(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102742
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】車両用灯具システム、制御装置、配光制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20240724BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20240724BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
F21S41/153
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006836
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 亮吾
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆雄
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA12
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA25
3K339CA01
3K339DA01
3K339GB01
3K339HA03
3K339KA07
3K339KA09
3K339LA06
3K339MA01
3K339MC14
3K339MC27
3K339MC29
3K339MC77
3K339MC90
(57)【要約】
【課題】白線の検出距離を伸ばす新たな技術を提供する。
【解決手段】配光制御方法は、車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する。この方法は、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように車両用灯具の駆動を制御する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前方を照射可能な車両用灯具と、
前記車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて前記車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項2】
前記制御部は、検出された白線の形状に対応する白線領域が該白線領域の周囲よりも明るい配光パターンを形成するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記制御部は、検出された白線及び検出された白線から推定された推定白線の形状に対応する白線領域が該白線領域の周囲よりも明るい配光パターンを形成するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記制御部は、車両前方のスクリーン上におけるH-H線より0.5~0.8°下方、かつ、V-V線の両側1.3~2.0°の範囲の領域を前記白線領域として照射する配光パターンを形成するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
前記制御部は、検出された白線同士の間の領域を走行領域、該走行領域の外側を路肩領域として照射する配光パターンを形成するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
車両前方を照射可能な車両用灯具と、
前記車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて前記車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、車両前方を撮像した画像情報に基づいて検出された白線よりも外側の路肩領域が白線同士の間の走行領域よりも明るい配光パターンを形成するように前記車両用灯具を制御することを特徴とする車両用灯具システム。
【請求項7】
前記配光パターンにおける前記路肩領域と前記走行領域との境界の明るさの変化が多段階であることを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具システム。
【請求項8】
前記車両用灯具は、複数の発光領域がマトリックス状に配列した光源を有し、
前記制御部は、前記複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで複数の配光パターンを形成可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両用灯具システム。
【請求項9】
車両前方を照射可能な車両用灯具を制御する制御装置であって、
前記車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて前記車両用灯具を制御する制御部を有し、
前記制御部は、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項10】
車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する配光制御方法であって、
車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように前記車両用灯具の駆動を制御することを特徴とする配光制御方法。
【請求項11】
車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する制御部に実行させるためのプログラムであって、
前記プログラムは、前記制御部に、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように前記車両用灯具の駆動を制御するステップを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
先進運転支援システムや自動運転におけるレーンキープアシストや前走車追従式クルーズコントロールといった自車走行路の予測制御に白線検知は重要である。白線検知の方法として、撮像手段により撮像された画像に基づいて道路上の白線を検出する手段が一般的である。
【0003】
例えば、車両に設置された撮像手段と、撮像手段により撮像された画像に基づいて、道路上の白線を検出し、車両から白線を検出することができなくなる地点までの第1距離を求める白線検出手段と、撮像手段により撮像された画像に基づいて、障害物の有無を検出し、車両から障害物までの第2距離を求める障害物検出手段と、第1距離と第2距離とを比較し、その比較結果と障害物の検出結果とに基づいて、障害物の有無について判断する障害物判断手段とを備える障害物検出装置が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の障害物検出装置は、白線を検出することができなくなる白線検出可能距離を算出し、その距離よりも遠方では白線を用いた制御の信頼性が低いものとして障害物の有無の判断を保留している。そのため、車両前方の白線をより遠方まで精度良く検出できれば様々な予測制御の適用範囲が広がる。特に、夜間においてはヘッドランプの照射距離の制約もあり、白線検出可能距離が短くなりがちである。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、白線の検出距離を伸ばす新たな技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具システムは、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備える。制御部は、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように車両用灯具の駆動を制御する。
【0008】
この態様によると、白線が検出されなかった遠方の領域まで灯具で照射されることで、白線の検出距離を伸ばすことができる。
【0009】
制御部は、検出された白線の形状に対応する白線領域が該白線領域の周囲よりも明るい配光パターンを形成するように車両用灯具を制御してもよい。これにより、その後の白線検出の精度が向上する。
【0010】
制御部は、検出された白線及び検出された白線から推定された推定白線の形状に対応する白線領域が該白線領域の周囲よりも明るい配光パターンを形成するように車両用灯具を制御してもよい。これにより、その後の推定白線の検出精度が向上する。
【0011】
制御部は、車両前方のスクリーン上におけるH-H線より0.5~0.8°下方、かつ、V-V線の両側1.3~2.0°の範囲の領域を白線領域として照射する配光パターンを形成するように車両用灯具を制御してもよい。これにより、白線検出の精度が向上する。
【0012】
制御部は、検出された白線同士の間の領域を走行領域、該走行領域の外側を路肩領域として照射する配光パターンを形成するように車両用灯具を制御してもよい。これにより、走行領域と路肩領域の双方に適した配光パターンを形成できる。
【0013】
本発明の別の態様もまた、車両用灯具システムである。この車両用灯具システムは、車両前方を照射可能な車両用灯具と、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具の駆動を制御する制御部と、を備える。制御部は、車両前方を撮像した画像情報に基づいて検出された白線よりも外側の路肩領域が白線同士の間の走行領域よりも明るい配光パターンを形成するように車両用灯具を制御する。
【0014】
この態様によると、白線よりも外側の路肩領域にある立体物を認識しやすくなる。
【0015】
配光パターンにおける路肩領域と走行領域との境界の明るさの変化が多段階であってもよい。これにより、配光パターンにおける路肩領域と走行領域との明確な境界を白線等の区画線と誤検知することを抑制できる。
【0016】
車両用灯具は、複数の発光領域がマトリックス状に配列した光源を有してもよい。制御部は、複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで複数の配光パターンを形成可能に構成されていてもよい。これにより、白線の形状に沿った領域を周囲よりも選択的に明るくできる。
【0017】
本発明の更に別の態様は、制御装置である。この装置は、車両前方を照射可能な車両用灯具を制御する制御装置であって、車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて車両用灯具を制御する制御部を有する。制御部は、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように車両用灯具の駆動を制御する。
【0018】
この態様によると、白線が検出されなかった遠方の領域まで車両用灯具の駆動を制御することで、白線の検出距離を伸ばすことができる。
【0019】
本発明の更に別の態様は、配光制御方法である。この方法は、車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する配光制御方法であって、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように車両用灯具の駆動を制御する。
【0020】
この態様によると、白線が検出されなかった遠方の領域まで車両用灯具の駆動を制御することで、白線の検出距離を伸ばすことができる。
【0021】
本発明の更に別の態様は、プログラムである。このプログラムは、車両前方を照射可能な車両用灯具を、該車両用灯具が形成する配光パターンの情報に応じて制御する制御部に実行させるためのプログラムである。また、このプログラムは、制御部に、車両前方を撮像した画像情報に基づいて白線が検出された領域よりも遠方の領域まで照射されるように車両用灯具の駆動を制御するステップを実行させる。
【0022】
この態様によると、白線が検出されなかった遠方の領域まで車両用灯具の駆動を制御することで、白線の検出距離を伸ばすことができる。
【0023】
以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を製造方法や制御方法などの方法、灯具や照明、制御装置などの装置、発光モジュール、光源、プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、白線の検出距離を伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
【
図2】車両用灯具システムによって形成される第1の配光パターンの一例を模式的に示す図である。
【
図3】夜間に走行中の車両の前方の撮像画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、照射範囲における白線検出を説明するための模式図である。
【
図5】本実施の形態に係る配光制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】白線領域を照射する照射範囲を説明するための上面図である。
【
図7】白線領域を照射する照射範囲を説明するための側面図である。
【
図8】白線領域を周囲よりも明るくする配光パターンを示す図である。
【
図9】夜間に走行中の車両の前方の撮像画像の他の例を示す図である。
【
図10】本実施の形態の変形例に係る配光制御方法を示すフローチャートである。
【
図11】
図11(a)は、各エリアの境界の明るさの変化が急峻な配光パターンの一例を示す図、
図11(b)は、
図11(a)の配光パターンを画像解析(エッジ強調や二値化)した画像を示す図、
図11(c)は、各エリアの境界の明るさの変化が緩やかな(明るさが徐変した)配光パターンの一例を示す図、
図11(d)は、
図11(c)の配光パターンを画像解析(エッジ強調や二値化)した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本実施の形態に係る車両灯具は、車両前方に配置された車両用前照灯であり、様々な制御部やセンサ等と適宜組み合わされることで車両用灯具システムを構成する。はじめに、本実施の形態に係る車両用灯具システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る車両用灯具システムのブロック図である。
【0028】
車両用灯具システム10は、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)に対応したカメラユニット12と、センタECU14と、ランプスイッチ20と、を備える。カメラユニット12は、車両前方を撮像する前方カメラ22と、前方カメラ22で撮像した画像情報に基づいて車両前方に存在する標識や車両等の物体を検出するカメラECU24と、を有する。本実施の形態に係るカメラユニット12やセンタECU14は車両本体側に設けられているが、車両全体のどこに設けてもかまわない。
【0029】
さらに、車両用灯具システム10は、ランプECU26と、ランプECU26によって配光制御されるLoビーム用ランプ28及びHiビーム用ランプ30と、高精細ADB(Adaptive Driving Beam)用のコントローラ32と、コントローラ32で制御される高精細ADB用のLEDユニット34と、を備える。本実施の形態に係るランプECU26やコントローラ32は、車両用灯具であるLoビーム用ランプ28やHiビーム用ランプ30、LEDユニット34のいずれかに設けられている。
【0030】
図2は、車両用灯具システムによって形成される第1の配光パターンの一例を模式的に示す図である。
図2に示す第1の配光パターンP1は、Loビーム用ランプ28により形成されるロービーム用配光パターンPLと、Hiビーム用ランプ30により形成されるハイビーム用配光パターンPHと、LEDユニット34により形成されるADB配光パターンPHLと、が重なったパターンである。
【0031】
Loビーム用ランプ28は、H-H線より下方の車両近傍領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。Hiビーム用ランプ30は、H-H線より上方の遠方領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されている。Hiビーム用ランプ30は、8個のLEDが一方向に並んでおり、各LEDの点消灯を制御することで、ハイビーム用配光パターンPHの一部が遮光又は減光された配光パターンを形成できる。
【0032】
LEDユニット34は、H-H線とV線との交点を中心とした領域を照射するように光源や光学部材が適宜選択されており、LEDユニット34から出射した光で車両前方を照射可能な車両用灯具である。ADB配光パターンPHLは、H-H線とV線との交点を中心にロービーム用配光パターンPLとハイビーム用配光パターンPHの両方と重なる配光パターンである。また、各LEDの駆動電流を個別に制御し、一部のLEDの駆動電流をゼロまたは減らすことで、ADB配光パターンPHLを構成するマトリックスの一部のピクセルを遮光又は減光した状態にできる。これにより、ADB配光パターンPHLの範囲に含まれる車両や人へのグレアを防止する際の遮光領域を極力小さくできるとともに、その他の領域への視認性を維持できる。
【0033】
LEDユニット34は、縦64個、横256個のLED34a(発光領域)がマトリックス状に配列された光源を有し、コントローラ32からの指示に基づいて各LEDの駆動が個別に制御される。なお、LEDユニット34は、矩形の短辺方向に20以上の発光素子が配列され、長辺方向に100以上の発光素子が配設されていてもよい。また、LED以外でもマトリックス状の発光領域を個別に点消灯できるのであれば、有機EL素子や液晶シャッタ、MEMSミラーといったものも光源として適用可能である。
【0034】
コントローラ32は、複数の発光領域のうち一部の発光領域の照射状態を変化させることで部分領域の明るさが異なる複数の配光パターンを形成可能に構成されている。換言すると、コントローラ32は、複数の発光領域のそれぞれから出射する光の量を制御することで選択された配光パターンを照射するように車両用灯具を制御する。これにより、一つのLEDユニット34で様々な配光パターンを形成できる。また、反射物が存在する部分領域が複数あっても、それぞれの部分領域の明るさが調整された配光パターンを形成できる。
【0035】
次に、車両前方の路面上に表示されているセンターラインや区画線といった白線(橙色線も含む)の視認性について説明する。
図3は、夜間に走行中の車両の前方の撮像画像の一例を示す図である。
図4(a)~
図4(c)は、照射範囲における白線検出を説明するための模式図である。
図5は、本実施の形態に係る配光制御方法を示すフローチャートである。なお、
図3や
図4では白線を照射する範囲を中心に第1の配光パターンP1の一部を図示している。
【0036】
夜間において、自車両は、車両用灯具システム10が備える各灯具により車両前方を
図2に示す第1の配光パターンP1で照射しながら走行する。第1の配光パターンP1で照射された領域のうち、遠方の領域に届く光は相対的に少ないため、遠方の白線の識別が難しい場合がある。
【0037】
本実施の形態に係る配光制御方法は、所定のタイミング(例えばランプスイッチ20をON)で処理が開始されると、カメラユニット12により車両前方を撮像し撮像画像を取得する(S10)。その場合、
図4(a)に示すように、第1の配光パターンP1で照射された領域の車両近傍側(撮像画像X1における下方側)の白線は検出されるものの(S12)、遠方側(撮像画像X1における上方側)の白線は光量不足で白線が検出されない。
【0038】
そこで、カメラユニット12やセンタECU14によって、
図4(b)に示すように、白線検出エリアA1と白線非検出エリアA2を判別する(S14)。そして、制御部は、白線検出エリアA1よりも遠方の領域である白線非検出エリアA2まで照射されるように車両用灯具の駆動を制御する。なお、既に白線非検出エリアA2が第1の配光パターンP1で照射されている場合は、白線非検出エリアA2を照射する各灯具の光源の駆動電流を更に増大させることで照射強度を上げる(S16)。
【0039】
これにより、
図4(c)に示すように、それまで白線非検出エリアA2に存在していたものの識別できていなかった白線の一部L’を検出できるようになる(S18)。つまり、白線Lが検出されなかった遠方の領域まで灯具で照射されることで、白線の検出距離を伸ばすことができる。換言すると、白線Lが検出されなかった遠方の領域まで十分な光量が届くように灯具の照射強度を上げることで、白線の検出距離を伸ばすことができる。あるいは、制御部は、白線が検出された領域よりも遠方の領域にある未認識の白線を認識するために必要な光量や照射範囲となるように車両用灯具の駆動を制御する。
【0040】
また、本実施の形態に係る制御部は、
図3に示すように、検出された白線Lの形状に対応する白線領域R1が白線領域の周囲よりも明るい配光パターンを形成するようにLEDユニット34を制御する。LEDユニット34は、複数のLED34aがマトリックス状に配列しており、制御部は、複数のLED34aのうち一部のLED34aの照射状態を変化させることで複数の配光パターンを形成可能に構成されている。これにより、白線Lの形状に沿った白線領域R1を周囲よりも選択的に明るくでき、その後の白線検出の精度が向上する。
【0041】
次に、検出された白線から白線非検出エリアの白線を推定する場合について説明する。制御部は、
図3に示すように、白線検出エリアA1で検出された白線Lに基づいて、白線非検出エリアA2の推定白線L”を推定する。そして、制御部は、推定白線L”の形状に対応する白線領域R2が該白線領域の周囲よりも明るい配光パターンを形成するようにLEDユニット34を制御する。これにより、その後の推定白線L”の検出精度が向上する。
【0042】
次に、推定白線L”の形状に対応する白線領域R2を照射する配光パターンについて説明する。
図6は、白線領域R2を照射する照射範囲を説明するための上面図である。
図7は、白線領域R2を照射する照射範囲を説明するための側面図である。
図8は、白線領域R2を周囲よりも明るくする配光パターンを示す図である。
【0043】
図6、
図7に示す白線領域R2は、車両前方約50~80mの範囲である。また、制御部は、車両前方のスクリーン上におけるH-H線より0.5~0.8°下方、かつ、V-V線の両側1.3~2.0°の範囲を含む照射領域R2’を白線領域R2に対応する範囲として照射する配光パターンを形成するようにLEDユニット34を制御する。これにより、白線検出の精度が向上する。なお、本実施の形態に係る配光パターンは、照射領域R2’が周囲より明るい配光パターンであればよく、照射領域R2’の周囲が非照射であってもなくてもよい。
【0044】
次に、走行領域とその外側の路肩領域とを判別する方法について声明する。
図9は、夜間に走行中の車両の前方の撮像画像の他の例を示す図である。
図10は、本実施の形態の変形例に係る配光制御方法を示すフローチャートである。
【0045】
変形例に係る配光制御方法は、所定のタイミングで処理が開始されると、カメラユニット12により車両前方を撮像し撮像画像を取得する(S20)。その場合、
図9に示すように、第1の配光パターンP1で照射された領域の車両近傍側(撮像画像X2における下方側)の白線Lは検出されるものの(S22)、遠方側(撮像画像X2における上方側)の白線は光量不足で白線が検出されない。そこで、制御部は、
図9に示すように、白線検出エリアA1で検出された白線Lに基づいて、白線非検出エリアA2の推定白線L”を推定する(S24)。
【0046】
制御部は、検出された白線L同士及び推定された推定白線L”同士の間の領域を走行エリアR3、走行エリアR3の外側を路肩エリアR4と判別し(S26)、それぞれの領域を区別して照射する配光パターンを形成するようにLEDユニット34を制御する。これにより、走行エリアR3と路肩エリアR4の双方に適した配光パターンを形成できる。例えば、制御部は、路肩エリアR4が走行エリアR3よりも明るい配光パターンP2を形成するようにLEDユニット34を制御する。具体的には、路肩エリアR4を照射するLED34aの駆動電流を増大させ、該当するLED34aの照射強度を上げる(S28)。これにより、白線Lや推定白線L”よりも外側の路肩エリアR4にある路肩構造物(立体物)が判別される(S30)。ここで、路肩構造物とは、デリニエータ36、段差38、交通標識といった人工物や、草花や樹木等が含まれる。
【0047】
次に、前述の路肩エリアR4が走行エリアR3よりも明るい配光パターンP2をカメラで撮像した場合の画像解析の課題について説明する。
図11(a)は、各エリアの境界の明るさの変化が急峻な配光パターンの一例を示す図、
図11(b)は、
図11(a)の配光パターンを画像解析(エッジ強調や二値化)した画像を示す図、
図11(c)は、各エリアの境界の明るさの変化が緩やかな(明るさが徐変した)配光パターンの一例を示す図、
図11(d)は、
図11(c)の配光パターンを画像解析(エッジ強調や二値化)した画像の一例を示す図である。
【0048】
図11(a)に示すように、配光パターンP2の路肩エリアR4と走行エリアR3との境界が明確な場合、
図11(b)に示すように、カメラユニット12では境界Bが白線として認識される。境界Bと現実の白線Lとが一致している場合は問題ないが、境界Bと現実の白線Lがズレている場合は、白線を誤検知してしまうことになる。
【0049】
そこで、本実施の形態では、
図11(c)に示すように、配光パターンP2’における路肩エリアR4と走行エリアR3との境界Bの明るさの変化が多段階となるようにした。これにより、配光パターンP2’における路肩エリアR4と走行エリアR3との境界Bを白線等の区画線と誤検知することを抑制できる。
【0050】
なお、本実施の形態に係る車両用灯具システムの発明を、制御部を有する制御装置単体の発明と捉えることができる。また、車両用灯具を制御する制御部に実行させるプログラムの発明と捉えることもできる。
【0051】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0052】
10 車両用灯具システム、 12 カメラユニット、 14 センタECU、 20 ランプスイッチ、 22 前方カメラ、 24 カメラECU、 26 ランプECU、 28 Loビーム用ランプ、 30 Hiビーム用ランプ、 32 コントローラ、 34 LEDユニット、 34a LED、 36 デリニエータ、 38 段差、 A1 白線検出エリア、 A2 白線非検出エリア、 X1 撮像画像。