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特開2024-102670印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102670
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/18 20060101AFI20240724BHJP
   A45D 31/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A45D29/18
A45D31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006715
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 保
(57)【要約】
【課題】爪の被印刷領域を適切に検出する。
【解決手段】印刷装置1が、撮影条件を設定する設定部313と、爪画像を取得する撮像部50と、撮像部50により取得された画像から、爪Tの被印刷領域を検出する爪情報検出部315と、設定部313により設定された第1の撮影条件で撮像部50により取得された第1の画像に基づいて、被印刷領域における所定の領域の白色度を判定する判定部314とを備え、設定部313は、判定部314により判定された爪Tの白色度が第1の所定の条件を満たさない場合に、第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件を設定し、撮像部50は、第2の撮影条件が設定された場合には第2の撮影条件で爪Tの第2の画像を取得し、第2の撮影条件が設定されなかった場合には第1の撮影条件のもとで爪Tの第2の画像を取得し、爪情報検出部315は、爪Tの第2の画像から爪Tの被印刷領域を検出する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影条件を設定する設定部と、
印刷対象の画像を取得する撮像部と、
前記撮像部により取得された画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出する検出部と、
前記設定部により設定された第1の撮影条件のもとにおいて前記撮像部により取得された前記印刷対象の第1の画像に基づいて、前記被印刷領域における所定の領域の白色度を判定する判定部と、
を備え、
前記設定部は、前記判定部により判定された前記印刷対象の白色度が第1の所定の条件を満たさない場合に、前記第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件を設定し、
前記撮像部は、前記設定部により前記第2の撮影条件が設定された場合には前記第2の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、前記第2の撮影条件が設定されなかった場合には前記第1の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、
前記検出部は、前記印刷対象の前記第2の画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出する、
こと特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第1の画像における前記印刷対象の前記所定の領域の白色度と、基準白色度と、の比の値が第1の基準値よりも小さい場合に、前記第1の所定の条件を満たさないと判定する、
こと特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記判定部により前記第1の所定の条件を満たさないと判定された場合、
前記設定部は、少なくとも、撮影時の光量が前記第1の撮影条件よりも第1の倍率だけ大きい前記第2の撮影条件を設定する、
こと特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記判定部により、前記比の値が前記第1の基準値よりも小さい第2の基準値よりも小さく、第2の所定の条件を満たさないと判定された場合、
前記設定部は、少なくとも、撮影時の光量が前記第1の撮影条件よりも第2の倍率だけ大きい前記第2の撮影条件を設定し、
前記第2の倍率は、前記第1の倍率よりも大きい、
こと特徴とする請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記撮影条件は、撮影時の光量、前記撮像部における露出時間を含む、
こと特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1の画像は位置合わせ用の画像であり、前記第1の画像の解像度は、前記第2の画像の解像度よりも低い、
こと特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷対象に印刷を行う印刷ヘッドを備えている、
こと特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷ヘッドは、下地用のインクである第1の液剤とは異なる、デザイン用のインクである第2の液剤を塗布する印刷ヘッドである、
こと特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記印刷ヘッドは、下地用のインクである第1の液剤を塗布する印刷ヘッド、前記第1の液剤とは異なる、デザイン用のインクである第2の液剤を塗布する印刷ヘッドを含んでいる、
こと特徴とする請求項7に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記第2の画像に基づいて検出された前記被印刷領域に印刷を行うよう前記第2の液剤を塗布する印刷ヘッドを制御する制御部を備えている、
こと特徴とする請求項8又は請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記印刷対象は、爪である、
こと特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記検出部は、前記印刷対象の第2の画像から、前記印刷対象の形状を認識することで被印刷領域を検出する、
を備えたこと特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項13】
撮影条件を設定する設定工程と、
印刷対象の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程において取得された画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出する検出工程と、
前記設定工程において設定された第1の撮影条件のもとにおいて前記画像取得工程において取得された前記印刷対象の第1の画像に基づいて、前記被印刷領域における所定の領域の白色度を判定する判定工程と、
を含み、
前記設定工程は、前記判定工程において判定された前記印刷対象の白色度が第1の所定の条件を満たさない場合に、前記第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件を設定し、
前記画像取得工程では、前記設定工程において前記第2の撮影条件が設定された場合には前記第2の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、前記第2の撮影条件が設定されなかった場合には前記第1の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、
前記検出工程では、前記印刷対象の前記第2の画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出する、
こと特徴とする印刷制御方法。
【請求項14】
コンピュータに、
撮影条件を設定する設定機能と、
印刷対象の画像を取得する画像取得機能と、
前記画像取得機能により取得された画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出する検出機能と、
前記設定機能により設定された第1の撮影条件のもとにおいて前記画像取得機能により取得された前記印刷対象の第1の画像に基づいて、前記被印刷領域における所定の領域の白色度を判定する判定機能と、
を実現させ、
前記設定機能は、前記判定機能により判定された前記印刷対象の白色度が第1の所定の条件を満たさない場合に、前記第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件を設定し、
前記画像取得機能は、前記設定機能により前記第2の撮影条件が設定された場合には前記第2の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、前記第2の撮影条件が設定されなかった場合には前記第1の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、
前記検出機能は、前記印刷対象の前記第2の画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出する、
こと特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、爪等にネイルデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。爪に印刷を行う場合、カラーでデザイン印刷を行う前に爪の上に白色等の下地層を形成することも行われている。
下地層を形成するとカラーインクの発色が良くなり、仕上がり品質を向上させることができる。
また、印刷範囲となる爪領域はカメラにより撮影した画像等に基づいて認識される(カメラを用いて爪、指及び手等の形状及び寸法を検出することについて、例えば特許文献1参照)。爪に白色等の下地層を形成すると、周りの皮膚と区別しやすくなり、カメラで爪及びその周辺を撮影した画像から爪領域を検出しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-301778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下地層の形成は、ユーザ自らが手動で液剤を塗布する場合と、印刷装置によって自動で塗布(印刷)する場合とがある。印刷装置によって下地用の液剤を塗布する場合にはユーザの手間を省くことができる。
【0005】
印刷装置により下地用の液剤を自動で塗布(印刷)する場合には薄く印刷されてしまうことが多く、十分な白色度を得ることが難しい。
下地用の液剤の膜厚が薄く白色度が低い場合、爪領域をカメラで正しく認識できずに、実際の爪領域よりも狭い範囲が爪として認識されてしまう等、実際とは異なる範囲を爪領域として検出してしまう場合があった。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、爪領域を適切に検出することのできる印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の印刷装置の一態様は、
撮影条件を設定する設定部と、
印刷対象の画像を取得する撮像部と、
前記撮像部により取得された画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出する検出部と、
前記設定部により設定された第1の撮影条件のもとにおいて前記撮像部により取得された前記印刷対象の第1の画像に基づいて、前記被印刷領域における所定の領域の白色度を判定する判定部と、
を備え、
前記設定部は、前記判定部により判定された前記印刷対象の白色度が第1の所定の条件を満たさない場合に、前記第1の撮影条件とは異なる第2の撮影条件を設定し、
前記撮像部は、前記設定部により前記第2の撮影条件が設定された場合には前記第2の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、前記第2の撮影条件が設定されなかった場合には前記第1の撮影条件のもとにおいて前記印刷対象の第2の画像を取得し、
前記検出部は、前記印刷対象の前記第2の画像から、前記印刷対象の被印刷領域を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、爪領域を適切に検出することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における印刷装置及びこれと連携する端末装置の要部構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る印刷装置の前後方向に垂直な面での要部断面図である。
図3】本実施形態における印刷装置及びこれと連携する端末装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
図4】本実施形態において爪にネイルプリントを施す場合の主要な手順を説明する説明図である。
図5図4における下地用インクを塗布する工程がユーザによる手塗りで行われる場合の処理を示すフローチャートである。
図6図4における下地用インクを塗布する工程が装置により自動で行われる場合の処理を示すフローチャートである。
図7図4におけるデザイン用インクを塗布して行われるデザイン印刷の処理を示すフローチャートである。
図8】爪の白色度を判定し、爪領域を検出するための撮影時の撮影条件を設定する処理を示すフローチャートである。
図9】爪に設定される白色度判定領域を示す説明図である。
図10】白色度の低い爪を、補正しない撮影条件の下で撮影した画像から爪領域を検出した場合の検出結果を示す説明図である。
図11】白色度の低い爪を、補正した撮影条件の下で撮影した画像から爪領域を検出した場合の検出結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図11を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷する印刷装置を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、人の爪以外の爪様のものを印刷対象としてもよい。
【0011】
図1は、本実施形態における印刷装置及びこれと連携する端末装置の要部外観構成を示す斜視図である。図2は、図1に示す印刷装置の前後方向に垂直な面での要部断面図である。また図3は、印刷装置及び端末装置の要部制御構成を示すブロック図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、各図に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、各図に示した方向をいうものとする。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2は、前面側(印刷装置1の正面側、図1において前側)の下側部分に、左右方向(印刷装置1の横方向、図1において左右方向、X方向)のほぼ全面に亘って形成された開口部21を有している。また、筐体2の左右方向のほぼ中央部には、開口部21の上側に連続して切り欠き部22が形成されている。切り欠き部22は、後述する印刷ヘッド41を装置に対して着脱する際の出入口として機能する。
【0013】
また、筐体2の上面(天板)には、印刷装置1の操作部14が設けられている。操作部14は、例えば印刷装置1の電源をON/OFFする操作ボタン(電源スイッチボタン)である。操作部14が操作されると、操作信号が制御装置30に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。
なお、操作部14に代えて、後述する端末装置7の操作部71から入力された操作信号に従って印刷装置1の各部が動作するようにしてもよい。
筐体2各部の形状や各部の配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。例えば、操作部14は、筐体2の上面ではなく側面や背面等に設けられていてもよい。また、筐体2にはその他各種の操作ボタンが操作部14として設けられていてもよいし、各種表示部やインジケータ等が設けられていてもよい。
【0014】
筐体2の内部には、装置本体10が収容されている。
装置本体10は、基台11と、これに取り付けられた指固定部6、印刷部40、撮像部50等を備えている。また図2に示すように、基台11上には支持部材12が立設されている。支持部材12は、天板121と、その左右両端の脚部122とを有し、脚部122が基台11の左右両端に立設されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、指固定部6は、基台11における装置前面側の左右方向(X方向)のほぼ中央部に配置されており、本実施形態における印刷対象である爪T(図9等参照)を有する指Uを印刷に適した領域内に保持する。
指固定部6は、装置前面側に開口部61を有している。また指固定部6の内部には、指固定部材62が設けられている。指固定部材62は、開口部61から挿入された指Uを下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。
指固定部6の上面には開口部61から挿入され指固定部材62により保持された指Uの爪T部分を露出させる窓部63が形成されている。
指固定部6内の後部(装置後方側、奥側)には、指Uの先端が突き当てられてその爪Tの先端中央が引っ掛けられる爪係止部65(図2参照)が設けられている。
【0016】
印刷部40は、後述する制御部31(図3参照)において生成される印刷用データにしたがって印刷対象である爪Tの表面に印刷を施す印刷手段である。
印刷部40は、印刷動作を行うヘッド(以下「印刷ヘッド41」とする。)、印刷ヘッド41が装着され保持されるキャリッジ42、印刷ヘッド41を搭載するキャリッジ42を移動させるためのヘッド移動機構49(図3参照)等を備えている。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のキャリッジ42には、印刷ヘッド41として下地用ヘッド41aとデザイン用ヘッド41bとが搭載されている。以下において、単に「印刷ヘッド41」としたときは、下地用ヘッド41a及びデザイン用ヘッド41bの両方を含むものとする。なお、下地用ヘッド41aとデザイン用ヘッド41bとの配置等は図示例に限定されない。例えばキャリッジが複数設けられ、各印刷ヘッド41がそれぞれ異なるキャリッジに搭載されてもよい。
【0018】
下地用ヘッド41aは、デザイン以外を印刷するヘッドであり、デザインを印刷する前に、デザインが印刷される領域に下地層を形成する液剤(「第1の液剤」、以下「下地用インク」ともいう。)を塗布(印刷)するものである。下地用ヘッド41aによって塗布(印刷)される下地用インクは、デザインの印刷を行ったときにインクの発色がよくなるように、白色若しくはこれに近い色の液剤であることが好ましい。下地用インクは、溶質として例えば酸化チタン等を含んでいる。白色等で下地層を形成することにより、爪Tと、その周辺の皮膚の色(肌色等)との区別もつきやすくなり、爪画像から爪Tの領域(以下「爪領域」とする)をより正確に認識しやすくなる。
【0019】
デザイン用ヘッド41bは、後述する爪画像(「第2の画像」)に基づいて爪領域と認識された領域にデザインを印刷するものである。デザイン用ヘッド41bは、例えばシアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等の各色のインク(「第2の液剤」、以下「色インク」ともいう。)を吐出可能となっている。なお、デザイン用ヘッド41bが吐出可能な色インクの種類はこれに限定されず、この他の色のインクを吐出可能となっていてもよい。
【0020】
本実施形態において、下地用ヘッド41a及びデザイン用ヘッド41bは、いずれも爪表面に対向する面がインクを吐出させる複数のノズル口を備えたインク吐出面(図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象(爪T)の被印刷面である爪表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部と内部にインクを貯留するインクカートリッジ(いずれも図示せず)とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
【0021】
なお本実施形態では、下地用の液剤(下地用インク等)により下地層が形成された領域を爪画像から検出してこれを被印刷領域としての「爪領域Art」(図10図11参照)とするようになっている。
下地用の液剤(下地用インク等)は、下地用ヘッド41aを用いて印刷装置1により自動で塗布(印刷)される場合と、ユーザが筆や刷毛等を用いて手動で塗布する場合(手塗り、手作業の場合)とがある。下地用ヘッド41aを用いて下地用の液剤(下地用インク等)を塗布(印刷)する場合には、膜厚を確保して白色度を上げるために複数回塗り重ねることが好ましい。
【0022】
ヘッド移動機構49は、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を搭載するキャリッジ42)を装置の左右方向(X方向)に移動させるためのX方向移動モータ46を備えるX方向の移動機構及び印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を搭載するキャリッジ42)を装置の前後方向(Y方向)に移動させるためのY方向移動モータ48を備えるY方向の移動機構を含んでいる。
【0023】
本実施形態において支持部材12の天板121と基台11との間には、印刷ヘッド41が移動する空間が確保される。
ヘッド移動機構49は、この天板121と基台11との間の空間において、X方向移動モータ46を駆動させることにより印刷ヘッド41を装置の左右方向(X方向)に移動させる。また、Y方向移動モータ48を駆動させることにより印刷ヘッド41を装置の前後方向(Y方向)に移動させる。
ヘッド移動機構49のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48及び印刷ヘッド41(印刷ヘッド41の吐出機構部)の動作は、後述の制御装置30の印刷制御部316(図3参照)によって制御される。
【0024】
また、装置本体10のうち支持部材12の天板121の内側であって、指固定部6の窓部63の上方位置には、窓部63から露出する爪T(爪Tを含む指U)を撮影して爪Tの画像(爪Tを含む指Uの画像、以下「爪画像」という。)を取得する撮像部50が設けられている。
撮像部50は、後述する制御部31の設定部313により設定された撮影条件のもとにおいて印刷対象(本実施形態では爪T)の画像を取得する。
【0025】
撮像部50は、例えばカメラ51と、撮影対象である爪Tを照明する光源52とを備えている。カメラ51は、例えば所定以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成されている。光源52は、例えば複数の白色LED等で構成された照明ユニットである。なお光源52は、カメラ51の撮影対象を照明可能であれば、LEDに限定されない。
本実施形態では図2に示すように、支持部材12の天板121のうち、左右方向のほぼ中央部にカメラ51が配置され、カメラ51の周りを囲むように光源52が配置されている。
【0026】
なお図2ではカメラ51の左右(X方向の両側)に光源52が配置されている場合を示しているが、カメラ51や光源52の配置等は図示例に限定されない。例えば光源52はカメラ51の左右だけでなく前後(Y方向の両側)等にも配置されてもよい。
また撮像部50は、指固定部6に載置された指Uの爪Tを撮影可能な位置に設けられていればよく、具体的な配置は特に限定されない。
例えば、撮像部50は、印刷ヘッド41を移動させるヘッド移動機構49等によってXY方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0027】
この撮像部50は、後述する制御装置30の撮影制御部312によって制御される。
例えば本実施形態では撮影制御部312の設定部313が、各種の撮影条件を設定する。撮像部50(撮像部50のカメラ51)は、設定部313により設定された撮影条件のもとにおいて画像を取得する。なお、撮影条件の詳細については後述する。
カメラ51によって撮影された爪画像は、撮影制御部312において取得される。爪画像は、後述する記憶部32に記憶されてもよい。
なお、撮像部50によって撮影された画像の画像データは、連携する端末装置7に適宜送信されてもよい。
【0028】
制御装置30は、例えば支持部材12の天板121の内側(下面側)等に配置された図示しない基板等に搭載されている。
制御装置30は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される制御部31と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。
なお、記憶部32は別構成とし、制御装置30の外部に設けるようにしてもよい。
【0029】
記憶部32は、印刷装置1を動作させるための各種プログラム等が格納されたプログラム記憶領域321を有している。
具体的には、記憶部32には、印刷処理を行うための印刷プログラム、撮影条件を設定する条件設定プログラム、画像から爪Tの白色度を判定する白色度判定プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御部31がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部31において実行されることによって、印刷装置1の各部が統括制御されるようになっている。
【0030】
本実施形態の制御部31は、機能的に見た場合、通信制御部311、撮影制御部312、判定部314、爪情報検出部315、印刷制御部316等を備えている。これら通信制御部311、撮影制御部312、判定部314、爪情報検出部315、印刷制御部316等としての機能は、制御部31と記憶部32のプログラム記憶領域321に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0031】
通信制御部311は、通信部13の動作を制御するものである。
通信部13は、端末装置7の通信部73との間で通信可能な無線通信モジュール等を備えており、通信制御部311は、印刷装置1、端末装置7間で各種のデータ等を送受信する際に通信部13の動作を制御する。
本実施形態の印刷装置1は、後述する端末装置7と連携してネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう。)の印刷を行うようになっている。
例えば撮像部50によって爪画像が取得されると、通信制御部311は適宜通信部13による通信を制御し、通信部13を介して爪画像のデータが印刷装置1から端末装置7に送信される。また爪Tに印刷するデザインのデータは端末装置7側に記憶されており、通信制御部311は適宜通信部13による通信を制御し、通信部13を介して端末装置7側からデザインのデータを取得する。さらに、本実施形態では印刷部40が印刷を行うための印刷用データが端末装置7側で生成されるようになっており、通信制御部311は通信部13を介して端末装置7から印刷用データを取得する。
【0032】
印刷装置1と端末装置7との間での通信は、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。ネットワークを介して通信を行う場合、通信に用いるネットワークはどのような回線を利用するものでもよい。また、印刷装置1と端末装置7との間の通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。
なお、通信部13は、端末装置7との間で通信を行うことのできるものであればよく、端末装置7の通信部73の通信規格と合致するものが適用される。
【0033】
撮影制御部312は、撮影条件を設定する設定部313を含んでいる。
撮影条件は、撮像部50のカメラ51で取得される画像の明るさをコントロールすることのできる条件であり、例えばカメラ51の利得(ゲイン)調整に関する条件、撮像部50におけるカメラ51の露出時間に関する条件、撮影時の光量(すなわち、光源52の明るさ)に関する条件等を含んでいる。設定部313はこれらのうちの1つ又は複数の組合せで適切な撮影条件を設定する。なお設定部313で設定可能な撮影条件はここに例示したものに限定されない。この他の条件を含んでいてもよい。なお、ここでいう撮影条件には、カメラ51で取得される画像の解像度についての条件は含まない。
【0034】
設定部313は、デフォルトとして「第1の撮影条件」を設定する。後述するように、指Uの位置確認用の爪画像(「第1の画像」)は、この「第1の撮影条件」のもとにおいて撮影される。また、後述するように、第1の撮影条件のもとにおいて撮影された画像は、当該画像に含まれる爪Tの白色度を判定するための画像としても用いられる。
また設定部313は、デザイン用ヘッド41bによるデザイン印刷を行う範囲(印刷範囲)である爪領域を検出するための爪画像(爪領域の認識用の爪画像、「第2の画像」)を撮影する際の撮影条件を設定する。爪領域の認識用の爪画像(「第2の画像」)を撮影する際にも撮影条件は、後述のように、爪Tの白色度に応じて「第1の撮影条件」を設定する場合と、「第1の撮影条件」とは異なる「第2の撮影条件」を設定する場合とがある。設定部313の撮影条件の設定については後に詳述する。
【0035】
撮影制御部312は、設定部313が設定した撮影条件のもとにおいて撮像部50のカメラ51及び光源52を制御してカメラ51により、印刷対象(本実施形態では、指固定部6に載置された指Uの爪T)の画像を含む指Uの画像(爪画像)を撮影させる。
本実施形態では、後述するように撮像部50は下地用インク(「第1の液剤」)が塗布され下地層が形成された状態の爪Tを撮影するようになっている。撮像部50により撮影された当該爪Tの画像(爪画像)は、撮影制御部312に送られ取得される。なお、撮影制御部312は爪画像を記憶部32に記憶させてもよい。
【0036】
判定部314は、設定部313により設定された「第1の撮影条件」のもとにおいて撮像部50のカメラ51により取得された印刷対象(本実施形態では爪T)の「第1の画像」に基づいて、「第1の液剤」である下地用インクが塗布された爪Tの白色度を判定する。白色度は、例えば白輝度値(Y値)である。
例えば下地用インクがユーザにより手塗りされた場合(手動の場合)には、筆や刷毛を用いて納得のいくまで液剤が塗布されることが考えられ、一般的に白色度が高い。これに対して装置により(すなわち下地用ヘッド41aを用いて)自動で下地用インクが塗布された場合には、複数回重ね塗りされても十分な膜厚を得ることが難しく、一般的に白色度が低い。判定部314は、このような白色度の違いから、下地用インクが手動で塗布されたか装置により自動で塗布(印刷)されたか、あるいは下地用インク(「第1の液剤」)が塗布されていないか、を判別する判別部としても機能する。
なお、判定部314による具体的な判定手法、判別手法については後に詳述する。
【0037】
爪情報検出部315は、撮像部50で撮影された爪Tの画像(爪画像)に基づいて、指Uの爪Tについての爪情報を検出(認識)する。
本実施形態において爪情報検出部315は、指Uの爪Tの爪輪郭を検出し爪輪郭の内側領域を爪領域として検出(認識)する。本実施形態では、爪領域として検出(認識)された領域が印刷部40により印刷が行われる被印刷領域となる。
【0038】
爪情報検出部315が爪画像から爪領域(爪輪郭)を検出する手法は特に限定されない。
例えば撮像部50で撮影された爪領域認識用の爪画像(「第2の画像」)について各種画像解析を行うことで、爪Tとそれ以外の部分(指Uの皮膚等)との輝度差等を検出し、輪郭形状を検出する。
本実施形態では、ユーザによる手塗りや下地用ヘッド41aによる印刷によって爪Tに下地用インク(「第1の液剤」)を塗布することで、下地層が形成されるようになっている。爪情報検出部315は、下地層が形成されていると判断される領域を爪領域と認識する。
【0039】
なお、爪情報検出部315によって検出される爪情報は爪領域(爪輪郭)に限定されない。
爪情報検出部315によって検出される爪情報は、例えば、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)等を含んでいてもよい。また、カメラ51によって撮影された画像等から爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置)を取得できる場合には、爪Tの高さも爪情報に含まれてよい。
【0040】
印刷制御部316は、印刷用データにしたがって爪Tに印刷を施すように印刷部40を制御する。
具体的には、印刷制御部316は、印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷用データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、印刷ヘッド41等を制御する。
【0041】
本実施形態では、印刷制御部316が、爪情報検出部315によって検出された爪領域に所望のデザインを合わせ込んで印刷用データを生成する。
例えば印刷制御部316は、ユーザによって選択されたネイルデザイン(デザイン)の画像データを、爪領域を画する爪輪郭に外接する矩形枠に合うように切り出し、適宜拡大縮小、配置の調整等を行うとともに、爪画像から検出された爪領域にフィッティングする。
なお、爪情報検出部315において爪Tの曲率等が取得された場合には、印刷制御部316は、この爪Tの曲率等に基づいて、印刷用データに適宜曲面補正を行ってもよい。曲面補正を行った場合には、より爪Tの形状に合った印刷用データを生成することができる。
【0042】
また、前述のように、本実施形態の印刷装置1は、端末装置7と連携して爪Tに対する印刷を行う。
端末装置7は、例えばスマートフォン等の携帯端末装置である。なお、端末装置7はスマートフォンに限定されない。例えばタブレット型のパーソナルコンピュータ(以下において「PC」とする。)やノート型のPC、据置型のPC、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
図2に示すように、端末装置7は、操作部71、表示部72、通信部73及び制御装置80等を備えている。
【0043】
操作部71は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、例えば表示部72の表面に一体的に設けられたタッチパネルである(図1参照)。操作部71が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御部81に送信される。
表示部72に構成されるタッチパネルには、制御部81の制御にしたがって各種の操作画面が表示され、ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によって各種の入力・設定等の操作を行うことができる。
なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部71はタッチパネルである場合に限定されない。例えば各種の操作ボタンやキーボード、ポインティングデバイス等が操作部71として設けられていてもよい。
【0044】
本実施形態では、ユーザが操作部71を操作することで、端末装置7から印刷装置1に対して印刷開始等の各種指示が出力されるようになっており、端末装置7は印刷装置1の操作部としても機能する。
また、ユーザが操作部71を操作することで、爪Tに印刷するネイルデザイン(単に「デザイン」ともいう)を選択すること等ができるようになっている。
【0045】
表示部72は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
なお、前述のように、表示部72の表面に各種の入力を行うためのタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、タッチパネルが操作部71として機能する。
表示部72は、後述する制御装置80の制御部81に接続され、該制御部81によって制御される。
【0046】
表示部72は、各種の画面を表示させる表示手段である。本実施形態では、ユーザが操作部71から入力・選択したネイルデザインや、各種の案内画面、警告表示画面等が表示部72に表示可能となっている。
また、本実施形態において表示部72には、印刷装置1の撮像部50(撮像部50のカメラ51)で撮影された爪画像(「第1の画像」や「第2の画像」)が適宜表示される。表示部72に爪Tにデザインを印刷した場合の印刷イメージがプレビュー画像として表示されてもよい。また、印刷装置1の撮像部50が動画撮影可能に構成されている場合には、ユーザが指固定部6に指Uをセットする様子を撮像部50により撮影し、得られた画像を表示部72にライブビュー画像として表示させてもよい。
【0047】
特にユーザが指固定部6に指Uを配置する際、指Uや爪Tの位置確認用の爪画像(「第1の画像」)を表示させることで、ユーザは自分の指Uが正しく配置されているか否かを容易に確認し、位置がずれている場合には正しく修正することができる。
なお、「第1の画像」を表示させる表示画面には、指Uを配置する際の基準となる線が画像に重畳して表示されることが好ましい。
例えば図9等では、爪Tを配置する位置の基準線として爪幅方向の基準となる基準線wL、爪Tの長さ方向の基準となる基準線hLを例示している。基準線wLは爪Tの幅方向の中心線である。基準線hLは爪Tの長さ方向の中心線であってもよいし、中心線でなくてもよい。ただし基準線wL及び基準線hLは、基準線wL及び基準線hLの交点に爪Tのほぼ中央部が配置されるような位置に設定されることが好ましい。
【0048】
通信部73は、印刷装置1の通信部13との間で通信可能に構成されたものである。
印刷装置1と端末装置7との間での通信は、前述のように、無線接続方式、有線接続方式のどちらでもよく、具体的な方式は限定されない。通信部73は印刷装置1との間で通信を行うことのできるものであればよく、印刷装置1の通信部13の通信規格と合致するものが適用される。
通信部73は、後述する制御装置80の制御部81に接続され、該制御部81によって制御される。
【0049】
図2に示すように、本実施形態の端末装置7の制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより構成される制御部81と、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0050】
記憶部82には、端末装置7の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部82のROM等には、端末装置7の各部を統括制御するための動作プログラム821aの他、印刷装置1を用いたネイルプリントを行うためのネイルプリントアプリケーションプログラム821b(以下「ネイルプリントAP」とする。)等の各種プログラムが格納されたプログラム記憶領域821が設けられており、制御部81がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部81において実行されることによって、端末装置7の各部が統括制御されるようになっている。
【0051】
また図示は省略するが、本実施形態の記憶部82には、ネイルデザイン(デザイン)のデータが記憶されている。
なお、記憶部82に格納されるネイルデザイン(デザイン)は、予め用意された既存のデザインであってもよいし、ユーザが自ら作成したデザインであってもよい。
また、端末装置7が各種ネットワークに接続可能である場合には、ネットワーク接続可能な図示しないサーバ装置等に記憶されているネイルデザイン(デザイン)を取り込んで記憶部82に記憶させることができてもよい。
なお、記憶部32に記憶される情報はここに例示したものに限定されず、各種の情報が記憶されてもよい。
【0052】
端末装置7の制御部81は、機能的に見た場合、通信部73の動作を制御する通信制御部、表示部72を制御して表示部72に各種の表示画面を表示させる表示制御部等として機能する。これらの機能は、制御部81のCPUと記憶部82のROMに記憶されたプログラムとの協働によって実現される。なお、端末装置7の制御部81が備える機能はこれに限定されず、その他各種の機能部を備えていてもよい。
【0053】
次に、図4から図11を参照しつつ、本実施形態の印刷装置の作用、印刷制御処理について説明する。
図4は、爪にデザインを印刷してネイルプリントを施す場合の主な工程を手順に沿って示した説明図である。図4では、各工程をPr1~Pr10として示している。Pr1~Pr10の工程には、印刷装置1によって自動で行われるものとユーザによって手動(手塗り等の手作業)で行われるものとが混在している。
図4に示すように、まず、爪Tの表面にベースコートを塗布する(Pr1)。具体的には筆や刷毛等を用いて、ユーザがベースコート剤を爪Tの表面に手塗りする。ベースコート剤を塗布したら、ベースコートを乾燥させる(Pr2)。乾燥工程は、例えば一般的なドライヤや専用の乾燥装置等を用いて行われる。ベースコート剤が乾燥することで爪Tの表面にベースコート層が形成される。
【0054】
ベースコート層が形成されたら、その上に下地用インクを塗布する(Pr3)。この下地用インク(「第1の液剤」)を塗布する工程は、ユーザによる手塗り(手動)で行われる場合と、印刷装置1の下地用ヘッド41aを用いて自動的に印刷される場合とがある。なお、ユーザによる手塗りで下地が塗布されるか、印刷装置1の下地用ヘッド41aにより下地が印刷されるか、について、ユーザ操作による選択が行われるようになっていてもよい。例えば、操作ボタンの押下などにより、下地がユーザにより塗られると判定された場合に図5に示す処理を行い、下地が印刷装置1により塗られると判定された場合に図6に示す処理を行うようにしてもよい。
図5は、下地用インクの塗布が手動で行われる場合の処理を示すフローチャートである。
爪Tに下地用インクを手塗りする場合には、筆や刷毛等を用いてユーザが下地用インクを塗布する。この場合、例えば端末装置7の表示部72等に適宜手順を表示する等により、ユーザをガイドすることが好ましい。
【0055】
例えば図5に示す例では、まず、表示部72等においてベースコート層が形成された爪Tの表面に下地用インクを塗布して乾燥させ、下地層を形成するようにユーザに促す表示を行う(ステップS1)。
そして、下地層が形成されると、次にプレプリントコートを塗布して乾燥させる。プレプリントコートの塗布も筆や刷毛等を用いてユーザが手動で行う工程である。プレプリントコートを塗布してこれを乾燥させることで、次に塗布(印刷)されるインク(デザイン用インク)を受容する受容層が形成される。
表示部72等には、爪Tの表面に受容層を形成した上で、当該爪Tに対応する指Uを印刷装置1の指固定部6にセットするようにユーザに促すメッセージ等が表示される(ステップS2)。
【0056】
一方、図6は、下地用インクの塗布(印刷)が印刷装置1において自動的に行われる場合の処理を示すフローチャートである。
爪Tに下地用インクを自動で塗布(印刷)する場合には、まずベースコート層が形成された爪Tの表面にユーザがプレプリントコートを塗布して乾燥させ、受容層(下地用インクを受容するための受容層)を形成する。
図6に示すように、表示部72等には、爪Tの表面に受容層を形成した上で、当該爪T対応する指Uを印刷装置1の指固定部6にセットするようにユーザに促すメッセージ等が表示される(ステップS11)。
【0057】
指固定部6の窓部63周辺は撮像部50のカメラ51で随時撮影されており、指Uがセットされると、カメラ51により取得された画像から制御部31に認識されるようになっている。指Uがセットされたと認識されると、制御部31の撮影制御部312が爪Tを含む指Uを撮像部50のカメラ51で撮影させ、爪画像(地爪を含む指Uを撮影した画像)を取得させる(ステップS12)。なお、図示は省略するが、下地用インクの塗布(印刷)が印刷装置1において自動的に行われる場合には、事前に下地用インクを受容するための受容層を形成しておく必要がある。受容層を形成するためのプレプリントコートの塗布は、本実施形態ではユーザの手塗りにより行われることが想定されている。ステップS12において撮影される爪T(「地爪」)は爪表面に受容層が形成された状態の爪を意味する。
爪画像は制御部31(撮影制御部312)に取得され、爪情報検出部315において、爪画像(地爪の爪画像)から爪領域が検出される(すなわち、地爪領域の認識、ステップS13)。
爪領域が検出されると、制御部31は、検出された爪領域(地爪領域)に合わせて下地用インクを印刷するための下地用印刷データを生成する(ステップS14)。そして制御部31(印刷制御部316)では、当該下地用印刷データを印刷部40に出力して、下地用印刷データに基づき印刷部40各部を動作させる。これにより下地用ヘッド41aにより、下地用印刷データに基づく印刷(下地用インクを爪Tに塗布する下地印刷)が行われる(ステップS15)。
【0058】
下地用ヘッド41aによる印刷が終了すると、端末装置7の表示部72等に、下地用インクによる印刷が行われた爪Tに対応する指Uを指固定部6から外して、指Uを装置外に取り出すよう指示するメッセージ等を表示させる(ステップS16)。下地用インクを乾燥させて下地層が形成されると、ユーザは下地層の上にプレプリントコートを塗布して(図4のPr4)乾燥させ、受容層(デザイン用インクを受容するための受容層)を形成する(図4のPr5)。そして、この受容層が形成された爪Tに対応する指Uを印刷装置1の指固定部6にセットするようにユーザに促すメッセージ等を端末装置7の表示部72等に表示させる(ステップS17)。
このように、下地用インクの塗布(印刷)を印刷装置1で行う場合には、下地用インクによる印刷前と、デザイン用インクによる印刷前のそれぞれに受容層の形成が必要となる。
【0059】
図4に戻り、手動(図5参照)又は自動(図6参照)により爪Tに下地用インクが塗布(印刷)されると、下地用インクを乾燥させて下地層を形成する(Pr4)。そして、ユーザが筆や刷毛等を用いて下地層の上にプレプリントコートを塗布し(Pr5)、これを乾燥させる。これにより、デザイン用インクを受容するための受容層が形成される(Pr6)。受容層が形成されると、受容層の上にデザイン印刷が行われる(Pr7)。
【0060】
図7は、デザイン用インクを用いたデザイン印刷を行う処理を示すフローチャートである。デザイン印刷は印刷装置1を用いて自動で行われる。
図7に示すように、印刷装置1の制御部31は、まず、指固定部6に指Uがセットされているか否かを判断する(ステップS21)。指Uがセットされているか否かは、例えば撮像部50のカメラ51によって指固定部6やその周辺の画像を取得させ、当該画像を解析することで把握することができる。例えば指Uが配置される指固定部6の指固定部材62が黒色等で形成されている場合、指固定部材62の上に配置された指Uを画像から容易に検出することができる。
【0061】
指固定部6に指Uがセットされていない場合(ステップS21;NO)には、下地層が形成された爪T(本実施形態では、下地層及び受容層が形成されていることが必要)に対応する指Uを指固定部6にセットするようにユーザに促すメッセージ等を表示部72等に表示させ(ステップS22)、ステップS21の判断処理を繰り返す。
他方、指Uが指固定部6にセットされている場合(ステップS21;YES)には、制御部31(撮影制御部312の設定部313)が、撮影条件として「第1の撮影条件」を設定し、指固定部6にセットされた爪Tを含む指Uを撮像部50のカメラ51で撮影させる。ここで撮影される爪画像は、指固定部6にセットされた指Uの位置を確認する、位置確認用の画像(「第1の画像」)である。撮影された画像(「第1の画像」)は制御部31に送られ、これにより制御部31に爪Tの爪画像(「第1の画像」)が取得される(ステップS23)。
【0062】
制御部31は、判定部314として爪画像(「第1の画像」)から爪Tの白色度を判定する(ステップS24)。
図98は、判定部による白色度判定処理の一例を示すフローチャートである。
図98に示すように、判定部314としての制御部31では、位置確認用の画像(「第1の画像」)をまずモノクロ画像に変換する(ステップS41)。そして、この「第1の画像」に、白色度判定領域Arjを設定する(図10参照)。白色度判定領域Arjをどこにどのような範囲で設定するかは適宜設定されるが、白色度判定領域Arjは確実に爪Tが存在している部分に設定される必要がある。
図10では、爪幅方向のほぼ中央部に設定された基準線wLと、爪Tの長さ方向のほぼ中央部に設定された基準線hLとの交点を中心とした所定の範囲(例えば数ミリ四方程度の範囲)に白色度判定領域Arjを設定している。
【0063】
そして、判定部314としての制御部31は、白色度判定領域Arj内の白色度(白輝度値)の平均値を求める(ステップS42)。
さらに、求めた白色度判定領域Arj内の白色度の平均値と、標準紙(一般的な白紙)における白色度(白輝度値)の平均値との比Rを求める(ステップS43)。
標準紙(標準的な試験紙)の白色度は、例えば一定の大きさの平面サンプルを外部光の影響を受けない閉鎖的な試料置き場等にセットしての測定し、単色光の反射率をベースに算出する。なお例えばネイルチップ等の爪状のサンプルでは曲面サンプルとなり、また実際の指Uの爪Tを外部光の影響を受けない閉鎖的な試料置き場にセットして測定することは困難である。このため、上記のように標準紙を用いて平均値を求めることが好ましい。
【0064】
位置確認用の画像(「第1の画像」)の白色度は、例えば白色度判定領域Arjの画像のYUVデータの輝度信号値(Y値、白輝度値)を測定することで取得する。
また、標準紙(標準的な試験紙)の白色度は、例えば事前に標準的な試験紙(上質紙など)に任意に設定した白色度判定領域の画像のYUVデータの輝度信号値(Y値、白輝度値)を測定することで取得する。
標準紙の白色度判定領域内のY値の平均値を「Y0値」とし、これを白色度100とする。また、「第1の画像」の白色度判定領域Arj内のY値の平均値を「Y1値」とし、Y1/Y0を白色度の「比R」とする。
同じ材料(下地用インク、「第1の液剤」)で形成された下地層であれば、層の厚さ(膜厚)が厚いほど「比R」は高い値を示し、下地層の厚さが薄いほど「比R」が低い値となる。
【0065】
判定部314としての制御部31は、「比R」が80%以上であるか否かを判断する(ステップS44)。そして、「比R」が80%以上である場合(ステップS44;YES)には、爪認識用の画像(「第2の画像」)を取得するための撮影の撮影条件をデフォルトの標準的な条件(すなわち「第1の撮影条件」)のまま(すなわち、補正無し)と設定する(ステップS45)。
【0066】
例えば下地用インクがユーザの手動(ユーザの手塗り)により塗布されて下地層が形成された場合には、ユーザが納得のいくまで塗り重ねるために十分な膜厚を確保することができる。また手塗りの場合には粘度の高い液剤であっても使用することができる。このため、一般に「比R」が80%以上の高い白色度を実現することができる。この場合は、下地層の隠蔽性が高く地爪の色が透けなくなり、下地層の上に印刷されるデザインの発色にも優れる。
これに対して印刷装置1で下地用インクが印刷された場合、下地用インクを一律にむらなく塗布することができる反面、膜厚が薄くなりがちとなる。ただこの場合でも何層も重ねて印刷を行うことで膜厚を確保し隠蔽性を高めた場合には、「比R」が80%以上の高い白色度を実現することができる。
【0067】
他方「比R」が80%以上でない場合(ステップS44;NO)には、判定部314としての制御部31は、さらに「比R」が60%以上であるか否かを判断する(ステップS46)。そして、「比R」が80%未満、60%以上である場合(ステップS46;YES)には、爪認識用の画像(「第2の画像」)を取得する際に、例えばデフォルトの「第1の撮影条件」の1.3倍の明るさで撮影するように、補正した撮影条件(「第2の撮影条件」)を設定する(ステップS47)。
【0068】
他方「比R」が60%以上でない場合(ステップS46;NO)には、判定部314としての制御部31は、さらに「比R」が40%以上であるか否かを判断する(ステップS48)。そして、「比R」が40%以上である場合(ステップS48;YES)には、爪認識用の画像(「第2の画像」)を取得する際に、例えばデフォルトの「第1の撮影条件」の2倍の明るさで撮影するように、補正した撮影条件(「第2の撮影条件」)を設定する(ステップS49)。
【0069】
これに対して、「比R」が40%未満である場合(ステップS48;NO)には、判定部314としての制御部31は、下地層が形成されていないと判断する(ステップS50)。そしてこの場合には、例えば端末装置7の表示部72等にエラー表示等を行い、ユーザに報知する(ステップS51)。
なお、「比R」が40%未満である場合の対応はこれに限定されない。位置確認用の画像(「第1の画像」)は、指Uが適切な位置に配置されるまで繰り返し撮影されており、「比R」が40%以上と判定されるまで繰り返し判定部314による判定が繰り返されてもよい。また、例えば3回等、所定回数判定を繰り返しても「比R」が40%以上とならない場合に、表示部72等にエラー表示等を行うようにしてもよい。
【0070】
なお、本実施形態では、判定部314が白色度に応じて、印刷対象である爪Tに、「第1の液剤」である下地用インクが塗布されていないか、下地用インクが手動で塗布されたか、下地用インクが自動で塗布されたか、を判別する判別部としても機能する。
例えば印刷装置1で下地用インクを印刷する場合に、下地用インクを塗り重ねる回数や使用する液剤の種類等によって「比R」の値が左右される。
このため、判定部314により下地用インクが自動で塗布されたと判別された場合に、設定部313は、判定部により判定された白色度に応じて、複数段階で前記撮影条件を設定することが好ましい。
図8では、「比R」が80%以上、「比R」が60%以上、「比R」が40%以上と40%未満の4段階に分けて対応する例を示したが、白色度に応じた対応の仕方はこれに限定されない。例えばさらに細かく対応を分けてもよい。
【0071】
判定部314による白色度の判定が完了すると、設定部313が、爪Tの白色度に基づいて爪領域の認識用の爪画像である「第2の画像」を取得するための撮影条件を設定する(図7のステップS25)。「第2の画像」を取得するための撮影条件の設定は、例えば図8に示すように行われるが、図8は一例であり、具体的な設定の仕方はこれに限定されない。
例えば、「比R」の値と、第2の撮影条件における、第1の撮影条件に対する明るさの倍数の値と、が線形な関係となるように、撮影条件が設定されるようになっていてもよい。一例として、「比R」の値が80%であるときの明るさを1倍とし、「比R」の値が40%である場合の明るさを2倍とし、その間で、「比R」の値が小さくなるにつれて、明るさの倍率が大きくなるように設定してもよい。
また、上述した例では、「比R」の値に基づいて、第2の画像を取得するときの撮影条件を設定する例について説明したが、他の値に基づいて撮影条件を設定するようにしてもよい。例えば、「比R」の代わりに、白色度判定領域Arj内の白色度の平均値の大きさ(平均値の絶対値の大きさ)に基づいて、第2の画像を取得するときの明るさの条件を設定するようにしてもよい。
【0072】
そして、制御部31は、白色度の判定及び撮影条件の設定が完了したか否かを判断し(ステップS26)、まだ完了していない場合(ステップS26;NO)には、ステップS23に戻って以降の処理を繰り返す。
【0073】
これに対して、白色度の判定及び撮影条件の設定が完了している場合(ステップS26;YES)には、設定された撮影条件で、撮像部50のカメラ51により爪領域の認識用の撮影を行い、「第2の画像」が取得される(ステップS27)。なお、前述のように「第2の画像」は、「第1の画像」を撮影したときの撮影条件と同じ「第1の撮影条件」のもとにおいて撮影される場合(「比R」が80%以上の場合)と、補正されて「第1の撮影条件」とは異なる「第2の撮影条件」のもとにおいて撮影される場合(「比R」が60%以上や40%以上である場合)とがある。いずれの場合も、爪領域認識用の画像である「第2の画像」の解像度は、位置合わせ用の画像である「第1の画像」の解像度よりも高くなっている。「第1の画像」及び「第2の画像」の具体的な解像度は適宜設定される。なお、第1の画像の解像度と、第2の画像の解像度とを一致させてもよい。
【0074】
「第2の画像」が取得されると、制御部31(爪情報検出部315)が、「第2の画像」に基づいて爪領域を認識(検出)する(ステップS28)。そして、認識された爪領域に合わせて制御部31がデザイン用印刷データを生成する(ステップS29)。
本実施形態では、爪領域として認識された範囲が印刷範囲となるため、正しく爪領域が検出(認識)されないと、実際の爪Tの範囲に応じたデザイン用印刷データを生成することができない。
【0075】
例えば図10は、「比R」が80%以上でない場合に、爪認識用の画像(「第2の画像」)を取得する際の撮影条件をデフォルトのまま、何も補正しなかった場合(すなわち、「第1の撮影条件」のままの明るさで撮影した場合)の、爪領域の認識結果を示したものである。
図10に示す例では、爪Tの幅方向の中央部分だけが白色度の高い部分として爪情報検出部315により検出され、この部分だけが印刷範囲となる爪領域(図中破線で示す爪領域Art)として認識されている。
【0076】
これに対して、図11は、「比R」が80%以上でない場合に、爪認識用の画像(「第2の画像」)を取得する際の撮影条件を白色度に応じて補正した場合(すなわち、「第1の撮影条件」とは異なる「第2の撮影条件」として設定された明るさで撮影した場合)の、爪領域の認識結果を示したものである。
この場合には、図11に示すように、実際の爪Tの領域全体が白色度の高い部分として爪情報検出部315により検出され、印刷範囲となる爪領域(図中破線で示す爪領域Art)が適切に認識される。
なお、爪認識用の画像(「第2の画像」)において、どの範囲が爪領域Artとして認識されたか(例えば図10図11のように爪領域Artを破線で示した画像等)を表示部72等に表示させて、ユーザに爪認識の適否等の判断を求めてもよい。
【0077】
生成されたデザイン用印刷データは印刷部40に出力され、印刷部40のデザイン用ヘッド41bにより、爪領域Artとして認識された範囲に、デザイン用印刷データにしたがったデザイン印刷が行われる(ステップS30)。
デザイン用ヘッド41bでデザイン用インクによる印刷が行われると、端末装置7の表示部72等には、当該爪Tに対応する指Uを指固定部6から外して装置外に取り出し、乾燥を行うようユーザに促すメッセージ等が表示される(ステップS31)。
【0078】
ユーザは指示にしたがって指Uを装置外に取り出し、ドライヤ等を用いて爪Tに施された印刷(デザイン印刷)を乾燥させる(図4のPr8)。
さらに図4に示すように、デザインが印刷された上からトップコートを塗布し(図4のPr9)、これを乾燥させる(図4のPr10)。これにより、もちのよいネイルプリントを実現することができる。なお、トップコートの塗布も、ユーザにより筆や刷毛等を用いて行われる。
【0079】
このように、下地層が施された爪Tの白色度に応じて爪領域認識用の画像「第2の画像」の撮影条件を調整することで、下地層が手塗りされた場合、印刷装置1により印刷された場合のいずれにおいても、適切な範囲を爪領域として認識・検出することができる。このため、爪Tの正しい範囲にデザインの印刷を行うことができる。
【0080】
以上のように、本実施形態によれば、印刷装置1が、撮影条件を設定する設定部313と、印刷対象(本実施形態では爪T)の画像を取得する撮像部50と、設定部313により設定された「第1の撮影条件」のもとにおいて撮像部50により取得された爪Tの「第1の画像」に基づいて、被印刷領域である爪Tにおける所定の領域の白色度を判定する判定部314と、画像から爪Tの被印刷領域(爪領域)を検出する検出部である爪情報検出部315と、を備え、設定部313は、判定部314により判定された爪Tの白色度が第1の所定の条件を満たさない場合(本実施形態では「比R」80%未満)に、「第1の撮影条件」とは異なる「第2の撮影条件」を設定し、撮像部50は、設定部313により「第2の撮影条件」が設定された場合には「第2の撮影条件」のもとにおいて爪Tの第2の画像を取得し、「第2の撮影条件」が設定されなかった場合(本実施形態では「比R」80%以上)には「第1の撮影条件」のもとにおいて爪Tの第2の画像を取得する。
このように、爪Tの白色度に応じて撮影条件を変えて爪領域認識用の画像を撮影するため、下地層の塗布の仕方に関わらず、正しい領域を爪領域Art(図10図11参照)と認識することができる。これにより適切な範囲にデザイン印刷を行うことができる。
【0081】
また本実施形態において、判定部314は、「第1の画像」における爪Tの所定の領域の白色度と、基準白色度と、の「比R」の値が第1の基準値よりも小さい場合に、第1の所定の条件を満たさないと判定する。
このように「比R」の値によって判断することによって、爪Tの白色度の程度を客観的に判断することができる。
【0082】
また本実施形態において、判定部314により第1の所定の条件を満たさないと判定された場合、設定部313は、少なくとも、撮影時の光量が第1の撮影条件よりも第1の倍率だけ大きい第2の撮影条件を設定する。
このように光量の調整することで撮影条件を変えることで、簡易に撮影条件を変更することができる。
【0083】
また本実施形態において、判定部314により、「比R」の値が第1の基準値よりも小さい第2の基準値よりも小さく、第2の所定の条件を満たさないと判定された場合、設定部313は、少なくとも、撮影時の光量が第1の撮影条件よりも第2の倍率だけ大きい第2の撮影条件を設定し、第2の倍率は、第1の倍率よりも大きい。
これにより白色度のレベルが低い場合には、撮影時の光量をより大きくすることで正しい領域を爪領域Artと認識することのできる爪領域認識用の画像を撮影することができる。
【0084】
また本実施形態において、撮影条件は、撮影時の光量、撮像部50(撮像部50のカメラ51)における露出時間を含んでいる。
撮影時の光量等を変えることで、撮影時の明るさをコントロール(調整)することができ、下地層の膜厚が薄い場合でも爪領域を正しく認識することが可能となる。
【0085】
また本実施形態において、「第1の画像」は位置合わせ用の画像であり、「第1の画像」の解像度は、「第2の画像」の解像度よりも低い。
このように本実施形態では、指や爪を配置する位置を合わせるための画像は低い解像度で簡易に撮影し、この「第1の画像」を用いて爪Tの白色度を判定し、爪領域を認識する際には高い解像度の画像(「第2の画像」)を白色度に応じた撮影条件で撮影させる。このため、「第2の画像」から印刷範囲となる爪領域をより正確に認識することができる。
【0086】
また本実施形態の印刷装置1は、印刷対象である爪Tに印刷を行う印刷ヘッド41を備えている。
このため、正確に認識された爪領域内に印刷を行うことができる。
【0087】
また本実施形態の印刷ヘッド41が「第1の液剤」(すなわち下地用インク)とは異なる「第2の液剤」(すなわちデザイン用インク)を塗布するデザイン用ヘッド41bである場合には、ユーザにより手塗りされた下地用インクで形成される下地層に自動でデザイン印刷を行うことができる。下地用インクを手塗りする場合には十分な膜厚を稼ぐことができ、また粘度の高い液剤も用いることができるため、隠蔽性に優れた白色度の高い下地層を形成することができる。このような下地層の上にデザイン印刷を行うことで発色のよいきれいな仕上がりのネイルプリントを行うことができる。
【0088】
また本実施形態の印刷ヘッド41が「第1の液剤」(すなわち下地用インク)を塗布する下地用ヘッド41a、「第1の液剤」とは異なる「第2の液剤」(すなわちデザイン用インク)を塗布するデザイン用ヘッド41bを含んでいる場合には、下地層の形成からデザインの印刷までを印刷装置1において自動で行うことができ、ユーザの手間を省くことができる。
そしてこのように「第1の液剤」(すなわち下地用インク)も印刷装置1により自動で塗布(印刷)する場合にも、爪領域認識用の画像(「第2の画像」)を撮影する際は白色度に応じた撮影条件で撮影させる。このため、印刷範囲となる爪領域を「第2の画像」からより正確に認識することができる。
【0089】
また本実施形態では、「第2の画像」に基づいて検出された被印刷領域(本実施形態では爪領域)に印刷を行うよう「第2の液剤」(すなわちデザイン用インク)を塗布するデザイン用ヘッド41bを制御する制御部31(印刷制御部316)を備えている。
これにより、正しい範囲(爪領域)にデザイン印刷を施すことができる。
【0090】
また本実施形態では、判定部314が、爪Tの白色度に応じて、印刷対象(本実施形態では爪T)に、「第1の液剤」すなわち下地用インク)が塗布されていないか、「第1の液剤」が手動で塗布されたか、「第1の液剤」が自動で塗布されたか、を判別する判定部としても機能する。
下地用インクの塗布状況によって、爪領域の認識結果に差が生じる。この点本実施形態では、下地層がどの程度白く形成されているかにより爪領域認識用の画像(「第2の画像」)を撮影する条件を変えるため、下地用インクの塗布状況に関わらず、爪領域を正しく認識することができる。
【0091】
また本実施形態において、判別部としての判定部314により「第1の液剤」(すなわち下地用インク)が自動で塗布(すなわち、印刷装置1により自動的に印刷)されたと判別された場合に、設定部313は、白色度に応じて、複数段階で前記撮影条件を設定する。
下地用インクが印刷されて下地層が形成された場合にも、塗り重ねた回数や用いた液剤の種類等により下地層形成後の爪Tの白色度が異なる。この点下地層が印刷により形成された場合を一律に扱わず、個別に白色度を考慮して撮影条件を設定することで、適切な「第2の画像」(爪領域認識用の画像)を取得することができる。
【0092】
また本実施形態における印刷対象は、爪である。
爪Tは何も塗布しない地爪の状態ではデザイン用のインクがあまりきれいに発色しないとともに、周りの皮膚の色と区別しにくく、正しく爪領域を認識することが難しい。この場合にも下地層が形成された範囲を適切に認識し、これを爪領域とすることで、適切な印刷範囲を設定することができる。
【0093】
また本実施形態において、検出部は、印刷対象(本実施形態では爪T)の「第2の画像」から、印刷対象の形状を認識することで被印刷領域(本実施形態では爪領域)を検出する。
「第2の画像」は、爪Tの白色度に基づく撮影条件のもとにおいて撮影されるため、正しい範囲を印刷範囲として検出することができる。
【0094】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0095】
例えば、本実施形態では、爪Tを撮影した「第1の画像」についてYUVデータの輝度信号値(Y値、白輝度値)を測定することで白色度を取得し、これと標準紙の白色度とを比較した「比R」により白色度の判定を行う場合を例示したが、白色度の判定は実施形態に示したものに限定されない。他の値、他の手法を用いて「第1の画像」の白色度の判定を行ってもよい。
【0096】
また、本実施形態では、撮像部50における撮影時の撮影条件を変えることで画像の明るさをコントロールする場合を例示したが、明るさの調整は撮影段階で行う場合に限定されない。
例えば、撮影後の画像処理段階で画像の明るさを調整してもよい。例えば爪領域Artの認識結果をユーザに提示した結果、不適切(例えば図10のように実際よりも狭い範囲しか認識されていない)との判断がなされた場合に、「第2の画像」を撮影し直す代わりに画像処理段階で画像の明るさを調整して、爪領域Artの認識(検出)をやり直してもよい。
【0097】
また、本実施形態では、1つの印刷装置1が印刷ヘッド41として下地用ヘッド41aとデザイン用ヘッド41bとを備え、自動で下地用インクを塗布(印刷)する場合には下地用ヘッド41aによって印刷する場合を例示したが、下地用インクを塗布(印刷)する手法はこれに限定されない。
例えば、デザイン用インク(カラーインク、「第2の液剤」)によりデザインを印刷する印刷ヘッドを備えるデザイン印刷用の印刷装置と、下地用インク(「第1の液剤」)を印刷する印刷部(印刷ヘッドやペン等)を備える下地印刷専用の印刷装置とを用意して、下地印刷専用の印刷装置を用いて爪Tに下地読用インクを塗布(印刷)して下地層を形成してからデザイン印刷用の印刷装置の指固定部に指を保持させて爪にデザインの印刷を行ってもよい。
【0098】
また、本実施形態では、印刷装置1が端末装置7と連携して爪に印刷を行う場合を例示したが、印刷装置1はここに示すようなものに限定されず、単体で印刷動作が完結するように構成されたものであってもよい。
例えば、本実施形態では、端末装置7側に表示部72を備えるとともに、印刷開始指示の入力やネイルデザイン(デザイン)の選択等を端末装置7側の操作部71から行う場合を例としたが、印刷装置1に表示部を設け、各種指示の入力等についても印刷装置1側の操作部14において行う構成としてもよい。この場合、印刷装置1の表示部にタッチパネルを一体的に設け、タッチパネル式の操作部によって各種の入力操作を行えるようにしてもよい。
この場合、爪や指の配置位置の確認、爪画像や爪領域、印刷イメージの確認から印刷処理までを1つの装置で完結させることができ、簡易な構成とすることができる。
【0099】
また、本実施形態では、ネイルデザイン(デザイン)のデータが端末装置7の記憶部82に格納去されている場合を例示したが、ネイルデザインのデータは端末装置7の記憶部82に保存されている場合に限定されず、印刷装置1の記憶部32に保存されていてもよい。
また、ネットワーク回線等を介して接続可能なサーバ装置等にネイルデザインの画像データを記憶させておき、サーバ装置等にアクセスしてネイルデザインのデータを参照可能に構成してもよい。
このようにすることで、記憶部82等の容量を大きくしなくても、より多くのネイルデザインの中から印刷するデザインを選択することが可能となる。
【0100】
なお、本実施形態では、設定部313、判定部314、爪情報検出部315等が印刷装置1の制御部31に設けられており、印刷データの生成も制御部31で行われる場合を例示したが、装置構成は実施形態に示したものに限定されない。
例えば端末装置7の制御部81が設定部313、判定部314、爪情報検出部315や、印刷データ生成部等として各種処理を行うようにしてもよい。この場合には、撮像部50で撮影された画像(「第1の画像」や「第2の画像」)が端末装置7の制御部81に送られるようにする。この場合には対応するプログラム等が端末装置7の記憶部82に格納される。
【0101】
さらに、撮像部50の撮影条件を設定する設定機能、撮像部50により取得された画像から印刷対象(爪T)の被印刷領域(爪領域)を検出する検出機能、爪Tの「第1の画像」に基づいて、「第1の液剤」が塗布された爪Tの白色度を判定する判定機能等を、印刷装置1の制御部31と端末装置7の制御部81とで適宜分担して行うようにしてもよい。
このように構成することで、印刷装置1及び端末装置7のCPUにかかる負荷、記憶部32,82にかかる負荷を分散させて、効率よく処理を行うことができる。
【0102】
また、本実施形態では、印刷装置1の印刷ヘッド41として、インクジェット方式の印刷ヘッド41を備える構成としたが、印刷ヘッド41の構成はこれに限定されない。
シリンジ型のヘッドやペン型のヘッド等、インクジェット方式の印刷ヘッド41とは異なる構成のものを備えてもよい。
この場合には、ある程度粘度の高いインクや液剤を印刷することも可能となる。
【0103】
さらに、本実施形態では手動(手塗り、手作業)で行うとしたベースコートの塗布(図4のPr1)、プレプリントコートの塗布(図4のPr5)、トップコートの塗布(図4のPr9)についても、それぞれ対応する液剤(インク)を有する印刷ヘッドを用意して、印刷装置1で行うことができる構成としてもよい。
この場合には、ベースコートからトップコートまで、ネイルプリントの全工程を印刷装置1において自動で行うことができ、ユーザの手間を省いて爪Tにネイルプリントを施すことができる。
【0104】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0105】
1 印刷装置
6 指固定部
7 端末装置
31 制御部
32 記憶部
40 印刷部
41 印刷ヘッド
41a 下地用ヘッド
41b デザイン用ヘッド
50 撮像部
51 カメラ
52 光源
312 撮影制御部
313 設定部
314 判定部
315 爪情報検出部(検出部)
316 印刷制御部
81 制御部
82 記憶部
T 爪
U 指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11