(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102725
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】蓄電装置、管理装置、蓄電素子の温度推定方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01K 3/14 20060101AFI20240724BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240724BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20240724BHJP
【FI】
G01K3/14
H01M10/48 301
G01K1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006811
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】向田 光志
(72)【発明者】
【氏名】時安 広大
(72)【発明者】
【氏名】高井 誠治
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
(72)【発明者】
【氏名】森戸 貞治
(72)【発明者】
【氏名】梅田 昭仁
【テーマコード(参考)】
2F056
5H030
【Fターム(参考)】
2F056CL07
5H030AA09
5H030AS08
5H030FF22
(57)【要約】
【課題】蓄電装置、管理装置、蓄電素子の温度推定方法、及びコンピュータプログラムの提供。
【解決手段】蓄電装置は、蓄電素子と、前記回路基板上の部位又は前記蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサと、前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサと、前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する演算装置とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
回路基板と、
前記回路基板上の部位又は前記蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサと、
前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサと、
前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する演算装置と
を備える蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電素子は、隣接して複数配置されており、
前記演算装置は、前記第1温度センサにより計測された温度と前記第2温度センサにより計測された温度との間の差と、予め取得された前記回路基板上の前記部位又は前記第1部位の温度と各蓄電素子の温度との間の差とに基づき、各蓄電素子の温度を推定する
請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記回路基板に設けられる発熱部品と、
前記発熱部品の状態を計測する第3センサと
を更に備え、
前記演算装置は、
前記第3センサにより計測される状態に応じて、前記温度勾配に代えて、前記蓄電素子を流れる電流に基づいて、前記蓄電素子の温度を推定する
請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記発熱部品は、前記蓄電素子の通電をオン又はオフするスイッチである
請求項3に記載の蓄電装置。
【請求項5】
回路基板上の部位又は蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサと、前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサとから温度データを取得する取得部と、
前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する推定部と
を備える管理装置。
【請求項6】
回路基板上の部位又は蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサから温度データを取得し、
前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサから温度データを取得し、
前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する
処理をコンピュータにより実行する蓄電素子の温度推定方法。
【請求項7】
回路基板上の部位又は蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサから温度データを取得し、
前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサから温度データを取得し、
前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置、管理装置、蓄電素子の温度推定方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子を備える蓄電装置を安全に使用し、性能を最大限発揮するためには、蓄電素子の内部の温度を精度よく検知することが重要である。
【0003】
従来、蓄電素子のケース天面の温度を計測して、蓄電素子内部の温度として代用している(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蓄電素子のケース天面の温度と、蓄電素子内部の温度とは乖離する。この乖離を考慮に入れるべく、監視に用いる閾値(例えば、高温異常を検知するための閾値)の安全マージンを大きくとる必要があり、蓄電素子の性能を最大限まで発揮することは困難であった。
【0006】
本発明は、蓄電素子の温度を適性に推定できる蓄電装置、管理装置、蓄電素子の温度推定方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る蓄電装置は、蓄電素子と、回路基板と、前記回路基板上の部位又は前記蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサと、前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサと、前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する演算装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、蓄電素子の温度を適性に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る蓄電装置の構成例を示す斜視図である。
【
図6】管理装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図7】環境温度を急峻に変化させたときの基板温度やセル内部温度の時間推移を示すグラフである。
【
図8】蓄電装置の熱回路モデルを表す回路図である。
【
図10】実施の形態1に係る管理装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【
図11】実施の形態1での推定結果を示すグラフである。
【
図12】実施の形態2における第1温度センサの配置を説明する説明図である。
【
図13】実施の形態2での推定結果を示すグラフである。
【
図14】温度勾配方式とジュール熱方式とを切り替るタイミングを説明する説明図である。
【
図15】実施の形態3に係る管理装置が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)本開示の蓄電装置は、蓄電素子と、回路基板と、前記回路基板上の部位又は前記蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサと、前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサと、前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する演算装置とを備える。
【0011】
蓄電装置は、前記蓄電素子の熱を前記回路基板に伝える伝熱部材を更に備えてもよく、第1温度センサは、前記伝熱部材が連結される前記回路基板上の連結部位の温度を計測してもよい。
蓄電素子と回路基板とを繋ぐ伝熱部材は、その形状及び材質に応じた熱抵抗(熱の伝わりにくさ)を有する。伝熱部材を用いることで、蓄電素子から離れた部位(例えば、連結部位)の温度から蓄電素子の温度を推定できる。これにより、回路基板及び蓄電装置の設計自由度を向上でき、量産に適した蓄電装置の設計を採用できる。
【0012】
代替的に、蓄電素子の内部に近い第1部位(近接部位)の温度から蓄電素子の温度を推定してもよい。ここで、第1温度センサが温度を計測する第1部位とは、第2温度センサが計測する部位より、蓄電素子の内部に近い部位をいう。第1部位の温度は蓄電素子の温度をよく反映するので、第1部位の温度を用いることにより、蓄電素子の温度を適性に推定できる。
【0013】
本願発明者らは、周囲温度と回路基板上の部位(例えば連結部位)又は第1部位の温度との差と、回路基板上の部位(例えば連結部位)又は第1部位の温度と蓄電素子の温度(内部温度)との差との比率が、時間の経過にかかわらずほぼ一定であることを見出した(
図9参照)。上記(1)の蓄電装置では、第1温度センサにより計測される温度と、第2温度センサにより計測される温度との温度勾配を考慮した温度勾配方式を適用して、蓄電素子の温度を適正に推定できる。
【0014】
(2)上記(1)に記載の蓄電装置において、前記蓄電素子は、隣接して複数配置されてもよく、前記演算装置は、前記第1温度センサにより計測された温度と前記第2温度センサにより計測された温度との間の差と、予め取得された前記回路基板上の前記部位又は前記第1部位の温度と各蓄電素子の温度との間の差とに基づき、各蓄電素子の温度を推定してもよい。
【0015】
多くの場合、蓄電装置は隣接して配置された複数の蓄電素子を有する。回路基板上の連結部位又は第1部位からの距離は各蓄電素子で異なり、熱のこもり方(放熱のしやすさ)も異なる。上記(2)の蓄電装置によれば、内部温度と連結部位又は第1部位の温度との差を予め取得するので、各蓄電素子の温度を適性に推定できる。
【0016】
(3)上記(1)又は(2)に記載の蓄電装置において、前記回路基板に設けられる発熱部品と、前記発熱部品の状態を計測する第3センサとを更に備え、前記演算装置は、前記第3センサにより計測される状態に応じて、前記温度勾配に代えて、前記蓄電素子を流れる電流に基づいて、前記蓄電素子の温度を推定してもよい。
第3センサは、発熱部品の温度を計測する温度センサであってもよいし、発熱部品を流れる電流を計測する電流センサであってもよい。
【0017】
回路基板に設けられる発熱部品からの熱の影響で、伝熱部材による伝熱を利用した方式では蓄電素子の温度推定の精度が低下する場合がある。例えば、複数の蓄電素子の充電状態(又は電圧)をバランスさせるバランサの発熱が大きくなると、温度勾配方式が前提としている熱抵抗モデル(
図8参照)で現実の熱挙動を模擬できなくなる。上記(3)の蓄電装置によれば、第3センサによる計測値に応じて、蓄電素子を流れる電流に基づく方式に切り替えて温度推定を行うので、温度推定の精度を向上できる。
【0018】
(4)上記(3)に記載の蓄電装置において、前記発熱部品は、前記蓄電素子の通電をオン又はオフするスイッチであってもよい。
スイッチは、半導体スイッチであってもよいし、リレーであってもよいし、その他のオンボードスイッチであってもよい。
【0019】
蓄電素子の保護用の遮断器として回路基板に設けられるスイッチからの熱の影響で、伝熱部材による伝熱を利用した方式では蓄電素子の温度推定の精度が低下する場合がある。例えば、ハイレートで蓄電素子が充電/放電されると、スイッチの発熱が大きくなり、温度勾配方式が前提としている熱抵抗モデルで現実の熱挙動を模擬できなくなる。上記(4)の蓄電装置によれば、第3センサによる計測値に応じて、蓄電素子を流れる電流に基づく方式に切り替えて温度推定を行うので、温度推定の精度を向上できる。
【0020】
(5)本開示の管理装置は、回路基板上の部位又は蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサと、前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサとから温度データを取得する取得部と、前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する推定部とを備える。
【0021】
上記(5)の管理装置によれば、温度勾配方式を適用して、蓄電素子の温度を適正に推定できる。
【0022】
(6)本開示の蓄電素子の温度推定方法は、回路基板上の部位又は蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサから温度データを取得し、前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサから温度データを取得し、前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する処理をコンピュータにより実行する。
【0023】
上記(6)の蓄電素子の温度推定方法によれば、温度勾配方式を適用して、蓄電素子の温度を適正に推定できる。
【0024】
(7)本開示のコンピュータプログラムは、回路基板上の部位又は蓄電素子の内部に近い第1部位の温度を計測する第1温度センサから温度データを取得し、前記回路基板の周囲温度又は前記第1部位より前記蓄電素子の内部から離れた第2部位の温度を計測する第2温度センサから温度データを取得し、前記第1温度センサにより計測される温度と、前記第2温度センサにより計測される温度との温度勾配に基づき、前記蓄電素子の温度を推定する処理をコンピュータに実行させる。
【0025】
上記(7)のコンピュータプログラムによれば、温度勾配方式を適用して、蓄電素子の温度を適正に推定できる。
【0026】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態に係る蓄電装置1の構成例を示す斜視図、
図2は蓄電装置1の分解斜視図である。以下では、図中に示す「前後」、「左右」、及び「上下」の各方向を参照しながら、蓄電装置1の構成例について説明する。
【0027】
蓄電装置1は、例えば、エンジン車両、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の車両や、その他の移動体に好適に搭載されるバッテリーである。
【0028】
蓄電装置1は、蓄電素子2、バスバーユニット4、及び回路基板6を備える。蓄電素子2、バスバーユニット4、及び回路基板6は、収容ケース10の内部に収容される。収容ケース10は合成樹脂製である。収容ケース10は、上面が開口したケース本体11と、ケース本体11の開口を覆うカバー12とを備える。ケース本体11及びカバー12の寸法は、内部に収容される蓄電素子2の寸法や個数に応じて設計される。ケース本体11及びカバー12は、蓄電素子2、バスバーユニット4、及び回路基板6を収容した状態にて、ネジ等の締結具、接着剤又は溶着等により液密に固着される。
【0029】
蓄電素子2は、例えばリチウムイオン二次電池による電池セルである。蓄電素子2は、中空直方体状のケース21を備える。ケース21の上面には蓄電素子2の正端子22及び負端子23が設けられている。ケース21の内部には電極体や電解液などが収容される。
【0030】
電極体は、詳細は図示しないが、シート状の正極と、負極とを、2枚のシート状のセパレータを介して重ね合わせ、これらを巻回(縦巻き又は横巻き)することにより構成される。セパレータは、多孔性の樹脂フィルムにより形成される。多孔性の樹脂フィルムとして、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂からなる多孔性樹脂フィルムを使用できる。
【0031】
正極は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金等からなる長尺帯状の正極基材の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。正極活物質層は、正極活物質を含む。正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を使用できる。正極活物質としては、例えばLiFePO4 が挙げられる。正極活物質層は、導電助剤、バインダ等を更に含んでもよい。
【0032】
負極は、例えば銅又は銅合金等からなる長尺帯状の負極基材の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。負極活物質層は、負極活物質を含む。負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料を使用できる。負極活物質としては、例えば黒鉛(グラファイト)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。負極活物質層は、バインダ、増粘剤等を更に含んでもよい。
【0033】
電解質には、従来のリチウムイオン二次電池と同様のものを使用できる。例えば、電解質として、有機溶媒中に支持塩を含有させた電解質を使用できる。有機溶媒として、例えば、カーボネート類、エステル類、エーテル類等の非プロトン性溶媒が用いられる。支持塩として、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 等のリチウム塩が好適に用いられる。電解質は、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0034】
実施の形態において、蓄電素子2は、リチウムイオン二次電池による電池セルである。代替的に、蓄電素子2は、全固体電池、鉛電池、レドックスフロー電池、亜鉛空気電池、アルカリマンガン電池、リチウム硫黄電池、ナトリウム硫黄電池、酸化銀亜鉛電池、ニッケル水素電池、溶融塩熱電池などによる電池セルであってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0035】
実施の形態において、蓄電素子2は、巻回型の電極体を備えた角型の電池セルである。代替的に、蓄電素子2は、円筒型の電池セル、又はラミネート型(パウチ型)の電池セルであってもよく、積層型の電極体を備えた電池セルであってもよい。
【0036】
実施の形態において、ケース本体11に収容されている蓄電素子2の数は4個である。代替的に、ケース本体11に収容される蓄電素子2の数は、1個以上4個未満であってもよく、4個超であってもよい。
【0037】
以下の説明では、蓄電素子2は、ケース本体11の前側から順に、第1蓄電素子2A、第2蓄電素子2B、第3蓄電素子2C、第4蓄電素子2Dとも記載される。すなわち、第1蓄電素子2Aの後面に隣接して第2蓄電素子2Bが配置され、第2蓄電素子2Bの後面に隣接して第3蓄電素子2Cが配置され、第3蓄電素子2Cの後面に隣接して第4蓄電素子2Dが配置されている。
図2の例では、第1蓄電素子2A及び第3蓄電素子2Cは、正端子22が左、負端子23が右となる向きにケース本体11に収容され、第2蓄電素子2B及び第4蓄電素子2Dは、正端子22が右、負端子23が左となる向きにケース本体11に収容されている。
【0038】
蓄電素子2の端子面上にはバスバーユニット4が配置される。バスバーユニット4は、複数のバスバー41~45(
図4を参照)と、これらのバスバー41~45を保持する樹脂製のバスバーフレーム46とを備える。バスバーフレーム46は、複数の蓄電素子2の上側を覆って、複数の蓄電素子2から発せられる輻射熱を遮る。バスバーフレーム46の上面には回路基板6が配置される。回路基板6は、バスバーフレーム46の上面から離隔した状態にて、スペーサ47を介してバスバーフレーム46に固定される。回路基板6と蓄電素子2との間にはバスバーフレーム46や空気等の断熱層が存在するため、回路基板6は、蓄電素子2から熱的に離隔して配置されている。実施の形態において、回路基板6と蓄電素子2とを直接的に繋ぐ金属部材は、バスバー41~45のみである。バスバー41~45は、バスバーフレーム46にインサート成形されている部分以外は、回路基板6と蓄電素子2との間の断熱層を形成している空気に曝されていて樹脂などで覆われていない。そのため、バスバー41~45から、樹脂部材を介して熱が逃げにくい。
【0039】
バスバーユニット4が備えるバスバー41~45は、蓄電素子2に対する充放電経路を構成する。バスバー41~45は、金属製であり、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等の導電性に優れ、熱伝導性が高い材料により形成される。
【0040】
以下、バスバー41~45の配置について説明する。
図3はバスバー41~45の配置を示す平面図、
図4はバスバー41~45の配置を示す分解斜視図である。
図3及び
図4では、説明のために、一部の部品が除かれている。バスバー41は、第1蓄電素子2Aの負端子23を一方の外部端子13Aに接続するための部材である。バスバー41は、基部411、屈曲部412、第1連結部413、及び第2連結部414を備える。基部411は、第1蓄電素子2Aの負端子23に接合される。接合には溶接などの既存の手法が用いられる。屈曲部412は、基部411と同一の面内から導体63の高さ位置まで立ち上がる部材であり、基部411と第1連結部413とを接続する。第1連結部413は、ネジ等の締結具613によって導体63の一端に連結される。導体63は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等の導電性に優れた平板状の部材である。導体63の他端には、バスバー64(
図5を参照)を介して外部端子13Aが接続される。導体63は、外部端子13Aに流れる電流を検出するためのシャント抵抗として配置されている。第2連結部414は、第1連結部413の後端に連なる部材であり、ネジ等の締結具614によって回路基板6の下面に連結される。回路基板6に連結される第2連結部414は、平面視において幅が細くなっていて、バスバー41の他の箇所(充放電経路(パワーライン)を構成する箇所)より断面積が小さい。
【0041】
バスバー42は、第1蓄電素子2Aの正端子22と、第2蓄電素子2Bの負端子23とを電気的に接続する。バスバー42は、第1基部421、第2基部422、湾曲部423、屈曲部424、及び連結部425を備える。第1基部421は、第1蓄電素子2Aの正端子22に接合される。第2基部422は、第2蓄電素子2Bの負端子23に接合される。接合には溶接などの既存の手法が用いられる。湾曲部423は、上向きに湾曲した半円環状の部材である。湾曲部423は、製造バラツキによる蓄電素子2の高さの違いを許容し、端子間の電気的な接続を維持するために設けられている。屈曲部424は、第2基部422と同一の面内から回路基板6の高さ位置まで立ち上がる部材であり、第2基部422と連結部425とを接続する。連結部425は、ネジ等の締結具625によって回路基板6の下面に連結される。回路基板6に連結される連結部425及び屈曲部424は、平面視において幅が細くなっていて、バスバー42の他の箇所(充放電経路(パワーライン)を構成する箇所)より断面積が小さい。回路基板6上の熱は、締結具625及びバスバー42を介して、第2蓄電素子2B及び第1蓄電素子2Aに伝わる。充放電時に第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bにおいて発生する熱は、バスバー42及び締結具625を介して、回路基板6の上面に伝わる。
【0042】
バスバー43は、第2蓄電素子2Bの正端子22と、第3蓄電素子2Cの負端子23とを電気的に接続する。バスバー43は、第1基部431、第2基部432、湾曲部433、屈曲部434、及び連結部435を備える。第1基部431は、第2蓄電素子2Bの正端子22に接合される。第2基部432は、第3蓄電素子2Cの負端子23に接合される。接合には溶接などの既存の手法が用いられる。湾曲部433は、上向きに湾曲した半円環状の部材である。湾曲部433は、製造バラツキによる蓄電素子2の高さの違いを許容し、端子間の電気的な接続を維持するために設けられている。屈曲部434は、第2基部432と同一の面内から回路基板6の高さ位置まで立ち上がる部分を有し、第2基部432と連結部435とを接続する部材である。連結部435は、ネジ等の締結具635によって回路基板6の下面に連結される。回路基板6に連結される連結部435及び屈曲部434は、平面視において幅が細くなっていて、バスバー43の他の箇所(充放電経路(パワーライン)を構成する箇所)より断面積が小さい。回路基板6上の熱は、締結具635及びバスバー43を介して、第3蓄電素子2C及び第2蓄電素子2Bに伝わる。充放電時に第2蓄電素子2B及び第3蓄電素子2Cにおいて発生する熱は、バスバー43及び締結具635を介して、回路基板6の上面に伝わる。
【0043】
バスバー44は、第3蓄電素子2Cの正端子22と、第4蓄電素子2Dの負端子23とを電気的に接続する。バスバー44は、第1基部441、第2基部442、湾曲部443、屈曲部444、及び連結部445を備える。第1基部441は、第3蓄電素子2Cの正端子22に接合される。第2基部442は、第4蓄電素子2Dの負端子23に接合される。接合には溶接などの既存の手法が用いられる。湾曲部443は、上向きに湾曲した半円環状の部材である。湾曲部443は、製造バラツキによる蓄電素子2の高さの違いを許容し、端子間の電気的な接続を維持するために設けられている。屈曲部444は、第2基部442と同一の面内から回路基板6の高さ位置まで立ち上がる部材であり、第2基部442と連結部445とを接続する。連結部445は、ネジ等の締結具645によって回路基板6の下面に連結される。回路基板6に連結される連結部445及び屈曲部444は、平面視において幅が細くなっていて、バスバー44の他の箇所(充放電経路(パワーライン)を構成する箇所)より断面積が小さい。回路基板6上の熱は、締結具645及びバスバー44を介して、第4蓄電素子2D及び第3蓄電素子2Cに伝わる。充放電時に第3蓄電素子2C及び第4蓄電素子2Dにおいて発生する熱は、バスバー44及び締結具645を介して、回路基板6の上面に伝わる。
【0044】
バスバー45は、第4蓄電素子2Dの正端子22を他方の外部端子13Bに接続するための部材である。バスバー45は、基部451、屈曲部452、及び連結部453を備える。基部451は、第4蓄電素子2Dの正端子22に接合される。接合には溶接などの既存の手法が用いられる。屈曲部452は、基部451と同一の面内から回路基板6の高さ位置まで立ち上がる部材であり、基部451と連結部453とを接続する。連結部453は、ネジ等の締結具653によって回路基板6の下面に連結される。
【0045】
図3及び
図4では、4個の蓄電素子2がバスバー41~45により直列に接続されている。代替的に、蓄電素子2は一部又は全部が並列に接続されてもよい。
【0046】
以下、回路基板6の構成について説明する。
図5は回路基板6の構成を説明する平面図である。回路基板6は、樹脂製の基板60と、基板60の上面に配置される遮断回路61とを備える。
【0047】
遮断回路61は、第4蓄電素子2Dの正端子22に接続されるバスバー45と、外部端子13Bに接続されるバスバー62との間の導通路を接続又は遮断するための回路である。バスバー62は、前後方向に延びる平板状の導電部材である。バスバー62の後端はネジ等の締結具654によって基板60の上面に固定され、バスバー62の前端には外部端子13Bが接続される。バスバー45,62間の導通路は、銅や銅合金などの導電性材料によって基板60の上面若しくは基板60の内部に形成され、一端がバスバー45、他端がバスバー62に電気的に接続される配線である。
【0048】
遮断回路61は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体スイッチにより構成される。
図5の例では、バスバー45,62間の導通路として、前後方向に延びる6本の導通路が形成されており、それら6本の導通路には、それぞれ2個のMOSFETが直列(かつ、内部のボディダイオードが逆向き)に接続されている。各導通路に配置される2個のMOSFETは、導通路を接続又は遮断するスイッチとしての機能を有すると共に、導通路を遮断した場合における、蓄電素子2から外部への電流の流出、及び外部から蓄電素子2への電流の流入を防止する機能を有する。代替的に、遮断回路61は、リレーにより構成されてもよく、オンボードスイッチにより構成されてもよい。
【0049】
回路基板6は、更に、第1温度センサTS11~TS13、第2温度センサTS20、及び第3温度センサTS30を備える。実施の形態において、第1温度センサTS11~TS13は、回路基板6上の部位の温度を計測する温度センサ(第1温度センサ)の一例である。第2温度センサTS20は、回路基板6の周囲温度を計測する温度センサ(第2温度センサ)の一例である。第3温度センサTS30は、回路基板6に設けられる発熱部品の状態を計測するセンサ(第3センサ)の一例である。
【0050】
第1温度センサTS11は、例えば、締結具625の近傍に配置され、バスバー42が連結される回路基板6上の連結部位の温度を計測する。締結具625の近傍とは、第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bの熱がバスバー42を介して伝わり、回路基板6の上面で温度変化として検出される位置を表す。第1温度センサTS11は、締結具625の近傍の位置として、第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bの温度と許容範囲内の温度差にある回路基板6上の位置に配置される。第1温度センサTS11は、センサ部の周囲が合成樹脂材等により絶縁されたサーミスタや熱電対などの温度センサである。
【0051】
第1温度センサTS12は、例えば、締結具635の近傍に配置され、バスバー43が連結される回路基板6上の連結部位の温度を計測する。締結具635の近傍とは、第2蓄電素子2B及び第3蓄電素子2Cの熱がバスバー43を介して伝わり、回路基板6の上面で温度変化として検出される位置を表す。第1温度センサTS12は、締結具635の近傍の位置として、第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bの温度と許容範囲内の温度差にある回路基板6上の位置に配置される。第1温度センサTS12は、センサ部の周囲が合成樹脂材等により絶縁されたサーミスタや熱電対などの温度センサである。
【0052】
第1温度センサTS13は、例えば、締結具645の近傍に配置され、バスバー44が連結される回路基板6上の連結部位の温度を計測する。締結具645の近傍とは、第3蓄電素子2C及び第4蓄電素子2Dの熱がバスバー44を介して伝わり、回路基板6の上面で温度変化として検出される位置を表す。第1温度センサTS13は、締結具645の近傍の位置として、第3蓄電素子2C及び第4蓄電素子2Dの温度と許容範囲内の温度差にある回路基板6上の位置に配置される。第1温度センサTS13は、センサ部の周囲が合成樹脂材等により絶縁されたサーミスタや熱電対などの温度センサである。
【0053】
第2温度センサTS20は、回路基板6の周囲温度を計測する。回路基板6の周囲温度とは、回路基板6が設置されている空間(空気)の温度を表す。第2温度センサTS20は、蓄電素子2を含む発熱部品からの熱の影響を受けないように、蓄電素子2や遮断回路61などから十分に離隔した位置に配置される。例えば、第2温度センサTS20は、回路基板6の上面において、締結具614,625,645から離隔した位置に配置される。代替的に、第2温度センサTS20は、収容ケース10のカバー12に配置されてもよく、バスバーフレーム46に配置されてもよい。第2温度センサTS20は、センサ部の周囲が合成樹脂材等により絶縁されたサーミスタや熱電対などの温度センサである。
【0054】
第3温度センサTS30は、例えば、回路基板6上の発熱部品の温度を計測する。
図5の例において、発熱部品は、遮断回路61が備える半導体スイッチである。例えば、ハイレートで蓄電素子2を充放電すると、半導体スイッチの発熱は大きくなる。第3温度センサTS30は発熱部品の近傍に配置される。発熱部品の近傍とは、発熱部品の熱が伝わり、回路基板6の基板の上面で温度変化として検出される位置を表す。第3温度センサTS30は、センサ部の周囲が合成樹脂材等により絶縁されたサーミスタや熱電対などの温度センサである。
【0055】
回路基板6上に複数の蓄電素子2の充電状態(電圧)をバランスさせるバランサが実装されている場合、第3温度センサTS30は、バランサ(発熱部品の他の例)の近傍に配置されてもよい。
【0056】
回路基板6は、更に、通信用のコネクタを備えてもよい。コネクタには、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などの通信規格に準拠した通信ケーブルが接続される。回路基板6は、コネクタに接続された通信ケーブルを介して、車両ECU(Electronic Control Unit)などの外部装置と通信し、外部装置からの指令を受信したり、必要なデータを外部装置へ送信したりする。
【0057】
以下、蓄電装置1の管理装置100について説明する。
図6は管理装置100の内部構成を示すブロック図である。管理装置100は、例えば、蓄電装置1の内部に搭載されるBMU(Battery Management Unit)である。代替的に、管理装置100は、蓄電装置1の外部に接続される端末装置やサーバ装置などのコンピュータであってもよい。管理装置100は、演算部101、記憶部102、通信部103、操作部104、表示部105などを備える。
【0058】
演算部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備えた演算回路である。演算部101が備えるCPUは、ROMや記憶部102に格納されている各種コンピュータプログラムを読み込んで実行し、装置全体を蓄電素子2の温度を推定する演算装置として機能させる。実施の形態において、演算部101は、第1温度センサTS11~TS13により計測される温度と、第2温度センサTS20により計測される温度との温度勾配に基づき、蓄電素子2の温度を推定する。
【0059】
代替的に、演算部101は、複数のCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイコン、揮発性又は不揮発性のメモリ等を備えた任意の演算回路であってもよい。演算部101は、計測開始指示を与えてから計測終了指示を与えるまでの経過時間を計測するタイマ、数をカウントするカウンタ、日時情報を出力するクロック等の機能を備えてもよい。
【0060】
記憶部102は、フラッシュメモリ、ハードディスクなどの記憶装置を備える。記憶部102には、各種のコンピュータプログラム及びデータが記憶される。記憶部102に記憶されるコンピュータプログラムは、第1温度センサTS11~TS13により計測される温度と、第2温度センサTS20により計測される温度との温度勾配に基づき、蓄電素子2の温度を推定する処理をコンピュータに実行させるための推定プログラムPGを含む。記憶部102に記憶されるデータは、推定プログラムPGにおいて用いられるパラメータや演算部101によって生成されるデータなどを含む。
【0061】
推定プログラムPGを含むコンピュータプログラムは、当該コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体RMにより提供される。記録媒体RMは、CD-ROM、USBメモリ、SD(Secure Digital)カードなどの可搬型メモリである。演算部101は、図に示していない読取装置を用いて、記録媒体RMから所望のコンピュータプログラムを読み取り、読み取ったコンピュータプログラムを記憶部102に記憶させる。代替的に、上記コンピュータプログラムは通信により提供されてもよい。
【0062】
通信部103は、回路基板6と通信する通信インタフェースを備える。通信部103は、第1温度センサTS11~TS13により計測される温度データ、第2温度センサTS20により計測される温度データ、第3温度センサTS30により計測される温度データ等を回路基板6より受信する。通信部103は、回路基板6より受信した温度データを演算部101へ出力する。演算部101は、通信部103を通じて取得した温度データを例えば記憶部102に記憶させる。
【0063】
操作部104は、各種のスイッチやボタンなどの入力装置を備えており、ユーザによる操作を受付ける。表示部105は、液晶ディスプレイ装置などの表示装置を備えており、ユーザに対して報知すべき情報を表示する。代替的に、管理装置100は、外部コンピュータを通じて必要な操作を受付け、ユーザに通知すべき情報を外部コンピュータへ送信する構成であってもよい。この場合、操作部104及び表示部105は管理装置100に搭載されていなくてもよい。
【0064】
以下、管理装置100による温度推定方法について説明する。
図7は環境温度を急峻に変化させたときの基板温度やセル内部温度の時間推移を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間(時間)、縦軸は温度(℃)を表している。
図7のグラフは、蓄電装置1が設置されている環境の温度(環境温度)を-17℃から30℃まで急峻に変化させた場合のセル内部温度T0、連結部温度T1、及び基板温度T2の時間推移を示している。当該環境は、蓄電装置1が車両の車室内に搭載されており、冬期にヒータにより車室を温める際、車室の温度上昇に伴い蓄電装置1が温められることを想定した環境である。
【0065】
セル内部温度T0は、蓄電素子2の内部温度を表す。実施の形態において、セル内部温度T0は管理装置100により推定されるべき温度であるが、
図7では、実験的に温度センサ(不図示)を用いて第1蓄電素子2Aの内部温度を実測した結果を示している。
【0066】
連結部温度T1は、第1温度センサTS11により計測される温度を表す。すなわち、連結部温度T1は、バスバー42が連結される回路基板6上での連結部位の温度を表している。バスバー42は第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bに接続されているので、連結部温度T1は、第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bの内部温度を反映した温度となる。
【0067】
基板温度T2は、第2温度センサTS20により計測される温度を表す。すなわち、基板温度T2は、回路基板6の周囲温度を表している。
【0068】
図7のグラフは、環境温度の急峻な変化に追従して、セル内部温度T0、連結部温度T1、及び基板温度T2が時間変化する様子を示している。すなわち、基板温度T2は、蓄電装置1の外部の熱が周囲の空気を介して回路基板6に伝わることにより上昇する。連結部温度T1は、回路基板6に伝わった熱が基板内部又は基板表面を介して連結部位に伝わることにより上昇する。セル内部温度T0は、連結部位に伝わった熱がバスバー42(伝熱部材)を介して第1蓄電素子2Aの内部に伝わることにより上昇する。
【0069】
蓄電装置1の外部の熱が第1蓄電素子2Aに伝わる伝達経路は、熱回路モデルによって説明される。
図8は蓄電装置1の熱回路モデルを表す回路図である。
図8に示す熱回路モデルは、蓄電装置1の外部から第1蓄電素子2Aの内部への熱の伝達経路を示している。
図8の例において、熱抵抗R1は、蓄電装置1の外部の空気と、蓄電装置1の内部の空気とを隔てる部材(収容ケース10)の熱抵抗を表す。熱抵抗R2は、蓄電装置1の内部の空気に伝わった熱が回路基板6に伝わる伝達経路の熱抵抗を表す。熱抵抗R3は、回路基板6に伝わった熱がバスバー41,42の連結部位に伝わる伝達経路の熱抵抗を表す。熱抵抗R4は、連結部位に伝わった熱がバスバー41,42を介してセル端子に伝わる伝達経路の熱抵抗を表す。熱抵抗R5は、セル端子に伝わった熱がセル内部に伝わる伝達経路の熱抵抗を表す。熱抵抗R6は、蓄電装置1の内部の空気に伝わった熱がバスバー41,42の連結部位に伝わる伝達経路の熱抵抗を表す。熱抵抗R7は、蓄電装置1の内部の空気に伝わった熱がセル端子に伝わる伝達経路の熱抵抗を表す。回路基板6に設けられた発熱部品(半導体スイッチ)を考慮する場合、熱抵抗R3に並列に接続される熱抵抗が追加される。
【0070】
一般には、熱は、熱伝導、対流、及び熱放射によって伝わり、熱抵抗(熱の伝わりにくさ)によって温度差が生じる。環境温度が上昇していく場面では、蓄電装置1の外部の熱は収容ケース10や収容ケース10内部の空気によって回路基板6に伝わる。その間には熱抵抗R1,R2が存在するため、回路基板6の温度(基板温度T2)は、環境温度よりも低くなる。回路基板6に伝わった熱は基板内部又は基板表面を介して連結部位に伝わる。その間には熱抵抗R3が存在するため、連結部位の温度(連結部温度T1)は、基板温度T2よりも低くなる。連結部位に伝わった熱は、バスバー42(伝熱部材)や第1蓄電素子2Aのケース21等を介して第1蓄電素子2Aの内部に伝わる。その間には熱抵抗R4,R5が存在するため、第1蓄電素子2Aの内部の温度(セル内部温度T0)は、連結部温度T1よりも低くなる。
【0071】
本願発明者らは、基板温度T2と連結部温度T1との差ΔT1、及び連結部温度T1とセル内部温度T0との差ΔT2の比率が、時間の経過に関わらず、ほぼ一定であることを見出した。
図9は比率の時間変化を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間(時間)、縦軸は比率を表している。比率k1は、各時刻におけるセル内部温度T0、連結部温度T1、及び基板温度T2を用いて、ΔT1/ΔT2=(T2-T1)/(T1-T0)により計算される。第1蓄電素子2Aに関して、比率k1を計算した結果、比率k1は、環境温度が急峻に変化する時間範囲(経過時間がおよそ1.2時間を経過するまでの時間範囲)を除けば、ほぼ一定値(=0.54)となった。
【0072】
図7~
図9では、第1蓄電素子2Aの内部温度(セル内部温度T0)と、連結部温度T1及び基板温度T2との関係を示したが、第2蓄電素子2B~第4蓄電素子2Dの内部温度(セル内部温度T0)と、連結部温度T1及び基板温度T2との関係についても同様の結果が得られた。
【0073】
第2蓄電素子2Bに関して、比率k2は、ΔT1/ΔT2=(T2-T1)/(T1-T0)により計算される。蓄電装置1の外部の熱が第2蓄電素子2Bに伝わる伝達経路は、蓄電装置1の外部の熱が第1蓄電素子2Aに伝わる伝達経路と異なり、両者の間で主に熱抵抗R3~R5が異なる。このため、環境温度が一様であったとしても、第2蓄電素子2Bの内部温度は、第1蓄電素子2Aの内部温度と相違する。比率k2を計算する際のセル内部温度T0には、各時刻における第2蓄電素子2Bの内部温度(実測値)が用いられる。第2蓄電素子2Bの内部温度は、図に示していない温度センサにより計測される。連結部温度T1には、バスバー42が連結される回路基板6上での連結部位の各時刻の温度が用いられる。代替的に、連結部温度T1には、バスバー43が連結される回路基板6上での連結部位の各時刻の温度が用いられてもよい。基板温度T2には、各時刻における回路基板6の周囲温度が用いられる。
【0074】
第3蓄電素子2Cに関して、比率k3は、ΔT1/ΔT2=(T2-T1)/(T1-T0)により計算される。蓄電装置1の外部の熱が第3蓄電素子2Cに伝わる伝達経路は、蓄電装置1の外部の熱が第1蓄電素子2Aや第2蓄電素子2Bに伝わる伝達経路と異なり、両者の間で主に熱抵抗R3~R5が異なる。このため、環境温度が一様であったとしても、第3蓄電素子2Cの内部温度は、第1蓄電素子2Aや第2蓄電素子2Bの内部温度と相違する。比率k3が計算する際のセル内部温度T0には、各時刻における第3蓄電素子2Cの内部温度(実測値)が用いられる。第3蓄電素子2Cの内部温度は、図に示していない温度センサにより計測される。連結部温度T1には、バスバー43が連結される回路基板6上での連結部位の各時刻の温度が用いられる。代替的に、連結部温度T1には、バスバー44が連結される回路基板6上での連結部位の各時刻の温度が用いられてもよい。基板温度T2には、各時刻における回路基板6の周囲温度が用いられる。
【0075】
第4蓄電素子2Dに関して、比率k4は、ΔT1/ΔT2=(T2-T1)/(T1-T0)により計算される。蓄電装置1の外部の熱が第4蓄電素子2Dに伝わる伝達経路は、蓄電装置1の外部の熱が第1蓄電素子2A~第3蓄電素子2Cに伝わる伝達経路と異なり、両者の間で主に熱抵抗R3~R5が異なる。このため、環境温度が一様であったとしても、第4蓄電素子2Dの内部温度は、第1蓄電素子2A~第3蓄電素子2Cの内部温度と相違する。比率k4を計算する際のセル内部温度T0には、各時刻における第4蓄電素子2Dの内部温度(実測値)が用いられる。第4蓄電素子2Dの内部温度は、図に示していない温度センサにより計測される。連結部温度T1には、バスバー44が連結される回路基板6上での連結部位の各時刻の温度が用いられる。基板温度T2には、各時刻における回路基板6の周囲温度が用いられる。
【0076】
実施の形態では、蓄電装置1の実運用が開始される前の学習フェーズにおいて、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度T0、連結部温度T1、基板温度T2がそれぞれ計測され、比率k1~k4が事前に計算される。計算された比率k1~k4は、管理装置100の記憶部102に記憶される。蓄電装置1の実運用が開始された後の運用フェーズにおいて、管理装置100の演算部101は、記憶部102から比率k1~k4を読み出し、連結部温度T1及び基板温度T2を計測することによって、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度T0をそれぞれ推定する。すなわち、演算部101は、第1温度センサTS11~TS13により計測される温度と、第2温度センサTS20により計測される温度との温度勾配に基づき、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度T0をそれぞれ推定する。
【0077】
図10は実施の形態1に係る管理装置100が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dに関して、比率k1~k4は、事前に計算されて記憶部102に記憶されているものとする。
【0078】
管理装置100の演算部101は、通信部103を通じて、第1温度センサTS11~TS13により計測される温度データと、第2温度センサTS20により計測される温度データとを取得する(ステップS101)。
【0079】
演算部101は、記憶部102から比率k1~k4を読み出す(ステップS102)。ステップS101及びステップS102の処理は、実行順序が前後してもよく、同時並行的に実行されてもよい。
【0080】
演算部101は、温度勾配方式を用いて、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度を推定する(ステップS103)。具体的には、演算部101は、(T2-T1)/(T1-T0)=k1(若しくは、k2~k4)の関係式を用いて、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度(=T0)を推定する。
【0081】
図11は実施の形態1での推定結果を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間(分)、縦軸の左の目盛りは温度(℃)、右の目盛りは温度差分(℃)を表している。T1は、例えば温度センサTS11によって計測される連結部温度であり、環境温度を急峻に変化させた場合の温度変化を示している。T2は、温度センサTS20によって計測される基板温度であり、環境温度を急峻に変化させた場合の温度変化を示している。
【0082】
T0(推定値)は、連結部温度T1、基板温度T2、及び比率k1に基づき、温度勾配法を用いて推定される第1蓄電素子2Aの内部温度の値を示している。参考として示すT0(実測値)は、図に示していないセンサにより計測される第1蓄電素子2Aの内部温度の実測値を示している。
【0083】
推定の結果、T0(推定値)とT0(実測値)との温度差分は、最大で1.2℃程度、平均で0.5℃程度となった。
図11の例は、第1蓄電素子2Aの温度推定結果を示しているが、第2蓄電素子2B~第4蓄電素子2Dについても、同様の温度推定結果が得られた。
【0084】
以上のように、実施の形態1では、温度勾配方式を適用することにより、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度を適性に推定できる。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態2では、第1温度センサTS11~TS13を伝熱部材上の蓄電素子2に近い近接部位に配置した場合の推定結果について説明する。
【0086】
図12は実施の形態2における第1温度センサTS11~TS13の配置を説明する説明図である。
図12では、説明のために、回路基板6を除いた状態でバスバーユニット4の上面を示している。
【0087】
第1温度センサTS11は、バスバー42上の第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bに近い近接部位の温度を計測する。近接部位とは、第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bの熱が伝わり、バスバー42上で温度変化として検出される位置を表す。近接部位は、第2温度センサTS20が温度を計測する部位よりも第1蓄電素子2A及び第2蓄電素子2Bに近い位置を表す。第1温度センサTS11は、例えば、屈曲部424の第2基部422寄りの位置に配置される。代替的に、第1温度センサTS11は、第1基部421又は第2基部422の上面に配置される。実施の形態2において、第1温度センサTS11は、蓄電素子2の内部に近い第1部位の温度を計測する温度センサの一例である。第2温度センサTS20は、第1部位より蓄電素子2の内部から離れた第2部位の温度を計測する温度センサの一例である。
【0088】
第1温度センサTS12は、バスバー43上の第2蓄電素子2B及び第3蓄電素子2Cに近い近接部位の温度を計測する。近接部位とは、第2蓄電素子2B及び第3蓄電素子2Cの熱が伝わり、バスバー43上で温度変化として検出される位置を表す。近接部位は、第2温度センサTS20が温度を計測する部位よりも第2蓄電素子2B及び第3蓄電素子2Cに近い位置を表す。第1温度センサTS12は、例えば、屈曲部434の第2基部432寄りの位置に配置される。代替的に、第1温度センサTS12は、第1基部431又は第2基部432の上面に配置される。実施の形態2において、第1温度センサTS12は、蓄電素子2の内部に近い第1部位の温度を計測する温度センサの他の例である。
【0089】
第1温度センサTS13は、バスバー44上の第3蓄電素子2C及び第4蓄電素子2Dに近い近接部位の温度を計測する。近接部位とは、第3蓄電素子2C及び第4蓄電素子2Dの熱が伝わり、バスバー44上で温度変化として検出される位置を表す。近接部位は、第2温度センサTS20が温度を計測する部位よりも第3蓄電素子2C及び第4蓄電素子2Dに近い位置を表す。第1温度センサTS13は、例えば、屈曲部444の第2基部442寄りの位置に配置される。代替的に、第1温度センサTS13は、第1基部441又は第2基部442の上面に配置される。実施の形態2において、第1温度センサTS13は、蓄電素子2の内部に近い第1部位の温度を計測する温度センサの一例である。
【0090】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に、蓄電装置1の実運用が開始される前の学習フェーズにおいて、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度T0、近接部温度T1、基板温度T2がそれぞれ計測され、比率k1~k4が事前に計算される。ここで、近接部温度T1は、実施の形態1の連結部温度T1に代えて計測される温度であり、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの近接部位に配置した第1温度センサTS11~TS13によって計測される。計算された比率k1~k4は、管理装置100の記憶部102に記憶される。蓄電装置1の実運用が開始された後の運用フェーズにおいて、管理装置100の演算部101は、記憶部102から比率k1~k4を読み出し、近接部温度T1及び基板温度T2を計測することによって、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度T0をそれぞれ推定する。
【0091】
図13は実施の形態2での推定結果を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間(分)、縦軸は温度(℃)を表している。T1は、例えば温度センサTS11によって計測される近接部温度であり、環境温度を急峻に変化させた場合の温度変化を示している。T2は、温度センサTS20によって計測される基板温度であり、環境温度を急峻に変化させた場合の温度変化を示している。
【0092】
T0(推定値)は、近接部温度T1、基板温度T2、及び比率k1に基づき、温度勾配法を用いて推定される第1蓄電素子2Aの内部温度の値を示している。参考として示すT0(実測値)は、図に示していないセンサにより計測される第1蓄電素子2Aの内部温度の実測値を示している。
【0093】
推定の結果、T0(推定値)はT0(実測値)を非常によく再現することが分かった。
図11の例は、第1蓄電素子2Aの温度推定結果を示しているが、第2蓄電素子2B~第4蓄電素子2Dについても、同様の推定結果が得られた。
【0094】
以上のように、実施の形態2では、近接部温度を用いて温度勾配方式を適用することにより、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度を精度よく推定できる。
【0095】
実施の形態2では、近接部温度T1と基板温度T2とを用いた温度勾配方式により、各蓄電素子2の内部温度を推定する構成とした。代替的に、近接部温度T1とセル天面温度とを用いた温度勾配方式により、各蓄電素子2の内部温度を推定してもよい。ここで、セル天面温度は、ケース21の上面(天面)の温度を表す。セル天面温度は、各蓄電素子2の内部温度と近い値となるが、完全には一致しないため、高精度な内部温度推定が必要な場合、温度勾配方式を用いた推定手法が有効である。
【0096】
代替的に、蓄電素子の内部からの温度勾配を有する任意の二点の温度を計測し、温度勾配方式を用いて各蓄電素子2の内部温度を推定してもよい。大型セルの場合、温度勾配が生じやすいので、温度勾配方式は有効である。例えば、大容量化している電気自動車の蓄電装置において、温度勾配方式を用いて蓄電装置の内部温度を推定できる。推定した内部温度は、例えば、低温時の航続距離を予測する際に利用される。車両や外部蓄電設備など環境温度が変化しやすい場合についても温度勾配方式は有効である。推定した内部温度は、例えば、HEVやPHEVなど高レート車両における低温時の航続距離を予測する際に利用される。
【0097】
(実施の形態3)
実施の形態3では、回路基板6に配置されている発熱部品が発熱した場合、温度勾配方式に代えて、蓄電素子2に流れる電流に基づく方式により、蓄電素子2の温度を推定する構成について説明する。以下では、蓄電素子2に流れる電流に基づく方式(第2方式)を、ジュール熱方式とも記載する。
蓄電装置1の構成、及び管理装置100の内部構成については、実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0098】
図14は温度勾配方式とジュール熱方式とを切り替るタイミングを説明する説明図である。
図14に示すグラフの横軸は経過時間(秒)、縦軸は温度(℃)を表している。
図14のグラフは、経過時間が600秒付近で環境温度が急峻に変化し、経過時間が7900秒付近で蓄電素子2からの電流が流れたことにより発熱部品が発熱した場合の基板温度T2、連結部温度T1、セル内部温度T0の温度変化を示している。基板温度T2は温度センサTS20によって計測される温度、連結部温度T1は例えば温度センサTS11によって計測される温度である。セル内部温度T0は、図に示していない温度センサによって計測される第1蓄電素子2Aの内部温度(実測値)である。
【0099】
発熱部品からの熱の影響を受けない時間帯では、基板温度T2と連結部温度T1との差と、連結部温度T1とセル内部温度T0との差との比率は、ほぼ一定である。これらの時間帯において、管理装置100は、上述した温度勾配方式を適用して、各蓄電素子2の内部温度を推定する。
図14の例では、経過時間が600~7900秒の時間帯、及び経過時間が9600秒以降の時間帯で温度勾配方式が適用される。
【0100】
一方、発熱部品からの熱の影響を受ける時間帯では、基板温度T2と連結部温度T1との差と、連結部温度T1とセル内部温度T0との差との比率は、必ずしも一定ではない。この時間帯で温度勾配方式を適用すると、温度推定の精度が低下する場合がある。そこで、実施の形態3に係る管理装置100は、発熱部品からの熱の影響を受ける時間帯では、温度勾配方式から蓄電素子2に流れる電流に基づく方式に切り替え、各蓄電素子2の内部温度を推定する。蓄電素子2に流れる電流に基づく方式は、ジュール熱を計算するので、以下ではジュール熱方式とも記載する。
図14の例では、経過時間が7900~9600秒の時間帯でジュール熱方式が適用される。
【0101】
ジュール熱方式では、以下の計算式により温度変化ΔTが計算される。
【0102】
ΔT=(Qp+Qs+Qb)/C×Δt
【0103】
Qpは通電時に蓄電素子2の内部の抵抗成分により生じる発熱(ジュール熱)を表す。管理装置100の演算部101は、(セル電圧計測値(V)-OCV(V))×電流計測値(A)により、ジュール熱Qpを計算する。セル電圧計測値及び電流計測値は、図に示していない電圧センサ及び電流センサにより計測される。OCV(Open Circuit Voltage)は例えばSOC(State of Charge )の関数として与えられる。
【0104】
Qsは充放電時のエントロピー変化による吸発熱(反応熱)を表す。演算部101は、セル温度推定値(K)×ΔS(J/mol K)×電流計測値(A)/ファラデー定数(C/mol)により、反応熱Qsを計算する。ΔSは例えばSOCの関数として与えられる。
【0105】
Qbは熱源からから周囲への放熱を表す。演算部101は、(環境温度推定値(℃)-セル温度推定値(℃))/熱抵抗(℃/W)により、放熱Qbを計算する。熱抵抗は温度によって変化しない定数であり、事前に計測されているものとする。Cは蓄電素子2の熱容量であり、Δtは通電時間である。
【0106】
図15は実施の形態3に係る管理装置100が実行する処理の手順を説明するフローチャートである。管理装置100の演算部101は、通信部103を通じて、第2温度センサTS20により計測される温度データと、第3温度センサTS30により計測される温度データとを取得する(ステップS201)。演算部101は、第2温度センサTS20により計測される温度データと、第3温度センサTS30により計測される温度データを取得する都度、以下の処理を実行する。
【0107】
演算部101は、取得した温度データに基づき、発熱部品の温度と基板温度T2との差が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS202)。実施の形態において、発熱部品は、遮断回路61が備える半導体スイッチである。閾値は例えば3℃である。
【0108】
発熱部品の温度と基板温度T2との差が閾値以上であると判断した場合(S202:YES)、演算部101は、ジュール熱方式により蓄電素子2の温度を推定する(ステップS203)。演算部101は、ΔT=(Qp+Qs+Qb)/C×Δtの計算式を用いて、蓄電素子2の温度変化ΔTを計算することにより、蓄電素子2の温度を推定する。
【0109】
発熱部品の温度と基板温度T2との差が閾値未満であると判断した場合(S202:NO)、演算部101は、温度勾配方式により蓄電素子2の温度を推定する(ステップS204)。温度勾配方式を用いた蓄電素子2の温度推定方法は、実施の形態1と同様である。すなわち、演算部101は、通信部103を通じて、第1温度センサTS11~TS13により計測される温度データと、第2温度センサTS20により計測される温度データとを取得し、比率k1~k4を用いた計算を実行することにより、第1蓄電素子2A~第4蓄電素子2Dの内部温度を推定する。
【0110】
以上のように、実施の形態3では、発熱部品の温度が閾値以上の場合には、ジュール熱方式に切り替えて蓄電素子2の温度を推定するので、蓄電装置1の稼働状況に関わらず精度よく蓄電素子2の温度を推定できる。
【0111】
開示された実施形態は、全ての点において例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0112】
1 蓄電装置
2 蓄電素子
4 バスバーユニット
6 回路基板
41~45 バスバー
TS11~TS13 第1温度センサ
TS20 第2温度センサ
TS30 第3温度センサ(第3センサ)
100 管理装置
101 演算部
102 記憶部
103 通信部
104 操作部
105 表示部
PG 推定プログラム
RM 記録媒体