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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102775
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
F15B15/14 A
F15B15/14 380B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023006899
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】落部 奨之
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA12
3H081CC23
3H081DD32
(57)【要約】
【課題】本発明は、1つの連通孔から1つの収容室に外部からの流体を送り込む構成によって複数のピストン部を移動させることができるシリンダ装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のシリンダ装置10は、第1ピストン部32及び第2ピストン部34を含むピストン部30と、連通孔CH1が形成されている筒状壁222及び底壁224を有し、ピストン部30とで連通孔CH1を介して送り込まれる流体を収容する収容室CSを形成するシリンダ部20と、を備え、連通孔CH1を介して外部から収容室CSに流体が送り込まれると、底壁224にそれぞれの静荷重を作用させて接触していた第1ピストン部32及び第2ピストン部34を、それぞれの静荷重を底壁224に対する対向面積で除した静荷重圧が小さい順に底壁224から離れた位置に移動させる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿う貫通孔が形成されている第1ピストン部、及び、前記貫通孔に嵌め込まれ、前記第1ピストン部に対し前記軸方向に沿って相対移動する第2ピストン部を含むピストン部と、
外部と内部とを連通する連通孔が形成されている筒状壁、及び、前記筒状壁の一端側を塞ぐ底壁を有し、自身に対し前記第1ピストン部が前記軸方向に沿って相対移動するように内部に前記第1ピストン部が嵌め込まれているシリンダ部であって、前記ピストン部とで前記連通孔を介して外部から送り込まれる流体を収容する収容室を形成するシリンダ部と、
を備え、
前記連通孔を介して外部から前記収容室に流体が送り込まれると、前記底壁にそれぞれの静荷重を作用させて接触していた前記第1ピストン部及び前記第2ピストン部を、それぞれの静荷重を前記底壁に対するそれぞれの対向面積で除した静荷重圧が小さい順に前記底壁から離れた位置に移動させる、
シリンダ装置。
【請求項2】
前記第1ピストン部の静荷重圧は、前記第2ピストン部の静荷重圧よりも小さく設定されている、
請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記筒状壁の内周面には、前記軸方向に沿って移動する前記第1ピストン部に接触して前記第1ピストン部の前記軸方向への移動を制限する段差面が形成されており、
前記第2ピストン部の静荷重圧は、前記連通孔を介して外部から前記収容室に流体が送り込まれて前記第1ピストン部が前記底壁との接触位置から前記段差面との接触位置まで移動する期間、前記第2ピストン部が前記第1ピストン部とともに移動するように設定されている、
請求項2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記底壁に対する前記第1ピストン部及び前記第2ピストン部の対向面の一方又は両方には、前記連通孔を介して外部から前記収容室に送り込まれる流体が入り込む、少なくとも1つ以上の凹みが形成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシリンダ装置。
【請求項5】
更に、前記第1ピストン部及び前記第2ピストン部の一方又は両方を前記底壁に押し付ける、少なくとも1つ以上の押し付け部を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシリンダ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その図1図2等に示されるように、第1ピストン部と、第1ピストン部の軸方向の延長線上に配置されている第2ピストン部とを備え、各ピストン部のピストンロッド(第1ピストンロッド及び第2ピストンロッド)を軸方向に移動させる多段シリンダ装置が開示されている。
具体的に、この多段シリンダ装置は、第1シリンダチューブと、第1シリンダチューブ内に設けられ、内部に空洞を有する第1ピストンと、第1ピストンの空洞と連通して形成された空洞を有しかつ第1ピストンと一体に形成された第1ピストンロッドと、第1ピストンの空洞及び第1ピストンロッドの空洞からなる小シリンダチューブと、第1シリンダチューブと異なる第2シリンダチューブと、第2シリンダチューブ内に設けられた第2ピストンと、第2ピストンと一体に形成され、前記小シリンダチューブ内を移動する第2ピストンロッドと、を備えている(特許文献1の請求項1、図1等参照)。
なお、この多段シリンダ装置は、各ピストン部を軸方向に移動させるための各収容室(第1シリンダチューブ内の空洞、第2シリンダチューブ内の空洞)に、それぞれに連通する各注入部を介して外部からの空気を送り込む構成を採用している(特許文献1の図2図4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-187089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている多段シリンダ装置は、2つのピストン部を多段伸縮構造とすることで小型化を実現できている。しかしながら、各ピストン部を軸方向に移動させる作用力を発生させる収容室及び当該収容室に外部からの空気を送り込む注入部がピストン部毎に備えられている。そのため、この多段シリンダ装置は、機械構成が複雑であり、この技術思想のもとで更に小型化するには限界がある。
【0005】
本発明は、1つの連通孔から1つの収容室に外部からの流体を送り込む構成によって複数のピストン部を移動させることができるシリンダ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様のシリンダ装置は、
軸方向に沿う貫通孔が形成されている第1ピストン部、及び、前記貫通孔に嵌め込まれ、前記第1ピストン部に対し前記軸方向に沿って相対移動する第2ピストン部を含むピストン部と、
外部と内部とを連通する連通孔が形成されている筒状壁、及び、前記筒状壁の一端側を塞ぐ底壁を有し、自身に対し前記第1ピストン部が前記軸方向に沿って相対移動するように内部に前記第1ピストン部が嵌め込まれているシリンダ部であって、前記ピストン部とで前記連通孔を介して外部から送り込まれる流体を収容する収容室を形成するシリンダ部と、
を備え、
前記連通孔を介して外部から前記収容室に流体が送り込まれると、前記底壁にそれぞれの静荷重を作用させて接触していた前記第1ピストン部及び前記第2ピストン部を、それぞれの静荷重を前記底壁に対するそれぞれの対向面積で除した静荷重圧が小さい順に前記底壁から離れた位置に移動させる。
【0007】
第2態様のシリンダ装置は、
第1態様のシリンダ装置において、
前記第1ピストン部の静荷重圧は、前記第2ピストン部の静荷重圧よりも小さく設定されている。
【0008】
第3態様のシリンダ装置は、
第2態様のシリンダ装置において、
前記筒状壁の内周面には、前記軸方向に沿って移動する前記第1ピストン部に接触して前記第1ピストン部の前記軸方向への移動を制限する段差面が形成されており、
前記第2ピストン部の静荷重圧は、前記連通孔を介して外部から前記収容室に流体が送り込まれて前記第1ピストン部が前記底壁との接触位置から前記段差面との接触位置まで移動する期間、前記第2ピストン部が前記第1ピストン部とともに移動するように設定されている。
【0009】
第4態様のシリンダ装置は、
第1~第3態様のいずれか一態様のシリンダ装置において、
前記底壁に対する前記第1ピストン部及び前記第2ピストン部の対向面の一方又は両方には、前記連通孔を介して外部から前記収容室に送り込まれる流体が入り込む、少なくとも1つ以上の凹みが形成されている。
【0010】
第5態様のシリンダ装置は、
第1~第3態様のいずれか一態様のシリンダ装置において、
更に、前記第1ピストン部及び前記第2ピストン部の一方又は両方を前記底壁に押し付ける、少なくとも1つ以上の押し付け部を備える。
【発明の効果】
【0011】
第1態様のシリンダ装置は、1つの連通孔から1つの収容室に外部からの流体を送り込む構成によって複数のシリンダ部を移動させることができる。
【0012】
第2態様のシリンダ装置は、第1ピストン部を第2ピストン部よりも先に又は同時に移動させることができる。
【0013】
第3態様のシリンダ装置は、第1ピストン部を段差面との接触位置まで移動させてから第2ピストン部を更に移動させることができる。
【0014】
第4態様のシリンダ装置は、第1ピストン部又は2ピストン部の対向面が平面である場合に比べて、第1ピストン部又は第2ピストン部を効率的に移動させることができる。
【0015】
第5態様のシリンダ装置は、押し付け部を備えることで、第1ピストン部又は第2ピストン部の移動速度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態(以下、本実施形態という。)のシリンダ装置の図であって、ピストン部が最小位置で停止している場合の斜視図である。
図2図1のシリンダ装置を図1のII-II切断線で切断した断面図(縦断面図)である。
図3】本実施形態のシリンダ装置の図であって、ピストン部が最小位置から移動して中間位置に到達した場合の断面図である。
図4】本実施形態のシリンダ装置の図であって、ピストン部が中間位置から移動して最大位置に到達した場合の断面図である。
図5】変形例のシリンダ装置における、本実施形態の図2に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪概要≫
以下、本実施形態及びその複数の変形例について説明する。まず、本実施形態について説明する。次いで、複数の変形例について説明する。本明細書では、異なる実施形態等で参照する各図面において、同等の機能を有する構成要素に対して同じ符号又は同等の符号を付する点に留意されたい。
【0018】
≪本実施形態≫
最初に本実施形態のシリンダ装置10(図1図2等参照)における機能及び構成について説明し、次いで本実施形態のシリンダ装置10の動作について説明し、最後に本実施形態のシリンダ装置10の効果について説明する。
【0019】
<本実施形態のシリンダ装置10の機能及び構成>
図1は、本実施形態のシリンダ装置10の図であって、ピストン部30が最小位置で停止している場合の斜視図である。図2は、図1のII-II切断線で切断したシリンダ装置10の断面図である。図3は、ピストン部30が最小位置から移動して中間位置に到達した場合のシリンダ装置10の断面図である。図4は、ピストン部30が中間位置から移動して最大位置に到達した場合のシリンダ装置10の断面図である。ここで、本実施形態のシリンダ装置10は、一例として、図中の一点鎖線CLを軸(軸CL)とする略対称形状である。最小位置、中間位置及び最大位置の技術的意義については後述する。
【0020】
本実施形態のシリンダ装置10は、シリンダ部20と、ピストン部30とを備える。
ピストン部30は、シリンダ部20に対し軸方向の定められた移動範囲を往復移動するように構成されている。また、ピストン部30は、軸CLを軸として配置される複数のピストン部(一例として、第1ピストン部32及び第2ピストン部34)を有しており、第1ピストン部32と第2ピストン部34とは、伸縮型の釣り竿のように、一方が他方に対して相対移動可能に構成されている(図2図4参照)。すなわち、本実施形態のシリンダ装置10は、複数のピストン部が軸方向に伸縮する多段シリンダ装置である。
【0021】
〔シリンダ部〕
シリンダ部20は、図1図2等に示されるように、一例として、円筒状の部材である。シリンダ部20は、有底筒部22と、円筒部24と、第1ピストン用エアベアリングAB1とを有し、その内部にピストン部30が嵌め込まれている。シリンダ部20は、ピストン部30とで外部から送り込まれる流体を収容する収容室CSを形成するように構成されている(図2図4参照)。
【0022】
(有底筒部)
有底筒部22は、図2図3等に示されるように、筒状壁222と、底壁224とを有する。
筒状壁222には、外部と内部とを連通する連通孔CH1が形成されている。連通孔CH1には、一例として、外部から収容室CSに圧縮空気(流体の一例)を送り込むコンプレッサの排出部(図示省略)が連結されるようになっている。
底壁224は、一例として、円盤状で、筒状壁222の一端側に配置されている。底壁224は、筒状壁222の一端側の内周面に全周に亘って形成された凹みに嵌め込まれたOリングOR1を、筒状壁222とで加圧しながら筒状壁222の一端側の開口を塞いでいる。
なお、底壁224の他端面における径方向の外側の部分には、後述する第1ピストン322の底面322A及び第2ピストン342の底面342Aに接触して、ピストン部30と底壁224(有底筒部22)とで空間を形成するためのスペーサSSが設けられている。この空間には、連通孔CH1を介して前述のコンプレッサ(図示省略)から圧縮空気が送り込まれるように構成されている。この空間は、圧縮空気の流入量によりピストン部30を移動させることで、その容積が変化するが、この空間が前述の収容室CSに相当する。
【0023】
(円筒部)
円筒部24は、図1図2等に示されるように、筒状壁222と同じ外径を有し、両端が開口している円筒である。
円筒部24は、筒状壁222(又は有底筒部22)の他端側に配置され、筒状壁222の他端のリング面に全周に亘って形成された凹みに嵌め込まれたOリングOR2を、筒状壁222とで加圧しながら筒状壁222との繋ぎ目を塞いでいる。また、円筒部24は、筒状壁222との境界の内周面に周方向の全周に亘る凹みを形成して、当該凹みに嵌め込まれるリング板RBを、筒状壁222とで把持している。なお、図2図4に示されるように、リング板RBの内径は、筒状壁222の内径よりも小さく設定されているため、リング板RBの一部は、筒状壁222の内周面よりも内側に(軸CL側)にはみ出している。そのため、リング板RBは、筒状壁222の内周面に対して段差を形成している。ここで、リング板RBにおける軸方向の一端側を向く面を段差面RB1とする。
また、円筒部24には、外部と内部とを連通する連通孔CH2が形成されている。連通孔CH2は、外部から円筒部24の内側に圧縮空気を送り込むコンプレッサの排出部(図示省略)が連結されるようになっている。
【0024】
(第1ピストン用エアベアリング)
第1ピストン用エアベアリングAB1は、円筒形状を有し、円筒部24の内周面のほぼ全体に嵌め込まれている(図2図4参照)。第1ピストン用エアベアリングAB1には、連通孔CH2を介して前述のコンプレッサから排出される圧縮空気が送り込まれて、後述する第1ピストンロッド324のベアリングとして機能する。
【0025】
〔ピストン部〕
ピストン部30は、図2図4に示されるように、一例として、第1ピストン部32と、第2ピストン部34とを有している。
【0026】
(第1ピストン部)
第1ピストン部32は、図2図4に示されるように、シリンダ部20の内部に嵌め込まれて配置されている。第1ピストン部32には、軸CLに沿って貫通する貫通孔THが形成されている。第1ピストン部32は、第1ピストン322と、第1ピストンロッド324と、第2ピストン用エアベアリングAB2とを有している。
第1ピストン322は、その中央に貫通孔THが形成されているリング状の円盤である。第1ピストン322は、その外径が筒状壁222の内径と同じ寸法(ただし、-公差)に設定され、軸方向の定められた範囲を移動可能となるように筒状壁222の内部に嵌め込まれている。ただし、前述のように第1ピストン322の外径が筒状壁222の内径と同じ寸法の設定ではなく、第1ピストン322の外径は筒状壁222の内径よりも小さく設定してもよい。
第1ピストンロッド324は、その中央に貫通孔THが形成されている長尺状の筒である。第1ピストンロッド324は、図2図4に示されるように、第1ピストン322の他端面上に配置されている。本実施形態では、第1ピストンロッド324は、一例として、第1ピストン322と一体的に形成されている。第1ピストンロッド324の外径は、第1ピストン322の外径、リング板RBの内径及び円筒部24の内径よりも小さく設定されている。
第1ピストンロッド324における軸方向の他端側の部分には、外部と内部とを連通する連通孔CH3が形成されている。連通孔CH3は、外部から第1ピストンロッド324の内側(すなわち、貫通孔TH内の内側)に圧縮空気を送り込むコンプレッサの排出部(図示省略)が連結されるようになっている。また、第1ピストンロッド324の内周面における、連通孔CH3が形成されている部分よりも軸方向の一端側の部分には、周方向の全周に亘って内側に突出するリング状の突起PJが形成されている。そのため、突起PJは、第1ピストンロッド324の内周面における突起PJよりも軸方向の一端側の部分に対して段差を形成している。ここで、突起PJにおける軸方向の一端側を向く面を段差面PJ1とする。
【0027】
(第2ピストン用エアベアリング)
第2ピストン用エアベアリングAB2は、円筒形状を有し、第1ピストンロッド324の内周面における他端側の部分に、突起PJに位置決めされて嵌め込まれている(図2図4参照)。第2ピストン用エアベアリングAB2には、連通孔CH3を介して前述のコンプレッサから排出される圧縮空気が送り込まれて、後述する第2ピストンロッド344のベアリングとして機能する。
【0028】
(第2ピストン部)
第2ピストン部34は、図2図4に示されるように、第1ピストン部32の第1ピストンロッド324の内部(貫通孔TH)に嵌め込まれている。そして、第2ピストン部34は、第1ピストン部32に対して、軸方向に相対移動可能とされている。
第2ピストン部34は、第2ピストン342と、第2ピストンロッド344と、雄ねじMSとを有している。第2ピストン342と、第2ピストンロッド344とは、図2図4に示されるように、軸方向の一端側から他端側にこれらの記載順で配置され、雄ねじMSと第2ピストンロッド344とが第2ピストン342を挟んでねじ締めされて一体的に固定されている。
第2ピストン342は、その外径が第1ピストン322及び第1ピストンロッド324の内径と同じ寸法(ただし、-公差)に設定され、軸方向の定められた範囲を移動可能となるように第1ピストン322及び第1ピストンロッド324の内部に嵌め込まれている。ただし、前述のように第2ピストン342の外径が第1ピストン322及び第1ピストンロッド324の内径と同じ寸法の設定ではなく、第2ピストン342の外径は第1ピストン322及び第1ピストンロッド324の内径よりも小さく設定してもよい。
第2ピストンロッド344は、図2に示されるように、軸方向の一端側で第1ピストン322と第2ピストン342とがスペーサSSに接触している状態において、第2ピストン用エアベアリングAB2を貫通している。そのため、第2ピストンロッド344の外径は、第2ピストン用エアベアリングAB2の内径よりも小さく設定されている。
【0029】
以上が、本実施形態のシリンダ装置10の機能及び構成についての説明である。
【0030】
<本実施形態のシリンダ装置の動作>
次に、本実施形態のシリンダ装置10の動作について、図2図4を参照しながら説明する。以下、シリンダ装置10は、一例として、軸方向の一端側を下方、他端側を上方に向けて配置されているとして説明する。
【0031】
動作開始前の時点では、シリンダ装置10を構成する、シリンダ部20と、ピストン部30(第1ピストン部32及び第2ピストン部34)とは、互いに、図2に示されるような位置の関係を有している。すなわち、第1ピストン部32の第1ピストン322と、第2ピストン部34の第2ピストン342とは、それぞれ、シリンダ部20の底壁224のスペーサSSに接触している。この状態における、シリンダ部20に対するピストン部30の位置を、前述の最小位置という。ここで、第1ピストン部32の質量をM1(kg)、第2ピストン部34の質量をM2(kg)、重力加速度をg(m/s)とすると、第1ピストン部32は底壁224に対しM1×g(kg・m/s)の静荷重を作用させ、第2ピストン部34は底壁224に対しM2×g(kg・m/s)の静荷重を作用させている。
【0032】
この状況のもと、連通孔CH1、CH2、CH3に連結されている各コンプレッサは、各連通孔CH1、CH2、CH3を介して、収容室CS、第1ピストン用エアベアリングAB1及び第2ピストン用エアベアリングAB2に圧縮空気の注入を開始する。
【0033】
その結果、第1ピストンロッド324は、第1ピストン用エアベアリングAB1により負荷が低減された状態で支持され、第2ピストンロッド344は、第2ピストン用エアベアリングAB2により負荷が低減された状態で支持される。
【0034】
これに対して、連通孔CH1を介して収容室CSに圧縮空気が注入されると、第1ピストン部32及び第2ピストン部34は、それぞれ、軸方向の一端側(下方側)から圧縮空気により加圧されて、他端側(上方側)に移動する。ここで、第1ピストン322の底面322A(一例として平面)の面積をS1(m)、第2ピストン342の底面342A(一例として平面)の面積をS2(m)とする。そうすると、静荷重がM1×g(kg・m/s)の第1ピストン部32は、底面322Aに、(M1×g)/S1(kg・m/s/m)を超える圧力が作用すると上方に移動する。また、静荷重がM2×g(kg・m/s)の第2ピストン部34は、底面342Aに、(M2×g)/S2(kg・m/s/m)を超える圧力が作用すると上方に移動する。それぞれの移動速度は、それぞれの質量の大きさ及び底面の大きさによる(質量が大きいほど遅く又は移動し難く、底面の面積が大きいほど速く又は移動し易い)。
【0035】
ここで、図3は、第1ピストン部32の静荷重圧(M1×g)/S1(kg・m/s/m)と、第2ピストン部34の静荷重圧(M2×g)/S2(kg・m/s/m)とが同じ場合、又は、第1ピストン部32の静荷重圧(M1×g)/S1(kg・m/s/m)が第2ピストン部34の静荷重圧(M2×g)/S2(kg・m/s/m)よりも小さい場合に、起こる状態である。この場合、第1ピストン部32は、第1ピストン322がリング板RBの段差面RB1に接触することでより上方への移動が制限されている。この場合のシリンダ部20に対するピストン部30の位置を、前述の中間位置(底壁224から離れた位置の一例)という。
【0036】
さらに、連通孔CH1を介してコンプレッサからの圧縮空気が注入されると、第2ピストン部34は、段差面RB1により移動が制限されている第1ピストン部32に対して更に上方に移動する。そして、さらに上方に移動した第2ピストン部34は、図4に示されるように、第2ピストン342が突起PJの段差面PJ1に接触することでより上方への移動が制限される。この場合のシリンダ部20に対するピストン部30の位置を、前述の最大位置(底壁224から離れた位置の他の一例)という。
【0037】
以上が、ピストン部30が最小位置の状態から中間位置の状態を経由して最大位置の状態に変化する動作についての説明である。
なお、最大位置の状態から最小位置の状態に変化する動作は、連通孔CH1から収容室CSの内部の圧縮空気をリークすればよい。
【0038】
以上が、本実施形態のシリンダ装置10の動作についての説明である。
【0039】
<本実施形態のシリンダ装置の効果>
次に、本実施形態のシリンダ装置10の効果について図面を参照しながら説明する。
【0040】
〔第1の効果〕
前述の先行技術文献に開示されている多段シリンダ装置は、その図2図4等に示されるように、各ピストン部を軸方向に移動させる作用力を発生させる収容室及び当該収容室に外部からの空気を送り込む注入部がピストン部毎に備えられている。つまり、この多段シリンダ装置は、機械構成が複雑である。
これに対して、実施形態のシリンダ装置10は、図2図4に示されるように、複数のピストン部(第1ピストン部32及び第2ピストン部34)を移動させるための作用力を発生させるための収容室CS及び連通孔CH1は第1ピストン部32及び第2ピストン部34に共通である(複数の収容室CS及び連通孔CH1を必要としない)。
したがって、本実施形態のシリンダ装置10は、1つの連通孔から1つの収容室に外部からの流体を送り込む構成によって複数のシリンダ部(第1ピストン部32及び第2ピストン部34)を移動させることができる。これに伴い、本実施形態のシリンダ装置10は、前述の先行技術文献に開示されている多段シリンダ装置に比べて、小型化又は低コスト化ができる。
【0041】
〔第2の効果〕
また、本実施形態の場合、前述の動作についての説明のとおり、各ピストン部(第1ピストン部32及び第2ピストン部34)の質量M1、M2及び底面322A、342Aの面積S1、S2(面積S1、S2は、各ピストン部の底壁224に対向する対向面積)の設定により、いずれのピストン部を先に移動させるかを設定することができる。
そのため、例えば、(1)第1ピストン部32の質量M1が第2ピストン部34の質量M2よりも小さく、かつ、(2)第1ピストン部32の底面322Aの面積S1が第2ピストン部34の底面342Aの面積S2よりも大きくなるように設定した場合、第1ピストン部32を第2ピストン部34よりも先に移動させることができる。また、この逆に設定した場合、第2ピストン部34を第1ピストン部32よりも先に移動させることができる。
以上のとおりであるから、本実施形態のシリンダ装置10は、簡単な設定によって、第1ピストン部32(又は第2ピストン部34)を第2ピストン部34(又は第1ピストン部32)よりも先に又は同時に移動させることができる。
【0042】
〔第3の効果〕
また、本実施形態の場合、図3及び図4に示されるように、第1ピストン部32は、第1ピストン322がリング板RBの段差面RB1に接触することでより上方への移動が制限される。
したがって、本実施形態のシリンダ装置10は、第1ピストン部32を段差面RB1との接触位置まで移動させてから第2ピストン部34を更に移動させることができる。
【0043】
以上が本実施形態のシリンダ装置10の効果についての説明である。また、以上が本実施形態についての説明である。
【0044】
≪複数の変形例≫
以上のとおり、本発明の一例について前述の実施形態を参照して説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、後述する複数の変形例も含まれる。
【0045】
前述の実施形態の説明では、収容室CSに流入される流体の一例は圧縮空気(気体)であるとした。しかしながら、収容室CSに流入されて第1ピストン部32及び第2ピストン部34を軸方向の一端側から他端側に加圧することができれば、流体の一例は気体なくてもよい。例えば、流体の一例は、液体その他の流動体であってもよい。
【0046】
また、前述の実施形態の説明では、シリンダ部20は一例として円筒状の部材であるとした(図1図4参照)。しかしながら、シリンダ部20の機能(ピストン部30を嵌め込むこと及びピストン部30とで収容室CSを形成すること)を発揮できれば、その形状は円筒状でなくてもよい。例えば、シリンダ部20の形状は、直方体状等その他の形状であってもよい。
【0047】
また、例えば、前述の実施形態の説明では、各ピストン部(第1ピストン部32及び第2ピストン部34)は、それぞれ、円盤状のピストンと円柱状のピストンロッドとで構成されているとした(図1図4参照)。しかしながら、ピストン部30の機能(軸方向の定められた範囲を移動すること及びシリンダ部20とで収容室CSを形成すること)を発揮できれば、その形状は円柱状等でなくてもよい。例えば、各ピストン部(第1ピストン部32及び第2ピストン部34)の形状は、直方体状等その他の形状であってもよい。
【0048】
また、前述の実施形態の説明では、シリンダ装置10は複数のピストン部を伸縮させる多段シリンダ装置であるとした。そして、具体的には、複数のピストン部は、第1ピストン部32と第2ピストン部34とで構成されるとした(図2図4参照)。しかしながら、シリンダ装置10が備える複数のシリンダ部の数は、3個以上であってもよい。例えば、前述の実施形態における第2ピストン部34を第1ピストン部32のように貫通させ、貫通させた第2ピストン部34の内部に第2ピストン部34に類似する構成の第3ピストン部(図示省略)を配置してもよい。この変形例の場合、本発明の技術的範囲の第1ピストン部及び第2ピストン部を、それぞれ第2ピストン部及び第3ピストン部と当て嵌めて解釈することができる。
【0049】
また、前述の実施形態の説明では、第1ピストン部32及び第2ピストン部34は、それぞれ、第1ピストン用エアベアリングAB1及び第2ピストン用エアベアリングAB2により周面から支持されるとした。しかしながら、これらのベアリング機構は必須の構成でないことは言うまでもない。すなわち、各エアベアリングに換えてボールベアリングにしてもよい。
【0050】
また、前述の実施形態の説明では、各ピストン部(第1ピストン部32及び第2ピストン部34)は、それぞれの質量に起因する静荷重で底壁224に接触するとした。しかしながら、図5に示される変形例のシリンダ装置10Aのように、第1ピストン部32を軸方向の他端側から一端側に押し付けるコイルばねSG1(押し付け部の一例)、第2ピストン部34を軸方向の他端側から一端側に押し付けるコイルばねSG2(押し付け部の他の一例)を構成要素に加えて、静荷重を調整するようにしてもよい。
【0051】
さらに、図5の変形例のシリンダ装置10Aの場合に、コイルばねSG1及びコイルばねSG2の一方のみを構成要素としてもよい。
【0052】
さらに、図5の変形例のシリンダ装置10Aの場合に、コイルばねSG1及びコイルばねSG2の一方又は両方を、収容室CSに配置された引きばね(図示省略)にしてもよい。
【0053】
また、前述の実施形態の説明では、第1ピストン部32及び第2ピストン部34において圧縮空気により圧力を受ける底面322A、342Aは、それぞれ平面であるとした。しかしながら、例えば、底面322A、342Aの一方又は両方に、1つ又は2つ以上の凹み(図示省略)が形成されていてもよい。このように底面322A、342Aに1つまたは2つ以上の凹みが形成されていることで、収容室CSに送り込まれた圧縮空気がこれらの凹みに入り込むことで、各ピストン部を効率的に移動させることができる。
【0054】
以上のとおり、本実施形態及び複数の変形例について説明したが、これらの形態のうちの1つの形態に他の形態の構成要素を置換、付加等した形態も、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
10 シリンダ装置
10A シリンダ装置
20 シリンダ部
22 底筒部
222 筒状壁
224 底壁
24 円筒部
30 ピストン部
32 第1シリンダ部
322 第1ピストン
322A 底面
324 第1ピストンロッド
34 第2ピストン部
342 第2ピストン
342A 底面
344 第2ピストンロッド
AB1 第1ピストン用エアベアリング
AB2 第2ピストン用エアベアリング
CH1 連通孔
CH2 連通孔
CH3 連通孔
CL 軸
CS 収容室
M1 第1ピストン部の質量
M2 第2ピストン部の質量
MS 雄ねじ
OR1 Oリング
OR2 Oリング
PJ 突起
PJ1 段差面
RB リング板
RB1 段差面
S1 対向面積
S2 対向面積
SG1 コイルばね(押し付け部の一例)
SG2 コイルばね(押し付け部の一例)
SS スペーサ
TH 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5