IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

<>
  • 特開-積層型電子部品 図1
  • 特開-積層型電子部品 図2
  • 特開-積層型電子部品 図3
  • 特開-積層型電子部品 図4
  • 特開-積層型電子部品 図5
  • 特開-積層型電子部品 図6
  • 特開-積層型電子部品 図7
  • 特開-積層型電子部品 図8
  • 特開-積層型電子部品 図9
  • 特開-積層型電子部品 図10
  • 特開-積層型電子部品 図11
  • 特開-積層型電子部品 図12
  • 特開-積層型電子部品 図13
  • 特開-積層型電子部品 図14
  • 特開-積層型電子部品 図15
  • 特開-積層型電子部品 図16
  • 特開-積層型電子部品 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024102819
(43)【公開日】2024-07-31
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215276
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】10-2023-0008270
(32)【優先日】2023-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0048835
(32)【優先日】2023-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヤンーセオク
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD04
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082PP09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本体の外表面の少なくとも一部上にワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層を配置することにより、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させる積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含み、第1方向に対向する第1面1及び第2面2、第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体110と、第3面及び第4面上に配置される外部電極131、132と、を含み、本体の外表面のうち少なくとも一部上に、ワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層140が配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含み、前記第1方向に対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、前記第1面~前記第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体と、
前記第3面及び前記第4面上に配置される外部電極と、を含み、
前記本体の外表面のうち少なくとも一部上に、ワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層が配置される、積層型電子部品。
【請求項2】
前記保護層は、前記第1面、前記第2面、前記第5面及び前記第6面のうち、前記第1面及び前記第2面上に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記保護層は、前記第1面、前記第2面、前記第5面及び前記第6面のうち、前記第5面及び前記第6面上に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記保護層は、前記第1面、前記第2面、前記第5面及び前記第6面上に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
複数個の前記酸化物のうち少なくとも一部は、一端が前記本体と接するように配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
複数個の前記酸化物のうち少なくとも一部は、互いに連結されて2次元構造及び3次元構造のうち一つ以上を構成する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記ワイヤ形態は、ワイヤの内部が充填された柱形状、前記ワイヤの内部に中空構造を有するチューブ形状、及び前記ワイヤ及び前記ワイヤから分岐したサブワイヤを有する枝形状のうち一つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記ワイヤ形態の平均長さは1nm以上10000nm以下、又は平均直径は1nm以上300nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記ワイヤ形態の平均長さに対する平均直径の比率は1/3以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
複数個の前記酸化物が、前記保護層が配置される本体の表面となす平均角度は45度以上135度以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
複数個の前記酸化物は、Ti、Ba、Zn、Mg、Si、Sn及びInのうち一つ以上を含む酸化物を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記保護層上に、シラン系化合物及びフッ素系樹脂のうち一つ以上を含む追加保護層が配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記保護層は、水となす接触角が150度以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記追加保護層は、水となす接触角が155度以上である、請求項12に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記外部電極は、前記第3面又は前記第4面上に配置されて前記内部電極と連結される接続部、及び前記第3面又は前記第4面から前記第1面、前記第2面、前記第5面及び前記第6面のうち一つ以上に延長されて配置されるバンド部を含み、
前記保護層は、前記本体のうち外部電極が配置されていない領域及び前記バンド部と本体との間に配置される、請求項1から14のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
誘電体層及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含み、前記第1方向に対向する第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、前記第1面~前記第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む積層体と、
前記第5面及び前記第6面上に配置されるサイドマージン部と、
前記第3面及び前記第4面上に配置される外部電極と、を含み、
前記積層体と前記サイドマージン部との間の少なくとも一部に、ワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層が配置される、積層型電子部品。
【請求項17】
前記保護層は、前記積層体の前記第1面及び前記第2面の一部上に延長されて配置される、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記保護層は、前記サイドマージン部の外表面上に延長されて配置される、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
複数個の前記酸化物の一端は、前記積層体と前記サイドマージン部が対向する面のうち一つ以上と接するように配置される、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項20】
複数個の前記酸化物のうち少なくとも一部は、互いに連結されて2次元構造及び3次元構造のうち一つ以上を構成する、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項21】
前記ワイヤ形態は、ワイヤの内部が充填された柱形状、前記ワイヤの内部に中空構造を有するチューブ形状、及び前記ワイヤ及び前記ワイヤから分岐したサブワイヤを有する枝形状のうち一つ以上を含む、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項22】
前記ワイヤ形態の平均長さは1nm以上10000nm以下、又は平均直径は1nm以上300nm以下である、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項23】
前記ワイヤ形態の平均長さに対する平均直径の比率は1/3以下である、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項24】
複数個の前記酸化物が、前記保護層が配置される積層体の表面となす平均角度は45度以上135度以下である、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項25】
複数個の前記酸化物は、Ti、Ba、Zn、Mg、Si、Sn及びInのうち一つ以上を含む酸化物を含む、請求項16に記載の積層型電子部品。
【請求項26】
前記保護層上に、シラン系化合物及びフッ素系樹脂のうち一つ以上を含む追加保護層が配置される、請求項16から25のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
各種電子機器の小型化及び高出力化に伴う小型化及び高容量化により、積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化が必要となる場合がある。最近、積層セラミックキャパシタでは、容量形成部が占める比重を向上させるために、カバー部及びマージン部の厚さを減少させる試みがあった。
【0004】
しかし、カバー部及びマージン部の厚さを薄くし過ぎると、容量形成部の露出可能性が高くなり、特にサイドマージンを別途取り付ける構造を有する積層セラミックキャパシタの場合、微細な隙間を介して水分が浸透することがある。これにより、積層セラミックキャパシタの絶縁抵抗の低下、絶縁破壊、及び耐湿信頼性の低下などの問題を招くことがある。
【0005】
したがって、積層型電子部品の小型化及び高容量化を容易に達成しながらも耐湿信頼性の低下を防止することができる構造的設計が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの目的の一つは、カバー部及びマージン部の厚さが薄くなる場合、耐湿信頼性が低下するという問題を解決することである。
【0007】
本発明のいくつかの目的の一つは、サイドマージン部を別途取り付ける積層型電子部品の構造において、サイドマージン部及び本体に発生し得る隙間を介して湿気が浸透し、積層型電子部品の耐湿信頼性が低下するという問題を解決することである。
【0008】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含み、上記第1方向に対向する第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む本体と、上記第3面及び第4面上に配置される外部電極と、を含み、上記本体の外表面のうち少なくとも一部上に、ワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層が配置される。
【0010】
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含み、上記第1方向に対向する第1面及び第2面、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面を含む積層体と、上記第5面及び第6面上に配置されるサイドマージン部と、上記第3面及び第4面上に配置される外部電極と、を含み、上記本体と上記サイドマージン部との間の少なくとも一部に、ワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層が配置される。
【発明の効果】
【0011】
本発明のいくつかの効果の一つは、本体の外表面の少なくとも一部上にワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層を配置することにより、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0012】
本発明のいくつかの効果の一つは、本体とサイドマージン部との間の少なくとも一部に、ワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層を配置することにより、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0013】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による本体を示す斜視図である。
図3図1のI-I'線に沿った断面図である。
図4図1のII-II線に沿った断面図である。
図5】一実施例による本体を分解して示す分解斜視図である。
図6図4のP領域の拡大図である。
図7】(a)、(b)、(c)は一実施例によるワイヤ形態の様々な形態を示す模式図である。
図8】一実施例による積層型電子部品を示す斜視図である。
図9図8のIII-III'線に沿った断面図である。
図10】一実施例による積層型電子部品を示す斜視図である。
図11図10のIV-IV'線に沿った断面図である。
図12】(a)及び(b)は、比較例によるサンプルにおいて、水との接触角を測定した結果を模式的に示したものであり、(c)及び(d)は、実施例によるサンプルにおいて、水との接触角を測定した結果を模式的に示したものである。
図13】一実施例による積層型電子部品の第3方向の中心部まで研磨した第1方向及び第2方向の断面図である。
図14】本発明の他の一実施形態による積層型電子部品を示す斜視図である。
図15】一実施例による積層体を示す斜視図である。
図16図14のV-V'線に沿った断面図である。
図17図16のK領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0016】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
図面において、第1方向は、誘電体層を挟んで第1内部電極及び第2内部電極が交互に配置される方向又は厚さT方向、上記第1方向と垂直な方向である第2方向及び第3方向のうち、上記第2方向は長さL方向、上記第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0018】
図1は、 本発明の一実施形態による積層型電子部品を示す斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態による本体を示す斜視図であり、図3は、図1のI-I'線に沿った断面図であり、図4は、図1のII-II線に沿った断面図であり、図5は、本発明の一実施例による本体を分解して示す分解斜視図であり、図6は、図4のP領域の拡大図であり、図7の(a)、(b)、(c)は、一実施例によるワイヤ形態の様々な形態を示す模式図である。
【0019】
以下では、図1図7を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。
【0020】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含み、上記第1方向に対向する第1面及び第2面1、2、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面及び第4面3、4、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5面及び第6面5、6を含む本体110と、上記第3面及び第4面上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記本体の外表面のうち少なくとも一部上に、ワイヤ形態の酸化物141を複数個含む保護層140が配置される。
【0021】
本体110は、誘電体層111及び誘電体層111と交互に配置される内部電極121、122を含む。
【0022】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0023】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、上記第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。
【0024】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に限定されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)等が挙げられる。
【0026】
また、上記誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0027】
一方、誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はない。例えば、誘電体層111の平均厚さtdは0.2μm以上2μm以下であってもよく、積層型電子部品100の高容量化及び小型化をより容易に達成するために誘電体層111の平均厚さtdは0.35μm以下であってもよい。
【0028】
誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の平均厚さtdを意味することができる。
【0029】
誘電体層111の平均厚さtdは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、一つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0030】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の一面及び他面に配置されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0031】
上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成することができる。
【0032】
カバー部112、113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0033】
カバー部112、113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、カバー部112、113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0034】
一方、カバー部112、113の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下であってもよい。
【0035】
カバー部112、113の平均厚さは第1方向のサイズを意味することができ、容量形成部Acの上部又は下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0036】
一実施例において、上記容量形成部Acの第3方向の一面及び他面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0037】
図2を参照すると、マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と、第6面6に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記本体110の第3方向(幅方向)の両端面に配置されることができる。
【0038】
一方、マージン部114、115は、図2に示すように、第1内部電極121及び第2内部電極122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0039】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0040】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0041】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0042】
マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であってもよい。
【0043】
マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができ、容量形成部Acの側面で等間隔の5個の地点で測定したマージン部114、115の第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0044】
内部電極121、122は、誘電体層111と第1方向に交互に配置される。内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ連結されることができる。具体的に、第1内部電極121の一端は第3面に連結され、第2内部電極122の一端は第4面に連結されることができる。すなわち、一実施例において、内部電極121、122は、第3面3又は第4面4と接することができる。
【0045】
図2及び図3に示すように、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極130が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極140が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0046】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極140とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4において一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3において一定距離離隔して形成されることができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0047】
図5を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0048】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0049】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
本体110の第3面及び第4面3、4上には外部電極131、132が配置される。
【0051】
外部電極131、132は、第3面3上に配置される第1外部電極131及び第4面4上に配置される第2外部電極132を含むことができる。
【0052】
本発明では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0053】
図3を参照すると、外部電極131、132は、本体の第3面3及び第4面4と接する電極層131a、132a、及び電極層上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。
【0054】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0055】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であってもよい。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0056】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち一つ以上であってもよい。
【0057】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0058】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であってもよい。また、めっき層は、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0059】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100において、本体110の外表面のうち少なくとも一部上に、ワイヤ形態の酸化物141を複数個含む保護層140が配置される。
【0060】
従来の場合、積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成するために、カバー部112、113の厚さ又はマージン部114、115の幅を薄く形成する試みがあった。しかし、カバー部112、113の厚さ又はマージン部114、115の幅を過度に薄く形成する場合、積層型電子部品の実装、作動及び外部環境によるクラックの発生により、容量形成部Acが露出する可能性が高くなり、これは積層型電子部品の耐湿信頼性を低下させる原因となり得る。
【0061】
このような耐湿信頼性の低下を抑制するために、マージン部112、113の幅及びカバー部114、115の厚さを向上させるか、焼成過程における組成、温度及び圧力等の変数を調整して本体110を緻密化する方法を使用することができるが、積層型電子部品の小型化及び高容量化が容易でない可能性があり、微細構造を細かく調節し難いおそれがあるため、電気的特性の低下が発生する可能性がある。
【0062】
そこで、本発明では、積層型電子部品100の本体110の外表面のうち少なくとも一部上に、ワイヤ形態の酸化物141を複数個含む保護層140を配置して本体110に疎水性特性を付与すると同時に、微細な隙間を充填することにより、積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させようとする。
【0063】
一実施例において、本体110の外表面は、第1面1~第6面6のうち、外部電極131、132で覆われていない面である第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6のうち少なくともいずれか一面であってもよい。保護層140は、このような本体110の外表面のうち少なくとも一部上に配置されることができる。
【0064】
図6を参照すると、保護層140は、ワイヤ形態の酸化物141を複数個含むことができる。ワイヤ形態の酸化物141は、ワイヤ形態を有することによって本体110の表面に存在し得る微細な隙間を充填することができ、本体110の最外表面の表面積を向上させることで、撥水性を付与することができる。
【0065】
上記複数個の酸化物141を形成する方法は特に限定されない。例えば、一実施例において、ワイヤ形態の酸化物141は、本体110の外表面上に前駆体物質を形成した後、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)又は水熱合成(Hydrothermal Reaction)によって成長させることで形成することができる。これにより、複数個の酸化物141のうち少なくとも一部は、一端が本体110と接するように配置されることができる。一実施例のように、複数個の酸化物141のうち少なくとも一部の一端が本体110と接するように配置される場合、保護層140と本体110との接着力が向上できる。
【0066】
複数個の酸化物141を形成する具体的な例示として、化学気相蒸着法を用いる場合、積層型電子部品100において、外部電極131、132の表面をマスキングした後、外部電極131、132の表面を除く表面に、Auのような触媒をコーティング及び付着する前処理が行われることができる。このような前処理を行った後、化学気相蒸着を施すと、後述するTi、Ba、Zn、Mg、Si、Sn及びInを含む酸化物を含む複数個の酸化物141が含まれた保護層140は、外部電極131、132の表面を除く本体110の表面に形成されることができる。このとき、複数個の酸化物141は化学気相蒸着過程で酸化物形態で成長するため、別途の酸化処理を必要としなくてもよい。
【0067】
一方、1回の化学気相蒸着法を施すだけでは、BaTiOで複数個の酸化物141を形成し難い可能性があるため、TiOを使用して複数個の酸化物141を形成した後、BaTiOに変換する過程がさらに行われてもよい。
【0068】
また、大量の積層型電子部品100に上記保護層140を一度に形成できる方法の一例として、積層型電子部品100において保護層140が形成される前の状態の複数チップを重ならないように分散させてfurnaceに投入した後、合成しようとする酸化物の前駆体及びArガスを投入し、適切な雰囲気及び温度で反応させることにより、複数のチップに対して同時に化学気相蒸着法が行われることができる。
【0069】
複数個の酸化物141を形成するさらにの他の例示として、水熱合成法を使用する場合、高温及び高圧の維持が可能であり、耐化学性のあるテフロン(登録商標)材質のオートクレーブのような容器に、電子部品100における保護層140が形成される前の状態の複数のチップとmagnetic stirrerを共に添加し、均一な水熱合成反応が行われる過程を行うことができる。このとき、複数個の酸化物141は水熱合成過程で酸化物の形態に成長するため、別途の酸化処理を必要としなくてもよい。
【0070】
水熱合成法を使用する場合、酸化物の種類に応じて、具体的な方法には若干の差が存在し得る。例えば、本体110の表面がBaTiOを含む場合、Tiを含む酸化物(例えば、TiO)は、水熱合成過程で本体110の表面に直接成長することができる。一方、BaTiOを複数個の酸化物141として形成する場合、上記Tiを含む酸化物を形成した後、Baイオンが含まれた溶液に含浸し、さらに水熱合成を行う方法を使用することができる。
【0071】
上記Tiを含む酸化物及びBaTiOを除く物質を水熱合成法を用いて複数個の酸化物141として形成するためには、別途のシード(seed)物質をスパッタリングなどの方法によりコーティングし、水熱合成を行うことにより形成することができる。このとき、外部電極131、132の表面に複数個の酸化物141が成長することを防止するために、外部電極131、132の表面は別途のマスキング処理を必要とすることがある。
【0072】
複数個の酸化物141を構成する成分は特に限定されない。例えば、複数個の酸化物141は、Ti、Ba、Zn、Mg、Si、Sn及びInのうち一つ以上を含む酸化物を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
複数個の酸化物141を構成する元素の種類を分析する方法は特に限定されない。積層型電子部品100を第2方向の中心まで研磨して第1及び第3方向の断面を露出させた後、SEM-EDS(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive.X-Ray Spectrometer)を介してMappingして元素の種類と 含量を測定することができる。
【0074】
一方、図6を参照すると、複数個の酸化物141は本体の外表面と角度を形成することができる。図6では、本体110の第6面6を基準として本体の外表面と複数個の酸化物141とがなす角度θを表した。第6面6を基準とするとき、上記角度θは、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、第6面6に対応する直線と複数個の酸化物141の長軸とがなす角度を意味することができる。
【0075】
このとき、複数個の酸化物141が本体の第6面6となす平均角度は45度以上135度以下であることが好ましく、これにより積層型電子部品100の撥水性及び耐湿信頼性を著しく向上させることができる。
【0076】
複数個の酸化物141が本体の第6面6となす平均角度は、積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1方向及び第3方向の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で撮影したイメージにおいて、第6面6に対応する直線と複数個の酸化物141の長軸とがなす角度θを、任意の5個以上の酸化物から測定して平均した値であることができる。
【0077】
一方、本発明の一実施形態により本体の外表面のうち少なくとも一部上に複数個の酸化物141が配置される場合、上記角度θの平均値の測定は第6面6だけではなく、第1~第5面にも同様に適用することができる。
【0078】
すなわち、複数個の酸化物141が、保護層141が配置される本体110の表面となす平均角度は、45度以上135度以下であることが好ましく、これにより積層型電子部品100の撥水性及び耐湿信頼性を著しく向上させることができる。
【0079】
図7は、本発明の一実施形態によるワイヤ形態の様々な形態を示す模式図である。図7の(a)は、ワイヤwの内部が充填された柱形状141a、図7の(b)は、ワイヤwの内部に中空構造を有するチューブ形状141b、図7の(c)は、ワイヤw及びワイヤwから分岐したサブワイヤbを有する枝形状141cを模式的に示すものである。
【0080】
本明細書において、酸化物のワイヤ形態は、酸化物粒子を0次元構造と見なしたとき、上記酸化物粒子が特定の方向又はパターンで成長した形態を意味することができ、様々な形態を含むことができる。
【0081】
例えば、図7を参照すると、複数個の酸化物141のワイヤ形態は、ワイヤwの内部が充填された柱形状141a、ワイヤwの内部に中空構造hを有するチューブ形状141b、及びワイヤw及びワイヤwから分岐したサブワイヤbを有する枝形状141cのうち一つ以上を含むことができる。これにより、保護層に含まれる複数個のワイヤ形態の酸化物141の表面積を極大化することができるため、積層型電子部品100の表面撥水性及び耐湿信頼性の向上効果はさらに顕著になり得る。
【0082】
一実施例において、複数個の酸化物141のうち少なくとも一部は互いに連結されて、2次元構造及び3次元構造のうち一つ以上を構成することができる。
【0083】
保護層140に含まれる複数個の酸化物141は、少なくとも一部が保護層内で重畳又は連結されることができる。一実施例において、複数個の酸化物141の少なくとも一部が互いに連結される構造は、1次元のワイヤが連結されて2次元の面を形成するか、1次元のワイヤが連結されて3次元の構造を形成する等、より低い次元の構造が連結されてより高い次元の構造体として形成される階層構造(Hierarchical Structure)を意味することができる。保護層140内において、複数個の酸化物141の階層構造を形成する方法は特に限定されない。例えば、複数個の酸化物141の階層構造は、水熱合成自己組立(Hydrothermal Synthesis of Self Assembly)、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition)などの方法で形成することができる。一実施例のように、複数個の酸化物141の少なくとも一部が連結されて2次元構造及び3次元構造のうち一つ以上を構成する場合、保護層140の表面積を極大化することができ、保護層140に含まれ得る気孔の個数又は大きさを減少させることができ、積層型電子部品100の撥水性及び耐湿信頼性の向上効果はさらに顕著になり得る。
【0084】
一実施例において、保護層140上には、シラン系化合物及びフッ素系樹脂のうち一つ以上を含む追加保護層が配置されることができる。これにより、保護層140の撥水性及び耐湿信頼性をさらに向上させることができる。
【0085】
上記シラン系化合物の具体的な例示として、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(1H,1H,2H,2H-Perfluorooctyltriethoxysilane)、オクタデシルトリクロロシラン(octadecyltrichlorosilane)、ヘキサデシルトリメトキシシラン(hexadecyltrimethoxysilane)、ビニルトリエトキシシラン(Vinyltriethoxysilane)等のシランカップリング剤(Silane Couple agent)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、上記フッ素系樹脂の具体的な例示として、ポリテトラフルオロエチレン(Poly(1,1,2,2-tetrafluoroethylene))等の撥水性樹脂などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0086】
上記シラン系化合物及びフッ素系樹脂は、保護層140上に気相蒸着法又はプラズマ法で形成されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
一方、保護層140が上記本体110の外表面のうち少なくとも一部上に配置される形態は、目的に応じて多様であり得る。
【0088】
図8は、一実施例による積層型電子部品を示す斜視図であり、図9は、図8のIII-III'断面図であり、図10は、一実施形態による積層型電子部品を示す斜視図であり、図11は、図10のIV-IV'線に沿った断面図である。
【0089】
図8及び図9を参照すると、一実施例による積層型電子部品100-1の保護層140は、第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6のうち第1面1面及び第2面2上に配置されることができ、図10及び図11を参照すると、一実施例による積層型電子部品100-2の保護層140は、第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6のうち第5面5及び第6面6上に配置されることができる。これにより、第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6のうち一部の面にのみ選択的に形成することで、容量形成部Acが積層型電子部品100の全体で占める比重を向上させることができるため、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0090】
但し、保護層140は、本体110の外表面のうち一部の面にのみ形成する必要はない。すなわち、一実施例において、保護層140は第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6上に配置されることができ、これにより、外部電極が配置されない本体110の外表面全体に保護層140を形成することで、積層型電子部品100の耐湿信頼性をさらに向上させることができる。
【0091】
図13は、一実施例による積層型電子部品の第3方向の中心部まで研磨した第1方向及び第2方向の断面図である。図13を参照すると、一実施例による積層型電子部品100-3において、外部電極131、132は、第3面3又は第4面4上に配置されて上記内部電極と連結される接続部131-1、132-1と上記第3面又は第4面から第1面1、第2面2、第5面5及び第6面6のうち一つ以上に延長されて配置されるバンド部131-2、132-2を含み、保護層140は、本体110のうち外部電極131、132が配置されていない領域及び上記バンド部と本体との間に配置されることができる。これにより、バンド部131-2、132-2と本体110との間に発生し得る微細な隙間を保護層140で充填することにより、積層型電子部品100-3の耐湿信頼性をさらに向上させることができる。
【0092】
一方、保護層140が積層型電子部品100に付与する撥水性効果は、保護層140と水とがなす接触角で確認することができる。
【0093】
保護層140と水とがなす接触角を測定する方法は特に限定されない。保護層140が形成された積層型電子部品100において、保護層140が形成された本体の外表面隣接領域のサンプルを作製した後、接触角測定器(contact angle meter)を用いて常温で超純水蒸留水液滴の静的接触角(Static Contact Angle)を測定することができる。このような接触角の測定方法は、後述する追加保護層が水となす接触角を測定する場合にも同様に適用することができる。
【0094】
保護層140と水とがなす接触角が150度以上である場合、水と保護層140が接触する面を最小化することができ、積層型電子部品100に超疎水性(Superhyrophobic)が付与されたと判断することができる。
【0095】
従来、積層型電子部品に疎水性を付与するために、本体の表面にシランカップリング剤(Silane Coupling Agent)を含むコーティング層を形成する試みがあった。しかしながら、このような方法では、コーティング層と水との接触角を120度以上に形成することが困難であり、150度以上の超疎水性を付与するためには、更なる物理的又は化学的処理が必要となる可能性がある。本発明の一実施形態のように、本体の外表面のうち少なくとも一部上にワイヤ形態の酸化物141を複数個含む保護層140を形成する場合、更なる物理的又は化学的処理なしでも保護層140と水との接触角を150度以上に向上させることができ、これにより、積層型電子部品の疎水性及び耐湿信頼性を著しく向上させることができる。
【0096】
一方、このような疎水性及び耐湿信頼性の向上効果は、ワイヤ形態の複数個の酸化物141の形態又はそれぞれのサイズに応じて変わり得る。一実施例のように、ワイヤ形態の平均長さが1nm以上10000nm以下であるか、平均直径が1nm以上300nm以下である場合、又は複数個の酸化物141のうち少なくとも一部が互いに連結されて2次元構造及び3次元構造のうち一つ以上を構成する場合、積層型電子部品100の疎水性及び耐湿信頼性の向上効果はさらに顕著になり得る。
【0097】
一方、ワイヤ形態の平均長さに対する平均直径の比率は特に限定されない。但し、上述の階層構造が容易に形成できるように、ワイヤ形態の平均長さに対する平均直径の比率は、1/3以下であることが好ましい。
【0098】
ワイヤ形態の酸化物141の形態及びサイズを観察及び測定する方法は特に限定されない。積層型電子部品100の第2方向の中心部まで研磨した第1方向及び第3方向の断面において、保護層140が形成された領域を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で5万倍以上の倍率で観察したイメージから、任意の30個以上の酸化物におけるワイヤwの直径D及び長さLを測定し、その平均値をとることができる。このとき、長さLは酸化物の長軸の長さを意味し、直径Dは長軸方向に垂直な方向への酸化物の長さを意味することができる。このとき、酸化物が枝状を有する場合、ワイヤから分岐したサブワイヤは、長さL及び直径Dを測定する際に測定対象から除外することができる。
【0099】
一方、本体の外表面のうち少なくとも一部上にワイヤ形態の酸化物141を複数個含む保護層140上に、シラン系化合物及びフッ素系樹脂のうち少なくとも一つ以上を含む追加保護層が配置される場合、上記追加保護層が水となす接触角は155度以上であることができる。これにより、積層型電子部品100の疎水性及び耐湿信頼性をさらに向上させることができる。
【0100】
図14は、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品を示す斜視図であり、図15は、本発明の他の一実施形態による積層体を示す斜視図であり、図16は、図14のV-V'線に沿った断面図であり、図17は、図16のK領域の拡大図である。
【0101】
以下では、図14図17を参照して、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品100'及びその様々な実施例について詳細に説明する。
【0102】
上述した本発明の一実施形態による積層型電子部品100における様々な実施例は、反対又は矛盾する説明がない限り、後述する他の一実施形態による積層型電子部品100'にも同様に適用することができるため、重複する記述は省略する。
【0103】
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品100'は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含み、上記第1方向に対向する第1面1及び第2面2、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、上記第1面~第4面と連結され、第3方向に対向する第5面5及び第6面6を含む積層体110'と、上記第5面及び第6面上に配置されるサイドマージン部114'、115'と、上記第3面及び第4面上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記本体と上記サイドマージン部との間の少なくとも一部にワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層140が配置される。
【0104】
図15を参照すると、積層体110'は、誘電体層111及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極121、122を含み、上記第1方向に対向する第1面1及び第2面2、上記第1面及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3面3及び第4面4、上記第1面~第4面と連結され、 第3方向に対向する第5面5及び第6面6を含む。
【0105】
一方、一実施例において、積層体110'に含まれる第1内部電極121の第2方向の一端は第3面3と接し、第3方向の両端は第5面5及び第6面6と接することができ、第2内部電極122の第2方向の一端は第4面4と接し、第3方向の両端は第5面5及び第6面6と接することができる。これにより、容量形成部Acが本体の全体で占める比重を向上させることにより、積層型電子部品100'の単位体積当たりの容量を向上させることができ、内部電極121、122と誘電体層111の積層過程で発生し得る段差を抑制することができる。
【0106】
第3面3及び第4面4上には外部電極131、132が配置され、第5面5及び第6面6上にはサイドマージン部114'、115'が配置される。積層体110'の第5面5及び第6面6は、内部電極121、122の第3方向の両端が露出することができるため、外部からの水分浸透に脆弱な部分である可能性がある。本発明の他の一実施形態による積層型電子部品100'のように、第5面5及び第6面6にサイドマージン部114'、115'を別途配置することにより、積層型電子部品100'の耐湿信頼性及び単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0107】
サイドマージン部114'、115'を形成する方法は特に限定されない。例えば、内部電極121、122形成用パターン及び誘電体層111形成用シートを積層した後、内部電極121、122が第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、第5面及び第6面にサイドマージン部形成用セラミックシートを加圧密着、又はサイドマージン部形成用セラミックスラリーを塗布し、焼成して形成することができる。
【0108】
サイドマージン部形成用セラミックシート又はサイドマージン部形成用セラミックスラリーの成分は特に限定されず、誘電体層111を形成する原料と同様であってもよく、目的に応じて異なる成分で構成されてもよい。
【0109】
図16及び図17を参照すると、本発明の他の一実施形態のように、積層体110'の第5面5及び第6面6に別途のサイドマージン部114'、115'を配置する場合、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間には微細な隙間が発生することがあり、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間に発生し得る微細な隙間は、サイドマージン部114'、115'を形成する過程で積層体110'との収縮挙動の差により発生する可能性がある。このような隙間に湿気が吸着したり、外部からの水分が浸透して内部電極121、122の端の腐食を招くことがある。
【0110】
一方、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間に発生し得る隙間は、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との境界面の一部で発生することがあり、サイドマージン部114'、115'の端での発生頻度が高い可能性がある。
【0111】
したがって、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品100'では、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との少なくとも一部に、ワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層140を配置することにより、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間に発生し得る隙間を疎水性物質で充填し、積層型電子部品100'の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0112】
積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間の少なくとも一部にワイヤ形態の酸化物を複数個含む保護層140'を配置する方法は特に限定されない。例えば、積層体110'にサイドマージン部114'、115'を形成した後、耐化学反応容器に浸漬した後、水熱合成(Hydrothermal Reaction)法により形成することができる。このような水熱合成法により保護層140'を形成する場合、大量生産が容易であるだけでなく、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間に発生し得る隙間を効果的に充填することができる。
【0113】
一実施例において、保護層140'は、第1面1及び第2面2の一部上に延長されて配置されることができる。また、一実施例において、保護層140'は、サイドマージン部114'、115'の外表面上に延長されて配置されることができる。
【0114】
これにより、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間に発生し得る隙間を充填することができるだけでなく、積層体110'の表面に超疎水性を付与することにより、積層型電子部品100'の耐湿信頼性を著しく向上させることができる。
【0115】
一実施例において、複数個の酸化物140'の一端は、積層体110'とサイドマージン部114'、115'とが対向する面のうち一つ以上と接するように配置されることができる。すなわち、複数個の酸化物141は、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間に発生し得る隙間に分散して配置される場合よりも、積層体110'とサイドマージン部114'、115'との間に発生し得る隙間を充填する効果がさらに向上する可能性がある。これにより、積層型電子部品100'の耐湿信頼性向上効果はさらに顕著になり得る。
【0116】
一方、本発明の一実施形態による積層型電子部品100で説明した保護層140の具体的な性質、保護層140に含まれる複数個の酸化物の形態、特性及び組成は、本発明の他の一実施形態による積層型電子部品100'の保護層140'にも同様に適用することができる。
【0117】
一実施例において、複数個の酸化物141が、保護層140'が配置される積層体110'の表面となす平均角度は45度以上135度以下であることが好ましく、これにより、積層型電子部品100'の撥水性及び耐湿信頼性を著しく向上させることができる。
【0118】
(実験例)
図12の(a)及び図12の(b)は、比較例によるサンプルにおいて、水との接触角を測定した結果を模式的に示したものであり、図12の(c)及び図12の(d)は、実施例によるサンプルにおいて、水との接触角を測定した結果を模式的に示したものである。
【0119】
上記実施例及び比較例によるサンプルを用意した後、水との接触角を測定して下記表1に作成した。
【0120】
図12の(a)から図12の(d)を参照すると、水と接触する表面の性質によって接触角は変わり得る。
【0121】
本体サンプル10は、BaTiOを主成分としたセラミックシートを1000℃以上の温度で焼成して作製し、各実施例又は比較例によりシラン系化合物が含まれた溶液に浸漬、水洗、乾燥及び硬化を経てシラン系化合物を含むコーティング層サンプル20を形成するか、又はTiOを水熱合成(Hydrothermal Reaction)を用いてワイヤ形態の複数の酸化物を含む保護層サンプル20を形成した。
【0122】
その後、保護層が形成されていない本体サンプル10の表面における水との接触角をθ1とし、本体サンプル10の表面にシラン系化合物を含むコーティング層サンプル20を形成し、コーティング層サンプル20の表面における水との接触角をθ2とし、本体サンプル10の表面に本発明の一実施形態のようなワイヤ形態の複数の酸化物を含む保護層サンプル30を形成し、保護層サンプル30の表面における水との接触角をθ3とし、本体サンプルの表面に本発明の一実施形態のようなワイヤ形態の複数の酸化物を含む保護層サンプル30を形成し、上記保護層サンプル30上にシラン系化合物を含む追加保護層サンプル20を形成した後、追加保護層サンプル20の表面における水との接触角はθ4とし、各比較例と実施例当たり5個のサンプルで測定した。各試験番号別の接触角は同じ温度で測定され、接触角測定器(Contact angle meter)を用いて静的接触角(Static Contact Angle)を測定した結果である。
【0123】
【表1】
【0124】
試験番号1の場合、θ1が80.1±5.4度であるため親水性、試験番号2の場合はθ1が103.0±3.6度に該当するため疎水性状態である。
【0125】
試験番号3の場合、θ3が152.9±2.8度であるため、150度以上の接触角が観察され、超疎水性を有することが確認できる。したがって、本発明の一実施形態のように、本体110の外表面のうち少なくとも一部上にワイヤ形態の酸化物141を複数個含む保護層140が配置される場合、積層型電子部品100の表面に超疎水性を付与することができるため、耐湿信頼性を向上させることができる。
【0126】
試験番号4の場合、θ4は157±3.0度である。これは試験番号3のθ3より大きい値に該当する。したがって、一実施例のように保護層140上にシラン系化合物を含む追加保護層が配置される場合、積層型電子部品の耐湿信頼性向上効果はさらに顕著になり得る。
【0127】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0128】
また、本発明で使用される「一実施例」という表現は、互いに同じ実施例を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施例は、他の一実施例の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施例で説明された事項が他の一実施例に説明されていなくても、他の一実施例においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施例に関連する説明として理解することができる。
【0129】
本発明で使用される用語は、単に一実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0130】
積層型電子部品:100、100-1、100-2、100'
本体:110
積層体:110'
誘電体層:111
内部電極:121、122
外部電極:131、132
保護層:140、140'
酸化物:141
カバー部:112、113
マージン部:114、115、114'、115'
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17