(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102701
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法、感光性組成物及びその硬化方法、並びに、レンズユニット
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240724BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240724BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240724BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B32B27/00 A
B32B27/30 A
B32B7/027
G02B1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006772
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋介
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK02A
4F100AK25A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100EJ54
4F100JA05A
4F100JB14A
4F100JD10
4F100JK06
4F100JN17A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】環状オレフィン系樹脂を含む成形体と、上記成形体の表面に積層された樹脂膜との密着性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】成形体と、該成形体の表面上に積層された感光性組成物の硬化膜とを含む積層体であって、上記成形体は、環状オレフィン系樹脂を含み、上記硬化膜は、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する重合体を含む、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体と、該成形体の表面上に積層された感光性組成物の硬化膜とを含む積層体であって、
該成形体は、環状オレフィン系樹脂を含み、
該硬化膜は、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する重合体を含む
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記重合体は、脂環式単官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【化1】
(一般式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、有機基を表す。Xは、一般式(2)で表される構造を表す。a及びcは、同一又は異なって、0~3の整数であり、bは、0~2の整数であり、nは、0~6の整数である。3≦a+bn+c≦9を満たす。
一般式(2)中、R
4は、水素原子又はメチル基を表す。R
5は、炭素数1~8の炭化水素基を表す。mは、1~3の整数である。)
【請求項4】
前記硬化膜のガラス転移温度は、40~110℃であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の積層体を含むことを特徴とするレンズユニット。
【請求項6】
環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する感光性組成物であって、
ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤を含むことを特徴とする感光性組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記感光性組成物の酸価は、0~5mgKOH/gであることを特徴とする請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載の感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程と、
該感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、該感光性組成物の硬化膜を得る工程と、を含むことを特徴とする感光性組成物の硬化方法。
【請求項10】
成形体の表面上に感光性組成物の硬化膜が積層された積層体の製造方法であって、
請求項6~8のいずれかに記載の感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程と、
該感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、該感光性組成物の硬化膜を得る工程と、を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法、感光性組成物及びその硬化方法、並びに、レンズユニットに関する。より詳しくは、密着性に優れた積層体及びその製造方法、上記積層体を形成するための感光性組成物及びその硬化方法、並びに、レンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学機器における光学部品・部材等として、基材上に樹脂膜を積層した積層体が知られている。このような積層体を製造する方法の一つとして、例えば、基材となる成形体の表面に、樹脂膜を形成するための組成物を塗布して、硬化させる方法がある。こうして得られる樹脂膜には、基材に対する密着性や、耐久性等が求められ、また、必要とされる光学特性等にも優れることが必要とされる。
【0003】
そのような樹脂膜を形成するための組成物の一つとして、例えば、光学部品・部材の接着に用いる接着剤組成物が知れている。そのような接着剤組成物は、接着力、すなわち、基材に対する密着性に加えて、光透過性や耐久性等の特性も必要とされる。上記接着剤組成物としては、例えば、特定の構造からなるエポキシ化合物及びカチオン硬化触媒を必須とする光学用接着剤組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、光学部品等に使用される樹脂として、環状オレフィン系樹脂が知られている。環状オレフィン系樹脂は、透明性や耐熱性に優れ、複屈折率が小さく、成形性に優れる等の特性を有する。このような、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に、従来の組成物を用いて樹脂膜を形成した場合、基材である成形体に対する樹脂膜の密着性が低く、成形体の表面から樹脂膜が容易に剥がれてしまうという問題があった。また、そのため、得られる積層体の信頼性が低くなるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、環状オレフィン系樹脂を含む成形体と、上記成形体の表面に積層された樹脂膜との密着性に優れた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、成形体と成形体の表面に積層された樹脂膜とを含む積層体について種々検討したところ、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面上に、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する重合体を含む樹脂膜を有することで、密着性に優れた積層体が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の態様の発明を提供する。
[1]成形体と、該成形体の表面上に積層された感光性組成物の硬化膜とを含む積層体であって、該成形体は、環状オレフィン系樹脂を含み、該硬化膜は、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する重合体を含むことを特徴とする積層体。
[2]上記重合体は、脂環式単官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有することを特徴とする上記[1]に記載の積層体。
[3]前記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートは、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の積層体。
【0009】
【0010】
(一般式(1)中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、有機基を表す。Xは、一般式(2)で表される構造を表す。a及びcは、同一又は異なって、0~3の整数であり、bは、0~2の整数であり、nは、0~6の整数である。3≦a+bn+c≦9を満たす。
一般式(2)中、R4は、水素原子又はメチル基を表す。R5は、炭素数1~8の炭化水素基を表す。mは、1~3の整数である。)
【0011】
[4]上記硬化膜のガラス転移温度は、40~110℃であることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層体を含むことを特徴とするレンズユニット。
[6]環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する感光性組成物であって、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤を含むことを特徴とする感光性組成物。
[7]上記光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むことを特徴とする上記[6]に記載の感光性組成物。
[8]上記感光性組成物の酸価は、0~5mgKOH/gであることを特徴とする上記[6]又は[7]に記載の感光性組成物。
[9]上記[6]~[8]のいずれかに記載の感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程と、該感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、該感光性組成物の硬化膜を得る工程と、を含むことを特徴とする感光性組成物の硬化方法。
[10]成形体の表面上に感光性組成物の硬化膜が積層された積層体の製造方法であって、上記[6]~[8]のいずれかに記載の感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程と、該感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、該感光性組成物の硬化膜を得る工程と、を含むことを特徴とする積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成形体と感光性組成物の硬化膜との密着性に優れた積層体を提供することができる。本発明の積層体は、光学部品又は光学部材等として特に好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0014】
1.積層体
本発明は、成形体と、上記成形体の表面上に積層された感光性組成物の硬化膜とを含む積層体であって、上記成形体は、環状オレフィン系樹脂を含み、上記硬化膜は、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する重合体を含むことを特徴とする積層体である。
【0015】
本発明の積層体において、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面上に積層された感光性組成物の硬化膜は、上記成形体への密着性に非常に優れる。本発明の積層体がそのような密着性に優れるのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、硬化膜の形成に使用されるラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートが疎水性であるため、環状オレフィン系樹脂を含む成形体表面との親和性が非常に良好であること、また、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートは比較的硬化収縮が小さく、低いガラス転移温度を有するため、硬化膜の柔軟性が非常に優れることから、密着性が非常に優れた硬化膜を形成することができると考えられる。
【0016】
<成形体>
上記成形体は、環状オレフィン系樹脂を含む。環状オレフィン系樹脂とは、主鎖に脂環構造を有するオレフィン系樹脂である。
上記環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンのホモポリマーであってもよいし、環状オレフィンとα-オレフィン等とのコポリマーであってもよいが、非晶性であるため透明性と寸法精度に優れる点で、環状オレフィンコポリマーであることが好ましい。
【0017】
上記環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、1-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン等のノルボルネン及びその誘導体や、テトラシクロドデセン、8-メチルテトラシクロ-3-ドデセン、5,10-ジメチルテトラシクロ-3-ドデセン等のテトラシクロドデセン及びその誘導体が挙げられる。なかでも、高耐熱、高防湿である点で、ノルボルネン及びその誘導体であることが好ましい。
【0018】
上記α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、1-ヘプテン等が挙げられる。なかでも、高耐熱である点で、炭素数1~4のα-オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好ましく、エチレンが更に好ましい。
【0019】
上記環状オレフィンコポリマーにおいて、上記環状オレフィン由来の構成単位の含有割合は、ポリマーを構成する全構成単位100質量%中50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0020】
上記環状オレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、Topas(登録商標)(ポリプラスチックス社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン社製)、及び、アペル(登録商標)(三井化学社製)等が挙げられる。
【0021】
上記成形体は、上記環状オレフィン系樹脂、又は、上記環状オレフィン系樹脂と他の添加剤を含む樹脂組成物を成形してなるものである。
【0022】
上記他の添加剤としては、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り特に限定されず、積層体の目的・用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、無機微粒子、反応性希釈剤、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、非反応性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、充填剤、カップリング剤、熱安定剤、防菌・防カビ剤、難燃剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、湿潤・分散剤、沈降防止剤、増粘剤・タレ防止剤、色分かれ防止剤、乳化剤、スリップ・スリキズ防止剤、乾燥剤、防汚剤、帯電防止剤、導電剤(静電助剤)等が挙げられる。これらの添加剤は、積層体の目的・用途に応じて、公知のものから適宜選択すればよい。上記添加剤の量は、公知技術に基づいて適宜設定することができる。
【0023】
上記成形体の成形方法としては、特に限定されず、射出成形、押出成形、Tダイ法、インフレーション法等の一般に熱可塑性樹脂の成形方法として公知の方法が挙げられる。また、キャスト法や塗布等の方法によって、所望の形状に成形してもよい。
【0024】
上記成形体の形状としては、特に限定されず、シート状、フィルム状、球状、レンズ状等、積層体の目的・用途に応じた任意の形状が挙げられる。
【0025】
<硬化膜>
本発明の積層体は、上記成形体の表面上に積層された感光性組成物の硬化膜を更に含む。上記硬化膜は、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する重合体を含む。
【0026】
上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構成単位(以下、構成単位(A)とも称する。)を有する重合体を含む硬化膜は、上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートを含む感光性組成物を硬化することにより得ることができる。なお、本明細書において、重合体における「構成単位」とは、重合体を構成する単量体由来等の「繰り返し単位」を意味する。
【0027】
上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートは、多価脂肪族アルコールがラクトン変性された構造を有し、かつ、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能の(メタ)アクリレートである。
【0028】
上記ラクトン変性とは、ラクトン化合物が開環付加した構造を有することを意味する。
上記ラクトン変性は、1分子のラクトン化合物が開環付加した構造であっても、2分子以上のラクトン化合物が開環付加した構造であってもよい。
上記多価脂肪族アルコールがラクトン変性された構造とは、例えば、多価脂肪族アルコールの水酸基の部位に、ラクトン化合物が開環付加した構造が好ましく挙げられる。
【0029】
上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価脂肪族アルコールと、ラクトン化合物と、(メタ)アクリル酸を含む原料成分を反応させて得られる化合物等が挙げられる。
【0030】
多価脂肪族アルコールとしては、特に限定されないが、例えばトリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
【0031】
ラクトン化合物としては、特に限定されないが、例えばβ-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、エナントラクトン、カプリロラクトン、ドデカノラクトン、これらのラクトンにメチル基等のアルキル基が1個以上置換したもの等が挙げられる。
【0032】
上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、硬化物のタック(粘着性)を抑制することができ、密着性をより一層向上させることができる点で、3官能以上が好ましく、6官能以上がより好ましい。一方、硬化収縮を低減できる点で、9官能以下が好ましく、8官能以下がより好ましい。
【0033】
上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートとしては、好ましくは、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【0035】
(一般式(1)中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、有機基を表す。Xは、一般式(2)で表される構造を表す。a及びcは、同一又は異なって、0~3の整数であり、bは、0~2の整数であり、nは、0~6の整数である。3≦a+bn+c≦9を満たす。
一般式(2)中、R4は、水素原子又はメチル基を表す。R5は、炭素数1~8の炭化水素基を表す。mは、1~3の整数である。)
【0036】
上記一般式(1)において、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、有機基を表す。上記有機基としては、鎖状若しくは環状の飽和又は不飽和の炭化水素基、及び、上記炭化水素基と共に-O-、-S-、-SO-、-SO2-等の結合を含む基が挙げられる。
【0037】
上記炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~15であり、更に好ましくは3~10である。上記炭化水素基は、一価であっても、二価以上であってもよい。
【0038】
上記鎖状若しくは環状の飽和又は不飽和の炭化水素基は、好ましくは鎖状の飽和炭化水素基である。
【0039】
鎖状の飽和炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。一価の飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基等のアルキル基が挙げられる。
【0040】
また、鎖状の不飽和炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。一価の不飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えばビニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基等のアルケニル基が挙げられる。
【0041】
また、環状の飽和炭化水素基としては、脂環式炭化水素基が挙げられる。一価の脂環式炭化水素基の具体例としては、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、シクロへプチル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルキル基の単環式炭化水素基;ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基、イソボルニル基等の多環式炭化水素基が挙げられる。
【0042】
二価の炭化水素基としては、例えば、上述した一価の炭化水素基から更に水素原子を一つ除去した二価の基が挙げられ、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基等が挙げられる。なかでも、上記二価の炭化水素基としては、アルキレン基が好ましい。
【0043】
上記炭化水素基は、炭化水素基を構成する原子の少なくとも1つが、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子に置換されていてもよい。
また、上記炭化水素基は、置換基を有する炭化水素基であってもよい。上記置換基を有する炭化水素基としては、例えば、上記炭化水素基を構成する水素原子の少なくとも一部が、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルキル基、ハロゲン原子等に置換された炭化水素基が挙げられる。
【0044】
上記炭化水素基と共に-O-、-S-、-SO-、-SO2-等の結合を含む基としては、例えば、-O-R-、-R-O-、-(R-O)p-R-(pは、1~10の整数である。)、-S-R-、-S-R-S-、-SO-R-、-R-SO-R-、-SO2-R-、-R-SO2-R-(いずれもRは、上記炭化水素基を表す。)等が挙げられる。なかでも、上記炭化水素基と共に-O-の結合を含む基が好ましい。
【0045】
上記有機基の炭素数は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、3以上であることが更に好ましい。また、上記有機基の炭素数は、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましく、9以下であることが更により好ましく、8以下であることが特に好ましい。
【0046】
上記一般式(1)中の[(XO)a-R1]-において、例えば、aが0の場合、R1は一価の有機基であり、aが1、2又は3の場合、R1は二価以上の有機基である。
R1で表される有機基は、鎖状の飽和炭化水素基、又は、鎖状の飽和炭化水素基と共に-O-、-S-、-SO-、若しくは-SO2-の結合を含む基であることが好ましく、鎖状の飽和炭化水素基、又は、鎖状の飽和炭化水素基と共に-O-若しくは-S-の結合を含む基であることがより好ましい。
R1で表される有機基の炭素数は、高架橋である点で、1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、3~10であることが更に好ましい。
【0047】
上記一般式(1)中の-[R3-(OX)c]において、例えば、cが0の場合、R3は一価の有機基であり、cが1、2又は3の場合、R3は二価以上の有機基である。
R3で表される有機基は、鎖状の飽和炭化水素基、又は、鎖状の飽和炭化水素基と共に-O-、-S-、-SO-、若しくは-SO2-の結合を含む基であることが好ましく、鎖状の飽和炭化水素基、又は、鎖状の飽和炭化水素基と共に-O-若しくは-S-の結合を含む基であることがより好ましい。
R3で表される有機基の炭素数は、高架橋である点で、1~20であることが好ましく、2~15であることがより好ましく、3~10であることが更に好ましい。
【0048】
上記一般式(1)において、R2としては、例えば下記の構造が挙げられる。
【0049】
【0050】
(式中、R6は、水素原子、置換基、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。)
上記R6で表される置換基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、アルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。上記R6で表される炭化水素基としては、上述した炭化水素基が挙げられ、なかでも、鎖状の飽和炭化水素基が好ましい。
【0051】
上記一般式(1)において、nは、0~6の整数であることが好ましく、0~3の整数であることが好ましい。
【0052】
上記一般式(1)において、a及びcは、同一又は異なって、0~3の整数であり、bは、0~2の整数であり、nは、0~6の整数である。3≦a+bn+c≦9を満たす。
a及びcは、同一又は異なって、1~3の整数であることがより好ましい。bは、0~1の整数であることがより好ましい。
上記一般式(1)において、6≦a+bn+c≦8が好ましく、a+bn+c=6がより好ましい。
【0053】
上記一般式(2)において、R4は、水素原子又はメチル基を表す。
R5は、炭素数1~8の炭化水素基を表す。
R5で表される炭化水素基としては、二価の炭化水素基が好ましい。上記二価の炭化水素基としては、上述した二価の炭化水素基と同様のものが挙げられ、なかでも、二価の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基がより好ましく、二価の飽和脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
R5で表される炭化水素基の炭素数は、1~10であることが好ましく、3~8であることがより好ましい。
mは、1又は2であることが好ましい。
【0054】
上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートとしては、より好ましくは、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【0056】
(一般式(3)中、Yは、一般式(4)で表される構造を表す。一般式(4)中、R7は、水素原子又はメチル基を表す。R8は、炭素数3~8の炭化水素基を表す。pは、1~3の整数を表す。)
【0057】
上記炭素数3~8の炭化水素基は、炭素数3~8の二価の炭化水素基であることが好ましい。上記二価の炭化水素基は、二価の飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、アルキレン基であることがより好ましい。
上記二価の炭化水素基の炭素数は、3~7であることがより好ましい。
【0058】
上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートは、合成物であってもよいが、市販品であってもよい。上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、KAYARAD DPCA-60、DPCA-120(いずれも日本化薬社製)等が挙げられる。
【0059】
上記構成単位(A)としては、上記一般式(2)のX中の-CR4=CH2により上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートが付加重合した構造であり、好ましくは下記一般式(5)で表される構造が挙げられる。
【0060】
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、a、b、c、n、及びmは、上述したものと同じである。)
【0061】
上記重合体は、上記構成単位(A)を1種のみ有していてもよいし、2種以上有していてもよい。
【0062】
上記構成単位(A)の含有割合は、上記硬化膜の密着性がより優れる点で、重合体の全構成単位100質量%中50~100質量%であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、55~70質量%であることが更に好ましい。
【0063】
上記重合体は、更に、脂環式単官能(メタ)アクリレート由来の構成単位(以下、構成単位(B)とも称する。)を有することが好ましい。上記脂環式単官能(メタ)アクリレート由来の構成単位(B)を更に有することにより、上記重合体の疎水性がより高くなり、上記硬化膜の密着性をより一層向上させることができる。また、上記硬化膜の強靭性を向上させることができる。
【0064】
上記構成単位(B)を有する重合体を含む上記硬化膜は、脂環式単官能(メタ)アクリレートを含む感光性組成物を硬化することにより得ることができる。
【0065】
上記脂環式単官能(メタ)アクリレートは、脂環式炭化水素基を有し、かつ、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレートである。
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、シクロへプチル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等の単環式炭化水素基;ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、トリシクロデカニル、アダマンチル、イソボルニル等の多環式炭化水素基が挙げられる。なかでも、上記硬化膜の密着性がより一層向上しうる点で、多環式炭化水素基が好ましく、近赤外線透過率が向上する点で、ジシクロペンタニル、トリシクロデカニル、アダマンチル、イソボルニル等の、不飽和結合を含まない多環式炭化水素基がより好ましい。
【0066】
上記脂環式炭化水素基は、脂環式炭化水素基を構成する少なくとも1の炭素原子が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等に置換されたものであってもよいし、上記炭化水素基を構成する少なくとも1の水素原子が、水酸基、アルキル基、アルコキシル基等に置換されたものであってもよい。
【0067】
上記脂環式炭化水素基の炭素数は、感光性組成物の硬化収縮を防ぎ、密着性をより一層向上させることができる点で、6以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましく、8以上であることが更に好ましい。また、上記脂環式炭化水素基の炭素数は、二重結合の反応を立体障害により阻害しない点で、20以下であることが好ましく、18以下であることがより好ましく、15以下であることが更に好ましい。
【0068】
上記脂環式単官能(メタ)アクリレートは、単独重合体(ホモポリマー)のガラス転移温度(Tg)が、100℃以上であることが好ましい。単独重合体のガラス転移温度が100℃以上である脂環式単官能(メタ)アクリレートを使用すると、耐熱性が向上して、硬化収縮を防ぐことができ、密着性をより一層向上させることができる。上記脂環式単官能(メタ)アクリレートは、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が120℃以上であることがより好ましい。上記単独重合体のガラス転移温度(Tg)の上限は、特に限定されないが、柔軟性を付与できる点で、200℃以下が好ましい。
【0069】
上記単独重合体のガラス転移温度(Tg)としては、POLYMER HANDBOOK(ポリマーハンドブック、第4版、Wiley Interscience、第6章、200頁等)、J.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook, 2nd Ed.,J.Wiley,New York 1975、光硬化技術データブック(テクノネットブックス社)等に記載の値を使用することができる。
【0070】
上記脂環式単官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
なかでも、ガラス転移温度が高く、上記脂環式炭化水素が脱離しにくい点で、上記脂環式単官能(メタ)アクリレートは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートであることが好ましく、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートであることがより好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートであることが更に好ましい。
【0072】
上記構成単位(B)の具体例としては、好ましくは下記一般式(7)で表される構造単位が挙げられる。
【0073】
【化6】
(式中、R
9は、水素原子又はメチル基を表す。R
10は、脂環式炭化水素基を表す。)
【0074】
上記重合体は、上記構成単位(B)を1種のみ又は2種以上有していてもよい。上記構成単位(B)の含有割合は、塗布性が良好である点で、上記重合体の全構成単位100質量%に対して、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは10~50質量%であり、更に好ましくは20~45質量%である。
【0075】
また、上記重合体は、上述した構成単位(A)及び(B)以外の他の構成単位(C)を有していてもよい。
上記他の構成単位(C)としては、上述したラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート及び脂環式単官能(メタ)アクリレートと重合可能な単量体由来の構成単位が挙げられ、具体的には、例えば、長鎖アルキル基含有単量体、水酸基含有単量体、エーテル基含有単量体、芳香族基含有単量体、N-置換マレイミド、アクリル系エーテルダイマー、又は、α-(アリルオキシメチル)アクリレート等の単量体由来の構成単位が挙げられる。
【0076】
上記重合体は、上記構成単位(C)を1種のみ又は2種以上有していてもよい。上記構成単位(C)の含有割合は、上記重合体の全構成単位100質量%に対して、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは0~15質量%であり、更に好ましくは0~10質量%である。
【0077】
上記重合体を含む硬化膜は、上記構成単位(A)を与える上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートと光重合開始剤等を含む感光性組成物を用いて形成することができる。上記硬化膜は、上記感光性組成物の硬化物である。上記感光性組成物を用いて上記硬化膜を形成する方法については、後述する積層体の製造方法において詳述する。
【0078】
上記硬化膜のガラス転移温度(Tg)は、40~110℃であることが好ましい。上記硬化膜のガラス転移温度が上述の範囲であると、密着性に優れる。上記ガラス転移温度が低いと、硬化膜の柔軟性が高くなりすぎて指紋が付着しやすい等の問題が生じるおそれがある。また、上記ガラス転移温度が高いと、硬化膜の硬度が高くなりすぎて、反り等により成形体を変形させるおそれがある。上記硬化膜のガラス転移温度は、密着性が特に優れる点で、より好ましくは40~100℃、更に好ましくは40~80℃である。
上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定(試料に加える周期的力の周波数を変えながらその応答を測定する)の方法により測定して得られる値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定して求めることができる。
【0079】
上記硬化膜の厚みは、積層体の目的・用途に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~400μm、更に好ましくは30~200μmである。
【0080】
本発明の積層体は、上述した成形体と硬化膜とを含むものであるが、更に、その他の層が積層されていてもよい。上記他の層としては、特に限定されず、積層体の目的・用途に応じて適宜公知の機能層等を積層することができる。更に、本発明の硬化膜は環状オレフィン系樹脂を含む成形体との密着性に優れるため、2つ以上の当該成形体同士を、硬化膜を介して接着することで、密着性に優れた積層体を得ることができる。
【0081】
上記積層体の近赤外線透過率は、好ましくは90%以上である。上記積層体の近赤外線透過率が上述の範囲であると、近赤外線透過性に優れる。上記積層体の近赤外線透過率は、より好ましくは92%以上であり、更に好ましくは95%以上である。
上記近赤外線透過率は、後述する実施例に記載の方法で測定して求めることができる。
【0082】
2. 積層体の製造方法
本発明の積層体を製造する方法としては、特に限定されないが、密着性に優れた積層体を効率良く製造することができる点で、上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程と、上記感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、上記感光性組成物の硬化膜を得る工程とを含むことが好ましい。このような、成形体の表面上に感光性組成物の硬化膜が積層された積層体の製造方法であって、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程と、上記感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、上記感光性組成物の硬化膜を得る工程とを含む積層体の製造方法もまた、本発明の一つである。
【0083】
上記積層体の製造方法は、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程を有する。
【0084】
上記環状オレフィン系樹脂を含む成形体としては、上述した成形体が挙げられる。
上記感光性組成物を上記成形体の表面に塗布する方法としては、特に限定されず、スピン塗布、スリット塗布、ロール塗布、流延塗布等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0085】
<感光性組成物>
上記硬化膜を形成するための感光性組成物について、説明する。
上記積層体の製造方法において使用する感光性組成物は、上述した構成単位(A)を与えるラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートを含む。
【0086】
上記感光性組成物における上記ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートの含有量は、適宜調整すればよいが、感光性組成物100質量%中、好ましくは27~95質量%、より好ましくは30~92質量%、更に好ましくは50~90質量%、より更に好ましくは55~70質量%である。
【0087】
上記感光性組成物は、更に、上述した脂環式単官能(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。上記脂環式単官能(メタ)アクリレートを含むことにより、上述した構成単位(B)を有する重合体を含む硬化膜を得ることができる。
【0088】
上記脂環式単官能(メタ)アクリレートの含有量は、適宜調整すればよいが、感光性組成物100質量%中、好ましくは0~70質量%、より好ましくは3~50質量%、更に好ましくは10~45質量%、より更に好ましくは20~40質量%である。
【0089】
また、上記感光性組成物は、上記他の構成単位(C)を与える単量体を含んでもよい。当該単量体の含有量は、適宜調整すればよく、感光性組成物100質量%中、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~15質量%、更に好ましくは0~10質量%である。
【0090】
(光重合開始剤)
上記感光性組成物は、硬化性が良好になる点で、光重合開始剤を含むことが好ましい。
上記光重合開始剤としては、特に限定されず、光重合開始剤として一般的に知られている化合物であれば使用できるが、なかでも、感光性組成物の硬化性がより一層良好となり、得られる硬化膜の密着性を更に向上させることができる点で、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。
【0091】
上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。
【0092】
なかでも、上記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、高活性である点で、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドであることが好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドであることがより好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドであることが更に好ましい。
【0093】
上記感光性組成物は、上記光重合開始剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0094】
上記光重合開始剤の含有量は、感光性組成物100質量%中0.1~5質量%であることが好ましく、0.2~3質量%であることがより好ましく、0.5~2質量%であることが更に好ましい。
【0095】
(重合禁止剤)
上記感光性組成物は、更に、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤を含むことにより、硬化膜の耐熱性を向上させることができる。
【0096】
上記重合禁止剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾキノン、ヒドロキノン類(例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、p-tert-ブチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン等)、フェノール類(例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、6-t-ブチル-2,4-ジメチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等)、カテコール類(例えば、p-tert-ブチルカテコール等)、アミン類(例えば、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン等)、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル、トリ-p-ニトロフェニルメチル、フェノチアジン、ピペリジン1-オキシル類(例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル等)等が挙げられる。なかでも、溶解度が高い点で、ベンゾキノン、ヒドロキノン類、フェノール類、アミン類、ピペリジン1-オキシル類が好ましく、ベンゾキノン、ヒドロキノン類、フェノール類、ピペリジン1-オキシル類がより好ましく、フェノール類、ピペリジン1-オキシル類が更に好ましい。
【0097】
上記感光性組成物は、上記重合禁止剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0098】
上記重合禁止剤の含有量は、特に限定されないが、上記硬化膜が着色するのを抑制する点で、感光性組成物100質量%中、好ましくは0.01~2質量%、より好ましくは0.02~1.5質量%、更に好ましくは0.05~1質量%である。
【0099】
上記感光性組成物は、必要に応じて、上述した成分以外に他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、上述した(メタ)アクリレート以外の他の重合性化合物;樹脂;溶剤;着色剤;分散剤;耐熱向上剤;レベリング剤;現像助剤;シリカ微粒子等の無機微粒子;シラン系、アルミニウム系、チタン系等のカップリング剤;フィラー;硬化助剤;可塑剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;艶消し剤;消泡剤;帯電防止剤;スリップ剤;表面改質剤;揺変化剤;揺変助剤;酸発生剤;光増感剤;光ラジカル重合促進剤;界面活性剤;等が挙げられる。上記感光性組成物は、これらの成分の1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。これらの成分は、公知のものから適宜選択して使用することができる。また、その使用量も適宜設定することができる。
【0100】
上記感光性組成物は、溶剤を含んでもよいが、溶剤を蒸発させる際に上記脂環式単官能(メタ)アクリレートも共に気化させてしまうおそれがある点で、溶剤を実質的に含まないことが好ましい。上記感光性組成物における溶剤の含有量は、感光性組成物100質量%中3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0101】
上記感光性組成物は、着色剤を含んでもよいが、硬化性が低下する点で、着色剤を実質的に含まないことが好ましい。上記着色剤としては、特に限定されず、着色剤として通常使用される公知の顔料や染料等が挙げられる。上記感光性組成物における着色剤の含有量は、感光性組成物100質量%中3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0102】
上記感光性組成物の酸価は、成形体表面との親和性が向上し、形成される硬化膜の密着性がより一層向上する点で、0~5mgKOH/gであることが好ましい。上記感光性組成物の酸価が上述の範囲であると、密着性がより良好となる。上記感光性組成物の酸価は、好ましくは0~4mgKOH/g、より好ましくは0~3mgKOH/gである。
【0103】
上記感光性組成物を調製する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、上述した各成分を、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の混合機や分散機を用いて混合分散する方法が挙げられる。
【0104】
上記積層体の製造方法は、次いで、塗布した感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、上記感光性組成物の硬化膜を得る工程を有する。
【0105】
上記活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、可視光を使用することができる。光源として、熱電子放射銃、電界放射銃等、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯、LED等を使用することができる。
【0106】
照射する活性エネルギー線量としては、特に限定されず、感光性組成物の組成や光重合開始剤の量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~10000mJ/cm2が好ましく、20~9000mJ/cm2がより好ましく、30~8000mJ/cm2がより好ましい。
【0107】
上記積層体の製造方法はまた、必要に応じて、加熱する工程を含んでもよい。例えば、上記活性エネルギー線の照射工程の前、後、又は、前後共に加熱工程を含んでもよい。例えば、上記感光性組成物が溶剤等の揮発成分を含む場合、上記揮発成分を除くために加熱(乾燥)工程を行ってもよい。また、上記感光性組成物に上記活性エネルギー線を照射した後に、後硬化工程として、加熱工程を行ってもよい。
【0108】
加熱条件は、特に限定されず、上記感光性組成物の組成に応じて、公知の方法から適宜設定することができる。加熱工程を複数回行う場合は、それぞれの加熱条件が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0109】
上記積層体の製造方法は、更に、他の公知の工程を含んでもよい。
【0110】
上記積層体の製造方法により、環状オレフィン系樹脂を含む成形体と、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート由来の構造単位(A)を有する重合体を含む硬化膜との密着性が非常に優れた積層体を効率良く製造することができる。
【0111】
また、上記のとおり、上述した感光性組成物を用いると、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に対する密着性が極めて優れた硬化膜を形成することができる。このような、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する感光性組成物であって、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレート、及び、光重合開始剤を含むことを特徴とする感光性組成物もまた本発明の一つである。
【0112】
上記感光性組成物は、上述のとおり、成形体の表面に対する密着性に優れ、特に環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に対する密着性に優れる。また、そのような感光性組成物の硬化膜を有する積層体は、信頼性にも優れ、近赤外線透過性にも優れる。そのため、上記感光性組成物は、光学用接着剤組成物として好適に使用することができる。
【0113】
また、上記のとおり、上述した感光性組成物を、基材である成形体の表面に塗布して、塗布した感光性組成物に活性エネルギー線を照射することにより、上記感光性組成物を硬化させることができる。このような、上記感光性組成物を、環状オレフィン系樹脂を含む成形体の表面に塗布する工程と、上記感光性組成物に活性エネルギー線を照射して、上記感光性組成物の硬化膜を得る工程と、を含むことを特徴とする感光性組成物の硬化方法もまた、本発明の一つである。
【0114】
3.用途
本発明の積層体は、上述のとおり、密着性に優れる。そのため、本発明の積層体は、優れた密着性が必要とされる用途に好適に使用することができる。また、本発明の積層体は、信頼性にも優れ、近赤外線透過性にも優れる。そのため、信頼性や近赤外線透過性が必要とされる用途にも好適に使用することができる。
【0115】
本発明の積層体の用途としては、例えば、光学フィルター、光学レンズ等の光学部材又は光学部品等が挙げられる。なかでも、光学部材又は光学部品が好ましく、光学レンズがより好ましく、複数の光学レンズを含むレンズユニットが更に好ましい。このような上記積層体を含むレンズユニットもまた本発明の一つである。
【0116】
以上のとおり、本発明の積層体は、基材である成形体の表面と硬化膜との密着性に極めて優れる。また、信頼性や近赤外線透過性にも優れる。そのため、本発明の積層体は、光学部材、光学部品等として好適に使用することができる。
【実施例0117】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0118】
本実施例において、各評価は下記の方法により行った。
【0119】
(硬化膜のガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス基板にPETフィルムを張り付け、その上に、実施例又は比較例の感光性組成物を塗布した。0.2mmのシリコンゴムをスペーサーとして用い、PETフィルムを張り付けたガラス基板で挟んだ。その後、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(TME-150RNS、TOPCON社製)によって6J/cm2の強度(365nm照度換算)で紫外線を照射した。紫外線照射後、PETフィルムとガラス基板を取り除き、得られた硬化物を長さ5cm、幅5mmに切断して、シート(硬化膜)を得た。このシートを動的粘弾性測定装置RSA-G2(TAインスツルメント社製)でGAP15mm、温度領域-50℃から200℃(昇温速度5℃)、周波数1Hzで貯蔵弾性率と損失弾性率、tan(δ)を測定し、tan(δ)の値が最大となる温度(℃)をTgとした。
【0120】
(近赤外線透過率)
ガラス基板に、実施例又は比較例の感光性組成物を、それぞれ膜厚200μmになるよう塗布した。0.2mmのシリコンゴムをスペーサーとして用い、フォトマスクをセットした。その後、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(TME-150RNS、TOPCON社製)を用いて6J/cm2の強度(365nm照度換算)で紫外線を照射した。紫外線照射後、フォトマスクを取り除き、5mm角のパターンを得た。リファレンスに同様のガラス基板を用い、分光光度計8454(アジレント・テクノロジー社製)で波長850nmの透過率(%)を測定した。
【0121】
(密着性)
環状オレフィン系樹脂のテストパネル(縦10cm×横10cm×厚み0.1cm)にバーコーターを用いて、実施例又は比較例の感光性組成物を、それぞれ膜厚50μmになるよう塗布し、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(TME-150RNS、TOPCON社製)を用いて6J/cm2の強度(365nm照度換算)で紫外線を照射した。紫外線照射後に得られた硬化膜について、JIS K5600-5-6:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第6節:付着性(クロスカット法)」に準拠して硬化膜の密着性を評価した。残膜存率が98%以上の場合に「5」、95%以上98%未満の場合に「4」、92%以上95%未満の場合に「3」、90%以上92%未満の場合に「2」、90%未満の場合に「1」とした。評価結果を表1に示す。
【0122】
(信頼性)
環状オレフィン系樹脂のテストパネル(縦10cm×横10cm×厚み0.1cm)にバーコーターを用いて、実施例又は比較例の感光性組成物を塗布した。0.2mmのシリコンゴムをスペーサーとして用い、フォトマスクをセットした。その後、2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナ(TME-150RNS、TOPCON社製)を用いて6J/cm2の強度(365nm照度換算)で紫外線を照射した。紫外線照射後、フォトマスクを取り除き、5mm角のパターンを得た。得られたサンプル(n数3)を冷熱衝撃装置で-40℃(0.5時間)、80℃(0.5時間)の冷熱サイクル試験を500サイクル行った。500サイクル後のパターンの剥がれの有無を目視にて確認し、下記の基準にて評価した。
[評価基準]
〇:剥がれ0個
△:剥がれ1~2個
×:剥がれ3個
【0123】
(実施例1~12、比較例1~4)
表1に示す配合となるように、多官能モノマー、単官能モノマー、光重合開始剤、及び、重合禁止剤を混合して、感光性組成物を得た。なお、表1の値は、質量(部)を表す。得られた感光性組成物を用いて、上述の方法にて、硬化膜のガラス転移温度、光透過性、積層体の密着性、及び、信頼性を評価した。結果を表1に示す。
【0124】
なお、表中1の記載は、下記のとおりである。
(多官能モノマー)
DPCA-60:ラクトン変性多価脂肪族アルコールのポリアクリレート(ラクトン 6mol付加)日本化薬社製KAYARADシリーズ
DPCA-120:ラクトン変性多価脂肪族アルコールのポリアクリレート(ラクトン 12mol付加)日本化薬社製KAYARADシリーズ
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
DCPA:ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート
A-9300:新中村化学社製:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート
UX-5000:日本化薬社製:6官能ウレタンアクリレート
【0125】
(単官能モノマー)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
511M:ジシクロペンテニルメタクリレート
513AS:ジシクロペンタニルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
【0126】
(光重合開始剤)
Irg819:Irgacure819(BASF社製)アシルフォスフィンオキサイド系
TPO:Lucirin 819(BASF社製)アシルフォスフィンオキサイド系
OXE02:Irgacure OXE02(BASF社製)N-オキシムエステル系
【0127】
(重合禁止剤)
W400:川口化学工業 アンテージW400
4HTEMPO:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル
【0128】
【0129】
表1より、ラクトン変性多価脂肪族アルコールの多官能(メタ)アクリレートを含む感光性組成物を用いて形成された硬化膜は、環状オレフィン系樹脂を含む基材に対する密着性に優れることがわかった。また、環状オレフィン系樹脂を含む基材上に形成された上記硬化膜は、信頼性にも優れることがわかった。更に、近赤外線透過率にも優れることがわかった。