(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010273
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】シアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤および該表面処理剤を用いた接着方法
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20240117BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20240117BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J5/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111513
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 文哉
(72)【発明者】
【氏名】西野 幸紀
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA121
4J040HB02
4J040HC04
4J040HC26
4J040HD19
4J040KA23
4J040KA35
4J040MA10
4J040PA04
4J040PA05
(57)【要約】
【課題】
塗布した後に塗布箇所や塗布量の確認が可能なシアノアクリレート接着剤組成物用の表面処理剤の提供。
【解決手段】
下記する成分(A)~(C)を特定の割合で含む表面処理剤により、前記課題を解決することができる。
(A)分岐を有してもよい炭素数5~15の脂肪族炭化水素系溶媒を含む有機溶媒。
(B)下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアミン化合物。
(C)下記一般式(3)で表される化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)を含有し、且つ(B)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5.0重量部であり、(C)の含有量が(A)100重量部に対し0.02~0.55重量部である、シアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤。
(A)分岐を有してもよい炭素数5~15の脂肪族炭化水素系溶媒を含む有機溶媒。
(B)下記一般式(1):
【化1】
(上記式(1)中、R
1~R
4はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、R
5は分岐を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基を表す。)
で表される化合物および下記一般式(2):
【化2】
(上記式(2)中、R
6~R
9はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、R
10は分岐を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、nは2~10の整数を表す。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアミン化合物。
(C)下記一般式(3):
【化3】
(上記式(3)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立して水素原子または分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキル基を表す。)
で表される化合物。
【請求項2】
表面処理を行う被着体の内、少なくとも一方がポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂を含有するエラストマーである、請求項1に記載のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤。
【請求項3】
シアノアクリレート接着剤組成物によって被着体同士を接着する接着方法であって、接着の前工程として下記工程(1)及び(2)をこの順で含む、接着方法。
(1)請求項1又は2に記載のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を被着体の少なくとも一方に塗布する工程。
(2)塗布したシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を乾燥する工程。
【請求項4】
被着体の内、少なくとも一方がポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂を含有するエラストマーである、請求項3に記載の接着方法。
【請求項5】
更に、下記工程(a)を含む請求項3に記載の接着方法(ただし、工程(a)は工程(1)より後に実施する)。
(a)シアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤の塗布面に紫外線を照射し、蛍光発光により塗布面を確認する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノアクリレート接着剤組成物を用いてポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリアセタール、ふっ素系樹脂および結晶性の高いプラスチック、並びに前記ポリオレフィンとジエン系ゴムからなるTPEやTPO、TPV等の熱可塑性エラストマー等の難接着材料を接着する際の該材料の表面処理に用いられるシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレートモノマーを主成分とするシアノアクリレート接着剤組成物は、一般に極めて高いアニオン重合性を有し、塩基性物質をはじめ求核性の弱い水やアルコールなどにより常温で速やかに重合して強靱なポリマーを与える。この性質を利用して、シアノアクリレート接着剤組成物は、電気機器、輸送機器、精密機器、機械等用の瞬間接着剤として、各種工業産業界および一般家庭におけるゴム、プラスチック、セラミックス等の接着に広く利用されている。
【0003】
しかしながら、シアノアクリレート接着剤組成物は、被着体の材質によっては接着性が極めて劣る場合がある。特に前述した難接着材料は極性が小さいため、シアノアクリレート接着剤組成物を用いても通常の方法では、十分な接着強度を得られない場合や、接着強度の立ち上がり速度が遅くなるなど接着が困難であることが知られる。
【0004】
そのため、これまでに難接着材料をシアノアクリレート接着剤組成物で接着する方法が種々検討されている。例えば、表面処理剤(プライマー)を予め難接着材料の被着体表面に塗布した後、該被着体表面にシアノアクリレート接着剤組成物を塗布して接着することにより接着強度を向上させる方法が知られており、また、該表面処理剤として、例えば、特定の構造を有するジアミン化合物および脂肪族炭化水素系溶媒(特許文献1)を含む組成物等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した表面処理剤は無色透明であると共に、表面処理剤を塗布した後、シアノアクリレート接着剤組成物を塗布する前に乾燥させる必要がある一方、塗布後、塗布箇所や塗布量の確認が必要であるにも拘わらず、斯かる確認が困難であることから、特に大量の被着体を接着するに際し、塗布漏れや塗布量の不足が生じる場合があった。
【0007】
本発明は、塗布した後に塗布箇所や塗布量の確認が可能なシアノアクリレート接着剤組成物用の表面処理剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、下記する成分(A)~(C)を特定の割合で含む表面処理剤によれば、前記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0009】
〔1〕
下記(A)、(B)及び(C)を含有し、且つ(B)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5.0重量部であり、(C)の含有量が(A)100重量部に対し0.02~0.55重量部である、シアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤。
(A)分岐を有してもよい炭素数5~15の脂肪族炭化水素系溶媒を含む有機溶媒。
(B)下記一般式(1):
【0010】
【化1】
(上記式(1)中、R
1~R
4はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、R
5は分岐を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基を表す。)
で表される化合物および下記一般式(2):
【0011】
【化2】
(上記式(2)中、R
6~R
9はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、R
10は分岐を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、nは2~10の整数を表す。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアミン化合物。
(C)下記一般式(3):
【0012】
【化3】
(上記式(3)中、R
11及びR
12はそれぞれ独立して水素原子または分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキル基を表す。)
で表される化合物。
【0013】
〔2〕
表面処理を行う被着体の内、少なくとも一方がポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂を含有するエラストマーである、〔1〕に記載のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤。
【0014】
〔3〕
シアノアクリレート接着剤組成物によって被着体同士を接着する接着方法であって、接着の前工程として下記工程(1)及び(2)をこの順で含む、接着方法。
(1)〔1〕又は〔2〕に記載のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を被着体の少なくとも一方に塗布する工程。
(2)塗布したシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を乾燥する工程。
【0015】
〔4〕
被着体の内、少なくとも一方がポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂を含有するエラストマーである、〔3〕に記載の接着方法。
【0016】
〔5〕
更に、下記工程(a)を含む〔3〕に記載の接着方法(ただし、工程(a)は工程(1)より後に実施する)。
(a)シアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤の塗布面に紫外線を照射し、蛍光発光により塗布面を確認する工程。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗布した後に塗布箇所や塗布量の確認が可能な表面処理剤の提供が可能となる。また、本発明の表面処理剤は、塗布してから3時間経過後であっても、照明の点いた明るい室内環境中において視認可能であることから、その後の工程における作業時間を長く確保することができ、取り扱い性に優れる。また、本発明の表面処理剤は、通常無色透明であり、且つ紫外線を照射することで蛍光発光が生じ視認可能となる物であるところ、塗布してから一定時間経過後には照明の点いた明るい室内環境下では視認できない程度に蛍光発光が減衰することから、完成品の外観に影響を与えない。また、後述する実施例の項で示す通り、本発明の表面処理剤によれば、前述した難接着材料の接着において、充分な硬化速度が得られるとともに、上記特許文献1に記載の表面処理剤を使用した場合と同程度かそれ以上の接着強度を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤について、詳細に説明する。
【0019】
[成分(A)]
成分(A)は、少なくとも分岐を有してもよい炭素数5~15の脂肪族炭化水素系溶媒を含む。前記分岐を有してもよい炭素数5~15の脂肪族炭化水素系溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、リグロイン等が挙げられる。中でも、分岐を有してもよい炭素数5~10の脂肪族炭化水素系溶媒が好ましく、ヘプタン、オクタン、ノナン、リグロインがより好ましい。これらの脂肪族炭化水素系溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
また、成分(A)に含まれていてもよい、分岐を有してもよい炭素数5~15の脂肪族炭化水素系溶媒以外の他の有機溶媒としては、例えば、低級アルコール系溶媒、低級脂肪酸のエステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。具体的には、例えば、低級アルコール系溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール等が挙げられ、低級脂肪酸のエステル系溶媒として酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-i-プロピル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ベンンジル、酢酸シクロヘキシル等が挙げられ、ケトン系溶媒としてアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられ、芳香族炭化水素系溶媒としてベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられ、ハロゲン化炭化水素系溶媒として塩化メチレン、1,1,1-トリクロルエタン、二塩化エタン、トリクロルトリフルオロエタン、パークロルエタン等が挙げられる。これらの他の有機溶媒は1種又は2種以上含まれていてもよいが、分岐を有してもよい炭素数5~15の脂肪族炭化水素系溶媒を単独で使用する方が好ましい。
【0021】
[成分(B)]
成分(B)は、上記一般式(1)で表される化合物および上記一般式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリアミン化合物である。
【0022】
前記一般式(1)において、R1~R4はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表す。R5は分岐を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、好ましくは直鎖状の炭素数1~10のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基である。なお、R1~R4は同一であることが好ましい。
【0023】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノエタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘキサン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘプタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノオクタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノデカン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノメタン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノエタン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノヘキサン等が挙げられる。これら具体例の中でも、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノエタン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノヘキサン、N,N,N’,N’-テトラエチルジアミノエタンが好ましい。
【0024】
前記一般式(2)において、R6~R9はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表す。R10は分岐を有してもよい炭素数1~10のアルキレン基を表し、好ましくは直鎖状の炭素数1~10のアルキレン基であり、より好ましくは直鎖状の炭素数1~6のアルキレン基であり、更に好ましくは直鎖状の炭素数2~3のアルキレン基である。nは2~10の整数を表し、好ましくは2~4である。なお、R6~R9は同一であることが好ましい。また、複数存在するR10は互いに同一であっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0025】
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、N-メチル-N,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。これら具体例の中でも、N-メチル-N,N-ビス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミンが好ましい。
【0026】
成分(B)の含有量は、成分(A)100重量部に対し、通常0.05~5.0重量部、好ましくは0.1~5.0重量部、より好ましくは0.3~4.0重量部である。0.05重量部より少ない場合、表面処理剤としての効果が小さくシアノアクリレート接着剤組成物で接着した際に十分な接着力が発現せず、また、5重量部より多い場合、塗布面に成分(B)の層ができ、シアノアクリレート接着剤組成物を被着体に塗布後すぐに硬化して接着できなかったり、前記成分(B)の層ごと剥がれが生じて接着力が低下する虞がある。
【0027】
[成分(C)]
成分(C)は上記一般式(3)で表される、蛍光性を有する化合物である。上記一般式(3)中、R11及びR12はそれぞれ独立して水素原子または分岐を有してもよい炭素数1~8のアルキル基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1~4の分岐を有してもよいアルキル基である。
【0028】
上記一般式(3)で表される化合物としては、例えば、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン等が挙げられる。
【0029】
成分(C)の含有量は、成分(A)100重量部に対し、通常0.02~0.55重量部であり、好ましくは0.05~0.30重量部である。0.02重量部より少ないと、塗布範囲確認の際に充分な蛍光発光が得られない場合がある。また、0.55重量部より多いとポリオレフィンとジエン系ゴムからなるTPEやTPO、TPV等の熱可塑性エラストマー等の難接着材料を接着する際に、充分な接着力が得られない場合がある。
【0030】
本発明のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤は、例えば、上記した成分(A)~(C)を混合することで製造することが可能である。また、必要に応じ、本願発明の目的及び効果を損なわない範囲で公知の無機化合物、樹脂、着色剤、脱臭剤、香料、可塑剤等を適宜、添加配合することもできる。
【0031】
本発明におけるシアノアクリレート接着剤組成物としては、従来公知の2-シアノアクリレートを主成分として含むものであれば特に限定されない。主成分として含まれる2-シアノアクリレートとしては、例えば、2-シアノアクリル酸のメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、オクチル、ネオペンチル、シクロヘキシル、エチルヘキシル、ドデシル、アリル、メトキシエチル、エトキシエチル、メトキシプロピル、ベンジル、フェニル、クロロエチル、テトラヒドロフルフリル等のエステル類が挙げられる。これらの2-シアノアクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、本発明で用いられるシアノアクリレート接着剤組成物には、必要に応じて、従来、シアノアクリレート接着剤組成物に用いられている各種充填剤、可塑剤、増粘剤、強度向上剤、揺変剤、耐熱性付与剤、耐水性付与剤、速硬化添加剤、軟化剤、可撓性付与剤、安定剤、香料、溶剤等が、2-シアノアクリレートモノマーの硬化速度および安定性を阻害しない範囲で含まれていてもよい。
【0033】
続いて、本発明のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤(以下、本発明の表面処理剤と称することもある。)を用いた、シアノアクリレート接着剤組成物による被着体の接着方法(以下、本発明の接着方法と称することもある。)について詳述する。
【0034】
本発明の接着方法は、接着の前工程として以下工程(1)及び(2)をこの順で含む。
(1)本発明の表面処理剤を被着体の少なくとも一方に塗布する工程。
(2)塗布した本発明の表面処理剤を乾燥する工程。
【0035】
工程(1)において、被着体は常法により予め清浄化されていてもよい。また、本発明の表面処理剤の塗布方法としては、従来公知のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤と同様の方法が使用でき、例えば、容器やスポイトからの滴下、刷毛やペン等での塗布、スプレーによる噴霧、被着体を表面処理剤に浸漬させる方法等が挙げられる。また、本発明における被着体としては特に限定されないが、本発明のシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を使用することで、シアノアクリレート接着剤組成物単独で接着することが困難であるポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリアセタール、ふっ素系樹脂および結晶性の高いプラスチック、並びにポリオレフィンとジエン系ゴム等からなるTPEやTPO、TPV等の熱可塑性エラストマー等の難接着材料の接着においても、充分な硬化速度および高い接着強度を得ることができることから、被着体の少なくとも一方はこれらの難接着材料であることが好ましい。
【0036】
工程(2)において、本発明の表面処理剤を乾燥する方法としては、例えば、本発明の表面処理剤を塗布した後、室温にて静置し表面処理剤に含まれる溶媒を乾燥させる方法等が挙げられる。
【0037】
本発明の接着方法は、接着の前工程として更に以下工程(a)を含んでいてもよい。
(a)シアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤の塗布面に紫外線を照射し、蛍光発光により塗布面を確認する工程(ただし、工程(a)は工程(1)より後に実施する)。
【0038】
工程(a)において、紫外線を照射し、蛍光発光により塗布面を確認する方法は特に限定されないが、例えば、発光波長領域が400nm未満である公知または市販の紫外線照射装置を用いて塗布面に紫外線を照射し、蛍光発光を目視で確認する方法等が挙げられる。シアノアクリレート接着剤組成物塗布する前に、シアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤の塗布面を確認することで、塗布漏れ等を起こす可能性を低減することができ、充分な硬化速度および高い接着強度で接着することができる。
【0039】
上記した接着の前工程を行った後、例えば、被着体の一方または両方の接着面にシアノアクリレート接着剤組成物を塗布して貼り合わせ、圧締して養生する方法等により、被着体同士を接着することができる。
【実施例0040】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0041】
<実施例1~11、比較例1~10>
撹拌機を備えたガラス製容器に、表1及び表2に示す割合で各成分を仕込み、攪拌溶解することで、各実施例および比較例に係るシアノアクリレート接着剤用表面処理剤を調製した。得られたシアノアクリレート接着剤用表面処理剤を用いて、表1及び表2に示す各項目について、下記する方法により測定・評価を行った。なお、表1及び表2における「オープンタイム」とはシアノアクリレート接着剤用表面処理剤を塗布した後、シアノアクリレート接着剤組成物を滴下するまでの乾燥工程の時間のことを表す。また、表1及び表2における記号、略号の意味は次の通りである。
・TPO:オレフィン系熱可塑性エラストマー
・EPDM:エチレンプロピレンジエンゴム
・PP:ポリプロピレン
・PE:高密度ポリエチレン(HDPE)
【0042】
<表面処理剤の外観及び溶液の均一性の評価>
前記の通り調製したシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を25℃で24時間保管した後、表面処理剤の「外観」及び「溶液の均一性」について目視で確認した。
【0043】
<手感度による接着強度および接着状態の評価>
TPO板(25×50×3mm、エンジニアリングテストサービス社製)の接着面に前記の通り調製したシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を綿棒で塗布し、20℃の室内に30分間静置して塗布面を乾燥した後、シアノアクリレート接着剤組成物(シアノボンドRP-X:田岡化学工業株式会社製(主成分:エチル-α-シアノアクリレート))をEPDM板(25×50×2mm、スタンダードテストピース社製)上に1滴滴下し、1/2インチオーバーラップで被着体同士を接着後、そのまま2秒間手で押さえて固定した後、すみやかに180度剥離方向に両被着体を手で引っ張り、手感度で接着強度および接着状態を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
〇:材破
×:材破以外(界面破壊等)
【0044】
<引張剪断接着強さの測定および接着状態の評価>
両方の被着体の接着面に前記の通り調製したシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を綿棒で塗布し、20℃の室内に15分間静置して塗布面を乾燥した後、一方の被着体の接着面にシアノアクリレート接着剤組成物(シアノボンドRP-X:田岡化学工業株式会社製(主成分:エチル-α-シアノアクリレート))を2滴滴下し、1/2インチオーバーラップで被着体同士を接着、圧締し1時間養生後、JIS K 6861に準拠して引張剪断接着強さ(単位(N/mm2)を測定し、また、接着状態を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。また、被着体としては、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)板(どちらも25×100×2mm、エンジニアリングテストサービス社製)を準備し、PP板とPP板同士、PE板とPE板同士を接着させた。
〇:材破
×:材破以外(界面破壊等)
【0045】
<表面処理剤塗布部の視認性評価>
前記の通り調製したシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を、綿棒を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)板(25×50×3mm、エンジニアリングテストサービス社製)に塗布した後、塗布部に10cmの距離から365nmのハンディ紫外線ライト(マナスル化学工業社製)で紫外線を照射し、塗布部の蛍光発光を目視で観察し、視認性を評価した。また、所定時間経過毎に同様の方法で塗布部の蛍光発光を目視で観察し、所定時間経過後の視認性についても同様に評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
〇:通常の照明の点いた明るい室内環境中において塗布部の確認可
△:暗室内において塗布部の確認可
×:塗布部の確認が不可
【0046】
<表面処理剤の被着体外観への影響>
前記の通り調製したシアノアクリレート接着剤組成物用表面処理剤を、綿棒を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)板(25×50×3mm、エンジニアリングテストサービス社製)に塗布した後、通常の照明の点いた明るい室内環境中において、被着体外観への影響を目視で確認した。
【0047】
【0048】