(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102782
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】建物、構造物のタイル落下防止工法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240724BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
E04G23/02 C
E04F13/14 103Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078547
(22)【出願日】2023-05-11
(62)【分割の表示】P 2023006489の分割
【原出願日】2023-01-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】509270904
【氏名又は名称】冨田 穣
(72)【発明者】
【氏名】冨田 盟子
【テーマコード(参考)】
2E110
2E176
【Fターム(参考)】
2E110AA50
2E110AA52
2E110AB04
2E110AB22
2E110BC13
2E110CA03
2E110DA03
2E110DC24
2E110DD03
2E110GB28W
2E110GB28X
2E176AA02
2E176BB21
2E176BB24
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】
建物、構造物の外壁タイルの落下は重大な結果を伴う可能性がある。10年ごとの点検も
法定義務となった。とはいえタイルの枚数は天文学的に多い、既設の建物、構造物の
タイルは無数である。これらを落下しないよう対策するのは至難の業である。しかし社会的責任は重い。
【解決手段】
既設建物のタイルで、タイル間の目地材を除去し、目地間に新たにタイル側面と摩擦抵抗のある小突起物のある線材を周回に敷設し新たな目地材を充填することで落下防止とする。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の建物、構造物の柱、壁コンクリートのタイルが経年劣化またはタイルの落下防止対
策が図られてない場合のタイル落下防止工法であって、タイル目地間の目地材を除去し、
露出した溝にタイルを囲む周回状に線材を敷設することとし、目地幅間のタイル側面壁に
接触し摩擦抵抗となる小突起物を、1枚のタイルの長辺方向に少なくとも1か所に加えた
線材とし、前記小突起物は、線材自体の随所に設けた線材18、線材の円周方向の周囲に
線材方向にスライドできる穴あきの数珠状に設けた線材19、または目地間の線材敷設後
に、表面側から別個の小突起物20を線材周りに挿入、装着するとし、前記線材、前記小
突起物は樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施したものとし、線材敷設後に新た
なタイル目地充填材27を充填することを特徴とする既設の建物、構造物のタイル落下防
止工法。
【請求項2】
表面側施工の前記線材を樹脂被覆または塗装、メッキを施した金属製とし、あるいは樹脂製の線材においては表面側施工の前記線材の少なくとも1ケ所に防錆処理をした金属片、金属輪21を装着し、いずれもこのことで非破壊検査に資するとしたことを特徴とする請求項1に記載の既設の建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項3】
既設の建物、構造物のタイル落下防止の補修工事に用いる線材、小突起物で、タイル目地
間の目地材撤去後の目地間に設置するもので、タイル目地間のタイル側面壁に接触すると
し、線材自体の随所に小突起物を設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方向にス
ライドできる穴あきの数珠状の小突起物を有する線材19、または目地間の線材敷設後に
、表面側から別個に挿入、装着するとした線材に付加する小突起物20で、いずれも樹脂
被覆または塗装、メッキの防さび処理を施すとした小突起を有する線材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等外壁タイルの落下防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の外壁タイルの落下、それに伴う事故が多数報告されている。児童の頭に落下すれ
ば大変である。特に、道路歩道沿いのビル、公共建築では落下は許されない。特許情報プ
ラットホームで検索したところ「タイル 落下防止」で、55件あり該当するのは6件で
あった。特許文献1は、タイルの表面側に粘着テープで貼り、ユニットとするものであり
、裏面側で線材を接着しコンクリート面にアンカーで定着し、その後モルタル貼りするの
で、コンクリートにアンカーした線材が邪魔となり施工が困難、またはコンクリート打設
前の鉄筋に固定するものだが、本願はアンカーを取らず、コンクリートはすでに打設済み
の固い壁面なので異なる。特許文献2は、タイルの裏足に横断する新たな溝を掘って線材
を配するものだが、本願は、裏足に新たな溝を設けない。線材は裏足を跨ぎモルタルとの
付着を活かすので異なる。特許文献3はトンネルのタイルパネルで、タイル裏面の表面に
帯状の連結材を貼着しているが、本願は、窪みのある溝や裏足間への嵌合を利用している
ので付着の経年劣化もなく物理的に脱落しないので異なる。特許文献4もトンネル用で大
規模で、壁に穴を明けタッピングネジやアンカーボルトを随所に用いているが、本願は壁
に穴を明けてタイルを止めることを基本としてないので異なる。特許文献5は裏足に穴を
あけ鉄筋に固縛するもので、そのあとにコンクリートを打設するものだが、本願は、穴を
あけず、鉄筋に固縛せず、すでにコンクリートは打たれている時点の壁表面でのモルタル
を介した落下防止なので異なる。特許文献6は、厚みのあるタイルパネルに貫通穴を設け
るもので、大規模の落下防止となるもので、本願はタイルに穴を明けないので異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-36856
【特許文献2】実登3206490号
【特許文献3】特許第5892529号
【特許文献4】特許第5835763号
【特許文献5】特開2003-74148
【特許文献6】実登第3004150号
【0004】
【非特許文献1】平成20国土交通省告示第282号「タイルの10年に1度の全面的打診の義務化」の通達
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物、構造物のタイル落下は大事故を起こす。特に、小学生の頭に当たれば大きなニュー
スとなる。設計者か、施工業者の施工不良か、はたまた経年劣化によるものか、建物管理
者か。責任者を判別しがたいでは済まされない。落下の確率が小さい、品質管理の許容値
範囲内である、瑕疵期間を過ぎている、といっても言い逃れは許されない、結果責任であ
る。いずれにしてもタイル建物、構造物の設置数は数えきれないほどであり管理しきれな
いといっていいほどであるがその事故は重大であるため、建物には10年ごとの法定点検
が課せられたが、施工不良、目に見えないところの内部の欠陥の発見、原因特定、将来落
下しそうな部位の発見は容易でない。特に、高所となると足場接近によるたたき点検とな
るが10年ごとの足場設置、経費負担はあまりにも重い。運よく浮き箇所が発見でき、補
修できればいいがいつまた劣化しないとも限らない。不安だらけである。基本的には、コ
ンクリートを打設した後の柱や壁の表面と、モルタルや接着剤を介したタイル裏面との付
着を期待するものだが、地震による付着の剥がれ、接着力の経年劣化は解決できない。効
果的対策が必要だ。そこで、複数枚のタイルをまとめて型枠としてコンクリートを打設す
る方法、いわゆる先付け工法が考えられているが、タイルを先に板状に組まなくてはいけ
ないので重く、段取りが大変だ。高層ビル建築や大規模工事には採用されているものの一
般向きでない。一般には、
図1に示す断面図の、柱や壁のコンクリートを打設した後から
その固化、乾燥したコンクリート表面1にモルタル2、接着剤を施し、タイルの裏面との
付着力を利用しタイルを貼り付ける後付け工法となる。そのために、タイル3の裏面に裏
足4といわれる突起と裏足間の溝5を設けより付着力を高めている。先付け工法では、タ
イルが大型で、型枠としての機能を持つためしっかりとタイル間を固定している。あるい
はコンクリート打設前の鉄筋と結んでいる。後付け工法では絶対的対策がないため施工不
良とならないよう管理している。高い建物や、公共建物など影響の大きい建物では後付け
工法を避けている。後付け工法の多くは低い箇所の施工になる。しかしそれでも限界があ
る。接着剤で接着しても10年後、20年後の経年劣化で付着が急激に低下し、あっけな
く剥離、剥落する。落下に対して、2重の安全を講じる必要があるといえる。そこで、フ
ェールセーフの考え方で、一枚一枚の個別でタイルの剥がれはあるとしても、それにはタ
イムラグがあり、残りの全体として落下しなければよいのである。すなわち、複数枚のタ
イル間をロープ、線材、そのネットで連結することで部分的な施工不良、予期し難い欠陥
、タイムラグによる落下を全体として面的にカバーする。一枚であっても落下しないよう
相互の連帯で踏みとどまるとする命綱を設ける。幸いにして、タイルの裏面には、モルタ
ルとの付着のために裏足という凸凹がある。その窪みの凹部を固定の基地として、具体的
には網目状の
図2,3,4に示すように落下防止ネット9をタイルに張り巡らせネットワ
ークを構築する。ネットの中心は網目の交点となる交点部材7であり、タイルごとに設け
裏足間の溝に嵌合、接着して固定点とする。ネットの線材8は、基地の固定点を中心とし
て、タイルを上下方向、左右方向に連結する。タイル1枚の付着がはがれたとしても上下
、左右の全体付着、連結により線材でタイル間が網状に連結している状況、ネットワーク
を作り出すことで、個々のタイル落下を防ぐ課題を解決できる。タイル施工の貼り付け模
様、形状は種々あるが、代表として
図2の通し目地貼りでは、目地は水平方向と、垂直方
向の直線2方向で、裏面のネットの網目も2方向に沿い水平方向が優先、
図5、
図6の芋
目地貼りでは、目地が交互にクロスするので、裏面の網目は主として斜め方向となるが一
つ飛ばしの方形もやむを得ない。貼り方向で、タイルの縦貼りの場合は、縦方向が優先と
なる。
外壁タイルは裏足有タイルが多い。落下原因には、モルタルの付着が弱い場合の、施工不
良、経年劣化が考えられる。前提として、これら欠陥は生じ得るものとして、一部付着が
外れても命綱の連携作用、チームワークで落下を食い止める。基本として裏足の溝を利用
した嵌合効果、あるいは接着による固定点と、そこから交差する線材による2方向の確実
な綱の複数枚、広範囲の連結、落下防止ネットによる連結である。1方向は、溝沿いとす
れば付着の問題はない。その直角方向、斜め方向では裏足の突起部を跨ぐことになるが、
モルタル内に入るので細い線材の連結であればタイル裏面とモルタルとの間の付着面積を
減らすことはない。むしろ線材とモルタルの絡み効果が大きい。施工が容易であることも
条件だ。さらには、竣工時と、10年後の点検、検査でネット、線材が内在していること
の確認が容易であること、特に高所、公共建物では検査記録が残ることが求められる。非
破壊検査では、
図16に示す裏面に配置する金属探査が有効である。金属反応のない腐食
しない材料選択にも金属片をつけるなど配慮が必要である。穴あけなどの工程が加わるの
も好ましくない。粘着テープではその幅で、タイル裏面とモルタル、接着剤との付着面積
が減り、将来的にもモルタルとの付着力が落ち剥離する恐れがある。経年劣化で平面的な
接着力が失われることを承知していなければならない。
これらを総合的に考慮して、落下防止の方法として、ここでは、タイルは水平方向に長い
とし、タイル裏足も水平方向として記す。貼り付け方法は、主に通し目地貼りで説明する
が、芋目地貼りなど他はそれを活かした個別の応用で解決できる。
タイル裏面の落下防止ネットは、複数枚のタイルを面的、ネットワークにまとめた
図2に
示すブロック単位(タイル3*6=18枚)を基本とする。しかし、そのブロック単位の
隣接ブロック間ごとに落下防止ネットの切れ目が生じるので連結が途絶えることが次なる
課題である。これには、1つ目の方法は、裏面側の連結施工として、ブロック単位のネッ
トを裏面側(
図7,8,9)で継ぎ足して連結することでネットの連続性を拡大する方法で
ある。水平方向の拡張はタイル枚数が増え重くなり、垂直方向の延伸は、下地のモルタル
に負荷がかかり重みで垂れる恐れがある。落下方向は、重力方向なので、一蓮托生となる
垂直方向より水平方向への連結を優先する。場合によっては芋目地貼りでは、タイルの目
地線が一直線でなく交互となっているので落下しづらいこと、交差する目地線が煩雑なこ
とから、垂直方向の連結を省略してもよいといえる。面的拡大は重くなり取り扱いが難し
く作業員の人数増を伴うなどの課題がある。裏面をネットでさらに連結して垂直の壁面ま
で持ち上げて施工するのは大変である。重みを支える型枠、作業員の補助、訓練などの工
夫が必要である。立ち居のまま隣接ブロック間を連結するのも、下地のモルタルがタイル
裏面の連結ネット作業時に付着したり、モルタルの固化までの時間の余裕がないので焦っ
た作業となる可能性があり施工不良の原因となる。ブロック単位の連結を延長、拡大する
にあたっては、施工性を保つ工夫が必要である。
図18の支持型枠とか、作業員の増、技
術習得が必要である。落下防止ネットは、水平方向に延長すれば長尺となり、長尺を生産
してロール状に巻くと都度必要長に応じて切断して重宝できる。
2つ目の方法は、表面側からの連結施工として、
図10に示す裏面の落下防止ネットが見
えるブロック単位の中央部付近の目地部の上、表面側から線材で押さえる方法、または図
11に示す隣接ブロック単位の落下防止ネットが途切れる目地部を跨いで隣接ブロック単
位を連結する方法がある。言い換えれば、ブロック単位の壁への貼り付け作業がコンクリ
ート壁全面、全体的に終わった第一段階工程での、最終の目地材充填施工前に、中央部付
近の目地部を線材で囲む方法、またはブロック単位を跨ぐ目地の両サイドのタイル外周の
目地間に線材を周回するように敷設し、そのあと最終段階の目地材を目地に充填すること
で、ブロック単位の連結が得られ連続性の途切れをなくすという課題を解決できる。この
方法では、壁にはブロック単位ですでに貼り付けているので、重いとか、作業員の補助の
問題が解決される。施工もタイル裏面側と関係なく表面側からなので簡単明瞭である。
また、経年の既設の建物、構造物のタイル落下防止対策も喫緊の課題である。
図12に示
すように、まず既設の目地材を除去し、次に目地間にタイル側面に接触し、摩擦抵抗で落
下抵抗があるとする小突起を有する線材18、19、20などを敷設し、新しい目地材2
7を充填することで解決できる。
以上、良質なタイルの落下防止施工ができたとしても、タイル裏面側は隠れて見えないた
め、実際に落下事故が生じると原因究明、責任者特定とかの課題が残る。落下防止ネット
が施工されていることの証明が工事検査時、10年後の点検時に、落下事故時の説明で手
抜き工事でない証しのためにも非破壊検査ができることが有効な手段となりうる。
図16
に示すように交点部材、線材に金属輪、金属片21絡ませておくと、非破壊検査に役立つ
。後悔しなくて済む。全体として、落下防止ネット、その交点部材、線材は材料に応じて
防錆に配慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の建物、構造物のタイルの落下防止工法は、建
物、構造物の柱、壁コンクリートの表面1にモルタル2、接着剤でタイル3を貼るタイル
工事において、複数枚のタイルを面的なブロック単位、
図2参照、として落下防止を図る
としたもので、タイル裏面の溝部5に嵌合または接着して固定する交点部材7と、前記交
点部材から隣接タイルまで、または一つ飛びのタイルまでに伸びる水平方向、鉛直方向ま
たは斜め方向の線材8とで、方形またはひし形、3角形を基調とする網目を形成するタイ
ル裏面のタイル落下防止ネット9であって、前記タイル落下防止ネットは強化プラスチッ
ク、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接
金網などで成る交点部材と線材の構成で、前記ブロック単位の複数枚の前記隣接タイルま
たは一つ飛びのタイルの裏面の溝部に前記交点部材を嵌合または接着して装着することで
複枚数分の固定点とし、複数枚の前記隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面間を前記
線材とで網目状のネットワークに連結するとしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに裏面側で連結
する工法であって、
図7Aに示す水平方向または
図7Bに示す垂直方向の長さを延長したタ
イル落下防止ネット、
図7Cに示す面的に拡大したタイル落下防止ネット、あるいは
図8
に示す隣接する前記ブロック単位間の切れ目部12に装着する連結用の継手部部分ネット
11、または
図9に示す1網目分を張り出した拡張ネット13によるタイル落下防止ネッ
トで、タイル裏面側から面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに表面側で連結
する工法であって、隣接ブロック単位ごとに裏面側の連結が途切れる切れ目部に対して表
面側から連続性を延伸する工法で、前記ブロック単位のタイル貼り付け後の目地材充填前
の工程で、前記ブロック単位の中央部付近のタイルの目地部および前記隣接ブロック単位
の前記切れ目部12を横切る線材14または縦断する線材15を、隣接ブロック単位のタ
イルを周回するように配置、あるいは前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を挟む両
側タイルの外側目地部において、前記切れ目部を挟んで周回する線材16を敷設し、いず
れもその後に目地材を充填することで、途切れる隣接ブロック単位の切れ目部の連結を補
完するとした、タイル表面側からの面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする。
【0009】
また、既設の建物、構造物の柱、壁コンクリートのタイルが経年劣化またはタイルの落下
防止対策が図られてない場合のタイル落下防止工法であって、タイル目地間の目地材を除
去し、露出した溝にタイルを囲む周回状に線材を敷設することとし、目地幅間のタイル側
面壁に接触し摩擦抵抗となる小突起物を、1枚のタイルの長辺方向に少なくとも1か所に
加えた線材とし、前記小突起物は、線材自体の随所に設けた線材18、線材の円周方向の
周囲に線材方向にスライドできる穴あきの数珠状に設けた線材19、または目地間の線材
敷設後に、表面側から別個の小突起物20を線材周りに挿入、装着するとし、前記線材、
前記小突起物は樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施したものとし、線材敷設後
に新たなタイル目地充填材27を充填することを特徴とする。
【0010】
また、前記ブロック単位の裏面側の前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線
材を樹脂被覆または塗装、メッキを施した金属製とし、あるいは樹脂製の金属製でないも
のにおいては前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線材の少なくとも1ケ所
に防錆処理をした金属輪、金属片21を装着し、いずれもこのことで非破壊検査に資する
としたことを特徴とする。
【0011】
また、複数枚のタイルを裏面側で連結する交点部材および線材で構成する網目状のタイル
落下防止ネット9または前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落
下防止ネット、および隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネット1
1または1網目分を張り出した拡張ネット13あるいは垂直側に1網目分を張り出した前
記拡張ネットを長尺としロール状に巻いた拡張ネットは、強化プラスチック、プラスチッ
ク、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金網などから成
り、タイル裏面の溝に嵌合または接着して固定する交点部材と、2方向に伸長する線材の
構成で成る方形またはひし形、3角形を基調とした網目状のネットで、前記交点部材は、
タイル裏面の溝に嵌合または接着することで固定点となり、前記線材はタイル裏面の溝方
向、あるいは溝と直角方向または斜め方向の裏面を這うことで方形またはひし形、3角形
の網目を形成し、タイルの落下時に掛かる引張強度を有するとし、腐食の恐れがある材料
については、樹脂被覆、あるいは塗装、メッキの腐食防止処理したタイル落下防止ネット
または前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落下防止ネット、お
よび隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネットまたは1網目分を張
り出した拡張ネットあるいは垂直側に1網目分を張り出した前記拡張ネットを長尺としロ
ール状に巻いた拡張ネットを使用することを特徴とする。
【0012】
また、既設の建物、構造物のタイル落下防止の補修工事に用いる線材、小突起物で、タイ
ル目地間の目地材撤去後の目地間に設置するもので、タイル目地間のタイル側面壁に接触
するとし、線材自体の随所に小突起物を設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方
向にスライドできる穴あきの数珠状の小突起物を有する線材19、または目地間の線材敷
設後に、表面側から別個に挿入、装着するとした線材に付加する小突起物20で、いずれ
も樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施すとした小突起を有する線材を使用する
ことを特徴とする。
【0013】
また、タイル裏面のネットを装着したブロック単位を連結するときに負担となる重量を支
え、かつタイル裏面側の連結の施工性を補助するための
図18に示すようなタイル貼り付
け支持型枠または作業補助型枠であって、前記型枠は、鋼板、またはプラスチック板、木
材板で構成し、外周に設けた大枠と、各タイル目地間に設けた網目状小枠から成るタイル
落下防止施工用の型枠を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上から物体、タイルが落下するという事故に遭遇すれば、突然で予期せぬことであり防ぎ
ようもない。不運では片づけられない。被害者は通行人だが誰になるか想像もできない。
しかし、施工者、管理者は特定できる。タイルの施工不良は、数パーセントといわれ、そ
の程度は許容されているとの言い訳があるが、落下すること、危害に対しては100パー
セント結果責任だ。瑕疵期間が過ぎているとしても許されるものでない。彼らも事故が起
きないことを祈るばかり。これではいつか大きな社会問題になりかねない、事前に課題が
判明しているのに課題が解決できてない。本発明により上から落下する危険性がなくなれ
ば平穏に街を歩ける。10年ごとの費用負担の大きい点検を必要としない。施工者、管理
者も枕を高くして眠れる。点検でタイルの浮きが発見されると、落下の予兆である。本工
法で連結すれば、タイル1枚の浮き兆候から落下までのタイムラグ、さらにタイルブロッ
ク全体の抵抗で予防できる。新築工事、補修箇所は完璧となる。いずれそのうちに本工法
による新築が増えると落下問題は徐々に解消されていく。ところが、落下対策、連結対策
しているものの、内部が見えなければ、落下対策の施工をしたかどうかは確認できず疑わ
れる。施工したことの証しとして、金属探査機で見えない内部の連結が可視化できること
が大事である。安心につながる。さらには、施工が古い建物、建造物のタイル壁は経年劣
化していると考えられ、既設のタイル貼りの目地間のモルタル、樹脂を表面から除去し、
線材を幾何学的に張り巡らし、新たに目地充填することで落下防止を図る事ができる。こ
れで施工者も建物保有者、管理者も責任のなすりあいをすることなく枕を高くして眠れる
。まさしく予防保全の目的とするところである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】通し目地貼りの、タイル裏面の方形の落下防止ネット平面図、
【
図3】タイル裏足の溝に嵌合した交点部材と線材の斜視図
【
図5】芋目地貼りの、ひし形、3角形のネット平面図
【
図7】ネット拡張連結の水平A、垂直B、拡大C方向の説明図
【
図8】隣接のブロック単位間を連結する継手部部分ネット平面図
【
図10】表面側から連結する、ブロック単位の中央付近の線材配置平面図
【
図11】表面側から連結する、ブロック単位の切れ目部を挟む線材配置平面 図
【
図12】既設建物のタイル目地部の線材敷設による補修説明図
【
図13】既設建物の目地溝に敷設する小突起物を有する線材
【
図14】スライドできる数珠状の小突起物を有する線材
【
図15】タイルの溝の敷設線材周囲に挿入、装着する小突起物の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面及び詳細な説明の全体を通じて同じ要素を示すために共通の参照符号が用いられる。
【0017】
隣接する複数枚のタイルを貼り付けのブロック単位とし、複数枚のタイル間
を、複数枚相当分の固定点を中心とした網目状のネットを張り巡らせたタイル
落下防止ネットで連結することで、全体としてタイルの剥落による落下防止と
する。タイル裏面の溝または裏足間に嵌合または接着する交点部材と、そこで
交差する2方向の線材で成る方形、またはひし形、3角形を基調とした網目状
の落下防止ネットであって、タイル裏面の溝に交点部材を嵌合することにより
固定点となり、2方向に伸びる線材とで隣接のタイル裏面間の連結となり面的
に落下防止ネットワークを形成する。交点部材、線材ともに、裏面側のモルタ
ルに埋もれるので固着力、周辺付着力が働き、さらなる落下抵抗を増し、落下
防止の効果を発揮する。1枚のタイルの短辺4.5cm、長辺9.5cm、目
地間隔3~4mmとして、通し目地貼りを基本として記す。芋目地貼りでは長
辺14.5cmのタイルでそれ以外のタイル、貼り付け方法となっても応用で
きる。
タイル落下防止ネットの交点部材および線材は、強化プラスチック、プラスチ
ック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金
網などで成り、強化プラスチック、プラスチック、ステンレス以外は、腐食防
止のために、樹脂被覆、塗装、メッキなどを施すものとする。タイルはコンク
リートが固化した柱、壁面にモルタル、接着剤で下地処理した上から貼り付け
る後付け工程とする。平面的な溶接金網では裏足間の固定点として嵌合、接着
するために固形の突起を付加し交点部材とする。
ここでは、(実施例1)で複数枚の前記タイルをブロック単位とし、タイル裏
面側のタイル落下防止ネットにより連結する基本のブロック単位について掲げ
る。ブロック単位は、タイルの大きさ、重さ、施工性、貼り付け模様さらに、
建物の重要度、落下影響度によって異なる。
次に注意しなければならないのは、複数枚のタイルのブロック単位では基本的
には面的に連結施工できているとしても、壁の面積はまだまだ広く、ブロック
単位ごとに連結の切れ目が生じるので、さらなる落下防止を図る。連結の範囲
を拡大する方法として、タイル裏面側のネットを拡張してネットで裏面側を直
接連結する方法(実施例2~5)と、タイル表面側からの方法として、裏面側
をネット連結したブロック単位を線材で上から間接的に2次元、3次元に押さ
えることで連結する方法(実施例6)がある。
また、経年の既設の建物、構造物の落下対策(実施例7)も重要である。
これらは、事故が起きた時の検証として、正しく施工されているかが後に立証されること
として非破壊検査対応(実施例8)も大切である。
全体として、落下防止ネットおよび後に敷設する線材には、防錆性能が求められるのは当
然のことである。
【実施例0018】
図2に示すタイルの通し目地貼りでは、水平に3枚、垂直に6枚配置すると18枚、目地
幅を入れて30cm*30cmが単位広さ、ブロック単位とする。タイル1枚1枚に裏面
の裏足の溝に嵌合する固定点を形成し、タイル枚数と、網目の交差する固定点の交点部材
数が一致する。これがタイル裏面におけるタイル落下防止ネットによる連結となる基本の
1ブロック単位である。これにより18枚の複数枚相当のタイルがネットで連結されるの
で、最小限の基本となるタイル落下対策はできたと評価できる。ここでは、18枚の場合
の30cm*30cmを基準とする1ブロック単位を面的標準ブロックとする。
隣接ブロック間に生じるネットの切れ目を連結する方法として、タイル裏面側でネットを
連結する方法がある。まず、タイル落下防止ネットを
図7Aの水平方向に、または、
図7B
の垂直方向に、あるいはそれらを含む面拡大
図7Cの方向、にあらかじめ延長、面的に拡張
した連続ネットを使用する。注文時にあらかじめ延長、または面的に拡張したネットとす
る。タイル貼り付け前の製品納品時、現場での準備作業時に、隣接のブロックも含めた連
続ネットが嵌合してあるとすれば、切れ目部の連結の手間が省ける。すなわち、2ブロッ
ク単位以上の拡大ネットとすれば連結作業は1工程少なくなる。ただし、大きすぎるので
ネット製品が可能か、納入時に運搬できるかなどの問題があり、壁に施工する時に持ち上
げる重量が単純に倍増の負担となるので、作業性からタイル枚数、ネットの面積を独自に
求めてもよい。補助員が必要になる場合もある。納品時にも段ボールは2倍大きいものに
入れるか、従来段ボール箱ならブロックの裏面が重なるようにネットを折り返し、タイル
ブロックをたたみ重ねるかの工夫が必要となる。壁施工時では垂直方向に延長、継ぎ足す
より、まず水平方向に延長、継ぎ足すことを考える。垂直方向の延長は、タイル重みで、
モルタルが垂れる恐れがある。施工に工夫すれば裏面の嵌合を増やして長さをさらに延長
することもできる。できるだけ長く連続としたネット製品となれば、丸太のようなロール
状の巻き付けネット製品も可能で、現場の壁寸法に応じて、カットできるので重宝だ。た
だし、垂直方向には相変わらず継ぎ目が生じることを忘れてはならない。それでも、連続
性が、重さ、施工性で、いつか途絶えるので、重量支持のタイル嵌め込みの
図18の大型
の施工型枠、例えば内部に目地間を仕切った特性型枠で平面床に置いたタイルの目地部を
嵌め込むことで、持ち上げて壁に向かって施工するときに、形崩れによるタイル落下防止
や重量を保持する補助具となり便利で施工が楽になる。現場の必用長に応じた型枠、手配
などの工夫である。この場合も壁への施工前に裏面のネットを嵌合しておく。ネット嵌合
したままタイル表面側を、枠の裏側から入る、あるいは小枠に
配置したタイルを伏せておき、裏側からネットを嵌合する。さらにはいっそう、ネットを
面的に拡大して、継ぎ目を極力少なくし、あるいは無くし、一気に貼り付ける。その面積
相当の拡大型枠、作業員が必要と思われるが継ぎ
目連結の作業が少なく、後々の落下の心配がないので考慮に値するといえる。ブロックの
タイルはあらかじめ表側に仮シートを貼っておくか、目地
部に小型枠として各タイルを収めた状態で貼り付け、固化前にそのまま外す
方法と兼用することができる。