IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 五洋建設株式会社の特許一覧 ▶ 東洋建設株式会社の特許一覧 ▶ 東亜建設工業株式会社の特許一覧 ▶ 若築建設株式会社の特許一覧 ▶ あおみ建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社本間組の特許一覧 ▶ みらい建設工業株式会社の特許一覧 ▶ りんかい日産建設株式会社の特許一覧

特開2024-102714夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム
<>
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図1
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図2
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図3
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図4
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図5
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図6
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図7
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図8
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図9
  • 特開-夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102714
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/02 20060101AFI20240724BHJP
   E02B 3/06 20060101ALI20240724BHJP
   E02B 3/12 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
E02D23/02 Z
E02B3/06
E02B3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006788
(22)【出願日】2023-01-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所「革新的社会資本整備研究開発推進事業」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000182030
【氏名又は名称】若築建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000172961
【氏名又は名称】あおみ建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000155034
【氏名又は名称】株式会社本間組
(71)【出願人】
【識別番号】390001993
【氏名又は名称】みらい建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503275129
【氏名又は名称】りんかい日産建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲也
(72)【発明者】
【氏名】合田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】三枝 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】壹岐 直之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健
(72)【発明者】
【氏名】山本 高士
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
(72)【発明者】
【氏名】合田 和弘
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA02
2D118BA01
2D118CA03
2D118FA06
2D118FB12
2D118GA01
(57)【要約】
【課題】捨石マウンドの空隙内の夾雑物を除去する。
【解決手段】ケーシング60は、捨石マウンド3の天端面30から挿入されて捨石マウンド3を削孔し、孔Aを形成する。吸引管1は、ケーシング60が削孔した孔Aに挿入される。吸引ポンプP1は、吸引管1を経由して海水とともに捨石マウンド3の空隙内の夾雑物を吸引する。噴射管2は、吸引管1に隣接して、又は吸引管1の内側に設置される。噴射ポンプP2は、噴射管2を経由してノズル20から高圧水を噴射させる。駆動装置5は、ノズル20が噴射管2の中心軸を基準に周方向に回転するように、噴射管2を回転させる。また、駆動装置5は、噴射管2を長手方向に沿って昇降させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の捨石マウンドに吸引管を挿入し、前記吸引管の先端の開口部から水とともに前記捨石マウンドの空隙内の夾雑物を吸引する夾雑物吸引方法。
【請求項2】
前記捨石マウンドにおいて挿入された前記吸引管の前記開口部に隣接して又は前記吸引管の内側に高圧水を噴射するノズルを備えた噴射管を設置し、前記吸引管により前記夾雑物を吸引する際に、前記ノズルより高圧水を前記捨石マウンド内に噴射する
請求項1に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項3】
挿入される前記吸引管の吸引によって夾雑物が除去される空間を設定し、該吸引管の前記開口部が前記空間の底面よりも決められた距離だけ深い位置に配置されるように該吸引管を挿入し、前記夾雑物を吸引する
請求項1又は2に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項4】
前記捨石マウンドをケーシングにより削孔し、前記ケーシングで削孔した孔に前記噴射管を挿入して、前記孔の先端で該噴射管により前記高圧水を噴射する
請求項2に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項5】
直上に構造物が載置されている前記捨石マウンドを、該構造物を避けつつ、該捨石マウンドの内部において孔が該構造物の直下まで形成されるように、前記ケーシングで削孔する
請求項4に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項6】
前記ケーシングによって削孔された前記孔に該ケーシングを留置して前記吸引管として用いる
請求項4又は5に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項7】
前記ケーシングによって削孔された前記孔に前記噴射管とともに前記吸引管を挿入する
請求項4又は5に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項8】
前記ノズルが前記噴射管の中心軸を基準に周方向に回転するように、駆動装置によって該噴射管を回転させる
請求項2に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項9】
駆動装置により前記噴射管を該噴射管の長手方向に沿って昇降させる
請求項7に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項10】
前記高圧水の噴射範囲、噴射圧、噴射量の少なくとも一つを用いて前記夾雑物の除去範囲を調整する
請求項2に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項11】
前記吸引管を通って吸引される水に対して、該水とともに吸引される前記夾雑物の割合を測定し、測定された該割合に基づいて前記噴射管による高圧水の噴射量を調整する
請求項2に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項12】
測定された前記割合が閾値未満になったときに前記吸引管による吸引を停止する
請求項11に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項13】
前記吸引管が吸引した前記夾雑物を貯留する貯留タンクを設け、
前記貯留タンク内に蓄積した前記夾雑物の重量に応じて前記吸引管による吸引を停止する
請求項2に記載の夾雑物吸引方法。
【請求項14】
既設の捨石マウンドに挿入される吸引管と、
前記吸引管に隣接して又は前記吸引管の内側に設置される噴射管と、
前記吸引管を経由して水とともに前記捨石マウンドの空隙内の夾雑物を吸引する吸引ポンプと、
前記噴射管を経由して該噴射管のノズルから高圧水を噴射させる噴射ポンプと、
前記捨石マウンドを削孔して前記吸引管を挿入する孔を形成するケーシングと、
前記吸引ポンプの吸引力と前記噴射ポンプの噴出力を調整する調整機と、
前記ノズルが前記噴射管の中心軸を基準に周方向に回転するように、該噴射管を回転させる駆動装置と、
を備えた、捨石マウンド内夾雑物吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、夾雑物吸引方法、及び捨石マウンド内夾雑物吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新造されるコンテナ船等の船舶は、大型化する傾向にある。そして、船舶の大型化に伴って、既存の係船港の岸壁を増深する事例が増加している。重力式係船岸増深工法は、既設の捨石マウンドの一部に可塑状グラウト材等の固化材を注入・固化することで、法線位置を変更せずに重力式係船岸の増深を可能とする工法である。
【0003】
一方、既設の捨石マウンドは、築造後の年月の長短に関わらず捨石間の空隙に砂、粘土、貝殻等の夾雑物が多量に存在することがある。捨石マウンドの空隙内に夾雑物が多量に存在する場合、捨石マウンド内への固化材の注入は困難であると考えられている。また、例えば捨石マウンドの空隙内に固化材を注入して増深するためには、その空隙の80%以上に固化材を注入することを想定しており、夾雑物が除去されていることが必要である、とも考えられている。
【0004】
そこで、固化材の注入に先立って、捨石マウンドの空隙内の夾雑物を除去する工法の開発が期待されている。この工法は、上述した増深工法の前処理として用いられるほか、岸壁・護岸の耐震補強にも有用である。また、この工法は、夾雑物を除去した空隙に固化材を注入しない場合にも有用である。例えば、この工法は、捨石マウンドの空隙内に夾雑物が詰まったために透水性が低下した防波堤、岸壁等の、その透水性の改善にも利用可能である。
【0005】
ところで、浚渫、ケーソンの中詰材除去、又は基礎杭内の堆積物除去等には、圧縮空気を利用した水中物吸引搬送装置が用いることが検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-348666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、捨石マウンドの空隙内の夾雑物を除去する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る夾雑物吸引方法は、既設の捨石マウンドに吸引管を挿入し、前記吸引管の先端の開口部から水とともに前記捨石マウンドの空隙内の夾雑物を吸引する夾雑物吸引方法である。
【0009】
本発明の請求項2に係る夾雑物吸引方法は、請求項1に記載の態様において、前記捨石マウンドにおいて挿入された前記吸引管の前記開口部に隣接して又は前記吸引管の内側に高圧水を噴射するノズルを備えた噴射管を設置し、前記吸引管により前記夾雑物を吸引する際に、前記ノズルより高圧水を前記捨石マウンド内に噴射する夾雑物吸引方法である。
【0010】
本発明の請求項3に係る夾雑物吸引方法は、請求項1又は2に記載の態様において、挿入される前記吸引管の吸引によって夾雑物が除去される空間を設定し、該吸引管の前記開口部が前記空間の底面よりも決められた距離だけ深い位置に配置されるように該吸引管を挿入し、前記夾雑物を吸引する夾雑物吸引方法である。
【0011】
本発明の請求項4に係る夾雑物吸引方法は、請求項2に記載の態様において、前記捨石マウンドをケーシングにより削孔し、前記ケーシングで削孔した孔に前記噴射管を挿入して、前記孔の先端で該噴射管により前記高圧水を噴射する夾雑物吸引方法である。
【0012】
本発明の請求項5に係る夾雑物吸引方法は、請求項4に記載の態様において、直上に構造物が載置されている前記捨石マウンドを、該構造物を避けつつ、該捨石マウンドの内部において孔が該構造物の直下まで形成されるように、前記ケーシングで削孔する夾雑物吸引方法である。
【0013】
本発明の請求項6に係る夾雑物吸引方法は、請求項4又は5に記載の態様において、前記ケーシングによって削孔された前記孔に該ケーシングを留置して前記吸引管として用いる夾雑物吸引方法である。
【0014】
本発明の請求項7に係る夾雑物吸引方法は、請求項4又は5に記載の態様において、前記ケーシングによって削孔された前記孔に前記噴射管とともに前記吸引管を挿入する夾雑物吸引方法である。
【0015】
本発明の請求項8に係る夾雑物吸引方法は、請求項2に記載の態様において、前記ノズルが前記噴射管の中心軸を基準に周方向に回転するように、駆動装置によって該噴射管を回転させる夾雑物吸引方法である。
【0016】
本発明の請求項9に係る夾雑物吸引方法は、請求項7に記載の態様において、駆動装置により前記噴射管を該噴射管の長手方向に沿って昇降させる夾雑物吸引方法である。
【0017】
本発明の請求項10に係る夾雑物吸引方法は、請求項2に記載の態様において、前記高圧水の噴射範囲、噴射圧、噴射量の少なくとも一つを用いて前記夾雑物の除去範囲を調整する夾雑物吸引方法である。
【0018】
本発明の請求項11に係る夾雑物吸引方法は、請求項2に記載の態様において、前記吸引管を通って吸引される水に対して、該水とともに吸引される前記夾雑物の割合を測定し、測定された該割合に基づいて前記噴射管による高圧水の噴射量を調整する夾雑物吸引方法である。
【0019】
本発明の請求項12に係る夾雑物吸引方法は、請求項11に記載の態様において、測定された前記割合が閾値未満になったときに前記吸引管による吸引を停止する夾雑物吸引方法である。
【0020】
本発明の請求項13に係る夾雑物吸引方法は、請求項2に記載の態様において、前記吸引管が吸引した前記夾雑物を貯留する貯留タンクを設け、前記貯留タンク内に蓄積した前記夾雑物の重量に応じて前記吸引管による吸引を停止する夾雑物吸引方法である。
【0021】
本発明の請求項14に係る捨石マウンド内夾雑物吸引システムは、既設の捨石マウンドに挿入される吸引管と、前記吸引管に隣接して又は前記吸引管の内側に設置される噴射管と、前記吸引管を経由して水とともに前記捨石マウンドの空隙内の夾雑物を吸引する吸引ポンプと、前記噴射管を経由して該噴射管のノズルから高圧水を噴射させる噴射ポンプと、前記捨石マウンドを削孔して前記吸引管を挿入する孔を形成するケーシングと、前記吸引ポンプの吸引力と前記噴射ポンプの噴出力を調整する調整機と、前記ノズルが前記噴射管の中心軸を基準に周方向に回転するように、該噴射管を回転させる駆動装置と、を備えた、捨石マウンド内夾雑物吸引システムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、捨石マウンドの空隙内の夾雑物を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】捨石マウンド3の空隙内の夾雑物を吸引する吸引管1の例を示した図。
図2】捨石マウンド3の空隙を説明するための図。
図3】吸引管1により夾雑物が除去される範囲を説明するための図。
図4】複数の除去範囲Rを組み合わせて形成される設計空間Sを示す図。
図5】吸引管1に隣接して設置される噴射管2の例を示した図。
図6】吸引管1の内側に設置される噴射管2aの例を示した図。
図7】横向きに高圧水を噴射するノズル20aの例を示す図。
図8】捨石マウンド内夾雑物吸引システム9の例を示した図。
図9】捨石マウンド内夾雑物吸引システム9における除去範囲Rの例を示す図。
図10】捨石マウンド3を斜めに削孔するケーシング60の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
以下に本発明の第1実施形態に係る夾雑物吸引方法Mを説明する。夾雑物吸引方法Mとは、捨石マウンドの空隙内に蓄積した夾雑物を吸引、除去する方法である。
【0025】
図1は、捨石マウンド3の空隙内の夾雑物を吸引する吸引管1の例を示した図である。以下の説明において、捨石マウンド3における方向は、図中の3つの矢印が示すX軸、Y軸、Z軸を用いて記載する。ここで-Zは、重力方向、すなわち下方向である。また、+Xは例えば北方向であり、+Yは例えば西方向である。
【0026】
捨石マウンド3は、海底等の原地盤Bに捨石を投入して築造される。原地盤Bに築造された捨石マウンド3は、その上に構築される港湾構造物の基礎部分となる。ケーソン4は、捨石マウンド3の天端面30の上に構築される構造物の例である。
【0027】
吸引管1は、捨石マウンド3の天端面30から下方に向けて挿入される。挿入された吸引管1の最下部に位置する先端には開口部10が設けられている。この吸引管1は、最上部に位置する末端において吸引ポンプ(図1において図示せず)と接続している。
【0028】
この吸引ポンプは、水を吸引するポンプであり、例えば、真空ポンプ、サンドポンプ等である。水に砂、シルト、粘土、貝殻等が分散していると、吸引ポンプは、水とともに砂、シルト、粘土、貝殻等も吸引する。
【0029】
吸引ポンプは、吸引した夾雑物の処分方法等に応じて、海底面上、足場上、作業台船上、岸壁上等に設置される。吸引ポンプは、水中に設置されてもよい。例えば、吸引ポンプは、横型水中サンドポンプであってもよい。
【0030】
この吸引ポンプを駆動させることで、吸引管1は、開口部10から水(この場合は海水)とともに捨石マウンド3の空隙内の夾雑物を吸引する。これにより、吸引管1は、夾雑物吸引方法Mを行う。
【0031】
図2は、捨石マウンド3の空隙を説明するための図である。捨石マウンド3は、原地盤Bに投入された様々な粒径の捨石31が積み重なり、互いに支え合った状態となって築造される。捨石31どうしの間には空隙がある。この空隙内には、図2の(a)に示す通り、夾雑物32が蓄積する。この夾雑物32は、例えば、砂、シルト、粘土、貝殻等である。夾雑物32は、例えば、捨石マウンド3の築造時に捨石31に付着あるいは捨石とともに投入され、あるいは捨石マウンド3が築造されてから海流等に晒されることで上述した捨石31の空隙に蓄積する。
【0032】
図1に示す吸引管1が、開口部10から水とともに、この図2の(a)に示す夾雑物32を吸引すると、図2の(b)に示す通り、夾雑物32は除去される。その結果、捨石マウンド3の空隙は、水Wによって置換される。なお、夾雑物32は捨石マウンド3が構築されたのちに間隙に堆積したものが主であるので、夾雑物32が除去されたとしても捨石の沈み込みは発生しない。
【0033】
図3は、吸引管1により夾雑物が除去される範囲を説明するための図である。図3の(a)には、吸引管1を上から見た平面図が示される。図3の(b)には、吸引管1を図3の(a)でB-B線により示す矢視に沿って横から見た吸引時の断面図が示される。
【0034】
図3に示す吸引管1が吸引を開始すると、まず、吸引管1の最深部に位置する開口部10の近傍にある夾雑物が除去される。その結果、開口部10の周囲であって開口部10よりも上方に位置する他の夾雑物は、図3の(b)に示す矢印に沿って開口部10の近傍に転がり落ちる。
【0035】
夾雑物は、砂や貝殻等の粒子であるため、開口部10から見た仰角がその安息角よりも小さい位置にある他の夾雑物は、夾雑物が除去された開口部10に転がり落ちてこない。そのため、吸引管1の周囲に存在する夾雑物は、一定の半径内ではこの開口部10を頂点とする円錐状に除去され、当該半径より以遠は除去されず鉛直方向に当該半径の略円筒形状に除去される。夾雑物が除去された、この円錐及び円筒状の範囲は、除去範囲Rと呼ばれる。除去範囲Rは、吸引管1による吸引が影響する範囲である。なお、この除去範囲Rの大きさは、吸引ポンプの性能、除去対象のシルト、粘土、貝殻等の付着状況によって異なるので実施ごとに除去範囲Rを把握することが望ましい。
【0036】
したがって、この吸引管1によって行われる夾雑物吸引方法Mは、既設の捨石マウンドに吸引管を挿入し、この吸引管の先端の開口部から水とともにこの捨石マウンドの空隙内の夾雑物を吸引する夾雑物吸引方法の例である。
【0037】
ところで、夾雑物の除去が望まれる空間(設計空間という)は、円錐形状に限らず、むしろ、例えば直方体であることが多い。仮に、一箇所に挿入した吸引管1のみで、この設計空間に含まれる夾雑物を除去すると、吸引管1は、直方体であるこの設計空間に外接する除去範囲Rの夾雑物を除去しなければならない。この除去範囲Rは、上述した設計空間に比べて大きく、大部分が夾雑物除去の必要がない範囲を含む。したがって、夾雑物の除去は、設計空間の形状に応じた複数の除去範囲Rを組み合わせて行われることが望ましい。
【0038】
図4は、複数の除去範囲Rを組み合わせて形成される設計空間Sを示す図である。図4の(a)には、設計空間Sを上から見た平面図が示される。図4の(b)には、設計空間Sを図4の(a)でB-B線により示す矢視に沿って横から見た断面図が示される。
【0039】
図4に示す捨石マウンド3には、吸引管1a、及び吸引管1bが異なる位置に挿入されている。図4に示す例において、吸引管1bは、吸引管1aの-Y方向に挿入される。
【0040】
この捨石マウンド3において、夾雑物の除去が望まれる空間である設計空間Sは、これら2つの吸引管1a、及び吸引管1bによる除去範囲Ra、及び除去範囲Rb(これらを区別しない場合、単に「除去範囲R」という)の少なくともいずれかに含まれる。したがって、例えば、設計空間Sが捨石マウンド3の天端面30から深さhの底面までを占めている場合、吸引管1a、及び吸引管1bのそれぞれの開口部10a、及び開口部10bは、その底面(深さh)よりも予め決められた距離Δhだけ深い位置に配置されるように挿入される。
【0041】
また、吸引管1a、及び吸引管1bの水平方向の間隔(ピッチともいう)は、設計空間Sに対して、1つの吸引管1により吸引できる除去範囲Rを基に類推される。なお、吸引管1a、及び吸引管1bは、別体であって同時に捨石マウンド3に挿入されてもよいが、一本の吸引管1を、捨石マウンド3に対して異なる時間に挿入して夾雑物を除去するものであってもよい。
【0042】
つまり、この場合において、これらの吸引管1a、及び吸引管1bのそれぞれによって行われる夾雑物吸引方法Mは、挿入される吸引管の吸引によって夾雑物が除去される空間を設定し、この吸引管の開口部が、設定したその空間の底面よりも決められた距離だけ深い位置に配置されるようにこの吸引管を挿入し、夾雑物を吸引する夾雑物吸引方法の例である。
【0043】
この第1実施形態に係る夾雑物吸引方法Mによれば、圧縮空気等を使うことなく捨石マウンドの空隙内の夾雑物を除去することができる。また、この夾雑物吸引方法Mによれば、捨石マウンドの空隙内において夾雑物が除去されるべき設計空間を定めたときに、過不足なく吸引を行える位置に吸引管を設置することができる。
【0044】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態に係る夾雑物吸引方法Mを説明する。第2実施形態に係る夾雑物吸引方法Mは、第1実施形態の夾雑物吸引方法Mの除去範囲Rを拡大する方法である。
【0045】
図5は、吸引管1に隣接して設置される噴射管2の例を示した図である。図5の(a)及び(b)には、噴射管2を上から見た平面図が示される。図5の(c)には、噴射管2を図5の(b)でB-B線により示す矢視に沿って横から見た断面図が示される。
【0046】
図5の(a)に示す通り、噴射管2は、上から見て吸引管1の外側面に接触するように設けられている。吸引管1の吸引により夾雑物が除去される除去範囲Rは、上から見ると図5の(b)に示す通り、吸引管1を中心とした円形である。なお、破線R1は第1実施形態における除去範囲の境界面である。つまり、図5に示す破線R1の内側は、噴射管2を使用せず、吸引管1のみの吸引によって夾雑物が除去される範囲の境界面を表している。また、この除去範囲Rは、図5の(b)でB-B線により示す矢視に沿って横から見ると図5の(c)に示す通り、吸引管1の開口部10を頂点とする三角形と鉛直方向への略矩形が合わさった形状である。つまり、除去範囲Rは、捨石マウンド3の天端面30に底面を有し、吸引管1の開口部10の近傍に頂点を有する円錐形状を下端に有する略円筒形状である。ただし、噴射管2が設置されたことにより、除去範囲Rは、図5(b)に記載しているように吸引対象の円筒形状の半径が第1実施形態に比べて拡大する。
【0047】
噴射管2は、図5の(c)に示す通り、ノズル20を備える。このノズル20は、吸引管1の最深部に位置する開口部10に隣接する位置に配置される。この噴射管2は、最上部に位置する末端において噴射ポンプ(図5において図示せず)と接続している。この噴射ポンプは、高圧水を噴射させるポンプであり、例えば、インテンシファイア式ウォータージェットポンプ、プランジャーポンプ等である。噴射ポンプは、足場上、作業台船上、岸壁上等に設置される。この噴射ポンプを駆動させることで、噴射管2は、ノズル20から捨石マウンド3の空隙に向けて高圧水を噴射させる。
【0048】
ノズル20から噴射した高圧水は、捨石マウンド3の空隙内の夾雑物に衝突する。高圧水が衝突したその夾雑物は、高圧水の衝撃圧力によって崩され、ほぐされる。そのため、ノズル20の近傍に存在する夾雑物は、吸引管1に吸引され易くなり、除去範囲Rは、開口部10から下方の夾雑物除去範囲が深くなり、それに伴い円錐及び円筒形形状部分も拡大する。
【0049】
すなわち、この第2実施形態に係る夾雑物吸引方法Mによれば、噴射管2を用いない場合に比べて除去範囲Rを拡大することができる。また、噴射管2よりの高圧水の噴射圧は一定でなく強弱をつけるように圧を変化させて噴射してもよい。
【0050】
なお、この第2実施形態に係る夾雑物吸引方法Mにおいて、噴射管2に高圧水を噴射させるタイミングは、吸引管1により夾雑物を吸引する際に、高圧水を捨石マウンド内に噴射して、その夾雑物の吸引を補助することができれば、その吸引のタイミングに合わせる必要がない。噴射管2に高圧水を噴射させるタイミングは、例えば、以下のケースA,Bが考えられる。
(ケースA)吸引管1が吸引を開始する前に噴射管2が高圧水の噴射を完了する。
(ケースB)吸引管1が吸引を開始してその継続中に噴射管2が高圧水の噴射を開始する。
【0051】
<第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態に係る夾雑物吸引方法Mを説明する。第3実施形態に係る夾雑物吸引方法Mは、第2実施形態の夾雑物吸引方法Mにおける噴射管の配置と噴射の向きを変更した方法である。
【0052】
第2実施形態において噴射管2は、高圧水を噴射するノズルが吸引管1の開口部10に隣接するように、吸引管1の外側に配置されていた。しかし、噴射管2の配置はこれに限らない。
【0053】
図6は、吸引管1の内側に設置される噴射管2aの例を示した図である。図6の(a)には、噴射管2aを上から見た様子が示される。図6の(b)には、噴射管2aを図6(a)でB-B線により示す矢視に沿って横から見た断面図が示される。
【0054】
第3実施形態において、噴射管2aは、図6に示す通り吸引管1の内側に設置される。噴射管2aも、第2実施形態に示した噴射管2と同様に、噴射ポンプ(図6において図示せず)と接続している。また、この噴射管2aも、最深部において下向きに高圧水を噴射するノズル20を備える。噴射管2aが噴射した高圧水により、ノズル20の近傍に存在する夾雑物は、吸引管1に吸引され易くなり、除去範囲Rは、拡大する。
【0055】
つまり、第2実施形態、及び第3実施形態に係る夾雑物吸引方法Mは、捨石マウンドにおいて挿入された吸引管の開口部に隣接して又は吸引管の内側に高圧水を噴射するノズルを備えた噴射管を設置し、吸引管により夾雑物を吸引する際に、ノズルより高圧水を捨石マウンド内に噴射する夾雑物吸引方法の例である。
【0056】
なお、噴射管2及び2aは、図6の(b)に示す通り、自身の長手方向である矢印D6に沿って昇降してもよい。この場合、噴射管2及び2aは、図6の(b)に示す駆動装置5によって昇降されればよい。駆動装置5は、例えば、噴射管2aの上端部に取り付けた昇降装置(例えば、ボーリングマシン等)である。この場合、駆動装置5は、噴射管2又は2aを上昇させるときに噴射管2又は2aのパイプを把持した状態で上方に引き上げ、下降させるときに引き下げる。すなわち、この場合の夾雑物吸引方法Mは、駆動装置により噴射管をこの噴射管の長手方向に沿って昇降させる夾雑物吸引方法の例である。駆動装置5によって長手方向に沿って昇降させられることにより、噴射管2又は2aは、高圧水を噴射する位置、距離を変動させるので、高圧水により夾雑物が崩される範囲は拡大し易い。なお、噴射管2aにおいては、管を昇降させる範囲は吸引管1の開口部10より上方に上昇させると噴射する高圧水が吸引自体を阻害するため、例えば、図6の(b)に示すΔd等、開口部10よりも下方となる範囲で昇降させる。
【0057】
また、ノズル20は、噴射管2及び2aの最深部において下向きに高圧水を噴射するように設けられていたが、横向き等、下向き以外の方向に向けて高圧水を噴射するように設けられていてもよい。
【0058】
図7は、横向きに高圧水を噴射するノズル20aの例を示す図である。図7の(a)には、噴射管2aに設けられたノズル20aを横から見た様子が示される。図7の(b)には、ノズル20aを上から見た様子が示される。
【0059】
図7の(a)に示す通り、ノズル20aは、噴射管2及び2aの側周面における最深部に設けられている。ノズル20aの開口は、例えば、+Y方向に向いているため、高圧水はこのノズル20aから+Y方向に噴射される。この場合、ノズル20aは横向きに高圧水を噴射するので、ノズル20aが向いた方向にある夾雑物は崩れ易くなり、その結果、吸引され易くなる。
【0060】
また、噴射管2及び2aは、自身の中心軸を基準にノズル20aが周方向に回転するように回転させられてもよい。この場合、噴射管2及び2aは、駆動装置5によって回転させられればよい。例えば、噴射管2aは、図7の(b)に示す矢印D7の方向に回転させられる。この噴射管2aは、ノズル20aが周方向に回転するため、高圧水により夾雑物が崩される範囲を拡大させ易い。また、ノズル20aの開口が噴射管2aの中心軸上にない、又はノズル20aによる噴射の方向(噴射方向という)がこの中心軸と平行でない場合、噴射管2aが回転することでノズル20aの噴射方向は変化する。この噴射方向が変化すると、ノズル20aの開口から噴射された高圧水が吸引管1に吸引されるまでの経路も、時間とともに変化する。そのため、噴射方向を変化させない場合に比べて、ノズル20aから噴射された高圧水は通り道が固定化されず、より広範囲に噴射され易くなる。
【0061】
つまり、この例における噴射管2aの回転は、噴射方向が一方向へ噴射とならない上に、定常的な噴射とならないので、吸引管周囲を攪乱させて捨石間に高圧水のみが通過するような固定化された通り道を生じさせ難く、夾雑物の吸引量を増大させる効果がある。この場合の夾雑物吸引方法Mは、ノズルが噴射管の中心軸を基準に周方向に回転するように、駆動装置によって噴射管を回転させる夾雑物吸引方法の例である。なお、噴射管2aは、横向きに噴射する高圧水の反力によって回転させてもよい。また、ノズル20aの数は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。また、噴射管2aよりの高圧水の噴射圧は一定でなく強弱をつけて噴射するように圧を変化させてもよい。なお、ノズル20aを用いる際には、噴射管2及び2aの先端は、吸引管1の開口部10より下方に位置していることが望ましい。
【0062】
すなわち、この第3実施形態に係る夾雑物吸引方法Mによれば、噴射管2を用いない場合に比べて除去範囲Rを拡大することができる。
【0063】
<第4実施形態>
次に本発明の第4実施形態に係る夾雑物吸引方法Mを説明する。第4実施形態に係る夾雑物吸引方法Mは、吸引管1の挿入に先立ってケーシングにより捨石マウンド3を削孔する工程を含む夾雑物吸引方法である。
【0064】
図8は、捨石マウンド内夾雑物吸引システム9の例を示した図である。この捨石マウンド内夾雑物吸引システム9は、吸引管1、噴射管2、吸引ポンプP1、貯留タンクT、噴射ポンプP2、ケーシング60、調整機7、及び駆動装置5を備える。
【0065】
ケーシング60は、掘削船6に備えられ、捨石マウンド3を削孔する部材であって、ケーシングパイプ、又はケーシングチューブ等と呼ばれる管状のものである。捨石マウンド3の所定位置の上方に停泊した掘削船6により降ろされたケーシング60は、捨石マウンド3の天端面30から挿入されて、図8に示す孔Aを形成する。図8に示すケーシング60は、-z方向、つまり垂直に捨石マウンド3を削孔する。
【0066】
吸引管1は、既設の捨石マウンド3に挿入されて、この捨石マウンド3の空隙内の夾雑物を吸引する管である。図8に示す吸引管1は、上述したケーシング60が削孔した孔Aに挿入される。
【0067】
吸引ポンプP1は、吸引側が吸引管1の上端部と配管で接続されており、この吸引管1を経由して海水とともに捨石マウンド3の空隙内の夾雑物を吸引するポンプである。吸引ポンプP1は、例えば、真空ポンプ、サンドポンプ等である。
【0068】
吸引ポンプP1の吐出側は、貯留タンクTに接続されている。貯留タンクTは、吸引管1が吸引した夾雑物を貯留するタンクである。貯留タンクT内に蓄積した夾雑物は、例えば、図示しないロードセル等により重量が計測される。また、貯留タンクT内に蓄積した夾雑物は、貯留タンクTの外壁等に記された目盛等により、見かけの体積が計測されてもよい。貯留タンクTは、吸引した水と夾雑物とを分離して貯留してもよい。水と夾雑物とが分離される場合、これらはそれぞれ別々に重量、又は体積を計測されてもよい。
【0069】
図8に示す噴射管2は、吸引管1とともに上述したケーシング60で削孔した孔Aに挿入される。したがって、図8に示す捨石マウンド内夾雑物吸引システム9により行われる夾雑物吸引方法Mは、ケーシングによって削孔された孔に噴射管とともに吸引管を挿入する夾雑物吸引方法の例である。
【0070】
噴射管2は、吸引管1に隣接して、又は吸引管1の内側に設置される。噴射管2に設けられたノズル20は、捨石マウンド3内部において、吸引管1の開口部10の近傍に配置されている。
【0071】
噴射ポンプP2は、吐出側が噴射管2の上端部と配管で接続されている。噴射ポンプP2は、噴射管2を経由して、この噴射管2のノズル20から高圧水を下向き、横向き等に噴射させるポンプである。噴射ポンプP2は、例えば、インテンシファイア式ウォータージェットポンプ、プランジャーポンプ等である。
【0072】
図9は、捨石マウンド内夾雑物吸引システム9における除去範囲Rの例を示す図である。捨石マウンド内夾雑物吸引システム9は、ケーシング60によって削孔された孔Aに吸引管1と噴射管2とを挿入する。そして、この噴射管2は、ノズル20から高圧水を横方向に噴射することで吸引管1の開口部10の近傍に存在する夾雑物を崩す。これにより、吸引管1は、崩されて吸引され易くなった夾雑物を吸引し、捨石マウンド3の空隙内を水で置換する。その結果、吸引管1は、図9に示す除去範囲Rにある夾雑物の、例えば約8割を除去する。
【0073】
図8に示す駆動装置5は、第3実施形態で説明したものである。この駆動装置5は、噴射管2の上端部を把持している。駆動装置5は、電気、内燃機関等により噴射管2を動かすための駆動力を得る装置であり、モータ、エンジン等である。
【0074】
駆動装置5は、ノズル20が噴射管2の中心軸を基準に周方向に回転するように、噴射管2を回転させてもよい。また、駆動装置5は、噴射管2を吸引管1の長手方向に沿って昇降させてもよい。
【0075】
調整機7は、噴射管2による高圧水の噴射の条件を変化させて、捨石マウンド3の空隙内にある夾雑物の除去範囲Rを調整する装置である。調整機7は、例えば、インタフェースと、プロセッサと、メモリとを有する。なお、ポンプに備え付けられているインバータで制御できるのであれば手動での制御とすることもできる。
【0076】
インタフェースは、各種のセンサと接続する通信回路等である。プロセッサは、インタフェースを経由してセンサから情報を取得し、その情報に基づいて、上述した高圧水の噴射の条件を算出する演算装置である。メモリは、プロセッサが作業領域として利用するRAM(Random Access Memory)を有する。また、メモリは、ROM(Read Only Memory)、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有し、これらにプロセッサが読み出して実行するコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を記憶する。
【0077】
調整機7が有するプロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の汎用的なプロセッサである。また、このプロセッサは、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のプログラマブル論理デバイスであってもよいし、これらを含んでもよい。
【0078】
高圧水の噴射の条件は、例えば、高圧水の噴射範囲、噴射圧、噴射量等である。調整機7は、高圧水の噴射の条件、高圧水の噴射範囲、噴射圧、噴射量のうち少なくとも一つを用いて調整することが望ましい。すなわち、この調整機7を用いて行われる夾雑物吸引方法Mは、高圧水の噴射範囲、噴射圧、噴射量の少なくとも一つを用いて夾雑物の除去範囲を調整する夾雑物吸引方法の例である。
【0079】
噴射範囲を調整する場合、調整機7は、例えば、ノズル20に設けた電磁弁を開閉したり、駆動装置5による噴射管2の移動方向、移動パターン等を変更したりする。噴射圧、又は噴射量を調整する場合、調整機7は、例えば、噴射ポンプP2の回転数を変更したり、噴射ポンプP2の吐出弁の開度を変更したりする。
【0080】
調整機7は、例えば、貯留タンクTの下方に設置されたロードセルから、吸引管1を通って吸引された水の重量のデータと、その水とともに吸引された夾雑物の重量のデータと、をそれぞれ取得する。そして、調整機7は、取得したデータに基づいて水に対する夾雑物の重量の割合を測定し、その割合に基づいて噴射管2による高圧水の噴射の条件(例えば、噴射量)を調整する。すなわち、この調整機7を用いて行われる夾雑物吸引方法Mは、吸引管を通って吸引される水に対して、その水とともに吸引される夾雑物の割合を測定し、測定されたその割合に基づいて噴射管による高圧水の噴射量を調整する夾雑物吸引方法の例である。
【0081】
なお、上述した水に対する夾雑物の重量の割合は、他の方法で測定されてもよい。この割合は、例えば、吸引管1と吸引ポンプP1とを接続する配管の一部を透明、又は半透明な管にして、吸引する夾雑物を含んだ水にレーザ光等を照射し、その透過率に基づいて推算されてもよい。また、この割合は、密度計、粒度計、又は流量計によって推定されてもよい。なお、本測定方法を用いるときには、貯留タンクTとして土運搬船を用いるようにしてもよい。また、調整機7が有するプロセッサは、センサから取得した情報に基づいて高圧水の噴射の条件を算出するものに限らない。調整機7が有するプロセッサは、例えば、吸引管1を通って吸引された水に対する夾雑物の重量の割合の測定結果を目視等により確認したオペレーターから、その測定結果を示す情報の入力を受付けてもよい。この場合、このプロセッサは、オペレーターから入力された情報に基づいて、高圧水の噴射の条件を算出すればよい。
【0082】
また、調整機7は、取得した各種センサからのデータに応じて吸引ポンプP1による吸引を制御してもよい。例えば、調整機7は、吸引管1を通って吸引される水に対する夾雑物の割合が一定の期間閾値未満になったことを検知すると、吸引ポンプP1を制御して吸引管1による吸引を停止してもよい。この場合、この調整機7を用いて行われる夾雑物吸引方法Mは、吸引管を通って吸引される水に対して、この水とともに吸引される夾雑物の割合が閾値未満になったときにこの吸引管による吸引を停止する夾雑物吸引方法の例である。
【0083】
また、調整機7は、貯留タンクT内に蓄積した夾雑物の重量を示すデータを上述したロードセル等から取得し、このデータが決められた条件を満たした場合に、吸引ポンプP1を制御して吸引管1による吸引を停止してもよい。この場合、この調整機7を用いて行われる夾雑物吸引方法Mは、吸引管が吸引した夾雑物を貯留する貯留タンクを設け、この貯留タンク内に蓄積した夾雑物の重量に応じて吸引管による吸引を停止する夾雑物吸引方法の例である。
【0084】
また、捨石マウンド内夾雑物吸引システム9は、既設の捨石マウンドに挿入される吸引管と、吸引管に隣接して又は吸引管の内側に設置される噴射管と、吸引管を経由して水とともに捨石マウンドの間隙内の夾雑物を吸引する吸引ポンプと、噴射管を経由してこの噴射管のノズルから高圧水を噴射させる噴射ポンプと、捨石マウンドを削孔して吸引管を挿入する孔を形成するケーシングと、吸引ポンプの吸引力と噴射ポンプの噴出力を調整する調整機と、ノズルが噴射管の中心軸を基準に周方向に回転するように、この噴射管を回転させる駆動装置と、を備えた、捨石マウンド内夾雑物吸引システムの例である。
【0085】
この第4実施形態に係る夾雑物吸引方法Mによれば、ケーシング60を用いて捨石マウンド3を削孔しない場合に比べて、吸引管1を捨石マウンド3に挿入し易くすることができる。
【0086】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組合せてもよい。
【0087】
<1>
上述した第4実施形態において、吸引管1は、ケーシング60によって削孔された孔Aに挿入されたが、ケーシング60が吸引管1を兼ねてもよい。この場合、捨石マウンド内夾雑物吸引システム9は、捨石マウンド3を削孔したケーシング60を孔Aにそのまま留置して、吸引管1として使えばよい。つまり、この変形例における夾雑物吸引方法Mは、ケーシングによって削孔された孔にこのケーシングを留置して吸引管1として用いる夾雑物吸引方法の例である。
【0088】
なお、この変形例において、噴射管2は、削孔の時点において、既にケーシング60の外側に設けられていてもよい。また、削孔された孔Aに留置されたケーシング60の上端部を吸引ポンプP1と接続し、新たに吸引管1として利用する際に、噴射管2は、吸引管1の外側に沿って、又は内側に挿入されてもよい。これらのいずれであっても、噴射管2は、ケーシング60で削孔した孔Aに挿入され、吸引管1の先端近傍で高圧水を噴射する。すなわち、この変形例においても夾雑物吸引方法Mは、第4実施形態と同様に、捨石マウンドをケーシングにより削孔し、ケーシングで削孔した孔に噴射管を挿入して、孔の先端で該噴射管により高圧水を噴射する夾雑物吸引方法の例である。
【0089】
<2>
上述した第4実施形態において、ケーシング60は、垂直に捨石マウンド3を削孔していたが、削孔の方向は垂直に限らない。ケーシング60は、例えば、斜め下の方向に捨石マウンド3を削孔してもよい。特に、捨石マウンド3の上にケーソン4等の構造物が構築されている場合で、当該構造物の下方に可塑状グラウト材等の固化材を注入したいときには、ケーシング60は、この構造物を避けながら斜め方向に捨石マウンド3を削孔してもよい。
【0090】
図10は、捨石マウンド3を斜めに削孔するケーシング60の例を示す図である。この場合、捨石マウンド3の上には構造物の一例であるケーソン4が載置されている。捨石マウンド3のうち、ケーソン4の直下の領域を、このケーソン4を支持する支持領域Uと呼ぶ。
【0091】
上述した第4実施形態に示すように、ケーシング60が捨石マウンド3を削孔することができる方向が垂直方向のみであると、ケーシング60は、ケーソン4が邪魔をして支持領域Uを削孔し、夾雑物の除去及び固化材の注入をすることができない。しかし、ケーソン4を支持する力を強化するために、支持領域Uに固化材等を注入して改良体を構築しなければならない場合、この支持領域Uに存在する夾雑物を吸引・除去する必要がある。
【0092】
そこで、このような場合に、図10に示すケーシング60は、斜め下方向に捨石マウンド3を削孔する。このケーシング60は、捨石マウンド3の天端面30のうち、直上にケーソン4が構築されていない領域からケーソン4を避けつつ挿入される。そして、このケーシング60は、捨石マウンド3の内部において図10に示す支持領域U、つまり、ケーソン4の直下まで孔A1を形成する。
【0093】
すなわち、斜めに削孔するこのケーシング60を用いた夾雑物吸引方法Mは、直上に構造物が載置されている捨石マウンドを、この構造物を避けつつ、捨石マウンドの内部において孔がこの構造物の直下まで形成されるように、ケーシングで削孔する夾雑物吸引方法の例である。この変形例における夾雑物吸引方法Mによれば、捨石マウンド3の上にケーソン4等の構造物が載置されていても、この構造物の直下に吸引管1を挿入する孔を形成することができる。
なお、図8及び図10において捨石マウンド3をケーシング60で削孔するには、掘削船6を用いるとしたが、船舶を用いて捨石マウンドへの削孔を安定して行うためにはSEP(Self-Elevating Platform)船を用いて昇降用脚(レグ)を水底に固定して行うことが望ましい。また、上述した支持領域Uは、その全てがケーシング60による削孔の対象とならなくてもよい。例えば、削孔した領域に固化材を注入して改良体を構築する場合、ケーシング60は、図10に示す通り、支持領域Uのうち、上面から三分の二まで、かつ、左(+y側)から三分の一までを削孔の対象領域U1としてもよい。
【0094】
<3>
上述した第3実施形態、及び第4実施形態において、噴射管2は、駆動装置5により昇降させられていたが、昇降装置は吸引管1も昇降させてもよい。この場合、捨石マウンド内夾雑物吸引システム9は、吸引管1を上下に移動させる駆動装置を設ければよい。
【符号の説明】
【0095】
1、1a、1b…吸引管、10、10a、10b…開口部、2、2a…噴射管、20、20a…ノズル、3…捨石マウンド、30…天端面、31…捨石、32…夾雑物、4…ケーソン、5…駆動装置、6…掘削船、60…ケーシング、7…調整機、9…捨石マウンド内夾雑物吸引システム、A、A1…孔、D6、D7…矢印、P1…吸引ポンプ、P2…噴射ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10