IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102732
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】発泡性着色樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240724BHJP
   C08J 9/18 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C08F2/44 B
C08J9/18 CET
C08J9/18 CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006820
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】飯田 敦士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 基理人
(72)【発明者】
【氏名】木口 太郎
【テーマコード(参考)】
4F074
4J011
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074AA48
4F074AD07
4F074AG06
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA40
4F074BA95
4F074CA34
4F074DA32
4F074DA34
4J011PA43
4J011PB25
4J011PC02
4J011PC03
4J011PC07
(57)【要約】
【課題】粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供し得ること。
【解決手段】単量体、特定量の染料、および10時間半減期温度が85℃以下である重合開始剤Xを混合して、前記単量体の重合を行い、熱可塑性樹脂を含む着色樹脂粒子を得る重合工程と、前記重合工程により得られた前記着色樹脂粒子に発泡剤を含浸する発泡剤含浸工程と、を含む、発泡性着色樹脂粒子の製造方法発泡性着色樹脂粒子を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性着色樹脂粒子の製造方法であって、
水、単量体、染料および10時間半減期温度が85℃以下である重合開始剤Xを含む水性懸濁液を用いて、前記単量体の重合を行い、熱可塑性樹脂を含む着色樹脂粒子を得る重合工程と、
前記重合工程により得られた前記着色樹脂粒子に発泡剤を含浸する発泡剤含浸工程と、を含み、
前記重合工程では、重合転化率が50%を超えるまでの間に、前記染料を添加し、
前記染料の使用量は、前記単量体100重量部に対して、0.040重量部未満である、発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記染料の使用量に対する、前記重合開始剤Xの使用量の比率(前記重合開始剤Xの使用量/前記染料の使用量)が2.0を超える、請求項1に記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記重合工程の開始時点以前において、前記単量体100重量部に対して、0.30重量部以下の第3リン酸カルシウムを使用する、請求項1に記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記染料はキノン系染料である、請求項1に記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記単量体は、メタクリル酸メチルおよび/またはスチレンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性着色樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生鮮食品用途や建材用途等では、他容器との区別のため、また、意匠性を高めるために、発泡成形体を着色させる技術が知られている。着色させた発泡成形体を得るための原材料として、着色発泡性樹脂粒子(発泡性樹脂粒子を着色させた粒子を意図する)が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発泡性スチレン系樹脂粒子と染料とを水中に分散させ、次いでブタンを添加して、着色発泡性スチレン系樹脂粒子を製造する方法であって、ブタンの組成比がノルマルブタン:イソブタン=80:20~40:60であり、含浸温度50℃以上80℃未満で、含浸時間20分以上80分以内で前記染料を含浸することを特徴とする着色発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、スチレン系樹脂粒子を水性媒体中に分散させ、染料をビニル系単量体に溶解または分散させて添加し、ビニル系単量体を重合させ、重合途中または重合完了後発泡剤を含浸させることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-145305号公報
【特許文献2】特開昭58-109538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来技術により得られる発泡性着色樹脂粒子には、粒子内における色むらの観点から、改善の余地があった。
【0007】
本発明の一実施形態は、前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0010】
〔1〕発泡性着色樹脂粒子の製造方法であって、
水、単量体、染料および10時間半減期温度が85℃以下である重合開始剤Xを含む水性懸濁液を用いて、前記単量体の重合を行い、熱可塑性樹脂を含む着色樹脂粒子を得る重合工程と、
前記重合工程により得られた前記着色樹脂粒子に発泡剤を含浸する発泡剤含浸工程と、を含み、
前記重合工程では、重合転化率が50%を超えるまでの間に、前記染料を添加し、
前記染料の使用量は、前記単量体100重量部に対して、0.040重量部未満である、発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【0011】
〔2〕前記染料の使用量に対する、前記重合開始剤Xの使用量の比率(前記重合開始剤Xの使用量/前記染料の使用量)が2.0を超える、〔1〕に記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【0012】
〔3〕前記重合工程の開始時点以前において、前記単量体100重量部に対して、0.30重量部以下の第3リン酸カルシウムを使用する、〔1〕または〔2〕に記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【0013】
〔4〕前記染料はキノン系染料である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【0014】
〔5〕前記単量体は、メタクリル酸メチルおよび/またはスチレンを含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の発泡性着色樹脂粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0017】
本明細書において、重合体または共重合体に含まれる、X単量体に由来する構成単位を「X単位」と称する場合がある。
【0018】
本明細書において特記しない限り、共重合体の重合様式は特に限定されず、ランダム共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0019】
〔1.本発明の一実施形態に係る技術的思想〕
従来、着色発泡性スチレン系樹脂粒子を得る方法としては、特許文献1に記載されているように、スチレン系樹脂粒子を製造した後に、染料および発泡剤を含浸する技術が主流であった。具体的に、当該技術では、一度スチレン系樹脂粒子(少量の発泡剤を含む場合もあり)を生産し、得られたスチレン系樹脂粒子を分級した後に、分級後のスチレン系樹脂粒子に対して染料および発泡剤を含浸している。
【0020】
また、特許文献1の技術とは別の技術として、特許文献2に記載されているように、重合によりスチレン系樹脂粒子を製造する途中において、染料を添加する技術が知られている。当該技術では、大部分の単量体(スチレン)を重合させた後、残りの単量体に溶解させた染料を、重合容器内に添加する。
【0021】
しかしながら、これらの従来方法では、得られる着色発泡性樹脂粒子における、粒子内の色むらの観点から、改善の余地があった。
【0022】
そこで、本発明者は、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子の製造方法を鋭意検討した。
【0023】
その結果、本発明者は、特定量の染料を、単量体の重合転化率が所定値を超える前に、容器中に添加して、単量体を重合させ、得られた着色樹脂粒子に対して発泡剤を含浸させることにより、粒子内に色むらの少ない、染料が粒子内において均一に分散した美麗な発泡性着色樹脂粒子を得ることができる、という驚くべき新規知見を得、本発明を完成させるに至った。
【0024】
また、本発明者は、10時間半減期温度が特定の範囲である重合開始剤Xの使用量の、染料の使用量に対する比率(重合開始剤Xの使用量/染料の使用量)を特定値より大きくすることにより、粒子内における色むらがさらに少ない発泡性着色樹脂粒子を製造することが可能となることも新規に見出した。
【0025】
〔2.発泡性着色樹脂粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る発泡性着色樹脂粒子の製造方法は、水、単量体、染料および10時間半減期温度が85℃以下である重合開始剤Xを含む水性懸濁液を用いて、前記単量体の重合を行い、熱可塑性樹脂を含む着色樹脂粒子を得る重合工程と、前記重合工程により得られた前記着色樹脂粒子に発泡剤を含浸する発泡剤含浸工程と、を含み、前記重合工程では、重合転化率が50%を超えるまでの間に、前記染料を添加し、前記染料の使用量は、前記単量体100重量部に対して、0.040重量部未満である。
【0026】
本明細書において、「本発明の一実施形態に係る発泡性着色樹脂粒子の製造方法」を「本製造方法」と称する場合がある。
【0027】
本製造方法は、前述した構成を有するため、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるという利点を有する。
【0028】
本明細書において、「粒子内に色むらが少ない」とは、得られる発泡性着色樹脂粒子において、表面層と中心部とで色むらが有る発泡性着色樹脂粒子が存在しないか、または表面層と中心部とで色むらが有る発泡性着色樹脂粒子が存在しても、少ししかないことを意図する。「粒子内に色むらが少ない」ことの具体的な評価方法については、後の実施例にて詳説する。
【0029】
また、本製造方法は、前述した構成を有するため、得られる発泡性着色樹脂粒子において、バッチ毎(生産毎)での粒子内の染料班の程度(粒子内への染料の含浸度合い、すなわち、粒子表層と中心部の染料含浸量の差)の差が存在しないか、あっても少ししか存在しないという利点も有する。すなわち、本製造方法は、粒子内の染料班の程度に関して、バッチに依存せず、品質が安定した発泡性着色樹脂粒子を提供できるという利点も有する。
【0030】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法において、同一容器内で重合工程および発泡工程を実施する場合では、染料および単量体を、一度に投入して、その後に発泡剤を含浸させることから、樹脂粒子を払い出して乾燥させる工程が不要となる。それ故、生産効率が向上する、との利点も存在する。
【0031】
本明細書において、着色樹脂粒子に対して発泡剤を含浸させることにより得られた粒子を「発泡性着色樹脂粒子」と称し、樹脂粒子の製造途中または製造後において、主に発泡剤とともに染料を含侵させることにより得られた粒子を「着色発泡性樹脂粒子」と称する。また、本明細書において、発泡性着色樹脂粒子を発泡させて得られた粒子を、「着色発泡粒子」と称し、着色発泡粒子を成形させてなる発泡成形体を「着色発泡成形体」と称する。
【0032】
以下、本製造方法において使用する原料(成分)などについて詳説した後、本製造方法の工程について説明する。
【0033】
(2-1.単量体)
重合工程で使用する単量体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチルを除く)、アクリル酸エステル、スチレン、スチレン系誘導体、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、ブタジエン、ジメチルフマレートおよびエチルフマレートなどの単量体が挙げられる。
【0034】
前記スチレン系誘導体としては、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレンおよびクロルスチレンなどが挙げられる。
【0035】
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、およびアクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、ガラス転移点が低くでき、成形性を改善できる観点から、アクリル酸ブチルが特に好ましい。
【0036】
メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸セチルなどが挙げられる。
【0037】
前記単量体は、メタクリル酸メチル、および/またはスチレンを含むことが好ましい。前記単量体がメタクリル酸メチルを含む場合、得られる発泡性着色樹脂粒子が、耐光性が高い発泡成形体を提供できるという利点を有する。前記単量体がスチレンを含む場合、得られる発泡性着色樹脂粒子が、剛性が高い発泡成形体を提供できるという利点を有する。なお、本発明の一実施形態において、使用する単量体としては特に限定されず、上述した単量体のうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
前記単量体は、当該単量体100重量%中、メタクリル酸メチルを60.0重量%以上含むことが好ましく、70.0重量%以上含むことがより好ましく、80.0重量%以上含むことがより好ましく、90.0重量%以上含むことがさらに好ましく、95.0重量%以上であることが特に好ましい。当該構成によれば、得られる発泡性着色樹脂粒子が、耐光性が高い発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0039】
前記単量体は、当該単量体100重量%中、スチレンを60.0重量%以上含むことが好ましく、70.0重量%以上含むことがより好ましく、80.0重量%以上含むことがより好ましく、90.0重量%以上含むことがさらに好ましく、95.0重量%以上であることが特に好ましい。当該構成によれば、得られる発泡性着色樹脂粒子が、剛性が高い発泡成形体を提供できるという利点を有する。
【0040】
前記単量体は、(a)メタクリル酸メチルのみから構成されていてもよく、(b)スチレンのみから構成されていてもよく、(c)メタクリル酸メチルおよびスチレンのみから構成されていてもよい。
【0041】
本明細書において、単量体100モル%中、単量体Aを50モル%超含む単量体を重合してなる樹脂を、「A系樹脂」と称する場合もある。換言すれば、「A系樹脂」とは、「樹脂中の全構成単位の数を100%としたとき、A単位の数が50%超である樹脂」を意図する。
【0042】
すなわち、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチル系樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、プロピレン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ブタジエン系樹脂等が挙げられる。
【0043】
前記熱可塑性樹脂は、(a)メタクリル酸メチル単位のみから構成されるメタクリル酸メチルの単独重合体であってもよく、(b)スチレン単位のみから構成されるスチレンの単独重合体であってもよく、(c)メタクリル酸メチル単位およびスチレン単位のみから構成される共重合体であってもよい。
【0044】
熱可塑性樹脂は、上述した樹脂、重合体および共重合体のうち、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明の一実施形態において、単量体の重合時には、架橋剤を使用することが好ましい。架橋剤としては、例えば、ラジカル反応性を示す官能基を2つ以上有する化合物が挙げられる。ラジカル反応性を示す官能基を2つ以上有する化合物の中でも、架橋剤としては、官能基を2つ有する二官能性単量体を用いることが好ましい。換言すれば、本発明の一実施形態における熱可塑性樹脂は、架橋剤単位として、二官能性単量体に由来する構成単位である二官能性単量体単位を含むことが好ましい。当該構成によると、(a)発泡性着色樹脂粒子は発泡性により優れ、(b)発泡性着色樹脂粒子は粒子内に色むらが少なく、(b)当該発泡性着色樹脂粒子を発泡してなる着色発泡粒子は収縮抑制性により優れる、という利点を有する。
【0046】
二官能性単量体としては、例えば、(a)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコールの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物、およびまたは当該エチレングリコールのオリゴマーの両末端水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化した化合物、(b)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなど)、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の2価のアルコールの水酸基をアクリル酸またはメタクリル酸でエステル化した化合物、および(c)ジビニルベンゼン等のアルケニル基を2個有するアリール化合物等が挙げられる。ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートは基材樹脂の分子量を調整し易いため、二官能性単量体としては、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどのヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意図しており、「(メタ)アクリル酸」は、メタクリル酸および/またはアクリル酸を意図する。
【0047】
単量体100重量部に対する、架橋剤の使用量は、0重量部以上0.20重量部未満であることが好ましく、0.01重量部~0.19重量部がより好ましく、0.03重量部~0.17重量部以下がより好ましく、0.05重量部~0.15重量部以下がより好ましく、0.08重量部~0.13重量部がさらに好ましい。前記構成によると、(a)発泡性着色樹脂粒子は発泡性に優れ、(b)当該発泡性着色樹脂粒子は、粒子内に色むらが少なく、(c)当該発泡性着色樹脂粒子を発泡してなる着色発泡粒子は収縮抑制性に優れるという利点を有する。
【0048】
なお、架橋剤の使用量は、単量体の使用量に対して微量であることから、架橋剤の使用量は、単量体の量(含有量)を計算する際には考慮しない。それ故、本明細書において、単量体の使用量において、二官能性単量体の使用量は含まない。
【0049】
また、単量体が、メタクリル酸メチルを含む場合、架橋剤の使用量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂中のメタクリル酸メチル中のビニル基を100mol%とした場合において、架橋剤のビニル基換算で0.30mol%以下であることが好ましく、0.20mol%以下であることがより好ましく、0.10mol%以下であることがさらに好ましい。当該構成によれば、得られる発泡性着色樹脂粒子が、強度が高い発泡成形体を提供できるとの利点を有する。単量体が、メタクリル酸メチルを含む場合、架橋剤の使用量は、熱可塑性樹脂中のメタクリル酸メチル中のビニル基を100mol%とした場合において、架橋剤のビニル基換算で0.05mol%以上であることが好ましい。当該構成によれば、得られる発泡性着色樹脂粒子が、高い発泡倍率で発泡成形体を提供できるとの利点を有する。すなわち、得られる発泡性着色樹脂粒子から、強度に優れ、かつ発泡倍率の高い発泡成形体を得るためには、架橋剤の使用量は、熱可塑性樹脂中のメタクリル酸メチル中のビニル基を100mol%とした場合において、架橋剤のビニル基換算で0.05mol%以上0.30mol%以下であることが好ましい。
【0050】
(2-2.染料)
本明細書において、染料とは、溶剤(単量体も含む)に溶ける油性の着色剤を意図する。
【0051】
本発明の一実施形態において、染料としては、例えば、キノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料、硫化染料系、トリフェニルメタン系染料、ピラゾロン系染料、スチルベン系染料、ジフェニルメタン系染料、キサンテン系染料、アリザリン系染料、アクリジン系染料、キノンイミン系染料(アジン系染料、オキサジン系染料、チアジン染料系)、チアゾール系染料、メチン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料、シアニン系染料等が挙げられる。本発明者は、鋭意検討の過程において、少なくとも特定のキノン系染料は、重合反応の開始に伴って染料の構造が変化することがない、という新規知見を得た。染料の構造の変化は、色調(色の明度および彩度)および色相の変化を引き起こし得る。すなわち、キノン系染料は、重合反応により、色調(色の明度および彩度)および色相が変化することがない、という新規知見を得た。それ故、染料は、キノン系染料を含むことが好ましく、キノン系染料であることがより好ましい。なお、本明細書において、構造の変化、並びに色調および色相の変化に関して、「変化しない」とは、「全く変化しないか、または変化するとしてもその変化は極わずかである」ことを意図する。
【0052】
染料は、当該染料100重量%、キノン系染料を50重量%以上含むことが好ましく、60重量%以上含むことがより好ましく、70重量%以上含むことがさらに好ましく、80重量%以上含むことが特に好ましい。染料中のキノン系染料が多いほど、重合反応によって色調および色相が変化し難くなるとの利点を有する。染料は、当該染料100重量%、キノン系染料を100重量%含んでいてもよく、換言すれば、キノン系染料のみから構成されていてもよい。
【0053】
また、キノン系染料としては、例えば、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料およびアントラキノン系染料等からなる群から選択される1種以上が挙げられる。この中でも、重合反応によって色調および色相が変化しないため、アントラキノン系染料がより好ましい。
【0054】
キノン系染料としては、特に限定されないが、C.I.Solvent Green3(1,4-ビス[(4-メチルフェニル)アミノ]-9,10-アントラキノン)、C.I.solventYellow114(2-(3-ヒドロキシ-2-キノリニル)-1,3-インダンジオン)、C.I.solventRed111(1-(メチルアミノ)アントラキノン)、およびC.I.solventBlue35(1,4-ビス(ブチルアミノ)9,10-アントラキノン)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましくC.I.Solvent Green3(1,4-ビス[(4-メチルフェニル)アミノ]-9,10-アントラキノン)、C.I.solventYellow114(2-(3-ヒドロキシ-2-キノリニル)-1,3-インダンジオン)、およびC.I.solventred111(1-(メチルアミノ)アントラキノン)からなる群より選択される1種以上を含むことがより好ましい。当該構成によれば、重合反応によって色調および色相が変化しないとの利点を有する。
【0055】
キノン系の染料の製品名としては、例えば、紀和化学社製 KP PLAST YELLOW HR、紀和化学社製 KP PLAST RED G、紀和化学社製 KP PLAST Blue BR等が挙げられ、これらの中でも、紀和化学社製 KP PLAST YELLOW HRまたは紀和化学社製 KP PLAST RED Gを含むことが好ましい。当該構成によれば、重合反応により、色調および色相が変化しないとの利点を有する。
【0056】
また、本発明の一実施形態において、キノン系染料を使用する場合、本発明の一実施形態に係る効果を損なわない限りにおいて、キノン系染料以外の染料1種以上を併用してもよい。キノン系染料以外の代表的な染料としては、例えば、C.I.Solvent Green5(3,9-ペリレンジカルボン酸ジイソブチル)、C.I.Solvent Yellow93(4-(4,5-ジヒドロ-1-フェニル-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾール-4-イリデンメチル)-1-フェニル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン)、およびC.I.Solvent Orange60(1,2-[カルボニル(1,2-フェニレン)]-1H-ペリミジン)等からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。また、染料が、キノン系染料およびキノン系染料以外の染料を含む場合、紀和化学社製 KP PLAST GREEN KNK(C.I.Solvent Green3とC.I.SolventGreen5との混合物)であることが好ましい。当該構成によれば、重合反応により、色調(色の明度および彩度)および色相が変化しない、との利点を有する。
【0057】
(2-3.重合開始剤X)
重合開始剤Xは、10時間半減期温度が85℃以下である。
【0058】
10時間半減期温度が85℃以下である重合開始剤Xとしては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスジメチルバレロニトリルが挙げられる。
【0059】
ここで、10時間半減期温度とは、10時間で有機過酸化物の50%が分解する温度を意図し、以下の方法により測定して得られた値である:まず、ラジカルに対して比較的不活性な溶媒(例えば、ベンゼン)を使用して、0.1mol/Lの重合開始剤溶液を調製する。次いで、窒素置換を行ったガラス管中に、調製された重合開始剤溶液を入れ、ガラス管を密閉する。次に、所定温度にセットした恒温槽にガラス管を浸し、重合開始剤を熱分解させる。
【0060】
ここで、一般的に、希薄溶液中の重合開始剤の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができる。そのため、まず、重合開始剤量x、分解速度定数k、時間t、重合開始剤初期濃度aとした場合、
dx/dt=k(a-x)・・・式(1)
ln{a/(a-x)}=kt・・・式(2)
と表すことができる。
さらに、半減期t1/2は、x=a/2の際の時間であるから、式(2)より
kt1/2=ln2・・・式(3)
となる。
したがって、ある一定温度で重合開始剤を熱分解させ、式(2)からln{a/(a-x)}を時間tに対してプロットし、得られた直線の傾きからkを求め、式(3)からその温度における半減期t1/2を算出できる。
【0061】
一方、A:頻度因子(1/h)、ΔE:活性化エネルギー(J/mol)、R:気体定数(8.314J/mol・K)、T:絶対温度(K)としたとき、分解速度定数kは、k=Aexp(-ΔE/RT)・・・式(4)
lnk=lnA-ΔE/RT・・・式(5)
で表すことができる。
次いで、ln2=Bとすると、式(3)より、
k=B/(t1/2
となる。
同式を式(5)に対して代入して整理すると、
ln(t1/2)=ΔE/RT+ln(B/A)・・・式(6)
と表される。ここで、傾きΔE/Rは温度によらず一定である。
従って、少なくとも2点以上の温度においてt1/2を測定し、ln(t1/2)の値を1/Tに対してプロットすることにより、直線が得られる(縦軸がln(t1/2)であり、横軸が1/Tである)。得られた直線について、縦軸であるln(t1/2)に関して、t1/2の値が60分であるときの横軸1/Tの値が、一時間半減期温度(K)の逆数であることから、当該値(1/T)の逆数を算出することにより、一時間半減期温度(K)を求めることができる。なお、一時間半減期温度(℃)は、一時間半減期温度(K)から273.15を差し引いた値として算出する。
【0062】
(2-4.重合工程)
本製造方法が有する重合工程では、水、単量体、染料および10時間半減期温度が85℃以下である重合開始剤Xを含む水性懸濁液を用いて、前記単量体の重合を行い、熱可塑性樹脂を含む着色樹脂粒子を得る。ここで、「重合転化率」とは、最終的に得られる熱可塑性樹脂(粒子)の原料である単量体の総量100重量%のうち、既に重合体を形成している単量体の量(重量%)を意図する。例えば、シード重合の場合、最終的に得られる熱可塑性樹脂(粒子)の原料である単量体の総量とは、シードとなる樹脂粒子(種粒子)の原料である単量体の量と、別途、重合工程で使用する単量体の量との合計量を意図する。
【0063】
本発明の一実施形態において、染料の使用量は、前記単量体100重量部に対して、0.040重量部未満である。当該構成によれば、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるとの利点を有する。染料の使用量は、前記単量体100重量部に対して、0.035重量部以下であることが好ましく、0.030重量部以下であることがより好ましく、0.025重量部以下であることがより好ましく、0.020重量部以下であることがより好ましく、0.015重量部以下であることがさらに好ましく、0.010重量部以下であることが特に好ましい。当該構成によれば、粒子内により色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるという利点を有する。
【0064】
本発明の一実施形態において、染料の使用量は、前記単量体100重量部に対して、0.001重量部以上であることが好ましく、0.002重量部以上であることが好ましく、0.003重量部以上であることがより好ましく、0.004重量部以上であることがさらに好ましく、0.005重量部以上であることが特に好ましい。当該構成によれば、粒子内により色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるという利点を有する。
【0065】
本製造方法において使用する染料は、(i)その使用量のすべてを重合工程において使用してもよく、(ii)重合工程および含浸工程においてそれぞれ一定量ずつ使用してもよい。換言すれば、上記染料の使用量は、(i)重合工程における染料の使用量であってもよく、(ii)重合工程における染料の使用量と、含浸工程における染料の使用量と、の合計量であってもよい。粒子内に色むらの更に少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができる観点から、本製造方法において使用する染料は、その使用量のすべてを重合工程において使用することが好ましい。
【0066】
また、染料は、すべての量を重合工程において使用することが好ましく、重合工程の中でも、重合転化率が50%を超えるまでの間に、前記染料の使用量の全量を添加することが好ましい。換言すれば、染料の使用量の全量の存在下において、最終的に得られる発泡性着色樹脂粒子の原料である単量体Xの総量100重量%のうち50%以上を重合することが好ましい。当該構成によれば、粒子間および粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるとの利点を有する。
【0067】
重合転化率が50%を超えるまでの間に染料の使用量の全量を添加することによって、粒子間および粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子が得られる理由は、定かではないが、以下のように推測している:
水性懸濁液中に存在する単量体の液滴が合一および分裂を繰り返す過程において、染料は均一化し得る。均一化とは、例えば、(液滴2個の場合で説明すると)染料をW%含む液滴と染料をZ%含む液滴とが合一することにより一つの液滴となった際、当該液滴が分裂することによって染料を{(W+Z)/2}%含む液滴が2つできることを意図する。染料の有無にかかわらず、重合転化率が50%以上になると、液滴の分裂に比べて液滴の合一が優先されていくと考えられるため、重合転化率が50%以上となった液滴であり、かつ染料を含有する液滴では、染料の均一化が起こりにくくなると推測される。なお、重合転化率が高くなるほど単量体が樹脂になる割合が増えるため、液滴の合一および分裂が少なくなると推測される。特に、重合転化率が85%以上になると、大部分の単量体が樹脂になるため、液滴の合一および分裂が起こらないか、起こるとしても非常に少なくなり得る。それ故、重合転化率が50%を超えるまでの間に前記染料の使用量の全量を添加することにより、粒子間に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができる。
なお、本発明の一実施形態は、上述の推測になんら限定されるものではない。
【0068】
また、重合転化率が50%を超えるまでの間では、樹脂粒子および/または液滴の粘度が高くないことから、当該間に前記染料の使用量の全量を添加することにより、染料が樹脂粒子内または液滴内で拡散しやすく均一化が起こりやすい。それ故、重合転化率が50%を超えるまでの間に前記染料の使用量の全量を添加することにより、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができる。
【0069】
本発明の一実施形態において、重合開始剤Xの使用量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して、0.070重量部~0.200重量部であることが好ましく、0.075重量部~0.190重量部であることがより好ましく、0.080重量部~0.185重量部であることがさらに好ましい。当該構成によると、発泡性に優れ、かつ粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子が得られるとともに、当該発泡性着色樹脂粒子が物性(強度)に優れる発泡成形体を提供できるとの利点を有する。
【0070】
本発明の一実施形態において、染料の使用量に対する、重合開始剤Xの使用量の比率(重合開始剤Xの使用量/染料の使用量)は2.0を超えることが好ましく、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることがより好ましく、3.5以上であることがさらに好ましく、4.0以上であることが特に好ましい。当該構成によれば、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるとの利点を有する。
【0071】
本発明の一実施形態において、重合開始剤X以外の重合開始剤、すなわち、10時間半減期温度が80℃超である重合開始剤Yを、前記重合開始剤Xと併用してもよい。当該構成によれば、残存モノマー量を低減できるとの利点を有する。
【0072】
10時間半減期温度が85℃超である重合開始剤Yとしては、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンおよびt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートが挙げられる。
【0073】
本発明の一実施形態において、重合開始剤Yの使用量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して、0.060重量部~0.200重量部であることが好ましく、0.080重量部~0.195重量部であることがより好ましく、0.090重量部~0.190重量部であることがさらに好ましい。当該構成によると、残存モノマー量が少なく、発泡性に優れる発泡性着色樹脂粒子が得られると共に、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるとの利点を有する。
【0074】
本発明の一実施形態において、重合開始剤の全使用量(重合開始剤Xおよび重合開始剤Yの使用量の合計)は、特に限定されないが、単量体100重量部に対して、0.130重量部~0.400重量部が好ましく、0.150重量部~0.395重量部であることがより好ましく、0.170重量部~0.390重量部であることがさらに好ましい。当該構成によると、残存モノマー量が少なく、発泡性に優れ、かつ粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子が得られると共に、当該発泡性着色樹脂粒子が物性(強度)に優れる発泡成形体を提供できるとの利点を有する。
【0075】
水、単量体、染料および重合開始剤Xを含む混合液を、例えば撹拌することにより、水中に、単量体、染料および重合開始剤Xを含む液滴を分散させ、水性懸濁液とすることができる。重合工程における単量体の重合は、水、単量体、染料および重合開始剤Xを含む水性懸濁液中で行う。
【0076】
水性懸濁液中には、単量体、染料および重合開始剤Xに加えて、(a)水溶性の界面活性剤が溶解していてもよく、また(b)水に不溶の分散剤、重合開始剤Y、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤(造核剤)、難燃剤、溶剤、可塑剤等が分散していてもよい。
【0077】
気泡調整剤(造核剤)としては、ポリエチレンワックスなどが挙げられる。また、水性懸濁液中には、液滴への内部含水を少なくするために食塩が分散していてもよく、発泡性を向上させるために、ヤシ油などが分散していてもよい。
【0078】
水性懸濁液中の単量体と水または水溶液との重量比は、得られる着色樹脂粒子/水または水溶液、の比として、1.0/0.6~1.0/3.0が好ましい。なお、ここで言及する「水溶液」とは、水と、着色樹脂粒子以外の水溶性の成分とからなる溶液を意図する。
【0079】
分散剤としては、例えば、難水溶性無機塩が好ましい。難水溶性無機塩としては、例えば、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどが挙げられる。
【0080】
重合工程において使用する難水溶性無機塩としては、着色樹脂粒子及び/又は単量体の液滴の保護力の観点から、第3リン酸カルシウムが好ましい。
【0081】
また、重合工程において、(a)ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子、および/または(b)α‐オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤を、難水溶性無機塩と併用してもよい。
【0082】
ここで、本発明者は、重合工程の開始時点以前において存在する第3リン酸カルシウムの量が、特定量以下の場合に、得られる発泡性着色樹脂粒子の粒子間における色むらがなくなるか、色むらがあるとしても非常に少なくなるとの新規知見を得た。
【0083】
そして、上述したような、粒子間における色むらがなくなるか、色むらがあるとしても非常に少なくなることの理由は、定かではないが、以下のように推察される:
第3リン酸カルシウムは、水性懸濁液中の単量体の液滴の合一および分裂の両方を阻害し得る。そのため、重合工程の開始時点において使用する第3リン酸カルシウムの量が特定量より少ない場合、重合工程の開始時点以降における、水性懸濁液中の単量体の液滴の合一および分裂の両方が過剰に阻害されず、適切に進行する。また、上述したように、水性懸濁液中に存在する単量体の液滴が合一および分裂を繰り返す過程において、染料は均一化し得る。したがって、本発明の一実施形態のように、重合転化率が50%を超えるまでの間に、染料を添加する場合において、重合工程の開始時点以前において存在する第3リン酸カルシウムの量が特定量以下にすることにより、単量体および染料を含む液滴の合一および分裂が適切に進行し、すなわち染料の均一化が適切に進行し、重合を進めることができる。その結果、得られる発泡性着色樹脂粒子の粒子間における色むらがなくなるか、色むらがあるとしても非常に少なくなる。
なお、本発明の一実施形態は、かかる推察になんら限定されるものではない。
【0084】
本明細書において、「重合工程の開始時点」とは、「単量体、染料、および重合開始剤Xが混合された時点」を意図する。
【0085】
重合工程の開始時点以前において、前記単量体100重量部に対して、0.30重量部以下の第3リン酸カルシウム(CAP)を使用することが好ましく、0.25重量部以下を使用することがより好ましく、0.20重量部以下を使用することがさらに好ましく、0.15重量部以下を使用することが特に好ましい。当該構成によれば、粒子内に色むらがないことに加え、水性懸濁液中の液滴間で染料が良好に分散することにより、粒子間における色むら(着色の程度の差)がない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるとの利点を有する。なお、粒子間の色むらの評価方法については、後述する実施例にて詳説する。
【0086】
重合工程の開始時点におけるCAPの使用量が上述した範囲内である場合、重合工程の開始時点以降(好ましくは、重合転化率が50%に達した時点以降)において、CAPをさらに使用すれば、水性懸濁液中の液滴の過度な合一が抑制されることから、異常重合となる(大きな樹脂の塊が得られる)虞がない。このメカニズムは、以下のように推察される:
重合が進むにつれて上昇する液滴粘度に対して、重合工程の開始時点で使用したCAPの作用効果(液滴の合一および分裂を抑制効果)が低減してきたところ、重合途中でCAPをさらに添加することにより、液滴の粘度上昇により液滴同士の合一が優先されることなく、液滴の合一および分裂が適切に行われるようになることにより、異常重合となる虞がなくなる。
なお、本発明の一実施形態は、かかる推察になんら限定されるものではない。
【0087】
重合工程の開始時点以降(好ましくは、重合転化率が50%に達した時点以降)において、使用する第3リン酸カルシウムの量は、特に限定されないが、前記単量体100重量部に対して、0.01重量部~0.50重量部であることが好ましく、0.02重量部~0.40重量部であることがより好ましく、0.03重量部~0.30重量部であることがさらに好ましく、0.04重量部~0.20重量部であることが特に好ましい。当該構成によれば、水性懸濁液中の液滴の過度な合一が抑制されることから、異常重合となることがないとい利点を有する。なお、本発明の一実施形態において、重合工程の開始時点における第3リン酸カルシウムの使用量が上述した範囲内であり、かつ重合工程の開始時点以降(好ましくは、重合転化率が50%に達した時点以降)において、第3リン酸カルシウムを、例えば単量体100重量部に対して0.01重量部~0.50重量部さらに使用する場合、得られる発泡性着色樹脂粒子の体積平均粒子径は0.4mm~1.0mmである傾向がある。
【0088】
重合工程は、液滴の分散安定性の観点から、難水溶性無機塩である第3リン酸カルシウムおよびアニオン系界面活性剤であるα-オレフィンスルホン酸ソーダの存在下、単量体の重合を行う工程であることが好ましい。
【0089】
重合工程において、単量体、染料、および10時間半減期温度が85℃以下である重合開始剤Xを混合する順序は特に限定されない。単量体、染料、および重合開始剤Xを同時に混合してもよく、染料、および重合開始剤Xを混合した後、得られた混合物に単量体を添加して混合してもよい。
【0090】
重合工程において、連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、特に限定されず、メタクリル酸メチル系樹脂および/またはスチレン系樹脂の重合に用いられる周知の物質を使用できる。連鎖移動剤としては、例えば、(a)アルキルメルカプタン類、チオグリコール酸エステル類等の単官能連鎖移動剤、および(b)エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多価アルコール水酸基をチオグリコール酸または3-メルカプトプロピオン酸でエステル化した多官能性連鎖移動剤、があげられる。アルキルメルカプタン類としては、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタンおよびt-ドデシルメルカプタンなどが挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、例えば、単量体100重量部に対して0.100重量部以上0.500重量部未満が好ましく、0.200重量部以上0.300重量部未満がより好ましい。
【0091】
なお、連鎖移動剤の使用量は、単量体の使用量に対して微量であることから、単量体の量(含有量)を計算する際には考慮しない。
【0092】
重合工程における重合温度は、特に限定されないが、70℃~100℃であることが好ましく、75℃~95℃であることがより好ましい。当該構成によれば、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるとの利点を有する。
【0093】
重合工程における重合時間は、特に限定されないが、3.0時間~6.0時間であることが好ましく、3.5時間~5.5時間であることがより好ましく、4.0時間~5.0時間であることがさらに好ましい。当該構成によれば、重合時に発生する熱の除去が可能となり、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができるとの利点を有する。
【0094】
溶剤としては、特に限定されるものではないが、沸点50℃以上の溶剤が好ましい。沸点50℃以上の溶剤としては、例えば、(a)トルエン、へキサン、ヘプタン等の炭素数6以上(C6以上)の脂肪族炭化水素、および(b)シクロヘキサン、シクロオクタン等のC6以上の脂環族炭化水素、などが挙げられる。
【0095】
発泡性に優れる発泡性着色樹脂粒子を得ることができることから、沸点50℃以上の溶剤としては、トルエンおよび/またはシクロヘキサンが好ましい。本製造方法において、単量体100重量部に対する、溶剤の使用量は、1.5重量部~3.0重量部が好ましい。熱可塑性樹脂の原料である単量体100重量部に対する溶剤の使用量が、(a)1.5重量部以上である場合、十分な発泡力を有する発泡性着色樹脂粒子を得ることができ、(b)3.0重量部以下である場合、表面の膨張が抑制された、すなわち寸法安定性に優れる着色発泡成形体を得ることができる。
【0096】
なお、重合工程は、重合転化率が少なくとも90%に達するまでの工程を意図する。換言すれば、重合転化率が90%に達した後の任意の時点で、発泡剤を添加し、続く発泡剤含侵工程に移行してもよい。
【0097】
(2-5.発泡剤含浸工程)
本製造方法が有する発泡剤含浸工程では、前記重合工程により得られた前記着色樹脂粒子に発泡剤を含浸させることにより、発泡性着色樹脂粒子を得ることができる。
【0098】
本製造方法が有する発泡剤含浸工程において、含浸させる発泡剤は、特に限定されない。
【0099】
前記発泡剤の具体例としては、例えば、(a)プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタンおよびネオペンタンなどの、炭素数3~5の脂肪族炭化水素類;並びに(b)ジフルオロエタンおよびテトラフルオロエタンなどの、オゾン破壊係数がゼロであるフルオロカーボン類;などの揮発性発泡剤が挙げられる。
【0100】
これらの発泡剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用しても何ら差し支えない。
【0101】
本発明の一実施形態において、前述した発泡剤の中でも、生産コストの観点から、発泡剤はブタンがより好ましい。また、発泡力の高さの観点から、発泡剤は、ノルマルリッチブタンであることがより好ましい。
【0102】
また、ブタンの組成比は、特に限定されないが、ノルマルブタン:イソブタン=40:60~80:20が好ましく、ノルマルブタン:イソブタン=50:50~70:30がより好ましい。当該構成によれば、発泡剤が安価であり、経日でも発泡力を維持できるとの利点を有する。
【0103】
発泡剤含浸工程において、単量体100重量部に対する、発泡剤の使用量は、5.0重量部~12.0重量部が好ましく、6.0重量部~10.0重量部がより好ましい。当該構成によると、十分な発泡性を有する発泡性着色樹脂粒子を提供でき、かつ重厚な重合設備が不要となる、という利点を有する。
【0104】
発泡剤含浸工程において、着色樹脂粒子に発泡剤を含浸させるときの処理温度(含浸温度とも称する。)および処理時間(含浸時間とも称する。)は特に限定されない。
【0105】
発泡剤含浸工程において、含浸温度は、95℃~120℃が好ましく、100℃~120℃がより好ましい。含浸温度が95℃以上である場合、発泡剤が着色樹脂粒子の内部まで十分に含浸されるため、得られる発泡性着色樹脂粒子を発泡させてなる着色発泡粒子に二重の気泡構造(硬芯)が形成される虞がない。その結果、当該着色発泡粒子を型内成形することにより、表面美麗性に優れる着色発泡成形体が得られる。含浸温度が120℃以下である場合、(i)重合機内の圧力が高くなりすぎないため、大きな圧力に耐え得る重装備な含浸設備を必要としないという利点、(ii)均一な気泡構造を有する着色発泡粒子を提供し得る発泡性着色樹脂粒子を得ることができるという利点、および(iii)残存モノマー量を少なくできるという利点、を有する。
【0106】
本製造方法において、溶剤(例えば沸点50℃以上の溶剤)を使用する場合、発泡剤含浸工程においては、発泡剤含浸工程の直前または、発泡剤含浸工程と同時に、溶剤を反応混合物(水性懸濁液)中に添加することが好ましい。
【実施例0107】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0108】
<体積平均粒子径の測定方法>
画像処理方式ミリトラックJPA粒度分析計を用いて、発泡性着色樹脂粒子の粒径を体積基準で測定し、得られた結果を累積分布で表示し、体積累積50%となる粒径を体積平均粒子径とした。
【0109】
<粒子内の色むらの判定方法>
後述する実施例および比較例で得られた発泡性着色樹脂粒子の中から、無作為に10個の発泡性着色樹脂粒子を取った。次いで、各発泡性着色樹脂粒子を半分に割断した。続いて、割断した各発泡性着色樹脂粒子の断面について、マイクロスコープを用いて、発泡性着色樹脂粒子表面から50μmの層(表面層)の色と、発泡性着色樹脂粒子の中心から半径50μmの円(中心部)の色と、を観察した。観察倍率は500倍とした。以下の基準に基づき、粒子内の色むらの判定を行った:
良好:10個の発泡性着色樹脂粒子のいずれも、表面層と中心部とで色むらが無い
可:10個の発泡性着色樹脂粒子のうち、1個以上5個以下の発泡性着色樹脂粒子で表面層と中心部とで色むらが有る
不可:10個の発泡性着色樹脂粒子のうち、5個超の発泡性着色樹脂粒子で表面層と中心部とで色むらが有る。
【0110】
<粒子間の色むらの判定方法>
後述する実施例および比較例で得られた発泡性着色樹脂粒子の中から、無作為に1gの発泡性着色樹脂粒子を取った。次いで、当該1gの発泡性着色樹脂粒子の中から色が薄い発泡性着色樹脂粒子を選別し、色が薄い発泡性着色樹脂粒子の重量(g)を測定した。続いて、下記式から、色の薄い発泡性着色樹脂粒子の割合を算出した:
色の薄い発泡性着色樹脂粒子の割合(%)=(色の薄い発泡性着色樹脂粒子の重量(g)/1g)×100。
【0111】
以下の基準に基づき、粒子間の色むらの判定を行った:
良好:色の薄い発泡性着色樹脂粒子の割合が10%未満
不可:色の薄い発泡性着色樹脂粒子の割合が10%以上。
【0112】
<重合工程、含浸工程>
(実施例1~7、9、比較例1)
撹拌機付き6Lオートクレーブ中に、純水:150重量部、第3リン酸カルシウム(CAP):表1に記載の部数、α-オレインスルホン酸ソーダ:0.0075重量部、重合開始剤Xとしてラウロイルパーオキサイド:0.08重量部、重合開始剤Yとして1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:0.1重量部、架橋剤として1,6-ヘキサンジオールジアクリレート:0.1重量部(メタクリル酸メチル系単量体のビニル基100mol%に対して1,6-ヘキサンジオールジアクリレートのビニル基の割合は0.09mol%)、n-ドデシルメルカプタン:0.24重量部、および染料:表に記載の種類および部数、を添加した。次いで、当該オートクレーブ中に、(i)単量体としてメタクリル酸メチル97.5重量部およびアクリル酸ブチル2.5重量部、並びに(ii)溶剤としてトルエン1重量部、を添加した。続いて、オートクレーブ内の水性懸濁液を80℃に昇温して重合を開始するとともに、80℃で重合を行い、熱可塑性樹脂としてメタクリル酸メチル系樹脂を含む着色樹脂粒子を得た(重合工程)。重合時間は、表1に示した。なお、重合開始から2時間目(重合転化率50%の時点)で、オートクレーブ中にさらに第3リン酸カルシウムを0.1重量部添加した。表1に記載の重合時間が経過した後、当該オートクレーブ中に、(i)溶剤としてシクロヘキサン1.5重量部、および(ii)発泡剤としてノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70重量部/30重量部)9.0重量部を添加した。次いで、オートクレーブ内の水性懸濁液を102℃に昇温し、102℃で10時間、着色樹脂粒子に対する発泡剤の含浸を行った(含浸工程)。得られた粒子を冷却後、洗浄、脱水、および乾燥することにより発泡性着色樹脂粒子(発泡性着色メタクリル酸メチル系樹脂粒子)を得た。ただし、比較例1では、発泡性着色樹脂粒子(発泡性着色メタクリル酸メチル系樹脂粒子)は得られず、重合4時間目の時点でスライム状の物質が得られた。
【0113】
なお、表1における染料(1)は、紀和化学社製KP PLAST GREEN KNK(C.I.Solvent Green3とC.I.SolventGreen5との混合物)である。表1における染料(2)は、紀和化学社製 KP PLAST YELLOW HR(C.I.solventYellow114)、染料(3)は、紀和化学社製 KP PLAST RED G(C.I.solventRed111)である。
【0114】
(実施例8)
撹拌機付き6Lオートクレーブ中に、純水:100重量部、第3リン酸カルシウム(CAP):表に記載の部数、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.0070重量部、重合開始剤Xとして過酸化ベンゾイル:0.183重量部、重合開始剤Yとして1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:0.186重量部、食塩:0.47重量部、ポリエチレンワックス:0.04重量部、ヤシ油:0.4重量部、および染料:表1に記載の種類および部数を添加した。次いで、当該オートクレーブ中に、単量体としてスチレン100重量部を添加した。続いて、オートクレーブ内の水性懸濁液を94℃に昇温して重合を開始するとともに、94℃で4.5時間重合を行い、熱可塑性樹脂としてスチレン系樹脂を含む着色樹脂粒子を得た(重合工程)。なお、重合開始から1時間40分目(重合転化率50%の時点)で、オートクレーブ中にさらに第3リン酸カルシウムを0.05重量部添加した。表1に記載の重合時間が経過した後、当該オートクレーブ中に、(i)溶剤としてシクロヘキサン2.1重量部、および(ii)発泡剤としてノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70重量部/30重量部)6.8重量部を添加した。次いで、オートクレーブ内の水性懸濁液を120℃に昇温し、102℃で2時間15分、着色樹脂粒子に対する発泡剤の含浸を行った(含浸工程)。得られた粒子を冷却後、洗浄、脱水、および乾燥することにより発泡性着色樹脂粒子(発泡性着色スチレン系樹脂粒子)を得た。
【0115】
(比較例2)
撹拌機付き6Lオートクレーブ中に、純水:125重量部、第3リン酸カルシウム(CAP):表1に記載の部数、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム:0.0070重量部、重合開始剤Xとして過酸化ベンゾイル:0.30重量部、重合開始剤Yとして1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン:0.06重量部、食塩:0.47重量部、ポリエチレンワックス:0.04重量部、ヤシ油:0.4重量部、および単量体としてスチレン80重量部、を添加した。次いで、オートクレーブ内の水性懸濁液を90℃に昇温し、90℃で4時間、重合を行った。その後、表に記載の種類の染料(染料(1))0.05重量部を溶解させた、単量体のスチレン20重量部を添加し(重合転化率85%の時点で添加)、90℃で4時間、更に重合を行い、熱可塑性樹脂としてスチレン系樹脂を含む着色樹脂粒子を得た。その後、当該オートクレーブ中に、(i)溶剤としてシクロヘキサン2.1重量部、および(ii)発泡剤としてノルマルリッチブタン(ノルマルブタン/イソブタン=70重量部/30重量部)6.8重量部を添加した。次いで、オートクレーブ内の水性懸濁液を110℃に昇温し、110℃で2時間、着色樹脂粒子に対する発泡剤の含浸を行った。得られた粒子を冷却後、洗浄、脱水、および乾燥することにより発泡性着色樹脂粒子(発泡性着色スチレン系樹脂粒子)を得た。
【0116】
(比較例3)
発泡性スチレン系樹脂粒子(カネパールFF(カネパールFFの重合転化率は99%以上である)、含有揮発分4.5%、体積平均粒子径1.2mm)を用いて、含浸実験を行った。先ず、6Lオートクレーブ中に、純水:93重量部、発泡性スチレン系樹脂粒子:100重量部(含有揮発分量4.5%)、第3リン酸カルシウム(CAP):0.13重量部、およびα-オレフィンスルホン酸ソーダ:0.0069重量部を添加し、10分間撹拌して水性懸濁液を得た。別途、300mlのビーカー中に、発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対する量が、それぞれ7.1重量部の純水、0.02重量部の第3リン酸カルシウム、0.0000011重量部のα-オレフィンスルホン酸ナトリウム、および0.020重量部の染料(2)(紀和化学製 KP PLAST YELLOW HR(C.I.solventYellow114))を添加した。続いて、ビーカー内の、染料を含む水性懸濁液をホモミキサーで十分撹拌した。得られた、染料を含む水性懸濁液を、前記6Lオートクレーブに添加し、窒素置換後、10分間撹拌した。10分経過後、当該オートクレーブに対し、発泡剤として、常温のブタン2.5重量部(ノルマルブタン:イソブタン=70:30)を添加速度0.45重量部/分で添加した。その後、当該オートクレーブ内の水性懸濁液を1時間かけて100℃まで昇温し、100℃で2時間、発泡性樹脂粒子に対して、さらなる発泡剤の含浸を行った。得られた粒子を50分かけて40℃迄冷却後、洗浄、脱水、および乾燥することにより、着色発泡性樹脂粒子(着色発泡性スチレン系樹脂粒子)を得た。
【0117】
【表1】
【0118】
なお、表1に記載の第3リン酸カルシウム(CAP)の量(部数)は、重合工程の開始時点以前において添加した量(部数)である。
【0119】
比較例1では、染料の使用量が多かったため、重合を完結させることができなかった。それ故、未重合の単量体が容器内に残存し、スライム状の物質が得られた。
【0120】
また、比較例2は、前記特許文献2の実施例2に相当する。具体的に、比較例2では、単量体を重合して樹脂粒子を製造する途中段階において、単量体に溶解させた染料を添加した。その結果、得られた発泡性着色樹脂粒子では、粒子内に色むらが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の一実施形態によると、粒子内に色むらの少ない発泡性着色樹脂粒子を提供することができる。そのため、本発明の一実施形態は、生鮮食品用途、建材用途、および家の内断熱材などにおいて他容器と区別するため、また意匠性を高めるために、着色発泡成形体が必要である場合に好適に利用することができる。