンズ及び第2撮像素子を配設でき、カメラ付き作業モジュールの大型化を抑制できる。
【0214】
(付記9)
付記1から8のいずれか一項に記載のカメラ付き作業モジュールと、
前記カメラ付き作業モジュールの前記台座部材を移動させる移動機構とを備えている、
カメラ付き作業装置。
【0215】
付記9のカメラ付き作業装置によれば、付記1から8のいずれか一項に記載のカメラ付き作業モジュールを備えているので、カメラ付き作業装置全体の小型化及び軽量化を実現できるとともに、カメラ付き作業モジュールの撮像装置で把持対象物を撮像しながら、カメラ付き作業モジュールを移動させて、作業ツールの作業領域に把持対象物を位置合わせできる。
【0216】
(付記10)
前記移動機構は、駆動軸の両端に一対の圧電素子を固定した第1支持ユニットと、前記第1支持ユニットの前記駆動軸に摩擦係合する第1移動体ユニットと、を有する駆動装置を備え、
前記第1移動体ユニットに前記カメラ付き作業モジュールの前記台座部材が連結され、
前記一対の圧電素子の両方又は一方の駆動によって前記第1移動体ユニットが前記駆動軸の軸方向に移動される、
付記9に記載のカメラ付き作業装置。
【0217】
(付記11)
前記移動機構は、駆動軸の両端に一対の圧電素子を固定した第2移動体ユニットと、前記第2移動体ユニットの前記駆動軸に摩擦係合して前記第2移動体ユニットを支持する第2支持ユニットと、を有する駆動装置を備え、
前記第2移動体ユニットに前記カメラ付き作業モジュールの前記台座部材が連結され、
前記一対の圧電素子の両方又は一方の駆動によって前記第2移動体ユニットが前記駆動軸の軸方向に移動される、
付記9に記載のカメラ付き作業装置。
【0218】
付記10及び付記11のカメラ付き作業装置において、駆動装置は、電気信号(駆動パルス)を機械的な振動に変換する圧電素子の振動により駆動軸を軸方向に振動させることで、第1支持ユニットの駆動軸に摩擦係合する第1移動体ユニット、又は第2支持ユニットに摩擦係合して支持される駆動軸を有する第2移動体ユニットを高い分解能で移動させて高精度に位置決めできる。
【0219】
さらに、付記10及び付記11のカメラ付き作業装置では、駆動装置は駆動軸の両端それぞれに圧電素子を固定しているので、例えばそれらの圧電素子を同時に駆動させて移動体ユニットの移動速度や駆動力を向上させたり、一方の圧電素子のみを駆動させて移動体ユニットの制御性や正確性を向上させたりできる。したがって、この実施形態は、移動体ユニットにカメラ付き作業モジュールの台材部材を直接又は他の部材や機構を介して連結することで、カメラ付き作業モジュールの作業ツールを所望の位置へ迅速かつ高い分解能で正確に移動及び配置できる。
【0220】
(付記12)
前記駆動装置は、前記第1支持ユニットを前記駆動軸の軸方向に振動可能に保持しながら台材に連結する装置保持部を備えるとともに、
前記駆動軸の軸方向の延長上で前記第1支持ユニットの端部に対峙するユニット位置決め体を備え、前記第1支持ユニットの一端部が前記ユニット位置決め体に向けて付勢されるように前記第1支持ユニットの他端部を前記一端部に向けて付勢する弾性体を備えている、
付記10に記載のカメラ付き作業装置。
【0221】
付記12のカメラ付き作業装置によれば、第1支持ユニットの駆動軸をその軸方向に振動可能な状態で台材に連結でき、圧電素子の駆動によって発生する振動を駆動軸に効率よく伝達できる。さらに、第1支持ユニットを弾性体の反発力(弾性力)によって位置決めしながら駆動軸の軸方向で振動可能に保持することができ、圧電素子の駆動によって発生する振動を駆動軸に効率よく伝達できる。
【0222】
(付記13)
前記駆動装置は、前記第1支持ユニットを前記駆動軸の軸方向に振動可能に保持しながら台材に連結する装置保持部を備えるとともに、
前記装置保持部は、前記第1支持ユニットに設けたユニット側凹部又は凸部と係合する保持部側凸部又は凹部を備えている、
付記10に記載のカメラ付き作業装置。
【0223】
付記13のカメラ付き作業装置によれば、第1支持ユニットの駆動軸をその軸方向に振動可能な状態で台材に連結でき、圧電素子の駆動によって発生する振動を駆動軸に効率よく伝達できる。さらに、保持部側凸部又は凹部とユニット側凹部又は凸部とを係合させることで、第1支持ユニットを簡素な構成で位置決めできる。
【0224】
(付記14)
前記駆動装置は、前記移動体ユニットと前記支持ユニットとの位置関係に応じて、前記一対の圧電素子を同時に又は選択的に駆動させる、
付記10~13のいずれか一項に記載のカメラ付き作業装置。
【0225】
付記14のカメラ付き作業装置によれば、第1支持ユニットの駆動軸に第1移動体ユニットが摩擦係合している上記実施態様において、駆動軸上で第1移動体ユニットが往復動可能な範囲内での第1移動体ユニットの位置に応じて、移動速度や駆動力を異ならせたり、制御性や正確性を向上させたりすることができる。また、第2移動体ユニットの駆動軸と第2支持ユニットとが摩擦係合している上記実施態様においても、第2支持ユニットに対する第2移動体ユニットの位置に応じて、移動速度や駆動力を異ならせたり、制御性や正確性を向上させたりすることができる。
【0226】
(付記15)
前記駆動軸の軸方向に沿って所定のストロークの範囲内で移動する前記移動体ユニットが、前記ストロークの中央領域に位置するときには前記一対の圧電素子の両方が駆動され、一方の圧電素子寄りの前記ストロークの一端領域に位置するときには前記一方の圧電素子のみが駆動され、他方の圧電素子寄りの前記ストロークの他端領域に位置するときには前記他方の圧電素子のみが駆動される、
付記14に記載のカメラ付き作業装置。
【0227】
付記15のカメラ付き作業装置によれば、移動体ユニットがストローク中央領域に位置するときに、圧電素子の両方を同時に駆動させることで、移動体ユニットの移動速度や駆動力を向上できる。さらに、移動体ユニットが一方又は他方の圧電素子寄りのストローク端領域に位置するときには、移動体ユニットに近い方の圧電素子のみが駆動されることで、移動体ユニットから遠い方の圧電素子の駆動(振動)が移動体ユニットの移動を阻害するのを防止できる。そして、移動体ユニットに近い方の圧電素子の駆動のみによって移動体ユニットの移動が制御されることで、圧電素子に駆動波形を供給する駆動部の回路設計及び駆動波形の設計が容易になるとともに、ストローク端領域における移動体ユニットの移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0228】
(付記16)
前記一対の圧電素子のうち一方の圧電素子を駆動用圧電素子とするとともに、他方の圧電素子の2つの端子が短絡している、
付記10~13のいずれか一項に記載のカメラ付き作業装置。
【0229】
付記16のカメラ付き作業装置によれば、上記一方の圧電素子は吸振器として作用するので、駆動する他方の圧電素子が連結する駆動軸の端部とは反対側の端部からの反射波の影響を低減でき、ひいては移動体ユニットの移動の制御性及び正確性を向上できる。
【0230】
(付記17)
前記一対の圧電素子のうち一方の圧電素子を駆動用圧電素子とするとともに、
前記第1移動体ユニット又は前記第2支持体ユニットが他方の圧電素子に近づいたときに前記他方の圧電素子の2つの端子を短絡させるスイッチを備えている、
付記10~13のいずれか一項に記載のカメラ付き作業装置。
【0231】
付記17のカメラ付き作業装置によれば、第1移動体ユニット又は第2支持ユニットが駆動用圧電素子から離れたストローク領域に位置するときに、スイッチによって他方の圧電素子の2つの端子間を短絡させることで、駆動用圧電素子が駆動(振動)したときに駆動軸の他方の圧電素子側の端部からの反射波の影響を低減させる。これにより、駆動用圧電素子から離れたストローク領域において、第1移動体ユニット又は第2支持ユニットの移動の制御性及び正確性を向上できる。例えば、駆動軸の軸方向長さを長くして第1移動体ユニット又は第2支持ユニットのストロークを大きくしたロングストローク化が実現可能になる。
【0232】
(付記18)
前記移動機構は、駆動軸の少なくとも一端に圧電素子を固定した支持ユニットと、前記支持ユニットの前記駆動軸に摩擦係合する移動体ユニットと、を有する駆動装置を備え、
前記駆動装置は、前記支持ユニットの前記圧電素子寄りの部位が台材に片持ち支持されるとともに、前記支持ユニットの他端側を覆う筒状の出力部材が前記移動体ユニットに連結されており、
前記移動体ユニットに前記出力部材を介して前記カメラ付き作業モジュールの前記台座部材が連結され、
前記圧電素子の駆動によって前記移動体ユニット及び前記出力部材が前記駆動軸の軸方向に移動される、
付記9に記載のカメラ付き作業装置。
【0233】
付記18のカメラ付き作業装置によれば、出力部材を筒状とすることで出力部材の剛性を高めることができる。例えば、出力部材が、支持ユニットの他端側の端面に対向して出力部材の先端側開口を塞ぐ端面部を備えているようにすれば、筒状の出力部材の剛性をより高めることができる。なお、支持ユニットは、駆動軸の他端側にも圧電素子を固定したものであっても構わない。この場合、出力部材は他端側の圧電素子を覆うように配設される。
【0234】
(付記19)
前記移動機構は、駆動軸の少なくとも一端に圧電素子を固定した支持ユニットと、前記支持ユニットの前記駆動軸に摩擦係合する移動体ユニットと、を有する駆動装置を備え、
前記駆動装置は、前記駆動軸の前記圧電素子寄りの部位が台材に片持ち支持されており、
前記移動体ユニットに前記カメラ付き作業モジュールの前記台座部材が連結され、
前記圧電素子の駆動によって前記移動体ユニットが前記駆動軸の軸方向に移動される、
付記9に記載のカメラ付き作業装置。
【0235】
付記19のカメラ付き作業装置によれば、支持ユニットにおいて駆動軸の圧電素子寄り部位が台材に片持ち支持されていることで、移動体ユニットに連結する移動対象を配置可能な空間を広げて設計の自由度および用途の汎用性を向上できる。さらに、外力によって駆動軸に加わるモーメントが圧電素子と駆動軸との接合部にはかからないので、圧電素子の振動を駆動軸に安定して伝達でき、駆動装置の駆動安定性を確保できる。
【0236】
(付記20)
前記駆動軸の圧電素子寄り部位を片持ち支持する装置保持部は、前記駆動軸を固定する固定部と、前記固定部から前記圧電素子とは反対向きに延びて前記駆動軸の側面に対向配置される規制部とを備えている、
付記19に記載のカメラ付き作業装置。
【0237】
付記20のカメラ付き作業装置によれば、装置保持部は、固定部にて駆動軸の圧電素子寄り部位を台材に確実に連結するとともに、外力のモーメントが駆動軸に加わったときに固定部及び規制部によって駆動軸の回転を抑制するので、固定部に力が集中することによる装置保持部及び駆動軸の破損を防止できる。
【符号の説明】
【0238】
100 グリッパーモジュール(カメラ付き作業モジュール)
200 グリッパー(作業ツール)
220 把持アーム
300,300A 撮像装置
301 レンズ(第1レンズ)
310 レンズ駆動装置
311 レンズ駆動用圧電素子
312 レンズ駆動軸
330 撮像素子(第1撮像素子)
331 フレキシブル基板
340 第2撮像素子
341 第2レンズ
450 台座部材
500 3軸操作用駆動装置
501 伸縮駆動装置
700 ツール回転装置
800 駆動装置
800a 出力部材
801 支持ユニット
802 移動体ユニット(移動体)
803 筐体
808 駆動コントローラ
808A 第1駆動コントローラ(第1制御部)
808B 第2駆動コントローラ(第2制御部)
811A 圧電素子(第1圧電素子)
811B 圧電素子(第2圧電素子)
812 駆動軸
812a 駆動軸端部
812b 駆動軸端部
814 伝達部材
814a 出力軸端収容凹部
814b 圧電素子端収容凹部
815 伝達部材
816 固定部材
817 接合部
818 固定部材
820 台材
900 駆動装置
901 支持ユニット
902 移動体ユニット
903 駆動用圧電素子
904 吸振用圧電素子
904a 端子
904b 端子
905 リード線
908 駆動コントローラ
909 スイッチ
912 駆動軸
920 台材
922 第2台材部(ユニット位置決め体)
923 第3台材部(ユニット位置決め体)
930,930A 装置保持部
937 固定部
938 規制部
940 弾性体
950 駆動装置
950a,950b 出力部材
951 移動体ユニット
952 支持ユニット(支持体)
953 圧電素子(第1圧電素子)
954 圧電素子(第2圧電素子)
954a 端子
954b 端子
955 出力軸
960 台材
970 筒状の出力部材
1000 グリッパー装置
L 光軸
LA 光軸
S ストローク
SA ストローク端領域
SB ストローク端領域
SC ストローク中央領域