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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102752
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】害獣捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/22 20060101AFI20240724BHJP
   A01M 23/14 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A01M23/22
A01M23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006855
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】515027439
【氏名又は名称】工藤 まほ
(71)【出願人】
【識別番号】515027048
【氏名又は名称】河野 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】三重野 丈一
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BB27
2B121BB32
2B121BB35
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】重量的にも搬送保管上も、また、用途に応じた加工作業も容易とする金属網体を提供する。
【解決手段】この発明は、捕獲網体1の中央部10と捕獲網体1の周縁部11の数か所とを地上に立設した中央係止用ポール2と周辺係止用ポール3とにそれぞれ係合することにより各ポール間に捕獲網体1を張設状態とすると共に、捕獲網体1は各ポールとの係合部解舒により網体自重で各ポールに沿ってスライド落下して害獣を捕縛するように構成したことを特徴とする害獣捕獲装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕獲網体の中央部と捕獲網体の周縁部の数か所とを地上に立設した中央係止用ポールと周辺係止用ポールとにそれぞれ係合することにより各ポール間に捕獲網体を張設状態とすると共に、捕獲網体は各ポールとの係合部解舒により網体自重で各ポールに沿ってスライド落下して害獣を捕縛するように構成したことを特徴とする害獣捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、害獣捕獲装置に関するものである。
【0002】
従来、害獣捕獲装置は、害獣が捕獲装置を構成する捕縛用の網体内に進入したタイミングを見計らって捕獲用の網体が害獣を被覆することで害獣の自由を制約して捕縛する構造(特許文献1、参照)のものや、害獣の脚体をロープで捕縛することで害獣の自由を制約する構造(特許文献2、参照)のものが一般的であった。
かかる害獣捕獲装置にするためには、害獣を捕縛するための複雑な構造が必要であり、捕獲機構を作動させるためのトリガー機構が必ず設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-145931号公報
【特許文献2】実登3210351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、トリガー機構は害獣を捕縛するための必須の機構であり、捕獲機構の一部として設けられている。
かかる従来の害獣捕縛技術ではトリガー機構を捕縛作動の中心部に設置しており、例えば踏板等の連動機構を設けている。かかる踏板と作動部分との連動機構は複雑であり、捕獲機構を簡便化することができない原因となっていた。
【0005】
この技術は、捕獲機構を簡便化しつつ捕縛網体の動作を捕縛網体の自重によって行うように構成して確実に害獣を捕縛できる害獣捕獲装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の第1の態様は、捕獲網体の中央部と捕獲網体の周縁部の数か所とを地上に立設した中央係止用ポールと周辺係止用ポールとにそれぞれ係合することにより各ポール間に捕獲網体を張設状態とすると共に、捕獲網体は各ポールとの係合部解舒により網体自重で各ポールに沿ってスライド落下して地上を被覆するように構成したことを特徴とする害獣捕獲用スライド網体構造に関する。
【発明の効果】
【0007】
本技術の第1の態様によれば、捕獲網体の中央部と捕獲網体の周縁部の数か所とを地上に立設した中央係止用ポールと周辺係止用ポールとにそれぞれ係合することにより各ポール間に捕獲網体を張設状態とすると共に、捕獲網体は各ポールとの係合部解舒により網体自重で各ポールに沿ってスライド落下して害獣を捕縛するように構成したことにより、捕獲機構を簡便化しつつ捕縛網体による害獣の捕縛動作を捕縛網体の自重によって行うことができ、確実に害獣を捕縛できる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本技術の第1の実施の形態にかかる害獣捕獲装置を示す斜視図である。
図2】本技術の第1の実施の形態にかかる害獣捕獲装置を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は害獣捕獲装置の駆動前の状態を示す図であり、(c)は害獣捕獲装置の駆動後の状態を示す図である。
図3】本技術の第1の実施の形態にかかる害獣捕獲装置の動作を示す図であり、(a)は設置状態を示す図であり、(b)は罠作動後の状態を示す図である。
図4】本技術の第1の実施の形態にかかる捕獲網体と周辺係止用ポールの係合状態を示す模式平面図である。
図5】本技術の第1の実施の形態にかかる網体固定部を示す模式図である。
図6】本技術の第1の実施の形態にかかる捕獲網体を示す図である。
図7】本技術の第1の実施の形態にかかる捕獲網体を構成する撚り金属線の構成を示す図である。
図8】本技術の第1の実施の形態にかかる撚り金属線の構成を示す図であり、(a)は撚り金属線の撚り状態を示す模式図であり、(b)は図7のB-B線端面図であり、(c)は金属素線の撚りピッチを示す模式図である。
図9】本技術の第1の実施の形態にかかる捕獲網体を展開した状態を示す拡大図である。
図10】本技術の第1の実施の形態にかかる捕獲網体を構成するユニット連結部および隣接連結部を示す斜視図である。
図11】本技術の第2の実施の形態にかかる害獣捕獲装置を示す斜視図である。
図12】本技術の第2の実施の形態にかかる害獣捕獲装置を示す平面図である。
図13】本技術の第2の実施の形態にかかる逃避防止環状空間を示す害獣捕獲装置の一部拡大図である。
図14図12のC-C線の断面図である。
図15】本技術の第2の実施の形態にかかる害獣捕獲装置の変形例を示す平面図である。
図16図15のD-D線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施の形態>
本技術の要旨は、捕獲網体の中央部と捕獲網体の周縁部の数か所とを地上に立設した中央係止用ポールと周辺係止用ポールとにそれぞれ係合することにより各ポール間に捕獲網体を張設状態とすると共に、捕獲網体は各ポールとの係合部解舒により網体自重で各ポールに沿ってスライド落下して害獣を捕縛するように構成したことを特徴とする害獣捕獲用スライド網体構造に関するものである。
【0010】
この技術の第1の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。図1は本技術の第1の実施の形態の概要を示す説明図である。
【0011】
捕獲網体1は外形を方形状に構成しており、特に中央部10を山型に突出した形状としている。従って、中央部10の山型山頂部を中心にして四方に傾斜面を形成している。
すなわち、捕獲網体1は、展開した状態では網体の内部を三角や四角の空間に形成しており、かかる内部空間を害獣の捕獲空間Sとしている。なお、本技術における捕獲対象としての害獣は猿やイノシシやシカやカラスなどである。
【0012】
かかる捕獲網体1の張設構造としては捕獲網体1を山型に形成支持するために骨格として中心部に立設する中央係止用ポール2と、中央係止用ポール2の周辺に立設する周辺係止用ポール3とよりなる。中央係止用ポール2は、周辺に立設した4本の周辺係止用ポール3よりも全長が長くなるように構成している。すなわち、中央係止用ポール2は、地面に立設した状態において、上端部が周辺係止用ポール3よりも高所に位置している。
【0013】
捕獲網体1は、中央部10を中央係止用ポール2の上端部近傍に係止し、周縁部11を周辺係止用ポール3の上端部近傍に係止している。捕獲網体1は、各ポールに中央部10および周縁部11を係止することにより、山型に張設されたことになる。ここで重要なことは、各ポールと捕獲網体1との係合構造に関する。
【0014】
すなわち、この係合部分は、害獣を捕獲する際のトリガーとして機能するものであり、害獣が複数の周辺係止用ポール3で囲われた害獣の捕獲空間Sに侵入した状態で捕獲網体1と各ポールとの係合が解除されると、図3(a),(b)に示すように、捕獲網体1は自重により各ポールに沿ってスライドして落下することとなり、捕獲空間Sに侵入した害獣を上方から被覆して捕獲することになる。
【0015】
このように、捕獲網体1の中央部10と周縁部11を地上に立設した中央係止用ポール2と周辺係止用ポール3に係合することで各ポール間に捕獲網体1を張設状態に形成すると共に、各ポールとの係合状態の解舒をトリガーとして、捕獲網体1は自重により各ポールに沿ってスライド落下して害獣を捕獲できる。
【0016】
上記したように捕獲網体1の中央部10と周縁部11の数か所とを地上に立設した中央係止用ポール2と周辺係止用ポール3とにそれぞれ係合している。特に、捕獲網体1の中央部10と中央係止用ポール2の係合は、図2(a),(b),(c)に示すように、ソレノイド4のプランジャ40に捕獲網体1の網目部分を係止し、害獣捕獲装置Mから離隔した位置で害獣の侵入を監視する監視人がリモコンRを用いてプランジャ40を退去作動させることによりプランジャ40と捕獲網体1の網目との係合を解除して捕獲網体1を中央係止用ポール2から落下させることができる。
【0017】
また、捕獲網体1の周縁部11の数か所と地上に立設した周辺係止用ポール3とはそれぞれ係合している。詳細には、捕獲網体1の周縁部11の網目部分に網体支持具5を係合し、網体支持具5を周辺係止用ポール3に係合することにより、捕獲網体1の周縁部11が間接的に周辺係止用ポール3と係合する。
【0018】
網体支持具5は、図4に示すように、内部中空状のパイプ50と、パイプ50の中空部に挿通するワイヤーロープ51と、ワイヤーロープ51の端部に設けたポール係合部52を有する。
【0019】
パイプ50は、金属製の円筒体であり、パイプ50の中空部にワイヤーロープ51を挿通している。これにより、パイプ50は、ワイヤーロープ51で支持されている。
【0020】
ワイヤーロープ51は、複数の金属素線を撚り合わせて形成された紐体であり、両端部をポール係合部52に係止している。ポール係合部52は、平面視略U字状のU字固定部52aと、ワイヤーロープ51の端部を係止するロープ係止部52bと、よりなり、U字固定部52aのU字開口部を閉塞するようにロープ係止部52bを固定している。これにより、ポール係合部52は、U字固定部52aとロープ係止部52bとで閉塞した係合ループ部52cを形成している。網体支持具5は、周辺係止用ポール3を囲繞するリング体31に係合ループ部52cを係合している。
【0021】
このようにポール係合部52を構成することにより、捕獲網体1は、網体支持具5およびリング体31を介して周辺係止用ポール3の周面30に係合している。
この際、後述する捕獲網体1の弾性力により、リング体31の内周面は周辺係止用ポール3の周面30を捕獲空間S側に押圧することとなり、周辺係止用ポール3が垂直であろうとする弾性力と相俟って、所定の高さ位置に固定されている。
つまり、捕獲網体1と周辺係止用ポール3との係合は、捕獲網体1と周辺係止用ポール3の弾性力によるものであり、捕獲網体1および周辺係止用ポール3の弾性力により周辺係止用ポール3の周面30と係合しているだけである。
【0022】
このように中央係止用ポール2と網体支持具5を介して周辺係止用ポール3に係合した捕獲網体1は、多数の金属素線を撚って編成した撚り金属線12を2本一組として弾性を有する1ユニット金属線13を構成し、1ユニット金属線13を構成する2本の撚り金属線12の中途部をユニット連結部14を介して一体連結すると共に、1ユニット金属線13に隣接する他の1ユニット金属線13のそれぞれの隣接する撚り金属線12同士を隣接連結部15を介して各ユニット連結部の中途において一体連結することで構成している。
【0023】
撚り金属線12は、図7に示すように、心鋼16とその周辺に配設した6本のストランド17を一体に撚って構成している。しかも、心鋼16は、中心の心線16aとその周りの6本の側線16bとを撚って構成し、心鋼16のまわりの6本のストランド17は、同じく心線17aと、側線17bとによって構成しており、このように構成した心鋼16と周辺の6本のストランド17とを撚って一本の撚り金属線12を形成している。
【0024】
1ユニット金属線13は、2本の撚り金属線12,12と、2本の撚り金属線12,12を一体とするユニット連結部14を有する。撚り金属線12は、図7および図8(a),(b)に示すように、中心に設けた心鋼16と、心鋼16の周りに設けた複数のストランド17で構成している。撚り金属線12は、心鋼16を中心軸として心鋼16の周りに設けた複数のストランド17を撚り合わせることで1本のロープ状に形成している。
【0025】
このように撚り金属線12を構成する心鋼16は、中央に設けた心線16aと、心線16aの周りに設けた複数の側線16bにより構成している。上述したように心鋼16は、心線16aを中心にその周りに6本の側線16bを設け、心線16aを中心軸にして側線16bを撚り合わせることで1本の線体に形成している。心線16aおよび側線16bは、それぞれ単独の金属素線で構成している。心鋼16は、心線16aにより線体としての形態を維持し、側線16bにより線体の強度を確保するように構成している。
【0026】
第1の実施の形態において、心鋼16を構成する心線16aおよび側線16bは、耐食性や耐熱性、および強度に優れたSUSで構成している。なお、心線16aおよび側線16bは、SUSに限らず、軽量で耐食性に優れた特性を有していればどのような素材で構成されていてもよい。このように構成した心鋼16の周りにはストランド17を設けて撚り合わせることで撚り金属線12が形成されている。
【0027】
ストランド17は、心鋼16と同様に構成されており、中央に位置する心線17aと、心線17aの周りに位置する複数の側線17bを有する。具体的には、ストランド17は、心線17aを中心にその周りに6本の側線17bを設け、心線17aを中心軸にして側線17bを撚り合わせることで1本の線体に形成している。心線17aおよび側線17bは、それぞれ単独の金属素線で構成している。ストランド17は、心線17aにより線体としての形態を維持しつつ、側線17bにより線体の強度を確保している。
【0028】
第1の実施の形態において、ストランド17を構成する心線17aおよび側線17bは、耐食性や耐熱性、および強度に優れたSUSで構成している。なお、心線17aおよび側線17bは、SUSに限らず、軽量で耐食性に優れた特性を有していればどのような素材で構成されていてもよい。
【0029】
また、第1の実施の形態において、心鋼16およびストランド17は、同一の素材で構成したことを例示しているが、本技術はこれに限定されることはなく、異なる素材で構成されていてもよい。すなわち、心鋼16が撚り金属線12に弾性特性を付与できる素材で構成され、ストランド17が撚り金属線12に強度を付与できる素材で構成されていればどのような素材で構成されていてもよい。
【0030】
第1の実施の形態における撚り金属線12は、心鋼16を中心にその周りに6本のストランド17を配設し、心鋼16を中心軸として6本のストランド17を撚り合わせることで形成されている。このように撚り金属線12を構成する心鋼16およびストランド17は、撚りピッチPおよび撚り方向を同一に構成している。これにより、撚り金属線12は、心鋼16を構成する側線16b間の谷間にストランド17を構成する側線17bが設けられ、側線16bと側線17bを線接触状態にできる。すなわち、撚り金属線12は、いわゆる平行撚りに形成されている。
このように、撚り金属線12を平行撚りに構成して心鋼16の側線16bとストランド17の側線17bを線接触させる構成により、心鋼16とストランド17間に生起される荷重が分散されて心鋼16とストランド17の摩耗を低減できる。すなわち、撚り金属線12は、心鋼16とストランド17を平行撚りとすることで強度を向上できる。なお、撚りピッチPとは、図8(c)に示すように、ストランド17が心鋼16の長手方向に沿って心鋼16の周りを一回転する際の長さのことである。
【0031】
また、1ユニット金属線13は、単体の撚り金属線12を2本併設してユニット連結部14で結合することにより一体となるように構成している。具体的には、1ユニット金属線13は、図6および図9に示すように、併設した2本の撚り金属線12,12の左右両端部および中途部を等間隔にユニット連結部14で結合している。これにより、撚り金属線12は、隣設するユニット連結部14との間にループ部12aを形成している。撚り金属線12に形成されたループ部12aは、撚り金属線12,12を互いに離反する方向に変位させるだけで容易に変態できる。
【0032】
ユニット連結部14は、図10に示すように、略長円状に形成されている。ユニット連結部14は、略中央部に前後に貫通した略長円状の金属線固定孔部14aを有する。また、ユニット連結部14は、略中央部に厚肉部14bを有する。金属線固定孔部14aは、厚肉部14bにより2つの金属線挿通孔部14c,14cに分割形成されている。金属線挿通孔部14cには、撚り金属線12を挿通している。このようにユニット連結部14に金属線挿通孔部14c,14cを設け、金属線挿通孔部14cに撚り金属線12を挿通し、ユニット連結部14の外側面を押圧してカシメることで併設した撚り金属線12を交差することなく固定できる。
【0033】
このようにユニット連結部14を介して2本の撚り金属線12を結合して形成された1ユニット金属線13は、隣接連結部15を介して他の1ユニット金属線13と結合している。
【0034】
隣接連結部15は、図10に示すように、一方の1ユニット金属線13を構成する撚り金属線12と、他方の1ユニット金属線13を構成する撚り金属線12のうち、隣設する撚り金属線12,12を結合している。隣接連結部15は、隣設するユニット連結部14,14間の略中央部に設けられている。すなわち、一方の1ユニット金属線13と他方の1ユニット金属線13は、隣設した撚り金属線12のループ部12aを結合している。
【0035】
隣接連結部15は、前述のユニット連結部14と略同一に構成されており、ユニット連結部14と同様に略長円状に形成され、略中央部に前後に貫通する略長円状の金属線固定孔部15aを有する。金属線固定孔部15aは、長円状に形成した開口部の略中央部に、開口部の一部を閉塞するように左右の内側壁を膨出して厚肉部15bを形成している。このように隣接連結部15は、厚肉部15bで金属線固定孔部15aの一部を閉塞することにより金属線固定孔部15aを2つの金属線挿通孔部15c,15cに分割形成している。隣接連結部15は、一方の1ユニット金属線13を構成する撚り金属線12と他方の1ユニット金属線13を構成する撚り金属線12をそれぞれ金属線挿通孔部15c,15cに挿通し、隣接連結部15の外側面を押圧してカシメることで併設した撚り金属線12を交差することなく固定できる。
【0036】
第1の実施の形態において、捕獲網体1は上述したように構成されており、複数の金属素線を撚って束ねて形成した心鋼16およびストランド17を、心鋼16を中心軸としてその周りに複数のストランド17を撚り合わせて撚り金属線12を構成したため、高い強度を有する。
また、撚り金属線12が心鋼16を備えた構成により、捕獲網体1を展開した際、撚り金属線12には、心鋼16による弾性作用が生起され、捕獲網体1全体に弾性作用が生起される。すなわち、用途に応じて変態した捕獲網体1に加わる衝撃を捕獲網体1の弾性作用で吸収でき、捕獲網体1を高強度に維持できる。
【0037】
また、このような撚り金属線12を2本併設して、両端部およびその中途部の複数個所をユニット連結部14で結合してループ部12aを形成し、各ループ部12aに設けた隣接連結部15で隣接する1ユニット金属線13,13を連結した構成により、上下端部に位置する撚り金属線12を互いに離反する方向に変位させるだけで1ユニット金属線13のループ部12aを略ひし形に変態できる。これにより、捕獲網体1は、上下端部の撚り金属線12を互いに離反する方向に変位させると、各撚り金属線12に引っ張り方向の荷重が生起される。このように複数の撚り金属線12すべてに引っ張り荷重が生起されるように各撚り金属線12をユニット連結部14および隣接連結部15で固定した構成により、捕獲網体1の強度を向上できる。
【0038】
このように構成した捕獲網体1が自重で落下して害獣の上面を被覆することにより、害獣は捕獲網体1から逃避することができず捕獲作業が完了する。
なお、捕獲網体1は自重で落下して害獣を捕縛するため、一定の自重を有するようにステンレス素材で構成している。
【0039】
また、害獣捕獲装置Mは、捕獲網体1でとらえた害獣の逃走を防止するために、落下した捕獲網体1を地面に固定するための網体固定部6を有する。
網体固定部6は、隣接する周辺係止用ポール3間を直線状に結び捕獲空間Sを囲うように形成された凹部であって、鉛直断面を上方を開放部とした略‘コ’字状の嵌合溝部60と、嵌合溝部60の開口部近傍に設けたロック機構61とを有する。ロック機構61は、図5に示すように、嵌合溝部60に対して下方傾斜状に設けたパイプ係止片61aと、パイプ係止片61aの上部近傍に配設され、パイプ係止片61aを下方傾斜状に支持しつつ嵌合溝部60の開口周縁部にロック機構61を係止する挟持片61c,61cを有するクリップ部61bで構成している。
【0040】
網体固定部6のパイプ係止片61aは、クリップ部61bの挟持片61cの上端部に連結固定されており、下方傾斜状に支持されている。
クリップ部61bは、ロック機構61を嵌合溝部60の開口周縁部に挟持固定する一対の挟持片61cと、対向する挟持片61c,61cの下端部を接近する方向に付勢するトーションバネ61dとを有する。
【0041】
ロック機構61は、このように構成されており、パイプ係止片61aの下端部を下方傾斜状に設けた構成により、嵌合溝部60の開口部が閉塞される。これにより、パイプ50が嵌合溝部60から抜け出すことを規制できる。すなわち、嵌合溝部60に進入したパイプ50は、パイプ係止片61aにより嵌合溝部60から抜け出すことができず、捕獲網体1で捕獲された害獣が捕獲空間Sから抜け出すことができない。
【0042】
したがって、捕獲網体1で捕縛した害獣が捕獲空間S内で暴れたとしても、捕獲網体1の周縁部に設けたパイプ50がロック機構61の規制片63で嵌合溝部60から上方に変位することが規制されて、捕獲空間S内に害獣を留めておくことができる。このように、網体固定部6を備えた構成により、捕獲空間Sに捉えた害獣を捕獲網体1で確実に捕縛できる。
【0043】
以上説明したように、本技術の第1の実施の形態の害獣捕獲装置Mは、平面視略方形状の捕獲網体1の周縁部11のループ部12aに網体支持具5のパイプ50を挿通して捕獲網体1と網体支持具5を係合し、網体支持具5のパイプ50を支持するワイヤーロープ51の端部を周辺係止用ポール3に係止し、さらには、捕獲網体1の中央部10を中央係止用ポール2のプランジャ40で地面から一定高さに係止して捕獲網体1を略山型とし、害獣捕獲装置Mから離隔した位置で捕獲空間Sへの害獣の侵入を監視する監視人がリモコンRの操作で捕獲網体1とプランジャ40との係合を解除することにより、捕獲網体1が自重により各ポールに沿って下方に落下して確実に害獣を捕縛することができる。
【0044】
<2.第2の実施の形態>
本技術の第2の実施の形態では、上述の第1の実施の形態で使用された捕獲網体1を用いた害獣捕獲装置M´について提案する。
【0045】
従来、猿などの害獣を捕獲するための害獣捕獲装置として囲い罠がある。
囲い罠の構造は、周囲の周側壁体と、天井部中央に誘い込み開口を形成した天蓋部とより構成しており、誘い込み開口部から囲い込み周側壁体で囲繞された空間に多数の害獣を誘い込むと共に誘い込み開口部からの脱出ができない逃避防止構造により囲い込み空間に害獣を閉じ込めて一度に大量の害獣を捕獲することができるように構成している。
【0046】
かかる構成の囲い罠を利用して外側面を金網で形成した捕獲空間に害獣を捕獲する際には、害獣は、囲い罠の上部の誘い込み開口部から侵入しやすいために一度に大量の害獣を捕獲できる。その反面、捕獲した害獣が囲い罠の金網側壁を登って捕獲空間の侵入口である上部の誘い込み開口部から逃走する虞があった。
このように捕獲した害獣が囲い罠の侵入口である誘い込み開口部から逃走することを防止する手段として特許文献1に記載のような各種の罠構造が考案されている。
【0047】
特許第5543009号公報には、周囲を囲繞して捕獲空間を形成する側面部と、平面視略中央に開口部を有し側面部の上端から捕獲空間側に登り傾斜状に延設した天井壁部と、天井壁部の開口部周縁に垂設した垂れ壁部を有する囲い罠が記載されている。
【0048】
この囲い罠は、側面部と天井壁部と垂れ壁部により害獣を捕獲するための閉塞空間を捕獲空間の上方に形成している。捕獲空間に侵入した害獣は、侵入口である開口部から脱出しようと側面部を登ると必然的に閉塞空間に侵入することとなる。
【0049】
閉塞空間は、垂れ壁部の上端部と側面部の上端部に架設した天井壁部で覆われ閉塞されているため、閉塞空間に侵入した害獣は囲い罠の外部に逃走することができない。しかも、閉塞空間を構成する垂れ壁部は、網体ではなく表面平滑面に形成されているため、害獣が閉塞空間に侵入することなく垂れ壁部の外側をつたって開口部から逃走を図ろうとしても、表面平滑面の垂れ壁に指を引掛ける部分がなく、垂れ壁の外側を登ることができない。
このように特許文献1に記載の囲い罠は、天井壁部に垂設した垂れ壁部と閉塞空間の相互機能により、一度捕獲空間に害獣が侵入すると、脱出できない装置構造を実現していた。
【0050】
特許第5543009号公報に記載の害獣捕獲装置においては、害獣が捕獲空間に侵入しやすいように側面部を格子状の金網で形成しつつ、側面部に連結した天井壁部を捕獲空間側に登り傾斜状に延設し、しかも、天井壁部に形成した開口部の周縁に垂れ壁部を垂設した構成であり、このような構成の囲い罠においては次のような問題があった。
【0051】
捕獲空間に侵入した害獣は、捕獲空間内に設置された食物を食し、その後、侵入経路である天井壁部に形成した開口部から脱出しようとする。この際、害獣捕獲装置の側面部が全て格子状の金網で構成されているため、どの側面部も指を引掛けて登ることができる。捕獲空間に侵入する害獣の数が増加すると、捕獲空間から脱出するために側面部に掴まる害獣の数が増加して害獣捕獲装置に対する重量負荷が大きくなる。
【0052】
また、装置からの脱出を防止するために設けた垂れ壁に触れて指掛けができることから捕獲空間に捕獲された害獣と、捕獲空間に侵入する前の害獣とが協力することで捕獲空間から脱出するおそれがあった。
【0053】
このように従来の害獣捕獲装置は、大量の害獣を捕獲し、捕獲した害獣の脱出を防止できる構成を備えているものの、捕獲空間に捕獲された害獣の数が増加すると捕獲装置の側面部への負荷が増大して害獣捕獲装置が破損する虞があった。また、捕獲空間に捕獲した害獣と、捕獲空間に侵入する前の害獣が互いに協力することにより、捕獲空間に捕獲した害獣が捕獲空間から逃走できる虞があった。
【0054】
本技術の第2の態様は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、捕獲した害獣が檻から逃げ出すことを確実に防止するとともに、害獣捕獲装置が破損する虞を可及的に低減した囲い罠を提供することを目的としている。
【0055】
本技術の第2の態様は、害獣を捕獲するための捕獲空間を有する害獣捕獲装置であって、捕獲空間を囲繞する側面部と、側面部の上端縁部から捕獲空間に向けて略横方向に延設した上面中央部開放のドーナツ状の捕獲空間天井部と、捕獲空間天井部の内端縁部から側面部との間に一定の空間を保持して側面部に沿って張り巡らし垂設した表面滑動の遮蔽側壁体と、捕獲空間天井部と外周の側面部と遮蔽側壁体とで区画形成された下方開放の環状の逃避防止環状空間と、逃避防止環状空間の下端開放部略中央部位置に環状に張り巡らした通電部と、を有することを特徴とする害獣捕獲装置に関する。
【0056】
本技術の第2の態様は、表面滑動の遮蔽側壁体はアルミニウム板とし、高さを50cm~70cm、最適には約60cmとすると共に、逃避防止環状空間の水平方向の厚みを50cm~70cm、最適には約60cmとすることを特徴とする第1の態様における害獣捕獲装置に関する。
【0057】
本技術の第2の態様によれば、害獣を捕獲するための捕獲空間を有する害獣捕獲装置であって、捕獲空間を囲繞する側面部と、前記側面部の上端縁部から捕獲空間に向けて略横方向に延設したドーナツ状の捕獲空間天井部と、捕獲空間天井部の内端縁部から側面部との間に一定の空間を保持して側面部に沿って張り巡らし垂設した表面滑動の遮蔽側壁体と、捕獲空間天井部と側面部と遮蔽側壁体とで区画された下方開放の環状の逃避防止環状空間と、逃避防止環状空間の下端開放部略中央部に環状に張り巡らした通電部とを有する構成としたために、捕獲空間に侵入した害獣が逃避を試みた場合逃避防止環状空間の構造構成により必然的にこの空間に侵入するしかなく、一旦この空間に逃避した場合は天井部の端縁部から垂設し、側面部との間に一定の空間を保持して側面部に沿って張り巡らした表面滑動の遮蔽側壁体に手を掛けようと試みても表面滑動のために手を掛けることができず滑って遮蔽側壁体を介した逃避防止環状空間からの逃避が行えず確実な害獣の捕獲を行うことができる。
【0058】
このように本技術の重要な点は捕獲空間内の内周壁面に沿って下方開放で側面部から一定距離離隔した逃避防止環状空間を張り巡らしていることにあり、捕獲空間内に侵入した害獣は如何にもがいて暴れまわっても侵入口の開放部から逃避することができないように構成したことにある。
【0059】
また、逃避防止環状空間の下端開放部略中央部位置に環状に通電部を張り巡らすことにより、捕獲空間に侵入した害獣が側面部の内側面を登り害獣捕獲装置の上端部に設けた開口部から逃走を図ろうとしても、必ず通電部を通過することとなる。通電部は常時帯電しており、害獣が捕獲空間から脱出しようとすると通電部で感電することとなり、害獣が捕獲空間から脱出することを防止できる。
【0060】
また、逃避防止環状空間内部に通電部を配設したことにより、害獣が捕獲空間に侵入する際には感電することなく侵入できる一方、捕獲空間の外部に脱出しようとした場合は、必然的に通電部と接触し、脱出することができず害獣を捕獲空間内に確実に捕獲することができる。
また、脱出を試みた害獣が通電部で感電する様子を捕獲空間に捕獲された他の害獣が視認することにより、当該捕獲空間からの脱出が不可能であることを学習させて他の害獣が側面部を登り脱出を試みる行動を抑制することができる。
【0061】
本技術の第2の態様によれば、表面滑動の遮蔽側壁体はアルミニウム板とし、高さを50cm~70cm、最適には約60cmとすると共に、逃避防止環状空間の水平方向の厚みを50cm~70cm、最適には約60cmとすることにより、害獣、特に猿などが遮蔽側壁体を登ろうとしてもアルミニウム板の表面の滑動機能により登ることができないと共に軽量でドーナツ状の捕獲空間天井部に重量負荷をかけることなく捕獲装置全体の強度を保持できる。しかも、遮蔽側壁体は高さを50cm~70cm、最適には約60cmとすると共に、逃避防止環状空間の水平方向の厚みを50cm~70cm、最適には約60cmとすることにより、害獣、特に猿が該空間に侵入しやすい空間として誘いやすいものの一端該空間に侵入せんとすれば該空間の下端開口部に至るとその位置において通電部による感電刺激を受けてそれ以上に侵入できない効果を有すると共にかかる経験が害獣の学習機能として再度の逃避行動を防ぐことができる。
【0062】
本技術の第2の実施の形態について図11~16を参照して詳説する。
【0063】
本技術にかかる害獣捕獲装置M´は、捕獲空間Sに害獣を捕獲するための囲い罠である。かかる囲い罠の内部には、図13および図14に示す逃避防止環状空間500を形成している。
すなわち、害獣捕獲装置M´は、捕獲空間Sを囲うように地面に対して鉛直状に立設した側面部100と、側面部100の上端縁部から捕獲空間S側に延設した捕獲空間天井部200と、捕獲空間天井部200の端縁部から垂設し側面部100との間に一定の空間を保持して側面部100に沿って張り巡らした表面滑動の遮蔽側壁体300と、側面部100及び捕獲空間天井部200並びに遮蔽側壁体300により区画形成された逃避防止環状空間500と、逃避防止環状空間500の下端開放部の中央部および遮蔽側壁体300の下端部近傍に遮蔽側壁体300に沿って環状に張り巡らした通電部400と、を有する。
【0064】
側面部100は、図11に示すように、捕獲空間Sの外周側面を形成するものであり、複数枚のパネルユニット110を併設することで平面視略方形状に構成されている。
【0065】
パネルユニット110は、地面に立設した左右支柱111,111と、左右支柱111,111の上下端部にそれぞれ架設した上下横杆112,112と、左右支柱111,111および上下横杆112,112により形成された開口部を閉塞するように左右支柱111,111および上下横杆112,112に張設した金網113を有する。
【0066】
支柱111は、方形平板状に形成された鋼板を短手方向略中央部から直交状に屈曲した断面略“L”字状に構成しており、支持フランジと連結フランジを有する。各パネルユニット110は、一方のパネルユニット110の連結フランジと他方のパネルユニット110の連結フランジをボルト等の締結具で固定することにより連結固定されている。このように構成した左右支柱111,111の上下端部には、それぞれ横杆112,112を架設している。
【0067】
横杆112は、支柱111と同様に方形平板状に形成された鋼板を短手方向略中央部から直交状に屈曲した断面略“L”字状に構成しており、連結フランジと支持フランジとを有する。横杆112は、支柱111の支持フランジに横杆112の支持フランジをボルト等の締結具で連結固定している。左右支柱111,111の上端部に架設した横杆112は、連結フランジを介して後述する捕獲空間天井部200と連結している。
【0068】
パネルユニット110は、支柱111と横杆112とにより正面視略方形状の枠体に形成されており、左右支柱111,111と左右支柱111,111の上下端部間に架設した横杆112,112とで囲繞した開口部を有する。開口部には、斜め格子状に編成した金網113を張設している。金網113は、支柱111を構成する支持フランジと横杆112を構成する支持フランジに係止している。
【0069】
側面部100は、方形状に形成されたパネルユニット110を複数枚隙間なく併設することにより、環状に形成している。具体的には、一方のパネルユニット110を構成する支柱111と、他方のパネルユニット110を構成する支柱111をボルト等の締結具で連結固定することにより、側面部100全体が平面視において略方形状に形成される。このようにパネルユニット110を複数枚隙間なく併設して側面部100を形成することにより、側面部100の内側に害獣を捕獲するための捕獲空間Sを形成できる。
【0070】
このように構成した側面部100の上端部には、捕獲空間S側に突出した捕獲空間天井部200を設けている。
捕獲空間天井部200は、図11図12、および図14に示すように、捕獲空間Sの上方に位置し、捕獲空間Sの天井部を構成するものである。捕獲空間天井部200は、側面部100の上端部から捕獲空間S側に延設した傾斜部210と、平面視において捕獲空間天井部200の略中央部に設けた誘い開口部211を有する。
【0071】
傾斜部210は、複数枚のパネルユニット212を隙間なく併設することにより側面部100の上端縁部全体に渡り設けられている。傾斜部210は、側面部100の上端縁部から捕獲空間S側に斜め上方に向けて延設しており、正面視において、略円錐台状に形成されている。パネルユニット212は、側面部100を構成する上側の横杆112に係止した連結杆213と、連結杆213の両端部に連結した支持杆214,20cと、支持杆214の先端部に架設した横杆215と、を有する。パネルユニット212は、連結杆213と支持杆214、および横杆215により開口部を形成し、開口部を閉塞するように連結杆213と支持杆214、および横杆215に金網216を張設している。
【0072】
このように構成したパネルユニット212は、図14に示すように、鉛直面に対して捕獲空間S側に傾斜角度α傾倒して設けられている。本実施形態において、パネルユニット212の傾斜角度αは、捕獲空間S側に約70度傾斜して設けられている。このように構成したパネルユニット212の先端部には、誘い開口部211を有する。
【0073】
誘い開口部211は、側面部100により形成された捕獲空間Sに害獣が侵入するための害獣の侵入口として機能しており、隙間なく併設したパネルユニット212の横杆215により、平面視において略方形状に形成されている(図12参照)。誘い開口部211を形成するパネルユニット212の横杆215には、遮蔽側壁体300を垂設している。
【0074】
遮蔽側壁体300は、図13および図14に示すように、表面滑動で軽量なアルミニウム板で構成している。遮蔽側壁体300は、パネルユニット212の横杆215に垂設することにより、側面部100を構成するパネルユニット110から一定距離離隔して設けられている。すなわち、遮蔽側壁体300は、パネルユニット212の傾斜角度αおよび支持杆214の全長に応じて側面部100のパネルユニット110から一定距離離隔して設けられる。
【0075】
また、遮蔽側壁体300は、高さを50cm~70cm、最適には約60cmとしており、パネルユニット110から50cm~70cm、最適には約60cm離隔して設けられている。
【0076】
このように遮蔽側壁体300を軽量なアルミニウム板で形成することで捕獲空間天井部200にかかる重量負荷を軽減できる。また、害獣、特に猿などが遮蔽側壁体300の外側面を登ろうとしてもアルミニウム板の滑動機能により遮蔽側壁体300に指を引掛けることができず登ることができない。
【0077】
さらには、遮蔽側壁体300は、高さを50cm~70cm、最適には約60cmとすると共に、側面部100を構成するパネルユニット110から50cm~70cm、最適には約60cm離隔して設けることにより、害獣、特に猿が侵入しやすい逃避防止環状空間500を形成できる。
【0078】
逃避防止環状空間500は、図14に示すように、捕獲空間Sの上方であって、側面部100と捕獲空間天井部200と遮蔽側壁体300で区画され、下部を開放状態に形成した空間である。逃避防止環状空間500の下端開放部510の略中央部には、側面部100に沿って環状に張り巡らした通電部400を設けている。
【0079】
通電部400は、図13および図14に示すように、側面部100のパネルユニット110から捕獲空間S側に水平状に突設した支持杆410と、支持杆410の中途部に垂設した碍子420と、碍子420に挿通した電線430と、支持杆410の先端部から鉛直上方向に屈曲伸延した鉛直杆440を有する。
【0080】
支持杆410は、側面部100と捕獲空間天井部200との連結部より下方であって、側面部100を構成するパネルユニット110の上下中途部に突設している。支持杆410は、断面略方形状の金属杆であって、パネルユニット110を構成する左右支柱111,111間の略中央部に設けられている。すなわち、支持杆410は、隣設する支持杆410と一定間隔離隔した状態で害獣捕獲装置Mの側面部100に沿って複数設けられている。支持杆410は、長手方向略中央部および先端部近傍に碍子420を垂設している。換言すると、碍子420は、下端開放部510の略中央部、および遮蔽側壁体300の下端部近傍に設けられている。
【0081】
碍子420は、略平板状に形成された陶磁器で構成しており、下端部近傍に略円状の支持孔421を有する。支持孔421には、電線430を挿通している。このように構成した通電部400の支持杆410を側面部100のパネルユニット110に一定間隔で設け、支持杆410に垂設した碍子420に電線430を挿通することで、逃避防止環状空間500の開口部520の一部を電線430で閉塞できる。
【0082】
また、支持杆410の先端部には、鉛直杆440を連結している。鉛直杆440は、支持杆410の先端部から上方に屈曲伸延している。鉛直杆440は、支持杆410と同様に断面方形状の金属杆であって、捕獲空間S側に位置する鉛直面部を前述の遮蔽側壁体300の裏面に固定している。
【0083】
このように通電部400は、側面部100のパネルユニット110に突設した支持杆410と、支持杆410の先端部から上方に屈曲伸延した鉛直杆440を遮蔽側壁体300の裏面に固定した構成により、支持杆410に害獣が掴まったとしても、変態することなく逃避防止環状空間500の開口部520の一部を閉塞した状態に電線430を維持できる。
【0084】
害獣捕獲装置Mは上述のように構成されており、側面部100のパネルユニット110に張設した金網113を格子状に構成しつつ、捕獲空間天井部200も側面部100と同様に傾斜部210のパネルユニット212に張設した金網216を斜め格子状に構成したことにより、害獣捕獲装置Mの外側面を害獣が容易に登ることができる。
【0085】
捕獲空間天井部200の傾斜部210の外側面を登り、開口部211に到達した害獣は、開口部211を介して捕獲空間Sに侵入する。本実施形態において、捕獲空間天井部200の傾斜部210を鉛直面に対して傾斜角度α(70度)捕獲空間S側に傾斜した状態で設けることにより、開口部211に到達した害獣(サル)は、開口部211の縁部から容易にジャンプして捕獲空間Sに侵入できる。
【0086】
仮に、傾斜部210の鉛直面に対する傾斜角度αを70度よりも小さくすると、傾斜部210が鉛直姿勢に近くなり、捕獲空間天井部200と側面部100の連結部、すなわち、パネルユニット212の連結杆213と横杆112との連結部分への負荷が小さくなり、害獣捕獲装置Mの破損を防止できる。その反面、開口部211から捕獲空間Sの地面Gまでの距離が長くなり、害獣が誘い開口部211から捕獲空間Sに侵入することをためらう虞がある。
【0087】
また、反対に捕獲空間天井部200たる傾斜部210の傾斜角度αを70度よりも大きくすると、捕獲空間Sに侵入を試みようと開口部211に集まった害獣の重量により連結杆213と横杆112との連結部にかかる負荷が大きくなり、側面部100と捕獲空間天井部200との連結部が破損する虞がある。
【0088】
このように、捕獲空間天井部200の傾斜角度αを鉛直面に対して70度傾倒して構成することにより、害獣がためらうことなく捕獲空間Sに侵入できる。また、捕獲空間Sから害獣が逃走せんとする際には、側面部100と捕獲空間天井部200と遮蔽側壁体300とで閉塞した逃避防止環状空間500に害獣(サル)が侵入できる空間を確保するとともに、遮蔽側壁体300の外側面を伝って開口部211から逃走を図ろうとしても遮蔽側壁体300の下端部近傍に設けた通電部400を経由して遮蔽側壁体300に接近することとなるため、逃走を図った害獣は必ず通電部400で感電することとなり捕獲空間Sから脱出することができない。
【0089】
また、捕獲空間Sから逃走しようとする害獣を電線430で感電して逃走できないようにすることで、捕獲空間Sに捕獲された他の害獣が側面部100を登り開口部211から逃走を図らんとすれば電線430で感電することを印象付け学習させて側面部100を登ることを抑制させる。
【0090】
このように捕獲空間Sに大量の害獣を捕獲した場合においても、かかる害獣の学習によって大量の害獣が側面部100に掴まることを抑制して害獣捕獲装置M´の構成部材が破損する虞を可及的に低減できる。
【0091】
また、側面部100と捕獲空間天井部200、および遮蔽側壁体300とで形成した逃避防止環状空間500と、遮蔽側壁体300の下端部近傍に設けた通電部400により、逃避防止環状空間500の下部の下端開放部510を一部閉塞して逃避防止環状空間500への害獣の侵入を防止することができる。これにより、捕獲空間天井部200に害獣が捕まることで生起される側面部100と捕獲空間天井部200との連結部への負荷を低減して、この連結部が破損する虞を可及的に低減できる。
【0092】
また、本技術の第2の実施の形態において、平面視において略方形状に形成した害獣捕獲装置Mについて例示したが、本技術における害獣捕獲装置Mは、図15および図16に示すように、平面視において略円形状に形成されていてもよい。
すなわち、害獣捕獲装置M´を構成する側面部100のパネルユニット110の横杆112を円弧状に形成し、パネルユニット110を複数枚隙間なく併設するとともに、捕獲空間天井部200のパネルユニット212の連結杆213および横杆215を円弧状に形成しつつ、横杆215に垂設した遮蔽側壁体300を横杆215と同様に円弧状に形成することにより、側面部100と捕獲空間天井部200と遮蔽側壁体300とで逃避防止環状空間500を形成でき、捕獲空間Sに侵入した害獣の逃走を防止できる。
【0093】
また、逃避防止環状空間500の下端部に通電部400を設け、逃避防止環状空間500の開口部520の略中央部および遮蔽側壁体300の下端部近傍であって側面部100のパネルユニット110に沿って電線430を張り巡らせることにより、害獣が捕獲空間Sから逃走することを確実に防止できる。
【0094】
このように本技術の第2の実施の形態では、害獣捕獲装置M´の形態に関わらず、平面視において、略方形状でも略円形状でも同様に捕獲空間Sに侵入した害獣の逃走を逃避防止環状空間500と通電部400により確実に防止できる。
【0095】
また、本技術の第2の実施の形態において、パネルユニット110に張設した金網113および傾斜部210に張設した金網216を弾性力を有する捕獲網体1で構成されていてもよい。このように金網113,216を弾性力を有する捕獲網体1で構成することにより、サルが面白がってパネルユニット110を登り、誘い開口部211から捕獲空間Sにサルを誘導でき、サルの捕獲効率を向上できる。
【0096】
なお、本技術の第2の実施の形態における害獣捕獲装置Mは、以下のような構成を取ることができる。
(1)害獣を捕獲するための捕獲空間を有する害獣捕獲装置であって、
捕獲空間を囲繞する側面部と、
側面部の上端縁部から捕獲空間に向けて略横方向に延設した上面中央部開放のドーナツ状の捕獲空間天井部と、
捕獲空間天井部の内端縁部から側面部との間に一定の空間を保持して側面部に沿って張り巡らし垂設した表面滑動の遮蔽側壁体と、
捕獲空間天井部と外周の側面部と遮蔽側壁体とで区画形成された下方開放の環状の逃避防止環状空間と、
逃避防止環状空間の下端開放部略中央部に環状に張り巡らした通電部と、を有することを特徴とする害獣捕獲装置。
(2)表面滑動の遮蔽側壁体はアルミニウム板とし、高さを50cm~70cm、最適には約60cmとすると共に、逃避防止環状空間の水平方向の厚みを50cm~70cm、最適には約60cmとする前記(1)に記載の害獣捕獲装置。
【0097】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0098】
1 捕獲網体
10 中央部
11 周縁部
12 撚り金属線
12aループ部
13 1ユニット金属線
14 ユニット連結部
14a金属線固定孔部
14b厚肉部
14c金属線挿通孔部
15 隣接連結部
15a金属線固定孔部
15b厚肉部
15c金属線挿通孔部
16 心鋼
16a心線
16b側線
17 ストランド
17a心線
17b側線
2 中央係止用ポール
3 周辺係止用ポール
30 周面
4 ソレノイド
40 プランジャ
5 網体支持具
50 パイプ
51 ワイヤーロープ
52 ポール係合部
6 網体固定部
60 嵌合溝部
61 ロック機構
62 回動軸部
63 規制片
100 側面部
110 パネルユニット
111 支柱
112 横杆
113 金網
200 捕獲空間天井部
210 傾斜部
211 開口部
212 パネルユニット
213 連結杆
214 支持杆
215 横杆
216 金網
300 遮蔽側壁体
400 通電部
410 支持杆
420 碍子
421 支持孔
430 電線
440 鉛直杆
500 逃避防止環状空間
510 下端開放部
520 開口部
R リモコン
S 侵入捕獲空間
M,M´ 害獣捕獲装置
P ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16