(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102800
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20240724BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240724BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20240724BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20240724BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20240724BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C11/00 B
B60C1/00 A
B60C11/00 F
B60C3/04 Z
B60C9/18 N
B60C11/00 H
B60C11/13 B
B60C11/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183264
(22)【出願日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2023006720
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 健宏
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131AA04
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB06
3D131BB09
3D131BB11
3D131BC15
3D131BC19
3D131CA03
3D131DA33
3D131EA02U
3D131EA10V
3D131EB11X
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB22V
3D131EB22X
3D131EB27V
3D131EB72X
3D131EB86V
3D131EB86X
3D131EB99V
3D131EB99X
3D131EC01V
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】高速旋回時のウェットグリップ性能が向上したタイヤを提供すること。
【解決手段】トレッド部およびベルト層を有するタイヤであって、前記トレッド部はタイヤ半径方向最外側の第一ゴム層と、前記第一ゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接する第二ゴム層とを少なくとも備え、前記ベルト層はタイヤ幅方向の幅が最も広い第一ベルト層と、前記第一ベルト層に隣接する第二ベルト層とを少なくとも備え、前記第一ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg1とし、前記第二ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg2とし、タイヤ回転軸を通る断面におけるタイヤ断面幅(mm)をWtとし、前記断面における第一ベルト層断面幅(mm)をW1とし、前記断面における第二ベルト層断面幅(mm)をW2とするとき、Tg1、Tg2、Wt、W1およびW2が以下の関係を満たすタイヤ。
(1) Tg1-Tg2<0
(2) (W1-16)/Wt≦0.75
(3) Tg2/(W2/W1)≦-8.0
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部およびベルト層を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ半径方向最外側の第一ゴム層と、前記第一ゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接する第二ゴム層とを少なくとも備え、
前記ベルト層は、タイヤ幅方向の幅が最も広い第一ベルト層と、前記第一ベルト層に隣接する第二ベルト層とを少なくとも備え、
前記第一ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg1とし、前記第二ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg2とし、タイヤ回転軸を通る断面におけるタイヤ断面幅(mm)をWtとし、前記断面における第一ベルト層断面幅(mm)をW1とし、前記断面における第二ベルト層断面幅(mm)をW2とするとき、Tg1、Tg2、Wt、W1およびW2が以下の関係を満たすタイヤ。
(1) Tg1-Tg2<0
(2) (W1-16)/Wt≦0.75
(3) Tg2/(W2/W1)≦-8.0
【請求項2】
前記第二ゴム層のゴム組成物が充填剤を含み、前記充填剤のシリカの含有量が80質量%以上である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
式(1)の右辺が-1.0である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項4】
式(1)の右辺が-3.0である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項5】
式(2)の右辺が0.72である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項6】
式(3)の右辺が-11.0である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項7】
Tg1、Tg2、W1およびW2が、以下の関係を満たす、請求項1記載のタイヤ。
(4) (Tg2/Tg1)/(W2/W1)≦1.00
(但し、Tg2は0未満である。)
【請求項8】
Tg2が-10以下である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt1とし、前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt2とするとき、St1とSt2の少なくとも一つが25.0未満である、請求項1記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt1とし、前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt2とし、前記第一ゴム層の厚さをH1とし、前記第二ゴム層の厚さをH2とするとき、St1、St2、H1およびH2が、以下の関係を満たす、請求項1記載のタイヤ。
(5) {St1×H1+St2×H2}/(H1+H2)<25.0
【請求項11】
前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分および前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分がイソプレン系ゴムを含む、請求項1記載のタイヤ。
【請求項12】
前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ周方向に延び、かつ、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向溝を有し、
前記拡幅周方向溝が、拡幅周方向主溝、拡幅周方向細溝および拡幅周方向サイプからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記周方向主溝の少なくとも一つが、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向主溝である、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記陸部のうち少なくとも一つの陸部が、タイヤ周方向に延び、かつ、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向細溝を有し、
前記拡幅周方向細溝を有する少なくとも一つの陸部が、タイヤ中心線上に位置する陸部であるか、または、タイヤ中心線上に周方向主溝が存在する場合にはタイヤ中心線に最も近い陸部である、請求項1~11のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記トレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記2以上の周方向主溝のうちタイヤ幅方向最外側の一対の周方向主溝によって画された、タイヤ幅方向最外側の一対の陸部をショルダー陸部とするとき、前記ショルダー陸部が、開口面積が0.1超15未満mm2の小穴を1個以上有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項16】
前記トレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記2以上の周方向主溝のうちタイヤ幅方向最外側の一対の周方向主溝によって画された、タイヤ幅方向最外側の一対の陸部をショルダー陸部とするとき、前記ショルダー陸部が、少なくとも1以上の周方向細溝を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのウェットグリップ性能を改善する技術として、トレッドゴム組成物にシリカを配合する方法、低軟化点樹脂や液状ポリマー等の配合量を増量する方法、耐寒性可塑剤を配合する方法等が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今は高速道の整備も進み、車両性能も向上し、高速で移動することも珍しくないことから、高速で旋回する際のウェットグリップ性能の更なる向上も求められていると考えられる。
【0005】
本発明は、高速旋回時のウェットグリップ性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のタイヤに関する。
トレッド部およびベルト層を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ半径方向最外側の第一ゴム層と、前記第一ゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接する第二ゴム層とを少なくとも備え、
前記ベルト層は、タイヤ幅方向の幅が最も広い第一ベルト層と、前記第一ベルト層に隣接する第二ベルト層とを少なくとも備え、
前記第一ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg1とし、前記第二ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg2とし、タイヤ回転軸を通る断面におけるタイヤ断面幅(mm)をWtとし、前記断面における第一ベルト層断面幅(mm)をW1とし、前記断面における第二ベルト層断面幅(mm)をW2とするとき、Tg1、Tg2、Wt、W1およびW2が以下の関係を満たすタイヤ。
(1) Tg1-Tg2<0
(2) (W1-16)/Wt≦0.75
(3) Tg2/(W2/W1)≦-8.0
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高速旋回時のウェットグリップ性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドの一部の展開図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドの一部の展開図である。
【
図4】
図3の拡幅周方向主溝のタイヤ回転軸を通る平面による断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るタイヤであって、タイヤ中心線に最も近い陸部に拡幅周方向細溝を有するタイヤのトレッドの一部の展開図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るタイヤであって、ショルダー陸部に小穴を有するタイヤのトレッドの一部の展開図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るタイヤであって、ショルダー陸部に周方向細溝を有するタイヤのトレッドの一部の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態であるタイヤは、トレッド部およびベルト層を有するタイヤであって、前記トレッド部はタイヤ半径方向最外側の第一ゴム層と、前記第一ゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接する第二ゴム層とを少なくとも備え、前記ベルト層はタイヤ幅方向の幅が最も広い第一ベルト層と、前記第一ベルト層に隣接する第二ベルト層とを少なくとも備え、前記第一ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg1とし、前記第二ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg2とし、タイヤ回転軸を通る断面におけるタイヤ断面幅(mm)をWtとし、前記断面における第一ベルト層断面幅(mm)をW1とし、前記断面における第二ベルト層断面幅(mm)をW2とするとき、Tg1、Tg2、Wt、W1およびW2が以下の関係を満たすタイヤである。
(1) Tg1-Tg2<0
(2) (W1-16)/Wt≦0.75
(3) Tg2/(W2/W1)≦-8.0
【0010】
理論に拘束されることは意図しないが、本発明において、高速旋回時のウェットグリップ性能が改善されるメカニズムとしては、以下が考えられる。
【0011】
すなわち、(a)トレッド部の第一ゴム層のガラス転移温度(Tg1)を第二ゴム層のガラス転移温度(Tg2)未満にするという式(1)の関係を満たすことで、第一ゴム層が低温および高周波数においても路面に追従しやすくなるようにしつつ、第二ゴム層でトレッド部の変形によるエネルギーロスを生じやすくさせることができる。したがって、第一ゴム層によって路面に追従し、それに伴う変形に対しては第二ゴム層でエネルギーロスを生じさせることができ、トレッド部でのグリップ性能が向上すると考えられる。(b)また、第一ベルト層の断面幅(W1)について式(2)の関係を満たすように断面幅Wtに対して狭くすることで、トレッドのショルダー部が路面に接する際に変形しやすくなり、接地性が向上するので、路面に対してさらに追従しやすくなると考えられる。(c)さらに、第二ベルト層の断面幅(W2)のW1に対する比が大きい場合には、ベルト層の剛性が高くなり、トレッド第二層での変形が小さくなり、発熱を生じにくくなると考えられる。そのため、W2/W1に対してTg2が一定の値以下となるように式(3)の関係を満たすことで、トレッド第二層で変形および発熱性を十分に生じ易くすることができると考えられる。そして、上記(a)~(c)が協働することで、トレッド表面部(トレッド第一層)での接地性の向上とトレッド内部(トレッド第二層)での発熱性の向上が強化され、結果として、高速旋回時のウェットグリップ性能が向上しているものと考える。
【0012】
前記第二ゴム層のゴム組成物は充填剤を含み、前記充填剤のシリカの含有量は80質量%以上であることが好ましい。
【0013】
第二ゴム層の充填剤中のシリカの含有量を高めることで、転動時の発熱性が抑制される。一般的に温度が高くなるとエネルギーロスは小さくなるため、転動時の発熱を抑制することで、旋回時に変形が生じた際、エネルギーロスを生じ易くすることができると考えられる。したがって、高速旋回時のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0014】
式(1)の右辺は-1.0であることが好ましく、-3.0であることがより好ましい。
【0015】
第一ゴム層のTgを第二ゴム層のTgより一定程度低くすることで、第一ゴム層での追従性の確保と、第二層ゴム層でのエネルギーロスの発生がより達成し易くなると考えられる。
【0016】
Tg1、Tg2、W1およびW2は、以下の関係を満たすことが好ましい。
(4) (Tg2/Tg1)/(W2/W1)≦1.00
(但し、Tg2は0未満である。)
【0017】
式(4)の関係を満たすことで、第二ゴム層のひずみが大きくなるウェット路面での旋回走行時に、第二ゴム層の発熱性を大きく維持することができるので、高速旋回時のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0018】
Tg2は-10℃未満であることが好ましい。
【0019】
第二ゴム層での変形性を担保しつつ、発熱性を大きくすることができるので、高速旋回時のウェットグリップ性能の向上に寄与すると考えられる。
【0020】
前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt1とし、前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt2とするとき、St1とSt2の少なくとも一つは25.0未満であることが好ましい。
【0021】
第一ゴム層や第二ゴム層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量を少なくすることで、ゴム組成物内に生じたスチレンドメインにより、ゴム層の変形が小さくなることを抑制し、路面への追従性、および発熱性を得やすくすることができると考えられる。
【0022】
前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt1とし、前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt2とし、前記第一ゴム層の厚さをH1とし、前記第二ゴム層の厚さをH2とするとき、St1、St2、H1およびH2は、以下の関係を満たすことが好ましい。
(5) {St1×H1+St2×H2}/(H1+H2)<25.0
【0023】
第一ゴム層および第二ゴム層を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量を少なくすることで、ゴム組成物内に生じたスチレンドメインにより、ゴム層の変形が小さくなることを抑制し、路面への追従性、および発熱性を得やすくすることができると考えられる。
【0024】
前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分および前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分はイソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
【0025】
第一ゴム層や第二ゴム層を構成するゴム組成物がイソプレン系ゴムを含有することで、強度に優れるイソプレン系ゴムにより、反力を生じやすくすることができ、応答性が向上することで、高速旋回時のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0026】
前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ周方向に延び、かつ、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向溝を有し、前記拡幅周方向溝が、拡幅周方向主溝、拡幅周方向細溝および拡幅周方向サイプからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0027】
トレッド部半径方向内側の溝幅がトレッド部表面よりも大きくなることで、旋回時にトレッド部の半径方向内側から変形を生じやすくさせることができるため、第二層でのエネルギーロスを生じやすくさせることができ、高速旋回時のウェットグリップ性能の向上に寄与するものと考えられる。
【0028】
前記トレッド部のトレッド面は、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、前記周方向主溝の少なくとも一つは、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向主溝であることが好ましい。
【0029】
トレッド部半径方向内側の溝幅がトレッド部表面よりも大きくなることで、旋回時にトレッド部の半径方向内側から変形を生じやすくさせることができるため、第二層でのエネルギーロスを生じやすくさせることができ、高速旋回時のウェットグリップ性能の向上に寄与するものと考えられる。
【0030】
前記トレッド部のトレッド面は、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、前記陸部のうち少なくとも一つの陸部は、タイヤ周方向に延び、かつ、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向細溝を有し、前記拡幅周方向細溝を有する少なくとも一つの陸部は、タイヤ中心線上に位置する陸部であるか、または、タイヤ中心線上に周方向主溝が存在する場合にはタイヤ中心線に最も近い陸部であることが好ましい。
【0031】
トレッド部の接地中央部に前記拡幅周方向溝を有することで、旋回時の変形中心において、トレッド内部から変形が生じやすくなり高速旋回時のウェットグリップ性能を向上させやすくすることができると考えられる。
【0032】
前記トレッド面はタイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、前記2以上の周方向主溝のうちタイヤ幅方向最外側の一対の周方向主溝によって画された、タイヤ幅方向最外側の一対の陸部をショルダー陸部とするとき、前記ショルダー陸部は、開口面積が0.1超15未満mm2の小穴を1個以上有することが好ましい。
【0033】
小穴は排水性の向上に寄与するので、ショルダー領域での排水性が向上し、トレッド部が接地しやすくなり、高速旋回時のウェットグリップ性能が向上するものと考えられる。
【0034】
前記トレッド面はタイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、前記2以上の周方向主溝のうちタイヤ幅方向最外側の一対の周方向主溝によって画された、タイヤ幅方向最外側の一対の陸部をショルダー陸部とするとき、前記ショルダー陸部は、少なくとも1以上の周方向細溝を有することが好ましい。
【0035】
前記ショルダー陸部に周方向細溝を有することで、ショルダー陸部の剛性を下げることができ、高速旋回時に、トレッド部が前記細溝を中心に変形し、接地しやすくなるため、高速旋回時のウェットグリップ性能が向上するものと考えられる。
【0036】
[定義]
「正規状態」とは、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。「タイヤの各部の寸法等」は、特に断りがない限り、タイヤの外表面に現れるものは正規状態で特定される値とする。一方、タイヤ内部やタイヤ切断面に存するものは、例えばタイヤをタイヤ回転軸を含む平面で切断し、当該切断したタイヤ片を正規リムのリム幅に保持した状態で特定される値である。
【0037】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている「Measuring Rim」、TRA(The Tire and Rim Association, Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている「Design Rim」を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0038】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」とし、正規リムと同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250KPa以上)を指す。なお、250KPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0039】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、およびETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重であり、正規リムおよび正規内圧と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、前記規格に定められていないタイヤの場合は、以下の計算により、正規荷重W
Lを求める。Vはタイヤの仮想体積(mm
3)、Dtは正規状態におけるタイヤ外径(mm)、Htはタイヤ回転軸を含む平面によるタイヤの断面における、タイヤ半径方向のタイヤの断面高さ(mm)、Wtは正規状態におけるタイヤの断面幅(mm)である。Htはタイヤのリム径をRとする場合、(Dt-R)/2により求めることが可能である。Wtはタイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いて得られる値である。なお、本明細書において「最大負荷能力」は前記正規荷重と同義である。
【数1】
【0040】
「タイヤ断面幅Wt」とは、正規状態におけるタイヤ断面の最大幅を指す。ただし、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いた、サイドウォール外面間の最大幅である。すなわち、タイヤ断面幅Wtはタイヤ回転軸を通るタイヤの断面において、ビード部間を正規リム幅に合わせた状態で、サイドウォールの文字等を除いた幅方向の最大距離を求めることで、測定することができる。
【0041】
「ベルト層断面幅」とは、正規状態におけるベルト層のタイヤ幅方向の最大長さである。すなわち、ベルト層断面幅は上述のタイヤ断面幅と同様に、タイヤ回転軸を通るタイヤの断面において、ビード部間を正規リム幅に合わせた状態で、ベルト層の端点間の幅方向距離を求めることで測定することができる。なお、ベルト層は少なくとも二層で構成され、これらのうち、ベルト層断面幅の最も広いベルト層を第一ベルト層といい、その断面幅を「第一ベルト層断面幅W1」とする。また、第一ベルト層に隣接するベルト層を第二ベルト層といい、その断面幅を「第二ベルト層断面幅W2」とする。なお、ベルト層を三層以上有し、前記第一ベルト層に隣接するベルト層が二層以上存在する場合においては、それらのうち、ベルト層の断面幅が広い方を第二ベルト層とする。
【0042】
「トレッド面」とは、地面と接地し得るトレッド部の領域であって、一対のトレッド接地端で挟まれた、トレッド接地端よりもタイヤ幅方向内側の領域である。
【0043】
「周方向主溝」とは、タイヤ周方向に連続して延びる溝であって、トレッド面におけるタイヤ幅方向の溝幅が4mm以上のものをいう。周方向主溝は、周方向に沿って直線状に延びていてもよく、周方向に沿って波状や、正弦状や、ジグザグ状に延びていてもよい。但し、後記の拡幅周方向溝は含まない。
【0044】
「陸部」とは、周方向主溝によって画されたトレッド面上の領域である。トレッド面が2以上の周方向溝を有するとき、タイヤ幅方向最外側の一対の周方向溝によって画されたタイヤ幅方向最外側の一対の陸部を、特に、「ショルダー陸部」という。
【0045】
「周方向細溝」とは、タイヤ周方向に連続して延びる溝であって、トレッド面におけるタイヤ幅方向の溝幅が4mm未満のものをいう。周方向細溝は、周方向に沿って直線状に延びていてもよく、周方向に沿って波状や、正弦状や、ジグザグ状に延びていてもよい。但し、後記の拡幅周方向溝は含まない。
【0046】
「拡幅周方向溝」とは、タイヤ周方向に連続して延びる溝であって、タイヤ幅方向の溝幅が、トレッド面において最小であり、タイヤ半径方向内側で拡大するように構成されている溝である。拡幅周方向溝は、周方向に沿って直線状に延びていてもよく、周方向に沿って波状や、正弦状や、ジグザグ状に延びていてもよい。拡幅周方向溝は、トレッド面におけるタイヤ幅方向の溝幅が4mm以上の「拡幅周方向主溝」、トレッド面におけるタイヤ幅方向の溝幅が4mm未満の「拡幅周方向細溝」、さらには、トレッド面におけるタイヤ幅方向の溝幅が2mm未満の「拡幅周方向サイプ」を含む。なお、拡幅周方向溝はトレッド部の摩耗により溝幅が変化するので、一の拡幅周方向溝が、摩耗の進行につれて、拡幅周方向サイプから拡幅周方向細溝へと、あるいは、拡幅周方向細溝から拡幅周方向主溝へと変化し得る。
【0047】
「ゴム成分の総スチレン量(質量%)」とは、ゴム成分全体(100質量%)を構成する各ゴムについて、そのスチレン含量とゴム成分全体に占める含有率とを掛け合わせた値を算出し、それらすべてを合算したものである。
【0048】
「小穴」とは、トレッド面上に存在する小さな穴であり、トレッド内部から延在しトレッド面へ開口している。小穴はそれぞれ独立に存在し、周方向溝、横溝などとは連通していない。
【0049】
「トレッド部を構成するゴム層の厚み(H)」は、タイヤ中心線から引いた法線に沿って測定される当該ゴム層の厚みである。タイヤ中心線上に周方向主溝、周方向細溝等を有する場合は、陸部中心線がタイヤ中心線に最も近い陸部の、当該陸部中心線から引いた法線に沿って測定される。ここで、「陸部中心線」とは、陸部のタイヤ幅方向中心を通り、タイヤ周方向に連続して延びる直線である。トレッド部を構成するゴム層としては、例えば、第一ゴム層、第二ゴム層等がある。
【0050】
[測定方法]
「ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)(℃)」は、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%、および昇温速度2℃/minの条件下で損失正接tanδの温度分布曲線を測定し、-60℃~40℃の範囲内で得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度(tanδピーク温度)とする。例えば、-60℃~40℃の間に最も大きいtanδ値を示す点が1点である場合には、当該値を示す温度がゴム組成物のガラス転移温度となる。また、-60℃~40℃の範囲におけるtanδの温度分布曲線が、温度上昇に伴い、漸増もしくは漸減する場合、上記の定義から、ゴム組成物のガラス転移温度はそれぞれ、40℃もしくは-60℃となる。なお、-60℃~40℃の範囲において、ガラス転移温度が最大となる点が2点以上存在する場合には、これらのうち、温度が最も低いものをゴム組成物のガラス転移温度として取り扱う。また、測定用サンプルは、損失正接測定用サンプルと同様にして作製する。
【0051】
「スチレン含量(質量%)」は、1H-NMR測定により算出される。
【0052】
「ビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)(モル%)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される。
【0053】
「シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)(モル%)」は、JIS K 6239-2:2017に従い、赤外吸収スペクトル分析により算出される。
【0054】
「ガラス転移温度(Tg)(℃)」は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製の示差走査熱量計(Q200)を用いて、昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、計測される。本発明では、特に、スチレンブタジエンゴムのTgが計測される。
【0055】
「重量平均分子量(Mw)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0056】
「カーボンブラックのN2SA」は、JIS K 6217-2:2017に準じて測定される。
【0057】
「シリカのN2SA」は、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される。
【0058】
「平均一次粒子径」は、透過型または走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察された一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。粒子径は、粒子の形状がほぼ円形の場合には円の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、それ以外の場合には電子顕微鏡画像から円相当径を算出して粒子径とする。円相当径は、「4×(粒子の面積)/πの正の平方根」として求められる。カーボンブラックや、シリカ等に適用される。
【0059】
「軟化点」は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度として定義される。
【0060】
「可塑剤の含有量」は、可塑剤によって伸展されたゴム成分中の可塑剤量も含む。同様に、「オイルの含有量」は、オイル伸展ゴムに含まれるオイル量も含む。
【0061】
[タイヤ]
以下本発明のタイヤについて、適宜、図面を参照しながら説明する。但し、図面はあくまで例示であって、本発明は、図面をもとに限定して解釈されるものではない。
【0062】
本発明のタイヤは、トレッド部およびベルト層を有するタイヤであって、前記トレッド部はタイヤ半径方向最外側の第一ゴム層と、前記第一ゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接する第二ゴム層とを少なくとも備え、前記ベルト層はタイヤ幅方向の幅が最も広い第一ベルト層と、前記第一ベルト層に隣接する第二ベルト層とを少なくとも備えている。
【0063】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの断面図である。
図1において、タイヤ1は、その断面幅がWtである。また、タイヤ1は、トレッド部を構成するタイヤ半径方向最外側の第一ゴム層2と、該第一ゴム層2とタイヤ半径方向内側で隣接する第二ゴム層3とを備えている。また、タイヤ1は、さらにタイヤ半径方向内側に、タイヤ幅方向の断面幅がW1と最も広い第一ベルト層5と、該第一ベルト層5のタイヤ半径方向外側に隣接し、タイヤ幅方向の断面幅がW2である第二ベルト層4とを備えている。トレッド部を構成するゴム層は少なくとも上記第一ゴム層と第二ゴム層の二層を備えていればよく、さらに、これらのタイヤ半径方向内側に追加の層を有し、全体として三層以上であってもよい。また、ベルト層は少なくとも上記第一ベルト層と第二ベルト層とを備えていればよく、さらに、これらのタイヤ半径方向内側または外側に追加の層を有し、全体として三層以上であってもよい。なお、
図1では、第一ゴム層2の厚さがH1で示され、第二ゴム層3の厚さがH2で示されている。
【0064】
図2は、本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドの一部の展開図である。
図2において、トレッド面は、タイヤ周方向に連続して延びる3本の周方向主溝6と、該周方向主溝6によって画された4つの陸部7とを有している。これら周方向主溝6のうち、タイヤ幅方向最外側の一対の周方向主溝によって画された、タイヤ幅方向最外側の一対の陸部7がショルダー陸部である。
図2では、周方向主溝6は、いずれも、直線状のものが形成されているが、周方向主溝は、例えば、周方向に沿って波状や、正弦状や、ジグザグ状に延びていてもよい。
【0065】
本発明のタイヤは、前記第一ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg1とし、前記第二ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg2とし、タイヤ回転軸を通る断面におけるタイヤ断面幅(mm)をWtとし、前記断面における第一ベルト層断面幅(mm)をW1とし、前記断面における第二ベルト層断面幅(mm)をW2とするとき、Tg1、Tg2、Wt、W1およびW2が以下の関係を満たしている。
(1) Tg1-Tg2<0
(2) (W1-16)/Wt≦0.75
(3) Tg2/(W2/W1)≦-8.0
【0066】
また、本発明のタイヤは、Tg1、Tg2、W1およびW2が、以下の関係を満たすことが好ましい。
(4) (Tg2/Tg1)/(W2/W1)≦1.00
(但し、Tg2は0未満である。)
【0067】
また、本発明のタイヤは、前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt1とし、前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt2とし、前記第一ゴム層の厚さをH1とし、前記第二ゴム層の厚さをH2とするとき、St1、St2、H1およびH2が、以下の関係を満たすことが好ましい。
(5) {St1×H1+St2×H2}/(H1+H2)<25.0
【0068】
<式(1)>
本発明のタイヤにおいて、式(1)の右辺は、-0.5が好ましく、より好ましくは-0.9、さらに好ましくは-1.0、さらに好ましくは-1.5、さらに好ましくは-1.9、さらに好ましくは-2.0、さらに好ましくは-2.5、さらに好ましくは-2.9、さらに好ましくは-3.0である。一方、Tg1-Tg2の値について、発明の効果の観点から、下限について特に制限はないが、通常、-5.0程度であってもよい。Tg1およびTg2は、いずれも、ゴム組成物を構成するゴム成分の種類や配合量、および、ゴム成分以外の添加剤の種類や配合量により適宜調整することができる。
【0069】
<式(2)>
本発明のタイヤにおいて、式(2)の右辺は、0.74が好ましく、より好ましくは0.73、さらに好ましくは0.72、さらに好ましくは0.70、さらに好ましくは0.68、さらに好ましくは0.65である。一方、(W1-16)/Wtの値について、発明の効果の観点から、下限について特に制限はないが、通常、0.60程度であってもよい。
【0070】
タイヤの断面幅Wtは、125mm以上が好ましく、150mm以上がより好ましく、175mm以上がさらに好ましい。また、タイヤの断面幅Wtは、305mm未満が好ましく、245mm未満がより好ましく、210mm未満がさらに好ましい。
【0071】
<式(3)>
本発明のタイヤにおいて、式(3)の右辺は、-9.0が好ましく、より好ましくは-10.0、さらに好ましくは-11.0、さらに好ましくは-12.0、さらに好ましくは-13.0、さらに好ましくは-14.0である。一方、Tg2/(W2/W1)の値について、発明の効果の観点から、下限について特に制限はないが、通常、-17.0程度であってもよい。Tg2の調節については上述のとおりである。
【0072】
W2/W1の値は、1未満であり、好ましくは0.98未満、より好ましくは0.96未満、さらに好ましくは0.95未満である。一方、W2/W1の値は、好ましくは0.70超であり、より好ましくは0.75超、さらに好ましくは0.80超である。
【0073】
<式(4)>
本発明のタイヤにおいて、式(4)の右辺は、0.98が好ましく、より好ましくは0.96、さらに好ましくは0.94、さらに好ましくは0.92、さらに好ましくは0.90、さらに好ましくは0.89である。一方、(Tg2/Tg1)/(W2/W1)の値について、発明の効果の観点から、下限について特に制限はないが、通常、0.40、あるいは、0.50程度であってもよい。Tg1およびTg2の調節については上述のとおりである。
【0074】
<Tg2>
本発明のタイヤにおいて、第二ゴム組成物のガラス転移温度(℃)をTg2とするとき、Tg2は0℃未満であることが好ましい。Tg2は、より好ましくは-5.0℃未満であり、さらに好ましくは-7.0℃未満であり、さらに好ましくは-9.0℃未満であり、さらに好ましくは-10.0℃以下であり、さらに好ましくは-10.0℃未満であり、さらに好ましくは-11.0℃以下であり、さらに好ましくは-12.0℃以下であり、さらに好ましくは-13.0℃以下である。Tg2の値について、発明の効果の観点から、下限について特に制限はないが、通常、-20.0℃、あるいは、-17.0℃程度であってもよい。Tg2の調節については上述のとおりである。
【0075】
<式(5)>
本発明のタイヤにおいて、式(5)の右辺は、23.0が好ましく、より好ましくは21.0、さらに好ましくは19.0、さらに好ましくは17.0、さらに好ましくは15.0、さらに好ましくは13.0である。一方、{St1×H1+St2×H2}/(H1+H2)の値について、発明の効果の観点から、下限について特に制限はないが、通常、10.0程度であってもよい。
【0076】
<St1、St2>
本発明のタイヤにおいて、第一ゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)St1と第二ゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)St2の少なくとも一つは25.0未満であることが好ましく、St1とSt2の両方が25.0未満であることがさらに好ましい。
【0077】
また、St1とSt2の少なくとも一つの値、または、St1とSt2の両方の値は、より好ましくは21.0未満、さらに好ましくは19.0未満、さらに好ましくは17.0未満、さらに好ましくは15.0未満、さらに好ましくは13.0未満である。一方、St1とSt2の少なくとも一つの値、または、St1とSt2の両方の値について、発明の効果の観点から、下限について特に制限はないが、通常、10.0程度であってもよい。
【0078】
<H1、H2>
本発明のタイヤにおいて、H1は、1.5mm超が好ましく、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。一方、H1は、6.5mm未満が好ましく、より好ましくは6mm以下、さらに好ましくは5mm以下である。H2についても、H1と同様である。
【0079】
<拡幅周方向溝>
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド面が、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向溝を有することが好ましい。トレッド部半径方向内側の溝幅がトレッド部表面よりも大きくなることで、旋回時にトレッド部の半径方向内側から変形を生じやすくさせることができるため、第二層でのエネルギーロスを生じやすくさせることができ高速旋回時のウェットグリップ性能が向上すると考えられるからである。拡幅周方向溝は、拡幅周方向主溝、拡幅周方向細溝および拡幅周方向サイプからなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0080】
図3は、本発明の一実施形態に係るタイヤのトレッドの一部の展開図である。
図3のトレッド面は、
図2のそれとの対比において、タイヤ中心線CL上の周方向主溝が、拡幅周方向主溝8となっている点において異なるものである。したがって、拡幅周方向主溝8以外についての説明は、
図2の場合と同様である。また、
図3では、拡幅周方向主溝8は、タイヤ中心線CL上に形成されているだけであるが、このような態様に限定されるものではなく、他の周方向主溝6が拡幅周方向主溝8となっているものであってもよい。なお、
図3において、拡幅周方向主溝8の破線は、タイヤ半径方向内側に存在する拡幅周方向主溝8の最大幅を表している。
【0081】
図4は、拡幅周方向主溝8の断面を表したものである。
図4において、拡幅周方向主溝の溝幅は、タイヤ半径方向内側に向かって一様に増加しているが、溝幅の増加はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、曲線状または階段状に細かな増減を繰り返しながら増加していてもよい。
【0082】
図5は、本発明の一実施形態に係るタイヤであって、タイヤ中心線に最も近い陸部に拡幅周方向細溝を有するタイヤのトレッドの一部の展開図である。
図5では、タイヤ中心線上を通る周方向主溝6に隣接する二つの陸部7の上に、それぞれ、拡幅周方向細溝9が形成されている。これら拡幅周方向細溝9は直線状であるが、これに限定されるものではなく、例えば、周方向に沿って波状や、正弦状や、ジグザグ状に延びていてもよい。また、拡幅周方向細溝が形成される陸部について特に制限はないが、タイヤ中心線上に位置する陸部に形成されていることが好ましく、または、タイヤ中心線上に周方向主溝が存在する場合には、
図5の拡幅周方向細溝9のように、タイヤ中心線に最も近い陸部に形成されていることが好ましい。
【0083】
<小穴>
本発明のタイヤにおいて、トレッド面のショルダー陸部は、開口面積が0.1mm
2超15mm
2未満の小穴を1個以上有することが好ましい。
図6では、一対のショルダー陸部7の上に、小穴10が形成されている。
図6はこのように小穴が形成されている点を除けば、
図2と同様である。当該小穴は排水性の向上に寄与するので、ショルダー陸部での排水性が向上し、ショルダー部での接地性が向上し、高速旋回時のウェットグリップ性能の向上に寄与すると考えられる。小穴のトレッド面への開口面積は、0.1mm
2超が好ましく、0.5mm
2超がより好ましく、1.0mm
2超がさらに好ましく、1.5mm
2超が特に好ましい。また、小穴のトレッド面への開口面積は、15mm
2未満が好ましく、10mm
2未満がより好ましく、7.0mm
2未満がさらに好ましく、5.0mm
2未満が特に好ましい。小穴の最深部の深さは、周方向主溝の最深部の深さの3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。また、小穴の最深部の深さは、周方向主溝の最深部の深さの80%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましい。
【0084】
<周方向細溝>
本発明のタイヤにおいて、トレッド面のショルダー陸部は、少なくとも1以上の周方向細溝を有することが好ましい。
図7では、一対のショルダー陸部7の上に、周方向細溝11が形成されている。
図7はこのように周方向細溝が形成されている点を除けば、
図2と同様である。ショルダー陸部の剛性を下げることができ、高速旋回時に、トレッド部が前記細溝を中心に変形し、接地しやすくなるため高速旋回時のウェットグリップ性能の向上に寄与する。
【0085】
[ゴム組成物]
以下、本発明のタイヤに係るゴム組成物、すなわち、トレッド部の第一ゴム層を構成する第一ゴム組成物および第二ゴム層を構成する第二ゴム組成物について説明する。以下の説明は、特に断りのない限り、第一ゴム組成物にも、第二ゴム組成物にも適用することができる。したがって、単に、ゴム組成物という場合は、第一ゴム組成物と第二ゴム組成物の双方を含む意味である。
【0086】
<ゴム成分>
本発明に係るゴム組成物、すなわち、第一ゴム組成物と第二ゴム組成物は、それぞれ、ゴム成分として、スチレンブタジエンゴムを含むことが好ましい。また、第一ゴム組成物に含まれるゴム成分および第二ゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分は、イソプレン系ゴムを含むことが好ましい。また、第一ゴム組成物に含まれるゴム成分および第二ゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分は、ブタジエンゴムを含むことが好ましい。また、第一ゴム組成物に含まれるゴム成分および第二ゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分は、ブタジエンゴムとイソプレン系ゴムとを含むことが好ましい。また、第一ゴム組成物に含まれるゴム成分および第二ゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分は、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムおよびイソプレン系ゴムを含むことが好ましい。また、第一ゴム組成物に含まれるゴム成分および第二ゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分は、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴムおよびイソプレン系ゴムからなることが好ましい。
【0087】
(SBR)
SBRとしては特に限定はなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)、これらの変性SBR(変性S-SBR、変性E-SBR)等が挙げられる。変性SBRとしては、末端および/または主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物等でカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するもの等)等が挙げられる。なかでもS-SBRおよび変性SBRが好ましい。さらに、これらSBRの水素添加物(水素添加SBR)等も使用することができる。これらのSBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
本発明で使用できるS-SBRとしては、JSR(株)、住友化学(株)、宇部興産(株)、旭化成(株)、ZSエラストマー(株)等によって製造販売されるS-SBRが挙げられる。
【0089】
SBRのスチレン含量は、前記St1やSt2の値に合わせて適宜選択されるものであるが、一例としては、ウェットグリップ性能や耐摩耗性の観点から、10質量%超が好ましく、15質量%超がより好ましく、20質量%超がさらに好ましい。また、グリップ性能の温度依存性および耐ブロー性能の観点からは、41質量%未満が好ましく、35質量%未満がより好ましく、26質量%未満がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される。
【0090】
SBRのビニル含量は、シリカとの反応性の担保、ウェットグリップ性能、ゴム強度、および耐摩耗性能の観点から、10モル%超が好ましく、13モル%超がより好ましく、15モル%超がさらに好ましい。また、SBRのビニル含量は、温度依存性の増大防止、破断伸び、および耐摩耗性能の観点から、70モル%未満が好ましく、50モル%未満がより好ましく、40モル%未満がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定される。
【0091】
SBRの重量平均分子量(Mw)は、ウェットグリップ性能の観点から、20万超が好ましく、25万超がより好ましく、30万超がさらに好ましい。また、架橋均一性の観点から、重量平均分子量は200万未満が好ましく、180万未満がより好ましく、150万未満がさらに好ましい。なお、本明細書において、SBRの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0092】
SBRのゴム成分中の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、45質量%超が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%超がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。一方、SBRのゴム成分中の含有量の上限値は特に制限されず、100質量%としてもよい。
【0093】
(BR)
BRとしては特に限定されるものではなく、例えば、シス含量が50モル%未満のBR(ローシスBR)、シス含量が90モル%超のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BR(ハイシス変性BR、ローシス変性BR)等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。変性BRとしては、上記SBRで説明したのと同様の官能基等で変性されたBRが挙げられる。これらのBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0094】
ハイシスBRとしては、例えば、日本ゼオン(株)、宇部興産(株)、JSR(株)等より市販されているものを使用することができる。ハイシスBRを含有することで低温特性および耐摩耗性能を向上させることができる。シス含量は、好ましくは95モル%超、より好ましくは96モル%超、さらに好ましくは97モル%以上である。なお、本明細書において、シス含量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析により算出される値である。
【0095】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル含量が、好ましくは1.8モル%未満、より好ましくは1.6モル%未満、さらに好ましくは1.5%モル以下であり、シス含量が、好ましくは95モル%超、より好ましくは96モル%超、さらに好ましくは97モル%以上である。希土類系BRとしては、例えば、ランクセス(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0096】
SPB含有BRは、1,2-シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散しているものが挙げられる。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)等より市販されているものを使用することができる。
【0097】
変性BRとしては、末端および/または主鎖がケイ素、窒素および酸素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む官能基によって変性された変性ブタジエンゴム(変性BR)が好適に用いられる。
【0098】
その他の変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3-ブタジエンの重合を行ったのち、スズ化合物を添加することにより得られ、さらに変性BR分子の末端がスズ-炭素結合で結合されているもの(スズ変性BR)等が挙げられる。また、変性BRは、水素添加されていないもの、水素添加されているもののいずれであってもよい。
【0099】
前記で列挙されたBRは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
BRの重量平均分子量(Mw)は、耐摩耗性能の観点から、30万超が好ましく、35万超がより好ましく、40万超がさらに好ましい。また、架橋均一性等の観点からは、200万未満が好ましく、100万未満がより好ましく、50万未満がさらに好ましい。なお、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、東ソー(株)製のGPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTIPORE HZ-M)による測定値を基に、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0101】
BRを含む場合のゴム成分中の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、50質量%未満が好ましく、40質量%未満がより好ましく、30質量%未満がさらに好ましい。一方、BRのゴム成分中の含有量の下限値は特に制限されず0質量%としてもよいが、例えば、1質量%超、5質量%超、10質量%超、15質量%超とすることもできる。
【0102】
(イソプレン系ゴム)
イソプレン系ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)および天然ゴム等タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。天然ゴムには、非改質天然ゴム(NR)の他に、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴム等も含まれる。これらのイソプレン系ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
NRとしては、特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを用いることができ、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等が挙げられる。
【0104】
イソプレン系ゴムを含有する場合のゴム成分中の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、50質量%未満が好ましく、45質量%未満がより好ましく、40質量%未満がさらに好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。一方、イソプレン系ゴムのゴム成分中の含有量の下限値は特に制限されず0質量%としてもよいが、例えば、1質量%超、5質量%超、10質量%超、20質量%超、25質量%超とすることもでき、30質量%以上とすることもできる。
【0105】
(その他のゴム成分)
本発明に係るゴム成分として、前記のイソプレン系ゴム、SBR、およびBR以外のゴム成分を含有してもよい。他のゴム成分としては、タイヤ工業で一般的に用いられる架橋可能なゴム成分を用いることができ、例えば、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム(SIBR)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、シリコーンゴム、塩化ポリエチレンゴム、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム等が挙げられる。これらその他のゴム成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0106】
<フィラー>
本発明に係るゴム組成物は、カーボンブラックおよび/またはシリカを含むフィラーを含むことができる。フィラーとしては、シリカを含むことが好ましく、カーボンブラックおよびシリカを含むことがより好ましく、カーボンブラックおよびシリカのみからなるフィラーとしてもよい。
【0107】
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、タイヤ工業において一般的なものを適宜利用することができ、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が挙げられる。また、カーボンブラックとしては、リサイクルカーボンブラックを使用することもできる。「再生カーボンブラック」とは、カーボンブラックを含む使用済みのタイヤ等の製品を粉砕し、粉砕物を焼成して得られるカーボンブラックであって、JIS K 6226-2:2003に準拠した熱重量測定法で、空気中の加熱で酸化燃焼させたとき、燃焼しない成分である灰分の質量(灰分量)の割合が13質量%以上であるカーボンブラックをいう。すなわち、前記酸化燃焼による減量分の質量(カーボン量)が87質量%未満である。再生カーボンブラックは、リサイクルカーボンブラックともいい、rCBで表すこともある。これらのカーボンブラックは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、10m2/g超が好ましく、30m2/g超がより好ましく、50m2/g超がさらに好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、200m2/g未満が好ましく、175m2/g未満がより好ましく、150m2/g未満がさらに好ましい。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217-2:2017「ゴム用カーボンブラック基本特性-第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定された値である。
【0109】
カーボンブラックの平均一次粒子径は、10nm超が好ましく、12nm超がより好ましく、14nm超がさらに好ましい。また、該平均一次粒子径は、26nm未満が好ましく、24nm未満がより好ましく、22nm以下がさらに好ましい。なお、カーボンブラックの平均一次粒子径は、前記測定方法により測定される。
【0110】
カーボンブラックを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、耐摩耗性能およびウェットグリップ性能の観点から、1質量部超が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部超がさらに好ましく、20質量部超がさらに好ましく、30質量部超がさらに好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。また、低燃費性能の観点からは、50質量部未満が好ましく、45質量部未満がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0111】
(シリカ)
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法により調製されたシリカ(無水シリカ)、湿式法により調製されたシリカ(含水シリカ)等、タイヤ工業において一般的なものを使用することができる。また、これらのシリカの他、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカも用いることができる。なかでもシラノール基が多いという理由から、湿式法により調製された含水シリカが好ましい。これらのシリカは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、低燃費性能および耐摩耗性能の観点から、140m2/g超が好ましく、150m2/g超がより好ましく、160m2/g超がさらに好ましく、175m2/g以上がさらに好ましい。また、低燃費性能および加工性の観点からは、350m2/g未満が好ましく、300m2/g未満がより好ましく、250m2/g未満がさらに好ましい。なお、本明細書におけるシリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0113】
シリカの平均一次粒子径は、10nm超が好ましく、12nm超がより好ましく、14nm超がさらに好ましい。また、該平均一次粒子径は、26nm未満が好ましく、24nm未満がより好ましく、22nm以下がさらに好ましい。なお、シリカの平均一次粒子径は、前記測定方法により測定される。
【0114】
シリカを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、20質量部超が好ましく、30質量部超がより好ましく、40質量部超がさらに好ましく、45質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、130質量部未満が好ましく、120質量部未満がより好ましく、110質量部未満がさらに好ましい。
【0115】
シリカとカーボンブラックの両方を含有する場合において、シリカとカーボンブラックのゴム成分100質量部に対する合計含有量は、耐摩耗性能の観点から、40質量部超が好ましく、50質量部超がより好ましく、60質量部超がさらに好ましい。また、低燃費性能および破断時伸びの観点からは、160質量部未満が好ましく、140質量部未満がより好ましく、120質量部未満がさらに好ましい。
【0116】
シリカとカーボンブラックの両方を含有する場合において、シリカの含有量は、低燃費性能、ウェットグリップ性能、および耐摩耗性能のバランスの観点から、カーボンブラックの含有量よりも多いことが好ましい。シリカとカーボンブラックの合計含有量に対するシリカの割合は、50質量%超が好ましく、70質量%超がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、80質量%超がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、90質量%超がさらに好ましい。
【0117】
(その他のフィラー)
フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ以外に、さらにその他のフィラーを用いてもよい。そのようなフィラーとしては、特に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、タルク、クレー等、タイヤ工業において従来から一般的に用いられているフィラーをいずれも用いることができる。これらのフィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
(シランカップリング剤)
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、タイヤ工業において、従来シリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができるが、例えば、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル系シランカップリング剤;下記化学式で示されるもの等のメルカプト系シランカップリング剤;ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤;γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のグリシドキシ系シランカップリング剤;3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系シランカップリング剤;3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン等のクロロ系シランカップリング剤等が挙げられる。なかでも、チオエステル系シランカップリング剤および/またはスルフィド系シランカップリング剤が好ましい。これらのシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
メルカプト系シランカップリング剤は、下記化学式(1)で表される化合物、および/または下記化学式(2)で表される結合単位Aと下記化学式(3)で表される結合単位Bとを含む化合物であることが好ましい。
【化1】
(式中、R
101、R
102、およびR
103は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシ、または-O-(R
111-O)
z-R
112(z個のR
111は、それぞれ独立して、炭素数1~30の2価の炭化水素基を表し;R
112は、炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、炭素数6~30のアリール、または炭素数7~30のアラルキルを表し;zは、1~30の整数を表す。)で表される基を表し;R
104は、炭素数1~6のアルキレンを表す。)
【化2】
【化3】
(式中、xは0以上の整数を表し;yは1以上の整数を表し;R
201は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシルもしくはカルボキシルで置換されていてもよい炭素数1~30のアルキル、炭素数2~30のアルケニル、または炭素数2~30のアルキニルを表し;R
202は、炭素数1~30のアルキレン、炭素数2~30のアルケニレン、または炭素数2~30のアルキニレンを表し;ここにおいて、R
201とR
202とで環構造を形成してもよい。)
【0120】
式(1)で表される化合物としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランや、下記化学式(4)で表される化合物(エボニックデグサ社製のSi363)等が挙げられ、下記化学式(4)で表される化合物を好適に使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化4】
【0121】
化学式(2)で示される結合単位Aと化学式(3)で示される結合単位Bとを含む化合物としては、例えば、モメンティブ社等より製造販売されているものが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
シランカップリング剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量(複数のシランカップリング剤を併用する場合は全ての合計量)は、シリカの分散性を高める観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、2.0質量部超がさらに好ましく、3.0質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の低下を防止する観点からは、20質量部未満が好ましく、12質量部未満がより好ましく、10質量部未満がさらに好ましく、9.0質量部未満がさらに好ましい。
【0123】
シランカップリング剤のシリカ100質量部に対する含有量は、シリカの分散性を高める観点から、1.0質量部超が好ましく、3.0質量部超がより好ましく、5.0質量部超がさらに好ましい。また、コストおよび加工性の観点からは、20質量部未満が好ましく、15質量部未満がより好ましく、12質量部未満がさらに好ましい。
【0124】
<可塑剤>
本発明に係るゴム組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、例えば、樹脂、オイル、液状ゴム、エステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤の総量とは、これら可塑剤の含有量すべてを合計した量である。可塑剤の総量には、可塑剤によって伸展されたゴム成分中の可塑剤量も含む。例えば、オイルの含有量は、油展ゴムに含まれるオイル量も含む。
【0125】
(樹脂)
樹脂としては、特に限定されないが、タイヤ工業で慣用される石油樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0126】
≪石油樹脂≫
石油樹脂としては、C5系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等を使用することができる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0127】
C5系石油樹脂とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
【0128】
芳香族系石油樹脂とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。芳香族系石油樹脂の具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、および芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。
【0129】
芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体またはα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
【0130】
C5C9系石油樹脂とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分およびC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9系石油樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
【0131】
≪テルペン系樹脂≫
テルペン系樹脂としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、ジペンテン等のテルペン化合物から選ばれる少なくとも1種からなるポリテルペン樹脂;前記テルペン化合物と芳香族化合物とを原料とする芳香族変性テルペン樹脂;テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料とするテルペンフェノール樹脂;並びにこれらのテルペン系樹脂に水素添加処理を行ったもの(水素添加されたテルペン系樹脂)が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂の原料となる芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルトルエン等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0132】
≪ロジン系樹脂≫
ロジン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化等で変性したロジン変性樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0133】
≪フェノール系樹脂≫
フェノール系樹脂としては、特に限定されないが、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールアセチレン樹脂、オイル変性フェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0134】
≪軟化点≫
樹脂の軟化点は、ウェットグリップ性能の観点から、60℃超が好ましく、70℃超がより好ましく、80℃超がさらに好ましい。また、加工性、ゴム成分とフィラーとの分散性向上という観点からは、150℃未満が好ましく、140℃未満がより好ましく、130℃未満がさらに好ましい。なお、本明細書において、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度として定義され得る。
【0135】
≪含有量≫
樹脂を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、1質量部超が好ましく、3質量部超がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、発熱性抑制の観点からは、80質量部未満が好ましく、60質量部未満がより好ましく、50質量部未満がさらに好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0136】
(オイル)
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂等が挙げられる。前記プロセスオイルとしてはパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等が挙げられる。また、環境対策で多環式芳香族(polycyclic aromatic compound:PCA)化合物の含量の低いプロセスオイルを使用することもできる。前記低PCA含量プロセスオイルとしては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE)、重ナフテン系オイル等が挙げられる。また、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合機やエンジンに用いられた後の廃油や、飲食店で使用された廃食用油を精製したものを用いてもよい。
【0137】
オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、5質量部超が好ましく、10質量部超がより好ましく、15質量部以上がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、120質量部未満が好ましく、80質量部未満がより好ましく、40質量部未満がさらに好ましい。なお、本明細書において、オイルの含有量には、オイル伸展ゴムに含まれるオイル量も含まれる。
【0138】
(液状ゴム)
液状ゴムは、常温(25℃)で液体状態のポリマーであれば特に限定されないが、例えば、液状ブタジエンゴム(液状BR)、液状スチレンブタジエンゴム(液状SBR)、液状イソプレンゴム(液状IR)、液状スチレンイソプレンゴム(液状SIR)、液状ファルネセンゴム等が挙げられる。これらの液状ゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0139】
液状ゴムを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部超が好ましく、2質量部超がより好ましく、3質量部超がさらに好ましく、5質量部超がさらに好ましい。また、液状ゴムの含有量は、50質量部未満が好ましく、40質量部未満がより好ましく、20質量部未満がさらに好ましい。
【0140】
(エステル系可塑剤)
エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジイソブチル(DIBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アゼライン酸ジ2-エチルヘキシル(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジブチル(DBP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリエチル(TEP)、リン酸トリメチル(TMP)、チミジントリリン酸(TTP)、リン酸トリクレシル(TCP)、リン酸トリキシレニル(TXP)等が挙げられる。これらのエステル系可塑剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0141】
(可塑剤の総量)
可塑剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、5質量部超が好ましく、10質量部超がより好ましく、15質量部超がさらに好ましい。また、加工性の観点からは、120質量部未満が好ましく、80質量部未満がより好ましく、40質量部未満がさらに好ましい。
【0142】
<その他の配合剤>
本発明に係るゴム組成物には、前記成分以外にも、従来タイヤ工業で一般に使用される配合剤、例えば、ワックス、加工助剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、加硫剤、加硫促進剤等を適宜含有することができる。
【0143】
(ワックス)
ワックスを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐候性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、ブルームによるタイヤの白色化防止の観点からは、10質量部未満が好ましく、7.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0144】
(加工助剤)
加工助剤としては、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物等が挙げられる。これらの加工助剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加工助剤としては、例えば、Schill+Seilacher社、パフォーマンスアディティブス社等より市販されているものを使用することができる。
【0145】
加工助剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の改善効果を発揮させる観点から、0.5質量部超が好ましく、1質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性および破壊強度の観点からは、10質量部未満が好ましく、8.0質量部未満がより好ましく、5.0質量部未満がさらに好ましい。
【0146】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられ、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系老化防止剤、および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のキノリン系老化防止剤が好ましい。これらの老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0147】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、ゴムの耐オゾンクラック性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能やウェットグリップ性能の観点からは、10質量部未満が好ましく、7質量部未満がより好ましく、5質量部未満がさらに好ましい。
【0148】
(ステアリン酸)
ステアリン酸を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、加硫速度の観点からは、10質量部以下が好ましく、5.0質量部以下がより好ましい。
【0149】
(酸化亜鉛)
酸化亜鉛を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、0.5質量部超が好ましく、1.0質量部超がより好ましく、1.5質量部超がさらに好ましい。また、耐摩耗性能の観点からは、10質量部未満が好ましく、7質量部未満がより好ましく、5質量部未満がさらに好ましい。
【0150】
(加硫剤)
加硫剤としては硫黄が好適に用いられる。硫黄としては、粉末硫黄、油処理硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄等を用いることができる。
【0151】
加硫剤として硫黄を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、十分な加硫反応を確保する観点から、0.1質量部超が好ましく、0.3質量部超がより好ましく、0.5質量部超がさらに好ましい。また、劣化防止の観点からは、5.0質量部未満が好ましく、4.0質量部未満がより好ましく、3.0質量部未満がさらに好ましい。なお、加硫剤として、オイル含有硫黄を使用する場合の加硫剤の含有量は、オイル含有硫黄に含まれる純硫黄分の合計含有量とする。
【0152】
硫黄以外の加硫剤としては、例えば、アルキルフェノール・塩化硫黄縮合物、1,6-ヘキサメチレン-ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン等が挙げられる。これらの硫黄以外の加硫剤は、田岡化学工業(株)、ランクセス(株)、フレクシス社等より市販されているものを使用することができる。
【0153】
(加硫促進剤)
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド-アミン系若しくはアルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤等が挙げられる。これら加硫促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0154】
なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、およびチアゾール系加硫促進剤からなる群から選ばれる1以上の加硫促進剤を含む場合が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤とグアニジン系加硫促進剤とからなる場合がより好ましい。
【0155】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)等が挙げられる。なかでも、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)が好ましい。
【0156】
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-ビフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)が好ましい。
【0157】
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等が挙げられる。なかでも、2-メルカプトベンゾチアゾールが好ましい。
【0158】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部超が好ましく、1.5質量部超がより好ましく、2質量部超がさらに好ましい。また、加硫促進剤のゴム成分100質量部に対する含有量は、8質量部未満が好ましく、7質量部未満がより好ましく、6質量部未満がさらに好ましい。加硫促進剤の含有量を上記範囲内とすることにより、破壊強度および伸びが確保できる傾向がある。
【0159】
[製造]
本発明に係るゴム組成物、すなわち、第一ゴム層を構成する第一ゴム組成物および第二ゴム層を構成する第二ゴム組成物は、いずれも、公知の方法により製造することができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、密閉式混練機(バンバリーミキサー、ニーダー等)等のゴム混練装置を用いて混練りすることにより製造できる。
【0160】
混練り工程は、例えば、加硫剤および加硫促進剤以外の配合剤および添加剤を混練りするベース練り工程と、ベース練り工程で得られた混練物に加硫剤および加硫促進剤を添加して混練りするファイナル練り(F練り)工程とを含んでなるものである。さらに、前記ベース練り工程は、所望により、複数の工程に分けることもできる。
【0161】
混練条件としては特に限定されるものではないが、例えば、ベース練り工程では、排出温度150~170℃で3~10分間混練りし、ファイナル練り工程では、70~110℃で1~5分間混練りする方法が挙げられる。
【0162】
本発明のタイヤは、前記第一ゴム組成物および第二ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造できる。すなわち、本発明のタイヤは、未加硫の第一ゴム組成物および第二ゴム組成物を、所定の形状の口金を備えた押し出し機で、第一ゴム層および第二ゴム層の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型して未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより製造することができる。加硫条件としては、特に限定されるものではなく、例えば、150~200℃で10~30分間加硫する方法が挙げられる。
【0163】
[用途]
本発明のタイヤは、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを問わず、いずれの用途にも使用することができる。また、競技用タイヤ、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、モーターサイクル用タイヤとして使用することができる。このうち、乗用車用タイヤが好ましい。ここで、乗用車用タイヤとは、四輪で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであり、その最大負荷能力が1000kg以下のものを指す。
【0164】
また、本発明のタイヤは、上記それぞれのタイヤのサマータイヤ、ウインタータイヤ、スタッドレスタイヤとして使用することができる。
【実施例0165】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
【0166】
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
NR:TSR20
SBR1:下記製造例1で合成した変性S-SBR(スチレン含量:40質量%、ビニル含量:25モル%、非油展品)
SBR2:下記製造例2で合成したスチレンブタジエンゴム(変性S-SBR、スチレン含量:25質量%、ビニル含量:25モル%、非油展品)
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR(登録商標)150B(ビニル含量:1.5モル%、シス含量:97モル%、Mw:44万)
CB(カーボンブラック):Birla Carbon Brasil Ltda社製のN220(N2SA:115m2/g、平均一次粒子径:22nm)
シリカ:エボニックデグサ社製のULTRASIL(登録商標)VN3(N2SA:175m2/g、平均一次粒子径:18nm)
カップリング剤(シランカップリング剤):エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル:H&R社製のVivaTec500(TDAEオイル)
樹脂:クレイトン社製のSylvares SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(6PPD、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(CBS、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(DPG、1,3-ジフェニルグアニジン(DPG))
【0167】
製造例1:SBR1の合成
スチレンおよび1,3-ブタジエンの比率は、目的物において、スチレン含量が40質量%となるように調整する。窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、および1,3-ブタジエンを仕込む。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始する。断熱条件で重合し、重合転化率が99%に達した時点で、1,3-ブタジエンを追加し、更に重合させた後、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて反応を行う。重合反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加する。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥し、SBR1を得る。
【0168】
製造例2:SBR2の合成
スチレンおよび1,3-ブタジエンの比率は、目的物において、スチレン含量が25質量%となるように調整する。窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、および1,3-ブタジエンを仕込む。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n-ブチルリチウムを添加して重合を開始する。断熱条件で重合し、重合転化率が99%に達した時点で1,3-ブタジエンを追加し、更に重合させた後、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(単量体)とそれらのオリゴマー成分との混合物を変性剤として加えて、変性反応を行う。反応終了後、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを添加する。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥し、SBR2を得る。
【0169】
[実施例および比較例]
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150~160℃になるまで1~10分間混練りし、混練物を得る。次に、2軸オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄および加硫促進剤を添加し、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。得られた未加硫ゴム組成物を用いて、トレッドの第一層および第二層の形状に合わせて成形し、ベルト層を含む他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃で加硫して、表2-1に記載のタイヤサイズA(205/55R16)の試験用タイヤ、および、表2-2に記載のタイヤサイズB(195/65R15)の試験用タイヤを得る。
【0170】
第一ベルト層と第二ベルト層の位置関係については、第一ベルト層をタイヤ半径方向内側に配置し、そのタイヤ半径方向外側に第二ベルト層を配置するものとする。但し、実施例16のみ逆の配置とする。すなわち、実施例16は、実施例8のタイヤにおいて、第一ベルト層をタイヤ半径方向外側に配置し、そのタイヤ半径方向内側に第二ベルト層を配置するものとする。
【0171】
各試験用タイヤのトレッドパターンは4パターンとする。I型は
図2のように拡幅周方向溝、小穴、周方向細溝のいずれも有さないもの、II型は
図5のようにタイヤ中心線に最も近い一対の陸部の双方にそれぞれ1本の拡幅周方向細溝を有するものであって、それ以外はI型と同じもの、III型は
図6のように一対のショルダー陸部の双方にそれぞれ小穴を有するものであって、それ以外はI型と同じもの、IV型は
図7のように一対のショルダー陸部の双方にそれぞれ1本の周方向細溝を有するものであって、それ以外はI型と同じものである。
【0172】
<ゴム層の物性>
タイヤを構成する各ゴム層について、以下の方法により、物性を測定する。結果は、各ゴム層を構成するゴム組成物についての、表1の対応する欄にも記載する。
【0173】
(ゴム組成物のガラス転移温度(Tg))
各試験用タイヤのトレッド部の所定のゴム層(第二ゴム層)の内部から、タイヤ周方向が長辺かつタイヤ半径方向が厚みとなるように、長さ20mm×幅4mm×厚さ1mmで切り出して作製した各ゴム試験片について、GABO社製のイプレクサーシリーズを用いて、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%、および昇温速度2℃/minの条件下で損失正接tanδの温度分布曲線を測定し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度(tanδピーク温度)をガラス転移温度(Tg)とする。
【0174】
<タイヤの評価>
各試験用タイヤについて、以下の方法により、評価する。結果は、表2-1および表2-2に記載する。
【0175】
(高速WET旋回性)
得られた試験用タイヤAを正規リムに組付け、250kPa空気を充填した後、国産FF車(2000cc)の全輪に取り付ける。試験用タイヤを装着した状態で、時速100kmで湿潤路面上を走行させた際の、旋回性能を5点満点で官能評価し、同様評価を20人のドライバーで行い、評価結果の合計点数を算出する。算出結果について、基準比較例を100として指数化し、それぞれのタイヤの評価結果を得る。
(高速WET旋回性指数)=(各評価タイヤの合計点数)/(基準比較例の合計点数)×100
【0176】
タイヤサイズBの試験用タイヤについては、空気圧を230kPaとしたこと以外は、タイヤサイズBの試験用タイヤの場合と同様にして、評価結果を得る。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
上記表2-1と表2-2において、「○」は所与の条件に適合していることを意味し、「×」は適合していないことを意味する。
【0181】
<実施形態>
以下に、好ましい実施形態を示す。
【0182】
[1]トレッド部およびベルト層を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ半径方向最外側の第一ゴム層と、前記第一ゴム層のタイヤ半径方向内側に隣接する第二ゴム層とを少なくとも備え、
前記ベルト層は、タイヤ幅方向の幅が最も広い第一ベルト層と、前記第一ベルト層に隣接する第二ベルト層とを少なくとも備え、
前記第一ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg1とし、前記第二ゴム層のガラス転移温度(℃)をTg2とし、タイヤ回転軸を通る断面におけるタイヤ断面幅(mm)をWtとし、前記断面における第一ベルト層断面幅(mm)をW1とし、前記断面における第二ベルト層断面幅(mm)をW2とするとき、Tg1、Tg2、Wt、W1およびW2が以下の関係を満たし、好ましくは、少なくとも、式(1)の右辺が-0.5であるか、または、式(2)の右辺が0.74もしくは0.73であるか、または、式(3)の右辺が-9.0もしくは-10.0であるタイヤ。
(1) Tg1-Tg2<0
(2) (W1-16)/Wt≦0.75
(3) Tg2/(W2/W1)≦-8.0
[2]前記第二ゴム層のゴム組成物が充填剤を含み、前記充填剤のシリカの含有量が80質量%以上、好ましくは80質量%超、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは90質量%超である、上記[1]記載のタイヤ。
[3]式(1)の右辺が-0.9、好ましくは-1.0、より好ましくは-1.5、さらに好ましくは-1.9、さらに好ましくは-2.0、さらに好ましくは-2.5である、上記[1]または[2]記載のタイヤ。
[4]式(1)の右辺が-2.9、好ましくは-3.0である、上記[1]または[2]記載のタイヤ。
[5]式(2)の右辺が0.72、好ましくは0.70、より好ましくは0.68、さらに好ましくは0.65である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[6]式(3)の右辺が-11.0、好ましくは-12.0、より好ましくは-13.0、さらに好ましくは-14.0である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[7]Tg1、Tg2、W1およびW2が、以下の関係を満たし、好ましくは、少なくとも、式(4)の右辺が0.98、より好ましくは0.96、さらに好ましくは0.94、さらに好ましくは0.92、さらに好ましくは0.90、さらに好ましくは0.89であるか、または、Tg2が-5.0℃未満、より好ましくは-7.0℃未満、さらに好ましくは-9.0℃未満である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のタイヤ。
(4) (Tg2/Tg1)/(W2/W1)≦1.00
(但し、Tg2は0未満である。)
[8]Tg2が-10.0以下、好ましくは-10.0未満、より好ましくは-11.0以下、さらに好ましくは-12.0以下、さらに好ましくは-13.0以下である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[9]前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt1とし、前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt2とするとき、St1とSt2の少なくとも一つまたはSt1とSt2の両方が、25.0未満、好ましくは21.0未満、より好ましくは19.0未満、さらに好ましくは17.0未満、さらに好ましくは15.0未満、さらに好ましくは13.0未満である、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[10]前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt1とし、前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の総スチレン量(質量%)をSt2とし、前記第一ゴム層の厚さをH1とし、前記第二ゴム層の厚さをH2とするとき、St1、St2、H1およびH2が、以下の関係を満たし、好ましくは式(5)の右辺が23.0、より好ましくは21.0、さらに好ましくは19.0、さらに好ましくは17.0、さらに好ましくは15.0、さらに好ましくは13.0である、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のタイヤ。
(5) {St1×H1+St2×H2}/(H1+H2)<25.0
[11]前記第一ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分および前記第二ゴム層のゴム組成物に含まれるゴム成分の少なくとも一つのゴム成分がイソプレン系ゴムを含む、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[12]前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ周方向に延び、かつ、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向溝を有し、
前記拡幅周方向溝が、拡幅周方向主溝、拡幅周方向細溝および拡幅周方向サイプからなる群から選択される少なくとも一つである、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[13]前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記周方向主溝の少なくとも一つが、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向主溝である、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[14]前記トレッド部のトレッド面が、タイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記陸部のうち少なくとも一つの陸部が、タイヤ周方向に延び、かつ、溝幅がタイヤ半径方向内側で広がっている拡幅周方向細溝を有し、
前記拡幅周方向細溝を有する少なくとも一つの陸部が、タイヤ中心線上に位置する陸部であるか、または、タイヤ中心線上に周方向主溝が存在する場合にはタイヤ中心線に最も近い陸部である、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のタイヤ。
[15]前記トレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記2以上の周方向主溝のうちタイヤ幅方向最外側の一対の周方向主溝によって画された、タイヤ幅方向最外側の一対の陸部をショルダー陸部とするとき、前記ショルダー陸部が、開口面積が0.1超15未満mm2、好ましくは0.5超10未満mm2、より好ましくは1.0超7.0未満mm2、さらに好ましくは1.5超5.0未満mm2の小穴を1個以上有する、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載のタイヤ。
[16]前記トレッド面がタイヤ周方向に連続して延びる2以上の周方向主溝と、前記周方向主溝によって画された陸部とを有し、
前記2以上の周方向主溝のうちタイヤ幅方向最外側の一対の周方向主溝によって画された、タイヤ幅方向最外側の一対の陸部をショルダー陸部とするとき、前記ショルダー陸部が、少なくとも1以上の周方向細溝を有する、上記[1]~[15]のいずれか1項に記載のタイヤ。