(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102664
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】データ処理装置およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240724BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240724BHJP
【FI】
G01N35/00 A
C12Q1/686 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006709
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】原田 知幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 有真
【テーマコード(参考)】
2G058
4B063
【Fターム(参考)】
2G058GD05
2G058GD07
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ03
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4B063QR32
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4B063QS24
4B063QS25
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】ユーザビリティを向上させつつPCR装置を管理可能なデータ処理装置およびデータ処理方法を提供する。
【解決手段】データ処理装置100は、結果取得部11、管理画面生成部13、指定受付部15および確認画面生成部16を含む。結果取得部11は、PCR装置により検体について生成された評価値を含む検査結果と、検査結果が生成された日時とを取得する。管理画面生成部13は、評価値の時系列が一覧表示された管理画面を示す管理画面データを生成する。指定受付部15は、管理画面におけるいずれかの評価値の指定を受け付ける。確認画面生成部16は、指定を受け付けた評価値を含む検査結果が表示された確認画面を示す確認画面データを生成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCR装置により検体について生成された評価値を含む検査結果と、前記検査結果が生成された日時とを取得する結果取得部と、
前記評価値の時系列が一覧表示された管理画面を示す管理画面データを生成する管理画面生成部と、
前記管理画面におけるいずれかの前記評価値の指定を受け付ける指定受付部と、
指定を受け付けた前記評価値を含む前記検査結果が表示された確認画面を示す確認画面データを生成する確認画面生成部とを備える、データ処理装置。
【請求項2】
前記評価値は、前記検体における所定の成分の検出値が予め定められたしきい値を超えたときのサイクル回数である、請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記確認画面には、前記検出値の時間変化を示す波形が前記検査結果として表示される、請求項2記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記評価値の許容範囲を設定する範囲設定部をさらに備え、
前記管理画面生成部は、前記許容範囲に含まれる前記評価値と、前記許容範囲に含まれない前記評価値とを識別可能に前記管理画面に表示する、請求項1~3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記検査結果についての詳細情報を取得する情報取得部と、
前記確認画面の前記検査結果についての前記詳細情報が表示された詳細画面を示す詳細画面データを生成する詳細画面生成部とをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記詳細画面の表示指令を受け付ける表示指令受付部をさらに備え、
前記詳細画面は、前記表示指令受付部が前記表示指令を受け付けることに応答して表示される、請求項5記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記確認画面には、詳細情報ボタンがさらに表示され、
前記表示指令受付部は、前記詳細情報ボタンが操作されることにより前記表示指令を受け付ける、請求項6記載のデータ処理装置。
【請求項8】
前記詳細画面には、前記検体の検査条件または解析条件が前記詳細情報として表示される、請求項5記載のデータ処理装置。
【請求項9】
PCR装置により検体について生成された評価値を含む検査結果と、前記検査結果が生成された日時とを取得することと、
前記評価値の時系列が一覧表示された管理画面を示す管理画面データを生成することと、
前記管理画面におけるいずれかの前記評価値の指定を受け付けることと、
指定を受け付けた前記評価値を含む前記検査結果が表示された確認画面を示す確認画面データを生成することとを含む、
コンピュータにより実行されるデータ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置およびデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)検査は、検体に含まれるウイルス等の遺伝子を増幅して検出する技術である。PCR装置においては、横軸をサイクル回数とし、縦軸を検出値とするグラフが生成される(例えば特許文献1)。生成されたグラフにおいて、検出値が所定のしきい値を超えると、検体は陽性であると判定される。
【0003】
生成されたグラフにおいて、検出値がしきい値を超えたときのサイクル回数はCq値と呼ばれる。Cq値のばらつきが小さいことはPCR装置の性能が高いことを意味する。そのため、PCR検査の際には、検出値がしきい値を超えるように成分が調整された疑似的な検体が同時に検査され、同検体のCq値がテーブルに表示される(例えば特許文献2)。PCR装置の使用者は、Cq値の時系列の変化を認識することにより、PCR装置の異常を識別することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-122481号公報
【特許文献2】特開2021-40499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PCR装置が正常である場合でも、PCR検査の実施者の不適切な操作により、Cq値が異常値を示すことがあることが判明した。したがって、Cq値が異常値を示す場合でも、PCR装置が正常であるか否かを確認するために、PCR検査の詳細を検証する必要が生じる。しかしながら、このような検証作業を行うことは面倒であり、使用者の負担が増加する。
【0006】
本発明の目的は、ユーザビリティを向上させつつPCR装置を管理可能なデータ処理装置およびデータ処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、PCR装置により検体について生成された評価値を含む検査結果と、前記検査結果が生成された日時とを取得する結果取得部と、前記評価値の時系列が一覧表示された管理画面を示す管理画面データを生成する管理画面生成部と、前記管理画面におけるいずれかの前記評価値の指定を受け付ける指定受付部と、指定を受け付けた前記評価値を含む前記検査結果が表示された確認画面を示す確認画面データを生成する確認画面生成部とを備える、データ処理装置に関する。
【0008】
本発明の他の態様は、PCR装置により検体について生成された評価値を含む検査結果と、前記検査結果が生成された日時とを取得することと、前記評価値の時系列が一覧表示された管理画面を示す管理画面データを生成することと、前記管理画面におけるいずれかの前記評価値の指定を受け付けることと、指定を受け付けた前記評価値を含む前記検査結果が表示された確認画面を示す確認画面データを生成することとを含む、コンピュータにより実行されるデータ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザビリティを向上させつつPCR装置を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るデータ処理装置を含む検査システムの構成を示す図である。
【
図3】
図1のデータ処理装置の機能部の構成を示す図である。
【
図7】データ処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)検査システムの構成
以下、本発明の実施の形態に係るデータ処理装置およびデータ処理方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るデータ処理装置を含む検査システムの構成を示す図である。
図1に示すように、検査システム300は、データ処理装置100およびPCR(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)装置200を備える。検査システム300は、複数のPCR装置200を備えてもよい。
【0012】
データ処理装置100は、CPU(中央演算処理装置)110、RAM(ランダムアクセスメモリ)120、ROM(リードオンリメモリ)130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F(インターフェイス)170およびバス180を含む。CPU110、RAM120、ROM130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F170はバス180に接続される。データ処理装置100は、例えばパーソナルコンピュータにより実現されてもよい。
【0013】
RAM120は、CPU110の作業領域として用いられる。ROM130にはシステムプログラムが記憶される。記憶部140は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、PCR装置200により生成された種々の情報を記憶する。また、記憶部140は、データ処理プログラムを記憶する。CPU110が記憶部140に記憶されたデータ処理プログラムをRAM120上で実行することにより、データ処理が行われる。
【0014】
データ処理プログラムは、記憶部140に代えて、コンピュータが読み取り可能なCD(Compact Disc)-ROMまたはUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記憶媒体141に記憶されていてもよい。あるいは、データ処理プログラムは、外部記憶媒体141に格納された形態で提供され、記憶部140にインストールされてもよい。
【0015】
操作部150は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部160は、液晶表示装置等の表示デバイスである。使用者は、操作部150を用いてCPU110に各種指定を行うことができる。表示部160は、CPU110による処理結果を表示可能である。入出力I/F170は、PCR装置200に接続される。
【0016】
PCR装置200は、検体にPCR検査を行うことにより検査結果を生成する。PCR検査においては、事前に前処理が行われた検体が昇温された後、降温されることにより、検体に含まれるウイルス等の遺伝子が増幅される。本例では、検体が昇温されてから降温されるまでの工程を1サイクルとして、45サイクルの工程が繰り返される。また、検体に含まれる遺伝子を示す成分が定期的に検出される。検出値は、例えばRFU(相対蛍光単位)により定量化される。
【0017】
図2は、検査結果の一例を示す図である。
図2の横軸はサイクル回数を示し、縦軸は検出値を示す。
図2に示すように、検査結果は、検出値の時間変化を示す波形として生成される。
図2の例では、「N1」、「N2」および「IC」の符号が付された3つの検体についての波形が生成される。各波形において、検出値が所定のしきい値を超えると、当該検体は陽性であると判定される。各波形において、検出値が所定のしきい値を超えたときのサイクル回数は、Cq値と呼ばれる。
【0018】
本例では、符号「N1」および「N2」が付された検体を検査用検体と呼び、符号「IC」が付された検体を評価用検体と呼ぶ。検査用検体は、患者から採取された検体である。なお、符号「N1」および「N2」は、検査対象が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)であることを示すための遺伝子の型の名称に由来する。
【0019】
評価用検体は、陽性を示すように成分が調整された疑似的な検体(いわゆる陽性コントロール)である。したがって、PCR装置200が正常である場合には、評価用検体の検出値は所定のサイクル回数の範囲においてしきい値を超える。一方、PCR装置200が異常である場合には、評価用検体の検出値は、サイクル回数が上記の範囲においてしきい値を超えないことがある。
【0020】
上記の3つの検体は、1つのセットとして扱われる。そのため、3つの検体には共通の登録番号が付与され、同時に検査が行われる。検査用検体についての検査結果が正常であることを保証するためには、評価用検体の検出値が所定のサイクル回数の範囲においてしきい値を超えることが前提となる。
【0021】
PCR装置200における検体の登録番号、検査条件、解析条件検査結果および検査日時等の種々の情報は、データ処理装置100の記憶部140に記憶される。検査結果は、各波形についてのCq値を含む。評価用検体についてのCq値は、PCR装置200の性能を評価するための評価値として用いられる。上記の情報の一部または全部は、記憶部140とは異なる記憶媒体に記憶されてもよい。
【0022】
(2)データ処理装置
図3は、
図1のデータ処理装置100の機能部の構成を示す図である。
図3に示すように、データ処理装置100は、機能部10として、結果取得部11、情報取得部12、管理画面生成部13、範囲設定部14、指定受付部15、確認画面生成部16、表示指令受付部17および詳細画面生成部18を含む。
図1のCPU110が記憶部140等に記憶されたデータ処理プログラムを実行することにより、機能部10が実現される。機能部10の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0023】
結果取得部11は、検体についての検査結果、検査日時および登録番号を記憶部140等から取得する。情報取得部12は、検査結果についての詳細情報として、検体の検査条件および解析条件を記憶部140等から取得する。管理画面生成部13は、結果取得部11により取得された検査結果、検査日時および登録番号に基づいて、管理画面を示す管理画面データを生成する。管理画面は、検体のCq値の時系列を一覧表示する画面である。管理画面生成部13は、管理画面データに基づいて表示部160に管理画面を表示することが可能である。
【0024】
範囲設定部14は、検体のCq値の許容範囲を設定する。使用者は、操作部150を操作することにより、Cq値について設定すべき許容範囲を範囲設定部14に指定することができる。許容範囲として、許容値の上限および下限の少なくとも一方が指定されてもよい。範囲設定部14によりCq値の許容範囲が設定された場合、管理画面生成部13は、許容範囲に含まれるCq値と、許容範囲に含まれないCq値とを識別可能に管理画面に表示する。
【0025】
指定受付部15は、管理画面におけるいずれかのCq値の指定を受け付ける。使用者は、操作部150を操作することにより、管理画面における任意のCq値を指定受付部15に指定することができる。指定受付部15によりCq値の指定が受け付けられた場合、確認画面生成部16は、確認画面を示す確認画面データを生成する。確認画面は、指定されたCq値を含む検査結果を表示する画面である。確認画面生成部16は、確認画面データに基づいて、表示部160に確認画面を表示することが可能である。
【0026】
表示指令受付部17は、詳細画面の表示指令を受け付ける。詳細画面は、確認画面の検査結果についての詳細情報が表示された画面である。使用者は、操作部150を操作することにより、表示指令受付部17に詳細画面の表示指令を行うことができる。詳細画面の表示指令が表示指令受付部17により受け付けられた場合、詳細画面生成部18は、詳細画面を示す詳細画面データを生成する。詳細画面生成部18は、詳細画面データに基づいて、表示部160に詳細画面を表示することが可能である。
【0027】
(3)画面表示
図4は、管理画面の一例を示す図である。
図4に示すように、管理画面20は、時系列表示領域21、期間選択領域22、対象選択領域23および範囲指定領域24を含む。時系列表示領域21は、管理画面20の中央部に配置される。時系列表示領域21には、Cq値の時系列が一覧表示される。Cq値の時系列は、テーブル形式と、グラフ形式とで選択的に表示可能である。使用者は、時系列表示領域21のタブを操作することにより、Cq値の時系列の表示形式を選択することができる。
【0028】
図4の例では、Cq値の時系列がテーブル形式で表示されている。テーブルは、検体の登録番号に対応する縦方向および検査日時に対応する横方向に配列された複数のマス目を含む。各マス目には、当該マス目に対応する登録番号を有する検体について、当該マス目に対応する検査日時に生成された検査結果のCq値が表示される。本例では、時系列表示領域21には、検査日時ごとのCq値の最大値、平均値および最小値がさらに表示される。
【0029】
グラフ形式においては、Cq値を縦軸とし、検査日時を横軸として、検体の複数の登録番号にそれぞれ対応するように、Cq値の時系列を示す複数のグラフが表示される。グラフには、検体の登録番号ごとに異なる色またはシンボルが付されてもよい。
【0030】
期間選択領域22、対象選択領域23および範囲指定領域24は、時系列表示領域21の上方において、左右方向に並ぶように配置される。期間選択領域22には、複数のチェックボックスまたはプルダウンメニューが表示される。使用者は、期間選択領域22のチェックボックスまたはプルダウンメニューを操作することにより、時系列表示領域21に表示されるCq値の時系列の時期を選択することができる。
【0031】
対象選択領域23には、複数のプルダウンメニューが表示される。使用者は、対象選択領域23のいずれかのプルダウンメニューを操作することにより、PCR装置200の装置名、検査対象、試薬または検体の種別を選択することができる。対象選択領域23において選択された対象に関連する検体のCq値の時系列が時系列表示領域21に表示される。
【0032】
範囲指定領域24には、複数の入力欄が表示される。使用者は、範囲指定領域24の複数の入力欄に数値をそれぞれ入力することにより、Cq値の許容範囲の上限および下限を指定することができる。範囲指定領域24の入力欄に入力された数値に基づいて、Cq値の許容範囲が範囲設定部14により設定される。Cq値の許容範囲が設定された場合、時系列表示領域21において、許容範囲に含まれるCq値と、許容範囲に含まれないCq値とが識別可能に表示される。
【0033】
例えば、Cq値の時系列がテーブル形式で表示される場合には、許容範囲に含まれるCq値は黒色で表示され、当該Cq値に対応するマス目は白色で表示される。一方、許容範囲に含まれないCq値は赤色で表示され、当該Cq値に対応するマス目は桃色で表示される。
図4の例では、許容範囲に含まれないCq値に対応するマス目がハッチングパターンにより示されている。
【0034】
使用者は、時系列表示領域21に表示されたCq値の時系列のうち、任意のCq値を指定受付部15に指定することができる。具体的には、Cq値の時系列がテーブル形式で表示されている場合には、任意のCq値が表示されたマス目を選択することにより、当該Cq値を指定することができる。Cq値の時系列がグラフ形式で表示されている場合には、任意のCq値に対応するシンボルを選択することにより、当該Cq値を指定することができる。Cq値が指定されることにより、確認画面が表示される。
【0035】
図5は、確認画面の一例を示す図である。
図5に示すように、確認画面30は、結果表示領域31、判定表示領域32および詳細情報ボタン33を含む。結果表示領域31は、確認画面30の上部に配置される。結果表示領域31には、使用者により指定されたCq値に対応する検体を含む、1セットの検体についての波形が検査結果として表示される。したがって、本例では、
図2と同様に、2つの検査用検体および1つの評価用検体にそれぞれ対応する3つの波形が検査結果として表示される。また、本例では、検体の登録番号、検査対象および試薬等がさらに表示される。
【0036】
判定表示領域32および詳細情報ボタン33は、結果表示領域31の下方において、左右方向に並ぶように配置される。判定表示領域32には、上記の1セットの検体の各々についての陽性(+)または陰性(-)の判定結果が表示される。また、陽性と判定された検体については、Cq値がさらに表示される。本例では、使用者は、確認画面30に表示された詳細情報ボタン33を操作することにより、詳細画面の表示指令を表示指令受付部17に与えることができる。
【0037】
図6は、詳細画面の一例を示す図である。
図6の例では、スクロール表示される詳細画面40のうち、一部のみが図示されている。
図6に示すように、詳細画面40には、上記の1セットの検体についての検査条件または解析条件を含む詳細情報が表示される。なお、検査条件は、検体の前処理に用いる試薬または前処理手順等の前処理についての情報を含む。
【0038】
(4)データ処理
図1のCPU110がデータ処理プログラムを実行することにより、データ処理が行われる。
図7は、データ処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。以下、
図3のデータ処理装置100、
図4~
図6の画面表示および
図7のフローチャートを用いてデータ処理を説明する。
【0039】
まず、結果取得部11は、検体についての検査結果、検査日時および登録番号を取得する(ステップS1)。情報取得部12は、検体の検査条件および解析条件を詳細情報として取得する(ステップS2)。ステップS1とステップS2とは、いずれが先に実行されてもよいし、同時に実行されてもよい。あるいは、ステップS2は、後述するステップS11より前におけるいずれの時点で実行されてもよい。
【0040】
次に、管理画面生成部13は、ステップS1で取得された検査結果、検査日時および登録番号に基づいて管理画面データを生成する(ステップS3)。初期状態では、予め定められた期間における、予め定められた検体についてのCq値の時系列を示す管理画面データが生成される。また、管理画面生成部13は、ステップS3で生成された管理画面データに基づいて、表示部160に管理画面20を表示させる(ステップS4)。
【0041】
続いて、範囲設定部14は、管理画面20の更新が指示されたか否かを判定する(ステップS5)。使用者は、管理画面20の期間選択領域22または対象選択領域23のいずれかのチェックボックスまたはプルダウンメニューを操作することにより、Cq値の時系列の時期、PCR装置200の装置名、検査対象、試薬または検体の種別を選択することができる。また、使用者は、管理画面20の範囲指定領域24を操作することにより、Cq値の許容範囲を指定することができる。これらの操作が行われた場合、範囲設定部14は、管理画面20の更新が指示されたと判定する。
【0042】
管理画面20の更新が指示された場合、管理画面生成部13は、使用者による選択または指示に従って、管理画面データを更新し(ステップS6)、処理をステップS4に戻す。これにより、ステップS4において、更新後の管理画面データに基づく管理画面20が表示部160に表示される。ステップS5でCq値の許容範囲が指定された場合には、許容範囲に含まれるCq値と、許容範囲に含まれないCq値とが識別可能に管理画面20に表示される。
【0043】
管理画面20の更新が指示されない場合、指定受付部15は、ステップS4で表示された管理画面20において、いずれかのCq値の指定が受け付けられたか否かを判定する(ステップS7)。Cq値の指定が受け付けられない場合、指定受付部15は、処理をステップS5に戻す。
【0044】
Cq値の指定が受け付けられた場合、確認画面生成部16は、ステップS7で指定が受け付けられたCq値と、ステップS1で取得された検査結果等とに基づいて、確認画面データを生成する(ステップS8)。また、確認画面生成部16は、ステップS8で生成された確認画面データに基づいて、表示部160に確認画面30を表示させる(ステップS9)。
【0045】
その後、表示指令受付部17は、詳細画面40の表示指令が受け付けられたか否かを判定する(ステップS10)。使用者は、ステップS9で表示された確認画面30において、詳細情報ボタン33を操作することにより、表示指令受付部17に詳細画面40の表示指令を行うことができる。詳細画面40の表示指令が受け付けられない場合、表示指令受付部17は、処理をステップS5に戻す。
【0046】
詳細画面40の表示指令が受け付けられた場合、詳細画面生成部18は、ステップS7で指定が受け付けられたCq値と、ステップS2で取得された詳細情報とに基づいて、詳細画面データを生成する(ステップS11)。また、詳細画面生成部18は、ステップS11で生成された詳細画面データに基づいて、表示部160に詳細画面40を表示させ(ステップS12)、処理をステップS5に戻す。
【0047】
上記のデータ処理において、ステップS8で確認画面データが生成されるが、実施の形態はこれに限定されない。確認画面データは、ステップS1で取得された検査結果等に基づいて、ステップS7よりも前の時点で生成されてもよい。この場合、ステップS7でいずれかのCq値の指定が受け付けられることにより、当該Cq値に対応する確認画面データに基づいて、確認画面30がステップS9で表示部160に表示される。
【0048】
同様に、ステップS11で詳細画面データが生成されるが、実施の形態はこれに限定されない。詳細画面データは、ステップS2で取得された詳細情報に基づいて、ステップS10よりも前の時点で生成されてもよい。この場合、ステップS10で表示指令が受け付けられることにより、ステップS7で指定が受け付けられたCq値に対応する詳細画面データに基づいて、詳細画面40がステップS12で表示部160に表示される。
【0049】
(5)効果
本実施の形態に係るデータ処理装置100においては、PCR装置200により検体について生成された検査結果におけるCq値の時系列が、管理画面20において一覧表示される。したがって、使用者は、評価用検体についてのCq値の時系列を管理画面20に表示させ、表示されたCq値の時系列を確認することにより、PCR装置200が正常であるか否かを判断することができる。
【0050】
ここで、PCR装置200が正常である場合でも、PCR検査の実施者の不適切な操作により、Cq値が異常を示すことがあることが判明した。そのため、Cq値が異常を示す場合でも、PCR装置200が異常であると判断する前に、PCR検査の詳細を検証する必要が生じる。
【0051】
上記の構成においては、使用者は、管理画面20において異常を示すCq値を指定することにより、確認画面30を表示させることができる。管理画面20においては、範囲設定部14により設定された許容範囲に含まれるCq値と、許容範囲に含まれないCq値とが識別可能に表示される。この場合、使用者は、異常を示すCq値を容易に認識することができる。
【0052】
確認画面30においては、使用者により指定されたCq値を含む検査結果として、検出値の時間変化を示す波形が表示される。使用者は、表示された検査結果を確認することにより、PCR検査の詳細を容易に検証することができる。また、使用者は、PCR検査の詳細を検証することにより、PCR装置200が正常であるか否かを正確に判断することができる。
【0053】
PCR検査の検証の工程において、使用者は、膨大な量の検査結果の中から、異常を示すCq値を含む検査結果の保存先を探索する必要がなく、当該保存先にアクセスする作業を行う必要もない。その結果、ユーザビリティを向上させつつPCR装置200を管理することが可能になる。
【0054】
使用者により表示指令受付部17に表示指令が行われた場合には、詳細画面40がさらに表示される。使用者は、確認画面30の詳細情報ボタン33を操作することにより、表示指令を容易に行うことができる。詳細画面40には、検体の検査条件または解析条件が詳細情報として表示される。そのため、使用者は、表示された詳細画面40を視認することにより、PCR検査における検体の検査条件または解析条件を容易に確認することができる。これにより、使用者は、PCR検査が適切に実施されたか否かを詳細に検証することができる。
【0055】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、評価用検体についてのCq値が評価値として用いられるが、実施の形態はこれに限定されない。検体についての他の特徴値が評価値として用いられてもよい。
【0056】
(b)上記実施の形態において、検出値の時間変化を示す波形が検査結果として確認画面30に表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。検出値の時間変化がテーブル等の他の形式により検査結果として確認画面30に表示されてもよい。
【0057】
(c)上記実施の形態において、確認画面30に詳細情報ボタン33が表示されるが、実施の形態はこれに限定されない。使用者が、例えば操作部150を用いて特定の操作を行うことにより詳細画面40の表示指令を行うことができる場合には、確認画面30に詳細情報ボタン33が表示されなくてもよい。
【0058】
(d)上記実施の形態において、機能部10は情報取得部12、範囲設定部14、表示指令受付部17および詳細画面生成部18を含むが、実施の形態はこれに限定されない。機能部10は、情報取得部12、範囲設定部14、表示指令受付部17および詳細画面生成部18の一部または全部を含まなくてもよい。
【0059】
例えば、Cq値の許容範囲を設定する必要がない場合には、機能部10は、範囲設定部14を含まなくてもよい。詳細画面40が使用者の表示指令によらずに表示される場合には、機能部10は、表示指令受付部17を含まなくてもよい。詳細画面40を表示する必要がない場合には、機能部10は、情報取得部12および詳細画面生成部18を含まなくてもよい。
【0060】
(7)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0061】
(第1項)一態様に係るデータ処理装置は、
PCR装置により検体について生成された評価値を含む検査結果と、前記検査結果が生成された日時とを取得する結果取得部と、
前記評価値の時系列が一覧表示された管理画面を示す管理画面データを生成する管理画面生成部と、
前記管理画面におけるいずれかの前記評価値の指定を受け付ける指定受付部と、
指定を受け付けた前記評価値を含む前記検査結果が表示された確認画面を示す確認画面データを生成する確認画面生成部とを備えてもよい。
【0062】
このデータ処理装置においては、PCR装置により検体について生成された検査結果における評価値の時系列が、管理画面において一覧表示される。したがって、使用者は、管理画面に表示された評価値の時系列を確認することにより、PCR装置が正常であるか否かを判断することができる。
【0063】
ここで、PCR装置が正常である場合でも、PCR検査の実施者の不適切な操作により、評価値が異常を示すことがあることが判明した。そのため、評価値が異常を示す場合でも、PCR装置が異常であると判断する前に、PCR検査の詳細を検証する必要が生じる。
【0064】
上記の構成においては、使用者は、管理画面において異常を示す評価値を指定することにより、確認画面を表示させることができる。確認画面においては、使用者により指定された評価値を含む検査結果が表示される。使用者は、表示された検査結果を確認することにより、PCR検査の詳細を検証することができる。また、使用者は、PCR検査の詳細を検証することにより、PCR装置が正常であるか否かを正確に判断することができる。
【0065】
PCR検査の検証の工程において、使用者は、膨大な量の検査結果の中から、異常を示す評価値を含む検査結果の保存先を探索する必要がなく、当該保存先にアクセスする作業を行う必要もない。その結果、ユーザビリティを向上させつつPCR装置を管理することが可能になる。
【0066】
(第2項)第1項に記載のデータ処理装置において、
前記評価値は、前記検体における所定の成分の検出値が予め定められたしきい値を超えたときのサイクル回数であってもよい。
【0067】
この場合、評価値によりPCR装置の性能を容易に評価することができる。
【0068】
(第3項)第2項に記載のデータ処理装置において、
前記確認画面には、前記検出値の時間変化を示す波形が前記検査結果として表示されてもよい。
【0069】
この場合、使用者は、検査結果を視認することにより、PCR検査が適切に実施されたか否かを容易に検証することができる。
【0070】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載のデータ処理装置は、
前記評価値の許容範囲を設定する範囲設定部をさらに備え、
前記管理画面生成部は、前記許容範囲に含まれる前記評価値と、前記許容範囲に含まれない前記評価値とを識別可能に前記管理画面に表示してもよい。
【0071】
この場合、使用者は、異常を示す評価値を容易に認識することができる。
【0072】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に記載のデータ処理装置は、
前記検査結果についての詳細情報を取得する情報取得部と、
前記確認画面の前記検査結果についての前記詳細情報が表示された詳細画面を示す詳細画面データを生成する詳細画面生成部とをさらに備えてもよい。
【0073】
この場合、使用者は、詳細画面を視認することにより、PCR検査が適切に実施されたか否かを詳細に検証することができる。
【0074】
(第6項)第5項に記載のデータ処理装置は、
前記詳細画面の表示指令を受け付ける表示指令受付部をさらに備え、
前記詳細画面は、前記表示指令受付部が前記表示指令を受け付けることに応答して表示されてもよい。
【0075】
この場合、使用者は、必要に応じて詳細画面を表示させることができる。
【0076】
(第7項)第6項に記載のデータ処理装置において、
前記確認画面には、詳細情報ボタンがさらに表示され、
前記表示指令受付部は、前記詳細情報ボタンが操作されることにより前記表示指令を受け付けてもよい。
【0077】
この場合、使用者は、詳細画面の表示指令を容易に行うことができる。
【0078】
(第8項)第5項または第6項に記載のデータ処理装置において、
前記詳細画面には、前記検体の検査条件または解析条件が前記詳細情報として表示されてもよい。
【0079】
この場合、使用者は、PCR検査における検体の検査条件または解析条件を容易に確認することができる。
【0080】
(第9項)他の態様に係るデータ処理装置は、
PCR装置により検体について生成された評価値を含む検査結果と、前記検査結果が生成された日時とを取得することと、
前記評価値の時系列が一覧表示された管理画面を示す管理画面データを生成することと、
前記管理画面におけるいずれかの前記評価値の指定を受け付けることと、
指定を受け付けた前記評価値を含む前記検査結果が表示された確認画面を示す確認画面データを生成することとを含み、
コンピュータにより実行されてもよい。
【0081】
このデータ処理方法によれば、評価値が異常を示す場合のPCR検査の検証の工程において、使用者は、膨大な量の検査結果の中から、異常を示す評価値を含む検査結果の保存先を探索する必要がなく、当該保存先にアクセスする作業を行う必要もない。これにより、ユーザビリティを向上させつつPCR装置を管理することが可能になる。
【符号の説明】
【0082】
10…機能部,11…結果取得部,12…情報取得部,13…管理画面生成部,14…範囲設定部,15…指定受付部,16…確認画面生成部,17…表示指令受付部,18…詳細画面生成部,20…管理画面,21…時系列表示領域,22…期間選択領域,23…対象選択領域,24…範囲指定領域,30…確認画面,31…結果表示領域,32…判定表示領域,33…詳細情報ボタン,40…詳細画面,100…データ処理装置,110…CPU,120…RAM,130…ROM,140…記憶部,141…外部記憶媒体,150…操作部,160…表示部,170…入出力I/F,180…バス,200…PCR装置,300…検査システム