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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010272
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】車両用制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/115 20060101AFI20240117BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20240117BHJP
【FI】
B60Q1/115
B60R16/02 660F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111512
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】平野 呈
(72)【発明者】
【氏名】小澤 宏二
(72)【発明者】
【氏名】中西 雷太
(72)【発明者】
【氏名】北浦 亮
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA07
3K339BA23
3K339BA25
3K339BA28
3K339CA01
3K339GB01
3K339KA23
3K339LA02
3K339LA12
3K339MC24
3K339MC45
3K339MC48
3K339MC49
3K339MC52
3K339MC58
3K339MC65
3K339MC68
(57)【要約】
【課題】第1の制御装置に設けられた加速度検出部の検出データを第2の制御装置でも利用するときに、イグニッションスイッチのオフ時に第2の制御装置がウェイクアップ状態になって消費電流が増加するのを防止できるようにする。
【解決手段】イグニッションスイッチのオフ中を含む車両が停車した直後のエアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21による加速度検出データをメモリ23に記憶しておき、イグニッションスイッチのオン直後にエアバッグ制御用ECU2の送信部24からメモリ23に記憶されたイグニッションスイッチのオフ直前の加速度検出データを送信し、このデータを光軸制御用ECU3の受信部31により受信して車両姿勢角θvを導出し、ヘッドランプの光軸の傾き角度を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサの検出データに基づき車両の制御を行う車両用制御システムにおいて、
車両の制御を行う第1の制御装置、及び、前記第1の制御装置による制御と異なる当該車両の所定の制御を行う第2の制御装置を備え、
前記第1の制御装置は、
路面傾斜角及び車両姿勢角を導出するための少なくとも上下方向及び前後方向の加速度を検出する加速度検出部と、
イグニッションスイッチのオフ中を含む車両が停車した直後の前記加速度検出部による前記加速度検出データを記憶する記憶部と、
前記イグニッションスイッチのオン直後には前記記憶部に記憶された前記加速度検出データを送信し、前記イグニッションスイッチのオン中には前記加速度検出部による加速度検出データを送信する送信部と
を備え、
前記第2の制御装置は、
前記イグニッションスイッチのオン直後には、前記送信部から送信される前記記憶部に記憶された前記加速度検出データを受信し、前記イグニッションスイッチのオン中には前記送信部から送信される前記加速度検出データのデータを受信する受信部を備える
ことを特徴とする車両用制御システム。
【請求項2】
前記第1の制御装置を複数備え、
複数の前記第1の制御装置は、前記所定の制御と異なる別々の制御を行い、
前記第2の制御装置の前記受信部は、前記複数の第1の制御装置の前記送信部から送信される前記加速度検出データを択一的に受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用制御システム。
【請求項3】
前記第2の制御装置は、
前記イグニッションスイッチのオン中に、前記受信部により受信される前記加速度検出データに基づき前記車両姿勢角を演算する演算部と、
前記演算部により演算された前記車両姿勢角に基づきヘッドランプの光軸の傾き角度を制御する光軸制御部と
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加速度センサの検出データに基づき車両の制御を行う車両用制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加速度センサの検出データに基づき車両の制御を行う装置として、ヘッドランプの光軸の傾き角度を制御するいわゆるオートレベリング制御装置がある。この種の装置は、車両姿勢角を検出して、検出した車両姿勢角に応じてヘッドランプの光軸を制御することにより、対向車両に対する幻惑を防止するオートレベリング制御を行うものであり、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載のオートレベリング制御装置では、3軸加速度センサから成る傾斜センサにより車両の上下、前後、左右の3方向の加速度を検出し、この傾斜センサの検出データから、車両のピッチ方向の角度である路面傾斜角θr、車両姿勢角θvの合成角度θを導出する。そして、車両走行中には積載物や乗員人数が変化して車両姿勢角θvが変化することは稀であることから、車両走行中における合成角度θの変化は路面傾斜角θrの変化であると判断する一方、車両停車中に路面傾斜角θrが変化することはないことから、車両停車中における合成角度θの変化は車両姿勢角θvの変化であると判断し、イグニッションスイッチのオフによる車両停車中の車両姿勢角θvの変化に対応してヘッドランプの光軸を制御している。
【0004】
ところで、特許文献1に記載のような装置の場合、傾斜センサにより検出される加速度は、オートレベリング制御だけでなく、車両のエアバッグ制御や走行中の横滑り抑制制御などの各種の制御にも使用されるため、これら各種の制御用に専用の傾斜センサをそれぞれ設けることによるコストの無駄を防止する観点から、従来、1つの傾斜センサを各種の制御に共用してコストの低減を図ることが考えられている。
【0005】
このとき、エアバッグ制御用の装置を構成するECU(Electronic Control Unit)に搭載された傾斜センサによる加速度の検出データを、CAN(Controller Area Network)通信により送信し、オートレベリング制御用ECUでこれを受信して、受信した加速度の検出データに基づき車両姿勢角を演算し、演算した車両姿勢角に応じてヘッドランプの光軸の傾き角度の制御を行う。なお、オートレベリング制御用ECUの限らず、横滑り抑制制御用ECUも同様に、CAN通信によりやエアバッグ制御用ECUから送信される加速度の検出データを受信して各々の制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-98297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、CAN通信により、共用の1つの傾斜センサによる加速度の検出データを送受信する場合、特にオートレベリング制御のように、イグニッションスイッチのオフ時に乗員の乗降や荷物の積み下ろしに伴う車両の揺れが生じたときには、イグニッションスイッチのオフ中においても兼用の傾斜センサからの加速度の検出データを送受信する必要があり、イグニッションスイッチのオフにより、すべての制御用ECUはすべて電流消費を抑制するスリープ状態となるべきところが、CAN通信によるイグニッションスイッチのオフ中の加速度の検出データの送信により、これを受信して制御を行う特定のECUがウェイクアップ状態となって消費電流の増加が発生し、バッテリの消耗につながるおそれがある。
【0008】
また、所定制御用のECUに搭載された傾斜センサによる加速度の検出データを、CAN通信以外の通信によりオートレベリング制御用ECUに送信する場合であっても、傾斜センサを搭載したECUだけでなく、オートレベリング制御用ECUもウェイクアップ状態にしておく必要があるため、やはり消費電流の増加を招くことになる。
【0009】
本発明は、第1の制御装置に設けられた加速度検出部の検出データを第2の制御装置でも利用するときに、イグニッションスイッチのオフ時に第2の制御装置がウェイクアップ状態になって消費電流が増加するのを防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の車両用制御システムは、加速度センサの検出データに基づき車両の制御を行う車両用制御システムにおいて、車両の制御を行う第1の制御装置、及び、前記第1の制御装置による制御と異なる当該車両の所定の制御を行う第2の制御装置を備え、前記第1の制御装置は、路面傾斜角及び車両姿勢角を導出するための少なくとも上下方向及び前後方向の加速度を検出する加速度検出部と、イグニッションスイッチのオフ中を含む車両が停車した直後の前記加速度検出部による前記加速度検出データを記憶する記憶部と、前記イグニッションスイッチのオン直後には前記記憶部に記憶された前記加速度検出データを送信し、前記イグニッションスイッチのオン中には前記加速度検出部による加速度検出データを送信する送信部とを備え、前記第2の制御装置は、前記イグニッションスイッチのオン直後には、前記送信部から送信される前記記憶部に記憶された前記加速度検出データを受信し、前記イグニッションスイッチのオン中には前記送信部から送信される前記加速度検出データのデータを受信する受信部を備えることを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、第1の制御装置において、イグニッションスイッチのオフ中を含む車両が停車した直後の加速度検出部による加速度検出データを記憶部に記憶しておき、イグニッションスイッチのオン直後には、第2の制御装置の受信部により、第1の制御装置の送信部から送信される記憶部に記憶された加速度検出データを受信するため、イグニッションスイッチのオフ時に第2の制御装置が加速度検出データの受信のためにウェイクアップ状態になることを防止でき、第2の制御装置のウェイクアップにより消費電流が増加するのを防止することができる。
【0012】
また、前記第1の制御装置を複数備え、複数の前記第1の制御装置は、前記所定の制御と異なる別々の制御を行い、前記第2の制御装置の前記受信部は、前記複数の第1の制御装置の前記送信部から送信される前記加速度検出データを択一的に受信するようにしてもよい。
【0013】
これにより、複数の第1の制御装置の加速度検出部による加速度検出データのうちいずれかを、第2の制御装置の受信部により択一的に受信するため、加速度検出部を備えた第1の制御装置が複数ある場合であっても、イグニッションスイッチのオフ時に第2の制御装置が加速度検出データの受信のためにウェイクアップ状態になることを防止でき、第2の制御装置のウェイクアップによる消費電流の増加を防止することができる。
【0014】
また、前記第2の制御装置は、前記イグニッションスイッチのオン時に、前記受信部により受信される前記加速度検出データに基づき前記車両姿勢角を演算する演算部と、前記演算部により演算された前記車両姿勢角に基づきヘッドランプの光軸の傾き角度を制御する光軸制御部とを備えるとよい。
【0015】
これにより、第1の制御装置において、イグニッションスイッチのオフ時に、第2の制御装置の受信部により、第1の制御装置の送信部から送信される加速度検出データが受信され、受信された加速度検出データに基づき、演算部により車両姿勢角が演算され、演算された車両姿勢角に基づき、光軸制御部によりヘッドランプの光軸の傾き角度が制御されるため、イグニッションスイッチのオフ時に第2の制御装置が加速度検出データの受信のためにウェイクアップ状態になることを防止しつつ、ヘッドランプの光軸の傾き角度を制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、第1の制御装置に設けられた加速度検出部の検出データを第2の制御装置でも利用するときに、イグニッションスイッチのオフ時に第2の制御装置がウェイクアップ状態になることを防止でき、ウェイクアップにより消費電流が増加してバッテリの消耗するのを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の車両用制御システムの第1実施形態のブロック図である。
図2図1の動作説明用フローチャートである。
図3図1の動作説明用フローチャートである。
図4】第2実施形態の動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明に係る車両用制御システムの第1実施形態について、図1ないし図3を参照して詳述する。
【0019】
図1に示すように、車両用制御システム1は、バッテリから給電されイグニッションスイッチのオンをトリガに動作し、運転席及び助手席のエアバッグの展開制御を行うエアバッグ制御用ECU2と、バッテリから給電されイグニッションスイッチのオンをトリガに動作しヘッドランプ(図示省略)の光軸の傾き角度の制御(オートレベリング制御)を行う光軸制御用ECU3と、CAN通信用の通信バス4を備える。
【0020】
エアバッグ制御用ECU2は、車両の上下、前後、左右の3軸方向の加速度を検出する加速度検出部である3軸の加速度センサ21と、加速度センサ21による加速度検出データに基づき、車両の衝突から乗員を保護するためにエアバッグを展開すべきかどうかを判断し、展開すべきと判断したときにエアバッグを展開制御するエアバッグ制御部22と、加速度センサ21による加速度検出データや、エアバッグ制御部22の制御に必要なデータを記憶する記憶部であるメモリ23と、エアバッグ制御部22の制御により、CANの通信バス4を介して所定のデータを送信する送信部24とを備える。ここで、加速度センサ21は少なくとも車両の上下、前後の2軸方向を検出できるものであればよい。
【0021】
ここで、エアバッグ制御部22は、イグニッションスイッチのオフ中を含む車両が停車した直後に加速度センサ21により検出された加速度検出データをメモリ23に記憶させ、イグニッションスイッチのオン直後に送信部24を制御して、メモリ23に記憶されたイグニッションスイッチのオフ中を含む車両が停車した直後の加速度検出データを通信バス4に送信する。なお、イグニッションスイッチのオン中、送信部24は、加速度センサ21による加速度検出データのほかエアバッグの展開状態に関するデータなどの車両制御に必要なデータをCAN通信の通信周期で通信バス4に送信する。
【0022】
光軸制御用ECU3は、イグニッションスイッチのオン直後にはエアバッグ制御用ECU2の送信部24から送信されるイグニッションスイッチのオフ中を含む車両が停車した直後のメモリ23の記憶データである加速度検出データを受信し、イグニッションスイッチのオン中にはCANの通信周期で送信部24から送信される加速度検出データを受信する受信部31と、受信部31により受信された加速度検出データに基づき車両姿勢角θvを差演算する演算部32と、演算部32により演算された車両姿勢角θvに基づきヘッドランプの光軸の角度を制御する光軸制御部33と、演算部32の演算に必要なデータや光軸制御に必要なデータ等を記憶するメモリ34とを備える。
【0023】
ところで、加速度センサ21による加速度検出データが送信部24から送信されると、通信バス4を介して受信部31により受信されるが、受信された加速度検出データのうち車両前後方向の加速度、及び、車両上下方向の加速度それぞれのベクトルの合成ベクトルのなす角により車両のピッチ方向の路面傾斜角θrと車両姿勢角θvの合成角度θが導出される。このとき、車両走行中には積載物や乗員人数が変化しないので車両姿勢角θvが変化することがなく、車両走行中における合成角度θの変化は路面傾斜角θrの変化であると判断できる一方、車両停車中に路面傾斜角θrが変化することがなく、車両停車中における合成角度θの変化は車両姿勢角θvの変化であると判断できることから、光軸制御部33は、車両停車中に演算部32により演算される合成角度θの変化から車両姿勢角θvの変化を導出し、車両走行中に演算部32により演算される合成角度θの変化から路面傾斜角θrの変化を導出する。
【0024】
具体的に説明すると、例えば車両メーカの工場等において、車両を水平面に設置して基準状態とし、当該基準状態におけるエアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21の加速度検出データを送信部24から送信し、この加速度検出データを光軸制御用ECU3の受信部31により受信し、光軸制御部33によりヘッドランプの光軸の傾き角度を初期状態に制御する。
【0025】
このとき、基準状態における路面傾斜角θr及び車両姿勢角θvはいずれも0°であるため、これらを路面傾斜角基準値(θr=0°)、車両姿勢角基準値(θv=0°)が光軸制御用ECU3のメモリ34に記憶される。
【0026】
そして、イグニッションスイッチのオン状態であって車両が走行から停車に変化した際に、光軸制御用ECU3の演算部32により、エアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21による加速度検出データから演算される現在の合成角度θから、光軸制御用ECU3のメモリ34に記憶されている車両姿勢角基準値を減算し、路面傾斜角θrを導出してこれを新たな路面傾斜角基準値としてメモリ34に記憶し、この処理の繰り返しにより、路面傾斜角θrの変化と推定される車両走行中の合成角度θの変化を路面傾斜角基準値として記憶、更新する。
【0027】
一方、イグニッションスイッチがオンされた状態であって、車両停車中に、光軸制御用ECU3の演算部32により、エアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21による加速度検出データから演算される現在の合成角度θから、光軸制御用ECU3のメモリ34に記憶されている路面傾斜角基準値を減算し、車両姿勢角θvを導出し、これを新たな車両姿勢角基準値としてメモリ34に記憶する。この処理の繰り返しにより、車両姿勢角θvの変化と推定される車両走行中の合成角度θの変化を車両姿勢角基準値として記憶、保持する。
【0028】
また、一度イグニッションスイッチがオフされた後にオンされた状態であっても、車両停車中に、光軸制御用ECU3の演算部32により、エアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21による加速度検出データから演算される現在の合成角度θから、光軸制御用ECU3のメモリ34に記憶されている路面傾斜角基準値を減算し、車両姿勢角θvを導出し、これを新たな車両姿勢角基準値としてメモリ34に記憶する。これにより、イグニッションスイッチがオフされた状態で車両の傾きが変わった場合でも、車両姿勢角を認識することが可能である。ところが、走行から停車した直後にイグニッションスイッチがオフされてしまった場合や、走行から停車した直後に風や人などの要因で車が揺れ続けた場合など、路面傾斜角基準値をイグニッションスイッチがオン中に算出できないケースが存在し、イグニッションスイッチがオフされた後にCAN通信を停止すると路面傾斜角基準値を算出できずに、光軸制御できない状態に陥るおそれがある。
【0029】
そこで、その対策として本発明では以下に説明する制御を行う。
【0030】
路面傾斜角基準値を算出する前にイグニッションスイッチがオフされた際の対策として、車両が停止した直後にイグニッションスイッチのオンオフにかかわらず、エアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21による加速度検出データをメモリ23に記憶し、次にイグニッションスイッチがオンされた直後に、メモリ23に記憶した車両が停車した直後の加速度検出データを送信部24から送信する。そして、イグニッションスイッチのオン直後に送信部24から送信される加速度検出データを光軸制御用ECU3の受信部31により受信し、受信した加速度検出データから演算される合成角度θから、光軸制御用ECU3のメモリ34に記憶されている路面傾斜角基準値を減算して車両姿勢角θvを導出し、導出した車両姿勢角θvに応じて光軸制御部33によりヘッドランプの光軸の傾き角度を制御する。
【0031】
したがって、車両が停車した直後のエアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21による加速度検出データをメモリ23に記憶しておき、イグニッションスイッチのオン直後にエアバッグ制御用ECU2の送信部24からメモリ23に記憶された加速度検出データを送信し、この送信データを光軸制御用ECU3の受信部31により受信して車両姿勢角θvを導出するため、イグニッションスイッチのオフ時に光軸制御用ECU3が加速度検出データの受信のためにウェイクアップ状態になることがなく、光軸制御用ECU3のウェイクアップによる消費電流の増加が防止される。
【0032】
次に、ヘッドランプの光軸の傾き角度の制御手順について、図2図3のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、エアバッグ制御用ECU2のイグニッションスイッチのオンからオフに移行する際の動作について、図2を参照して説明する。
【0034】
図2に示すように、イグニッションスイッチのオン時に、エアバッグ制御用ECU2の送信部24から前回の車両停車時に加速度センサ21により検出された加速度検出データが送信され(ステップS1)、その後ブレーキペダルの操作量、車速センサによる車速やシフトレバーの位置等に基づき、車両が停車しているか否かの判定がなされ(ステップS2)、車両が走行中でステップS2の判定結果がNOであれば後述するステップS6に移行し、車両が停車してステップS2の判定結果がYESであれば、車両が安定しているか否かの判定がなされ(ステップS3)、この判定結果がNOであれば後述するステップS6に移行する。
【0035】
一方、ステップS3の判定結果がYESであれば、停車状態の車両への乗員の乗り降りや積載物の積み下ろしがなく安定しているか否かの判定がなされ(ステップS4)、この判定結果がNOであれば後述するステップS6に移行し、ステップS4の判定結果がYESであれば、停車時の加速度センサ21による加速度検出データがメモリ23に記憶された後(ステップS5)、イグニッションスイッチがオフされたか否かの判定がなされる(ステップS6)。
【0036】
そして、イグニッションスイッチがオンのままでステップS6の判定結果がNOであれば、加速度センサ21による現在の加速度検出データが送信部24から送信され(ステップS7)、イグニッションスイッチがオフされてステップS6の判定結果がYESであれば、イグニッションスイッチがオフの状態で、停車時の加速度センサ21による加速度検出データがメモリ23に記憶済か否かの判定がなされ(ステップS8)、この判定結果がNOであれば上記したステップS2の処理に戻り、ステップS8の判定結果がYESであれば、エアバッグ制御用ECU2への電源が遮断されてエアバッグ制御用ECU2はスリープ状態になり(ステップS9)、イグニッションスイッチのオンからオフへの移行時におけるエアバッグ制御用ECU2の動作は終了する。
【0037】
次に、光軸制御用ECU3のイグニッションスイッチのオンからオフに移行する際の動作について、図3を参照して説明する。
【0038】
図3に示すように、イグニッションスイッチのオン時に、メモリ34から路面傾斜角基準値及び車両姿勢角基準値が読み出され(ステップS21)、路面傾斜角基準値が保持されているかどうかの判定がなされ(ステップS22)、この判定結果がYESであれば後述するステップS26に移行し、ステップS22の判定結果がNOであれば、エアバッグ制御用ECU2の送信部24から送信される停車時の加速度検出データが受信部31により受信され(ステップS23)、受信された加速度検出データに基づいて演算される合成角度θ(=路面傾斜角+車両姿勢角)から、車両姿勢角基準値が減算されて路面傾斜角θrが導出され(ステップS24)、導出された路面傾斜角θrが新たに路面傾斜角基準値としてメモリ34に記憶、更新され(ステップS25)、その後ステップS26に移行する。
【0039】
そして、ステップS26において、ブレーキペダルの操作量、車速センサによる車速やシフトレバーの位置等に基づき、車両が停車しているか否かの判定がなされ(ステップS26)、車両が走行中でステップS26の判定結果がNOであれば後述するステップS34に移行し、車両が停車してステップS26の判定結果がYESであれば、車両が安定しているか否かの判定がなされ(ステップS27)、この判定結果がNOであれば後述すステップS34に移行し、ステップS27の判定結果がYESであれば、前回判定が車両走行中になされたか否かの判定がなされ(ステップS28)、この判定結果がYESであれば後述するステップS29に移行し、ステップS28の判定結果がNOであれば、後述するステップS31に移行する。
【0040】
ステップ29では、受信部31により受信された現在の加速度検出データに基づいて演算される合成角度θ(=路面傾斜角+車両姿勢角)から、車両姿勢角基準値が減算されて路面傾斜角θrが導出され(ステップS29)、導出された路面傾斜角θrが新たに路面傾斜角基準値としてメモリ34に記憶、更新され(ステップS30)、その後ステップS34に移行する。
【0041】
また、ステップS31では、受信部31により受信された現在の加速度検出データに基づいて演算される合成角度θ(=路面傾斜角+車両姿勢角)から、路面傾斜角基準値が減算されて車両姿勢角θvが導出され(ステップS31)、導出された車両姿勢角θvが新たに車両姿勢角基準値としてメモリ34に記憶、更新され(ステップS32)、新たな車両姿勢角基準値に応じて光軸制御部33によりヘッドランプの光軸の傾き角度が制御され(ステップS33)、その後ステップS34に移行する。
【0042】
そして、ステップS34では、イグニッションスイッチがオフされたか否かの判定がなされ(ステップS34)、イグニッションスイッチがオンのままでステップS34の判定結果がNOであれば上記したステップS26の処理に戻り、イグニッションスイッチがオフされてステップS34の判定結果がYESであれば、路面傾斜角基準値は更新済みか否かの判定がなされ(ステップS35)、路面傾斜角基準値は更新済みでステップS35の判定結果がYESであれば、路面傾斜角基準値及び車両姿勢角基準値がメモリ34に記憶保存され、路面傾斜角基準値は更新されておらずステップS35の判定結果がNOあれば、路面傾斜角基準値がメモリ34に記憶保存され(ステップS37)、その後、光軸制御用ECU3への電源が遮断されて光軸制御用ECU3はスリープ状態になり(ステップS38)、イグニッションスイッチのオンからオフへの移行時における光軸制御用ECU3の動作は終了する。
【0043】
以上のように、上記した第1実施形態によれば、イグニッションスイッチのオフ直前のエアバッグ制御用ECU2の加速度センサ21による加速度検出データをメモリ23に記憶しておき、イグニッションスイッチのオン直後にエアバッグ制御用ECU2の送信部24からメモリ23に記憶された加速度検出データを送信し、この送信データを光軸制御用ECU3の受信部31により受信して車両姿勢角θvを導出することができるため、イグニッションスイッチのオフ時に光軸制御用ECU3が加速度検出データの受信のためにウェイクアップ状態になるのを防止することができ、光軸制御用ECU3のウェイクアップによる消費電流の増加を未然に防止してバッテリの消耗を抑制することができる。
【0044】
また、エアバッグ制御用ECU2に設けた加速度センサ21を、光軸制御用ECU3によるヘッドランプの光軸の傾き角度制御(オートレベリング制御)にも兼用するようにしたため、オートレベリング制御のための専用の加速度センサを設ける必要がなく、コストの低減を図ることができる。
【0045】
(第2実施形態)
本発明に係る車両用制御システムの第2実施形態について、図4を参照して説明する。第2実施形態における基本的な装置構成は上記した第1実施形態のものと同じであるため、以下の説明では、図1も参照するものとし、主として第2実施形態が第1実施形態と異なる点について説明する。
【0046】
本実施形態では、エアバッグ制御用ECU2のイグニッションスイッチのオンからオフに移行する際の動作は、第1実施形態と同じであり、光軸制御用ECU3のイグニッションスイッチのオンからオフに移行する際の動作が第1実施形態と異なる。
【0047】
具体的には、イグニッションスイッチのオン状態において、車両の停車中、イグニッションスイッチのオフ直前にエアバッグ制御用ECU2から送信される加速度センサ21による停車時の加速度検出データを受信部31により受信し、演算部32により停車時の加速度検出データに基づき停車時の合成角度Tθsを演算してメモリ34に記憶するようにしている。そして、停車時における乗員の乗降等による車両姿勢角の変化に対応するために、停車時の光軸制御角度TθLに現在の合成角度θsを加算し更にメモリ34に記憶した合成角度Tθsを減算することにより、光軸制御角度θLを導出して、ヘッドランプの光軸の傾き角度を導出した光軸制御角度θLに制御する一方、車両走行中は、変化しない停車時の光軸制御角TθLを保持してヘッドランプの光軸の傾き角度を制御し、イグニッションスイッチのオフによる光軸制御用ECU3の電源を遮断する。
【0048】
次に、光軸制御用ECU3のイグニッションスイッチのオンからオフに移行する際の動作について、図4のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0049】
図4に示すように、イグニッションスイッチのオン時に、メモリ34から路面傾斜角基準値及び車両姿勢角基準値が読み出され(ステップS41)、車両停車時の加速度検出データに基づく合成角度Tθsがメモリ34に記憶されているか否かの判定がなされ(ステップS42)、この判定結果がYESであれば後述するステップS45に移行し、ステップS42の判定結果がNOであれば、エアバッグ制御用ECU2の送信部24から送信される停車時の加速度検出データが受信部31により受信され(ステップS43)、受信された加速度検出データに基づいて停車時の合成角度Tθs(=停車時の路面傾斜角+停車時の車両姿勢角)が導出され(ステップS44)、その後ステップS45に移行する。
【0050】
そして、ステップS45において、ブレーキペダルの操作量、車速センサによる車速やシフトレバーの位置等に基づき、車両が停車しているか否かの判定がなされ(ステップS45)、車両が走行中でステップS456の判定結果がNOであれば後述するステップS52に移行し、車両が停車してステップS45の判定結果がYESであれば、車両が安定しているか否かの判定がなされ(ステップS46)、この判定結果がNOであれば後述すステップS52に移行し、ステップS46の判定結果がYESであれば、前回判定が車両走行中になされたか否かの判定がなされ(ステップS47)、この判定結果がYESであれば後述するステップS48に移行し、前回判定が車両停車中になされてステップS47の判定結果がNOであれば、乗員の乗降等による車両姿勢角の変化によるヘッドランプの光軸制御角度の制御が必要であり得るため、後述するステップS50に移行する。
【0051】
ステップ48では、メモリ34に記憶されていなければ受信部31により受信された停車時の加速度検出データに基づいて停車時の合成角度Tθs(=停車時の路面傾斜角+停車時の車両姿勢角)が導出され(ステップS48)、更に変化しない停車時のヘッドランプの光軸制御角度TθLが保持され(ステップS49)、その後ステップS52に移行する。なお、ステップS48において、ステップS42で判定した停車時の合成角度Tθsがメモリ34に記憶されていればその合成角度Tθsが利用される。
【0052】
また、ステップS50では、停車時の光軸制御角度TθL、現在の合成角度θs、停車時の合成角度Tθsに基づき、ヘッドランプの光軸制御角度θL(=TθL+θs-Tθs)が演算部32により演算され(ステップS50)、光軸制御部33によりヘッドランプの光軸の傾き角度が演算された光軸制御角度θLに制御され(ステップS51)、その後ステップS52に移行する。
【0053】
そして、ステップS52では、イグニッションスイッチがオフされたか否かの判定がなされ(ステップS52)、イグニッションスイッチがオンのままでステップS52の判定結果がNOであれば上記したステップS45の処理に戻り、イグニッションスイッチがオフされてステップS52の判定結果がYESであれば、停車時の合成角度Tθsが導出済みか否かの判定がなされ(ステップS53)、この判定結果がYESであれば、停車時の光軸制御角度TθL及び合成角度Tθsがメモリ34に記憶され(ステップS54)、ステップS53の判定結果がNOあれば停車時の光軸制御角度TθLがメモリ34に記憶され(ステップS55)、その後、光軸制御用ECU3への電源が遮断されて光軸制御用ECU3はスリープ状態になり(ステップS56)、イグニッションスイッチのオンからオフへの移行時における光軸制御用ECU3の動作は終了する。
【0054】
したがって、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、イグニッションスイッチのオフ時に光軸制御用ECU3が加速度検出データの受信のためにウェイクアップ状態になるのを防止することができ、光軸制御用ECU3のウェイクアップによる消費電流の増加を未然に防止してバッテリの消耗を抑制することができる。
【0055】
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0056】
例えば、上記した第1、第2実施形態において、イグニッションスイッチのオフ直前の加速度検出データをメモリ23に記憶して、イグニッションスイッチのオン直後に送信部24からその加速度検出データを送信するとしたが、イグニッションスイッチのオフ直前の所定時間に検出された加速度検出データの平均値をメモリ23に記憶して、イグニッションスイッチのオン直後に送信部24からその平均値を送信するようにしてもよく、このように平均値を送受信することにより、ヘッドランプの光軸の傾き角度制御(オートレベリング制御)における精度の向上を図ることが可能になる。
【0057】
また、上記した各実施形態では、第1の制御装置をエアバッグ制御用ECU2として例について説明したが、第1の制御装置をエアバッグ制御用ECU2に限らず、車両の横滑り抑制制御用ECUやカーテンエアバッグ制御用ECUであってもよい。
【0058】
さらに、これらエアバッグ制御用ECU、横滑り抑制制御用ECU、カーテンエアバッグ制御用ECUなどの別々の制御を行う複数の第1の制御装置それぞれに搭載された加速度センサによる加速度検出データを、光軸制御用ECU3において利用するようにしてもよく、この場合、光軸制御用ECU3の受信部31により、複数の第1の制御装置の送信部から送信される加速度検出データを択一的に受信するのが望ましい。こうすると、加速度センサ(加速度検出部)を備えた第1の制御装置が複数ある場合であっても、複数の加速度センサからの検出データをすべて受信して処理する場合のような複雑な処理が不要になり、イグニッションスイッチのオフ時に、第2の制御装置である光軸制御用ECU3が加速度検出データの受信のためにウェイクアップ状態になることを防止でき、光軸制御用ECU3のウェイクアップによる消費電流の増加を防止することができる。
【0059】
また、上記した実施形態では、CAN通信により加速度センサ21による加速度検出データを送受信する例を示したが、CANではない通信方式により加速度センサ21による加速度検出データを送受信する場合にも、本発明を実施することができて上記した実施形態と同等の効果を奏することが可能である。
【0060】
また、第2の制御装置は上記した光軸制御用ECU3に限るものではなく、要するに第1の制御装置の加速度検出部により加速度検出データを利用して所定の制御を行うものであれば、本発明を適用することができる。
【0061】
また、加速度センサ21の取り付け状態におけるばらつきを補正する場合のために、ばらつき補正に必要な情報を事前に光軸制御用ECU3に送信しておくことが望ましい。さらに、加速度検出データを平均化する前後のデータを光軸制御用ECU3側に送信するようにすれば、光軸制御用ECU3の演算部32により平均化前後の加速度検出データに基づいて加速度センサ21の取付ばらつきの補正処理を行うことができる。
【0062】
また、上記した実施形態では、イグニッションスイッチのオフ直前に加速度センサ21により加速度検出データを検出して記憶した後、イグニッションスイッチのオフにより通信を停止するようにしているが、イグニッションスイッチのオフ直前に加速度センサ21により加速度検出データを検出できなかった場合にも通信を停止して、消費電流を抑制するようにしてもよい。
【0063】
また、エアバッグ制御用ECU2などの第1の制御装置側において、加速度検出部(加速度センサ)による加速度検出データに基づいて路面傾斜角、車両姿勢角の演算を行ってメモリ23に記憶しておくようにしてもよい。
【0064】
そして、本発明は、加速度センサの検出データに基づき車両の制御を行う車両用制御システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 …車両用制御システム
2 …エアバッグ制御用ECU(第1の制御装置)
3 …光軸制御用ECU(第2の制御装置)
4 …通信バス
21 …加速度センサ(速度検出部)
23 …メモリ(記憶部)
24 …送信部
31 …受信部
32 …演算部
33 …光軸制御部
図1
図2
図3
図4