(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102794
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜の生成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20240724BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240724BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20240724BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240724BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L21/316 S
H01L21/316 X
H01L21/316 P
H01L21/31 B
H01L21/324 X
C23C16/42
C23C16/56
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121108
(22)【出願日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】10-2023-0008039
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520507874
【氏名又は名称】イーキューテックプラス株式会社
【住所又は居所原語表記】(Gosaek-dong, Suwon Venture valley 2), B-514, 5F, 142-10, Saneop-ro 156beon-gil, Gwonseon-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do 16648, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シン ドンファ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンウォン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA14
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA08
4K030DA09
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AA20
5F045AB32
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AE19
5F045AF02
5F045BB17
5F045EE19
5F045HA16
5F058BB01
5F058BC02
5F058BF04
5F058BF29
5F058BF38
5F058BF55
5F058BF61
5F058BH03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高温の酸化工程が進行されるときに界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施例に係る、SiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法であって、ラジカルを利用したALD法またはラジカル酸化法のうちいずれかの手法によって、SiC基板上にラジカル気体を印加して第1の薄膜300を蒸着するステップと、第1の薄膜上に高温酸化工程を行って酸化膜200を形成するステップと、酸化膜上にNOまたはN
2Oのうち少なくともいずれかでアニーリングを行うステップと、を含む。
【選択図】
図3b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法において、
(a)SiC基板上にラジカル気体を印加して第1の薄膜を蒸着するステップと、
(b)前記第1の薄膜上に高温酸化工程を行って酸化膜を形成するステップと、
(c)前記酸化膜上にアニーリングを行うステップと、を含むものである、SiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項2】
前記(a)ステップは、
ラジカルを利用したALD法またはラジカル酸化法のうちいずれかの手法によって前記第1の薄膜の蒸着を行うことである、請求項1に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項3】
前記第1の薄膜は、SiO2の絶縁層で構成されるものである、請求項1に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項4】
前記(a)ステップ~(b)ステップの化学反応を通じて前記SiO2の絶縁層が形成される過程において副産物として発生する前記SiC基板の炭素-炭素(C-C)、炭素(C)うち少なくとも一部が前記ラジカル気体と化合して気化されるものである、請求項3に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項5】
前記ラジカルを利用したALD法が行われる場合、
前記(a)ステップないし(b)ステップの化学反応を通じて、SiC基板のCは、CO2、CH及びCOのうちいずれかの形で気化されるものである、請求項4に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項6】
前記ラジカル酸化法が行われる場合、
前記(a)ステップないし(b)ステップの化学反応を通じて、SiC基板のCは、CO2、CO及びCHxのうちいずれかの形で気化されるものである、請求項4に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項7】
前記(c)ステップは、
前記アニーリングは、NOまたはN2Oのうち少なくともいずれかで行われるものである、請求項1に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項8】
前記(a)ステップないし(c)ステップに対応する工程は、500~750℃間の工程温度で進行されるものである、請求項1に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項9】
前記(a)ステップないし(c)ステップに対応する工程は、5Torr未満の工程圧力で進行されるものである、請求項1に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【請求項10】
前記(a)ステップないし(c)ステップは、半導体素子を形成する過程のうちゲート酸化膜を形成する過程に含まれるものである、請求項1に記載のSiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜を生成する方法に関し、具体的に、高温の酸化工程が進行されるときに界面における欠陥の増加を最小化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力半導体は、通常、電力変換のためのスイッチング素子として使用されている。近年、Si(Silicon)系列の電力半導体素子の電気特性に対する信頼度が限界に達しつつあり、Siの限界を乗り越える高電圧、低抵抗、高周波及び高温のような極限の状況において作動できる電力素子物質のSiC(Silicon Carbide)半導体素子の研究が活発に進行されている。そのとき、電力半導体の素子に影響を与える要素の一つは、シリコン基板とゲート酸化膜との間の界面に対する界面欠陥密度(Interface Trap Density)である。
【0003】
SiC(Silicon Carbide)を高温酸化によってゲート酸化膜を生成させる場合、SiC(Silicon Carbide)結合から脱落した炭素(C)が酸化膜が生成される界面の周辺で不完全な結合を維持するか、結合エネルギーの高い炭素-炭素(C-C)の結合を構成するようになる。
【0004】
かかる状況は、フラットバンド電圧(Flat Band Voltage)の歪曲及びキャリア(Carrier)の移動度の低下の原因として作用し、高電圧高電流分野の適用に限界が生じ、電気容量の範囲内の使用時にも、論理回路の誤謬による動作不良によって素子信頼性の問題が生じる。
【0005】
図1は、従来のゲート酸化膜の生成過程と原子の結合式を示した図面である。
【0006】
図1を参照すると、従来の高温酸化技術の場合、SiC基板100を単に高温酸化した後、アニーリングを進行して酸化膜200を形成する。これは、SiC基板100上のSiCがO
2と結合することで、SiO
2でなった酸化膜200が形成されるのである。その際、SiC基板100と酸化膜200との間の界面には、酸化過程において未反応、未結合または未排出された炭素(C)が副産物として残留し、余剰の炭素(C)らは再度炭素-炭素(C-C)などの炭素(C)クラスター(Cluster)に形成される。
【0007】
具体的にSiCとO2とが結合される場合、SiO2と炭素(C)とがそれぞれ生成され得る(これは、高温酸化の主反応に該当し得る)。また、従来の工程において進行される2SiCと3O2との結合によってそれぞれ2SiO2及び2COが生成され、SiCとO2とのまた他の結合によってSiO及びCOが生成されるが、CO及びSiOは、気体として気化されるため、結果として、界面上には炭素(C)が副産物として残るようになる。
【0008】
その際、副産物として界面上に残留する炭素(C)は、再度炭素-炭素(C-C)などの炭素(C)クラスター(Cluster)に形成されて、界面の欠陥を生じさせる原因となる。例えば、フラットバンド電圧(Flat Band Voltage)歪曲及びキャリア(Carrier)の移動度の低下を引き起こして、SiC高電圧高電流素子の信頼性を低下させるという不都合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、薄膜を生成するための高温酸化過程において界面における欠陥が増加することを最小限に抑制することができる工程の具現を目的とする。
【0010】
高温酸化過程において薄膜の界面に残留する炭素(C)の比重を下げることによって、界面の欠陥を少なくすることをまた他の目的とする。
【0011】
但し、本実施例が達成しようとする技術的課題は、上記のような技術的課題に限定されるものではなく、さらに他の技術的課題が存在し得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した技術的課題を達成するための技術的手段として、SiC基板の高温酸化工程時に界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成方法において、(a)SiC基板上にラジカル気体を利用して第1の薄膜を形成するステップと、(b)第1の薄膜上に高温酸化工程を行うことで酸化膜を形成するステップと、(c)酸化膜上にアニーリングを行うステップが含まれても良い。
【0013】
また、(a)ステップは、ラジカルを利用したALD法またはラジカル酸化法のうちいずれかの手法によって第1の薄膜の形成が行われても良い。
【0014】
また、第1の薄膜は、SiO2の絶縁層で構成されても良い。
【0015】
また、(a)ステップないし(b)ステップの化学反応を通じてSiO2の絶縁層が形成される過程において副産物として発生するSiC基板の炭素-炭素(c-c)、炭素(C)などは、少なくとも一部がラジカル気体と化合して気化され得る。
【0016】
また、ラジカルを利用したALD法が行われる場合、(a)ステップないし(b)ステップの化学反応を通じて、SiC基板のCは、CO2、CH及びCOのうちいずれかの形で気化され得る。
【0017】
また、ラジカル酸化法が行われる場合、(a)ステップないし(b)ステップの化学反応を通じて、SiC基板のCは、CO2、CO及びCHxのうちいずれかの形で気化され得る。
【0018】
また、(c)ステップにおけるアニーリングは、NOまたはN2Oのうち少なくともいずれかで行われても良い。
【0019】
また、(a)ステップないし(c)ステップに対応する工程は、500~750℃間の工程温度で進行されても良い。
【0020】
また、(a)ステップないし(c)ステップに対応する工程は、5Torr未満の工程圧力で進行されても良い。
【0021】
また、(a)ステップないし(c)ステップは、半導体素子を形成する過程のうちゲート酸化膜を形成する過程に含まれても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施例によって、薄膜を生成するための高温酸化の過程において界面の欠陥が増加することを最小限に抑制することができる。
【0023】
高温酸化過程において薄膜の界面に残留する炭素(C)の比重を下げることによって、界面の欠陥を少なくすることができる。これを基に薄膜のキャリア移動度の低下を防止し、SiC高電圧素子の信頼性を高めることができる。
【0024】
また、本発明において提示する工程によって、従来の工程よりも低い温度と圧力で薄膜を生成できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来のゲート酸化膜の生成過程と原子の結合式を示した図面である。
【
図2】本発明の一実施例に係る、SiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成過程を示した動作フローチャートである。
【
図3a】従来のSiC基板の高温酸化工程によって生成された薄膜の形状を図式した図面である。
【
図3b】本発明の一実施例に係る、SiC基板の高温酸化工程時の界面における欠陥の増加を最小化する工程によって生成された薄膜の形状を図式した図面である。
【
図4a】従来の工程によって生成されるSiC基板上に形成された薄膜の断面を示した図面である。
【
図4b-4c】本発明の一実施例に係る、SiC基板上に形成された薄膜の断面を示した図面である。
【
図5】本発明の一実施例に係る、SiO
2、転移層(Transition Layer(SiOxCy))の形成程度を示したグラフである。
【
図6】本発明の一実施例に係る、工程別の電圧と電荷トラップ密度(Trap Density)との関係を示した第1のグラフである。
【
図7】本発明の一実施例に係る、工程別の電圧と界面欠陥密度D
it(Interface Trap Density)との関係を示した第2のグラフと表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、添付した図面を参照しながら、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳しく説明する。ところが、本発明は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0027】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0028】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるための詳細な説明であり、本発明の権利範囲を制限するものではない。したがって、本発明と同一の機能を行う同一範囲の発明も、本発明の権利範囲に属するはずである。
【0029】
以下の本発明の明細書で定義している薄膜または蒸着とは、半導体製造工程においてウェハ(基板)の表面に分子の吸着と置換を交互に進行することによって、酸化物や金属を薄くコーティングする過程を意味し得る。それによって、以下の明細書で説明するそれぞれの過程は、ラジカル発生ユニット(Radical Generation Unit)または蒸着装置などによって行われても良く、原子層蒸着(ALD)や化学気相蒸着(CVD)などの技術によって薄膜または蒸着が具現されても良い。
【0030】
図2は、本発明の一実施例に係る、SiC基板の高温酸化工程時に界面における欠陥の増加を最小化する薄膜形成過程を示した動作フローチャートである。
【0031】
図2を参照すると、SiC基板100上にラジカルを印加して第1の薄膜300を形成する(S110)。
【0032】
ステップ(S110)の先行工程により、
図3bに示されたSiC基板100上に第1の薄膜300が形成されても良い。ここで、第1の薄膜300は、SiO
2の絶縁層で構成されても良い。
【0033】
このとき、ラジカルを印加する過程は、ラジカルを利用したALD法またはラジカル酸化法のうちいずれかを選択的に適用し得る。
【0034】
次に、第1の薄膜300に高温酸化工程を行って酸化膜200を形成する(S120)。
【0035】
ステップ(S120)の化学反応を通じてSiO2の絶縁層が形成される過程において副産物として発生するSiC基板100の炭素(C)は、少なくとも一部がラジカル気体と化合して気化され得る。
【0036】
また、従来の高温酸化及びアニーリングの過程は、1100~1400℃の工程温度と、600~750Torrの工程圧力とを工程条件として求める。ところが、本明細書で提示する工程を適用する場合、500~750℃の工程温度と5Torr未満の工程圧力だけで酸化膜200を形成することができる。
【0037】
最後に、酸化膜200上に気体によるアニーリングを行う(S130)。
【0038】
ステップ(S130)の仕上げ工程によって、
図3に示されたように、薄膜300の上部には酸化膜200が形成される。ここで、アニーリングは、NOまたはN
2Oのうち少なくともいずれかで行われても良い。
【0039】
このとき、選択的な実施例として、ステップ(S110)においてラジカルを利用したALD法が行われる場合、ステップ(S120)ないしステップ(S130)の化学反応を通じてSiC基板100の炭素(C)は、CO2、CH及びCOのうちいずれかの形で気化され得る。
【0040】
他の選択的な実施例として、ステップ(S110)においてラジカル酸化法が行われる場合、ステップ(S120)ないしステップ(S130)の化学反応を通じてSiC基板100のCは、CO2、CO及びCHxのうちいずれかの形で気化され得る。
【0041】
これを化学式を通じて具体的に説明すると、従来の工程は、SiC基板100上に高温酸化及びアニーリングの2ステップの工程のみを行う。それによって、以下のSiC基板100上には下記の3つの化学反応が行われ得る。
[化学式1]:SiC+O2=SiO2+C(固体)
[化学式2]:2SiC+3O2=2SiO2+2CO
[化学式3]:SiC+O2=SiO+CO
【0042】
このとき、高温酸化法の主な反応は、[化学式1]に対応し、化学反応の結果で形成される副産物のうちSiO及びCOは、気化することによって基板上に残留することがないが、[化学式1]によって生成される多量の炭素(C)は、固体状で界面上に残留するようになる。
【0043】
それに対し、本明細書で提示する工程は、SiC基板100上にラジカルを利用した第1の薄膜300を形成した後、高温酸化及びアニーリングを行う3ステップの工程を行う。それにより、従来の工程で行われる3つの反応を含んで、5つの化学反応がさらに行われ得る。
[化学式4]:SiC+4OH=SiO2+CO2+2H2
[化学式5]:2SiC+6OH=2SiO2+2CO+3H2
[化学式6]:SiC+HO2=SiO2+CH
[化学式7]:2SiC+6O+4H→2SiO2+CO2+CH4
[化学式8]Si Precursor+2OH=SiO2+by-product(g)
【0044】
上記の[化学式4]ないし[化学式8]は、高温酸化工程の以前にラジカル気体を利用した第1の薄膜300を形成するにつれて発生させられる化学反応であり得る。ここで、化学反応による副産物であるCO、CO2、CH及びCH4は、気体状に気化するが、界面上に残留する炭素(C)と反応して生成された副産物であるため、従来の工程に比べて界面上に残留するようになる固体状の炭素(C)を最小化することができる。
【0045】
ここで、[化学式4]、[化学式5]及び[化学式8]は、界面のラジカル酸化またはラジカルを利用したALD法の工程によって発生する主な反応に該当し得る。結果として、本明細書で提示する工程によって、[化学式4]ないし[化学式8]に該当する化学反応を導き出すことができ、低圧工程によっても副産物の除去に容易であるという利点を有することができる。
【0046】
一方、
図3aには、SiC基板100と酸化膜200のみが示されているが、実際には、界面上に残留する炭素(C)によって層が生成され得る。また、本明細書で提示した工程を示した
図3bの場合も、第1の薄膜300が残留すると示されているが、該当層を構成する元素が高温酸化及びアニーリングの過程を通じて気化して反応しなかった炭素(C)による転移層(Transition Layer(SiOxCy))が残るようになる。それぞれの薄膜の実際の断面は、後述する
図4a~
図4cから確認することができる。
【0047】
図4aは、従来の工程によって生成されるSiC基板上に形成された薄膜の断面であり、
図4b~
図4cは、本発明の一実施例に係る、SiC基板100上に形成された薄膜の断面を示した図面である。
【0048】
図4aは、従来の工程によって生成された薄膜の断面であり、
図4b及び
図4cは、本明細書で提示する工程によって生成された薄膜であり得る。ここで、
図4bは、ラジカル酸化工程が適用された結果であり、
図4cは、ラジカルを利用したALD法の工程が該当し得る。
【0049】
図4a~
図4cにおいてそれぞれ生成される転移層(Transition Layer(SiOxCy))のその厚さがそれぞれ異なるが、
図4aで提示された写真において転移層(Transition Layer(SiOxCy))の厚さが最も厚いことが確認できる。つまり、単にSiC基板100上に高温酸化のみを行う場合、厚い転移層(Transition Layer(SiOxCy))が形成されることが確認できる。
【0050】
また、
図4b及び
図4cに示されたように、ステップ(S110)によって生成された第1の薄膜300の場合、ラジカル酸化またはラジカルを利用したALD法の工程によって除去されたことが確認できる。
【0051】
図5は、本発明の一実施例に係る、転移層(Transition Layer(SiOxCy))の形成程度を示したグラフである。
【0052】
図5に示されたグラフを参照すると、グラフの赤線は、従来の酸化工程を、緑線は、ラジカル酸化と高温酸化とが共に行われた工程を、青線は、ラジカルALD法と高温酸化とが共に行われた工程に該当し得る。
【0053】
図5のグラフを参照すると、高温酸化の以前にラジカル酸化またはラジカルALD法の工程が先行される場合、転移層(Transition Layer(SiOxCy))の中間状態結合(Intermediate Status Bonding)が単に高温酸化のみを行った工程より少ないことが確認できる。
【0054】
図6は、本発明の一実施例に係る、工程別の電圧と電荷トラップ密度(Trap Density)との関係を示した第1のグラフである。
【0055】
図6のグラフ(a)及びグラフ(b)は、従来の工程に該当するグラフであり、
図6のグラフ(c)ないしグラフ(f)は、本明細書を通じて提示する工程に該当するグラフであり得る。
【0056】
図6に示されたグラフを説明するのに先立ち、界面の電荷トラップ密度は、半導体素子の特性に影響を与える要素の一つに該当し得る。
【0057】
通常、半導体素子の生成過程であるゲート酸化膜200を成長させる過程において、SiC内部のSi原子とO(酸素原子)とが反応してSiO2が形成される過程で反応しない炭素(C)原子が酸化膜200とSiC基板100との間に存在するようになり、この余剰の炭素は、再度クラスターを形成し、界面順位及び欠陥を形成するようになる。この欠陥は、フラットバンド電圧(Flat Band Voltage)歪曲及びキャリア(Carrier)の移動度の低下の原因として作用し、素子信頼性の問題を引き起こす。
【0058】
それによって酸化膜200とSiC基板100との間に界面の電荷トラップ密度(Trap Denisity)を測定するための方法として、印加する電圧の周波数を変化させながら電流を測定し、キャパシタンス-電圧曲線(c-v curve)を算出する。
【0059】
再度、
図6を参照すると、グラフ上のX軸は、電圧値(V)、Y軸は、キャパシタンス値(Cap Den;F/cm
2)、及びグラフの3つの線分は周波数(このとき、赤線は1MHz、黄線は10kHz及び青線は1kHz)を意味する。
【0060】
従来の工程に該当するグラフ(a)は、SiC基板100に高温酸化のみを適用する場合、周波数(Frequency)が大きくなるにつれ、電圧対比キャパシタンス値の差異が大きくなることが確認できる。また、グラフ(b)を参照すると、SiC基板100に高温酸化及びNO気体のアニーリングが行われても、その差異が完全に狭められないことが確認できる。
【0061】
本明細書を通じて提示する工程に該当するグラフ(c)及びグラフ(e)は、それぞれラジカル酸化と高温酸化及びラジカルを利用したALD法と高温酸化法のみを適用した工程に該当する。グラフ(c)及びグラフ(e)に示されたように、SiC基板100に高温酸化のみ適用した工程に比べて周波数によるキャパシタンス値の差異は改善されるが、NOまたはN2Oのアニーリング過程が伴わなければ、周波数が大きくなるにつれて電圧対比キャパシタンス値の差異が存在することが確認できる。
【0062】
しかし、グラフ(d)及びグラフ(f)に示されたように、NOまたはN2O気体のアニーリングがそれぞれ行われた場合、周波数に関係なく、電圧対比キャパシタンス値の差異がほとんどないことが確認できる。
【0063】
すなわち、従来の工程は、印加する電圧の周波数(Frequency)変化による電気容量(Capacitance)の差異が大きいほど、電荷トラップ密度(Trap Density)が増加するようになるが、本明細書で提示した工程は、電荷トラップ密度が減少する相違点を有する。
【0064】
図7は、本発明の一実施例に係る、工程別の界面欠陥密度(Interface Trap Density)の関係を示した第2のグラフ及び表である。
【0065】
第2のグラフ及び表を説明するのに先立ち、界面欠陥密度Dit(Interface Trap Density)は、上記で説明した第1のグラフのキャパシタンス-電圧曲線(c-v curve)測定基盤のHigh-Low Method法によって算出された界面欠陥密度(Interface Trap Density)に関する。
【0066】
このとき、界面欠陥密度D
it(Interface Trap Density)は、上記で説明した
図6の測定されたキャパシタンス-電圧曲線(c-v curve)において周波数別のキャパシタンス値を以下の[式1]を通じて算出し、低周波キャパシタンス値から高周波キャパシタンス値を差し引く構造である。
【0067】
【0068】
図7の(a)に示された第2のグラフは、X軸が電圧、Y軸が界面欠陥密度D
it(Interface Trap Density)及びグラフの各線分は、従来の工程と本明細書で提示した工程に対応し得る。
【0069】
このとき、
図7の(a)を参照すると、電圧が高くなるほど界面欠陥密度D
it(Interface Trap Density)の値が低くなることが確認できるが、その傾きが高温酸化(灰色の実線)のみを行った線分の傾きが最も高いことが確認できる。つまり、高温酸化工程のみを行う場合、電圧対比界面欠陥密度D
it(Interface Trap Density)の変化が最も大きいことが分かる。
【0070】
しかしながら、本明細書で提示した工程が適用された線分の傾き(赤色の点線、青色の点線)が低くて、電圧による電荷トラップ密度の変化が低いことが分かり、従来の高温酸化とアニーリングとが共に適用された手法(黒色の点線)より全ての電圧において界面欠陥密度Dit(Interface Trap Density)が低いことが確認できる。
【0071】
これは、
図7の(b)から確認できるが、各工程別の電圧0.2Vを基準に界面欠陥密度D
it(Interface Trap Density)を示した表に該当し得る。このとき、本明細書で提示する工程である2番目の工程(2.66e11cm
-2eV
-1)と4番目の工程(2.85e11cm
-2eV
-1)とが、従来の工程である1番目の工程(3.81e11cm
-2eV
-1)と6番目の工程(2.87e12cm
-2eV
-1)よりも低い界面欠陥密度D
it(Interface Trap Density)値を有することが分かる。
【0072】
すなわち、SiC基板100上に高温酸化を進行する以前に、ラジカル酸化またはラジカルを利用したALD法の工程を先行にして、第1の薄膜300の生成以後に高温酸化及びアニーリングを行う際、既存の工程に比べて界面欠陥密度Dit(Interface Trap Density)値を改善することができる。
【0073】
上述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、上記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0074】
本発明の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0075】
100 SiC基板
200 酸化膜
300 第1の薄膜