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特開2024-10275二次元コードの読取システム及び二次元コード
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010275
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】二次元コードの読取システム及び二次元コード
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/14 20060101AFI20240117BHJP
   G06K 7/12 20060101ALI20240117BHJP
   G06K 19/06 20060101ALI20240117BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
G06K7/14 017
G06K7/12
G06K19/06 037
G06K19/06 140
G01N21/78 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111516
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪内 繁貴
(72)【発明者】
【氏名】音羽 拓也
(72)【発明者】
【氏名】奥出 隆之
(72)【発明者】
【氏名】前田 真和
【テーマコード(参考)】
2G054
【Fターム(参考)】
2G054AA10
2G054AB10
2G054EA01
2G054GB01
(57)【要約】
【課題】環境変化に応じ色変化するインクの色情報の取得精度と読取速度の向上できる二次元コードの読取システムを提供する。
【解決手段】二次元コードは、撮影環境に応じた色の変化量を求めるために使用される参照色が彩色された位置決め用パターンを有し、読取システムは、二次元コードの画像を取得する画像取得装置と、データ処理装置と、参照色の色情報並びに参照色及びインクの位置情報を記憶する記憶装置と、を備え、データ処理装置は、二次元コードの画像から二次元コードの四隅の座標を検出して色情報を検出する領域の位置を特定し、領域の色情報を検出し、領域は参照色領域とインク領域とを含み、記憶装置に記憶された参照色の位置情報と、領域の色情報と位置とから、参照色領域とインク領域とを判定し、記憶装置に記憶された参照色の色情報と、検出された参照色領域の色情報との関係を用いてインク領域の色情報を補正する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境変化に応じて色変化する環境検知領域をデータ領域に備える二次元コードの読取システムであって、
前記二次元コードの画像を取得する画像取得装置と、データ処理装置と、参照色の色情報並びに前記参照色及び環境検知領域の位置情報を記憶する記憶装置と、を備え、
前記二次元コードは、撮影環境に応じた色の変化量を求めるために使用される参照色が彩色された位置決め用パターンを有し、
前記データ処理装置は、
前記二次元コードの画像から前記二次元コードの基準位置を認識し、
検出された基準位置と、前記記憶装置に記憶された前記参照色及び前記環境検知領域の位置情報と、から取得した二次元コードの画像において参照色が彩色された領域と前記環境検知領域とを判定し、前記参照色及び前記環境検知領域の色情報を検出し、
前記記憶装置に記憶された参照色の色情報と、検出された参照色の領域の色情報との関係を用いて、前記環境検知領域の色情報を補正する
ことを特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二次元コードの読取システムであって、
前記データ処理装置は、前記基準位置は、前記二次元コードの画像から前記二次元コードの四隅の座標を検出することにより認識する
ことを特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項3】
請求項1に記載の二次元コードの読取システムであって、
前記データ処理装置は、前記二次元コードのデータ領域が保有している情報にもとづき、前記二次元コードの種類を識別し、前記記憶装置から識別された二次元コードの種類に対応する二次元コードの参照色及び環境検知領域の位置情報を呼び出す
ことを特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項4】
請求項1に記載の二次元コードの読取システムであって、
前記記憶装置は、環境変化量と環境検知領域の色情報との関係を記憶しており、
前記データ処理装置は、補正された前記環境検知領域の色情報と、前記記憶装置に記憶された環境変化量と環境検知領域の色情報との関係と、から二次元コードの周囲環境情報を算出する
ことを特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項5】
請求項1に記載の二次元コードの読取システムであって、
前記データ処理装置は、補正された前記環境検知領域の色情報を用いて、二次元コードの周囲環境があらかじめ設定したしきい値を超えたか否かを判定する
こと特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項6】
請求項1に記載の二次元コードの読取システムであって、
前記画像取得装置は、複数の前記二次元コードを含む画像を取得し、
前記データ処理装置は、複数の前記二次元コードを認識する処理を並行に実施する
ことを特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項7】
請求項1に記載の二次元コードの読取システムであって、
前記環境検知領域は、環境変化に応じて色変化するインクで形成されている
ことを特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項8】
請求項1に記載の読取システムであって、
前記二次元コードが、QRコードであり、3つの前記位置決め用パターンを有し、
前記3つの位置決め用パターンそれぞれにRGB空間における白(255,255,255)と結んだベクトルの方向の異なる参照色が彩色されている
ことを特徴とする二次元コードの読取システム。
【請求項9】
複数のセルにより構成されるデータ領域と、位置決め用パターンと、を備える二次元コードであって、
前記データ領域に重なるように、環境変化に応じて色変化する環境検知領域をさらに備え、
前記位置決め用パターンは、撮影環境に応じた色の変化量を求めるために使用される参照色が彩色されている部分を有することを特徴とする二次元コード。
【請求項10】
請求項9に記載の二次元コードであって、
前記環境検知領域は、環境変化に応じて色変化するインクで形成されている
ことを特徴とする二次元コード。
【請求項11】
請求項9に記載の二次元コードであって、
前記参照色は、互いに色の異なる第1参照色と、第2参照色と、を有し、
前記位置決め用パターンは、第1参照色が付けられた部分と、第2参照色とが付けられた部分とを有することを特徴とする二次元コード。
【請求項12】
請求項9に記載の二次元コードであって、
前記位置決め用パターンを3つ備え、
前記3つの位置決め用パターンそれぞれに、RGB空間における白(255,255,255)と結んだベクトルの方向の異なる参照色が彩色されている
ことを特徴とする二次元コード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元コードの読取システム及び二次元コードに関する。
【背景技術】
【0002】
コードが晒された環境を推測するインジケータ及びそれらのインジケータを活用した管理システムが知られている。特許文献1には、「示温材料を用いたインジケータの画像データを取得する入力装置と、示温材料ごとの色濃度と温度の関係を記憶する記憶装置(データベース)と、画像データから示温材料の色濃度を推定する色濃度推定部と、インジケータに用いられている示温材料を特定する材料識別部と、示温材料ごとの色濃度と温度の関係から、材料識別部により特定された示温材料の色濃度と温度の関係を選択し、特定された示温材料の色濃度と濃度の関係と、色濃度推定部により推定された色濃度とから最高到達温度又は最低到達温度を推定する温度推定部と、を備える処理装置と、を備える」温度評価システムが記載されている。
【0003】
この温度評価システムの構成として、晒された環境を色濃度で示す示温材料と、一次元バーコード、あるいは、二次元バーコードとからなるインジケータが示されている。また、物品に添付された撮影したインジケータの画像から示温材料の色情報を取得し、物品の最高到達温度又は最低到達温度を推定する。これにより、物品が置かれた環境を管理する管理装置(例えば、管理サーバ)と、各拠点に配置された管理端末(入力装置)とを有することで、流通段階の各場所で取得した示温データの一元的管理が可能になる。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のシステムにおいて、インジケータの画像の撮影の際、撮影環境と撮影機材とが強く影響するため、撮影したインジケータの画像から示温材料の色情報を精度よく得ることは難しい。画像に影響を与える撮影環境とは、例えば、光源の種類と明るさが挙げられる。被写体に当たる光のスペクトルは、直射日光、曇天の外光、蛍光灯、白熱電球などの光源の種類(照明機種)や、光源からの光の減衰度合いにより、様々に変化し、多くの場合、光源は複数存在し、それらの光が混合することもある。撮影時の状況によってセンサのある場所や向き、撮影者の立ち位置などが異なることは珍しくない。さらに、撮影時刻(太陽の位置)や天気なども常に変化する。それらの要因に依り、撮影対象のセンサに当たる照明の明るさとスペクトルは様々に変化する。
【0005】
この課題に対し、特許文献2には、色が変化するカラーセンサと3色の色標本とを同時に撮像したカラー画像データから色標本の補正値を求める解析手段と、補正値を用いてカラーセンサの色を補正する補正手段とを備える測定装置が記載されている。これにより、様々な光源下でカラーセンサを撮像した場合でも、同じ画像に写っている色標本を手がかりにカラーセンサの色を補正することができる。
【0006】
また、特許文献3には、第1の撮影環境において撮影された4つ以上の参照色の色情報が記憶装置に登録されており、計測する物理量によって変化するカラーセンサのセンサ色と、計測する物理量によって変化しない4つ以上の参照色とが表示された表示物を第2の撮影環境で撮影した計測時の撮影データから、センサ色と、4つ以上の参照色とをそれぞれ取得し、記憶装置から読み取った第1の撮影環境における4つ以上の参照色の色情報から、撮影データから取得した第2の撮影環境における4つ以上の参照色の色情報への変化量をもとに、第1の撮影環境と第2の撮影環境との間の色の変換係数を求め、計測時の撮影データから取得したセンサ色と、色の変換係数とをもとに、アフィン変換の平行移動を示す項を含む変換式を計算することで、センサ色を第1の撮影環境において撮影されたように補正する色評価部を有することで、様々な撮影環境下で撮影されたカラーセンサから、高精度に測定値を求める色評価システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-205222号公報
【特許文献2】特開2012-093277号公報
【特許文献3】特開2020-038073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2及び特許文献3に記載の技術にて晒された環境を色濃度で示す示温材料部の色調を高精度に取得できる一方で、インジケータ内のコード情報、参照色部の色情報及び示温材料部の色情報を取得にかかるシステムの制限を受けるため、コードの小型化が難しく対象商品が限定される。また、コードの情報と高精度の色情報の取得を両立するには処理が遅く、複数のインジケータを読み取るのに時間がかかり、結果として実運用に適さない課題があった。
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するための環境変化に応じて色変化する環境検知領域をデータ領域に備える二次元コードの読取システムであって、環境変化に応じ色変化する環境検知領域の色情報の取得精度と読取速度の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明は、環境変化に応じて色変化する環境検知領域をデータ領域に備える二次元コードの読取システムであって、前記二次元コードの画像を取得する画像取得装置と、データ処理装置と、参照色の色情報並びに前記参照色及び環境検知領域の位置情報を記憶する記憶装置と、を備え、前記二次元コードは、撮影環境に応じた色の変化量を求めるために使用される参照色が彩色された位置決め用パターンを有し、前記データ処理装置は、前記二次元コードの画像から前記二次元コードの基準位置を認識し、検出された基準位置と、前記記憶装置に記憶された前記参照色及び前記環境検知領域の位置情報と、から取得した二次元コードの画像において参照色が彩色された領域と前記環境検知領域とを判定し、前記参照色及び前記環境検知領域の色情報を検出し、前記記憶装置に記憶された参照色の色情報と、検出された参照色の領域の色情報との関係を用いて、前記環境検知領域の色情報を補正することを特徴とする。本発明のその他の形態については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境変化に応じ色変化する環境検知領域の色情報の取得精度と読取速度を向上した、環境変化に応じて色変化する環境検知領域をデータ領域に備える二次元コードの読取システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本実施形態に係るラベル表示物及び第1二次元コードの模式図である。
図1B】本実施形態に係る二次元コードのファインダパターンの模式図である。
図1C】本実施形態に係る二次元コードのアライメントパターンの模式図である。
図1D】本実施形態に係る第2二次元コードの模式図である。
図1E】本実施形態に係る第3二次元コードの模式図である。
図1F】本実施形態に係る第4二次元コードの模式図である。
図1G】本実施形態に係る第5二次元コードの模式図である。
図1H】本実施形態に係る第6二次元コードの模式図である。
図1I】本実施形態に係る第7二次元コードの模式図である。
図1J】本実施形態に係る第8二次元コードの模式図である。
図1K】本実施形態に係る第9二次元コードの模式図である。
図1L】本実施形態に係る第10二次元コードの模式図である。
図2】本実施形態に係る読取システムの構成を説明する図である。
図3】本実施形態に係る色の補正方法を説明する図である。
図4A】本実施形態に係る色の判定方法を説明する図である。
図4B】本実施形態に係る色の判定方法を説明する図である。
図5】本実施形態に係る読取システムの処理フローを説明する図である。
図6】本実施形態に係る読取システムの出力結果の表示例の図である。
図7】本実施形態に係る読取システムを活用した情報処理システムの概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を説明するが、本発明は以下の内容に限定されず、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形して実施できる。本発明は、異なる実施形態同士を組み合わせて実施できる。以下の記載において、異なる実施形態において同じ部材については同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
<二次元コード>
まず、本発明の実施形態の読取システムに適用される二次元コードについて説明する。この読取システムに適用される二次元コードは複数考えられるが、以下の実施形態では、二次元コードとして、QRコード(登録商標)を用いたものを例に説明する。QRコードは、ISO/IEC18004等で規格制定されている。なお、二次元コードとして、PDF417、DataMatrix, Maxicode, AztecCode等を用いることもできる。
【0015】
図1Aは、本実施形態に係る二次元コード200(第1二次元コード)を配置したラベル表示物100の模式図である。ラベル表示物100は二次元コード200とシリアルID101から構成される。二次元コード200は、二次元コード200の3コーナーに配置される3個の位置検出用のファインダパターン300(位置決め用パターン)と、3個のファインダパターン300の内部に設けられた第1参照色301と、第2参照色302と、第3参照色303と、データ領域を構成するセル500と、歪みによって生じるセル500の位置ずれを補正するアライメントパターン400と、を備える。二次元コード200は、さらに、セル500から構成されるデータ領域と重なるように配置された環境検知領域600を備える。環境検知領域600は、環境変化によって色が変わる領域である。位置検出用のファインダパターン300には、参照色が彩色されている。図1Aでは、3つのファインダパターン300にそれぞれ異なる参照色(第1参照色301~第3参照色303)がつけられている。ここで、参照色は、撮影環境に応じた色の変化量を求めるために使用される。
【0016】
二次元コード200の中に第1参照色301と、第2参照色302と、第3参照色303と環境検知領域600とを全て配置することで、二次元コードの外に配置した場合よりも、後記する読取システム700による二次元コードの読み取りにおいて、二次元コードの歪を軽減できるため、二次元コード自身をより小型化できる。
【0017】
さらに、二次元コード200の中に第1参照色301と、第2参照色302と、第3参照色303と環境検知領域600とを全て配置することで、二次元コードの外に配置した場合よりも、後記する読取システム700による二次元コードの読み取りにおいて、二次元コードと参照色と環境検知領域の位置が近い(内部に位置するため)読み取りの速度を早くできる。QRコードではなく、PDF417を用いた場合はスタートパターンやストップパターン、DataMatrixを用いた場合は、アライメントパターンやクロックパターン、MaxicodeやAztecCodeを用いた場合は、中央のファインダパターンに、例えば、参照色を配置することができる。
【0018】
二次元コード200はラベル表示物100のような形で配置されシール形態で使用できる。取り扱いや設置の簡便さとコスト面でシールタイプのラベルが好ましいが、管理対象の商品に応じてタグやカードタイプなど任意の形状で使用することができる。
【0019】
ラベル表示物100に設置されるシリアルID101は、二次元コード200に紐づけられたIDナンバーをラベル表示物100の任意の場所に記しておくことで、目視でも二次元コード200の管理が可能になる。シリアルID101は、二次元コード200から4セル分のスペース(クワイエットゾーン)をあけて配置するのが望ましい。
【0020】
図1Aの二次元コード200は、バージョン2(25×25セル)のQRコードである。QRコードのセル構成(バージョン)は、入力しておきたい情報の内容に応じて変更することができるが、歪み補正用のアライメントパターン400が配置される点で、バージョン2以上が好ましい。
【0021】
図1Aの二次元コード200は、誤り訂正レベルが「H」のQRコードである。QRコードの誤り訂正レベルは、情報量や用途に応じて下げることができるが、QRコード内に環境検知領域600を配置させることで、QRコードを意図的に欠損させた場合や、物流過程でのシミ、汚れ、破損が発生した場合での読み取り不良を防ぐため、誤り訂正レベルは「H」とするのが望ましい。
【0022】
二次元コード200内に配置される環境検知領域600は、環境変化に応じて色変化するインクなどの媒体であれば制限されるものではないが、二次元コード200上に印刷できるインク形態であるのが製造プロセス上好ましい。環境検知領域600の例として、温度、温度履歴、湿度、光、ガス濃度、振動等の環境条件や、液体のpH、液中の各種イオン濃度、各種薬剤濃度、各種アミノ酸・タンパク質濃度、ウイルス・細菌の存在等を検知した結果が、色情報として反映されるものがあげられる。
【0023】
本実施形態では、説明用の色モデルとしてRGB(Red、Green、Blue)モデルを採用する。RGBモデルでは、画像を構成する色は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色それぞれについての、最も暗い0から最も明るい255までの間の数値の組み合わせで表現される。以下、RGB成分を[R,G,B]のように角括弧でくくって表記し、例えば、赤色[255,0,0]、最も暗い黒色[0,0,0]、最も明るい白色[255,255,255]である。なお、本実施形態の二次元コード200内の触れられていない有色部の色に関しては、黒色もしくは黒に相当する色が使用される。
【0024】
二次元コード200の3コーナーに配置される3個のファインダパターン300の内部に設けられた第1参照色301、第2参照色302、第3参照色303の各参照色は撮影環境に応じて、環境検知領域600の色補正(環境検知領域600の色情報の補正)のために使用され、通常のカラーインク等で着色される固定の(環境検知領域600の色とは異なり変化しない)色である。3つの参照色を次に例示する。
第1参照色301には、赤色[255,0,0]が塗られている。
第2参照色302には、緑色[0,255,0]が塗られている。
第3参照色303には、青色[0,0,255]が塗られている。
【0025】
二次元コード200のカラー印刷において、CMYK(Cyan、Magenta、Yellow、Brackの4色でフルカラーを表現する場合は、RGBでは再現可能であってもCMYKでは再現できない領域があるため、CMYKの再現可能な領域で、第1参照色301に赤色、第2参照色302に緑色、第3参照色303に青色を配置すれば特に問題なく、さらに参照色の取り得る組み合わせは、赤色、緑色、青色の3つに限定されないが、RGBの色空間の中で離れた箇所に位置する3色を選定することが望ましい。具体的には、参照色は、3つのファインダパターンそれぞれにRGB空間における白(255,255,255)と結んだベクトルの方向の異なる参照色が彩色されていることが好ましい。
【0026】
図1Bは、二次元コード200内のファインダパターン300の拡大図である。ファインダパターン300は、第1ファインダパターン領域310、第2ファインダパターン領域320、第3ファインダパターン領域330から構成される。このファインダパターンにより二次元コードの位置を認識することができ、高速な読み取りが可能となる。本実施形態においては、ファインダパターン300の内部に参照色が付けられているが、ファインダパターンとして、二次元コードの位置を認識させる機能を保持する必要がある。ファインダパターン300の、A方向、B方向、C方向のどの位置からも白色(淡色)セルと黒色(濃色)セルの比率が1:1:3:1:1で配置される必要があり、前記ルールの下で任意の部分に配色することが可能である。第1ファインダパターン領域310、第2ファインダパターン領域320、第3ファインダパターン領域330に配置される参照色は二次元コードリーダにて読み取れる色であれば特に制限されないが、第1ファインダパターン領域310、第3ファインダパターン領域330に使用される色は、濃色や明度の低い黒色と同様に認識される色が好ましく、第2ファインダパターン領域320に使用される色は、淡色や明度の高い白色セルと同様に認識される色が好ましい。
【0027】
図1Cは、二次元コード200内のアライメントパターン400の拡大図である。アライメントパターンは歪みによって生じる各セルの位置ずれを補正する機能を有する。アライメントパターンは、第1アライメントパターン領域410、第2アライメントパターン領域420、第3アライメントパターン領域430から構成される。この各アライメントパターン領域にも第1参照色301、第2参照色302、第3参照色303の各参照色及び環境検知領域600を配置することが可能である。ただし、歪みによって生じるセルの位置ずれを補正するという機能を保持する必要がある。第1ファインダパターン領域310、第2ファインダパターン領域320、第3ファインダパターン領域330に配置される参照色は二次元コードリーダにて読み取れる色であれば特に制限されないが、第1アライメントパターン領域410、第3アライメントパターン領域430に使用される色は、濃色や明度の低い黒色と同様に認識される色が好ましく、第2アライメントパターン領域420に使用される色は、淡色や明度の高い白色セルと同様に認識される色が好ましい。
【0028】
以下、本発明の実施形態の読取システムに適用される二次元コードの具体的な実施の形態を図1Dから図1Lに示す。図1D図1Lは、図1Aの表示物で用いた二次元コード(第1二次元コード)とは異なる二次元コード(第2二次元コード~第10二次元コード)の模式図である。
【0029】
図1Dに示す二次元コード201(第2二次元コード)は、QRコードの3コーナーに配置される3個のファインダパターン300のうち、2個のファインダパターンそれぞれの第1ファインダパターン領域310(図1B参照)に第1参照色301と、第2参照色302を配置したQRコードである。参照色を配色する2個のファインダパターンは任意に選択でき、第1ファインダパターン領域310に配色する参照色は任意に設定できる。
【0030】
図1Eに示す二次元コード202(第3二次元コード)は、QRコードの3コーナーに配置される3個のファインダパターン300のうち、1個のファインダパターン300の第1ファインダパターン領域310(図1B参照)に第1参照色301を配置したQRコードである。参照色を配色する1個のファインダパターンは任意に選択でき、第1ファインダパターン領域310に配色する参照色は任意に設定できる。以上のように、参照色は、3つのファインダパターンのいずれか1つ以上に配色していればよい。
【0031】
図1Fに示す二次元コード203(第4二次元コード)は、QRコードの3コーナーに配置される3個のファインダパターン300全ての第1ファインダパターン領域310(図1B参照)に第1参照色301を配置したQRコードである。第1ファインダパターン領域310に配色する参照色は任意に設定できる。以上のように、ファインダパターンの参照色は、同じ色であってもよい。なお、上述したとおり、RGBの色空間の中で離れた箇所に位置する3色を選定することが望ましい。
【0032】
図1Gに示す二次元コード204(第5二次元コード)は、QRコードの3コーナーに配置される3個のファインダパターン300の第3ファインダパターン領域330(図1B参照)に第1参照色301と、第2参照色302と、第3参照色303を配置したQRコードである。第3ファインダパターン領域330に配色する参照色は任意に設定できる。
【0033】
図1Hに示す二次元コード205(第6二次元コード)は、QRコードの3コーナーに配置される3個のファインダパターン300の第1ファインダパターン領域310(図1B参照)と第3ファインダパターン領域330(図1B参照)に、第1参照色301と、第2参照色302と、第3参照色303を配置したQRコードである。第1ファインダパターン領域310と第3ファインダパターン領域330に配色する参照色は任意に設定できる。
【0034】
図1Iに示す二次元コード206(第7二次元コード)は、QRコードの3コーナーに配置される3個のファインダパターン300の第1ファインダパターン領域310(図1B参照)と、第2ファインダパターン領域320(図1B参照)と、第3ファインダパターン領域330(図1B参照)に、それぞれ第1参照色301と、第4参照色304と、第3参照色303とを配置したQRコードである。第1ファインダパターン領域310と、第2ファインダパターン領域320と、第3ファインダパターン領域330に配色する参照色及びは任意に設定できるが、第2ファインダパターン領域320に配色される第4参照色304は白色に近い灰色[200,200,200]などの淡色が望ましい。
【0035】
図1Jに示す二次元コード207(第8二次元コード)は、QRコードのアライメントパターン400の第2アライメントパターン領域420(図1C参照)に第4参照色304を配置したQRコードである。この配色によりRGB色空間において離れた位置にある4色の環境検知領域600を取り囲むように配置でき環境検知領域の色精度を高めることができる。第1ファインダパターン領域310(図1B参照)と、第2ファインダパターン領域320(図1B参照)と、第3ファインダパターン領域330(図1B参照)と、第2アライメントパターン領域420(図1C参照)に配色する参照色は任意に設定できる。
【0036】
図1Kに示す二次元コード208(第9二次元コード)は、QRコードとは異なる位置に環境検知領域600を配置したQRコードである。環境検知領域600はファインダパターン300及びアライメントパターン400と重ならない場所であれば、二次元コード内の任意の位置に配置することができる。また、環境検知領域600はセル500の占める領域に対して最大30%まで拡大でき、市販の二次元コードリーダ及びスマートフォンカメラにて二次元コードが判断できる範囲であれば、任意のサイズ及び位置に配置することができる。
【0037】
図1Lに示す二次元コード209(第10二次元コード)は、二次元コード200(第1二次元コード)の環境検知領域600をアライメントパターン400の第1アライメントパターン領域410に配色した二次元コードである。アライメントパターン400を環境検知領域600として活用することで、二次元コード内のセル500の欠損を防ぐことができ、二次元コードの情報を所得しやすくできる。同様の発想として、ファインダパターン300にも環境検知領域600を設けることができる。アライメントパターン400あるいはファインダパターン300のいずれかの領域に環境検知領域600を設ける場合、環境検知領域600の変色前後にてアライメントパターン400あるいはファインダパターン300の機能が維持できる環境検知領域の設置が必要である。
【0038】
<読取システム>
次に、本発明の実施形態に係る読取システムについて説明する。
図2は、二次元コードの読取システム700の構成図である。読取システム700は、例えば、図1A及び図1Cから図1Lに示した二次元コードの読み取りに用いられる。読取システム700は、二次元コードの画像を取得する画像取得装置710と、入力装置720と、出力装置730と、データ処理装置740と、記憶装置760とを備える。
【0039】
画像取得装置710は、カメラ等の撮像装置であり、ラベル表示物の画像を取得する。必要に応じて、ラベル表示物の他に、記憶用の商品や商品に関連する情報、周辺環境などの画像取得も可能である。二次元コードの画像が撮影されると、記憶装置760中の画像データ記憶部761へ記憶される。
【0040】
入力装置720は、操作者の指示を受け付ける部分であり、ボタン、タッチパネルなどで構成されている。
【0041】
出力装置730は、操作者への指示情報、読取画像、読取結果などを出力する装置であり、ディスプレイや通信装置で構成されている。この構成は標準的なものであり、画像取得装置710、入力装置720、出力装置730のいずれかまたは全てが読取システム700の外部に接続される構成でもよい。
【0042】
(記憶装置)
記憶装置760は、各種のデータを記憶する部分であり、以下の記憶部から構成されて
いる。
【0043】
画像データ記憶部761は、画像取得装置710から入力された二次元コードの画像を記憶する部分である。
【0044】
二次元コード位置データ記憶部762は、画像データ記憶部761に記憶された画像から、後述する二次元コード位置認識部742によって認識されたコードの基準位置を表すデータを記憶する部分である。
【0045】
二次元コードデータ記憶部763は、画像データ記憶部761に記憶された画像から、後述する二次元コード認識部743によって認識されたコードで表された文字列のデータを記憶する部分である。
【0046】
参照色の位置データ記憶部764は、二次元コード内に設置された参照色の位置情報を事前に記憶する部分である。
【0047】
環境検知領域の位置データ記憶部765は、二次元コード内に設置された環境検知領域の位置情報を事前に記憶する部分である。
【0048】
参照色の実測色データ記憶部766は、参照色の位置データ記憶部764によって特定された参照色の領域から抽出された、参照色の実測の色情報(RGB値等)を記憶する部分である。
【0049】
環境検知領域の実測色データ記憶部767は、環境検知領域の位置データ記憶部765によって特定された環境検知領域の領域から抽出された、環境検知領域の実測の色情報(RGB値等)を記憶する部分である。
【0050】
参照色のベースデータ記憶部768は、参照色の実測の色情報(RGB値等)を補正するために使用される基準となる参照色の色情報(RGB値等)を記憶する部分である。
【0051】
環境検知領域の補正色データ記憶部769は、画像データ記憶部761に記憶された環境検知領域の実測の色情報(RGB値等)を補正した色情報(RGB値等)を記憶する部分である。
【0052】
環境検知領域の判定色データ記憶部770は、環境検知領域の補正色データ記憶部769に記憶させた環境検知領域の補正色を基に、例えば、温度逸脱の有無を判定するための判定基準となる閾値の色情報(RGB値等)や、環境変化量と環境検知領域の色情報との関係を記憶する部分である。環境変化量と環境検知領域の色情報との関係とは、例えば、環境検知領域のある色と対応する周囲環境温度が何度であるかを示すものである。
【0053】
判定結果記憶部771は、環境検知領域の判定色データ記憶部770に記憶されたRGB値に対する、環境検知領域の補正色データ記憶部769に記憶されているRGB値の大小から、後述する判定部749によって判定された「NG」/「OK」や「■」/「■」などの結果を記憶する部分である。
【0054】
読取データ記憶部772は、後述するデータ処理装置740によって処理されたデータ以外の部分を記憶する部分である。一般に商品の環境変化状況の把握では、いつ、どこで、何が起こったか、という情報が揃うことが望まれる。そこで、二次元コードデータ記憶部763に記憶された商品に関わる情報、及び判定結果記憶部771に記憶された環境検知領域からの温度逸脱等のデータのほかに、読み取り処理を行った日時、位置情報、(作業者を識別するための)読み取り装置の番号、Web情報と連携した天候などを含めて記憶するのが好ましい。なお、同一の読み取り装置を利用する限り、読み取り装置の番号は変化しないので、これは後述するデータ出力の際に付与してもよい。
【0055】
(データ処理装置)
データ処理装置740は、画像取得装置710、入力装置720から入力されるデータ及び記憶装置760に記憶されたデータを処理し、その結果を出力装置730に出力または記憶装置760に記憶するものであり、以下の処理部から構成されている。
【0056】
入力制御部741は、画像取得装置710または入力装置720から入力されるデータを指令、データなどに区分し、記憶装置760やデータ処理装置740の各部へ転送する処理を行なう部分である。特に主要なデータとしては、参照色及び環境検知領域を含む二次元コードの画像データを画像データ記憶部761に転送する。
【0057】
二次元コード位置認識部742は、画像データ記憶部761に記憶された画像のデータから、コードの含まれる位置を認識し、認識結果を二次元コード位置データ記憶部762に記憶する部分である。画像データは通常縦横ともに数百ないし数千のドットで構成されており、その画像自体にはどの部分がコードであるかのデータは存在しない。そこで各ドットの色データを分析し、コードの基準位置が画像データのどの部分に相当するかを認識する。基準位置の表示形態や数はコードの規格によって異なるが、それらの規格に限定されない。さらには、画像データ記憶部761に記憶された画像に複数の二次元コードがある場合でも、複数の二次元コードの位置を認識することができる。
【0058】
二次元コード認識部743は、二次元コード位置データ記憶部762に記憶された位置データを利用して、画像データ記憶部761に記憶された画像から、コードで表された文字列のデータを認識し、二次元コードデータ記憶部763に記憶する部分である。
【0059】
参照色の位置決定部744は、二次元コード位置データ記憶部762に記憶された位置データと、二次元コードデータ記憶部763に記憶された情報から、文字列データを利用して二次元コードの種類を識別し、二次元コードの取得画像から二次元コードの四隅の座標(X,Y)を検出し、検出された四隅の座標及び、参照色の位置データ記憶部764に事前に記憶された位置情報に基づいて、参照色(第1参照色301~第4参照色304)の位置を決定する部分である。ここで、二次元コードの種類を識別するとは、例えば、図1A図1D図1Lのいずれのタイプの二次元コードであるかを識別することである。
【0060】
環境検知領域の位置決定部745は、二次元コード位置データ記憶部762に記憶された位置データと、二次元コードデータ記憶部763に記憶された情報から、文字列データを利用して二次元コードの種類を識別し、二次元コードの取得画像から二次元コードの四隅の座標(X,Y)を検出し、検出された四隅の座標及び、環境検知領域の位置データ記憶部765に事前に記憶された位置情報に基づいて、環境検知領域600の位置を決定する部分である。
【0061】
参照色の実測色決定部746は、画像データ記憶部761に記憶された画像と参照色の位置決定部744によって決定された参照色(第1参照色301~第4参照色304)の位置情報から取得画像中の参照色のRGB値を決定する部分である。
【0062】
環境検知領域の実測色決定部747は、画像データ記憶部761に記憶された画像と環境検知領域の位置決定部745によって決定された環境検知領域600の位置情報から取得画像中の環境検知領域600のRGB値を決定する部分である。
【0063】
環境検知領域の補正色決定部748は、環境検知領域の実測色決定部747によって決定された取得画像中の実測のRGB値から、照明環境によって変化した色調を本来の色に補正したRGB値を決定する部分である。
【0064】
環境検知領域の補正色の決定方法を以下に記載する。
図3は、本実施形態に係る色の補正方法を説明する図である。図3により、環境検知領域の実測のRGB値の補正方法を示す。環境検知領域の補正色決定部748は、参照色のベースデータ記憶部768に記憶されたRGB値と、参照色の実測色データ記憶部766に記憶された取得画像中の参照色のRGB値の変化分を算出し、得られたRGB値の変化分を、環境検知領域の実測色データ記憶部767に記憶された取得画像中の環境検知領域のRGB値に適用することで、取得画像中の環境検知領域の実測色を補正する。補正後の環境検知領域のRGB値は、環境検知領域の補正色データ記憶部769に記憶される。
【0065】
以下に具体的な色の補正方法を示す。
ここでは、図1Aに示す二次元コード200内の3個のファインダパターン300の内部に設けられた第1参照色301と、第2参照色302と、第3参照色303の3種の参照色を用い、環境検知領域600の色を補正する方法を示す。参照色の数に関しては限定されるものではなく、参照色の数に応じて、以下の式を変換することができる。
【0066】
参照色について、本来の色とスキャン画像中の色の関係は式(1)のようになる。
【数1】
ここで、Rは参照色の本来の色、すなわち参照色として定義し事前に参照色のベースデータ記憶部768に登録した色となる。また、Rは、画像取得装置710によって取得した画像中の参照色の色となる。そして、Cが色の変化となる。
【0067】
なお、参照色の関係は、行列の形で書くと、式(2)のようになる。ここで、RdiとRsiにおけるiは、用意された3つの参照色のそれぞれの番号を示す。
【数2】
【0068】
併せて、環境検知領域において、式(3)の関係が成り立つ。
【数3】
ここで、Tが環境検知領域の実測色データ記憶部767に記憶された取得画像中の環境検知領域の色、Tが、それに色の補正をした結果の値となる。
【0069】
この環境検知領域の関係は、行列の形で書くと、式(4)のようになる。
【数4】
【0070】
したがって、参照色の関係からCを求めれば、取得画像中の環境検知領域の色Tの積を求めることで、環境検知領域の本来の色であるTが分かる。
【0071】
Cを求めるにあたっては、式(5)を用いる。
【数5】
【0072】
図2に戻り、判定部749は、環境検知領域の補正色データ記憶部769に記憶されたRGB値と、環境検知領域の判定色データ記憶部770に記憶されたRGB値を比較し、後述する図4A及び図4BのRGB空間中のRGB値のベクトル値の大小から、例えば、温度逸脱の有無を判定する。
【0073】
図4Aは、本実施形態に係る色の判定方法を説明する図である。図4Aにより、環境検知領域600の色を判定するための第1の色判定方法を説明する。式(6)に、白色の(255,255,255)を原点とした実測色(r,g,b)までのベクトルを示す。ここでの実測色は前記方法にて参照色によって補正された色とする。
【0074】
【数6】
このlの長さの大小によって、ある設定基準の色を超えたか判定する。
【0075】
図4Aで示した環境検知領域600の色を判定するための第1の色判定方法は簡単な式(6)の計算にて色の判定を返すことができるが、RGBの色空間内のベクトルの方向を考慮に入れておらず、色調が異なっていてもベクトル長が同じ場合、同じ色として判断してしまう。
【0076】
そこで、環境検知領域600の色調は異なるが式(6)の値が近くなるような場合には図4Bで示した第2の判定方法を適用することができる。
【0077】
式(7)及び式(8)に、開始色(R,G,B)を原点とした最終色(R,G,B)及び実測色(r,g,b)のベクトルを示す。ここでの実測色は前記方法にて参照色によって補正された色とする。
最終色(R,G,B)=(R?R,G?G,B?B) ・・・式(7)
実測色(r,g,b)=(r?R,g?G,b?B) ・・・式(8)
【0078】
式(7)及び式(8)より、開始色から最終色及び実測色までのベクトルの長さ(それぞれ、Rの絶対値、rの絶対値)は、式(9)及び式(10)式で表される。
【0079】
【数7】
【0080】
実測色(r,g,b)から、式(7)のベクトル上に垂線を垂らした移動色(r,g,b)までの長さは式(11)で表される。
【0081】
【数8】
【0082】
式(9)及び式(10)のベクトルの内積は式(12)で表される。
【0083】
【数9】
【0084】
開始色から最終色までのベクトルの長さ(上記式(9))に対する開始色から補正色までのベクトルの長さ(上記式(10))の比率は、式(11)及び式(12)を式(9)及び式(10)に代入し、式(13)が算出される。
【0085】
【数10】
【0086】
図2に戻って、出力制御部750は、データ処理装置740で処理された情報の出力装置730への出力を制御する。具体的には、二次元コードデータ記憶部763に記憶された文字列に紐づいた商品情報、判定結果記憶部771に記憶された環境検知領域の色情報から判定された温度逸脱の有無などの情報、または読取データ記憶部772に記憶された情報を、出力装置730へ出力する部分である。出力先が画面などのときは、読み取り操作が行われる都度結果が出力されるのが好ましい。またこのときは、環境検知領域の判定結果記憶部771に記憶された判定結果を出力するのが好ましい。出力先が通信先などのときは、出力処理は読み取り操作が行われる都度でもよいし、何回かのデータをまとめる、あらかじめ定めた時間ごとにまとめるなどして処理してもよい。
【0087】
<読取システムの処理フロー>
図5は、本実施形態に係る読取システム700の処理フローT800を説明する図である。以下で、図2と合わせて、処理のフローТ800を説明する。
【0088】
まず、入力制御部741からの指令にもとづいて、画像取得装置710から、参照色及び環境検知領域を含む二次元コードの画像データが入力される。入力されたデータは画像データ記憶部761に記憶される。二次元コード位置認識部742は、画像データ記憶部761で記録された画像から二次元コードの基準位置を認識し、認識した基準位置は二次元コード位置データ記憶部762に記録される。二次元コード認識部743は、画像データ記憶部761に記録された画像と、二次元コード位置データ記憶部762に記録された位置データを用いて、データ領域を特定し、データ領域が表すコードをデコードする。二次元コード認識部743は、デコードすることにより得られた文字列データを利用して二次元コードの種類を識別する。(手順Т801)
【0089】
手順Т802にて、識別された二次元コードの種類に基づき、記憶装置760から識別された二次元コードの種類に対応する二次元コードの参照色及び環境検知領域の位置情報を呼び出すことにより、二次元コード内に配置された参照色及び環境検知領域の位置情報と色情報を特定できる。その識別その結果が二次元コードデータ記憶部763に記録される。
【0090】
二次元コード位置データ記憶部762に記憶された位置データと、二次元コードデータ記憶部763に記憶された情報とを用いて、二次元コードの取得画像から二次元コードの四隅の座標(X、Y)を検出される。参照色の位置決定部744及び環境検知領域の位置決定部745は、検出された四隅の座標及び、参照色の位置データ記憶部764及び環境検知領域の位置データ記憶部765に事前に記憶された参照色及び環境検知領域の位置情報を用いて、それぞれ参照色、環境検知領域について、解析に使用される色の位置が決定される。(手順Т802)
【0091】
参照色の実測色決定部746及び環境検知領域の実測色決定部747は、参照色の位置決定部744及び環境検知領域の位置決定部745によって決定された位置情報に基づき、取得画像からそれぞれの参照色の領域、環境検知領域について色情報を決定する。ここで、色情報とは、例えば、RGB値である。決定された色情報は、参照色の実測色データ記憶部766及び環境検知領域の実測色データ記憶部767に転送され、それぞれ参照職領域、環境検知領域の色情報が記憶される。この際、照明が強い際に反射光により参照色や環境検知領域が画像中で見えなくなる「白とび」が生じる場合や、複数の参照色間または参照色と環境検知領域間で「極端な照度差」が生じる場合や、二次元コード画像が小さすぎたり大きすぎたり、画像取得する際の撮影角度が鋭角であり二次元コード画像が過度に歪んでいる場合には、手順Т801に戻って二次元コードの認識と画像読み込みを再度実施する。(手順Т803)
【0092】
手順Т803にて、問題無く参照色及び環境検知領域の実測色データが取得できれば、次に環境検知領域の色補正(環境検知領域の色情報の補正)が実施される。詳細は、前記で説明した通りであり、参照色のベースデータ記憶部768、参照色の実測色データ記憶部766、環境検知領域の実測色データ記憶部767に記憶された色情報を用いて、環境検知領域の補正色決定部748によって環境検知領域の補正色が決定され、環境検知領域の補正色データ記憶部769に記憶される。(手順Т804)
【0093】
その後、前記で説明した通り、環境検知領域の補正色データ記憶部769に記憶された色情報及び環境検知領域の判定色データ記憶部770の色情報の比較により、判定部749にて環境変化量があらかじめ設定した閾値(しきい値)を超えたか否かを判定する。すなわち、データ処理装置740は、補正された環境検知領域の色情報を用いて、二次元コードの周囲環境があらかじめ設定したしきい値を超えたか否かを判定する。判定部749は補正された環境検知領域の色情報と、環境検知領域の判定色データ記憶部770に記憶された環境変化量と環境検知領域の色情報との関係と、から二次元コードの周囲環境情報を算出してもよい。(手順Т805)
【0094】
判定部749にて判定した結果は、判定結果記憶部771に記憶される。同時に、読取データ記憶部772に、読み取り処理を行った日時、位置情報、(作業者を識別するための)読み取り装置の番号、Web情報と連携した天候などが記憶される。(手順Т806)
【0095】
最終的に、二次元コードデータ記憶部763に記憶された文字列に紐づいた商品情報、判定結果記憶部771に記憶された環境検知領域の色情報から判定された温度逸脱の有無などの情報、または読取データ記憶部772に記憶された情報が、出力装置730へ出力され、読取システムのハードウェアとしてスマートフォンが使用される場合、出力装置730により、スマートフォンの画面などに読み取り結果が出力される。(手順Т807)
【0096】
図6は、本実施形態に係る読取システム700の出力結果の表示例の図である。図6を参照して、スマートフォン900のディスプレイ901上での読取結果の出力表示の例を示す。ディスプレイ901上に複数のラベル表示物が複数並んでいる場合、複数同時の画像取得及び読み取り結果の表示が可能である。具体的には、現場での作業性と処理速度を考えると、最大8つの二次元コードを認識し、認識した順番に4スレッド並行処理し、処理が終わり次第、残りの二次元コードの並行処理を実施する方法が、効率的で好ましい。並行処理のスレッド数は、現場作業やスマートフォン900の処理速度によって最適数が変わるため、特に限定されるものではない。
【0097】
また、手順T805によって判定された結果はAR(Augmented Reality,拡張現実)での温度逸脱有りのNGを意味する「■」902aや、ARでの温度逸脱無しのOKを意味する「■」902bを示すことで、作業者が管理状態を認識しやすくする。全ての二次元コードの読取が終了した後、処理終了ボタン903をタッチすることで、手順802で出力される全ての取得データをスマートフォン画面上で閲覧することもできるし、指定アドレスへ送信することもできる。
【0098】
本実施の処理フローT800は、カメラ、画面、通信装置を有する汎用的なスマートフォンなどでプログラムを実行させるのが好ましいが、この形態に限定されるものではない。
【0099】
<情報処理システム>
図7は、本実施形態に係る読取システム700を活用した情報処理システム1000の概略を説明する図である。図7に、情報処理装置1100を含む情報処理システム1000のブロック図を示す。情報処理装置1100は、いずれも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、I/F(インターフェイス)等を備えて構成される。情報処理装置1100は、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
【0100】
情報処理装置1100は入力部1110、記憶部1120、情報処理部1130、出力部1140とから構成される。入力部1110は、スマートフォン900から出力された情報を入力する部分である。記憶部1120は、スマートフォン900から出力された情報を蓄積し、記憶しておく部分である。
【0101】
情報処理部1130は、記憶部1120に蓄積された情報を整理・解析する部分である。例えば、読取システム700を含むスマートフォン900からの情報を統計解析することで、どういった時に、どのような作業者が、どういった場所で、温度逸脱をしているかを知ることができ、業務改善につなげることができる。
【0102】
出力部1140は、情報処理部1130によって処理された情報を必要とする場所に送信する部分である。情報処理装置1100が、ディスプレイを有する装置の場合は、そのディスプレイに処理結果を出力することができる。
【0103】
以下は、情報処理システム1000を、生産から消費者までの流通に適用する例を示す。情報処理システム1000は、例えば、ワイン等の製品の流通過程での物理量を、製品を受け取った消費者が把握可能にするものである。二次元コード200は、例えば、製品がワインであればワインに添付されたラベル、ワインを収容した箱等に表示される。図7は二次元コード200を例に説明されるが、その他の二次元コード201~209でも同様の運用形態である。
【0104】
情報処理システム1000は、二次元コード200の読取システム700を有するスマートフォン900と、情報処理装置1100とを備える。スマートフォンを代表とするスマートフォン900(入出力装置)は撮像機能を有する端末であり、例えば情報通信端末である。スマートフォン900(入出力装置)は、二次元コード200の読取システム700で取得・解析した情報を、製品流通中に情報処理装置1100へアップロードするのに使用される。図7は一つの端末で入力と出力が可能なスマートフォン900(入出力装置)を例に示したが、専用の入力装置と出力装置を用いることもできる。
【0105】
製品集荷時、製品輸送の担当者(例えば運転手)は、スマートフォン900(入出力装置)を用いて製品に表示の二次元コード200を撮像する。これにより、二次元コード200の像を含む入力情報が情報処理装置1100にアップロードされる。二次元コード200と読取システム700によって、読み取り時の温度逸脱の有無が判定される。このとき、入力情報として、製品識別情報(物品識別情報)のほか、撮像時刻、撮像位置等もアップロードされる。物品識別情報とは、例えば、GTIN(Global Trade Item Number)、EAN(European Article Number)コード、U.P.C.(Universal Product Code)である。これらの物品識別情報には製造者、販売者、製造日、使用期限、等の物品に関する情報が紐づけられていることが好ましい。
【0106】
同様にして、輸出倉庫、通関倉庫、及び、輸入倉庫における各担当者は、スマートフォン900(入出力装置)を用いて製品に表示の二次元コード200を撮像する。これにより、それぞれの入力情報が情報処理装置1100にアップロードされる。そして、情報処理装置1100は、アップロードされた入力情報に基づき、読み取り時の温度逸脱の有無が判定される。
【0107】
他方、消費者は、スマートフォン900(入出力装置)を使用して製品の二次元コード200を読み取ることで、二次元コード200に記憶されたURL(ウェブ)にアクセスできる。読み取りは、例えば、スマートフォン900(入出力装置)上で動作する専用のアプリケーションを使用して実行できる。
【0108】
なお、製品輸送の担当者などの管理者側のスマートフォン900は、本実施形態の読取システム700を含むものであるが、一方、消費者側のスマートフォン900は本実施形態の読取システム700を含まないものでも問題ない。図7では、スマートフォン900をスマートフォン、タブレット端末として示しているが、これに限定したわけではなく、スマートフォン900は、入力装置として専用の読取リーダ、出力装置としてパーソナルコンピュータなどであってもよい。
【0109】
本実施形態の二次元コードの読取システム700は、環境変化に応じて色変化するインクをデータ領域に備える二次元コードの読取システムであって、二次元コードは、「撮影環境に応じた色の変化量を求めるために使用される」参照色が彩色された位置決め用パターンを有し、二次元コードの画像を取得する画像取得装置710と、データ処理装置740と、参照色の色情報並びに参照色及びインクの位置情報を記憶する記憶装置760と、を備え、データ処理装置740は、二次元コードの画像から二次元コードの四隅の座標(X,Y)を検出し、検出された四隅の座標に基づいて、色情報を検出する領域の位置を特定し、領域の色情報を検出し、領域は参照色領域とインク領域とを含み、記憶装置760に記憶された参照色の位置情報と、領域の色情報と位置とから、参照色領域とインク領域とを判定し(識別し)、記憶装置760に記憶された参照色の色情報と、検出された参照色領域の色情報との関係を用いて、インク領域の色情報を補正することができる。なお、ここでの、環境変化に応じて色変化するインク領域とは、環境検知領域600に相当する。これにより、環境変化に応じ色変化するインクの色情報の取得精度と読取速度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0110】
100 ラベル表示物
101 シリアルID
200 二次元コード(第1二次元コード)
201 二次元コード(第2二次元コード)
202 二次元コード(第3二次元コード)
203 二次元コード(第4二次元コード)
204 二次元コード(第5二次元コード)
205 二次元コード(第6二次元コード)
206 二次元コード(第7二次元コード)
207 二次元コード(第8二次元コード)
208 二次元コード(第9二次元コード)
209 二次元コード(第10二次元コード)
300 ファインダパターン(位置決め用パターン)
301 第1参照色
302 第2参照色
303 第3参照色
304 第4参照色
310 第1ファインダパターン領域
320 第2ファインダパターン領域
330 第3ファインダパターン領域
400 アライメントパターン
410 第1アライメントパターン領域
420 第2アライメントパターン領域
430 第3アライメントパターン領域
500 セル(データ領域)
600 環境検知領域
700 読取システム(二次元コードの読取システム)
710 画像取得装置
720 入力装置
730 出力装置
740 データ処理装置
741 入力制御部
742 二次元コード位置認識部
743 二次元コード認識部
744 参照色の位置決定部
745 環境検知領域の位置決定部
746 参照色の実測色決定部
747 環境検知領域の実測色決定部
748 環境検知領域の補正色決定部
749 判定部
750 出力制御部
760 記憶装置
761 画像データ記憶部
762 二次元コード位置データ記憶部
763 二次元コードデータ記憶部
764 参照色の位置データ記憶部
765 環境検知領域の位置データ記憶部
766 参照色の実測色データ記憶部
767 環境検知領域の実測色データ記憶部
768 参照色のベースデータ記憶部
769 環境検知領域の補正色データ記憶部
770 環境検知領域の判定色データ記憶部
771 判定結果記憶部
772 読取データ記憶部
900 スマートフォン(携帯端末)
901 ディスプレイ
902a AR表示「NG」
902b AR表示「OK」
903 処理終了ボタン
1000 情報処理システム
1100 情報処理装置
1110 入力部
1120 記憶部
1130 情報処理部
1140 出力部
T800 読取システムの処理フロー
T801 手順「コード認識・画像読み込み」
T802 手順「参照色とインク色の取得」
T803 手順「白とび、極端な照度差、画像サイズ、画像角度」
T804 手順「色補正」
T805 手順「色解析」
T806 手順「データ記憶」
T807 手順「データ出力・送信」
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7