(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102710
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61C 5/04 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B61C5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006782
(22)【出願日】2023-01-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年4月21日に東海旅客鉄道株式会社名古屋車両区へ搬入
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 剛
(57)【要約】
【課題】エンジンに取り付けられた過給機に排気管が接続する鉄道車両において、排気管の位置が変位した場合でも、排気ガスの漏れや、排気管あるいは過給機の破損を回避するように排気管を支持すること。
【解決手段】ディーゼルエンジン(3)と、ディーゼルエンジン(3)に取り付けられる過給機(6)と、過給機(6)に接続する排気管(5)と、を備える鉄道車両(1)において、排気管(5)をX軸方向に変位可能に支持する支持機構(10)を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに取り付けられる過給機と、前記過給機に接続する排気管と、を備える鉄道車両において、
前記排気管を一軸方向に変位可能に支持する支持機構を有する、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両において、
前記支持機構は、
前記エンジンに固定され、前記排気管が変位可能に挿通されるブラケットと、
前記排気管に一体に設けられたフランジと、
前記ブラケットと前記フランジとに係合され、前記フランジが前記ブラケットに対して平行移動するように前記フランジをガイドするガイド部材と、
前記フランジと前記ガイド部材との間に配置され、前記排気管の範囲に応じて弾性変形する第1弾性部材と、
を有する、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項3】
請求項2に記載する鉄道車両において、
前記ガイド部材は、
前記フランジから前記ブラケットに挿通される複数本のボルトと、
前記ブラケットから前記過給機側に突出する前記複数本のボルトに各々締結されるナットと、
を有し、
前記第1弾性部材は、前記フランジの前記過給機と反対側に配置され、前記複数本のボルトに各々圧縮した状態で配置されるコイルバネである、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載する鉄道車両において、
前記フランジと前記ブラケットとの間に配置され、前記排気管の熱収縮時に弾性変形する第2弾性部材を有する、
ように構成されている鉄道車両。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載する鉄道車両において、
前記排気管は、ベローズ部を含み、
前記支持機構は、前記過給機と前記ベローズ部との間で前記排気管を支持している、
ように構成されている鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示する技術は、エンジンと排気管が過給機を介して接続する鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両には、エンジンを搭載して非電化区間でも走行できるものがある(例えば特許文献1参照)。エンジンは、エンジンが発生する排気ガスを利用してエンジンに燃焼用空気を圧送する過給機を備え、その過給機に排気管が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両のエンジンが発生する排気ガスは、例えば、500℃と高温である。排気管は、鉄などの金属によって形成され、高温の排気ガスが流れる際に熱膨張する。排気管を支持する位置が固定されていると、過給機が熱膨張した排気管を押し付けられて破損する虞がある。
【0005】
排気管の熱膨張を吸収する方法として、排気管を分割し、排気管の分割部分を金属製のバンドで締め込んで接続する方法がある。しかし、この方法では、排気管と金属製のバンドとが高温の排気ガスによって熱膨張すると、排気管とバンドとの間に隙間が生じ、多大なガス漏れが生じてしまっていた。
【0006】
排気管の熱膨張を吸収する別の方法としては、排気管の一部にたわみ管を用いる方法がある。しかし、たわみ管は、排気管の熱膨張によって三次元方向に自由に変位する。この場合、排気管は、過給機に片持ち状に支持される状態になる。そのため、排気管と過給機との接続部分には、たわみ管の三次元方向の変位が曲げモーメントとなって作用し、過給機が破損する可能性があった。よって、過給機に接続する排気管を支持する構造には改善の余地がある。
【0007】
本明細書において開示する技術は、上記問題点を解決するためになされたものであり、エンジンに取り付けられた過給機に排気管が接続する鉄道車両において、排気管の位置が変位した場合でも、排気ガスの漏れや、排気管あるいは過給機の破損を回避するように排気管を支持できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において開示する技術の一態様は、(1)エンジンと、前記エンジンに取り付けられる過給機と、前記過給機に接続する排気管と、を備える鉄道車両において、前記排気管を一軸方向に変位可能に支持する支持機構を有する、ように構成されている。
【0009】
上記構成の鉄道車両は、排気管が、過給機に接続する部分と、支持機構に支持される部分とで支持されている。支持機構は、排気管を一軸方向に変位可能に支持している。そのため、例えば、排気管がエンジンから排出される排気ガスの熱によって熱膨張する場合、排気管と過給機との接続部分には一軸方向の力が作用し、排気管が片持ち状に支持された状態にならない。これにより、排気管と過給機との接続部分には、一軸方向の力が作用し、三次元方向の曲げモーメントが作用しないので、排気ガスが漏れたり、過給機が破損したりすることを回避できる。また、排気管が熱膨張時に自由に変位することができるので、排気管自体の破損も回避できる。よって、上記構成の鉄道車両によれば、排気ガスの漏れや、排気管あるいは過給機の破損を回避するように排気管を支持することができる。
【0010】
(2)(1)に記載する鉄道車両において、前記支持機構は、前記エンジンに固定され、前記排気管が変位可能に挿通されるブラケットと、前記排気管に一体に設けられたフランジと、前記ブラケットと前記フランジとに係合され、前記フランジが前記ブラケットに対して平行移動するように前記フランジをガイドするガイド部材と、前記フランジと前記ガイド部材との間に配置され、前記排気管の範囲に応じて弾性変形する第1弾性部材と、を有する、ことが好ましい。
【0011】
上記構成の鉄道車両は、排気管に一体に設けられたフランジと、エンジンに固定されたブラケットとにガイド部材が係合し、そのガイド部材がフランジをブラケットに対して平行移動するようにフランジを支持することにより、排気管がフランジとガイド部材とブラケットとを介してエンジンに支持されている。例えば、排気管が排気ガスによって熱膨張すると、フランジとガイド部材との間に配置される第1弾性部材が弾性変形し、排気管の変位を吸収する。そのため、排気管が熱膨張した際に、排気管と過給機との接続部分に作用する力が抑制され、排気ガスの漏れや過給機の破損が生じにくくなる。
【0012】
(3)(2)に記載する鉄道車両において前記ガイド部材は、前記フランジから前記ブラケットに挿通される複数本のボルトと、前記ブラケットから前記過給機側に突出する前記複数本のボルトに各々締結されるナットと、を有し、前記第1弾性部材は、前記フランジの前記過給機と反対側に配置され、前記複数本のボルトに各々圧縮した状態で配置されるコイルバネである、ことが好ましい。
【0013】
上記構成の鉄道車両は、支持機構を構成する部品が取り扱いやすく、支持機構の組み立て作業を簡素化できる。また、ボルトごとに設けられたコイルバネが、排気管に作用する外力に応じて個別に弾性変形するので、支持機構が一軸方向に一致させるように排気管の位置を調整しやすい。
【0014】
(4)(2)または(3)に記載する鉄道車両において、前記フランジと前記ブラケットとの間に配置され、前記排気管の熱収縮時に弾性変形する第2弾性部材を有する、ことが好ましい。
【0015】
上記構成の鉄道車両は、例えば寒冷地で使用され、排気管が熱収縮する場合に、第2弾性部材が排気管の熱収縮を吸収するので、過給機が排気管を必要以上の力で強く引っ張られて破損することを回避できる。
【0016】
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載する鉄道車両において、前記排気管は、ベローズ部を含み、前記支持機構は、前記過給機と前記ベローズ部との間で前記排気管を支持している、ことが好ましい。
【0017】
上記構成の鉄道車両は、排気管のベローズ部が、排気管の位置変動に応じて三次元方向に変位し、排気管の位置変動を吸収する。これにより、排気管と過給機との接続部分に作用する力が抑制される。さらに、排気管は、ベローズ部と過給機との間の部分が支持機構によって支持されるので、ベローズ部の三次元方向の変位が、排気管と過給機との接続部分に伝達されず、排気管と過給機との接続部分に曲げモーメントが作用しない。よって、上記鉄道車両によれば、排気ガスの漏れや、過給機の破損を回避できる。
【発明の効果】
【0018】
上記鉄道車両によれば、エンジンに取り付けられた過給機に排気管が接続する鉄道車両において、排気管の熱膨張時に、排気ガスの漏れや、排気管あるいは過給機の破損を回避できる技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】
図3に示す支持機構の拡大図であって、常温時における状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において開示する鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本明細書は、ディーゼルエンジンに過給機が取り付けられ、その過給機に排気管が接続する鉄道車両について開示する。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。以下の説明において、軌道方向をX軸方向、枕木方向をY軸方向、車体高さ方向をZ軸方向として説明する。
図1に示されるように、鉄道車両1の車体2は、床面をなす台枠11と、台枠11のX軸方向の一方の端部に立設されることで車体2の先頭部をなす前面妻構体12と、台枠11の他方の端部に立設されることで車体2の連結部をなす連妻構体15と、台枠11のY軸方向の両端部に立設されることで車体2の側面をなす側構体13と、前面妻構体12,連妻構体15および側構体13の上端部に配置されることで車体2の屋根をなす屋根構体14とにより6面体をなすように構成される。そして、車体2は、枕ばね18を介して、車輪17を備えた台車16によって支持されている。
【0022】
側構体13には、乗務員室に通じる乗務員乗降口20A、客室に通じる乗客乗降口20Bおよび窓20Cが設けられている。また、台枠11のX軸方向の両端部には、前面妻構体12および連妻構体15よりも車両長手方向の外方に突出するように連結器19が設けられており、隣接する鉄道車両同士を連結することが可能である。また、鉄道車両1は駆動源として、ディーゼルエンジン3を備えており、該ディーゼルエンジン3は、台枠11に吊り下げられている。ディーゼルエンジン3は、燃焼用空気とディーゼル燃料との混合ガスを圧縮して爆発させることにより駆動力を発生する装置である。ディーゼルエンジン3はエンジンの一例である。
【0023】
図2は、配管構造を示す側面図である。
図3は、配管取付構造を示す図であって、
図2に示す配管構造を下方から見た図である。ディーゼルエンジン3には、過給機6が取り付けられている。
図3に示すように、過給機6は、取付ブラケット64を介してディーゼルエンジン3の側面に片持ち状に突出して配置されている。過給機6は、ブースト圧に対して最低限の強度で設けられることによって質量が抑制され、取付ブラケット64が小型軽量化されている。
【0024】
図2および
図3に示す過給機6は、コンプレッサハウジング61とタービンハウジング62とがシャフトカバー63を介して連通している。
図2に示すように、コンプレッサハウジング61は、ディーゼルエンジン3に燃焼用空気を供給する供給流路32上に配設されている。すなわち、コンプレッサハウジング61は、第1給気管7を介して図示しない冷却装置に接続し、第2給気管4を介してディーゼルエンジン3の図示しない給気口に接続している。コンプレッサハウジング61は、コンプレッサホイール65を内蔵している。
【0025】
タービンハウジング62は、ディーゼルエンジン3が発生した排気ガスを車外へ排気する排気流路33上に配設されている。すなわち、タービンハウジング62は、ディーゼルエンジン3の図示しない排気口と、排気管5とに接続している。タービンハウジング62は、タービンホイール66を内蔵している。コンプレッサホイール65とタービンホイール66とは、シャフト67を介して連結されている。シャフト67は、シャフトカバー63によって覆われている。
【0026】
タービンハウジング62は、排気管5が接続される接続ブラケット62aを有する。排気管5は、接続ブラケット62aから斜め下方に下がった後、X軸方向に沿って車体後端部まで伸びる構造となっている。排気管5は、複数に分割されており、中継管51と、たわみ管52とを含む。
【0027】
たわみ管52は、波形のベローズ部52cを有する。ベローズ部52cは、車両走行時の振動などによる排気管5の位置変動に応じて三次元方向に自由に変位し、排気管5の位置変動を吸収することができる。
【0028】
中継管51は、過給機6とたわみ管52との間に配置されている。中継管51は、第1接続部51aと第2接続部51bとが両端部に設けられている。第1接続部51aと第2接続部51bとは、異なる高さで反対向きに開口している。中継管51は、第1接続部51aに接続する第1ストレート部51dと、第2接続部51bに接続する第2ストレート部51fとが平行な位置関係で設けられ、第1ストレート部51dと第2ストレート部51fとが斜め部51eを介して接続されている。
【0029】
中継管51の第1接続部51aは、過給機6の接続ブラケット62aに対してX軸方向に沿って接続されている。中継管51の第2接続部51bは、たわみ管52の接続部52bに対してX軸方向に沿って付き合わされ、連結ボルト53を用いて接続部52bと連結されている。
【0030】
中継管51は、第1接続部51a側の端部が過給機6を介してディーゼルエンジン3に支持され、第2接続部51b側の端部が支持機構10を介してディーゼルエンジン3に支持されている。支持機構10は、中継管51を一軸方向に変位可能に支持している。本実施形態において、一軸方向はX軸方向である。例えば、一軸方向は、排気管5あるいは中継管51を過給機6に接続する方向であり、本実施形態ではシャフト67の延在方向と略平行である。
【0031】
支持機構10の構成について説明する。
図4は、
図3に示す支持機構10の拡大図であって、常温時における状態を示す図である。支持機構10は、ブラケット108と、フランジ109と、ガイド部材100と、コイルバネ104と、皿バネ105,106と、を備えている。ガイド部材100は、4本のフランジボルト101と、各フランジボルト101に締結されるダブルナット102とを含む。フランジボルト101はボルトの一例である。ダブルナット102はナットの一例である。コイルバネ104は第1弾性部材の一例である。皿バネ105および皿バネ106は第2弾性部材の一例である。
【0032】
ブラケット108は、板状をなし、ディーゼルエンジン3の側面からY軸方向に突出するようにディーゼルエンジン3に固定されている。ブラケット108は、中継管51の第2ストレート部51fが挿通される挿通穴を備え、その挿通穴の内径寸法は、第2ストレート部51fの外径寸法より大きく設定されている。よって、中継管51はブラケット108に対してX軸方向に変位可能に挿通されている。
【0033】
フランジ109は、中継管51の第2ストレート部51fに外径方向に突き出す状態で一体に設けられている。本実施形態のフランジ109は、リング状の板材であり、第2ストレート部51fの外周面に溶接されている。フランジ109は、第2ストレート部51が挿通できればよく、フランジ109の外形形状は、円形状でも、角形状でもよい。フランジ109は、
図2および
図3に示すように、ブラケット108を挟んで過給機6と反対側となる位置に配置され、ブラケット108に係止されることにより中継管51が過給機6側へ移動することを制限する。
【0034】
図4に示すように、ガイド部材100は、フランジ109とブラケット108とに係合されている。ガイド部材100は、フランジ109がブラケット108に対して平行移動するようにフランジ109をガイドしている。ガイド部材100は、4本のフランジボルト101と、各フランジボルト101に締結されるダブルナット102と、を含む。本実施形態は、排気管5(第2ストレート部51f)の周方向に沿って4本のフランジボルト101が均等に配置されている。
【0035】
フランジボルト101は、それぞれ、頭部101aと軸部101bとを備える。フランジボルト101は、フランジ109からブラケット108へ軸部101bが貫き通されている。ダブルナット102は、フランジ109から過給機6側に突き出す軸部101bに対して、座金103を介して螺合されている。
【0036】
コイルバネ104は、フランジボルト101にそれぞれ装着されている。コイルバネ104は、フランジボルト101の頭部101aとフランジ109との間に縮設されている。
図4の矢印F2に示すように、フランジ109は、コイルバネ104によって過給機6の方向(図面右方向)に付勢され、皿バネ105,106を介してブラケット108に突き当てられている。また、4本のフランジボルト101は、コイルバネ104によって、フランジ109とブラケット108との間にX軸に対して平行に架設されている。
【0037】
排気管5の質量による荷重は、図中F3に示すように、ダブルナット102からブラケット108に伝達され、さらに、図中F4に示すようにディーゼルエンジン3に伝達される。よって、中継管51は、フランジ109、コイルバネ104、フランジボルト101、ダブルナット102、ブラケット108を介してディーゼルエンジン3に支持されている。中継管51は、コイルバネ104を弾性変形させることで、4本のフランジボルト101にガイドされてX軸方向に変位することができる。
【0038】
皿バネ105および皿バネ106は、フランジボルト101にそれぞれ装着されている。皿バネ105および皿バネ106は、中央部が外縁部より突出する凹形状をなし、中央部に軸部101bを挿通するための穴が設けられている。皿バネ105は、外縁部がフランジ109に当接するように配置されている。皿バネ106は、外縁部がブラケット108に当接するように配置されている。皿バネ105および皿バネ106は、常温時に変形しない状態で突出部分を背中合わせで接触させるように、フランジ109とブラケット108との間に配置されている。よって、ブラケット108とフランジ109とは、常温時、所定の間隔W1を空けて配置されている。これにより、中継管51は、所定の間隔W1だけX軸方向に沿って過給機6側(図中右方向)に変位することが可能である。
【0039】
ここで、鉄道車両1用のディーゼルエンジン3の排気量は、例えば1万4000ccと普通自動車より大きく、排気管5は普通自動車より太くて重い。このような鉄道車両1では、例えば、1本のフランジボルト101に作用するコイルバネ104のバネ荷重が、常温時110Nに設定されている。例えば、中継管51が熱膨張によりコイルバネ104に抗して過給機2と反対側に2mm変位した時、1本のフランジボルト101に作用するコイルバネ104のバネ荷重は130Nとなる。フランジ109とブラケット108は、このようなバネ荷重によって変形しないように、板厚が設置されている。例えば,フランジ109の板厚は6mmに設定され、ブラケット108の板厚は12mmに設定されている。
【0040】
続いて、鉄道車両1の動作について説明する。
図1に示す鉄道車両1は、例えばディーゼルエンジン3が駆動されると、所定の空燃比で燃焼用空気とディーゼル燃料とがディーゼルエンジン3に供給される。ディーゼルエンジン3は、燃焼用空気とディーゼル燃料との混合ガスを圧縮して爆発させ、駆動力を発生する。ディーゼルエンジン3が発生した駆動力は、台車16の車輪17に伝達され、鉄道車両1が走行する。ディーゼルエンジン3が発生した排気ガスは車外に排出される。
【0041】
この場合において、ディーゼルエンジン3が発生した排気ガスは、
図2に示す過給機6を介して排気管5に排出される。過給機6は、ディーゼルエンジン3から排気管5へ流れる排気ガスの圧力によってタービンホイール66が回転する。これにより、コンプレッサホイール65が回転する。コンプレッサホイール65の回転によって、第1給気管7からコンプレッサホイール65へ流入した燃焼用空気が圧縮され、第2給気管4を介してディーゼルエンジン3へ供給される。ディーゼルエンジン3は、過給機6を用いない場合と比べ、燃焼用空気が増加し、出力効率が向上する。よって、ディーゼルエンジン3は、同じ出力のエンジンと比べ、コンパクトかつ軽量である。
【0042】
ディーゼルエンジン3は、混合ガスの爆発によって発生した排気ガスを、タービンハウジング62を介して排気管5に排出する。排気ガスは、例えば、500℃もの高温になる。金属製の中継管51やたわみ管52を含む排気管5は、そのような高温の排気ガスが流れると、熱膨張する。
【0043】
中継管51の第1接続部51a側の端部は、過給機6に接続され、過給機6の取付ブラケット64を介してディーゼルエンジン3に支持されている。一方、中継管51の第2接続部51b側の端部は、たわみ管52に接続されている。そのため、中継管51は、熱膨張時、
図5の矢印F11に示すように、過給機6と反対向き(図中左向き)に変位しようとする。
【0044】
ガイド部材100の4本のフランジボルト101は、それぞれ、フランジボルト101の頭部101aとフランジ109との間に縮設されるコイルバネ104のバネ力によって、ダブルナット102をブラケット108に突き当て、X軸に対する平行状態を維持している。そのため、
図5の矢印F12に示すように、熱膨張する中継管51は、4本のフランジボルト101にガイドされて、コイルバネ104を圧縮しながらX軸方向に沿って過給機6と反対向き(
図5の図中左向き)に変位する。これにより、フランジ109とブラケット108との間隔W2は、常温時の所定の間隔W1(
図4参照)より広くなり、各フランジボルト101に装着した皿バネ105と皿バネ106とが離間する。
【0045】
中継管51の熱膨張に基づく変位がコイルバネ104によって吸収されるので、中継管51と過給機6との接続部分に作用する力が抑制される。また、中継管51は、熱膨張する間も常温時と同様に支持機構10を介してディーゼルエンジン3に支持され、X軸方向に沿って図中左方向に変位することがきる。これにより、中継管51と過給機6との接続部分にはX軸方向の力が作用して、曲げモーメントが作用しないので、排気ガスの漏れや、接続ブラケット62aの破損が回避される。
【0046】
また、中継管51とたわみ管52とを含む排気管5が熱膨張時に自由に変位することができるので、排気管5は、例えば、中継管51とたわみ管52とが熱膨張によって過剰な力で押し合って破損することを回避できる。
【0047】
本実施形態では、支持機構10が中継管51を変位可能に支持する方向が、中継管51(排気管5)が過給機6の接続ブラケット62aに接続される接続方向と一致している。そのため、排気管5が熱膨張する場合に、中継管51と過給機6との接続部分は、ブースト圧以外に作用する力が小さくなり、過給機6の接続ブラケット62aが破損しにくい。
【0048】
鉄道車両1は、例えば、ディーゼルエンジン3が停止され、排気ガスが排気管5を流れなくなると、熱膨張した排気管5が外気によって冷却され、収縮する。この場合、中継管51の熱収縮に応じてコイルバネ104が伸張する。中継管51は、一体に設けたフランジ109が4本のフランジボルト101によってブラケット108に対して平行移動可能に支持されているので、X軸方向に沿って過給機6に向かって(
図5の図中右向き)に変位する。
【0049】
図4に示すように、中継管51は、皿バネ105と皿バネ106とが当接すると、フランジ109が皿バネ105と皿バネ106を介してブラケット108に係止される。これにより、中継管51が初期位置に自動的に復帰し、過給機6は、必要以上の力で排気管5を押し付けられない。排気管5は、収縮する際に自由に変位できるので、中継管51とたわみ管52との突き合わせ部分に余分な力が作用しない。
【0050】
よって、鉄道車両1は、排気管5が熱膨張と熱収縮を繰り返しても、継管51と過給機6との接続部分あるいは排気管5が破損しにくく、排気ガスが漏れにくい。
【0051】
続いて、鉄道車両1が寒冷地で使用される場合について説明する。鉄道車両1は、例えば外気温が-18℃の寒冷地で使用される場合、中継管51とたわみ管52とを含む排気管5が熱収縮する。
【0052】
図4に示すように、常温時、フランジ109とブラケット108は、皿バネ105と皿バネ106とを介して所定の間隔W1を空けて配置されている。そのため、熱収縮する中継管5は、皿バネ105および皿バネ106をフランジ109とブラケット108との間で押し潰して弾性変形させながら、
図6のF21に示すように、過給機6に向かって(
図6の図中右方向)に変位することができる。これにより、フランジ109とブラケット108との間隔W3が常温時の所定の間隔W1(
図4参照)より小さくなる。
【0053】
この際、フランジボルト101の頭部101aとフランジ109との間に縮設されたコイルバネ104は、図中F22に示すように、フランジ109の変位に応じて伸張するものの、フランジ109を過給機6の方向(
図6の図中右向き)に付勢するバネ力の反作用として、フランジボルト101の頭部101aを過給機6と反対向き(
図6の図中左向き)に付勢するバネ力を有している。そのため、4本のフランジボルト101は、それぞれ、ダブルナット102がコイルバネ104のバネ力によってブラケット108に押し付けられ、X軸に対する平行状態を維持している。よって、中継管51は、寒冷地で使用されて熱収縮する場合も、X軸方向に沿って変位する。
【0054】
中継管51の熱収縮に基づく変位が皿バネ105および皿バネ106によって吸収されるので、中継管51と過給機6との接続部分に作用する力が抑制される。また、
図6のF21に示すように、中継管51が支持機構10に支持されてX軸方向に沿って過給機6に向かって(図中右方向に)変位するので、中継管51と過給機6との接続部分に曲げモーメントが作用せず、排気ガスの漏れや過給機6の破損を回避できる。また、中継管51とたわみ管52とを含む排気管5が熱収縮時に自由に変位することができるので、例えば、中継管51とたわみ管52との突き合わせ部分に離間方向の力が過剰に作用せず、中継管51やたわみ管52や連結ボルト53の破損が回避される。
【0055】
皿バネ105および皿バネ106がフランジ109とブラケット108との間で完全に押し潰されると、中継管51は、フランジ109を介してブラケット108に係止され、それ以上過給機6側へ変位できなくなるが、熱収縮による寸法変化の大半を吸収でき、過給機6が熱収縮する中継管51により過剰に引っ張られて破損することが回避される。
【0056】
例えば、-18℃まで冷却された排気管5は、温められると、熱膨張する。この場合、中継管51は、4本のフランジボルト101にガイドされて、X軸方向に沿って過給機6と反対向き(
図6の図中左向き)に変位する。皿バネ105と皿バネ106は、フランジ109から付与される力が緩和されることにより元の形状に戻る。これにより、中継管51は、フランジ109とブラケット108とを所定の間隔W1を空けて配置する初期位置に自動復帰する。この場合も、中継管51と過給機6との接続部分は、曲げモーメントが作用しないので、排気ガスの漏れや過給機6の破損を回避することができる。
【0057】
また、中継管51とたわみ管52とを含む排気管5が熱膨張時に自由に変位することができるので、排気管5は、例えば、中継管51とたわみ管52とが熱膨張によって過剰な力で押し合って破損することを回避できる。
【0058】
ところで、排気管5が熱膨張や熱収縮によって位置変動する場合、たわみ管52がベローズ部52cを三次元方向に変位させて排気管5の位置変動を吸収する。これにより、排気管5の位置変動によって、排気管の接続部分からガス漏れが生じることが回避できる。
【0059】
たわみ管52と過給機6との間には中継管51が配置されている。中継管51を支持する支持機構10は、たわみ管52の三次元方向の変位に基づいて、フランジボルト101に各々装着されているコイルバネ104が弾性変形する。これにより、支持機構10は、中継管51の位置をX軸に沿った方向にのみ調整することができる。中継管51と過給機6との接続部分は、たわみ管52の三次元方向の変位が伝達されないので、たわみ管52の変位に基づく曲げモーメントが作用せず、排気ガスの漏れや過給機6の破損を回避することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の鉄道車両1は、排気管5が、過給機6に接続する部分と、支持機構10に支持される部分とで支持されている。支持機構10は、排気管5をX軸方向に変位可能に支持している。そのため、例えば、排気管5がディーゼルエンジン3から排出される排気ガスの熱によって熱膨張する場合、排気管5と過給機6との接続部分にはX軸方向の力が作用し、排気管5が片持ち状に支持された状態にならない。これにより、排気管5と過給機6との接続部分には、X軸方向の力が作用し、三次元方向の曲げモーメントが作用しないので、排気ガスが漏れたり、過給機6が破損したりすることを回避できる。また、排気管5が熱膨張時に自由に変位することができるので、排気管5自体の破損も回避できる。よって、本実施形態の鉄道車両によれば、排気ガスの漏れや、排気管5あるいは過給機6の破損を回避するように排気管5を支持することができる。
【0061】
本明細書に開示される実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本明細書に開示される技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、駆動源は、ディーゼルエンジン3に限らず、ガソリン、灯油などディーゼル燃料と異なる燃料を用いて駆動力を発生する装置であってもよい。また、駆動源は、例えば、ディーゼルエンジンと発電機とを組み合わせたハイブリッド型のエンジンであってもよい。
【0062】
また、フランジボルト101の数や配置は上記実施形態に限定されない。また、排気管5のレイアウトは、本実施形態に限定されない。例えば、排気管5は、過給機6の接続ブラケット62aから斜め上方に上がった後、台枠11の下面に沿ってX軸方向に配置されてもよい。また、排気管5は、過給機6の接続ブラケット62aからX軸方向に真っ直ぐ配置されていてもよい。
【0063】
また、1本のフランジボルト101に対して配置される皿バネは、2個に限らず、1個でも3個以上でもよい。皿バネ105と皿バネ106は、コイルバネなどの別種類の弾性部材であってもよい。ただし、皿バネを使用することで、支持機構10の構造がコンパクトになる。
【0064】
また、コイルバネ104は、フランジボルト101ごとに配置されていなくてもよい。例えば、複数のフランジボルト101の頭部101aのフランジ109側に当接するリング状の部材を設けて当該リング状部材とフランジ109との間に、1個のコイルバネが中継管51の外周に沿って配置されてもよい。ただし、コイルバネ104がフランジボルト101ごとに配置され、排気管5に作用する外力に応じて個別に弾性変形するようにすれば、支持機構10が一軸方向に一致させるように中継管51の位置を調整しやすい。
【0065】
また、支持機構10のガイド部材100は、ブラケット108に複数本のガイド軸を一体に立設し、そのガイド軸をフランジ109に挿通し、固定部材をガイド軸に各々固定することにより構成されていてもよい。ただし、ガイド部材100が、複数本のフランジボルト101と、複数本のフランジボルト101に各々締結されるダブルナット102によって構成されることで、支持機構10を構成する部品が取り扱いやすく、支持機構10の組み立て作業を簡素化できる。
【0066】
また、皿バネ105,106は省略してもよい。ただし、フランジ109とブラケット108との間に皿バネ105,106が弾性変形可能に配置されることにより、例えば鉄道車両1が寒冷地で使用され、排気管5が熱収縮する場合に、皿バネ105と皿バネ106とが排気管5(中継管51)の熱収縮を吸収するので、排気管5が過給機6を強く引っ張って過給機6を破損させることを防止できる。
【0067】
また、排気管5は、ベローズ部52cを含まなくてもよい。ただし、排気管5がベローズ部52cを含むことで、ベローズ部52cが、排気管5の位置変動に応じて三次元方向に変位し、排気管5の位置変動を吸収する。これにより、排気管5(中継管51)と過給機6との接続部分に作用する力が抑制される。さらに、排気管5は、ベローズ部52cと過給機6との間の部分が支持機構10によって支持されることで、ベローズ部52cの三次元方向の変位が、排気管5と過給機6との接続部分に伝達されず、排気管5と過給機6との接続部分に曲げモーメントが作用しない。このような鉄道車両1によれば、排気ガスの漏れや、過給機の破損を回避できる。
【0068】
また、フランジ109は、複数枚のフランジ片により構成されてもよい。例えば、中継管51は、第2ストレート部51fの外周面に対して、4枚の板状のフランジ片がフランジボルト101を配置する位置に第2ストレート部51fの外径方向に突き出す状態でそれぞれ溶接等で固定されていてもよい。この場合、フランジは、中継管51の外周面に断続的に配置される4枚のフランジ片により構成される。ただし、フランジが中継管51の第2ストレート部51fを挿通可能なリング状をなし、第2ストレート部51fの外周面に沿って連続的に配置されるようにすれば、コイルバネ104からフランジに作用する力や排気管5の変位に基づいてフランジに作用する力がフランジ全体に分散される。その結果、フランジと第2ストレート部51fとの接続部分にかかる負荷が小さくなり、フランジの破損が抑制される。また、複数枚のフランジ片を固定する場合、中継管51に対する位置合わせや溶接などに手間がかかるが、リング状のフランジ片であれば、そのような手間が軽減される。
【符号の説明】
【0069】
1 鉄道車両
3 ディーゼルエンジン(エンジンの一例)
5 排気管
6 過給機
10 支持機構
100 ガイド部材
101 フランジボルト(ボルトの一例)
102 ダブルナット(ナットの一例)
104 コイルバネ(第1弾性部材の一例)
105 皿バネ(第2弾性部材の一例)
106 皿バネ(第2弾性部材の一例)
108 ブラケット
109 フランジ