(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102778
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】検出体内蔵型荷重計測盤
(51)【国際特許分類】
G01L 1/22 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
G01L1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023015675
(22)【出願日】2023-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】592040815
【氏名又は名称】木内 学
(72)【発明者】
【氏名】木内 学
【テーマコード(参考)】
2F049
【Fターム(参考)】
2F049BA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】広範囲に渡る作用力や付加荷重の静的・動的挙動の計測を可能とする有用な手法手段を提供する。
【解決手段】所要の形状寸法を有する該盤状基体と該歪検出用柱状基体を組み合わせて該検出体内蔵型荷重計測盤を構成し、加えて、該柱状基体に該歪検出素子を取付け、付加された荷重の下で該盤状基体と同調して変形する該柱状基体の変形を検出し、検出した歪値より該荷重検出盤に作用する全体荷重を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所要の形状寸法を有する金属製盤状基体と該盤状基体に嵌めこんだ複数の金属製歪検出用柱状基体から構成される検出体内蔵型荷重計測盤であり、該盤状基体は所要の外形状と外寸法・厚さ寸法を持つ盤状体であり、所要の円形・楕円形・矩形・多角形などの上下盤面形状を持ち、該盤状基体の該上下盤面の所要の位置に、該盤状基体を厚さ方向に貫通する貫通孔又は所要の深さを持つ底付き孔が所要の数だけ配設されており、それぞれの該貫通孔又は該底付き孔の該盤状基体の盤面に平行な横断面は、円形、矩形、等所要の形状と内寸法を有しており、それぞれの該貫通孔又は該底付き孔には、当該孔と等しい横断面形状と寸法および高さ又は深さを有する該歪検出用柱状基体が嵌め込まれており、該歪検出用柱状基体の本体は円柱状又は矩形柱状又は所要の異形柱状を有しており、加えて、該柱状体の側表面の一部部位が削除されて所要の寸法及び面形状を有する歪検出用の面が形成されており、該歪検出面と該貫通孔又は底付き孔の内壁との間に所要の隙間が確保されており、該隙間を利用して該歪検出面に所要の歪検出素子が貼付け法又は吹付け法又は溶着法又はネジ止め法又は所要の金具固定法を用いて取り付けられており、該盤状基体に対し、その上下盤面に垂直な方向から荷重又は外力が加わると、該盤状基体に厚さ方向の圧縮歪が発生し、同時に、該歪検出用柱状基体および該歪検出素子にも同一水準の圧縮歪が加わり、該圧縮歪が該歪検出素子により検出され、検出された該歪値より、該歪検出用柱状基体に作用する荷重が算出され、算出された該荷重値より、該盤状基体全体に加わる荷重値が理論的に算出されることを特徴とする検出体内蔵型荷重計測盤,および,該検出体内蔵型荷重計測盤を用いる荷重計測法。
【請求項2】
請求項1に述べた該検出体内蔵型荷重計測盤であって、該盤状基体内部に配設される該歪検出用柱状基体をその中心軸を含む面又は該中心軸に平行な面で分割し、2体に分かれた該柱状体の片方又は両方の分割面の一部部位を、該分割面に垂直な方向に掘削して升形状の凹部位を形成し、其の底面に該歪検出素子を貼り付け又は取り付けたことを特徴とする該検出体内蔵型荷重計測盤,および,該検出体内蔵型荷重計測盤を用いる荷重計測法。
【請求項3】
請求項1,2に述べた該検出体内蔵型荷重計測盤に内蔵される該歪検出用柱状基体に装着される該歪検出素子として、歪の付加により電気抵抗が変化する特定合金線の配線構造体を内蔵する板状素子、又は歪の付加により電気抵抗特性が変化するピエゾ素子を内蔵する棒状素子、又は所要の磁性体材あるいはアモルファス材の薄膜を貼り付けて外部電磁場を印加し、歪の付加と共に変化する誘起電磁場の変化を検出する膜状素子、又は所要の磁性体あるいはアモルファス材の粉末を溶解噴射法により積層凝固させて形成した膜に外部電磁場を印加し、加わる歪によって発生する誘起電磁場の乱れを検出する膜状素子、などを使用して該歪検出素子を構成し、検出した歪値を電磁信号として、有線回路又は無線回路を使って外部へ伝達することを特徴とする該検出体内蔵型荷重計測盤、および、該荷重計測盤を用いる荷重計測法。
【請求項4】
請求項1,2,3に述べた該検出体内蔵型荷重計測盤であって、該歪検出用柱状基体を嵌め込んだ該盤状基体の上下の盤面が、嵌め込まれた該歪検出用柱状基体の上面及び下面をも含めて、単純に平坦ではなく、該検出体内蔵型荷重計測盤の中心部又は所要の部位が最も厚くなるように、又は最も薄くなるように、所要の厚み分布を持つ滑らかに連接する凸曲面形状、又は凹曲面形状、となるように作り込まれていることを特徴とする該検出体内蔵型荷重計測盤、および、該荷重計測盤を用いる荷重計測法。
【請求項5】
請求項1,2,3,4に述べた該検出体内蔵型荷重計測盤であって、該検出体内蔵型荷重計測盤の上下いずれかの盤面、又は、両盤面に、それぞれ密着して重なり合う外層盤状体を配設してあること、すなわち、所要の外形状と外寸法を持ち、該検出体内蔵型荷重計測盤と相対して重なり合う面が該検出体内蔵型荷重計測盤の表面形状と隙間なく重なり合う面形状を有していることを特徴とする該外層盤状体を、上下一方の盤面又は上下両盤面に重ね合わせて配設してあることを特徴とする該検出体内蔵型荷重計測盤、および、該荷重計測盤を用いる荷重計測法。
【請求項6】
請求項1,2,3,4,5に述べた該検出体内蔵型荷重計測盤であって、該歪検出素子が検出した歪の大きさに対応する電気的物理量又は電磁気的物理量及びその変化を所要の電磁気信号に変換し、電磁波信号として外部へ送信する機能を持つ電子回路素子を、該荷重計測盤の所要の部位に取り付けてあることを特徴とする該検出体内蔵型荷重計測盤、および、該荷重計測盤を用いる荷重計測法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
、
本発明は、各種建築構造物、産業施設、工業生産ライン、製造機械設備、船舶、自動車、鉄道等運輸システム、通信設備、ライフライン設備など、社会基盤を支える広範な機構・構造・機械・機器の社会実装に際して、それらの推進に必要不可欠な知識又はデータとなる物理量であり、あらゆる関連事象・事物の発現形態や作動挙動を理解し活用する上で知らねばならない物理量である作用力、すなわち、事象・事物を作動せしめている力、あるいは、事象・事物の発現の結果として発生する力、を測定し把握する技術・機器・方法に関わる考案であり、現在の高度工業化社会・高度技術化社会におけるあらゆる事象・事物に関係し、あらゆる関係性の根底にある物理量である作用力又は発生力を計測する手段・手法を提供しようとするものである。
【0002】
人間の社会活動や産業活動のあらゆる場面において、それらを支える多様な構築物や設備、機械、機器等に作用する力の大きさを知ることは、それらを適切に運用し活用して社会目標や産業目的を達成し、社会機構や生活環境を安定的に運用していく上で不可欠な要件である。例えば、通常の社会生活の中で、当該事物に作用する重力を知ることは極めて重要であり、重力即ち重さの計測無くしては、我々の社会生活は成り立たない。
【0003】
産業・工業の場においても、様々な局面において、稼働中の機械設備の各部位に作用する力の大きさを知ることは、当該機械設備による安全安定した操業を確保する上で、最も重要な要件の一つであり、連関する作用力を検出する手段や計測機器は、常に求められている。
しかしながら、実際の生産機構や機械構造の運用・操業の中で求められる作用力の検出・計測は必ずしも容易ではなく、ごく限られた場合に、ロードセルと呼ばれる荷重検出機器を当該機械設備の可能な限られた部位に取付け、計測が行われているに過ぎない。
【0004】
産業設備や生産製造ラインにおいては、多様な作動部分・部位において、小作用力から大作用力まで、様々な水準の作用力が加わり、それぞれにその検出・計測が重要な意味を持つ。その様な実生産環境下での作用力の計測の中でも、大型機械設備、例えば大型鍛造プレスや大型圧延機などに作用する大荷重を計測することは極めて重要であるが容易ではない。例えば、大型圧延機の場合、正確な圧延荷重の検出は高速精緻な圧延加工を実現していく上で不可欠である故に、様々な手法手段を用いての実働中の圧延荷重の計測が行われ、その結果を用いての高度なプロセス制御に基く圧延作業が実現している。他方、例えば鍛造加工の場合、操業中の鍛造荷重の計測は必ずしも行われておらず、結果、各種鍛造加工の適正なプロセス制御が十分に実現できていない実情がある。
【0005】
本発明は、かかる状況に鑑み、小作用力から大作用力まで、任意の大きさの作用力の計測を、簡素且つ堅実な機構と合理的なコストで実現する方法を考案した成果であり、“検出体内蔵型荷重計測盤”と命名した新たな構造と機能を具備する荷重計測盤とそれを用いた荷重計測法を提案するものである。
【背景技術】
【0006】
大型機械構造物の稼働時に、各部位に作用する力を所要の精度を以て知ることは、当該機械構造物の機能設計や構造設計を進め、合理的な構築・製作を行う上で極めて重要である。また、該機械構造物が稼働中に、所要の各部位に作用する力を常時検出し知ることが出来れば、当該機械構造物の適切な稼働や望ましい操業を実現する上で、極めて有用な指針を得ることが出来る。
【0007】
加えて、当該機械構造物や機械設備の使用条件を適正化し、また、常時使用負荷を監視することが出来れば、該機械構造物に加わる不測の過荷重や予期せぬ損傷を回避することが可能になり、当該機械構造物の使用寿命を長期化し、生産性の向上ばかりでなく、資源・エネルギ-の節約にも大きく貢献することが出来る。当該機械構造物の内部各所・各部位に作用する力あるいは加わる負荷に関する情報やデータを得ることは、あらゆる機械技術の基盤的要件であり、その革新・進化の根幹を成すものである。
【0008】
従前技術では、かかる要求に応えるために、ロードセルと呼ばれる荷重検出計が用いられてきた。これは、当該機械構造物や機械設備にあって、作用する力の検出が望まれる部位に、円柱状又は円筒状の歪検出体を配設し又は挟み込み、該歪検出体の所要表面部位に電気抵抗変化型のいわゆる歪ゲージを貼付し、計測対象作用力が当該部位を介して該歪検出体に加わり、該歪検出体に発生した歪が該歪ゲージの歪を誘起し、該歪ゲージに発生した歪が該歪ゲージに内蔵されている特定合金線の配線構造の電気抵抗の変化を誘発し、この電気抵抗の変化を電気信号として所要電気回路を通して外部へ取り出し検出して、その結果より、該歪ゲージひいては該歪検出体に発生した歪の変化を知り、更に、該歪検出体に作用した力および力の変化を知る方法である(
図1参照)。
【0009】
従来型の荷重検出計の機能特性を整理すると以下の様になる。
1)作用力検出が求められる機械構造の内部で、作用力を伝達し合う部位の間へ挟み込む形で配設され、計測対象となる作用力を一方の部位から直接受けて他方の部位へ伝える役割を果たしつつ、該伝達力の付加により該荷重検出計に発生する歪を検出する機能を有している。2)該作用力の伝達に際して、該荷重検出計に許容される変形・歪の量は限定され、本来、該荷重検出計が配設されていない場合の当該機械構造の当該部位および周辺部位の変形状態の変化を誘発するほどの大きさの変形・歪であってはならない。3)しかしながら、該荷重検出計に発生する歪の量が、小さ過ぎず精度良く計測し易い程度であることが望ましく、計測中に発生が予想される歪が0.03~0.15%程度となることが望ましい。4)該荷重検出計には、計測対象作用力の細かな変動を的確に捉え得る程度の歪感度が望まれる。すなわち、該荷重検出計には、測定対象作用力の大きさとその変動範囲に適合する変形剛性を持つことが望まれる。
【0010】
この要求を満足するためには、計測対象作用力とその変動範囲について、予め調査し、使用する荷重検出計に求められる望ましい剛性を付与すべく、その形状・寸法について、適正な設計をする必要がある。例えば、円筒柱状体の荷重検出計であれば、外径、内径、高さ、及び、材質の組合せにより、計測対象作用力の大きさと変動範囲に応じて、荷重検出計の出力を適正範囲内収めるべく、最適寸法を定め設計する。しかしながら、従来型荷重検出計では、〔0009〕に示す機能、すなわち、一方で、測定対象作用力に対する十分高い剛性、他方で、作用力の微細な変動を検出できる柔軟な歪感受性、を併せ持つことは容易ではない。これら両者の特性は明らかに相反するものであり、この点において、従来型の荷重検出計を直接的に用いる荷重測定法には、応用の面での限界がある。
【0011】
一般的に、機械構造や機械設備の内部各所・各部位に作用している力や負荷、および、それらが誘起する変形・歪などの実態を把握することは容易ではない。従来技術の下では、各所・各部位に作用する力や変位・歪を検出する検出器、あるいは、検出端子や触子あるいはプローブを設置することが困難である場合が少なくない。例えば、機械構造物の中で高速で運動を繰り返す部位、プレス加工を行う際に金型の中での被加工材各部位に作用する力や発生する歪等を知ることは難しい。これらの力や歪に関する情報やデータは、当該機械構造や加工機械の望ましい機能設計や構造構築を行う上で、あるいは、効率的な運用や駆動のための適切な条件を探索し実現する上で、極めて重要な意味を持つが、現実に必要な情報やデータを検出することが出来ないのが実情である。
【0012】
多くの機械構造や機械設備の設計・製作・運用の場において、かかる問題と状況に直面するが、そのような問題・課題を打開する方法として、大きな可能性を有する手法が、ハイブリッド計測法の開発と導入である。このハイブリッド計測法は、目的とする部位に作用する力や負荷、あるいは、変位や歪を直接的に計測することが困難である場合に、無理にそれらの直接計測を目指すのではなく、当該部位の作動挙動や変形挙動に連動する周辺部位であって、且つ、計測可能な部位を選び出し、又は、作り出し、その計測可能部位に発生する力や変形・歪の測定結果から、目的部位や目的構造に作用する力や変形挙動を理論的に推定しようとする手法である。但し、計測可能部位の選択又は抽出は、当該計測可能部位の変形挙動と当該計測目標部位の変形挙動との関係性について検討し、当該計測可能部位に関する計測結果が提示し得る物理的意味や技術的情報データについて、明確な見通しを持って行われる必要がある。
本発明が実装化を目指す該ハイブリッド計測法は、従来、部分的応用例はあるが、未だ統一的に整理された計測手法として数理的に体系化されていない。非常に広い範囲を包含する計測概念であり、今後鋭意発展させる必要性がある。
【0013】
現状、計測対象機械構造や機械設備の目標計測部位に発生する変形や歪、ひいては作用する力や負荷の検出機能を具備する荷重検出計のうち、概略30~50トン以下の比較的小荷重の計測を目指す場合には、問題は比較的少ない。しかし、計測対象荷重が300~2000トンおよびそれ以上の範囲になると問題が多い。最大の問題は、該歪検出体の剛性強度と歪感受性の両立の問題である。従来型の荷重検出計の如く、該歪検出体が計測目標作用力を直接受ける場合、該歪検出体は必要十分な剛性強度を持つ必要があり、さもなければ、該歪検出体に発生する歪が該歪検出体周辺の変形状態を乱し、正常な荷重計測機能が失われるか、又は、当該機械構造本体の機構能力が失われる問題が発生する。
【0014】
本発明では、かかる問題を回避するための方策として、〔0012〕に述べたハイブリット計測法の概念・考え方を導入し、該検出体内蔵型荷重計測盤を考案した。すなわち、該荷重計測盤は、該荷重計測盤を構成する該盤状基体に必要十分な剛性強度を具備させることが可能であり、同時に、歪検出用柱状基体の自由度の高い設計・製作により、望ましい歪感受性を具備させることが出来る。すなわち、本発明に依る該検出体内蔵型荷重計測盤は、適切な設計により、耐荷重性と歪感受性を併せ持ち、小荷重から大荷重に至るまでの広範囲の作用力を適正かつ効率的に計測する機能を具備することが出来る(
図2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
該当文献無し。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
一般に、機械構造や機械設備の内部各部位に作用する力あるいは負荷そのものを、当該機械構造や機械設備に計測用端子、触子、プローブ等を導入し、歪・変形・力等の物理量として直接的に計測することは、煩雑な機器・器具や、多大の人力、機材、コストを要し、多くの場合難しい。
【0017】
〔0013〕に示したように、計測対象機械構造や機械設備の目標計測部位に発生する変形や歪、あるいは、作用する力や負荷を直接的に検出することは難しい。その最大の問題は、該歪検出体の剛性強度の問題である。従来型の荷重検出計の如く、該歪検出体が計測目標作用力を直接受ける場合、該歪検出体は必要十分な剛性強度を持つ必要があり、さもなければ、該歪検出体に発生する歪が該歪検出体周辺の変形状態を乱し、正常な荷重計測が達成出来なくなる。
本発明では、この問題への対応策として、2重構造を持つ荷重検出計を考案した。すなわち、一方の構成体には高い剛性強度を保持せしめ、他方の構成体には柔軟な歪感受性を持たせ、両者を合成して一体の荷重計測計とする方法である。かかる考え方を追求した結果として、該盤状基体と該歪検出用柱状基体から構成する該検出体内蔵型荷重計測盤を発明するに至った(
図2参照)。
【0018】
本発明では、計測対象機械構造や機械設備に作用する力や負荷の計測に際して、従前の荷重計で行われてきたような直接測定を指向せず、計測を必要とする部分・部位に十分高い剛性強度を持つ該盤状基体を挿入し、該盤状基体の中に計測目的と理論的・物理的に結びつけることが出来る歪の検出体、すなわち該歪検出用柱状基体を埋め込み、高い剛性強度と同時に柔軟な歪感受性を具備する該検出体内蔵型荷重計測盤を考案した。該歪検出用柱状基体を用いて、荷重付加時に、該歪検出用柱状基体ひいては該荷重計測盤の所定の位置に発生する変位・歪を検出し、その結果から該荷重計測盤に作用する全付加荷重を算出し、更にその結果から、当該機械構造や機械設備の検討対象部分・部位に作用する力又は作用応力を、理論的に導出する手法を考案した(
図2,3,5参照)。
【0019】
実生産の場での該検出体内蔵型荷重計測盤による荷重測定時には、該荷重計測盤の全面で付加荷重を受け止めることになり、該荷重が該盤状基体の盤面に垂直に作用する状態が基本的な負荷形態となる。その際、該荷重計測盤を構成する該盤状基体の荷重付加側の表面と所要の部位に配設され該歪検出用柱状基体の端部表面とは、一体的な受圧面を構成しており、一体的に圧縮され、同期同調して圧縮歪を受ける。そこで、その場合の該歪検出用柱状基体に発生する圧縮歪を通して、該盤状基体に発生する圧縮歪を知り得る(
図4参照)。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に依る該検出体内蔵型荷重計測盤は、所要の形状寸法を有する該盤状基体と該盤状基体に嵌めこんだ複数の該歪検出用柱状基体から構成されている。(
図2,3参照)。
本発明に依る荷重計測法では、計測対象機械構造の計測対象部位から作用荷重を受ける該盤状基体に発生する圧縮歪の量を直接検出するのではなく、嵌めこんである該歪検出用柱状基体を用いて、はめ込み部位あるいはその周辺における該盤状基体に発生する圧縮歪を、該歪検出用柱状基体に発生する歪を通して検出する。この方法により、該盤状基体の所要の部位における作用荷重付加に伴う圧縮歪を検出することが出来る(
図2,3参照)。
【0021】
該歪検出用柱状基体の本体は円柱状又は矩形柱状又は所要の異形柱状を有しており、加えて、該柱状体の側表面の一部部位が切削除去されて所要の寸法及び面形状を有する歪検出用の面が形成されてある。該歪検出面と該貫通孔又は底付き孔の内壁との間に所要の隙間が確保されており、該隙間を利用して該歪検出面に所要の歪検出素子が貼付け法又は吹付け法又は溶着法又はネジ止め法又は所要の金具固定法を用いて取り付けられてある。該盤状基体に対し、その上下盤面に垂直な方向から荷重又は外力が加わると、該盤状基体に厚さ方向の圧縮歪が加わり、同時に、該歪検出用柱状基体にも同一水準の圧縮歪が加わり、該圧縮歪が該歪検出用柱状基体の該歪検出面に装着された該歪検出素子により検出される。検出された該歪値より、該歪検出用柱状基体に作用する荷重が算出され、算出された該歪値と該荷重値より、該盤状基体全体に加わる荷重値が理論的に算出される(
図4,5参照)。
【0022】
該歪検出用柱状基体としては、円柱状の他各種形状の柱状体が、該荷重の計測環境や計測条件により、適宜使い分けられる。また、該歪検出用柱状基体への該歪検出素子の取付けに際しては、〔0021〕に述べた該歪検出面の他に、該歪検出用柱状基体をその中心軸を含む面又は該中心軸に平行な面で分割し、2体に分かれた該柱状体の片方又は両方の分割面の一部部位を、該分割面に垂直な方向に掘削して升形状の凹部位を形成し、其の底面を該歪検出面として利用し、該歪検出素子を取り付けて該歪検出用柱状基体を構成し、使用することもある(
図6参照)。
【0023】
〔0020〕~〔0022〕に説明したように、本発明が提案する該検出体内蔵型荷重計測盤は2重構造を有しており、その本体である該盤状基体は、付加される荷重に耐え得る十分大きな剛性強度を保持するべく、容易に設計製作できる。すなわち、使用に際して想定される最大荷重付加時に発生する変形又は歪が、使用環境下で、許容最大値を超えないように製作できる。他方、嵌めこんである該歪検出用柱状基体は、母体である該盤状基体の変形に完全に同調して変形することが望ましく、かかる要求を満足するように設計、製作、取付けを行うことが可能である。仮に、該歪検出用柱状基体と周辺の該盤状基体の変形挙動に差異が予想されるか又は見出される場合には、予め両者の使用時の変形挙動について系統的な数値解析および分析を行い、該歪検出用柱状基体の取付け状態を調整するか、又は、該歪検出用柱状基体により計測された歪値から該荷重計測盤全体に加わっている荷重値を算出する際に、応分の補正を行うことにより、対処可能である。(
図4,5参照)。
【0024】
以上の理論構成および該荷重計測盤構造を採用することにより、計測時に発生する変形量又は歪量を許容限界以下に制限しつつ、作用荷重とその変動に対応して安定的且つ適正に反応し、同時に、低水準の作用荷重の変化に対しても確実に反応した結果としての歪量を確実に把握可能となり、計測目標荷重の挙動を確実に捉えることが出来る。即ち、本発明が考案した該検出体内蔵型荷重計測盤は、小荷重から大荷重まで、静荷重から動荷重まで、確実に検出できる機能を持っている。
【0025】
〔0021〕〔0022〕〔0023〕に述べた該検出体内蔵型荷重計測盤に内蔵される該歪検出柱状基体に装着される該歪検出素子としては、歪の付加により電気抵抗が変化する特定合金線の配線構造体を内蔵する素子、又は、歪の付加により電気特性が変化するピエゾ素子を内蔵する素子、又は、所要の磁性体材あるいはアモルファス材の薄膜を貼り付けて外部電磁場を印加し、歪の付加と共に変化する誘起電磁場の変化を検出する素子、又は、所要の磁性体あるいはアモルファス材の粉末を該歪検出素子表面又は該歪検出用柱状基体表面に溶解噴射し、積層凝固させて膜状体を形成し、形成した該膜状体に対して外部電磁場を印加し、加わる歪によって発生する誘起電磁場の乱れを検出する素子、などを利用して構成することができる。
【0026】
〔0021〕〔0022〕〔0023〕に述べた該検出体内蔵型荷重計測盤に外荷重が作用した場合に、該歪検出用柱状基体を嵌め込んだ該検出体内蔵型荷重計測盤の上下一方の盤面または上下両盤面が、嵌め込まれた該歪検出用柱状基体の上端面又は下端面をも含めて、変形して単純に平坦ではなくなることが想定される場合には、変形後に該荷重計測盤の上下盤面が全体的に滑らかな平面に近づくように、組付け時の該荷重計測盤の中心部その他所要の部位が最も厚くなるように所要の厚み分布を持つ滑らかに連接する凸形状盤面又は凹形状盤面となるように作り込んでおくことも有用である。
【0027】
本発明に依る該検出体内蔵型荷重計測盤の発展形として、必要に応じて2層構造又は3層構造を持つ該検出体内蔵型荷重計測盤を構成することもある。
〔0021〕〔0022〕〔0023〕〔0024〕に述べた該検体内蔵型荷重計測盤の上下いずれかの盤面、又は、両盤面に、外層盤状体を重ね合わせた2層構造又は3層構造を有する該検出体内蔵型荷重計測盤を構成することが出来る。該外層盤状体は、外形状・外寸法が該荷重計測盤と同一又は所要の量だけ大きく作られており、さらにその盤面形状が、該荷重計測盤の上下盤面形状と密接に重ね合わせることが可能な形状を有する。
該外層盤状体は該歪検出用柱状基体を含まず、該荷重計測盤と重ね合わせて2層構造又は3層構造として使用する。更に、該外層盤状体に該荷重計測盤を覆う蓋状形状を付与し、該荷重計測盤を保護する機能を持たせる場合もある(
図7参照)。
【0028】
該外層盤状体を用いる目的は、1)該検出体内蔵型荷重計測盤を構成する該盤状基体、該歪検出用柱状基体および該歪検出素子、その他当該計測システムを構成する電気回路等を保護する、2)該荷重計測盤に作用する力又は荷重の作用形態や作用面が異形である場合に、作用する力又は荷重の分布の偏りを平準化して該荷重計測盤に伝え、安定した荷重計測を実現する、3)該荷重計測盤と外層盤状体の間に所要の細溝を設け、該計測システムに必要な電気配線路を確保する、4)該荷重計測盤を該盤状基体と該外層盤状体に分けることにより、製作を容易にし、使用時の該歪検出用柱状基体の組み付けや維持管理を容易化する、5)大荷重の計測を目指す場合、該荷重計測盤を一体的に製作すると、その重量が大きくなり、取付けや保守管理が困難になることが想定されるが、そのような場合、2層、3層に分割することにより、該荷重計測盤の製作や取り扱いを容易化できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明が提案した該検出体内蔵型荷重計測盤の効果は以下の通りである。
1)該検出体内蔵型荷重計測盤は、簡素な構造・機構と、必要十分な剛性強度に基く耐荷重機能と、更に、自身へ加わる作用力又は荷重を的確に検出できる歪感受機能を有しており、多様な機械構造や機械設備への導入が可能であって、その用途は極めて広い。
2)該検出体内蔵型荷重計測盤を導入するに際しては、内蔵されている該歪検出用柱状基体又は該歪検出素子への電気配線や、導入のための簡単ビス等治具・金具類の取付けを除けば、当該機械構造や機械設備の改変を伴う付加的な加工や部品あるいは部材等の取り付け処置が不要であり、通常の機械組み立ての一環として、該荷重計測盤の取付けを行うことが可能である。
3)該検出体内蔵型荷重計測盤は、使用の目的や周囲条件に応じての形状・寸法設計および造形加工が容易であり、該荷重測定盤に組込み設定する該歪検出用柱状基体に発生せしめる歪、又は、発生を許容する歪の最大値あるいは変化の許容幅に合わせて、その構成体である該盤状基体および該歪検出用柱状基体の形状・寸法を効率的に設計・製作することが出来る。
4)本発明による該検出体内蔵型荷重計測盤は、簡素な形態・構造を有するが故に、堅牢な構造に作り込むことが容易であり、優れた耐久性を付与することが可能であり、使用時に、密閉封入や保護蓋の取付け等が可能であるため、耐故障性・耐損傷性・耐環境性、等にも優れている。
5)該検出体内蔵型荷重計測盤は、該荷重計測盤の直径が数mmから数100mmまでの範囲で製作・使用が可能であり、実際的には、製作・取り付け・使用に関しての寸法面での制約は無く、小型機械構造から大型機械設備の作動力又は作用荷重の計測まで幅広く対応出来る
6)本発明による該検出体内蔵型荷重計測盤の導入により、広範多様な機械構造物や機械設備、あるいは、建築構造物、橋梁等土木構造物などの安全確保、各種産業施設、運輸施設、電気・ガス等のエネルギー供給施設等の運用・監視、更に、多くの社会構造物・公共施設・の維持・管理・監視・補修が可能になり、安全・安心、且つ、省資源型の運転・駆動が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本発明に依る該検出体内蔵型荷重計測盤の基本構成図
【
図3】該荷重計測盤に装填する該歪検出用柱状基体の配設形態の例
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図4】該盤状基体と組込んだ該歪検出用柱状基体の同調的変形挙動説明図
【
図7】3層構造を持つ該検出体内蔵型荷重計測盤の構造概要
【
図8】本発明に依る該検出体内蔵型荷重計測盤のプレス加工への応用(例)
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施例 :該検出体内蔵型荷重計測盤の大型鍛造プレス加工への応用
大型鍛造では、通常、静止している下金型へ被加工材を挿入し、上から可動上金型を押し当てて造形を行う。その際,必要な加工力の予測を誤ると、製品の形状不整や金型の破損などを招き、安定した操業が出来なくなる。鍛造加工力の理論的予測はある程度まで可能であるが、現実の鍛造作業を合理的且つ効率的に実施するためには、鍛造中の加工力の変化をリアルタイムに知ることが強く望まれる。その意味で、この分野への性能の良い大型荷重計測器の導入が長く懸案となってきたが、従来方式の荷重計測は、製作・実装化コストの両面から課題が多く、現在に至るも、一般的に実施されるに至っていない。
本発明に依る該検出体内蔵型荷重計測盤は、大きな作用力に耐える耐荷重剛性強度と、計測目標荷重の細かな変化に追従し得る高い歪感受性に基く計測機能とに優れており、加えて、製作・運用コストが低く、長年、大型鍛造分野で求められてきた鍛造現場でのリアルタイム計測の要求を満たすものである。使用に際しては、必要容量を満足する寸法形状設計に基き製作した該荷重計測盤を、当該プレスの基盤面と設置する金型の底面の間に配設し、適宜固定し、計測系の電気配線を配設すればよく、極めて簡単な準備で実用を開始することが出来る。中型・小型プレスへの導入に場合も、同様手順で実施可能である。いずれの場合も、該検出体内蔵型荷重計測盤の導入効果は極めて大きく、今後のIoT化、DX化の進展を支える重要な計測手段を提供するものと云える。
【符号の説明】
【0032】
1 検出体内蔵型荷重計測盤を構成する盤状基体
2 検出体内蔵型荷重計測盤を構成する歪検出用柱状基体
3 歪検出素子
4 歪検出素子を貼り付ける接着剤
5 盤状基体の外径
6 盤状基体の厚さ
7 盤状基体に配設した貫通孔又は底付き孔の内径
8 分割型歪検出用柱状基体の分割面
9 分割型歪検出用柱状基体の分割面を掘削して形成した歪検出面
10 検出体内蔵型荷重計測盤に連接する機械構造部位
11 検出体内蔵型荷重計測盤へ向けて付加する荷重
12 荷重付加に伴って検出体内蔵型荷重計測盤に発生する圧縮変形
13 圧縮変形による検出体内蔵型荷重計測盤表面の移動後の位置
14 鍛造プレス耐圧基盤
15 鍛造用上金型(パンチ)
16 鍛造用下金型(ダイ)
17 ダイセットスライダー
18 ダイセットベース
19 ダイセットガイドポスト
20 ダイセット下金型(ダイ)支持基盤
21 ダイセット内金型等締結金具
22 鍛造素材(ワーク)
23 歪検出用柱状基体の端面に形成した配線格納用溝路
24 歪検出素子と外部電気回路との結節点
25 検出体内蔵型荷重計測盤に重ねて配設した外層盤状体
26 特定金属線配線構造
27 従来型荷重計(ロードセル)の本体(例)
28 従来型荷重計(ロードセル)の頭部キャップ(例)
29 従来型荷重計(ロードセル)のベース盤(例)
30 従来型荷重計(ロードセル)に貼り付けた歪ゲージ(例)